中小企業経営・中小企業政策(令和2年度)
令和2年度(2020)中小企業診断士第1次試験 中小企業経営・中小企業政策の全23問解説
概要
令和2年度の中小企業経営・中小企業政策は全23問(各4点、92点満点)で出題されました。中小企業の経済的役割・統計(問1〜11)、中小企業政策・施策(問12〜23)という大きな二部構成です。
問題文は J-SMECA 公式サイト(令和2年度 中小企業経営・中小企業政策) から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。
解説の読み方
各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。
出題構成
| 領域 | 問番号 | 問数 |
|---|---|---|
| 中小企業の経済的役割・統計 | 1〜11 | 11 |
| 中小企業の経営課題 | 12〜14 | 3 |
| 中小企業金融・経営者保証 | 9, 15 | 2 |
| 下請け・商店街・小規模企業共済 | 16〜19 | 4 |
| 中小企業支援制度・施策 | 20〜23 | 4 |
全問分類マップ
| 問 | テーマ | 知識種類 | 思考法 | 形式層 | 罠パターン |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 中小企業の従業者・付加価値シェア | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L2 | Trap-D 混同誘発 |
| 2 | 小規模企業・個人事業者の割合と推移 | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L3 | Trap-D 混同誘発 |
| 3 | 研究開発費比率(業種・規模別) | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L2 | Trap-B 条件すり替え |
| 4 | CRD データと中小企業の財務分布 | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L3 | Trap-D 混同誘発 |
| 5 | 労働生産性(業種別推移) | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L2 | Trap-B 条件すり替え |
| 6 | 企業数規模分布と経営課題 | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L2 | Trap-D 混同誘発 |
| 7 | 企業規模別の経営課題 | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L2 | Trap-D 混同誘発 |
| 8 | EC(電子商取引)利用率 | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L2 | Trap-D 混同誘発 |
| 9 | 経営者保証と事業承継 | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L3 | Trap-D 混同誘発 |
| 10 | 新規経営担い手・起業動向 | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L3 | Trap-D 混同誘発 |
| 11 | 製造事業所数と付加価値 | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L2 | Trap-A 逆方向 |
| 12 | 中小企業白書の位置付け | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-C 部分正解 |
| 13 | 新規開業率と新規廃業率 | K5 制度・データ | T2 統計読解 | L2 | Trap-D 混同誘発 |
| 14 | 経営革新支援制度 | K4 因果メカニズム | T4 因果推論 | L2 | Trap-B 条件すり替え |
| 15 | 資本性劣後ローン | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 混同誘発 |
| 16 | 下請代金支払遅延等防止法 | K3 数式・公式 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-C 部分正解 |
| 17 | 経営承継円滑化法 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 混同誘発 |
| 18 | 商店街振興組合 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-C 部分正解 |
| 19 | 小規模企業共済制度 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-C 部分正解 |
| 20 | 中小企業法人税率特例 | K3 数式・公式 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-E 計算ミス |
| 21 | 中小企業等経営強化法 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-C 部分正解 |
| 22 | 中小企業地域資源活用促進法 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-C 部分正解 |
| 23 | 小規模事業者経営発達支援融資制度 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-C 部分正解 |
形式層の分布
| 形式層 | 問数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| L1 定義暗記 | 7 | 30% | 12, 15, 16, 17, 18, 20, 21 |
| L2 統計読解・制度理解 | 12 | 52% | 1, 3, 5, 6, 7, 8, 11, 13, 14, 19, 22, 23 |
| L3 複合分析 | 4 | 17% | 2, 4, 9, 10 |
