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AD-AS、フィリップス曲線、国際マクロ

総需要と総供給、インフレと失業、開放経済の政策効果を整理する

このページの役割

このページは、マクロ経済学の後半論点 を固める解説ページです。IS-LM で学んだ政策効果を、物価国際経済 まで広げて読みます。AD-AS 分析から始まり、フィリップス曲線で失業とインフレの関係を見て、成長理論で長期的な所得決定を理解し、最後に開放経済での政策効果の変化(マンデル=フレミング・モデル)まで進みます。この 4 つの柱が揃って初めて、現実の経済政策ニュースや試験問題を読み解けるようになります。

このページを読む前に

IS-LM モデルと政策効果についての理解を確認してください。AD-AS はそこから物価水準を加えた拡張です。

まずイメージをつかむ

IS-LM は利子率と所得の関係を分析する道具でしたが、「物価」は固定されていました。AD-AS 分析は、ここに物価の変動を加えて「物価と産出量が同時にどう動くか」を見る枠組みです。

想像してください。政府が支出を増やすと、IS-LM では利子率と所得が上がります。でも現実には物価も上がることが多いですよね?オイルショックのように供給コストが上がると、生産量は落ちるのに物価は上がる「スタグフレーション」が起きます。こうした物価と産出量の同時変動を説明するのが AD-AS です。

AD(総需要)は「経済全体でモノやサービスをどれだけ買いたいか」という需要の合計。AS(総供給)は「経済全体でどれだけ生産できるか」という供給の上限です。原油高で生産コストが上がれば AS が左に動いて物価上昇と景気悪化が同時に起こります。このように 1 枚のグラフで需要ショックと供給ショックの両方を描き分けられるのが AD-AS の強みです。

次に登場するのがフィリップス曲線です。これは「インフレ率と失業率のトレードオフ」を見る道具。失業が少ないと労働市場が逼迫して賃金が上がり、それが物価に反映される。短期的には失業とインフレは一見反対方向に動きますが、長期的には雇用主も労働者も期待を調整するので、このトレードオフは消滅します。つまり 短期と長期で全く違う形 という理解が大事です。

さらに成長理論では「長期的に 1 人あたり所得を何が決めるのか」を分析します。ソロー・モデルは、短期的には貯蓄率を上げると成長が加速するように見えても、長期的には技術進歩が唯一の持続的な成長源だと教えます。

最後に国際マクロです。開放経済では為替や資本移動が加わります。ここで重要なのが マンデル=フレミング・モデル で、為替制度によって政策効果がガラリと変わります。変動制では「金融政策は有効だが財政政策は無効」、固定制では「その逆」という非直感的な結果が出ます。IS-LM → AD-AS → 国際マクロの順に、分析の枠が広がっていくイメージで読むと全体像が掴みやすくなります。

試験で何が問われるか

試験では以下の観点で出題されます:

  • AD と AS のどちらが動いたか判断できるか
  • 需要ショックと供給ショックの違いを物価・産出量の動きから読み解けるか
  • フィリップス曲線の短期と長期の違いを説明できるか
  • 期待インフレ率が変わったときの効果を計算できるか
  • ソロー・モデルで成長率が何で決まるかを理解しているか
  • 為替制度によって政策効果がどう変わるか、特にマンデル=フレミング・モデルを使いこなせるか

出題実績(R2〜R6)

この論点は直近5年で 18問 出題されています(うち△2問)。

R6: Q9, Q10, Q13 / R5: Q2△, Q10, Q11-12 / R4: Q8-9, Q11, Q12, Q23 / R3: Q11, Q12, Q13, Q14 / R2: Q2△, Q8, Q9, Q11

△は統計データ読み取り問題です。詳細な問題の入手は J-SMECA 公式 から対応年度のPDFをご確認ください。


AD-AS 分析

AD 曲線の導出と意味

AD(Aggregate Demand、総需要)曲線は、「物価水準が変わるとき、経済全体の需要量がどう変わるか」を表す曲線です。右下がりの形をしています。なぜ右下がりなのか、しっかり説明できることが重要です。

