財務・会計(令和2年度)
令和2年度(2020)中小企業診断士第1次試験 財務・会計の全24問解説
概要
令和2年度(2020年)の財務・会計は全24問(各4点、100点満点)で出題されました。簿記・決算処理から財務分析、投資論、会計理論まで、幅広い領域をカバーしています。
問題文は J-SMECA 公式サイト(令和2年度 財務・会計) から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。
解説の読み方
各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。
出題構成
| 領域 | 問番号 | 問数 |
|---|---|---|
| 簿記・決算処理・原価計算 | 1〜5 | 5 |
| 組織変動・投資会計 | 6〜9 | 4 |
| 財務分析・キャッシュフロー | 10〜13 | 4 |
| 証券投資・ポートフォリオ | 14〜20 | 7 |
| 金融理論・資本調達 | 21〜24 | 4 |
全問分類マップ
| 問 | テーマ | 知識種類 | 思考法 | 形式層 | 罠パターン |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 商品評価・簿外取引 | K2 分類・表示 | T2 分類判断 | L2 | Trap-D 混同誘発 |
| 2 | 会計処理・貸倒処理 | K4 手続・手順 | T2 分類判断 | L2 | Trap-B 条件すり替え |
| 3 | 有価証券評価 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-C 部分正解 |
| 4 | 株主資本・建物評価 | K4 手続・手順 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 5 | 減損損失・会計仕訳 | K2 分類・表示 | T2 分類判断 | L2 | Trap-A 逆方向 |
| 6 | 組織再編・新株発行 | K4 手続・手順 | T4 条件整理 | L2 | Trap-B 条件すり替え |
| 7 | リース取引会計 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 混同誘発 |
| 8 | 無形固定資産評価 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-C 部分正解 |
| 9 | 仮払消費税処理 | K4 手続・手順 | T3 計算実行 | L2 | Trap-E 計算ミス |
| 10 | 直接労賃・給与計算 | K4 手続・手順 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 11 | 財務比率分析 | K2 分類・表示 | T2 分類判断 | L2 | Trap-D 混同誘発 |
| 12 | 自己資本比率・流動比率 | K3 数式・公式 | T4 条件整理 | L2 | Trap-B 条件すり替え |
| 13 | キャッシュフロー分析 | K2 分類・表示 | T2 分類判断 | L2 | Trap-D 混同誘発 |
| 14 | 活動基準原価計算 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-C 部分正解 |
| 15 | オプション評価 | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L2 | Trap-E 計算ミス |
| 16 | 金利・為替 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 混同誘発 |
| 17 | 現在価値・年金現価係数 | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L2 | Trap-E 計算ミス |
| 18 | 超過収益率分析 | K2 分類・表示 | T2 分類判断 | L2 | Trap-A 逆方向 |
| 19 | ポートフォリオ構成 | K3 数式・公式 | T4 条件整理 | L2 | Trap-B 条件すり替え |
| 20 | 割引債価格評価 | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L2 | Trap-E 計算ミス |
| 21 | 担保償却・融資会計 | K2 分類・表示 | T2 分類判断 | L2 | Trap-D 混同誘発 |
| 22 | CAPM・資本コスト | K3 数式・公式 | T4 条件整理 | L2 | Trap-B 条件すり替え |
| 23 | 投資意思決定・NPV | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 24 | モジリアーニ・ミラー理論 | K4 手続・手順 | T4 条件整理 | L2 | Trap-B 条件すり替え |
形式層の分布
| 形式層 | 問数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| L1 定義暗記 | 5 | 20.8% | 3, 7, 8, 14, 16 |
| L2 概念理解・表示判定 | 16 | 66.7% | 1, 2, 5, 6, 9, 11, 12, 13, 15, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 24 |
| L3 手順実行・多段計算 | 3 | 12.5% | 4, 10, 23 |
L1(定義暗記)だけで取れるのは最大20点。合格ライン60点を超えるには L2(概念理解・表示判定)+ L3(手順実行)の能力が不可欠です。
簿記・決算処理・原価計算
第1問 商品評価と簿外取引
問題要旨: 期首商品棚卸高と当期商品仕入高、簿外資産・簿外負債などの仕訳を含めて、当期末での売上原価、あるいは期末棚卸資産の簿価を決定する問題。
K2 分類・表示 T2 分類判断 L2 Trap-D 混同誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 簿記の基礎 — 商品仕訳、売上原価の計算、簿外取引の処理
