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プロジェクトマネジメント

PMBOK、WBS、アローダイアグラム、EVM、見積り手法、リスク管理を、計画から監視まで実践的に習得する

学習の全体像

プロジェクト管理とは、決められた予算と期限の中で、目的の成果物を完成させるための組織的なマネジメントです。このページでは、世界標準のPMBOKの考え方を基に、実際のプロジェクト運営で必要な5つの重要技術を習得します。

  • PMBOK:プロジェクト管理の5つのステージと10の知識エリア
  • WBS:大きな仕事を小さなピースに分解する方法
  • アローダイアグラムと計算:いつまでに何をするかを日程から逆算する方法
  • EVM:進捗とコストを同じ物差しで測定する方法
  • 見積りとリスク:前もって予測し、対策を準備する方法

試験では、これらの手法を組み合わせて「プロジェクトが予定通りに進むか」「何か問題が起きたときどう対応すべきか」を判断する力が問われます。

学習の流れ

  1. 基礎:PMBOKの枠組みを理解して、プロジェクト管理全体の構造を把握する
  2. 計画の立て方:WBSで作業を分解し、アローダイアグラムで日程を組む
  3. 進捗の測定:実際の進捗とコストをEVMで定量的に評価する
  4. 予測と対策:見積り手法でリスクを前もって把握し、対応策を決める
  5. 問題解き:実際の問題文から「どの手法を使うべきか」を判断する

PMBOK:プロジェクト管理の標準フレームワーク

PMBOKとは何か

PMBOK(Project Management Body of Knowledge) は、プロジェクト管理の最高の実践例をまとめた国際標準ガイドです。米国のプロジェクト管理協会(PMI)が発行し、世界中の組織で採用されています。

PMBOK第6版では、プロジェクト管理を「5つのプロセス群」と「10の知識エリア」の組み合わせとして定義しています。プロジェクトが開始してから終了するまで、この5つのステージを順序良く進め、それぞれのステージで10の領域すべてに注意を払うというのが基本的な考え方です。

試験対策の視点では、この枠組みを使って「どの段階で何を管理すべきか」を判断する力が重要です。

5つのプロセス群:時間軸での段階分け

プロジェクトは、開始から終了まで5つの時間的段階を順序良く進みます。各段階では異なる活動が中心になります。

ステージタイミング中心的な活動誰が関わるか
立上げプロジェクト開始前目的の確認、スコープの確定、ステークホルダーの特定経営層、PM、スポンサー
計画立上げ直後WBSの作成、日程表の策定、予算の計画、品質基準の決定PM、チームリーダー
実行作業期間中チーム配置、成果物の作成、情報伝達開発チーム全員
監視・制御作業と並行実績の確認、計画との比較、偏差への対応PM、品質担当
終結プロジェクト終了時成果物の受け入れ、教訓の整理、契約終了PM、経営層

この5段階は順序良く進むのが一般的ですが、大規模プロジェクトでは「計画→実行→監視」を何度も繰り返すこともあります。

10の知識エリア:何を管理するか

プロジェクト管理では、スコープから人的資源まで、10個の領域すべてに気を配らねばなりません。これらは上記の5つのプロセス群と組み合わさって、各ステージでの活動を定義します。

知識エリア管理の対象主な活動例
統合管理プロジェクト全体複数の領域を調整する、変更管理を統括する
スコープ管理何を作るかWBSの作成、スコープの変更管理
スケジュール管理いつ、どの順序でアローダイアグラムの作成、日程管理
コスト管理いくらかかるか見積り、予算化、EVM分析
品質管理どの水準に基準設定、検査、改善
資源管理誰が何をやるかチーム配置、スキル管理
コミュニケーション管理誰に何を知らせるか報告書、会議、情報共有
リスク管理何が起きるかもしれないかリスク特定、対応計画
調達管理外部から何を調達するかベンダー選定、契約管理
ステークホルダー管理利害関係者をどう管理するか関係者分析、期待値調整

これらの領域は独立ではなく、互いに関連しています。たとえば、スケジュール(いつまでか)とコスト(いくらか)は密接に関連し、スコープ(何を)が変わると他のすべてに影響を及ぼします。試験では、「この問題はどの領域か」を正確に判断することが第一歩です。

PMBOK第7版での変化

最新版(PMBOK第7版)では、従来の「プロセス群と知識エリア」から「12の原理・原則」と「8つのパフォーマンスドメイン」へと枠組みが変わっています。ただし、日本の試験では第6版の内容がまだ中心なため、ここではPMBOK第6版(5プロセス×10知識エリア)を基準に学習します。


WBS(作業分解構造):複雑な仕事を細かく分ける

WBSの定義と「100%ルール」

WBS(Work Breakdown Structure) は、プロジェクト全体を階層的に小さな要素に分解していく方法です。「何をするか」を可視化し、漏れなくすべての作業を把握するための基本的な道具です。

WBSの最も大切な原則は「100%ルール」です。これは、上位レベルの作業は、下位レベルのすべての作業を足し合わせたものと完全に一致しなければならないという意味です。もし子要素の合計が親要素を下回ったら、何か漏れているということです。

WBSの構造:階層的な分解

WBSは通常3~4層から成り立ちます。

  • レベル1(プロジェクト全体):プロジェクトの最終成果物
  • レベル2(フェーズ・カテゴリ):プロジェクトを機能や時間軸で分割
  • レベル3~4(ワークパッケージ):最終的に一人の担当者が実行できる単位

具体例:システム開発プロジェクト

下記は、新販売管理システム開発プロジェクトのWBSです。

プロジェクト:新販売管理システム開発

├─ 1. 計画フェーズ
│  ├─ 1.1 要件定義
│  │  ├─ 1.1.1 営業部門の要件ヒアリング
│  │  ├─ 1.1.2 経理部門の要件ヒアリング
│  │  └─ 1.1.3 要件仕様書作成
│  ├─ 1.2 基本設計
│  └─ 1.3 計画文書作成

