主要補助金制度
中小企業向け主要5補助金の概念、比較、具体的な要件、計算方法、過去問を網羅した教材型ページ
このページの役割
中小企業診断士試験では、補助金を「上限額や補助率の数字」で覚えるのではなく、「何を支援する制度か」「対象は誰か」「要件は何か」を区別できることが合格の分岐点です。このページは、ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金、省力化投資補助金、新事業進出補助金の5つを、定義から確認問題まで段階的に学びます。
なぜ補助金理解が重要か
中小企業政策の中で補助金が占める比重は大きく、経営課題が「製品開発」なのか「販売促進」なのか「IT導入」なのかで、活用すべき補助金が大きく異なります。試験では以下のパターンで問われます。
- 補助金の目的認識:「販路開拓を支援する制度は何か」と名称で選ぶ
- 対象者の判定:「小規模事業者向けか、中小企業一般か」を読み取る
- 基本要件の理解:「付加価値額年3%以上」などの数値要件を計算できるか
- 補助率と実際の支給額:「補助上限と補助率を組み合わせて実際の支給額を算定できるか」
補助金は「毎年度の公募内容が変わる」という性質があるため、固定的な数値暗記より、制度設計の原理を理解することが長期的な学習効率につながります。
5大補助金の概観図
【経営課題別】主要補助金の位置づけ
┌───────────────────────────────────────────────────────────┐
│ │
│ 【販路開拓】 【生産性向上・投資】 │
│ └─ 持続化補助金 ├─ ものづくり補助金 │
│ (小規模対象) │ (革新開発・改善) │
│ ├─ IT導入補助金 │
│ │ (デジタル化) │
│ └─ 省力化投資補助金 │
│ (人手不足対応) │
│ │
│ 【事業転換・多角化】 │
│ └─ 新事業進出補助金 │
│ (旧・事業再構築の後継) │
│ │
└───────────────────────────────────────────────────────────┘補助金を「経営課題」で分類すると、試験での判定精度が高まります。
主要5補助金の比較表
以下の表は、試験頻出の5つの補助金を、目的・対象・要件のポイントで整理したものです。
| 補助金 | 目的 | 対象企業 | 補助率 | 補助上限 | 必須要件 |
|---|---|---|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 革新的な製品・サービス開発、生産プロセス改善 | 中小企業等 | 中小1/2、小規模2/3 | 750万~3,000万円 | ①付加価値額年3%以上、②給与支給総額年1.5%以上、③事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円(3年間継続) |
| IT導入補助金(2026年度より「デジタル化・AI導入補助金」) | ITツール導入による業務効率化・デジタル化 | 中小企業・小規模事業者 | 1/2~4/5 | 5万~450万円 | IT導入支援事業者との共同申請が必須 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓、事業の持続的発展 | 小規模事業者(商業等5人以下、製造業等20人以下) | 2/3(赤字企業は3/4) | 50万~200万円 | 商工会・商工会議所の支援、経営計画策定 |
| 省力化投資補助金 | 人手不足対応の設備投資 | 中小企業等 | 1/2(賃上げで1.5倍引上げ可) | 200万~1,500万円 | 人手不足への対応(従業員の確保が困難であることの証明) |
| 新事業進出補助金 | 新分野展開・業種転換・事業転換 | 中小企業等 | 中小1/2、小規模2/3 | 2,500万~9,000万円 | ①付加価値額年3%以上、②給与支給総額年1.5%以上(3年間) |
この表から読み取るべき点は、「ものづくり補助金と新事業進出補助金は要件が類似している」「IT導入補助金は申請方法が異なる(ベンダー共同申請)」「持続化補助金は対象と補助率が特有」ということです。
ものづくり補助金の詳細
制度の役割と背景
ものづくり補助金は、経済産業省中小企業庁が所管する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」で、中小企業が革新的な製品やサービスを開発したり、既存の生産プロセスを改善したりする際の設備投資や開発費を支援します。