メカニズム:物価が下がるとき

  1. 実質貨幣供給が増える:物価が下がると、手持ちのお金の「購買力」が上がります。数学的には、実質貨幣供給 = 名目貨幣供給 / 物価 なので、分母の物価が下がれば実質貨幣供給は増えます。
  2. 利子率が低下:IS-LM モデルを思い出してください。貨幣供給が増えると、LM 曲線が右にシフトして、利子率が低下します。
  3. 投資と消費が増える:利子率が低下すると、企業の投資決定の採算性が改善し、家計の消費意欲も高まります。利子率の低下で、みんな「今、買っておこう」という行動に出るわけです。
  4. 産出量が増加:投資と消費の増加により、総需要が増えて産出量が増加します。

つまり、物価低下 → 実質貨幣供給増 → 利子率低下 → 投資・消費増 → 産出量増、という連鎖が起きるため、AD 曲線は右下がりになります。

AS 曲線:短期と長期の違い

AS(Aggregate Supply、総供給)曲線は、「物価水準が上昇するとき、企業がどれだけ生産を増やそうとするか」を表します。ここで最も重要なのは 賃金の硬直性 という仮定です。

短期フェーズ:賃金は固定されている

短期では、労働契約は既に結ばれており、名目賃金が動きにくいと考えます。この状況で物価が上昇したらどうなるか?

  • 企業が商品の売却価格を上げることができる
  • しかし労働者への支払い(名目賃金)はすぐに上げられない
  • 結果、実質賃金(= 名目賃金 / 物価)が低下する
  • 実質賃金が低下すると、企業は「雇用コストが安くなった」と感じて労働者をもっと雇い、生産を増やす

このメカニズムで、短期 AS は右上がりになります。物価が上がるほど産出量が増えるのです。

長期フェーズ:賃金も物価も調整される

時間が経つと、労働者は「物価が上がったのに賃金が上がっていない、損している」と気づき、賃金交渉で名目賃金を上げます。企業も採算性の改善が一時的なものだと認識します。すると名目賃金も物価に合わせて上昇し、実質賃金は元に戻ります。実質賃金が元に戻れば、企業の雇用・生産意欲も元に戻り、産出量は自然失業率のレベルに戻ります。

つまり、長期では物価がいくら上昇しても産出量は潜在 GDP レベルで固定され、AS 曲線は 垂直 になります。

立場賃金の仮定AS の形状経済学的含意
短期(ケインズ的)名目賃金固定右上がり需要政策で産出量も変わる
長期(古典的)実質賃金は自動調整垂直(潜在GDP の位置)需要政策は物価のみ変える

デマンドプル・インフレとコストプッシュ・インフレ

AD-AS で起きる 2 種類のインフレを区別することは、試験で頻出です。

デマンドプル・インフレ:需要が供給を引っ張り上げる

  • 原因:政府支出増加、消費増加など、需要側の好転
  • AD-AS 上での動き:AD が右にシフト
  • 結果:物価も産出量も 両方上昇
  • メカニズム:「これだけ売れるなら価格を上げよう」という話。見た目は景気が良い。

コストプッシュ・インフレ:供給コストが価格を押し上げる

  • 原因:原油価格高騰、賃金上昇圧力、供給ショックなど、供給側の悪化
  • AD-AS 上での動き:AS が左にシフト
  • 結果:物価は上昇するが、産出量は 減少 → スタグフレーション
  • メカニズム:「生産コストが上がったから価格に転嫁しよう。でも買い手が減りそう」という状況。景気は悪いのに物価が上がる矛盾。

判別のコツ

試験で「物価が上昇して産出量が減少しました」と出題されたら、即座に「AS 左シフト、コストプッシュ・インフレだ」と判断してください。逆に「物価と産出量が両方上昇」なら「AD 右シフト、デマンドプル」です。

スタグフレーション:供給ショックの同時悪化

スタグフレーション(stagnation + inflation の造語)は、「景気停滞と物価上昇が同時に起きる矛盾した状況」を指します。これは AS 左シフト(コストプッシュ・インフレ)の代表的な現象で、1970 年代のオイルショックで世界経済を襲いました。

スタグフレーションの発生メカニズム:

きっかけ:供給側の負のショック

  • 原油価格が急騰(OAPEC による石油禁輸・生産削減)
  • 労働組合が賃金上昇を要求
  • 天候悪化による農産物不足
  • 上記のような「生産コストを高める要因」

AS 曲線の左シフト:

  • 企業は商品を生産するコストが上昇
  • 同じ産出量でも、より高い価格をつけないと採算が合わない
  • AS 曲線全体が左に移動

AD-AS グラフでの読み方:

  • 均衡点は「物価軸(縦)では上昇」「産出量軸(横)では左側」へ移動
  • 結果:物価上昇と産出量減少が同時に起きる
  • 失業率が上昇し、インフレ率も上昇するという、政策当局者にとって悪い組み合わせ

1970 年代のオイルショック例:

出来事物価(インフレ率)産出量(GDP 成長率)失業率
1973第一次オイルショック通常通常
1974原油価格急騰大幅上昇マイナス成長上昇
1975景気後退続く高いマイナス成長さらに上昇

政策対応が困難だった理由:

  • 従来のフィリップス曲線なら「インフレ率を低下させたければ失業を増やす」という選択肢があった
  • しかし失業は既に高いのに物価も高い → インフレと失業の同時ショック
  • 金融緩和すれば(失業低下)物価がさらに上昇
  • 金融引き締めすれば失業がさらに悪化
  • 政策に「正解」がない状況

スタグフレーションの消滅と原因の理解:

1980 年代、先進国の中央銀行(特に米国 FRB)が強硬な金融引き締めに転じて、インフレを制御し、スタグフレーションは解消しました。この経験から、「供給ショックに対しては物価上昇を受け入れ、それ以上の悪化を防ぐために金融を慎重に運用する」という政策スタンスが確立されました。

短期と長期の統合的理解

短期では AD-AS 両者が動く可能性があり、物価も産出量も変わります。長期では AS が垂直に戻るため、AD の増加は物価上昇だけに終わり、産出量には影響しません。スタグフレーションは短期の AS ショックとして理解します。長期には AS は供給側の制約が緩和されれば垂直位置に戻り、失業率は自然失業率に復帰します。


フィリップス曲線

期待修正フィリップス曲線の標準式

フィリップス曲線は、インフレ率と失業率の関係を表す曲線です。1958 年に経済学者フィリップスが英国のデータから、名目賃金上昇率と失業率に右下がりの関係があることを発見しました。ここから現代的なフィリップス曲線へ進化する過程を理解することが大切です。

期待修正フィリップス曲線(期待インフレ率を含む版):

π=πeβ(uu)\pi = \pi^e - \beta(u - u^*)

各記号の意味:

記号意味備考
π実際のインフレ率(%)例:2%
πe期待インフレ率(%)労働者や企業が「来年は何%上昇すると思うか」という予想
u実際の失業率(%)例:3%
u*自然失業率、NAIRU(%)平衡状態での失業率。摩擦的・構造的失業のみ
β正の係数失業率感応度。失業率が自然率から 1% 乖離すると、インフレ率がどれだけ変わるか

短期 vs 長期フィリップス曲線の比較表

フィリップス曲線は、時間軸によって全く異なる形と性質を持ちます。試験では「短期」と「長期」の違いを明確に説明できることが重要です。

項目短期フィリップス曲線長期フィリップス曲線
形状右下がり垂直(失業率 = 自然失業率の位置)
関係式π=πeβ(uu)\pi = \pi^e - \beta(u - u^*)u=uu = u^*(どの π でも固定)
期待インフレ率所与(固定)実現インフレに完全調整(πe = π
トレードオフあり(失業減 ↔ インフレ増)なし(失業と無関係に価格が変動)
実質賃金動向低下(企業有利)一定水準に回帰
メカニズム名目賃金が粘着的期待の完全調整と名目賃金上昇
政策効果あり(失業削減可能)なし(失業に影響しない)
時間スケール数ヶ月~1年程度2年以上

短期フィリップス曲線の見方

短期では、期待インフレ率 πe所与(変わらない) と考えます。失業率 u が自然失業率 u* より低いと、労働市場が逼迫して賃金上昇圧力が高まり、インフレ率 π が期待より高くなります。逆に失業率が高いと、インフレ率は期待より低くなります。