├─ 2. 開発フェーズ
│  ├─ 2.1 詳細設計
│  ├─ 2.2 実装
│  │  ├─ 2.2.1 モジュールA実装
│  │  ├─ 2.2.2 モジュールB実装
│  │  └─ 2.2.3 モジュールC実装
│  └─ 2.3 単体テスト

├─ 3. テスト・導入フェーズ
│  ├─ 3.1 統合テスト
│  ├─ 3.2 ユーザー受入テスト
│  └─ 3.3 本番導入

└─ 4. 終結フェーズ
   ├─ 4.1 運用移行支援
   └─ 4.2 教訓整理

レベル3の「1.1.1 営業部門の要件ヒアリング」「1.1.2 経理部門の要件ヒアリング」「1.1.3 要件仕様書作成」を合わせれば、レベル2の「1.1 要件定義」となります。この関係が全階層で成り立つ場合、WBSが正しく構成されています。

WBSの実用的な使い方

WBSを作る際のコツは、次の3点です。

  1. 100%ルールを意識する:親要素の作業が、子要素の合計で完全に説明されているか
  2. 同じレベルでの粒度を揃える:「要件定義」と「モジュールA実装」が混在しないようにする
  3. 最下位要素を「ワークパッケージ」に:一人の担当者が「実行する」単位で分解する(説明ではなく実行)

WBS、アローダイアグラム、EVMの関係

プロジェクト管理には複数の視点が必要です。各手法が「何を見ているか」を理解することが重要です。

手法視点質問例出力
WBSスコープ(何を作るか)「全体の仕事は何か、細分化できるか」階層構造、成果物リスト
アローダイアグラムスケジュール(いつまでか)「どの作業が先で、どれが後か、いつ終わるか」ネットワーク図、クリティカルパス
EVM進捗・コスト(どこまで進んだか)「計画通りか、予算内か」差異分析、完成見積り

WBSは「やることの一覧」に過ぎず、順序や日程を示していません。日程は別の手法(アローダイアグラム)で管理します。この区別が理解できないと、試験問題で失敗しやすいので注意しましょう。


アローダイアグラムとPERT:日程から逆算する方法

アローダイアグラムの定義と目的

アローダイアグラム は、プロジェクトの全作業を矢線でつなぎ、「どの作業がどの作業の前に来るか」という順序関係と、各作業の所要時間を図で表す方法です。PERTやCPM(クリティカルパス法)はこのアローダイアグラムを基にして、プロジェクト全体の最短完了日数やどの作業が遅れると全体が遅れるかを計算します。

試験では、アローダイアグラムの「計算」がよく出題されます。特にクリティカルパスの特定と、各作業の余裕時間の計算が重要です。

アローダイアグラムの基本要素

アローダイアグラムは、次の3つの要素で構成されます。

要素表記意味
節点(ノード)○ または □作業の開始と終了時点。「イベント」とも呼ぶ
矢線(アロー)作業(アクティビティ)を表す。矢線の長さは時間を示さない(あくまで順序を表示)
ダミー矢線--->実際の作業ではなく、単に順序関係を示すための点線。所要時間は0

4つの時刻の定義

アローダイアグラムを使った計算では、各作業について4つの時刻を求めます。この4つの関係を正確に理解することが計算問題を解く鍵になります。

前向き計算(開始から終了へ)

  • ES(最早開始時刻):その作業を開始できる最も早い時刻
  • EF(最早完了時刻):その作業を完了できる最も早い時刻

後ろ向き計算(終了から開始へ)

  • LS(最遅開始時刻):プロジェクト全体を遅延させずに、その作業を開始すべき最も遅い時刻
  • LF(最遅完了時刻):プロジェクト全体を遅延させずに、その作業を完了すべき最も遅い時刻

計算手順1:前向き計算(ES、EF)

開始節点から終了節点に向かって、各作業の最早時刻を計算します。

計算ルール

  • 開始作業のES = 0
  • 各作業の EF = ES + その作業の所要期間
  • 後続作業のES = 直前の作業のEFの最大値(複数の先行作業がある場合は、最も遅く終わるもの)

つまり、ある作業が開始できるのは、その作業のすべての先行作業が終わってからです。複数の先行作業があれば、そのうち最も遅く終わるものを待たねばなりません。

計算手順2:後ろ向き計算(LF、LS)

今度は終了節点から開始節点に向かって、各作業の最遅時刻を計算します。

計算ルール

  • 終了節点のプロジェクト完了時刻をLFとする(通常、前向き計算で求めたプロジェクト完了日)
  • 各作業の LS = LF - その作業の所要期間
  • 先行作業のLF = 後続作業のLSの最小値(複数の後続作業がある場合は、最も早く始まるもの)

つまり、ある作業が完了すべき最遅時刻は、その作業の後続作業がいつ開始すべきかによって決まります。複数の後続作業があれば、そのうち最も早く始まるものに合わせる必要があります。

クリティカルパスとトータルフロート

クリティカルパス とは、開始から終了までの経路のうち、最も時間がかかる経路です。言い換えれば、「どの作業も遅れが許されない経路」です。

クリティカルパス上の作業の特徴は、LS = ES かつ LF = EF ということです。つまり、開始も完了も「最早時刻 = 最遅時刻」で、ぴったり一致しています。

トータルフロート(総余裕時間) は、その作業がどれだけ遅れても全体日程に影響しない最大日数です。

トータルフロート = LS - ES = LF - EF

  • フロート = 0:クリティカルパス上の作業(遅れると全体が遅れる)
  • フロート > 0:余裕がある(最大フロート日まで遅れても大丈夫)

スケジュール短縮:クラッシングとファストトラッキング

納期を前倒ししたいときは、どの作業をどう短縮するか を考えます。ここで頻出なのが クラッシングファストトラッキング です。どちらも「工期短縮」ですが、やり方と副作用が違います。

