中小企業の経済的役割と主要統計
企業数、従業者数、付加価値、地域雇用をどう読むかを整理する。統計調査の出典、労働生産性、資金調達、財務特性を実務的に把握する
このページの役割
このページは、中小企業が日本経済でどんな位置を占めるかを読むページです。試験では「中小企業の経済的役割」が複数の指標で問われます。その指標とは企業数、従業者数、付加価値、地域雇用です。ここで大切なのは、これらの数字を暗記することではなく、各指標が何を示しているのかを理解することです。
例えば「企業数が99.7%」という数字だけを知っていても意味がありません。それは「日本の企業の大多数が中小企業である」という意味であり、「日本経済全体が中小企業に依存している」というわけではないのです。付加価値や労働生産性といった別の指標を見ると、その制限が見えてきます。
同時に、試験に頻出する統計調査(経済センサス、中小企業実態基本調査など)の出典と実施主体と実施頻度を正確に答える必要があります。そして中小企業特有の財務特性(自己資本比率が低い、労働分配率が高いなど)も、その背景とセットで理解することが重要です。
このページでは、以下の3つの柱で学習を進めます。
学習の3つの柱
- 指標の読み分け — 企業数、従業者数、付加価値、労働生産性がそれぞれ何を示すのか、どう異なるのか
- 統計調査の識別 — どの統計からどの数字が出ているのか、実施主体・頻度が何か
- 財務特性と資金調達 — 中小企業が大企業と異なる財務状況(自己資本比率が低い、労働分配率が高い)を持つ背景と、それに対応する資金調達手段
試験の分かれ目:典型的な誤解を避ける
「企業数が多い = 経済への影響が大きい」という誤解が最も多くの受験生を落とします。中小企業は企業数で99.7%を占めていますが、売上高では約50~60%、付加価値では約53%程度です。つまり、数が多くても、1社当たりの規模が小さいのです。この見分けが、試験の配点差になります。
学習のポイント
試験で確実に得点するために、以下の優先順位で学習を進めてください。
Lv1(絶対に得点する):
- 中小企業が企業数で99.7%、従業者数で約70%、付加価値で約53%を占めることの意味の違いを説明できる
- 付加価値の計算式を正確に書ける:営業利益 + 人件費 + 支払利息等 + 賃借料 + 租税公課
- 労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業者数 で、中小企業が大企業の約50%という数値を理解できる
- 統計調査4種の出典を即答できる:経済センサス(総務省)、中小企業実態基本調査(中小企業庁)、法人企業統計(財務省)、日銀短観(日本銀行)
Lv2(得点を伸ばす):
- 企業数が1999年484万社から2021年336万社に減少した背景を説明できる
- 信用金庫(会員制)と信用組合(組合員制)の違いを説明できる
- 労働分配率が中小企業で75~85%と高い理由を説明できる
Lv3(応用・記述問題対策):
- 中小企業の経済的役割を「企業数」「雇用」「地域経済」「限界」の4層で説明できる
- 統計表から「比較の軸」(業種別、規模別、時系列)を読み分けられる
- 中小企業が直面する経営課題(労働生産性の低さ、資金調達の困難さ)と対応する施策を結びつけられる
試験で何が問われるか
試験では大きく3つのタイプの問題が出題されます。
選択肢問題(最頻出)
パターンA:統計調査の出典を問う
「○○を調査しているのはどの統計か」という問題です。以下4つの統計調査と実施主体を確実に区別することが合否を分けます。
- 企業数・事業所数 → 経済センサス-基礎調査(総務省)
- 売上高・付加価値額 → 経済センサス-活動調査(総務省・経産省共同)
- 経常利益・設備投資 → 法人企業統計調査(財務省)
- 業況判断DI → 日銀短観(日本銀行)
- 中小企業の経営課題・資金調達 → 中小企業実態基本調査(中小企業庁)
パターンB:数字の読み分けを問う
「次の記述のうち正しいものはどれか」という問題です。典型例は:
- 「中小企業は企業数で99.7%を占めるが、従業者数は約70%、付加価値は約53%」が正しく、「従業者数も53%である」は誤り
パターンC:信用金庫と信用組合の違い
「会員制/組合員制」「融資額の規模」「数」など、細かな違いが選択肢になります。
計算問題