解法の思考プロセス: 売上原価は以下の公式で計算します: 売上原価 = 期首棚卸 + 当期仕入 - 期末棚卸。 問題では、期首250千円、当期仕入620千円、実地棚卸数量・単価から期末の簿価額を算定します。また棚卸減耗や商品評価損(簿外)も考慮し、最終的な売上原価を導出します。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「簿外取引 = 決算整理仕訳」と「通常の棚卸仕訳」を混同するケース。棚卸減耗と商品評価損は別々に処理しなければならず、両者の合計と期末簿価をセットで確認する必要があります。また、実地棚卸と帳簿数量の差異をどう処理するかで、選択肢が大きく変わる典型的なはまり問題です。
学習アドバイス: 財務・会計の簿記パートは「仕訳の正確性 + 金額計算の確実性」が命です。会計処理基準(期末棚卸の評価方法、減耗の繰入率など)は過去問で頻出なので、通常の商品取引だけでなく「特例や除外」まで把握しましょう。
第2問 決算処理と貸倒れ
問題要旨: A社の決算管理における貸倒処理、貸倒引当金の計上(当期の新規引当・返戻)、および売掛金残高から貸倒日額を決定する問題。
K4 手続・手順 T2 分類判断 L2 Trap-B 条件すり替え
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 決算整理仕訳 — 貸倒引当金の設定・戻し入れ、貸倒損失認識
解法の思考プロセス: 貸倒処理は2段階です。(1) 既に発生した貸倒実績から「貸倒損失」を計上、(2) 翌期以降の予想貸倒額に備えて「貸倒引当金」を設定。問題表の数字から:(借方) 貸倒引当金 300千円、貸倒当金戻入 1,050千円 → 貸倒損失は最終的に 1,350千円(300 + 1,050)という処理になります。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「貸倒引当金をいったん戻す(300)」と「新規に貸倒損失を計上(1,050)」のステップを取り違えるケース。特に選択肢が「引当金300」「損失1,050」など分散していると、どれが貸倒日額かを誤判定しやすいです。
学習アドバイス: 貸倒処理は決算整理の基本中の基本。「前期末の引当金 + 当期新規引当 - 当期戻し入れ = 当期末引当金」という動きを確認してから、各選択肢を当てはめるプロセスを習慣化することが肝要です。
第3問 有価証券の会計評価
問題要旨: 子会社株式および関連会社株式の取得簿価、時価評価(または持分法評価)の区別、および売却時の益損計算に関する問題。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-C 部分正解
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 資産会計 — 支配従属区分、時価評価と持分法、貸借対照表表示
解法の思考プロセス: 有価証券は「取得原価基準」と「時価評価基準」の2つのアプローチがあります。
- 子会社株式(支配目的): 取得原価基準が原則。ただし売却時は「取得原価 - 売却価額 = 益損」を計算
- 関連会社株式(影響力): 持分法を適用(獲得利益を翌期に認識)
- その他有価証券: 時価評価(評価差額は資本直入)
問題のア~エで「受取配当金の時価基準評価」「評価額と簿価の差」「持分法の適用要件」などが混在しており、各区分を正確に判別することが求められます。
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「持分法は評価額を毎期変更する」という部分が正しく、「時価評価も毎期変更」という記述と混同する罠。実際には、支配従属区分ごとに評価方法が完全に異なります。
学習アドバイス: 有価証券評価は「支配・影響力・その他」の3段階で区分されます。試験では「この会社と対象企業の関係は?」を最初に確認し、それに応じた評価方法(取得原価 / 持分法 / 時価評価)を機械的に当てはめるワークフロー化が効果的です。
第4問 株主資本および建物評価
問題要旨: B社が新株式 200 株を発行し、同時に D 社(融資先)と統合した場合の株主資本の計算、および統合後の建物簿価処理を含む複数段階の計算問題。
K4 手続・手順 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 負債・純資産・税効果 — 新株発行、資本金・資本余剰金の区別、建物の評価替え
解法の思考プロセス:
- 新株 200 株を 1 株あたり 400 円で発行 → 資本金 80,000 千円増加
- B社の既存資産と取得 D 社資産を統合貸借対照表に含める
- 建物は「取得時の簿価」ベースで引き継ぐが、統合後は一部を「資本余剰金」に振替える場合がある
- 最終的な資本金・資本余剰金 = 37,000 千円(資本金)+ 40,000 千円(資本余剰金)等、選択肢から最も合理的な組み合わせを選択
計算は3段階(資本増加分 → 既存資本との合算 → 資本余剰金調整)になるため、各段階で誤算を避けることが重要です。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 新株発行額を「株数 × 単価」ではなく「株数 + 単価」で計算、(2) 統合前後の資本金と資本余剰金の増減を別々に追わずに合計値で誤判定、(3) 建物の簿価継承時に減価償却済み額の扱いを忘れる。
学習アドバイス: この問題は「財務・会計の計算問題の難易度の中枢」です。複数の資産科目と資本科目が絡むため、貸借対照表全体のバランスを見ながら、各要素の計算を積み重ねるプロセス管理が重要。流れ図やマインドマップで整理してから計算に入ることをお勧めします。
第5問 減損損失と会計仕訳
問題要旨: X、Y、Z 社の3社に対して、固定資産の減損テストを実施し、各社の減損損失額を認識するうえで、正しい会計処理を選択する問題。
K2 分類・表示 T2 分類判断 L2 Trap-A 逆方向
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 資産会計 — 減損損失の認識基準、回収可能価額、使用価値の計算
解法の思考プロセス: 減損損失は以下の流れで判定します。
- 固定資産の帳簿価額 > 回収可能価額(使用価値と正味売却価額の大きい方) → 減損が存在
- 減損損失額 = 帳簿価額 - 回収可能価額
- 仕訳: (借) 減損損失 △△ / (貸) 固定資産 △△
問題表では X 社の帳簿価額 2,800 千円に対し、減損前のキャッシュフロー割引現在価値 2,400 千円 → 減損損失 400 千円。Y 社、Z 社も同様に計算し、「ア〜エ」の組み合わせから最も正確な損失額を導出します。
誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 「減損損失 = 帳簿価額 - 使用価値」と「帳簿価額 - 正味売却価額」のどちらを使うかを逆に選択するケース。減損額の算定では「より高い回収可能価額」を基準に、帳簿価額との差分が減損損失となります。
学習アドバイス: 減損会計は「資産が本来の価値を下回ったら速やかに認識」という保守主義の実装です。減損テストの判定フロー(①兆候あるか → ②回収可能価額を計算 → ③帳簿価額と比較 → ④損失認識)を何度も手で描いて、流れを体に染み込ませることが合格への近道です。
組織変動・投資会計
第6問 組織再編と新株発行
問題要旨: C 社が D 社と吸収合併し、新たに C 社株式 200 株を発行した場合、合併当日における C 社の株価、および新株発行に関連する資本金・資本余剰金の配分を決定する問題。
K4 手続・手順 T4 条件整理 L2 Trap-B 条件すり替え
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 会計原則と連結 — 吸収合併の会計処理、新株発行による資本増加
解法の思考プロセス:
- 合併当日の C 社株価 = 400 円 / 株
- 新株 200 株 × 400 円 = 80,000 千円が新たな対価(資本)として計上
- D 社の資産・負債を合併貸借対照表に含める
- C 社の資本金と資本余剰金のうち、どの部分が「資本組み入れ」か「利益準備金」かを判定
合併のタイプ(吸収 vs. 新設)や対象企業の資本構成によって、仕訳の詳細が異なります。問題文の条件から「資本の組み入れルール」(例: 新株発行額の 1/2 は資本金、残り 1/2 は資本余剰金)を抽出し、正しい資本増加額を計算します。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「新株発行による資本増加」と「合併に伴う D 社資産の付加」を混同するケース。合併では両方が同時進行するため、資本増加分(新株代金)と既存資本の増減を別々に追わないと、最終的な資本金・資本余剰金を誤計算します。
学習アドバイス: 企業結合会計は「税務会計との相違」が多いテーマです。公開企業のニュースリリースで「吸収合併による資本増加」のセクションを読み、実例から学ぶことをお勧めします。
第7問 リース取引の会計処理
問題要旨: リース取引(Finance Lease vs. Operating Lease)の分類基準、および各分類に応じた会計処理の正誤を判定する問題。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 資産会計 — Finance Lease と Operating Lease の分類、会計処理の相違
解法の思考プロセス: リースは以下の基準で分類されます。
- Finance Lease(ファイナンス・リース): リース期間が資産耐用年数の大部分(75%以上など)、または割引現在価値が資産正味売却価額の大部分を占める → 資産計上(割賦購入と同じ処理)
- Operating Lease(オペレーティング・リース): 上記に該当しない → 使用料を賃借料として費用処理
問題のア~エで「リース資産の減価償却」「オペレーティング・リースの使用料処理」などが述べられており、正誤判定を行います。重要なのは「Finance Lease = 資産」「Operating Lease = 費用」という処理の根本的な違いです。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「オペレーティング・リースは貸借対照表に表示されない」ことと「支払額がすべて費用になる」ことを、相互に混同するケース。実際には、どちらの分類でも会計処理は完全に異なります。
学習アドバイス: リース会計は国際会計基準(IFRS)の導入に伴い、現在は「ほぼすべてのリースを資産計上」する方向に統一されています。試験では古い基準(分類ベース)が問われることもあるため、新旧両方の基準を把握することが重要です。
第8問 無形固定資産の評価
問題要旨: 自社開発ソフトウェア、のれん、特許権などの無形固定資産に対し、資産計上要件(発生可能か確実か)、耐用年数、減価償却の方法を正しく判定する問題。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-C 部分正解
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 資産会計 — 開発費の資産計上要件、のれんの償却、特許権の耐用年数
解法の思考プロセス: 無形固定資産の認識は「発生可能性と確実性」が鍵です。
- 研究費: すべて費用処理(資産計上不可)
- 開発費: 一定条件(技術的実現可能性、市場化意思、収益性見込みなど)を満たせば資産計上
- のれん: M&A で発生し、定期的に減価償却(例: 20年)
- 特許権: 取得原価を法的存続期間(出願日から20年)で減価償却
問題では各無形資産が「計上要件を満たすか」「耐用年数をいくらとするか」を正誤判定します。特に「のれんは减価償却する」「開発費の計上要件は厳格」といったポイントが頻出です。
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「開発費は一定条件で計上できる」(正)という記述が、「研究費も計上できる」(誤)という拡大解釈につながる罠。研究費と開発費の境界は非常に厳格です。
学習アドバイス: 無形資産の計上要件は、企業会計審議会の「研究開発費等に係る会計基準」に詳しく書かれています。一度通読しておくと、問題解答が飛躍的に早くなります。
第9問 仮払消費税と会計処理
問題要旨: 商品の仕入時に生じた仮払消費税、仮受消費税の調整、および消費税申告時の納付税額・還付額を計算する問題。
K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 勘定科目と仕訳 — 仮払消費税、仮受消費税、納付税額の計算
解法の思考プロセス: 消費税計算のステップは以下の通りです。
- 仕入商品代金 18,000 円 + 仮払消費税 1,800 円(10%)= 19,800 円
- 売上代金 19,800 円 + 仮受消費税 1,800 円(10%)= 税込み
- 期末: 仮受消費税 1,800 - 仮払消費税 1,800 = 納付税額 0 円
問題表では仕入と売上の両方が税込みで表示されており、各取引から「仮払」「仮受」を正確に抽出する必要があります。特に、消費税率が 10% か 8% か混在している場合、計算誤りが生じやすいです。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 消費税率の混在(10% vs. 8%)の判定誤り、(2) 仮払消費税と仮受消費税の加減算を逆にする、(3) 還付の場合と納付の場合を取り違える。