統計・数字読解能力(K5)が全23問中12問(52%)を占め、T2(統計読解)の出題比率も52%と高い特徴的な年度です。L1(定義暗記)だけで取れるのは最大 28 点。合格ライン 60 点を超えるには L2(統計読解)+ L3(複合分析)の能力が不可欠です。
思考法の分布
| 思考法 | 問数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| T1 正誤判定 | 10 | 43.5% | 12,15,16,17,18,19,20,21,22,23 |
| T2 統計読解 | 12 | 52.2% | 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,13 |
| T4 因果推論 | 1 | 4.3% | 14 |
出題傾向: 統計読解(T2)が半数以上を占める年度。特に中小企業統計、経営革新支援、地域産業政策などのテーマで数字読解・比較分析が問われる。正誤判定(T1)と統計読解(T2)の二層構造が特徴。
罠パターンの分布
| 罠パターン | 問数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| Trap-A 逆方向 | 1 | 4.3% | 11 |
| Trap-B 条件すり替え | 3 | 13.0% | 3,5,14 |
| Trap-C 部分正解 | 7 | 30.4% | 12,16,18,19,21,22,23 |
| Trap-D 混同誘発 | 11 | 47.8% | 1,2,4,6,7,8,9,10,13,15,17 |
| Trap-E 計算ミス | 1 | 4.3% | 20 |
最重要な罠: Trap-D(混同誘発)が5割近く、複数施策や統計指標の混同が主要な出題パターン。中小企業基本法 vs 産業競争力強化法、小規模企業振興基本法など類似施策の区別や、統計データの誤読(前年度比 vs 前年度水準など)の混同を狙った問題が頻出。
中小企業の経済的役割と統計
第1問 中小企業の従業者・付加価値シェア
問題要旨: 2016年の経済センサス−活動調査に基づき、日本経済に占める中小企業の従業者数シェアと付加価値シェアを読み取る問題。
K5 制度・データ T2 統計読解 L2 Trap-D 混同誘発
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の経済的役割と統計 — 従業者シェアと付加価値シェアの大きさ
解法の思考プロセス: 中小企業定義(製造業は従業者300人以下、卸売業は100人以下、小売業は50人以下、サービス業は100人以下)に該当する企業の従業者数と付加価値額を、全体に占める割合で比較します。経済センサス−活動調査は5年ごとの大規模統計で、白書類に頻出の基準データです。一般的に「従業者数シェア > 付加価値シェア」という関係が成り立ちます(中小企業は数多いが、付加価値生産効率では大企業に劣るため)。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「従業者数 70%、付加価値 50%」と「従業者数 50%、付加価値 70%」を取り違えるケース。また「従業者数と付加価値はほぼ同率」という誤解も引っかかります。統計的事実を正確に記憶することが必須です。
学習アドバイス: 中小企業の役割を示す基本統計として、毎年の白書類に掲載される「従業者シェア約70%、付加価値シェア約50%」は必ず覚えておきましょう。この対比は、中小企業の「雇用面での重要性(高)vs. 生産性面での課題(低相対値)」を象徴しています。
第2問 小規模企業・個人事業者の割合と推移
問題要旨: 中小企業数全体に占める小規模企業と個人事業者の割合(空欄A、B)、および1999〜2016年の期間における小規模企業数・個人事業者数の業種別推移を読み取る複合問題(設問1〜3)。
K5 制度・データ T2 統計読解 L3 Trap-D 混同誘発
正解: 設問1: 公式発表を確認してください / 設問2: 公式発表を確認してください / 設問3: 公式発表を確認してください
必要知識:
- 中小企業の経済的役割と統計 — 小規模企業の定義と割合
- 中小企業の産業トレンド — 業種別の企業数動向
解法の思考プロセス:
設問1 — 空欄A(小規模企業の割合)とB(個人事業者の割合)は統計データから直接読み取ります。一般的に、中小企業の8〜9割が小規模企業で、そのうち5〜7割が個人事業者という構成です。
設問2 — 1999〜2016年の期間で、小売業は大幅に減少(デフレ下での店舗閉鎖、EC化)、建設業は増減、製造業は減少という傾向が一般的です。
設問3 — 個人事業者数は全体で約4〜6割減少しており、特に小規模企業層の減少が顕著なケースが多くみられます。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 複数の設問で異なる統計値が問われるため、「設問1で読み取った割合」と「設問2〜3で読み取った推移方向」を混同しやすい。各設問で異なるグラフ・表を読む必要があることを認識しましょう。また「小規模企業数は減少」と「個人事業者数は増加」を取り違えるケースも多発します。
学習アドバイス: この問題は「統計複合読解」の代表例です。各設問で視点を切り替えながら、一貫した経済ストーリー(デフレ下での企業淘汰、個人事業者の減少)を背景に理解することが、選択肢を絞る鍵になります。白書の「中小企業の経営の現状」章を複数年度読み比べると、トレンドが鮮明になります。
第3問 研究開発費比率(業種・規模別)
問題要旨: 経済産業省「企業活動基本調査」に基づき、1994〜2016年度の期間における研究開発費比率(売上高に占める研究開発費の割合)を、企業規模(大企業 vs. 中小企業)と業種(製造業 vs. 非製造業)で比較する問題。
K5 制度・データ T2 統計読解 L2 Trap-B 条件すり替え
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の産業トレンド — 研究開発投資の業種別・規模別特性
解法の思考プロセス: 調査対象を確認(従業者50人以上かつ資本金3,000万円以上)した上で、4つの軸で比較します。
- 製造業における大企業 vs. 中小企業:一般に大企業が上回る
- 非製造業における大企業 vs. 中小企業:業種によって異なるが、ソフトウェア・情報通信では中小企業が高いケースもある