付加価値額の計算: 営業利益 + 人件費 + 支払利息等 + 賃借料 + 租税公課
労働生産性の計算: 付加価値額 ÷ 従業者数(結果:万円/人・年 などの単位を明記すること)
労働分配率の計算: 人件費 ÷ 付加価値額 × 100%
記述問題(難関大学・上位校対策)
「中小企業の経済的役割を説明せよ」という問題に対しては、以下の4層構造で答えると評価されやすいです。
- 企業数での重要性(99.7%を占める)
- 従業者数・雇用での重要性(約70%の雇用を支える)
- 地域経済・産業集積での役割(特に地方圏)
- 直面する課題・限界(労働生産性の低さ、資金調達難)
主要統計調査(出典を問う問題が頻出)
試験では「○○というデータはどの統計から出ているのか」を問う問題が毎年のように出ます。統計調査の種類は多いですが、試験に出る主要なものは限定されています。ここで紹介する5つの統計調査と、それぞれが何を調べているのか、誰が実施しているのか、どのくらいの頻度で実施されるのかを確実に覚えることが得点の基盤になります。
統計調査は、次のような観点で区別できます。
- 実施主体 — 総務省、経産省、財務省、厚生労働省、日本銀行など
- 主な内容 — 企業の「数」なのか「規模」なのか「経営状況」なのか
- 実施頻度 — 5年ごと、毎年、四半期ごと
- 対象範囲 — 全企業か、一定規模以上か
これら4つの観点で比較することで、複数の統計を暗記ではなく「体系的に」覚えられます。
統計調査の一覧表
| 統計名 | 実施主体 | 主な内容 | 実施頻度 | 試験での活用 |
|---|---|---|---|---|
| 経済センサス-基礎調査 | 総務省 | 全事業所の企業数・事業所数の把握 | 5年ごと | 企業数の基本統計 |
| 経済センサス-活動調査 | 総務省・経産省共同 | 売上高・付加価値額・営業利益 | 5年ごと | 産業別付加価値、経営規模 |
| 法人企業統計調査 | 財務省 | 経常利益・設備投資・営業キャッシュフロー | 四半期・年間 | 大企業との比較、景気判断 |
| 中小企業実態基本調査 | 中小企業庁 | 中小企業の経営状況・経営課題・資金調達 | 毎年 | 中小企業特有の経営実態 |
| 雇用保険事業年報 | 厚生労働省 | 開業率・廃業率の算出基礎 | 毎年 | 新規開業、企業退出 |
| 日銀短観(全国企業短期経済観測調査) | 日本銀行 | 業況判断DI、設備投資計画 | 四半期 | 景気動向、業況判断 |
出典を問う形式の例
試験では以下のような問い方をします:
- 「企業数の基本統計は何が実施しているか」→ 経済センサス-基礎調査(総務省)
- 「中小企業の経営状況を毎年調査しているのは」→ 中小企業実態基本調査(中小企業庁)
- 「業況判断DIが発表されるのは」→ 日銀短観(日本銀行)
企業数の推移と構成
長期的な減少傾向を理解する
中小企業の企業数は、過去25年間で大きく減少しています。この減少は「日本経済が衰退している」というわけではなく、産業構造の転換と経営効率化が同時に起きているサインです。
なぜ企業数が減少するのか:
企業が複数あるより、少数の大きな企業でスケールメリットを活かした方が効率的だからです。例えば、かつては街中に小さな小売店が何百店もありましたが、大型チェーン店とオンライン販売に集約されました。個人事業主も減少しており、特に小規模事業者(1~4人企業)の廃業が全体の減少を牽引しています。
| 年次 | 企業数(万者) | 特徴 |
|---|---|---|
| 1999年 | 約485万者 | ピーク時 |
| 2009年 | 約422万者 | 10年間で63万者減 |
| 2016年 | 約359万者 | 企業数減少が加速 |
| 2021年 | 約336万者 | 長期的な最低水準 |
減少の背景:
- 小規模事業者(個人事業主や1~4人企業)の大幅な減少
- 後継者不足による廃業
- デジタル化による業務効率化で企業数が減少
- 産業転換により消費地小売業などが減少
業種別企業数構成比(2021年経済センサス-基礎調査)
| 業種 | 構成比 | 企業数目安 |
|---|---|---|
| 卸売業・小売業 | 約24% | 最大勢力 |
| 建設業 | 約14% | 第2位 |
| 製造業 | 約12% | 第3位(減少続く) |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 約11% | 増加傾向(居住関連増加) |