学習アドバイス: 消費税は「取引ごとに率を判定し、仮払 / 仮受を機械的に計算」するプロセスです。試験では複雑な取引が混在しますが、一行ずつ丁寧に処理していれば、確実に得点できる分野です。
財務分析・キャッシュフロー
第10問 直接労賃と給与計算
問題要旨: 本年度の直接工賃の予定就業時間 12,000 時間、直接工賃金は 14,400,000 円。当期の直接工作業時間 1,100 時間、間接作業時間 100 時間、手待時間 200 時間の構成から、当期直接工賃を計算する問題。
K4 手続・手順 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 個別原価計算・総合原価計算 — 直接労賃の配分、手待時間の処理、間接費への振替
解法の思考プロセス:
- 時間給 = 予定年間直接工賃 / 予定就業時間 = 14,400,000 / 12,000 = 1,200 円/時間
- 当期直接工作業時間 = 1,100 時間 × 1,200 円 = 1,320,000 円(これが当期直接工賃)
- 間接作業時間 100 時間 × 1,200 円 = 120,000 円(間接費に振替)
- 手待時間 200 時間 × 1,200 円 = 240,000 円(製造原価に含める、あるいは営業外費用とする処理も考慮)
計算自体は単純ですが、「どの時間を直接工賃に含め、どの時間を何費目に振り替えるか」という分類判定が重要です。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 時間給の計算時に「月給」ベースと「年給」ベースを混同、(2) 手待時間を「直接工賃に含める」か「間接費に含める」かの分類誤り、(3) 給与総額と直接工賃の関係を逆にしてしまう。
学習アドバイス: 直接労賃の配分は原価計算の基本です。「予定率」で単価を決定し、それに実績時間を掛けるというプロセスを何度も繰り返して、流れを体に染み込ませることが大事です。
第11問 財務比率分析
問題要旨: 貸借対照表と損益計算書の数値から、売上高当期純利益率、自己資本利益率(ROE)、固定長期適合率などの財務指標を計算し、分析する問題。
K2 分類・表示 T2 分類判断 L2 Trap-D 混同誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 収益性指標 — 収益性指標、安全性指標、成長性指標
解法の思考プロセス: 財務比率分析では以下の指標が頻出です。
- 収益性: 売上高当期純利益率 = 当期純利益 / 売上高、自己資本利益率(ROE)= 当期純利益 / 自己資本
- 安全性: 自己資本比率 = 自己資本 / 総資産、流動比率 = 流動資産 / 流動負債
- 成長性: 売上増加率、利益増加率など
問題では「売上高当期純利益率 155.6%」(実績値は異なる)といった異常値や、「自己資本利益率(ROE) 25%」といった好調指標が混在します。各指標の意味と計算方法を正確に理解し、選択肢と対照させます。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「ROE が高い = 企業価値が高い」という単純化。実際には、ROE が高い理由(高利益率 vs. 高レバレッジ)を分析し、持続可能性を判定することが重要です。同様に「自己資本比率 25% = 安全性が低い」と短絡する誤り。
学習アドバイス: 財務比率分析は「一つの指標で判定するのではなく、複数の指標を組合せて初めて企業実態が見える」という思考が大切です。DuPont分析(ROE = 利益率 × 資産回転率 × レバレッジ)など、指標間の因果関係を理解することが応用力を高めます。
第12問 自己資本比率と流動比率
問題要旨: 自己資本比率の不変条件下で、自己資本金を取得したとき、流動比率がどのように変化するかを分析する問題。
K3 数式・公式 T4 条件整理 L2 Trap-B 条件すり替え
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 収益性指標 — 自己資本比率と流動比率の相互関係
解法の思考プロセス:
- 自己資本比率(古)= 自己資本 / 総資産(一定と仮定)
- 現金取得により自己資本が増加 → 流動資産も増加
- 流動比率 = 流動資産 / 流動負債。自己資本比率が不変なら、総資産も不変。つまり現金流入分は、流動負債の減少あるいは流動資産内での配置替えを意味する
- その他条件(固定資産の増減、借入の増減)を整理し、流動比率の変化方向を推定
この問題は単なる計算ではなく「複数の制約条件下での論理推論」が求められるため、選択肢を一つずつ理由付けで検証する必要があります。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「自己資本比率が不変」という条件を「現金増加は流動資産の増加と同等」と短絡。実際には、現金の増加が「流動負債の減少」に使途されれば、流動比率は改善します。条件の細部を見落とさない注意が必須です。
学習アドバイス: この問題タイプは「財務指標の相互関係を深く理解しているか」を試す良問です。貸借対照表の構造(資産 = 負債 + 自己資本)を常に念頭に置きながら、各要素の増減が他指標に及ぼす影響を予測する練習をお勧めします。
第13問 キャッシュフロー分析
問題要旨: キャッシュフロー計算書から、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフロー、および フリー・キャッシュフローの区分を正しく理解し、会計処理上の特異点を識別する問題。
K2 分類・表示 T2 分類判断 L2 Trap-D 混同誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 財務諸表と5つの利益 — 営業 CF、投資 CF、財務 CF の分類、フリー CF の定義
解法の思考プロセス: キャッシュフロー計算書の 3 つの区分は:
- 営業 CF: 本業の営業利益から、非現金利益調整・運転資本変動を経て導出
- 投資 CF: 固定資産取得 / 売却、短期投資の変動など
- 財務 CF: 借入 / 返済、配当金支払、自社株買い等