- 時系列の推移:1990年代後半からの長期トレンド
選択肢は「ア 両産業とも大企業優位」「イ 両産業とも中小企業優位」「ウ 製造業は大企業、非製造業は中小企業」「エ 製造業は中小企業、非製造業は大企業」のように、産業別に相対関係を問う構造が一般的です。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「製造業全体では大企業が優位だが、電子部品など特定業種では中小企業も高い」という条件分岐を無視し、「製造業はすべて大企業優位」と単純化するケース。問題文で「業種別」と「企業規模別」の両軸が明示されていることを見落としがちです。
学習アドバイス: 研究開発投資は、中小企業の「経営課題」として頻出テーマです。中小企業は研究開発費を出しにくい傾向(資金制約、人材確保困難)があることを背景知識として持つと、統計値の意味が理解しやすくなります。
第4問 CRDデータと中小企業の財務分布
問題要旨: 中小企業庁が信用保証協会・金融機関のデータベース(CRDデータ)を活用した分析に基づき、中小企業の売上高・営業利益・総資産・純資産の分布特性(中央値 vs. 平均値)と、営業利益の推移(リーマンショック前後の赤字企業割合)を読み取る複合問題(設問1〜2)。
K5 制度・データ T2 統計読解 L3 Trap-D 混同誘発
正解: 設問1: 公式発表を確認してください / 設問2: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の経営課題 — 中小企業の収益性・財務構造の現状
解法の思考プロセス:
設問1 — 売上高・営業利益と総資産・純資産の分布形状の違いを読み取ります。一般的に、売上・利益は右裾野の長い分布(平均値 > 中央値)を示し、総資産・純資産は左裾野が長い可能性があります(少数の大企業が資産を支配)。
設問2 — リーマンショック(2008〜2009年)後、赤字企業割合が2009年度に約50%前後に達し、その後漸減するパターンが一般的です。2016年度時点での低下幅を正確に読み取ることが鍵。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「売上高と営業利益の分布形状は同じ」と誤認し、ウ・エの選択肢を混同するケース。また、リーマンショックの影響の時期ずれ(2009年度が最悪ではなく2008〜2010年度にかけて段階的に悪化)を読み違えるリスクもあります。
学習アドバイス: CRDデータは信用保証協会を通じた小規模企業や融資困難企業の情報を多く含むため、統計的に「より困窮した中小企業」の分布を示しています。その特性(selection bias)を理解した上で、グラフから平均値・中央値の相対関係を判定することが重要です。
第5問 労働生産性(業種別推移)
問題要旨: 財務省「法人企業統計調査年報」に基づき、2003〜2017年度の期間における中小企業(資本金1億円未満)の業種別労働生産性(従業員一人当たり付加価値額)の推移を読み取る問題。
K5 制度・データ T2 統計読解 L2 Trap-B 条件すり替え
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の産業トレンド — 業種別生産性の動向
解法の思考プロセス: 5つの業種(建設業、卸売業、製造業、小売業、サービス業)について、それぞれ上昇・下降・横ばいのいずれかを判定します。一般的に:
- 製造業:中程度の上昇
- 卸売業:比較的安定
- 建設業:景気に応じた変動
- 小売業:構造的に停滞傾向(デフレ、競争激化)
- サービス業:業種内格差が大きい
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「すべての業種が上昇」と「すべての業種が下降」のどちらかに偏った選択肢に惑わされやすい。実際には業種ごとに異なる動きを示すため、各業種の個別トレンドを正確に読む必要があります。また「小売業は上昇」と「小売業は下降」を単純に判定するのではなく、長期的な傾向を見極めることが重要です。
学習アドバイス: 労働生産性は「ものづくり政策」「中小企業支援政策」の根拠となる重要指標です。各業種の生産性が産業構造の変化(サービス化、デジタル化)にどう反応しているかを理解することで、政策問題(問12〜23)との結びつきも明確になります。
第6問 企業数規模分布と経営課題
問題要旨: 中小企業庁の調査に基づき、中小企業の従業者規模別分布と、規模別に見た主要な経営課題の構成を読み取る問題。
K5 制度・データ T2 統計読解 L2 Trap-D 混同誘発
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の経営課題 — 経営課題の規模別・業種別特性
解法の思考プロセス: 企業数分布では、最大値が従業者数10人未満〜20人未満の層に集中していることが一般的です。また、経営課題は規模別に異なり:
- 小規模企業:人材確保・育成、後継者問題、資金調達
- 中規模企業:設備投資、事業承継、国際化
複数の棒グラフ・円グラフから、これらの対応関係を読み取ります。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「最大の企業数階層」と「最大の経営課題」を異なる軸で比較し、混同するケース。例えば「従業者10人未満が全体の50%を占める」一方で「人材確保課題を挙げている企業は全体の30%」という非対応を見落としやすいです。
学習アドバイス: 白書の「中小企業の経営環境」や「経営課題」の章では、規模別・業種別クロス集計が多用されます。各グラフの軸(横軸:企業規模 vs. 経営課題の種類、縦軸:企業数 vs. 課題の深刻度)を正確に読み分ける習慣をつけましょう。
第7問 企業規模別の経営課題
問題要旨: 企業規模(従業者数)別に見た経営課題の回答率・優先度を比較する問題。小規模企業と中規模企業、あるいは中規模企業と大企業の経営課題の違いを読み取ります。
K5 制度・データ T2 統計読解 L2 Trap-D 混同誘発
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の経営課題 — 経営課題の規模別特性
解法の思考プロセス: 複数の経営課題(人材確保、事業承継、資金調達、販路開拓、設備投資など)について、小企業と中企業の間で優先度の順序が変わるパターンを読み取ります。例えば:
- 小規模企業:人材確保が最大課題(中小企業全体でも最多)
- 中規模企業以上:販路開拓・事業承継が相対的に重要度を増す
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「課題の絶対数」と「課題の相対的優先度」を混同するケース。小規模企業でも中規模企業でも「人材確保」が課題ですが、その重要度の相対的順位は異なります。
学習アドバイス: 第6問・第7問は連続した統計問題として出題されることが多いです。両問を通じて「企業規模による経営環境の相違」という統一テーマを理解することが、効率的な学習につながります。
第8問 EC(電子商取引)利用率
問題要旨: 総務省「通信利用動向調査」に基づき、中小企業(従業者100〜299人)と大企業(従業者300人以上)のEC利用状況と、利用目的(企業からの調達、企業への販売、一般消費者への販売)の構成を読み取る問題。
K5 制度・データ T2 統計読解 L2 Trap-D 混同誘発
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の産業トレンド — デジタル化・EC利用動向
解法の思考プロセス:
- 全体的なEC利用率:中小企業 30%程度、大企業 50%程度という規模別格差
- 利用目的の構成:「企業からの調達」>「企業への販売」>「一般消費者への販売」が一般的だが、企業規模による違いを読み取る
選択肢の構造は、中小企業と大企業の各利用目的の相対関係を問うものになります。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「中小企業は B2B(企業間取引)中心だから、一般消費者への販売は低い」という一般的直感と、実際のグラフが異なるケースに惑わされやすい。また「中小企業は3割、大企業は5割」という数字を確実に記憶していないと、選択肢の「6割」「8割」などの誘導に引っかかります。
学習アドバイス: EC利用率は「デジタル化対応」という中小企業政策の重要なテーマです。後半の政策問題(問12〜23)で「生産性向上」「経営革新」などが取り上げられる背景に、このような統計的課題認識があることを意識しましょう。
第9問 経営者保証と事業承継
問題要旨: 金融庁・中小企業庁の調査に基づき、融資時の経営者保証の動向(保証に依存しない融資の割合)と、事業承継時の「二重徴求」(旧経営者と新経営者両方から保証を徴求)の割合を読み取る複合問題(設問1〜2)。
K5 制度・データ T2 統計読解 L3 Trap-D 混同誘発
正解: 設問1: 公式発表を確認してください / 設問2: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業金融支援 — 経営者保証ガイドライン、二重徴求問題
解法の思考プロセス:
設問1 — 2014年2月の「経営者保証に関するガイドライン」開始以降、民間金融機関と政府系金融機関の保証に依存しない融資割合の推移を読み取ります。一般的に政府系金融機関の方が先行して高い割合を示し、その後民間金融機関も追随します。
設問2 — 事業承継時における二重徴求の割合(A)と、新経営者が保証を提供するケース全体の割合(B)を数値で読み取ります。二重徴求は減少傾向ですが、新経営者の保証負担は依然として高い水準にあります。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 設問1の「保証に依存しない融資割合」と設問2の「保証を提供するケース」を逆に読むケース。また「民間金融機関が政府系より高い」と「政府系が民間より高い」を取り違えるリスクもあります。
学習アドバイス: この問題は「経営者保証ガイドライン」という政策施策の実効性を統計で検証する問題です。後半の問17(経営承継円滑化法)と合わせて、事業承継支援制度の全体像を理解することが重要です。
第10問 新規経営担い手・起業動向
問題要旨: 総務省「就業構造基本調査」に基づき、2007・2012・2017年の期間における「新たな経営の担い手」の推移と業種別構成、および男女別起業家数の推移を読み取る複合問題(設問1〜2)。
K5 制度・データ T2 統計読解 L3 Trap-D 混同誘発
正解: 設問1: 公式発表を確認してください / 設問2: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の起業・廃業動向 — 起業家数の動向、業種別・男女別の特性
解法の思考プロセス:
設問1 — 「新たな経営の担い手」(過去1年間に職を変えて役員または自営業主になった者)の減少トレンドを読み取ります。減少の加速度(2007〜2012年 vs. 2012〜2017年)と、運輸業・建設業・小売業・情報通信業などの業種別構成割合の推移を比較します。
設問2 — 起業家(自分で事業を起こした者)の男女別推移では、男性が減少傾向、女性が横ばいまたは増加傾向を示すことが一般的です。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 設問1と設問2が異なる定義(「新たな経営の担い手」 vs. 「起業家」)を使用していることを見落とし、同じトレンドだと誤認するケース。また業種別構成割合の変化(「運輸業の割合が上昇」など)を、業種別の企業数の増減と混同しやすいです。
学習アドバイス: 起業家数の減少は「デモグラフィック課題」と「経済環境」(低成長、雇用流動性の低下)の複合効果を反映しています。後半の問12(中小企業白書)や問14(経営革新支援)の背景を理解するための基礎統計として機能しています。
第11問 製造事業所数と付加価値
問題要旨: 経済産業省「工業統計」に基づき、1989〜2016年の期間における製造事業所数と1事業所当たり付加価値額の推移を読み取る問題。
K5 制度・データ T2 統計読解 L2 Trap-A 逆方向
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の産業トレンド — 製造業の構造変化、事業所数と生産性
解法の思考プロセス: 2つの指標の推移方向を正確に読み取ります:
- 製造事業所数:1989年比での変化(減少傾向が一般的)
- 1事業所当たり付加価値額:同期間での変化(増加傾向が一般的 = 1事業所の規模・生産性が上昇)