| その他(サービス業、不動産等) | 約39% | ヘルスケア・介護が増加 |
試験での見分け方:
- 「企業数が最多の業種」→ 卸売業・小売業
- 「成長している業種」→ 医療・福祉、情報通信関連
- 「減少が顕著な業種」→ 製造業、建設業(ただし建設業は近年やや持ち直し)
従業者数と雇用への役割
従業者数の特徴:「数が多い」と「雇用が多い」は別の意味
中小企業は企業数では圧倒的多数派(99.7%)ですが、従業者数は約70%程度です。この数字は一見矛盾しているように見えますが、実は中小企業の本質を示しています。
なぜこの差が生まれるのか:
中小企業1社当たりの従業員数が、大企業より大幅に少ないからです。大企業は1社で平均1000人以上の従業員を抱えていますが、中小企業は平均10~50人程度です。つまり、数が多くても、1社当たりの規模が小さいため、全体の雇用に占める割合は企業数ほど高くないのです。
この関係を数式で表すと以下のようになります。
中小企業の従業者数割合 = 企業数割合 ÷ 平均従業員数の比率
数字で見るとこうなります。
| 規模 | 企業数構成比 | 従業者数構成比 | 平均従業員数 |
|---|---|---|---|
| 大企業 | 約0.3% | 約30% | 約1000人以上 |
| 中小企業 | 約99.7% | 約70% | 約10~50人程度 |
この表から、中小企業が約330倍多いのに従業者数では2.3倍程度にとどまっていることが、1社当たりの規模差を物語っています。
地域雇用の担い手
- 地方圏での雇用: 中小企業が地域労働力の80%以上を吸収
- 商店街・地域コミュニティ: 地方の雇用と生活基盤を支える
- 雇用の質: 中小企業は賃金水準は大企業より低いが、失業者の再就職、高齢者雇用、パート労働の受け皿として重要
付加価値額と労働生産性
付加価値額とは:「企業が創造する純粋な価値」
付加価値(かちくわえ)という言葉は、経営学や経済学で頻出する重要な概念です。簡単に言えば「企業が社会に対して生み出した価値」のことです。売上高(売上)ではなく「付加価値」という別の概念があるのは、企業が単に商品を売るだけでなく、その過程で従業員の給与を払い、銀行から借りたお金の利息を払い、場所代を払い、税金を納めているからです。これらすべてが「企業が地域経済や社会に対して与えている価値」なのです。
付加価値額の計算式(試験頻出):
教科書では「売上高 - 仕入原価」という簡潔な式を使うこともありますが、診断士試験では以下の詳細版を使うことが多いです。
営業利益 + 人件費 + 支払利息等 + 賃借料 + 租税公課 = 付加価値額
この式の意味を理解することが重要です。企業が生み出した利益だけでなく、従業員に払った給与、銀行に払った利息、貸地代、そして納めた税金——これらすべてが「企業が地域経済に配分した価値」なのです。
付加価値額が重要な理由:
- 同じ売上高でも、人件費や利息が大きく異なれば、実際に生み出している価値が異なる
- 企業の「経営効率」を測る指標になる
- 業種別・規模別の経済規模を比較する基準になる
試験では「付加価値額に含まれるもの・含まれないもの」を問う問題が頻出です。例えば「仕入原価は含まれるか」という問題が出た場合、この式から見ると含まれていないことが読み取れます。
労働生産性の定義と計算:「1人当たりの価値生産量」
労働生産性とは、従業員1人当たりが平均でどれだけの付加価値を生み出しているかを示す指標です。企業の効率性を測る最も重要な指標の一つです。
計算式:
労働生産性 = 付加価値額 ÷ 従業者数
例えば、ある企業の付加価値が1200万円で従業者が20人なら: 1200万円 ÷ 20人 = 60万円/人
これは「この企業では、従業員1人当たり平均で年間60万円の付加価値を生み出している」という意味です。
この指標が重要な理由:
「企業数が多い」ことと「1人当たりの生産性が高い」ことは全く別です。中小企業は企業数で99.7%を占めていますが、労働生産性は大企業の約50%程度です。つまり、同じ人数の従業員がいても、中小企業は大企業の半分の価値しか生み出していないということになります。
この指標から、中小企業が直面する経営課題が見えてきます。
- 設備投資が少ないため、従業員1人当たりの機械・装置の保有量が小さい