背景:日本の製造業・サービス業が国際競争力を保つため、単なる効率化だけでなく「付加価値の向上」を伴う革新的な投資を奨励する政策です。このため「数値要件」が他の補助金より厳密です。
申請類型(2026年度)
ものづくり補助金には複数の申請枠があり、各枠で補助上限が異なります。
| 申請枠 | 対象投資 | 補助上限(従業員規模別) |
|---|---|---|
| 製品・サービス高付加価値化枠 | 革新的な新製品・新サービス開発 | 750万~2,500万円 |
| グローバル枠 | 海外展開を視野に入れた生産プロセス改善 | 3,000万円 |
※ 省力化(オーダーメイド)枠は2025年度公募より廃止。同様の支援は「中小企業省力化投資補助事業」に移行しています。
3つの必須要件
ものづくり補助金を申請する場合、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。要件のいずれかに達しないと、交付決定を受けられません。
要件① 付加価値額の年率向上
補助金交付決定後、3年間にわたり、毎年「付加価値額」を前年比で3%以上向上させることが必須です。
計算式:
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
付加価値額年率向上率 = 当期の付加価値額増加分 ÷ 基準年度の付加価値額 × 100
≧ 3% 以上重要な読み方:
- 計算の分子は「付加価値額の増加分」
- 計算の分母は「基準年度(前年度)の付加価値額」です
- 目標は「毎年3%」なので、初年度3%、2年目3%、3年目3%と継続達成が必須
具体例:
- 売上高10億円、営業利益1,000万円、人件費1億8,000万円、減価償却費1,000万円(基準年度)
- 売上高10.5億円、営業利益1,060万円、人件費1億8,040万円、減価償却費1,440万円(申請年度)
基準年度付加価値額 = 1,000 + 18,000 + 1,000 = 2億円(20,000万円)
申請年度付加価値額 = 1,060 + 18,040 + 1,440 = 2億540万円(20,540万円)
増加分 = 540万円
向上率 = 540万円 ÷ 20,000万円 × 100 = 2.7%この場合、2.7% < 3% であるため、要件不足です。
要件② 給与支給総額の年率向上
補助金交付決定後、3年間にわたり、毎年「給与支給総額」を前年比で1.5%以上増加させることが必須です。これは「賃上げ要件」です。
計算式:
給与支給総額年率向上率 = (当期給与支給総額 - 前年度給与支給総額)
÷ 前年度給与支給総額 × 100
≧ 1.5% 以上重要な読み方:
- 対象は「給与支給総額」(従業員全員の給与の合計)
- 経営者給与や役員報酬は原則含まれない(規定確認推奨)
- 昇進昇格による給与増は対象となる
具体例:
- 前年度給与支給総額:2億円
- 申請年度給与支給総額:2.04億円
- 増加分:400万円
- 向上率:400万円 ÷ 2億円 × 100 = 2.0%
この場合、2.0% ≧ 1.5% であるため、要件達成です。
要件③ 事業場内最低賃金の引上げ
補助対象経費を使用する全ての事業場で、事業場内最低賃金を「地域別最低賃金 + 30円」以上に設定し、申請時点で達成していることが必須です。
計算式:
事業場内最低賃金 ≧ 地域別最低賃金 + 30円重要な読み方:
- 地域別最低賃金は毎年引上げされるため、最新の厚生労働省公表値を確認する
- 複数事業場がある場合、「最も低い最低賃金」で判定する
- 申請時点で既に達成していることが必要(将来予定では不可)
具体例:
- 東京都の地域別最低賃金:1,163円(2024年10月現在)
- 必要な事業場内最低賃金:1,163円 + 30円 = 1,193円
- 現状の事業場内最低賃金が1,200円であれば要件達成
加点項目
補助金の採択確率を高めるため、以下の要件を満たすと審査で加点されます。
- 経営革新計画の承認を取得:中小企業等経営強化法に基づく計画の承認
- 事業継続力強化計画の認定を受ける:中小企業等経営強化法に基づく計画の認定
- 上記3要件で賃上げ要件をさらに上回る実績:例えば給与支給総額年3%以上など
これらの計画認定を事前に取得しておくと、試験出題でも「加点される」という知識が評価される傾向があります。
IT導入補助金の詳細
制度の役割と背景
IT導入補助金(2026年度より「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更)は、中小企業・小規模事業者がITツール(会計ソフト、POSレジ、顧客管理システムなど)を導入することで、業務効率化やデジタル化を実現するための補助金です。