フリー・キャッシュフロー(FCF)= 営業 CF - 投資 CF(必須投資額)であり、企業の「自由に使える現金」を示します。問題では「営業活動によるキャッシュフロー の区分では、主要な取引ごとに加算・減算すべきか」を正誤判定します。典型例として「減価償却を控除(誤)→ 加算(正)」「仕訳売却による利益を調整」などが頻出です。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「営業 CF に含まれる取引」と「投資 CF に含まれる取引」を混同するケース。例えば「受取配当金」は原則営業 CF に含まれますが、特別な場合は投資 CF に分類されることもあります。問題文の定義に従うことが重要です。
学習アドバイス: キャッシュフロー計算書は「利益と現金のギャップ」を可視化する強力なツールです。簿記検定や実務でも頻出ですので、営業 CF → 投資 CF → 財務 CF のステップを何度も手で追う練習をお勧めします。
証券投資・ポートフォリオ管理
第14問 活動基準原価計算(ABC)
問題要旨: 従来型原価計算と活動基準原価計算(ABC: Activity Based Costing)の分類基準、および各方法での原価配分結果の相違を問う問題。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-C 部分正解
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: 個別原価計算・総合原価計算 — ABC の定義、従来型との比較、コスト・ドライバーの概念
解法の思考プロセス:
- 従来型原価計算: 製造量(直接工賃、機械時間など)に比例して間接費を配分 → 大量生産商品は原価が低くなる傾向
- ABC: 各製品を生み出すアクティビティ(活動)ごとに、その活動に関連した原価を配分 → より詳細で、複雑製品の隠れたコストが見える化される
問題のア~エで「ABC は製造量を基準に原価配分する」(誤)「ABC では複雑な製品ほど原価が高くなる傾向」(正)といった記述の正誤判定を行います。
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「ABC は複雑製品の真実の原価を示す」という部分が正しく、「従来型より常に正確」と拡大解釈する罠。実際には、ABC の導入・維持には高いコストがかかるため、複雑性が十分高い場合に限り正当化されます。
学習アドバイス: ABC は 1980 年代後半(1987〜1988 年にカプランとクーパーが提唱)から広まり、現在も進化し続けている経営会計のテーマです。試験では「定義と基本思想」を問われることが多いので、従来型との対比を何度も整理することが大切です。
第15問 オプション評価と複合企業
問題要旨: オプション(option)に関する記述の正誤判定。「10,000 円で買う権利を 500 円で売った」場合、売り手の利益と損失の分岐点、およびオプション価格の変動要因を問う問題。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: デリバティブとリスク管理 — オプション価格、イン・ザ・マネー、オプション価値の成分
解法の思考プロセス: オプション取引の仕組みは:
- コール・オプション(買う権利): 行使価格 10,000 円、プレミアム(選択料)500 円
- 売り手の損益分岐点: 資産価格 = 行使価格 + プレミアム = 10,500 円(買い手が行使する場合)
- オプション価格の成分:
- 本質的価値(Intrinsic Value)= MAX(現物価格 - 行使価格, 0)
- 時間的価値(Time Value)= オプション価格 - 本質的価値
売り手の観点では、行使価格を超えての資産価格上昇により、損失が無限に拡大するリスクがあります。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 損益分岐点を「行使価格 = 10,000 円」と誤認識、(2) オプション価値の成分(本質的 vs. 時間的)を混同、(3) コール・オプション(買い)とプット・オプション(売り)の損益図を逆にしてしまう。
学習アドバイス: オプション取引は初めは直感的に難しいテーマです。しかし「行使価格 vs. 現物価格」の大小関係と「プレミアムの流出入」を軸に、何度も手で図を描くことで理解が深まります。
第16問 金利と為替に関する記述
問題要旨: 金利(マイナス金利など)、為替相場、通貨スワップなどの金融市場の仕組みについて、正誤判定を行う問題。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: デリバティブとリスク管理 — 金利水準、為替相場決定、スワップ取引の仕組み
解法の思考プロセス:
- 金利平価説: 金利差と為替期待変化率が等しい → 高金利通貨は時間とともに減価(先物為替は割安)
- マイナス金利: 中央銀行が導入した政策で、「現金保有 > 銀行預金」という異常事態を打開。ただし民間金利はプラスの場合が多い
- 通貨スワップ: 2 国間で通貨を交換し、後に返戻。両国の信用リスク軽減が目的
問題では「金利が高い = 通貨が強い」という単純化と「マイナス金利の実装」など、現代的な金融知識が問われます。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「金利上昇 → 通貨高」という条件反射と「長期的な購買力平価」の混同。短期的には金利が通貨相場を動かしますが、長期的には物価差が支配的です。
学習アドバイス: 金融市場の理論は「簡潔な法則(平価説など)」に基づいていますが、現実は複雑です。経済ニュースで「金利」「為替」がどう報道されているかを定期的にチェックすることが、実務的理解を深めます。
第17問 現在価値と年金現価係数
問題要旨: 割引率 8%での期末受取年金の現在価値を、年金現価係数(PV of annuity factor)を使って計算する問題。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: ファイナンス基礎 — 複利計算、年金現価係数、終価係数の使い分け
解法の思考プロセス:
- 年金現価係数(PV of annuity factor)= [1 - (1 + r)^(-n)] / r
- 期末受取年金 900 万円、割引率 8%、期間 3 年の場合: PV = 900 × PV係数(8%, 3期)
- 係数表から PV(8%, 3期) を読取(例: 2.5771)→ PV = 900 × 2.5771 = 2,316.39万円