- 技術導入やデジタル化が遅れている
- スケールメリットが小さく、固定費を売上で割りきれない
- 人材育成や研究開発の投資が限定的
これらは「中小企業だから仕方がない」ではなく、中小企業政策や経営課題の改善対象になります。
大企業との生産性格差
| 指標 | 中小企業 | 大企業 | 格差 |
|---|---|---|---|
| 労働生産性(付加価値/人) | 約600万円/年 | 約1200万円/年 | 大企業の50% |
| 設備投資額/従業者 | 低水準 | 高水準 | 中小企業は投資不足 |
| 技術導入率 | 遅れ | 先行 | デジタル化で顕著 |
この格差は以下の原因によります:
- 中小企業の資本金・設備が小さい
- 研究開発投資が限定的
- スケールメリットが小さい
中小企業の財務特性
自己資本比率と借入依存度:「資本構成の違い」
企業の財務状態は「どうやって資金を調達しているか」で見ることができます。大企業と中小企業では、この資金構成が大きく異なります。
**自己資本(じこしほん)とは、企業が事業を始めるときや拡大するときに使う「自分の資金」です。対して他人資本(たにんしほん)**は銀行からの借入金のことです。
中小企業は、この自己資本の比率が大企業より低いという特徴があります。つまり、銀行からの借金に頼る比率が高いということです。
| 財務指標 | 中小企業 | 大企業 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 自己資本比率 | 約40% | 約50~60% | 中小企業は他人資本に依存 |
| 借入金/売上高 | 高い | 低い | 負債圧力が相対的に大きい |
| 借入金利 | 大企業より高い | 低い | 信用リスク評価で不利 |
自己資本比率が低いことの含意:
- 銀行融資への依存度が高い — 新事業や設備投資をしたいとき、銀行に認めてもらう必要がある
- 金利負担が経営を圧迫しやすい — 借金が多いほど、利息を払う額が増える
- 経営危機時に対応余力が小さい — 赤字が出たときの対応力が限定される
- 大企業と同じ金利で借りられない — 信用リスクが高いため、大企業より高い金利を求められる
これらの課題に対応するのが、中小企業政策(低利融資、保証制度など)の対象になります。
労働分配率:「利益と給与のバランス」
労働分配率(ろうどうぶんぱいりつ)は、企業が生み出した付加価値のうち、従業員の給与にどのくらいの比率を配分しているかを示す指標です。
計算式:
労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値額 × 100%
| 企業規模 | 労働分配率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 約75~85% | 高い |
| 大企業 | 約50~60% | 低い |
中小企業で労働分配率が高い理由を理解する:
中小企業の労働分配率が高いのは「従業員をたくさん雇っているから」ではなく、むしろ「利益を生み出す余裕が小さいから」です。
例えば、A社とB社を比較します。
- A社(大企業):売上100、仕入40、人件費30、利益30
- B社(中小企業):売上100、仕入80、人件費18、利益2
付加価値(売上 - 仕入)をそれぞれ計算します。
- A社の付加価値 = 100 - 40 = 60
- B社の付加価値 = 100 - 80 = 20
- A社の労働分配率 = 30 ÷ 60 × 100% = 50%
- B社の労働分配率 = 18 ÷ 20 × 100% = 90%
B社(中小企業)は人件費の絶対額がA社より小さくても、付加価値自体が少ないため、労働分配率は90%と非常に高くなります。つまり、売上が下がると、すぐに従業員の給与が圧迫される状況が生まれやすいのです。
高い労働分配率の含意:
- 固定費(人件費)の割合が大きい
- 利益を生み出す余裕が小さい
- 経営危機時に賃金削減を余儀なくされやすい
売上高・経常利益の動向
近年の傾向(2015~2023年)
| 期間 | 中小企業 | 大企業 | 格差の動き |
|---|---|---|---|
| 2015~2019年 | 緩やかに増加 | より急速に増加 | 格差拡大傾向 |
| 2020年 | コロナで落ち込み | 同様 | 一時的に格差縮小 |