背景:デジタル化が遅れている中小企業を支援し、生産性向上を実現することが政策目標です。IT導入補助金は「ベンダーを指定して申請する」という独特の仕組みが特徴です。
申請手続きの特徴:ベンダー共同申請
他の補助金と大きく異なる点は、中小企業が単独で申請できず、IT導入支援事業者(ベンダー)と共同で申請するという仕組みです。
プロセス:
- 中小企業がIT導入支援事業者を選定し、ツール導入の相談
- IT導入支援事業者がIT導入補助金の「カタログ」に登録されたツールを提案
- 中小企業とIT導入支援事業者が共同で補助金を申請
- 採択決定後、ツール導入を実施し、導入完了後に補助金を受領
この仕組みにより、「補助対象となるツール」と「補助対象外のツール」が明確に区別されます。
適用枠と補助上限
IT導入補助金には複数の申請枠があります。
| 申請枠 | 補助上限 | 補助率 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 通常枠(小規模) | 150万円未満 | 1/2 | 中小企業・小規模事業者 |
| 通常枠(大規模) | 150万~450万円 | 1/2 | 中小企業・小規模事業者 |
| インボイス枠 | 50万円 | 2/3 | 免税事業者がインボイス発行事業者に転換する場合の追加補助 |
補助対象経費と対象外経費
補助対象経費:
- ソフトウェア購入費(会計ソフト、販売管理システム等)
- クラウドサービス利用料(初年度は最大2年分まで)
- 導入サポート費、導入関連コンサルティング費
- ハードウェア購入費(PCやタブレット等、ただし一定条件)
補助対象外経費:
- 従業員研修費(自社で実施する研修)
- 3年目以降のクラウド利用料(初年度から2年分が上限)
- 既存システムの廃棄費、保守管理費
- 通信費、電気代などのランニングコスト
試験では「クラウド利用料は初年度から最大2年分」という上限規定が問われやすいため、注意が必要です。
小規模事業者持続化補助金の詳細
制度の役割と背景
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が経営計画に基づいて販路開拓や事業の持続的発展に取り組む場合、その経費の一部を補助する制度です。他の補助金と異なり、「小規模事業者限定」という点が特徴です。
背景:小規模事業者は経営基盤が脆弱で、市場変化への対応が難しいため、販売促進や経営改善を支援することで、事業継続を促進する政策です。
対象となる企業規模
「小規模事業者」の定義は業種によって異なります。これを明確に区別できることが試験では重要です。
| 業種 | 従業員数 |
|---|---|
| 商業・サービス業 | 常時5人以下 |
| 製造業等 | 常時20人以下 |
| その他の業種 | 業種により異なる |
重要な読み方:「常時」というのは、臨時雇用やパート・アルバイトも含めた通常状態での人数です。1人でも常時従事していれば、その人数に数えます。
補助額の種類
小規模事業者持続化補助金には複数の実施枠があり、補助額が異なります。
| 実施枠 | 補助上限 | 補助率 |
|---|---|---|
| 一般型・通常枠 | 50万円 | 2/3 |
| 一般型・賃上げ枠 | 200万円 | 2/3(条件達成で) |
| 一般型・インボイス枠 | 100万円 | 2/3(免税事業者対象) |
| 創業型 | 100万円 | 2/3 |
赤字企業特例:賃金引上げ特例(事業場内最低賃金を申請時より+50円以上引き上げること)を申請した事業者のうち、赤字決算の小規模事業者は、補助率が2/3から3/4に引き上げられます。単に赤字であるだけでは3/4にはなりません。
必須手続き:商工会・商工会議所の支援
小規模事業者持続化補助金の申請には、商工会または商工会議所による支援が必須です。
プロセス:
- 商工会・商工会議所に相談し、「経営計画」を策定
- 商工会・商工会議所から「支援確認書」を取得
- 支援確認書を添付して補助金を申請
- 採択後、補助金の対象事業を実施
商工会・商工会議所は全国に配置されており、小規模事業者向けの経営指導やプラン策定を無料で支援しています。
補助対象経費
販路開拓や事業持続に関連する経費が対象です。
例:
- 広告宣伝費(新聞広告、チラシ、デジタル広告)
- 展示会出展費(出展料、ブース装飾費)
- 店舗改装費(販売スペースの改修)
- 新商品開発に関するコンサルティング費
- ウェブサイト構築費