手法何をするか効果主な副作用
クラッシング人員追加、外注追加、設備投入で所要日数を短くするクリティカルパス上の作業日数を直接短縮できるコスト増
ファストトラッキング本来は順番の作業を一部並行実施する追加費用を抑えて短縮できることがある手戻りや品質低下のリスク増

判断のポイントは、クリティカルパス上の作業でなければ全体日程は縮まらない ことです。たとえば、余裕時間のある作業を1日短縮しても、プロジェクト全体の完了日は変わりません。

また、選択肢では次の誤りがよく出ます。

  • クラッシング = 並行作業化 とする
  • ファストトラッキング = 人員追加 とする
  • 非クリティカル作業の短縮でも全体工期が縮む とする

受験では、まず どの作業がクリティカルか を確認し、そのうえで 費用を掛けて短縮するのか 順序を崩して短縮するのか を判定してください。

完全な計算例

次のプロジェクトを考えます。「営業提案」→「基本設計」「営業承認」(並行)→「詳細設計」→「実装」→「テスト」という流れです。

作業リストと先行関係

作業先行作業所要期間(日)
A:営業提案なし5
B:基本設計A3
C:営業承認A4
D:詳細設計B, C2
E:実装D6
F:テストE3

ステップ1:前向き計算(開始→終了)

開始節点をTime 0として計算します。

A:   ES=0,   EF=0+5=5
B:   ES=5,   EF=5+3=8
C:   ES=5,   EF=5+4=9
D:   ES=max(8,9)=9,   EF=9+2=11
E:   ES=11,  EF=11+6=17
F:   ES=17,  EF=17+3=20

プロジェクト全体の完了予定日は 20日 です。

ステップ2:後ろ向き計算(終了→開始)

プロジェクト完了日(20日)を逆算のスタート点とします。

F:   LF=20,  LS=20-3=17
E:   LF=17,  LS=17-6=11
D:   LF=11,  LS=11-2=9
C:   LF=9,   LS=9-4=5
B:   LF=9,   LS=9-3=6
A:   LF=min(6,5)=5,  LS=5-5=0

ここで重要なのは、作業Aの後に複数の後続作業がある場合です。作業Aは「BとCのどちらが先に始まっても間に合うよう終わらなければならない」ので、AのLFは後続作業のLSの最小値 min(B.LS, C.LS) = min(6, 5) = 5 となります。前向き計算で「先行作業が複数ある場合(作業D)に ES = max(先行のEF)」を取るのと対称的に、後ろ向き計算では「後続作業が複数ある場合(作業A)に LF = min(後続のLS)」を取ります。

ステップ3:トータルフロートと クリティカルパスの特定

作業ESEFLSLFフロート状態
A05050クリティカルパス
B58691余裕あり
C59590クリティカルパス
D9119110クリティカルパス
E111711170クリティカルパス
F172017200クリティカルパス

結論

  • クリティカルパス:A → C → D → E → F(20日)
  • 作業B だけに1日の余裕があり、最大1日まで遅れても全体に影響しません
  • AまたはCまたはDまたはEまたはFのいずれかが1日遅れると、プロジェクト全体が1日遅れます

つまずきやすい計算のコツ

  1. 複数の先行作業がある場合:後続作業のESは「最も遅く終わる先行作業のEF」です。複数のEFを見て最大値を取る
  2. 複数の後続作業がある場合:先行作業のLFは「最も早く始まる後続作業のLS」です。複数のLSを見て最小値を取る
  3. ダミー矢線:実際の作業ではなく(所要時間0)、単に順序関係を示すためだけに使う。計算時は忘れやすいので注意

EVM(獲得価値法):進捗とコストを同時に測定する

EVMの基本的な考え方

EVM(Earned Value Management) は、プロジェクトの進捗とコストの効率を、同じお金という物差しで測定する方法です。単に「予算を何%使った」だけでなく、「使ったお金に対して、どれだけの価値(完成した成果)が得られたか」を同時に判定できます。

試験でよく出題されるのは、3つの基本変数(PV、EV、AC)から5つの指標(SV、CV、SPI、CPI、EAC)を計算する問題です。計算ルール自体は単純ですが、各指標の意味を正確に理解する必要があります。

3つの基本変数:PV、EV、AC

EVMの土台となる3つの変数は、すべてお金の単位で測定されます。

変数日本語定義計算方法
PV計画価値今時点で、予定通りに進んでいれば完了しているはずの成果に対応する予算額当初予算(BAC)× 計画進捗率
EV獲得価値今時点で、実際に完了した成果に対応する予算額当初予算(BAC)× 実績進捗率
AC実際原価今時点で、実際に使った金額実績支出額

言葉で説明すると

  • PVは「今日が中間地点で、計画通りなら1000万円中500万円のペースで進んでいるはず」という期待値
  • EVは「実際には400万円分の成果が完了している」という現実
  • ACは「その成果のために実際に420万円使った」という支出実績

この3つを比較することで、「遅れているか、早いか」「効率的か、非効率か」が一目瞭然になります。

PV、EV、AC、BAC を日本語へ戻して覚える

数式だけで覚えると、CPISPI の分母を逆にしやすくなります。まずは各記号を 何と比べるための金額か で言えるようにしてください。

記号何を表すか日本語での言い換え見る軸
BAC当初予算の総額プロジェクト全体で使う予定の総額全体
PV今時点で本来進んでいるはずの予算額計画どおりなら達成済みのはずの価値計画
EV実際に出来上がった成果の予算額完了した成果を予算額に直した値実績進捗
AC実際に使ったお金ここまでの実支出実コスト

SPI = EV / PV実際にできた量 ÷ 計画どおりならできたはずの量CPI = EV / AC得られた価値 ÷ 実際に使ったお金 です。進捗 を見たいなら分母は PVコスト効率 を見たいなら分母は AC と押さえると混同しにくくなります。