| 2021~2023年 | 回復して増加 | より高い成長率 | 格差が再び拡大 |
結論: 中小企業は売上増加局面でも大企業ほどの成長速度を達成できず、相対的な格差が拡大傾向にあります。
業況判断DI(日銀短観より)
| 時期 | 業況判断DI | 背景 |
|---|---|---|
| 2020年初 | マイナス | コロナ禍直後 |
| 2023年上半期 | プラス約30 | 30年ぶりの高水準 |
| 2023年後半~2024年初 | 低下傾向 | 賃金上昇、金利引き上げ |
業況判断DIの読み方:
- DI > 0 = 「良い」と答えた企業が「悪い」と答えた企業より多い(好況)
- DI < 0 = 逆(不況)
- 中小企業のDIは大企業より低い傾向(中小企業はより悪い業況判断)
中小企業の資金調達手段
間接金融が中心(融資先の構成)
中小企業の資金調達は、銀行融資を中心とした間接金融が主流です。これは「中小企業が大企業のように株式を発行して資金を集められない」ことを反映しています。
| 融資機関 | 特徴 | 中小企業での重要度 |
|---|---|---|
| 都市銀行(都銀) | 大企業向け、融資額が大きい | 中 |
| 地方銀行(地銀) | 地域密着、中小企業向け | 高 |
| 信用金庫(信金) | 協同組織、会員ベース | 非常に高い |
| 信用組合(信組) | 協同組織、組合員ベース | 高い |
| 日本政策金融公庫 | 政府系、長期低利融資 | 新規開業時に重要 |
| 商工中金 | 中小企業専門、政府出資 | 高い |
信用金庫と信用組合の違い(試験頻出)
信用金庫と信用組合はよく混同されますが、試験では確実に区別する必要があります。
| 項目 | 信用金庫 | 信用組合 |
|---|---|---|
| 会員資格 | 「会員」制(非営利) | 「組合員」制(非営利) |
| 対象企業 | 中小企業・個人事業主 | より小規模層 |
| 地域性 | 都道府県内を基本 | より限定的 |
| 融資規模 | 中堅企業向けも可 | 小規模向け |
| 数 | 254機関 | 約143機関(減少中) |
試験での見分け方:
「会員」という言葉が出たら信用金庫、「組合員」という言葉が出たら信用組合と即座に判定できるようにしましょう。また、信用金庫は「会員による協同組織」であり、営利目的ではなく「会員の相互扶助」という理念で成立しています。信用組合も同様です。
直接金融(成長企業向け)
中小企業が直接金融を活用する手段は、従来は少ないですが、成長企業では増加傾向にあります。
| 手段 | 特徴 | 対象企業 |
|---|---|---|
| 少人数私募債 | 50名未満の投資家向け、登記不要 | 一定の信用がある中堅企業 |
| クラウドファンディング | インターネット経由の資金調達 | 事業内容に共感する投資家 |
| ベンチャーキャピタル(VC) | 成長企業への出資 | IT・バイオ・スタートアップ |
| エンジェル投資家 | 個人による事業支援 | 起業初期段階 |
地域経済への役割
雇用の基盤
中小企業が地域経済において果たす役割は、単なる「雇用の場を提供する」というだけではありません。
- 雇用の規模: 地方圏では中小企業が80~90%の雇用を創出
- 雇用の質: 正社員、パート、高齢者、障害者など多様な雇用形態を受け入れ
- 地域での定着: 大企業本社が集中する都市部と異なり、地方では中小企業が最大の雇用主
産業集積とサプライチェーン
- 産業集積: 同一業種の企業が地理的に集中(例:東大阪の機械加工、豊田市の自動車部品)
- 下請け構造: 大企業の製造を支える部品・加工・物流の中小企業ネットワーク
- 情報・技術流出リスク: 大企業が下請け中小企業に新技術を押し付けると、地域の技術基盤が揺らぐ
商店街と地域コミュニティ
- 商店街の衰退: 大型商業施設の進出により、地域商店街の経営が悪化
- 地域資源の維持: 商店街は雇用だけでなく、文化・コミュニティの中心
- 防災・防犯: 地域に根ざした企業による見守り機能
典型的なつまずき
よくある誤解1:「企業数が多い = 経済的影響が大きい」
中小企業は企業数で99.7%を占めますが、売上高ベースでは約50~60%程度です。企業数が多いことと経営規模が大きいことは別です。