つまり「事業所数は減少しているが、残存する事業所の生産性は上昇」という「産業の高度化」パターンが典型的です。
誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 「事業所数が減少 → 付加価値も減少する」と因果関係を単純化するケース。実際には事業所数が減少しても、1事業所当たりの付加価値が増加する構造合理化が進行しています。また「付加価値が増加 → 事業所数も増加する」と逆に誤認するリスクもあります。
学習アドバイス: この問題は「統計読解」と「経済学的直感」の衝突を避けるための訓練問題です。「事業所数と付加価値の変化は独立している」という統計リテラシーを養うことが重要です。
中小企業政策と支援制度
第12問 中小企業白書の位置付け
問題要旨: 中小企業白書の法定性質、報告対象、対象期間などについての定義問題。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-C 部分正解
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業白書の読み方 — 白書の定義と作成根拠
解法の思考プロセス: 中小企業白書は「中小企業基本法」第11条の規定に基づいて、毎年国会に報告される法定書類です。以下の知識を当てはめます:
- 毎年度作成・報告される
- 前年度を中心とした統計・分析を掲載
- 経営課題、政策課題を複合的に扱う
選択肢では「中小企業基本法」「毎年国会報告」「前年度統計中心」などのキーワードを含む正答を探します。
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「中小企業白書は統計書である」という部分正解が正答に見えるケース。実際には白書は「統計 + 分析 + 政策提言」の複合体です。また「毎年報告」と「数年ごと報告」を取り違えるリスクもあります。
学習アドバイス: 中小企業白書は本試験の統計問題(問1〜11)の根拠資料であり、また政策問題(問13〜23)の理論的背景でもあります。白書の位置付けを正確に理解することで、出題者の視点が理解しやすくなります。
第13問 新規開業率と新規廃業率
問題要旨: 総務省「就業構造基本調査」に基づき、新規開業率(前年比で新たに開業した企業の割合)と新規廃業率(前年比で廃業した企業の割合)の推移を読み取る問題。
K5 制度・データ T2 統計読解 L2 Trap-D 混同誘発
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の起業・廃業動向 — 開業率・廃業率の動向
解法の思考プロセス: 新規開業率と新規廃業率の相対的大小関係、および時系列での推移パターンを読み取ります。一般的に:
- 廃業率 > 開業率(企業数が減少傾向)
- 景気変動による増減(不景気で開業率が低下、廃業率が上昇)
- 業種による差異(サービス業は開業率が高い傾向)
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「開業率と廃業率はほぼ同水準」と「開業率が廃業率を上回る」という直感的な誤認。統計的事実は「廃業率が開業率を上回り、企業数が減少傾向」であることが多いです。
学習アドバイス: 開業率・廃業率は「企業の動態」を示す重要指標です。これが低迷している背景には「起業家精神の低下」「経営リスク回避」「人口減少」などの複合要因があります。後続の問14(経営革新支援)の施策が、なぜ開業支援に重点を置くのかという文脈理解につながります。
第14問 経営革新支援制度
問題要旨: 「経営革新に関する法律」に基づく支援制度の目的、対象、支援内容についての因果推論問題。
K4 因果メカニズム T4 因果推論 L2 Trap-B 条件すり替え
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業支援の枠組み — 経営革新の定義、支援対象
解法の思考プロセス: 「経営革新」が何を意味するか(商品・サービスの新規開発 vs. 既存事業の改善)と、都道府県知事の承認を得た場合にどのような支援が受けられるか(金融支援、税制優遇、補助金)を理解します。
選択肢では「新規開業」と「既存企業の事業転換」の違い、また「支援の申請手続き」と「支援内容」が混同されている罠が設置されています。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「経営革新支援は新規開業のみ対象」と「既存企業も対象」の条件をすり替えるケース。また「市町村長認定」と「都道府県知事認定」を混同する引っかけもあります。
学習アドバイス: 経営革新支援制度は「成長支援」の基本的な枠組みです。似た名称の制度(ものづくり補助金、経営力向上計画など)との違いを整理することが、制度との識別精度を高めます。
第15問 資本性劣後ローン
問題要旨: 資本性劣後ローン(会社の経営課題解決のための融資で、返済順序が劣後する特殊なローン)の定義と特性についての正誤判定問題。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業金融支援 — 資本性劣後ローンの定義と機能
解法の思考プロセス: 資本性劣後ローンは:
- 普通の融資(借入金)であるが、貸借対照表上は「自己資本同等」と扱われる
- 設備投資、人材育成、事業承継などの経営課題解決に使途が限定される
- 返済期間が長く(10年以上)、返済猶予期間を設ける
- 利息支払い前の赤字でも元本返済猶予が可能な場合がある
選択肢では「株式発行」と「融資」の法的性質を取り違える罠、また「自己資本」と「自己資本同等」の扱いの違いが問われます。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「資本性劣後ローンは株式である」と「融資である」を混同。また「金融機関の判断で返済条件を変更できる」と「法定されている」条件を取り違えるケースもあります。
学習アドバイス: 資本性劣後ローンは「自己資本を増やしたい企業」にとって有力な選択肢です。経営者保証問題(問9)と組み合わせて学ぶと、中小企業融資の全体像が理解しやすくなります。
第16問 下請代金支払遅延等防止法
問題要旨: 「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)の適用対象、親事業者の義務、禁止行為についての複合問題(設問1〜2)。