- 旅費(新規顧客開拓のための営業旅費)
試験では「何が補助対象か」が問われやすいため、「販路開拓・事業持続」というキーワードに結びつけて考えることが重要です。
省力化投資補助金の詳細
制度の役割と背景
中小企業省力化投資補助金は、人手不足に直面する中小企業が、汎用的な省力化設備を導入する場合に、その投資費用の一部を補助する制度です。比較的新しい補助金で、近年の労働人口減少対策として位置づけられています。
背景:日本全体で労働人口が減少する中、中小企業の経営を持続させるため、人手不足に対応する投資を支援する必要があるという政策判断です。
補助額と補助率
省力化投資補助金は、企業規模(従業員数)によって補助上限が異なります。
| 従業員規模 | 補助上限 | 補助率 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 200万円 | 1/2 |
| 6~20人 | 500万円 | 1/2 |
| 21人以上 | 1,000万円 | 1/2 |
賃上げ加算:給与支給総額を所定の水準以上引き上げることを達成すると、補助上限を1.5倍に引き上げることが可能です。例えば、従業員5人以下であれば、通常200万円の補助上限が、賃上げ達成で300万円に引き上げられます。
補助対象経費
省力化投資補助金の対象となる経費は、「汎用的な省力化設備」に限定されています。
補助対象経費:
- 省力化カタログに登録された汎用製品(機械、工具、ロボット等)
- 導入に関する工事費、設置費
- 導入後の保守契約費(初年度分)
- 導入コンサルティング費
補助対象外経費:
- オーダーメイド(特注品)設備(これはものづくり補助金の対象)
- リース費用(購入に限定)
- 既存設備の廃棄費
この補助金では「カタログ型」という仕組みがあり、事前に登録された汎用製品を購入する場合は、申請手続きを簡略化できます。
新事業進出補助金の詳細
制度の役割と背景
新事業進出補助金は、2024年度に廃止された「事業再構築補助金」の後継制度として、2025年度から新設されました。既存事業では対応できない新しい市場ニーズに対応するため、新分野進出や業種転換に取り組む中小企業を支援します。
背景:グローバル化と急速なデジタル化により、既存事業だけでは競争力を維持できない企業が増加しているため、事業転換を支援する必要があるという政策判断です。旧・事業再構築補助金は、新型コロナ対応から産業転換支援へシフトし、さらに経済構造の転換支援へ進化しました。
進出タイプの分類
新事業進出補助金の対象となる進出形態は3つに分類されます。
| 進出タイプ | 説明 | 具体例 |
|---|---|---|
| 新分野展開 | 既存事業とは異なる分野に進出 | 製造業が流通・小売業に進出 |
| 事業転換 | 事業の内容を大きく転換 | 飲食店が弁当のテイクアウト・デリバリー中心に転換 |
| 業種転換 | 既存の業種分類から別の業種に転換 | 建設業が福祉サービス業に転換 |
これらは「新事業進出補助金の対象になるかどうか」の判定で問われやすいため、区別できることが重要です。
基本要件:ものづくり補助金と同じ
新事業進出補助金の基本要件は、ものづくり補助金と同じです。
| 要件 | 基準 |
|---|---|
| 付加価値額年率向上 | 3%以上(補助金交付後3年間) |
| 給与支給総額年率向上 | 1.5%以上(3年間) |
計算方法もものづくり補助金と同様です。試験では「新事業進出補助金とものづくり補助金の要件が同じ」という理解が、問題解答の効率につながります。
補助上限と補助率
新事業進出補助金は、企業規模と進出の規模によって補助上限が複数段階用意されています。
| 企業規模 | 補助上限(最小) | 補助上限(中) | 補助上限(最大) | 補助率 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模企業者 | 2,500万円 | 4,000万円 | 9,000万円 | 2/3 |
| 中小企業 | 2,500万円 | 4,000万円 | 9,000万円 | 1/2 |
補助上限が3段階に分かれるのは、「新規事業の規模・リスク」に応じた差別化です。
補助対象経費
新事業進出に関する幅広い経費が対象となります。
例:
- 建物の改装・改築費(新事業用の施設改造)
- 機械装置・設備購入費(新事業に必要な機械)
- システム開発費(販売管理システムなど)
- 広告宣伝費(新事業の認知獲得)
- 人材採用・研修費(新事業に従事する人員確保)