CPI と SPI を文章で読む

年度別の設問では、計算そのものよりも CPI > 1SPI < 1 をどう日本語に直すかが問われることがあります。ここは、CPI はコスト効率、SPI は進捗速度 だと一文で言えるようにしてください。

状態読み方ありがちな誤読
CPI > 1使ったお金より大きい価値を得ており、コスト効率は良い予算超過している と読む
CPI < 1使ったお金に対して得られた価値が小さく、コスト効率は悪い進捗が遅れている と読む
SPI > 1計画より速いペースで進んでいるコスト効率が良い と読む
SPI < 1計画より遅れている予算を超過している と読む

CPI > 1 かつ SPI < 1 のように、コストは健全だが遅れている 状態は普通に起こります。両者は別軸なので、同じ意味だと思わないことが重要です。

スケジュール差異と効率:進捗を測定する

プロジェクトが計画通りに進んでいるかを判定する指標は2つです。

スケジュール差異(SV): SV = EV - PV

  • SV < 0:進捗が遅れている(EVがPVより小さい=完成した成果が少ない)
  • SV = 0:予定通り
  • SV > 0:進捗が早い

スケジュール効率指数(SPI): SPI = EV / PV

  • SPI < 1:遅れている(1万円分の計画進捗に対して、1万円未満の実績進捗)
  • SPI = 1:予定通り
  • SPI > 1:早い

どちらを使うか:SVは「差」を示し、SPIは「比率」を示します。SPIは「何%のペースで進んでいるか」を直感的に把握できるため、試験では両方出題される傾向があります。

コスト差異と効率:支出を測定する

予算をどれだけ効率的に使っているかを判定する指標は2つです。

コスト差異(CV): CV = EV - AC

  • CV < 0:予算を超過している(完成した成果より多くお金を使った)
  • CV = 0:予定通り
  • CV > 0:予算内である(完成した成果に対して少なくお金を使った)

コスト効率指数(CPI): CPI = EV / AC

  • CPI < 1:効率が悪い(1万円使ったのに1万円未満の価値しか生まれていない)
  • CPI = 1:予定通り
  • CPI > 1:効率が良い(1万円使って1万円以上の価値が生まれている)

完成時総コスト見積り(EAC):最終予測

プロジェクトが完成したときの総コストを予測する指標です。

EAC(完成時総コスト見積り): EAC = BAC / CPI

ここで重要なのは、「もし現在のコスト効率が最後まで続いたら」という仮定です。

  • EAC > BAC:現在のペースだと予算を超過する見込み
  • EAC = BAC:予定通りで完成する見込み
  • EAC < BAC:予算内で完成する見込み

完全な計算例:5つの指標をすべて求める

プロジェクト状況

  • 当初予算(BAC):2000万円
  • プロジェクト進捗:計画では60%進むはず、実績は55%
  • 現在までの実支出(AC):1100万円

ステップ1:3つの基本変数を計算

PV = BAC × 計画進捗率 = 2000万円 × 60% = 1200万円
EV = BAC × 実績進捗率 = 2000万円 × 55% = 1100万円
AC = 1100万円(与えられた値)

意味:計画では1200万円分の成果が完了しているはずだが、実際には1100万円分しか完了していない。その成果のために1100万円使った。

ステップ2:進捗の差異と効率を計算

SV = EV - PV = 1100万円 - 1200万円 = -100万円
→ 進捗が100万円分遅れている(スケジュール遅延)

SPI = EV / PV = 1100 / 1200 = 0.917(≒92%)
→ 計画の約92%のペースで進行中。つまり、8%遅れている

ステップ3:コストの差異と効率を計算

CV = EV - AC = 1100万円 - 1100万円 = 0万円
→ コストは予定通り(EV = ACなので差異がない)

CPI = EV / AC = 1100 / 1100 = 1.000
→ 1万円の支出で1万円分の価値が得られている(効率は良好)

ステップ4:完成時総コスト見積りを計算

EAC = BAC / CPI = 2000万円 / 1.000 = 2000万円
→ プロジェクト完成時は約2000万円の支出予測(予算内)

評価: このプロジェクトは、進捗が8%遅れているものの、コスト効率は良好です。現在のペース(CPI=1.0)が続けば、最終的には予算内で完成する見込みです。ただし、スケジュール遅延を解決するためにリソース追加や工程短縮を検討する必要があります。

4つのシナリオ判定:SV と CV の組み合わせ

プロジェクトの健全性は、SV(進捗)とCV(コスト)の組み合わせで判定します。これらが「正か負か」で、4つのシナリオが生じます。

SV の符号CV の符号シナリオ意味対策
(遅い)(超過)最悪遅れて、高い早急なリソース追加、工程短縮
(遅い)(効率的)課題あり遅れだが効率的優先順位変更、並行化
(早い)(超過)課題あり早いが高い支出抑制、効率化
(早い)(効率的)最良早くて効率的現状維持

試験では「どのシナリオか」を判定して、「どんな対策を取るべきか」を答える問題がよく出題されます。


見積り技法:プロジェクトの工数やコストを予測する

見積り技法の位置づけ

プロジェクトの成功には、実現可能な工数・期間・予算を前もって把握することが不可欠です。見積り技法は、プロジェクトのライフサイクルの段階によって使い分けられます。

段階情報量主な見積り手法精度
要件定義前(初期構想)少ない類推見積り、COCOMO中程度
要件定義完了時(計画段階)中程度ファンクションポイント法、三点見積り比較的高い
詳細設計完了時(実装段階)多いボトムアップ見積り最高

試験では「プロジェクトのどの段階か」に応じて「最適な見積り手法は何か」を判定する問題がよく出題されます。

1. ファンクションポイント法(FP法)