K3 数式・公式 T1 正誤判定 L1 Trap-C 部分正解
正解: 設問1: 公式発表を確認してください / 設問2: 公式発表を確認してください
必要知識: 公正取引と下請け支援 — 下請法の規定と適用要件
解法の思考プロセス:
設問1 — 下請法の基本的な義務を正誤判定します。親事業者の義務:
- 発注時に書面交付(必須)
- 給付受領から60日以内の支払い(法定)
- 禁止行為:発注書修正の強制、代金減額、返品強要などの全15項目
- 遅延利息支払いは「親事業者の一方的な約定」では無効
設問2 — 下請法の適用対象を正確に理解します:
- 資本金による区分(親事業者と下請事業者の資本金差)
- 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4類型
- 金額要件(3万円以上)
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「親事業者は支払期日を60日以内で定めなければならない」という部分正解が正答に見えるケース。実際には「給付受領日から60日以内で、かつできるだけ短期間」という二重要件があります。また「遅延利息支払い」が「親事業者の任意」か「法定義務」かを混同するリスクもあります。
学習アドバイス: 下請法は「小規模事業者保護」の具体的な法制度です。中小企業が「親事業者」になる場合の義務と、「下請事業者」になる場合の権利を両面で理解することが重要です。過去問では下請法の正確な条件を問う出題が頻出なので、法文の正確な読解が必須です。
第17問 経営承継円滑化法
問題要旨: 「経営承継円滑化法」に基づく事業承継支援の内容(遺留分特例、経営革新支援、信用保証枠拡大、相続税納税猶予)についての正誤判定問題。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 事業承継とM&A支援 — 経営承継円滑化法の支援内容
解法の思考プロセス: 経営承継円滑化法の4つの柱を理解します:
- 遺留分に関する民法の特例(後継者に承継財産を集中させるための民法特例)
- 事業承継に伴う経営革新支援(3分の1補助など)
- 信用保証の別枠化(実質的な融資枠拡大)
- 相続税・贈与税の納税猶予・免除(都道府県知事認定要件)
選択肢では「納税猶予」と「納税免除」、また「補助金比率」(3分の1 vs. 2分の1)などの詳細が問われます。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「信用保証枠拡大」と「融資実行」を混同。また「相続税の全額免除」と「一定条件下での納税猶予」を誤認するケースが多発します。さらに「経営承継円滑化法の認定」と「事業承継ガイドラインの普及啓発」を混同する引っかけもあります。
学習アドバイス: 経営承継円滑化法は「事業承継対策の総合窓口」です。問9(経営者保証ガイドライン)、問14(経営革新支援)と組み合わせて、「事業承継の課題 → その解決を支援する複数の制度」というマッピングを構築することで、個別制度の正確性が高まります。
第18問 商店街振興組合
問題要旨: 「商店街振興組合法」に基づく商店街振興組合の設立要件、組織的特性(議決権、法人形態)についての正誤判定問題(設問1〜2)。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-C 部分正解
正解: 設問1: 公式発表を確認してください / 設問2: 公式発表を確認してください
必要知識: 商店街振興とコミュニティ — 商店街振興組合の定義と法制度
解法の思考プロセス:
設問1 — 設立要件を正確に理解します:
- 1地区に複数の組合設立は可能(「2つまで」という制限はない)
- 発起人数:7人以上
- 組合員資格:資格を有する者の「3分の2以上」(「3分の1以上」ではない)
- 小売商業又はサービス業の構成:全体の「2分の1以上」
- 一定地区要件:「商店街が形成されている地域」
設問2 — 組織特性:
- 法人形態:中小企業等協同組合法に基づく法人(株式会社への変更は認められていない)
- 議決権:「出資比例」ではなく「組合員平等」(原則1組合員1票)
- 名称:「商店街振興組合」を含める必須
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「商店街振興組合は協同組合である」という部分正解が正答に見えるケース。また「議決権は出資比例」という一般的な会社法の原則を、協同組合法に誤適用するリスクがあります。
学習アドバイス: 商店街振興組合は「協同組合」という特殊な法人形態です。株式会社(出資比例議決権)との違いをはっきり理解することが、設問1と設問2の両方の正答につながります。
第19問 小規模企業共済制度
問題要旨: 小規模企業共済制度の加入対象、掛金、共済金の受け取り方法などについての正誤判定問題(設問1〜2)。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解
正解: 設問1: 公式発表を確認してください / 設問2: 公式発表を確認してください
必要知識: 小規模企業共済制度 — 加入要件、掛金、共済金
解法の思考プロセス:
設問1 — 加入対象者を個別判定します:
- 個人事業主:常時使用従業員「20人以下」(「10人」では対象外)
- 共同経営者:同上
- 企業組合・事業協同組合の役員:「従事する組合員数20人以下」
- 会社役員:常時使用従業員「20人以下」の「資本金5,000万円以下」
- 常時使用従業員10人の製造業個人事業主は対象(該当)
設問2 — 制度内容:
- 掛金:月額1,000円〜70,000円の範囲(500円単位で選択、「定額10,000円」ではない)
- 共済金受け取り:一括・分割・一括分割併用から選択可能
- 掛金控除:税法上の「小規模企業共済等掛金控除」として、課税所得から全額控除
- 貸付制度:掛金総額の「10倍」程度の範囲(正確には7〜10倍の場合区分)
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「掛金は全額控除」が正答に見えるが、実際には「税率を乗じて計算した税額から控除」(所得控除)ではなく、「課税所得計算時に控除」(人的控除)です。また「掛金は定額10,000円」と「最低額1,000円から選択可能」を混同するケースが多発します。