ものづくり補助金が「製造プロセスの改善」に限定されるのに対し、新事業進出補助金は「事業全体の転換」を支援するため、対象経費がより広範です。
補助金と助成金の区別
中小企業向けの支援制度には「補助金」と「助成金」があり、両者は所管省庁、対象分野、支給方法が異なります。試験ではこの区別が出題される傾向があります。
比較表
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 所管省庁 | 経済産業省・中小企業庁(主に) | 厚生労働省(主に) |
| 対象分野 | 事業活動・投資・売上向上 | 雇用・労働環境改善・訓練 |
| 採択方式 | 競争的・公募審査あり | 条件達成で原則支給 |
| 原資 | 国の一般会計予算 | 雇用保険料 |
| 支給方法 | 精算払い(事業完了後) | 精算払い(要件達成後) |
| 年度変更 | 頻繁に変わることがある | 比較的安定 |
代表的な助成金
試験では「補助金か助成金か」を判定する問題が出るため、代表的な助成金を認識しておくことが重要です。
| 助成金名 | 所管 | 対象 | 支援内容 |
|---|---|---|---|
| キャリアアップ助成金 | 厚生労働省 | 有期雇用労働者 | 正社員化、処遇改善を支援 |
| 人材育成支援助成金 | 厚生労働省 | 全ての企業 | 従業員訓練、能力開発を支援 |
| 両立支援等助成金 | 厚生労働省 | 全ての企業 | 仕事と育児・介護の両立を支援 |
試験での区別ポイント
問題文から「補助金か助成金か」を判定する場合、以下のキーワードに注目します。
補助金の特徴的なキーワード:
- 「販路開拓」「設備投資」「製品開発」「デジタル化」
- 「経営計画」「商工会」「支援機関」
- 「小規模事業者」「中小企業」
助成金の特徴的なキーワード:
- 「従業員の研修」「正社員化」「雇用契約の変更」
- 「給与・処遇」「労働時間短縮」「育児・介護」
- 「人材確保」「雇用創出」
例えば、「従業員の正社員化を支援する」という問題が出たら、それは**助成金(キャリアアップ助成金)**です。補助金ではありません。
補助金申請の共通ルール
全ての補助金に共通する重要なルールが複数あります。試験では「補助金申請の実務」として出題されることがあります。
ルール① 事前着手禁止の原則
最も重要なルールが「交付決定前の事業実施は補助対象外」という原則です。
交付決定前の着手 → その経費は原則補助対象外具体例:
- 交付決定前に機械を発注・購入した → その支払いは補助対象外
- 交付決定前に工事を開始した → その期間の工事費は補助対象外
- 交付決定前に広告を出稿した → その広告費は補助対象外
申請時の対応: 事業計画書に「事業の着手は交付決定後の予定」と明記し、見積書や発注日が交付決定後であることを確認する仕組みになっています。これは「公正性」と「予算の確実な配分」を担保するためです。
ルール② GビズIDプライム取得
ほぼ全ての補助金申請に、GビズIDプライム取得が必須です。
GビズIDプライム = デジタル庁が運営するgbiz-id.go.jpで取得する電子申請用のID
取得期間:1~2週間重要な実務: 申請期限が迫ってからGビズID取得を始めると、取得完了前に申請期限が来てしまうため、事前取得が推奨されます。試験では「GビズIDプライムの取得が必須」という知識だけでなく、「タイミング重要」という実務的な理解も問われることがあります。
ルール③ 認定支援機関の活用
一部の補助金では、認定支援機関(中小企業診断士、税理士、金融機関等)による経営計画の承認が加点項目になります。
例:
- ものづくり補助金:経営革新計画の承認で加点
- ものづくり補助金:事業継続力強化計画の認定で加点
- 小規模事業者持続化補助金:商工会・商工会議所の支援(必須)
試験では「認定支援機関を活用すると加点される」という理解が、経営支援施策全体の効率性を示す知識として価値があります。
ルール④ 補助金は後払い(精算払い)
補助金は「事業完了後の精算払い」という仕組みです。
事業者が先に資金投入 → 事業完了 → 実績報告 → 審査 → 補助金支給つまり、「事業者が一度資金を出し、完工後に補助金が返ってくる」という流れです。資金繰りが厳しい企業は、つなぎ融資の活用を検討する必要があります。
ルール⑤ 継続的な報告義務
採択後、以下の報告が義務づけられます。
| 報告の種類 | タイミング | 内容 |
|---|---|---|
| 実績報告 | 事業完了後 | 成果物、領収書、購買証拠で実績を証明 |
| 事業化状況報告 | 最大5年間 | 補助事業の効果(売上増加、雇用など) |