ソフトウェア開発規模を機能の複雑さから見積もる方法です。プログラミング言語に依存しない点が特徴で、要件定義が完了した後に精度の高い見積りができます。

原理:システムが持つ5つの機能タイプについて、複雑度に応じた「ポイント」を加算していきます。

5つの機能タイプと複雑度係数

機能タイプ説明例複雑度係数
入力ユーザーが入力する画面フォーム低/中/高3/4/6
出力システムが出力するレポート低/中/高4/5/7
照会ユーザーが検索・閲覧する機能低/中/高3/4/6
内部ファイルシステムが管理するマスターデータ低/中/高7/10/15
外部ファイル外部システムから参照するデータ低/中/高5/7/10

計算例:販売管理システムの見積り

入力:5画面(複雑度:中)= 5 × 4 = 20FP
出力:3レポート(複雑度:高)= 3 × 7 = 21FP
照会:4検索(複雑度:低)= 4 × 3 = 12FP
内部ファイル:2個(複雑度:中)= 2 × 8 = 16FP
外部ファイル:1個(複雑度:低)= 1 × 5 = 5FP
────────────────────────
合計 = 74FP

開発生産性が1FPあたり10人日の場合:
工数 = 74FP × 10人日/FP = 740人日

2. COCOMO(構成的コスト見積りモデル)

開発規模(ソースコード行数)に基づいて工数を統計的に見積もる方法です。FP法より早期の段階で概算見積りできます。

3つのモード(開発規模による分類)

モード規模特徴計算式
オーガニック型(有機型)50KLOC以下単純で、経験のあるチーム工数 = 2.4 × (KLOC)^1.05
セミデタッチ型(半独立型)50~300KLOC中規模で複雑度中工数 = 3.0 × (KLOC)^1.12
エンベッド型(組込み型)300KLOC以上大規模で複雑工数 = 3.6 × (KLOC)^1.20

計算例:50KLOCのオーガニック型

工数 = 2.4 × (50)^1.05 ≈ 135.4人月

開発期間の見積り:
期間(月)= 2.5 × (工数)^0.38 = 2.5 × (135.4)^0.38 ≈ 13.2ヶ月

3. 三点見積り(PERT手法)

複数の推定値から期待値を計算し、不確実性を考慮した見積りを行う方法です。リスク管理と組み合わせて使われることが多いです。

原理:3つの推定値を加重平均して、中心的なシナリオを反映した期待値を求めます。

計算式: 期待値 = (楽観値 + 4 × 最頻値 + 悲観値) / 6

「最頻値(最も起こりやすい値)」に4倍の重み付けをするのが特徴です。

計算例:データベース設計の期間見積り

楽観値(最良シナリオ):3日
最頻値(通常シナリオ):5日
悲観値(最悪シナリオ):10日

期待値 = (3 + 4×5 + 10) / 6 = (3 + 20 + 10) / 6 = 33 / 6 = 5.5日

不確実性が高い作業ほど、楽観値と悲観値の幅が大きくなります。

4. 類推見積り

過去の類似プロジェクトの実績を基に、新規プロジェクトの工数を推定する方法です。データが豊富な組織では精度が高いですが、依存する条件があります。

使い道

  • 早期段階(要件定義前)の概算見積り
  • 過去に類似プロジェクトが豊富な組織

利点と課題

  • ✓ 組織固有の生産性を反映できる
  • ✗ 類似度の判定が主観的(「どこまで類似したら適用できるか」が曖昧)
  • ✗ 過去と現在の環境が異なると、精度が低下

5. ボトムアップ見積り

最下位のワークパッケージ(実行可能な作業単位)ごとに見積もり、積み上げる方法です。最も精度が高く、チーム全体の納得が得やすいのが特徴です。

プロセス

  1. WBSを最下位レベルまで分解
  2. 各ワークパッケージの工数を見積もる(通常、担当者が見積もる)
  3. 同じ親要素の子要素の工数を合計
  4. 上位レベルへ集約
総工数 = Σ(全ワークパッケージの工数)

利点と課題

  • ✓ 詳細な作業から積み上げるため、漏れが少なく精度が高い
  • ✓ 各担当者の意見を反映でき、納得度が高い
  • ✗ WBSの分解と見積りに時間がかかる
  • ✗ WBS自体が不完全だと、漏れが発生

リスク管理:プロジェクトの不確実性に対する備え

リスク管理の全体像

リスク とは、プロジェクトが失敗する、または予期しない結果が起きる可能性のあることです。単に「悪いこと(脅威)」だけでなく、「良い方向の予期しないこと(機会)」も含みます。

リスク管理は5つのステップを順序良く進めます。重要なのは「計画段階で一度決めたら終わり」ではなく、プロジェクト実行中も定期的に見直すことです。

リスク管理の5ステップ

ステップ活動の内容主な出力
1. リスク特定起こりうるリスクを網羅的に洗い出すリスク登録簿(リスク一覧)
2. 定性的分析リスクの発生確率と影響度で優先順位付けリスク評価マトリクス
3. 定量的分析リスクの金銭的インパクトを計算期待値、対応費用の決定
4. リスク対応計画各リスクへの具体的な対応策を決定リスク対応計画書
5. リスク監視・制御プロジェクト進行中に新規リスクを監視、対応を実行リスク監視報告書

重要な注意:リスク管理は、プロジェクトが完成するまで継続して行われます。計画段階で終わるのではなく、実行・監視段階でも新しいリスクが発見され、対応が必要になります。

ステップ1&2:リスク特定と定性的分析

リスクを洗い出し、「確率 × 影響度」で優先順位を付けます。通常3×3のマトリクスを使って、視覚的に整理します。

リスク評価マトリクス

        影響度
        大 |
           |  中  大  大
           | 中  中  大
        小 | 小  中  中
           |_____________
             小  中  大  → 発生確率

マトリクスから、次の優先度が決まります。

  • 赤色(右上):確率が高く、影響度が大きい → 即座に対応が必要
  • 黄色(中央):中程度のリスク → 監視と部分的対応
  • 青色(左下):軽微なリスク → 受容して監視

ステップ3:定量的分析(期待値計算)