学習アドバイス: 小規模企業共済制度は「経営者の退職金制度」として、個人事業主・経営者にとって実務的に重要な制度です。本試験では掛金額の上限・下限、共済金受け取り方法の正確性が頻出なので、制度パンフレットで詳細を確認しておくことをお勧めします。
第20問 中小企業法人税率特例
問題要旨: 中小企業者等の法人税率引き下げ措置の対象企業要件(資本金等の額)と、優遇措置の内容(所得区分と税率)についての正誤判定問題(設問1〜2)。
K3 数式・公式 T1 正誤判定 L1 Trap-E 計算ミス
正解: 設問1: 公式発表を確認してください / 設問2: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業の税制支援 — 法人税率特例の対象と内容
解法の思考プロセス:
設問1 — 対象企業要件:資本金又は出資金の額が「1億円以下」の法人等(「3千万円以下」「5千万円以下」「3億円以下」との選択肢が散在)
設問2 — 措置内容(令和2年時点):
- 年所得「800万円以下」の部分:法人税率「15%」(本則19%)
- 年所得「800万円超」の部分:本則税率(19%)
- 「1,000万円以下」「19%」などの誘導選択肢
特に時間経過とともに措置の有効期限(「令和3年3月31日まで」など)が変わるため、問題年度の正確な措置内容を確認が必須。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: 「800万円」と「1,000万円」の所得区分を混同。また「15%(軽減税率)」と「19%(本則)」の税率を入れ違えるケース。さらに「令和3年3月31日までの措置」という時限措置の有効期限を問題年度に合わせて正確に判断する必要があります。
学習アドバイス: 法人税率特例は「中小企業支援の重要な施策」ですが、措置の内容・有効期限が政策改正に伴って変わる可能性があります。試験当年の税制改正大綱、国税庁・経済産業省の公告を必ず確認してから学習することが重要です。
第21問 中小企業等経営強化法
問題要旨: 「中小企業等経営強化法」に基づく支援制度の枠組み(経営力向上計画 vs. 生産性向上計画、事業分野別指針 vs. ガイドライン)についての正誤判定問題。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-C 部分正解
正解: 公式発表を確認してください
必要知識: 中小企業支援の枠組み — 経営強化法の計画類型と指針
解法の思考プロセス: 中小企業等経営強化法の基本構造:
- 計画名:「経営力向上計画」(「生産性向上計画」ではない)
- 指針:「事業分野別指針」(「ガイドライン」ではない)
- 対象:全般的な中小企業・小規模事業者(特定産業限定ではない)
選択肢では「経営力向上」と「生産性向上」の用語が混在し、また「指針」と「ガイドライン」の区別が曖昧な罠が設置されています。
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「中小企業の生産性向上を支援する」という部分的な説明が含まれているため、「生産性向上計画」という誘導選択肢に引き込まれやすいです。また「中小サービス事業者向けのガイドライン」という実在する施策と混同するリスクもあります。
学習アドバイス: 経営強化法は「生産性向上計画」の枠組み外で、より広い「経営力向上」を対象とした法律です。制度の名称と計画のタイプを正確に対応させることが、問題を解く鍵になります。
第22問 中小企業地域資源活用促進法
問題要旨: 「中小企業地域資源活用促進法」に基づく支援制度の対象となる「地域産業資源」の定義、計画のタイプ(事業計画 vs. 支援事業計画)、支援措置についての複合問題(設問1〜3)。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解
正解: 設問1: 公式発表を確認してください / 設問2: 公式発表を確認してください / 設問3: 公式発表を確認してください
必要知識: 地域資源活用と産業振興 — 地域資源の定義、計画類型
解法の思考プロセス:
設問1 — 地域産業資源の定義:
- 農林水産物:含まれる
- 鉱工業品:含まれる
- 鉱工業品の生産に係る技術:含まれる
- 自然の風景地:含まれる (つまり、選択肢エの「いずれも含まれる」が正答の可能性が高い)
設問2 — 計画作成主体:
- 「地域産業資源活用事業計画」:事業者(個人・法人・組合など、幅広い形態)が作成
- 「地域産業資源活用支援事業計画」:地域資源活用支援機関(商工会、商工会議所、金融機関など)が作成
選択肢では「NPO法人」「一般財団法人」「一般社団法人」「企業組合」などの法人形態別に、どの計画を作成できるかが問われます。
設問3 — 受けられる支援:
- 固定資産税の特例:含まれる可能性
- 地域団体商標の登録料減免:含まれる可能性
- JETRO支援:含まれない可能性
- 都道府県による融資制度:含まれる可能性
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「自然の風景地は地域産業資源に含まれない」という部分的に正しそうな記述が罠になります。実際には「観光資源としての自然景観」は含まれます。また「一般社団法人は事業計画を作成できない」と「支援機関のみが支援事業計画を作成」を混同するケースも多発します。
学習アドバイス: この法律は「地域の特色ある資源を活用した新ビジネス開発」を支援する仕組みです。地方創生・地域活性化の文脈で重要性が増している制度です。地域産業資源の幅広い定義と、複数の計画タイプを持つ仕組みをしっかり理解することが、3つの設問すべてに対応する基礎になります。
第23問 小規模事業者経営発達支援融資制度
問題要旨: 小規模事業者経営発達支援融資制度の加入要件、対象資金、貸付限度額についての正誤判定問題(設問1〜2)。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解
正解: 設問1: 公式発表を確認してください / 設問2: 公式発表を確認してください
必要知識: 小規模企業支援制度 — 経営発達支援融資制度の要件と内容
解法の思考プロセス:
設問1 — 加入要件(不適切な選択肢を選ぶ問題):
- 先端設備導入計画:含まれる要件
- 人材育成参加:含まれる要件
- 経営発達支援計画の認定と商工会等からのフォローアップ:含まれる要件