| 売上高等の報告 | 定期的(年1回等) | 事業効果を数値で報告 |
要件未達成の場合: 付加価値額年3%や賃上げ1.5%などの要件を達成できない場合、補助金の返納(遡求)を求められることがあります。これは補助金の「効果測定」と「説責性」のための仕組みです。
試験での典型的なつまずきと対処法
試験合格者と不合格者を分ける、典型的なつまずきパターンを紹介します。
つまずき① 補助金名だけで判定する
NG例:「ものづくり補助金は製造業専用」と機械的に判定
改善: 制度の「目的」を確認してから判定する。ものづくり補助金は「革新的な製品・サービス開発」が軸であり、製造業だけでなく飲食業、サービス業でも、革新性があれば申請可能です。
問題例: 「ある飲食店が、AIを活用した新しい調理方法を開発する投資」→ 「ものづくり補助金か?」 → 答え:YES。革新的なプロセス改善であれば、飲食業でも対象。
つまずき② 補助上限だけで補助金を区別する
NG例:「補助上限が大きい = より多く支援される」
改善: 補助率と補助上限を組み合わせて考える。実際に企業が受け取る金額は、補助率に補助対象経費を掛けたものです。
計算例:
- A補助金:補助上限1,000万円、補助率1/2 → 対象経費2,000万円で、受取額1,000万円
- B補助金:補助上限200万円、補助率2/3 → 対象経費300万円で、受取額200万円
実際の投資が300万円の場合、A補助金では150万円(1/2)、B補助金では200万円(2/3)となり、B補助金の方が有利です。
つまずき③ 要件を「目標値」と勘違いする
NG例:「付加価値額年3%は達成すべき理想値」
改善: これは「必須要件」です。達成できないと交付決定を受けられません。申請時に「達成可能性」を厳密に検討する必要があります。
試験での問われ方: 「付加価値額年3%は、以下のうちどの段階で必須か」 → 答え:交付決定を受けるための必須要件(達成できないと申請不適格)
つまずき④ インボイス特例を見落とす
NG例:「小規模事業者持続化補助金の補助上限は50万円」
改善: 免税事業者がインボイス発行事業者に転換する場合、インボイス特例で50万円上乗せされます。
通常枠(通常企業):50万円
インボイス枠(免税事業者がインボイス転換):100万円
賃上げ枠:200万円つまずき⑤ 新事業進出補助金と事業再構築補助金を混同
NG例:「2025年度も事業再構築補助金で申請できる」
改善: 事業再構築補助金は2024年度で廃止。2025年度以降は「新事業進出補助金」に統合されました。
過去問への適用例
例題1:対象企業の判定
「従業員8人の飲食店が、新しい販売チャネル(配達・テイクアウト)の開発に取り組みたい。活用すべき補助金は何か。」
考え方:
- 経営課題は「販路開拓」 → 持続化補助金の候補
- 対象企業は「従業員8人」 → 商業等5人以下の定義外だが、特例枠あり
- 活動内容は「既存事業の新しい販路」 → 持続化補助金(一般型)
答え:小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠)
例題2:補助率と補助額の計算
「従業員25人の製造業が、ものづくり補助金で1,000万円の設備投資を申請した場合、補助額はいくらか。」
考え方:
- 企業規模「従業員25人」→ 中小企業(小規模企業者ではない)
- 補助率は「1/2」
- 補助額 = 1,000万円 × 1/2 = 500万円
(ただし、補助上限がある場合は上限内に制限される)
例題3:要件の適格性判定
「売上高10億円の企業が、ものづくり補助金申請に向けて、以下のデータで計画を立てた。付加価値額年率向上率は3%以上を達成できるか。
前年度:営業利益900万円、人件費1億8,000万円、減価償却費1,000万円 申請年度(見込み):営業利益950万円、人件費1億8,050万円、減価償却費1,200万円」
計算:
基準年度付加価値額 = 900 + 18,000 + 1,000 = 1.99億円(19,900万円)
申請年度付加価値額 = 950 + 18,050 + 1,200 = 2.02億円(20,200万円)
増加分 = 300万円
向上率 = 300万円 ÷ 19,900万円 × 100 = 1.51%
→ 3% 以上の要件に達していない(不適格)答え:NO。付加価値額向上率が1.51% < 3%のため、要件不足。
確認問題
問題1:補助金の選択
ある小規模事業者(従業員6人の小売業)が、既存の販売方法に加えて、SNS広告による新規顧客開拓に取り組もうとしています。適切な補助金と、申請時に最も重視すべき要件は何ですか?