複数のリスクがある場合、どれに優先的に対応すべきかを決めるために、金銭的インパクトを計算します。

期待値の計算: 期待値 = 発生確率 × 影響度(金額)

具体例:ソフトウェア開発プロジェクトで3つのリスクを分析

リスク A(新技術の採用失敗):
  発生確率 30%、影響額 500万円 → 期待値 = 0.3 × 500 = 150万円

リスク B(キー人物の退職):
  発生確率 60%、影響額 200万円 → 期待値 = 0.6 × 200 = 120万円

リスク C(顧客の要件変更):
  発生確率 80%、影響額 150万円 → 期待値 = 0.8 × 150 = 120万円

期待値が大きい順(A > B ≒ C)に対応策を優先します。

ステップ4:マイナスのリスク(脅威)に対する4つの対応戦略

起こるとプロジェクトに悪影響を与えるリスク(脅威)には、4つの対応戦略があります。どの戦略が適切かは、リスクの内容によって異なります。

戦略意味
回避リスクが発生しないよう、プロジェクト方針を変更する新しい技術の採用を避け、既知のツールで開発する
転嫁リスクの責任を他者に移す複雑な部分を外注化する、保険に加入する
軽減リスク発生の確率または影響度を低下させるテスト期間を延長する、バックアップスタッフを配置する
受容リスク発生を前提に、対応策を準備する予備費を予算に組み込む、緊急対応チームを整備する

選択のコツ

  • 「回避」は確実だが、プロジェクトの柔軟性を失う
  • 「転嫁」は外部コストが増加する
  • 「軽減」が最も一般的(費用と効果のバランスが取れやすい)
  • 「受容」は発生確率が低く影響度が小さいリスク向け

ステップ4:プラスのリスク(機会)に対する4つの対応戦略

起こると良いこと(機会)も、リスク管理の対象です。確実に実現させるための戦略があります。

戦略意味
活用機会を確実に実現させるよう計画を変更スキルの高い人材の参加を確保する
共有機会の利益を第三者と共有するベンダーと協業して相乗効果を狙う
強化機会の発生確率や利益を増大させる追加リソースを投入して実現可能性を高める
受容機会を活かさず、現在の計画のまま進める「現在の予算で十分」と判断して余力を取らない

リスク対応計画書の例

複数のリスクを一覧化し、各リスクごとに対応方針を決めた計画書です。

リスク発生確率影響度期待値対応戦略具体的対応責任者
要件定義後の変更要求60%軽減変更管理委員会を設置、変更申請フォーム運用PM
専門技術者の退職20%軽減知識文書化、後継育成を並行実施HR
ベンダーの納期遅延40%転嫁SLA締結、複数ベンダー並行検討調達
ユーザー側の受け入れ遅延15%受容スケジュールに20%の余裕を確保PM

リスク監視の重要性

計画段階で「このリスクに対応する」と決めた後も、プロジェクト実行中は継続的な監視が必要です。なぜなら:

  1. 新しいリスクが発見される(当初は予想しなかったことが起きる)
  2. リスク対応策の効果を検証する必要がある
  3. 発生確率や影響度が変化する

毎週のプロジェクト会議で「新しいリスクはないか」「既存リスクの対応は進んでいるか」を確認するのが良い実務です。


過去問で戻りやすい補助論点

三重制約と品質の関係

プロジェクト管理の基本は、スコープ時間コスト の 3 つが互いに引っ張り合うことを理解することです。品質は、その 3 つのバランスの上に乗る結果として現れます。

要素問い増やしたときに起きやすいこと
スコープ何を作るか時間かコストが増えやすい
時間いつまでに終えるかコスト増や品質低下のリスク
コストいくらまで使えるかスコープ縮小や日程延長が起きやすい
品質どの水準で仕上げるか他の 3 要素の制約を強く受ける

たとえば、納期を短縮したいときに クラッシング で人を増やせばコストが上がります。逆に、予算を削るとレビュー回数やテスト工数が減り、品質リスクが上がりやすくなります。

マイルストーン、成果物、ワークパッケージ、WBS辞書

WBS の周辺用語は、似て見えて役割が違います。試験ではここを言い換えて問うことが多いので、節目作業単位説明文書 を切り分けて覚えます。

用語何を表すか典型例
成果物作った結果として残るもの要件定義書、設計書、プログラム
ワークパッケージWBS の最下位に近い管理可能な作業単位画面A実装結合テスト実施
マイルストーン進捗上の節目。通常は所要期間 0 の到達点基本設計完了本番移行承認
WBS辞書WBS 各要素の説明文書作業範囲、前提条件、担当、完了条件の記述

ワークパッケージ = 実際に実行する単位マイルストーン = そこへ到達したかを見る節目 と覚えると混同しにくくなります。

定義問題での言い換え

過去問では、これらの語をそのまま聞くより、構造図か 説明文書か 節目か を言い換えて問うことが多いです。

問われ方対応する用語
仕事を階層的に分解した構造WBS
各要素の範囲や完了条件を書いた説明文書WBS辞書
実際に管理する最小の作業単位ワークパッケージ
所要期間 0 の到達点マイルストーン

ベースラインと変更管理

プロジェクトでは、最初に立てた計画を ベースライン として固定し、実績との差を比較します。ベースラインがないと、遅れているのか、計画を変えたのか が判別できません。

用語意味
ベースライン比較の基準として承認された計画承認済み日程、予算、スコープ
実績実際に起きた結果実際の工数、実際の進捗率
変更管理ベースラインを変えるかどうかを審査する手続き追加要件を変更管理委員会で審査

重要なのは、実績がずれたから即ベースラインを書き換える のではないことです。まず差異を把握し、本当に正式変更すべきなら承認を経てベースラインを更新します。

バーンダウンチャートと EVM の違い

どちらも進捗を見る道具ですが、見る軸が違います。

手法主に何を見るか向いている場面読み方
バーンダウンチャート残作業量アジャイル、短い反復線が理想線より上なら遅れ気味
EVM進捗とコストを金額で同時管理予算管理が重要な案件CPI、SPI が 1 を上回るか下回るか