計算自体は「係数を正しく読み取り、金額に掛ける」だけですが、「期首受取」と「期末受取」で係数が異なることに注意が必要です。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 係数表の読み間違い(行列を逆にする等)、(2) 期首受取と期末受取の係数を混同、(3) 複利計算時に括弧内の符号を誤る(例: (1-r) vs. (1+r))。
学習アドバイス: 年金現価係数は「簿記 2 級」の範囲にも含まれる基本です。試験では必ず係数表が提供されるので、「表の読み方」「期首・期末の識別」を確実にすれば、得点できる分野です。
第18問 超過収益率と超過リターン
問題要旨: ポートフォリオの超過リターン(要因分解)、および個別銘柄の超過収益率(個別効果)を分析し、最適な投資判定をする問題。
K2 分類・表示 T2 分類判断 L2 Trap-A 逆方向
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: マルチプル評価 — CAPM、超過リターン(alpha)、ベンチマーク比較
解法の思考プロセス:
- 超過リターン(Excess Return)= ポートフォリオリターン - ベンチマークリターン
- 超過リターンの分解:
- マクロ効果(市場全体のリターン変動)
- セクター効果(セクター選択による超過リターン)
- 個別銘柄効果(個別銘柄選択による超過リターン)
問題では「ポートフォリオ収益率が上昇したが、超過リターンは低下」といった逆説的な結果を分析し、その原因がマクロ・セクター・個別のどれにあるかを識別します。
誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 「ポートフォリオ収益が高い = 超過リターンも高い」という誤認識。実際には、マーケット全体が好況なら、低リスク・低リターンのポートフォリオでも絶対リターンが高くなり、超過リターンは低い場合があります。
学習アドバイス: この問題は「相対パフォーマンス分析」の実務的な応用です。機関投資家のレポートなどで「超過リターン源泉の分解」をよく見かけます。実例から学ぶことをお勧めします。
第19問 ポートフォリオの最適構成
問題要旨: E 社株式と F 社株式の 2 銘柄を組み合わせたポートフォリオの期待収益率(期待リターン)を、投資比率を変動させて最大化する問題。各銘柄の期待リターンと標準偏差が与えられています。
K3 数式・公式 T4 条件整理 L2 Trap-B 条件すり替え
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: ファイナンス基礎 — 期待リターン、標準偏差、相関係数の計算
解法の思考プロセス:
- E 社期待リターン 10%、標準偏差 16%
- F 社期待リターン 18%、標準偏差 18%
- 投資比率 w(E社)、(1-w)(F社)とした場合:
- ポートフォリオ期待リターン = w × 10% + (1-w) × 18% = 18% - 8%w
- w = 0(F社 100%)で期待リターン最大 18%
ただし、相関係数や標準偏差も考慮すれば、「リスク調整後」の最適投資比率は異なる場合があります。問題では「期待リターン最大」なのか「シャープ・レシオ最大(リスク調整)」なのかを識別することが重要です。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「期待リターンが高い銘柄に 100% 投資 = 最適」という短絡。実際には、低リスク銘柄との組合せにより「相乗効果」が生じ、全体のシャープ・レシオが向上する場合も多いです。
学習アドバイス: ポートフォリオ最適化は現代ファイナンスの中核です。「期待リターン最大化」「リスク最小化」「シャープ・レシオ最大化」の 3 つのアプローチの違いを理解することが応用力を高めます。
第20問 割引債(ゼロクーポン債)の価格評価
問題要旨: 割引率(クーポン利率)8% の場合、割引債(額面 100 万円、償還期間 2 年)の公正な現在価値(理論価格)を、年金現価係数を使って計算する問題。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: ファイナンス基礎 — 割引債の価格計算、現在価値の時間軸
解法の思考プロセス:
- 割引債(ゼロクーポン債)は利息なく、満期に額面を受け取る
- 割引率 8% なら: PV = 100万円 / (1.08)^2 = 100万円 / 1.1664 = 85.73万円
- または、終価係数の逆数を用いて: PV = 100万円 × 現価係数(8%, 2期) ≈ 100万円 × 0.8573 = 85.73万円
計算は「単純な複利計算」ですが、「割引率の定義」「期間の数え方」を誤ると、結果が大きく変わります。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 年複利と半年複利の混同、(2) 現価係数と終価係数の使い間違い、(3) 割引率(クーポン利率)の定義を誤解(市場利回りとの相違)。
学習アドバイス: 債券評価は「金融商品の基本」です。クーポン付き債(通常債)との違いを理解し、複数のシナリオで計算練習をすることが合格につながります。
金融理論・資本調達
第21問 担保償却と融資会計
問題要旨: G社の期首と当期の融資対照表(assets side: 現金、売掛金等、liabilities side: 資金調達等)から、担保評価率(LTV: Loan to Value)の変化、および融資会計上の処理を判定する問題。
K2 分類・表示 T2 分類判断 L2 Trap-D 混同誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: ファイナンス基礎 — 担保評価、LTV、融資分類(正常 / 要注意 / 危険)
解法の思考プロセス:
- 担保評価率(LTV)= 借入金 / 担保評価額
- 期首:売上高 2,500万円、前期末液化固定資産 1,800万円、当期末液化固定資産 2,400万円(値上がり)
- 期末の LTV 改善 → 融資分類は「要注意」から「正常」へ向上する可能性
- 融資利息(前期 250万円、当期 240万円)の変化から、融資返済の進行を読み取る
問題では「LTV 改善の原因(担保価値上昇 vs. 借入金減少)」を特定し、融資会計上の分類変更を判定します。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「担保価値が上昇 = 融資分類が改善」という短絡。実際には、借入企業の返済能力(営業利益、キャッシュフロー)も同時に評価されます。担保価値の上昇だけでは、融資分類の改善にはつながらない場合も多いです。