誤答例: 「中小企業の企業数が多いから、中小企業が日本経済の大部分を占める」 正答への修正: 「中小企業は企業数では圧倒的多数派だが、売上高では大企業との比較で互角程度、付加価値では大企業より小さい傾向がある」
よくある誤解2:「従業者数と付加価値は同じ意味」
従業者数が多い = 雇用をたくさん創出している、という解釈は正しい。 しかし、従業者数が多い = 価値をたくさん生み出している、というわけではありません。
誤答例: 「従業者数が70%なので、付加価値も70%」 正答への修正: 「従業者数は70%だが、付加価値は約52~53%。一人当たり生産性が大企業より低いことを示している」
よくある誤解3:「統計の出典を混同する」
- 経済センサス = 総務省(企業数・事業所数)
- 法人企業統計調査 = 財務省(経常利益・設備投資)
混同しやすいポイント:
- どちらも「企業」「統計」の言葉を含む
- 実施頻度が異なる(経済センサスは5年、法人企業統計は四半期)
よくある誤解4:「信金と信組の違いをあやふや」
| 誤り | 正しい理解 |
|---|---|
| 「信金も信組も同じようなもの」 | 異なる組織形態。信金=会員制、信組=組合員制 |
| 「信組のほうが大きい」 | 信金のほうが融資規模が大きい傾向 |
| 「どちらも預金者ベース」 | 預金も受け入れるが、融資先は異なる層 |
問題を解くときの観点
統計問題を解く手順
- 「何を数えている統計か」を先に確認
- 企業数? 売上高? 付加価値? 業況判断?
- 実施主体を答える前に、その統計の主な内容を言える状態か確認
- 例:「日銀短観 = 業況判断DI」と即答できるレベル
- 数字が「水準」か「増減」かを読み分ける
- 「2021年の企業数は336万社」 = 水準
- 「1999年比で148万社減少」 = 増減
- 業種別・規模別・地域別の切り方を意識
- 「卸売業・小売業が最多」は業種別の比較
- 「大企業0.3% vs 中小企業99.7%」は規模別の比較
計算問題を解く手順
付加価値の計算:
- 営業利益 + 人件費 + 支払利息 + 賃借料 + 租税公課
- 注意:「売上高 - 仕入原価」ではない
労働生産性の計算:
- 付加価値 ÷ 従業者数
- 結果の単位を意識(万円/人・年 など)
労働分配率の計算:
- 人件費 ÷ 付加価値 × 100%
- 中小企業で70~85%程度
記述問題を解く観点
「中小企業の経済的役割を説明せよ」という問題の場合:
- 企業数での重要性 → 「99.7%を占める」
- 従業者数での重要性 → 「約70%の雇用を支える」
- 地域経済での重要性 → 「地方の雇用基盤」「産業集積」
- 限界 → 「労働生産性が低い」「資金調達が困難」
この4層構造で答えると説得力が高まります。
確認問題
問題1:統計調査の出典
問 中小企業の経営状況、経営課題、資金調達状況を毎年調査しているのはどの統計か?
答(選択肢)
- A. 経済センサス-活動調査
- B. 中小企業実態基本調査
- C. 法人企業統計調査
- D. 日銀短観
正答:B. 中小企業実態基本調査(中小企業庁実施)
ポイント: 経営課題や資金調達という「中小企業特有」の内容を聞かれたら、迷わず「中小企業実態基本調査」です。
問題2:労働生産性の計算
問 A企業の付加価値額が1200万円、従業者数が20人のとき、労働生産性はいくらか?
答 労働生産性 = 1200万円 ÷ 20人 = 60万円/人
ポイント: 結果は「万円/人」や「万円/年」などの単位を付けることが重要です。数字だけでなく意味も答えましょう(「従業員1人当たり年60万円の付加価値を生み出している」)。
問題3:信用金庫と信用組合
問 次の文のうち、正しいものはどれか?
答(選択肢)
- A. 信用金庫と信用組合は、どちらも営利組織である
- B. 信用金庫の会員資格、信用組合の組合員資格
- C. 信用組合のほうが、中堅企業向けの融資規模が大きい
- D. 信用金庫と信用組合は、どちらも都市銀行と同じ営利金融機関である
正答:B. 信用金庫の会員資格、信用組合の組合員資格
ポイント: 「会員 = 信用金庫」「組合員 = 信用組合」と覚えると、どちらも非営利の協同組織であることと合わせて区別できます。A・C・Dは誤りです。
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