バーンダウンチャートは 残りがどれだけ減ったか を見る簡潔な図、EVM は その進捗が予算効率的か まで見る管理手法です。したがって、バーンダウン = EVM の図版 ではありません。

イテレーション計画とローリングウェーブ計画

不確実性が高い案件では、後ろの作業まで最初から細かく決め切れないことがあります。このときは、近い期間を詳細に、遠い期間は粗く計画する考え方を使います。

用語意味使いどころ
イテレーション計画反復単位ごとに詳細計画を立てるアジャイル開発、短サイクル改善
ローリングウェーブ計画近い将来は詳細、遠い将来は概略で計画要件変動がある中長期案件

どちらも 最初から最後まで同じ粒度で固定しない という点が共通します。


つまずきやすい誤解と対策

試験に出題される際に、受験者がよく間違える点をまとめます。各点について「誤り」「正解」を明確にすることで、実際の問題で間違えるのを防ぎましょう。

1. WBS と日程(ガントチャート)を混同する

誤り:WBSに「2026年1月開始」「2026年3月終了」などの日程を記入する

正解:WBSは「何を作るか」の階層構造を示すだけ。時系列の順序や日程はアローダイアグラムやガントチャートで管理します。WBSは「要素の洗い出し」、アローダイアグラムは「順序と日程の計画」という別の役割です。

2. クリティカルパスは「作業数が多い経路」だと誤解する

誤り:「作業A→B→C→D が4つあるから、これがクリティカルパス」

正解:クリティカルパスは「最も時間がかかる経路」です。例えば、A(5日)→B(3日)→C(4日)の経路が12日、一方D(10日)→E(3日)の経路が13日なら、後者がクリティカルパスです。作業数ではなく総時間で判定します。

3. アローダイアグラムの計算で、複数の先行作業がある場合に誤る

誤り:複数の先行作業がある場合に、その平均をとる

正解:複数の先行作業がある場合、後続作業のESは「最も遅く終わる先行作業のEF」です。すべての先行作業が完了してから、後続作業は開始できるからです。計算ルール:ES = max(先行作業のEF)

4. EVM の SV と CV を同じものと見なす

誤り:「SV = -100万円だから、コストが100万円超過している」

正解:SVはスケジュール差異(進捗の遅れを金額で表現)、CVはコスト差異(実際の予算超過)です。どちらも「負」という符号は同じ意味(悪い)ですが、測定する軸が異なります。

  • SV:計画進捗 vs. 実績進捗(時間軸の問題)
  • CV:実際の支出 vs. 完了した成果の予算(金銭軸の問題)

5. EVM の計算で「進捗率」を誤解する

誤り:「実績進捗率が45%だから、EV = BAC × 45%」と機械的に計算

正解:進捗率は「実際に完了した成果物が、全体のどの割合か」に基づいて決めます。もし BAC=1000万円で、実績進捗率が55%なら、EV = 1000 × 55% = 550万円です。ただし、進捗率の決定根拠(工数?納品物?)を確認しましょう。

6. 見積り手法の選択を誤る

誤り:「COCOMO が一番正確だから、常にCOCOMO を使う」

正解:プロジェクトのライフサイクル段階によって、最適な見積り手法は異なります。

  • 要件定義前:類推見積り(過去データ活用)
  • 要件定義完了:ファンクションポイント法(機能ベース)
  • 詳細設計完了:ボトムアップ見積り(最も正確)

7. リスク対応4戦略(脅威)をすべてのリスクに平等に適用しようとする

誤り:「すべてのリスクを『回避』する」

正解:リスクの特性に応じて戦略を変えます。

  • 「新技術採用の失敗」:回避(既知技術を選ぶ)
  • 「ベンダー納期遅延」:転嫁(契約で保証を取る)
  • 「テスト不足」:軽減(テスト期間延長)
  • 「軽微なバグ」:受容(予備費確保)

8. リスク管理を「計画フェーズだけ」と見なす

誤り:「リスク対応を計画したから、あとは実行するだけ」

正解:プロジェクト実行中も、新しいリスクが発見される、既存リスクの確率が変わる、対応策の効果を検証するなど、リスク管理は継続的に行われます。

9. マイルストーンとワークパッケージを同じものだと思う

誤り:「基本設計完了」は実作業だからワークパッケージである

正解基本設計完了 は節目なのでマイルストーンです。実際の作業単位は 基本設計書の作成レビュー実施 などです。

10. ベースラインの変更と実績修正を混同する

誤り:「予定より遅れたので、元の計画日を今日の日付に直しておく」

正解:ベースラインは比較基準なので、勝手に書き換えてはいけません。まず差異として記録し、正式な変更管理を通す必要があります。

11. バーンダウンチャートと EVM を同じ進捗管理だと思う

誤り:「どちらも進捗を見るので、数字かグラフかの違いだけ」

正解:バーンダウンは残作業量、EVM は進捗とコスト効率を同時に見ます。EVM では CPI や SPI によって 予算効率 まで判断できます。

12. CPI と SPI の分母を取り違える

誤り:「どちらも EV を何かで割るので、EV / ACEV / PV を混同する」

正解:SPI は 進捗 を計画と比べるので EV / PV、CPI は 価値 を支出と比べるので EV / AC です。P = PlanC = Cost と文字に戻して確認すると誤りにくくなります。