学習アドバイス: 融資会計は銀行実務の中核です。「担保管理」「融資分類」「引当金」の関係を理解することで、企業財務の見方が大きく変わります。金融機関のアニュアルレポートで融資分類の詳細説明を読むことをお勧めします。
第22問 CAPM と資本コストの推定
問題要旨: 資本資産価格モデル(CAPM)を用いて、企業の加重平均資本コスト(WACC)を計算する問題。モジリアーニ・ミラー理論の観点から、資本構成の最適性も問われます。
K3 数式・公式 T4 条件整理 L2 Trap-B 条件すり替え
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: MM理論と配当政策 — CAPM、WACC、モジリアーニ・ミラー定理
解法の思考プロセス:
- CAPM: 期待収益率 = 無リスク金利 + ベータ × 市場リスク・プレミアム 例: 5% + 1.2 × 8% = 14.6%(自己資本コスト)
- WACC: (自己資本 / 全資本) × 自己資本コスト + (負債 / 全資本) × 負債コスト × (1 - 税率) 例: 0.6 × 14.6% + 0.4 × 6% × (1 - 0.3) = 11.56%
- モジリアーニ・ミラー定理: 税がない場合、資本構成は企業価値に影響しない(WACC は資本構成に関わらず一定)
問題では「CAPM で計算した期待リターン」と「WACC の決定要因」を正確に理解しているかが試されます。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「ベータが高い = リスク高い = 必ず投資をすべき」という誤判定。実際には、高ベータ企業でも「割安評価」されていれば投資価値がある場合もあります。CAPM は「理論価格」を示すツールに過ぎず、実際の投資判定には別の分析が必要です。
学習アドバイス: CAPM と WACC は「ファイナンス理論の礎」です。大学院や MBA でも重要なテーマであり、しっかり理解することで、経営戦略や企業価値評価の実務知識へつながります。
第23問 投資意思決定と正味現在価値(NPV)
問題要旨: 新規設備投資(初期投資 1,500万円、耐用年数 3 年、各年のキャッシュフロー 900万円、割引率 30%)の NPV を計算し、投資の採否を判定する問題。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス誘発
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: ファイナンス基礎 — NPV、IRR、回収期間法
解法の思考プロセス:
- NPV計算: NPV = -初期投資 + Σ(キャッシュフロー / (1 + 割引率)^t)
- 例: NPV = -1,500 + 900 × PV係数(30%, 3期)
- PV係数(30%, 3期) ≈ 1.816(係数表から)
- NPV = -1,500 + 900 × 1.816 = -1,500 + 1,634.4 = 134.4万円 > 0 → 投資採択
NPV > 0 なら投資は企業価値を増加させるため、採択すべき。逆に NPV < 0 なら、投資を放棄すべき。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 割引率の年複利と半年複利を混同、(2) 初期投資を「正」で計上してしまう、(3) キャッシュフロー計算で「営業利益」と「営業キャッシュフロー」を混同、(4) 残存価値の扱い忘れ。
学習アドバイス: NPV は「投資評価の最強ツール」です。IRR(内部収益率)との使い分けも重要。複数の投資案を比較する際には「NPV が高い案を採択」が原則です。試験では必ず係数表が提供されるので、計算自体は難しくありません。確実に得点できるテーマです。
第24問 モジリアーニ・ミラー理論と資本構成
問題要旨: モジリアーニ・ミラー理論(MM理論)の基本命題(Proposition I・II)に基づいて、資本構成の最適性、および負債と株価の関係を正しく理解しているかを問う問題。
K4 手続・手順 T4 条件整理 L2 Trap-B 条件すり替え
正解: (公式発表を確認してください)
必要知識: MM理論と配当政策 — MM定理、税の影響、資本構成の最適性
解法の思考プロセス:
- MM Proposition I(税なし): 企業価値 = EBIT / WACC(資本構成に無関係)
- MM Proposition II(税なし): 自己資本コスト = WACC + (負債 / 自己資本) × (WACC - 負債コスト)
- 税を考慮した場合: 負債による利息税盾(tax shield)が生じるため、負債が増えるほど企業価値が増加
問題では「MM理論の前提条件(完全市場、利用可能情報の対称性など)」「税の有無による結果の相違」を正確に判定することが求められます。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「MM理論 = 資本構成は無関係」と単純化。実際には、税を導入すれば結論が変わり、「最適資本構成が存在する」という実務的な結論へ至ります。問題では「どの前提条件下での MM理論か」を常に確認することが重要です。
学習アドバイス: MM理論は「近代ファイナンス理論の出発点」として、ノーベル経済学賞を受賞した理論です。その深さと限界を理解することで、実務的な資本構成戦略の考え方へアプローチできます。大学院レベルの理論ですが、診断士試験では「基本理解」のみが問われることが多いです。
年度総括
思考法の分布
| 思考法 | 問数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| T1 正誤判定 | 5 | 20.8% | 3, 7, 8, 14, 16 |
| T2 分類判断 | 7 | 29.2% | 1, 2, 5, 11, 13, 18, 21 |
| T3 計算実行 | 7 | 29.2% | 4, 9, 10, 15, 17, 20, 23 |
| T4 条件整理 | 5 | 20.8% | 6, 12, 19, 22, 24 |
出題傾向: 財務・会計は「分類判定(T2:29.2%)」と「計算実行(T3:29.2%)」が最多で合わせて58.4%を占めます。つまり、「概念の正確な理解 + 計算の確実な実行」が得点の鍵となります。「計算は正確だが判定が甘い」という受験生は失点を招きやすく、逆も然りです。
罠パターンの分布