想定される答え
補助金:小規模事業者持続化補助金
申請時に最も重視すべき要件:商工会または商工会議所の支援を受けて経営計画を策定すること。この補助金は商工会・商工会議所の経営指導を前提としており、支援確認書が必須。
理由:
- 対象が「小規模事業者」(従業員6人)で、補助金は販路開拓支援
- 他の補助金(ものづくり補助金は革新開発、IT導入補助金はITツール)の目的から外れている
- 補助率2/3で、比較的簡単な申請プロセスが特徴
問題2:ものづくり補助金の3つの要件
従業員20人の製造業が、ものづくり補助金を申請する場合、3つの必須要件を述べ、それぞれの計算方法を簡潔に説明してください。
想定される答え
要件① 付加価値額年率向上
- 基準:3%以上(補助金交付後3年間、毎年)
- 計算:(当期付加価値額 - 前年度付加価値額) ÷ 基準年度売上高
要件② 給与支給総額年率向上
- 基準:1.5%以上(補助金交付後3年間、毎年)
- 計算:(当期給与支給総額 - 前年度給与支給総額) ÷ 前年度給与支給総額
要件③ 事業場内最低賃金の引上げ
- 基準:事業場内最低賃金 ≧ 地域別最低賃金 + 30円
- 計算:地域別最低賃金(厚生労働省公表値)+ 30円で必要最低限を算出
重要な理解: 3つの要件は「すべて満たす必要がある」(AND条件)。いずれか一つでも未達成なら、交付決定を受けられない。
問題3:IT導入補助金の特徴
IT導入補助金の申請手続きが他の補助金と大きく異なる点は何か。また、補助対象経費と補助対象外経費を、それぞれ1つずつ例示してください。
想定される答え
他の補助金と異なる点: IT導入補助金は、中小企業が単独で申請できず、IT導入支援事業者(ベンダー)との共同申請が必須。中小企業がベンダーを選定し、ベンダーがカタログに登録されたツールを提案して、共同で申請する仕組みになっている。
補助対象経費の例:
- ソフトウェア購入費(会計ソフト、販売管理システム等)
- クラウドサービス利用料(初年度から最大2年分)
補助対象外経費の例:
- 従業員研修費(企業が独自に実施する研修)
- 3年目以降のクラウド利用料(初年度から2年分が上限)
試験での注意: 「クラウド利用料は初年度から最大2年分」という上限規定が頻出。3年目以降は補助対象外という制限を理解することが重要。
関連ページへのナビゲーション
このページで学んだ補助金の仕組みを踏まえて、次のページで経営支援施策全体を理解することをお勧めします。
- 中小企業政策:中小企業政策の全体枠組みと法体系
- 経営支援施策:補助金以外の融資、税制優遇、経営指導
- 金融支援制度:信用保証制度とマル経融資の詳細
- 事業承継・M&A支援:事業承継と補助金の組み合わせ
検証日と情報ソース
このページは、2026年3月29日に以下の一次情報に基づいて執筆・検証されました。
補助金の詳細要件は毎年度変更される傾向があります。受験年度の施策ガイドブックや公募要領で必ず最新情報を確認してください。
このページは役に立ちましたか?
評価とひとことを残してもらえると、内容と導線の改善に使えます。
Last updated on