13. WBS と WBS辞書を逆に覚える

誤り:「WBS が説明文書で、WBS辞書が図」

正解:WBS は仕事を分解した 構造、WBS辞書は各要素の範囲・前提・完了条件を説明する 文書 です。構造を見る語か、説明する語か を分けて覚えてください。


試験問題を解くときの流れ

実際の試験問題に直面したとき、どのように考え、どの手法を使うかを判断する順序を示します。

ステップ1:問題文を読んで「何の段階か」を判定する

問題文に「計画段階」「実行中」「終結時」などの時系列情報がないか確認します。

  • PMBOK の「5つのプロセス群(立上げ→計画→実行→監視→終結)」のどこに該当するか
  • スコープ・スケジュール・コスト・品質・リスク等のどの領域か

ステップ2:「何を管理するのか」を特定する

  • 「何を作るか」→ WBS
  • 「いつまでに、どの順序で」→ アローダイアグラム(計算問題ならPERT)
  • 「進捗とコストはどうか」→ EVM
  • 「工数はどう見積もるか」→ 見積り手法
  • 「何が起きるかもしれないか」→ リスク管理

ステップ2補足:用語定義問題では「節目・作業・説明文書」を切り分ける

  • ワークパッケージ → 実行する最小管理単位
  • マイルストーン → 進捗の節目
  • WBS辞書 → WBS 要素の説明文書
  • ベースライン → 比較の基準となる承認済み計画

問題文が計算ではなく定義中心なら、まずこの 4 つのどれかに分類できるか確認します。

ステップ3:計算問題ならば、使う公式を特定する

計算対象公式試験出題頻度
アローダイアグラムES、EF、LS、LF、フロート頻出
クリティカルパスフロート = 0 の経路頻出
EVM差異SV = EV - PV、CV = EV - AC頻出
EVM効率SPI = EV / PV、CPI = EV / AC頻出
完成見積りEAC = BAC / CPI中程度
FP法FP数 × 生産性 = 工数中程度
三点見積り(楽観値 + 4×最頻値 + 悲観値) / 6中程度
リスク期待値発生確率 × 影響度中程度

ステップ3補足:進捗管理手法が EVM かバーンダウンかを見分ける

  • PV / EV / AC / CPI / SPI が出る → EVM
  • 残作業量理想線スプリント が出る → バーンダウンチャート

ステップ4:計算結果を「常識的に」検証する

  • 「クリティカルパスが見つかったのに、フロート = 0 の作業が複数ある」→ 複数のクリティカルパスが存在する(正常)
  • 「EAC > BAC なのに CPI > 1」→ 矛盾(計算ミスの可能性)
  • 「SPI = 0.8 なのに、SV > 0」→ 矛盾(計算ミスの可能性)

練習問題

確認問題 1:マイルストーンとワークパッケージ

次のうち、マイルストーンとして最も適切なものを答えてください。

  1. テスト仕様書を作成する
  2. 基本設計完了
  3. 画面A を実装する
  4. 総合テストを実施する

解答2. 基本設計完了

理由: 完了 は節目を表し、通常は期間 0 の到達点として扱います。1、3、4 は実際の作業なのでワークパッケージ側です。

確認問題 2:ベースラインと変更管理

次の状況で、まず取るべき考え方を答えてください。

状況:要件追加により、当初計画より 2 週間遅れる見込みになった。

解答: まずは 現行ベースラインとの差異 として把握し、追加要件を正式な変更管理手続きにかけます。遅れが見えたからといって、元の基準日程を勝手に書き換えてはいけません。

確認問題 3:バーンダウンと EVM の使い分け

次の説明に最も適切な手法を答えてください。

  1. スプリント期間中に、残作業量が理想線どおり減っているかを見る
  2. 実際に使ったコストに対して、得られた進捗価値が十分かを見る

解答

  1. バーンダウンチャート
  2. EVM

確認問題 4:CPI と SPI を取り違えない

次の状況で、SPICPI を求めて判定してください。

  • BAC:1,000 万円
  • 計画進捗率:60%
  • 実績進捗率:50%
  • 実支出(AC):700 万円

解答

  • PV = 1,000 × 60% = 600 万円
  • EV = 1,000 × 50% = 500 万円
  • SPI = EV / PV = 500 / 600 ≒ 0.83
  • CPI = EV / AC = 500 / 700 ≒ 0.71

判定

  • SPI < 1 なので進捗は遅れている
  • CPI < 1 なのでコスト効率も悪い

ポイント:進捗比較の分母は PV、コスト効率の分母は AC です。

確認問題 5:CPI / SPI を文章で判定する

次の状況を日本語で説明してください。

  1. CPI = 1.10SPI = 0.90
  2. CPI = 0.85SPI = 1.20

解答

  1. コスト効率は良いが、進捗は遅れている
  2. 進捗は速いが、コスト効率は悪い

ポイント

  • CPIお金の効率
  • SPI進み具合
  • 片方が良くても、もう片方が悪いことはあります

実践問題:アローダイアグラムと EVM の統合問題

新規Webアプリケーション開発プロジェクトで、次のデータが与えられました。

作業スケジュール

作業先行作業所要期間
A:要件定義なし10日
B:基本設計A8日
C:詳細設計B6日
D:実装C12日
E:テストD8日

進捗状況(Day 20)

  • 当初予算(BAC):600万円
  • 計画進捗率:45%(Day 20 が全44日のプロジェクト中)
  • 実績進捗率:40%
  • 実支出(AC):250万円

問題

  1. クリティカルパスと完了予定日を求めてください
  2. Day 20 時点での SV、CV、SPI、CPI、EAC を計算し、プロジェクトの健全性を判定してください

解答例

  1. クリティカルパス = A → B → C → D → E = 10+8+6+12+8 = 44日

  2. PV = 600万 × 45% = 270万、EV = 600万 × 40% = 240万

    • SV = 240 - 270 = -30万(遅延)
    • CV = 240 - 250 = -10万(超過)
    • SPI = 240 / 270 ≈ 0.89(89%ペース、遅い)
    • CPI = 240 / 250 = 0.96(コスト効率やや悪い)
    • EAC = 600 / 0.96 ≈ 625万(予算超過見込み)

    判定:進捗遅延 + コスト超過 = 要注意。リソース追加やスケジュール短縮を検討する必要があります。


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