| 罠パターン | 問数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| Trap-A 逆方向 | 2 | 8.3% | 5, 18 |
| Trap-B 条件すり替え | 6 | 25.0% | 2, 6, 12, 19, 22, 24 |
| Trap-C 部分正解 | 3 | 12.5% | 3, 8, 14 |
| Trap-D 混同誘発 | 6 | 25.0% | 1, 7, 11, 13, 16, 21 |
| Trap-E 計算ミス | 7 | 29.2% | 4, 9, 10, 15, 17, 20, 23 |
最重要な罠: Trap-E(計算ミス:29.2%) が最多で、Trap-B(条件すり替え:25.0%) と Trap-D(混同誘発:25.0%) が続きます。財務・会計は「複数の前提条件が絡む」性質上、「この条件下では A、別の条件下では B」という場合分けが頻出。問題文を読む際に「前提条件の確認」を最初に行うことが、誤答を避けるための最強の防御手段です。
Tier 別学習優先度
| Tier | 内容 | 問数 | 学習時間 | 優先度 |
|---|---|---|---|---|
| 必須Tier(最低限の合格) | 簿記基礎、決算処理、財務比率、投資評価の基本 | 3, 5, 7, 8, 11, 13, 14, 16 | 60時間 | ★★★★★ |
| 応用Tier(60点突破) | 組織再編、複合計算、リース・減損、CAPM、NPV | 1, 2, 4, 6, 9, 10, 15, 17, 20, 23 | 40時間 | ★★★★ |
| 発展Tier(70点以上) | MM理論、超過リターン分析、ポートフォリオ最適化、融資会計 | 12, 18, 19, 22, 24 | 30時間 | ★★★ |
本番セルフチェック 5 項目
試験本番で問題を解く際の、実践的なセルフチェック項目です。
- 前提条件の確認: 「税あり / なし」「支配従属区分」「会計基準(旧 / 新)」など、問題文の前提条件を最初に線引きする。
- 仕訳の段階確認: 計算問題では「初期仕訳 → 決算整理仕訳 → 最終仕訳」の 3段階を意識し、各段階の正確性を検証。
- 選択肢の相互比較: 4つの選択肢が「何が異なるのか(金額? 分類? 処理方法?)」を明確にしてから、最適解を選択。
- 計算過程の二重チェック: 複雑な計算問題では「順算」と「逆算」の両方で検証し、計算ミスを防止。
- 時間配分の最適化: 簡単な判定問題(T1・T2)を先に片付け、計算問題(T3)に十分な時間を確保。
分類タグの凡例
知識種類(K)
| タグ | 説明 | 該当例 |
|---|---|---|
| K1 定義・用語 | 会計用語の定義、会計基準の概念的定義を正しく理解しているか | Finance Lease / Operating Lease の定義、減損損失の定義 |
| K2 分類・表示 | 資産・負債・純資産の分類、貸借対照表等の表示基準を理解しているか | 商品評価、減損損失の認識、キャッシュフロー区分 |
| K3 数式・公式 | 計算公式(減価償却、年金現価係数、CAPM等)を正確に使えるか | NPV計算、WACC、現在価値計算 |
| K4 手続・手順 | 会計処理の手続き(仕訳、決算整理等)を正確に進められるか | 組織再編時の仕訳、新株発行、給与計算 |
思考法(T)
| タグ | 説明 | 該当例 |
|---|---|---|
| T1 正誤判定 | 複数の記述から「正しい / 誤った」を判別 | 有価証券評価の記述、リース会計の記述 |
| T2 分類判断 | 複数の取引を「AパターンorBパターン」で分類判定 | 商品評価、減損判定、キャッシュフロー区分 |
| T3 計算実行 | 与えられた数値から計算を正確に実行 | 直接労賃、NPV、現在価値計算 |
| T4 条件整理 | 複数の前提条件下で、最適な判定を実行 | WACC計算(税あり / なし)、ポートフォリオ構成 |
形式層(L)
| タグ | 説明 | 該当例 |
|---|---|---|
| L1 定義暗記 | 会計用語や基本概念の「暗記」のみで正答可能 | 有価証券評価の分類、リース取引の定義 |
| L2 概念理解・表示判定 | 会計概念を理解し、判定基準を当てはめる | 簿記仕訳、減損判定、キャッシュフロー区分 |
| L3 手順実行・多段計算 | 複数ステップの計算と判定を統合実行 | 組織再編時の資本計算、NPV、複合的な原価計算 |
罠パターン(Trap)
| タグ | 説明 | 該当例 |
|---|---|---|
| Trap-A 逆方向 | 因果関係 / 方向性を逆に判定しやすい | 負債増加時の株価、キャッシュフロー区分 |
| Trap-B 条件すり替え | 前提条件(税あり / なし、支配 / 非支配等)を見落とす | 資本構成理論、融資分類、投資判定 |
| Trap-C 部分正解 | 記述の一部は正しいが、全体的には誤っている | 有価証券会計、無形資産の計上基準 |
| Trap-D 混同誘発 | 類似概念(Finance Lease vs. Operating Lease等)を混同 | 減損損失と評価減、各種会計処理 |
| Trap-E 計算ミス誘発 | 計算過程での単純ミス(符号、括弧、単位等) | NPV、年金現価係数、複雑な原価計算 |
分類タグ凡例
| タグ | 意味 |
|---|---|
| K1 定義・用語 | 用語の正確な意味を問う |
| K2 グラフ形状 | グラフの読み取り・形状判断 |
| K3 数式・公式 | 公式の適用・計算 |
| K4 因果メカニズム | 原因→結果の論理連鎖 |
| K5 制度・データ | 法制度・統計データの知識 |
| T1 正誤判定 | 選択肢の正誤を判定 |
| T2 グラフ読解 | グラフから情報を読み取る |
| T3 計算実行 | 数値計算を実行 |
| T4 因果推論 | 因果関係を推論 |
| T5 場合分け | 条件による場合分け |
| L1 基礎 | 基本知識で解ける |
| L2 応用 | 知識の組み合わせが必要 |
| L3 高度 | 複数ステップの推論が必要 |
| L4 最難度 | 高度な分析力が必要 |
| Trap 逆方向誘発 | 因果の向きを逆に誘導 |
| Trap 混同誘発 | 類似概念を混同させる |
| Trap 部分正解 | 部分的に正しい選択肢で誘導 |
| Trap 条件すり替え | 前提条件を変えて誘導 |
| Trap 計算ミス | 計算過程での間違いを誘発 |
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