- 一定の雇用効果が認められる:含まれない可能性(「地域経済の活性化のための」という限定は過度)
設問2 — 対象資金と限度額:
- 対象資金:「設備資金」単独か「設備資金及びそれに付随する運転資金」か
- 貸付限度:「3,600万円」か「7,200万円」か
この制度は「先端設備導入税制」などと連動しており、2019年の制度拡充で限度額が引き上げられた可能性があるため、問題年度の正確な措置内容確認が必須。
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「地域経済の活性化のための一定の雇用効果」という要件が「必須要件」か「参考情報」かの区別が曖昧です。設問1では「最も不適切なもの」を選ぶため、この項目が他より「過度に限定的」であることを判定する必要があります。また「設備資金のみ」と「運転資金を含む」の違いを見落とすケースも頻出です。
学習アドバイス: この制度は「生産性向上」と「経営安定」の両立を目指す融資制度です。商工会・商工会議所との「経営発達支援計画」認定を通じた伴走支援が特徴です。後段の問21(経営強化法)や問22(地域資源活用法)と合わせて、「政策支援の全体フレームワーク」として理解することで、個別制度の意義が明確になります。
年度総括
令和2年度の中小企業経営・中小企業政策は、以下の特徴を持ちます:
- 統計読解能力が全篇を貫く: K5(制度・データ)が全23問中12問(52%)を占め、加えてT2(統計読解)が52%を占めるなど、統計・データ系の出題比率が高い年度です。白書、経済センサス、調査年報などの統計データを正確に「読む」能力が合格の鍵です。
- 二部構成の明確な分化: 前半(問1〜11)は統計中心、後半(問12〜23)は法制度・支援制度中心という構成です。前半でのリード確保が、後半への心理的余裕につながります。
- 政策施策の法的正確性: 問16〜23は「制度の細目」(資本金要件、掛金上限、適用対象)の正確な暗記を求めます。「ほぼ正しい」という曖昧さは許されません。
- 事業承継の複合的扱い: 問9(経営者保証)、問17(経営承継円滑化法)、問15(資本性劣後ローン)が分散配置され、「事業承継の課題と支援」というテーマの多角的理解を試します。
- 業種別・規模別クロス分析: 問1〜11の統計問題では、複数の軸(製造業 vs. 非製造業、大企業 vs. 中小企業、業種別、規模別)を同時に読み取る能力が求められます。
分類タグの凡例
知識種類(K)
| タグ | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| K1 定義・用語 | 概念の正確な理解 | 「経営革新」「資本性劣後ローン」の定義 |
| K2 グラフ形状 | グラフの幾何的特性 | 曲線が右上がりか左上がりか |
| K3 数式・公式 | 計算公式の適用 | 乗数計算、所得計算 |
| K4 因果メカニズム | 経済現象の作用・反作用 | IS-LM分析、政策波及 |
| K5 制度・データ | 統計値、法定基準値、制度の要件 | 中小企業シェア、加入要件、資本金基準 |
思考法(T)
| タグ | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| T1 正誤判定 | 記述の正誤を判定 | 「正しい」「正しくない」のどちらか |
| T2 統計読解 | グラフ・表から事実を読む | 「どの値が大きいか」「どちらが上昇傾向か」 |
| T3 計算実行 | 公式に数値を代入して計算 | 所得計算、利益計算 |
| T4 因果推論 | 政策と効果の関係推論 | 「支出増 → 所得増」という因果連鎖 |
| T5 場合分け | 条件ごとに異なる結論を区別 | 開業時 vs. 廃業時 |
形式層(L)
| タグ | 意味 | 該当能力 |
|---|---|---|
| L1 定義暗記 | 用語の正確な定義を知っているか | 「小規模企業共済の掛金は月額1,000円以上」 |
| L2 統計読解・制度理解 | データから一段階の推論で答える | グラフから「廃業率が開業率を上回る」と読み取り、「企業数が減少傾向」と推論 |
| L3 複合分析 | 複数の統計・制度情報を組み合わせて答える | 「経営者保証の二重徴求が減少しつつも、新経営者の保証負担は依然高い」という複合的解釈 |
罠パターン(Trap)
| タグ | 意味 | 典型例 |
|---|---|---|
| Trap-A 逆方向 | 因果の方向を逆にした誘導 | 「事業所数が減少 → 付加価値も減少する」(実際は増加) |
| Trap-B 条件すり替え | 適用条件を忘れた一般化 | 「大企業が中小企業を上回る」(一般的だが非製造業では逆) |
| Trap-C 部分正解 | 一部は正しいが全体として誤り | 「掛金は全額控除できる」(実は「課税所得から控除」) |
| Trap-D 混同誘発 | 類似概念の混同 | 「従業者数シェア」と「付加価値シェア」を入れ替え |
| Trap-E 計算ミス | 計算過程での誤り | 「800万円」と「1,000万円」の所得区分混同 |
分類タグ凡例
| タグ | 意味 |
|---|---|
| K1 定義・用語 | 用語の正確な意味を問う |
| K2 グラフ形状 | グラフの読み取り・形状判断 |
| K3 数式・公式 | 公式の適用・計算 |
| K4 因果メカニズム | 原因→結果の論理連鎖 |
| K5 制度・データ | 法制度・統計データの知識 |
| T1 正誤判定 | 選択肢の正誤を判定 |
| T2 グラフ読解 | グラフから情報を読み取る |
| T3 計算実行 | 数値計算を実行 |
| T4 因果推論 | 因果関係を推論 |
| T5 場合分け | 条件による場合分け |
| L1 基礎 | 基本知識で解ける |
| L2 応用 | 知識の組み合わせが必要 |
| L3 高度 | 複数ステップの推論が必要 |
| L4 最難度 | 高度な分析力が必要 |
| Trap 逆方向誘発 | 因果の向きを逆に誘導 |
| Trap 混同誘発 | 類似概念を混同させる |
| Trap 部分正解 | 部分的に正しい選択肢で誘導 |
| Trap 条件すり替え | 前提条件を変えて誘導 |
| Trap 計算ミス | 計算過程での間違いを誘発 |
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