短期フィリップス曲線は右下がり です。金融・財政政策でトレードオフを利用できるように見えます。失業を下げるなら、インフレを少し受け入れろ、という話です。

具体例:短期フィリップス曲線での計算

  • 期待インフレ率 πe = 2%
  • 自然失業率 u* = 4%
  • 失業感応度 β = 0.5
  • 実際の失業率 u = 2%(自然率より 2% 低い)

計算:

π=20.5×(24)=20.5×(2)=2+1=3%\pi = 2 - 0.5 \times (2 - 4) = 2 - 0.5 \times (-2) = 2 + 1 = 3\%

失業率が自然率を 2 ポイント下回ると、インフレ率は期待の 2% から 3% に上昇します。

長期フィリップス曲線:期待の完全実現

時間が経つと、人々の期待は現実に収束します。インフレが 2% になると予想していたのに、実際に 3% になれば、次年度は「3% だろう」と予想を上方修正します。

長期では πe = π(期待 = 実現)になると考えます。このとき:

π=πβ(uu)\pi = \pi - \beta(u - u^*)

両辺から π を引くと:

0=β(uu)0 = -\beta(u - u^*)

β > 0 なので、この式が成り立つには u = u* でなければいけません。

つまり 長期フィリップス曲線は失業率 = 自然失業率の位置で垂直 です。インフレ率がいくらでも(1% でも、5% でも、10% でも)、失業率は自然失業率に戻ります。金融政策でインフレを受け入れても、失業を恒久的に下げることはできないということです。

短期から長期への移行プロセス:期待の役割

フィリップス曲線の形が短期(右下がり)から長期(垂直)に変わる過程を理解することは、経済政策の効果を判断するうえで必須です。

3段階の移行メカニズム:

ステップ 1:短期フェーズ(0~1年)

  • 中央銀行が金融緩和を実施 → 利子率低下
  • 失業率が低下 → 労働市場逼迫
  • 労働者の交渉力強化 → 実質賃金期待上昇
  • 名目賃金はまだ固定的 → 実質賃金低下(企業有利)
  • 企業が雇用・生産拡大 → GDP 増加、失業率低下
  • この段階では短期フィリップス曲線上を左上に移動(失業減少、インフレ増加)

ステップ 2:期待調整フェーズ(1~2年)

  • 実現インフレが 2% から 3% に上昇
  • 労働者の期待が修正 → πe が 2% から 3% へ上昇
  • 次年度の賃金交渉で、労働者が 3% インフレ分を要求
  • 企業も採算性改善が一時的と認識
  • 名目賃金が上方修正される
  • 短期フィリップス曲線自体が上方シフト(同じ失業率でも期待インフレが高くなる)

ステップ 3:長期フェーズ(2年以上)

  • 期待がインフレに完全に調整(πe = 実現インフレ
  • 実質賃金が元の水準に戻る
  • 企業の採算性が元に戻る
  • 雇用・生産が潜在 GDP レベルに戻る
  • 失業率が自然失業率に復帰
  • フィリップス曲線は垂直の長期形状に収束

グラフイメージ:

短期フィリップス曲線(πe = 2%)→ 短期フィリップス曲線(πe = 3%)→ 短期フィリップス曲線(πe = 4%)... と、期待が上昇するたびに上方シフト。最終的には全ての短期曲線が通る垂直線(長期フィリップス曲線)に収束します。

フリードマンの自然失業率仮説

1968 年、経済学者ミルトン・フリードマンとエドモンド・フェルプスが独立に提唱した理論で、フィリップス曲線の理解を根本的に変えました。

核となる主張:

「失業を恒久的に下げることはできない。政策で失業を自然率以下に無理に下げると、インフレが加速するだけだ」

これは 1960 年代の政策当局者が「フィリップス曲線のトレードオフを利用して失業を恒久的に低く保てる」と考えていたことに対する直接的な反論でした。

仮説の内容:

概念説明時間スケール
自然失業率(u*摩擦的失業と構造的失業だけが存在する失業率。完全雇用の定義長期(2年以上)
非加速インフレ失業率(NAIRU)インフレ率が加速も減速もしない失業率。自然失業率と同義長期均衡
政策無効命題失業率を自然率以下に保とうとすると、期待インフレが上昇し続けてインフレが加速する短期には有効、長期には無効

フリードマン仮説の含意:

  1. 短期 vs 長期の戦略的違い
    • 短期:失業を下げてインフレを少し受け入れるトレードオフが存在
    • 長期:トレードオフなし。失業は自然率、インフレだけ加速
  2. 「スタグフレーション」の説明
    • 1970 年代のオイルショック後、失業とインフレが同時に上昇
    • 従来のフィリップス曲線では説明不可
    • 自然失業率仮説なら説明可能:AS 左シフト(供給ショック)で、短期フィリップス曲線自体が上方シフト → 両者が同時上昇
  3. 政策の長期的効果
    • 持続的な金融緩和は、短期は失業低下・インフレ小幅増だが、期待上昇とともにインフレ加速
    • 長期には失業は自然率に戻り、インフレだけ高止まり

試験での出題パターン:

「政府が金融緩和で失業を 3% まで下げようとした。短期では成功したが、その後どうなるか」という問題なら、「期待インフレが上昇 → 短期フィリップス曲線が上方シフト → インフレが加速 → 失業は自然率に戻る」と答えるのが、フリードマン仮説を反映した正答です。

自然失業率(NAIRU)の構成

自然失業率は、供給側の構造から決まります。需要政策では変えられません。

u=摩擦的失業率+構造的失業率u^* = \text{摩擦的失業率} + \text{構造的失業率}

摩擦的失業:転職を探す期間に生じる失業。職業紹介所の効率化で短縮できます。

構造的失業:産業衰退やスキルのミスマッチから生じる失業。職業訓練や教育政策で対応します。

循環的失業:景気後退による需要不足で生じる失業。財政・金融政策で解消できます。これは自然失業率には含まれません。

重要な誤解回避:「完全雇用 = 失業ゼロ」ではなく、「完全雇用 = 循環的失業がゼロの状態」つまり「失業率 = 自然失業率」です。

オークンの法則:失業とGDPギャップの関係

失業率の変化と GDP 成長率の関係を表す経験則です。試験計算でよく出ます。

YYY=γ(uu)\frac{Y - Y^*}{Y^*} = -\gamma(u - u^*)

各記号の意味:

記号意味備考
Y実際の GDP例:1000 兆円
Y*潜在 GDP自然失業率のときの GDP
γオークン係数通常 2~3。失業率が 1 ポイント上昇すると GDP は何ポイント低下するか
u - u*循環的失業率自然率との乖離

計算例:オークン係数で失業と GDP ギャップを結ぶ

  • オークン係数 γ = 2
  • 失業率が自然失業率 5% を 1 ポイント上回っている(u = 6%
  • 潜在 GDP は 1000 兆円

計算:

(YY)/Y=2×(65)=2×1=0.02=2%(Y - Y^*) / Y^* = -2 \times (6 - 5) = -2 \times 1 = -0.02 = -2\%

実際の GDP は潜在 GDP を約 2% 下回る、つまり 980 兆円程度です。失業が 1% 増えると GDP は 2% 低下するというのがオークン係数の意味です。

フィリップス曲線で最もよくある誤解

「長期フィリップス曲線は右下がり」という誤り。正解は「垂直」です。短期では政策でトレードオフが使えますが、長期では使えません。期待がアンカーになるからです。

失業の種別と政策対応

種別原因特徴政策対応
摩擦的失業転職の探索期間自発的・短期的。景気に関わらず存在職業紹介の効率化、情報提供
構造的失業産業衰退・技術変化スキルのミスマッチ。長期的職業訓練、教育投資、転職支援
循環的失業景気後退による需要不足非自発的。景気回復で解消可能財政政策、金融政策

経済成長理論

成長会計(ソロー残差・TFP)

GDP 成長をどれだけが「労働増」「資本増」「技術進歩」に帰因するか分解する手法です。試験では TFP(全要素生産性)を計算する問題が頻出です。

成長会計の基本式:

ΔYY=ΔAA+αΔKK+(1α)ΔLL\frac{\Delta Y}{Y} = \frac{\Delta A}{A} + \alpha \frac{\Delta K}{K} + (1 - \alpha) \frac{\Delta L}{L}

各項の意味:

記号意味備考
ΔY/YGDP 成長率例:3%
ΔA/ATFP 成長率(ソロー残差)労働と資本以外の要因。技術進歩、組織改善など
α資本分配率通常 0.3~0.4。GDP のうち資本所得が占める割合
ΔK/K資本ストック成長率例:4%
ΔL/L労働投入成長率例:1%。雇用者数増 + 労働時間増

計算ステップ:

ΔAA=ΔYYαΔKK(1α)ΔLL\frac{\Delta A}{A} = \frac{\Delta Y}{Y} - \alpha \frac{\Delta K}{K} - (1 - \alpha) \frac{\Delta L}{L}

具体的な計算例:

  • GDP 成長率 ΔY/Y = 5%
  • 資本成長率 ΔK/K = 4%
  • 労働成長率 ΔL/L = 1%
  • 資本分配率 α = 0.3

計算:

TFP=50.3×4(10.3)×1=51.20.7=1.1%\text{TFP} = 5 - 0.3 \times 4 - (1 - 0.3) \times 1 = 5 - 1.2 - 0.7 = 1.1\%

GDP 成長 5% のうち、1.2% は資本増、0.7% は労働増で説明でき、残りの 1.1% は「その他」つまり技術進歩や組織効率の向上です。この 1.1% を ソロー残差 と呼び、実は TFP の「無知の尺度」と皮肉られることもあります(直接観測できず、計算で求めた残り物だから)。

ソロー・モデルの基本構造

ソロー・モデルは、長期的に 1 人あたり所得(生活水準)を何が決めるか明かすモデルです。試験では「貯蓄率や人口成長率を上げたら長期成長率は変わるか」という問いで出ます。

前提となる生産関数:

Y=AKαL1αY = A \cdot K^\alpha \cdot L^{1-\alpha}

ここで Y は GDP、A は技術水準、K は資本ストック、L は労働。このコブ=ダグラス型は、規模に対して一定の収穫を持ちます。

1 人あたりに変換:

労働者 1 人あたりで考えると(記号小文字):

y=Akαy = A \cdot k^\alpha

ここで y = Y/L(1 人あたり GDP)、k = K/L(1 人あたり資本)。

資本蓄積の動学方程式:

Δk=sy(n+δ)k\Delta k = s \cdot y - (n + \delta) \cdot k

各項の意味:

  • s: 貯蓄率。所得のうち消費されずに投資される割合
  • y: 1 人あたり所得(生産)
  • n: 人口成長率
  • δ: 資本減耗率(機械の劣化など)

この式は「1 人あたり資本の増加 = 投資 - 減耗と人口増で薄まる分」という意味です。

定常状態への収束:

長い時間が経つと Δk = 0 に到達し、定常状態 k* に落ち着きます。

sA(k)α=(n+δ)ks \cdot A \cdot (k^*)^\alpha = (n + \delta) \cdot k^*

整理すると:

k=(sAn+δ)1/(1α)k^* = \left( \frac{sA}{n + \delta} \right)^{1/(1-\alpha)}

定常状態では 1 人あたり資本と 1 人あたり所得が一定で、経済は一定の速度で成長します。

ソロー・モデルの重要な含意:

パラメータ変化定常状態の k*定常状態の y*長期成長率経済学的含意
貯蓄率 s 上昇増加増加変わらない1 人あたり所得の水準は上がるが、成長率は変わらない
人口成長率 n 上昇減少減少変わらない人口増で 1 人あたり資本が薄まり、水準が低下
技術進歩率 g 上昇上昇唯一の持続的成長源。A が上昇すると定常状態での成長も加速

この表は試験で必出です。「貯蓄率を 2 倍にしたら長期成長率はどうなるか」と聞かれたら「変わらない。水準は上がるけど成長率は変わらない」と答えるのが正解です。

収束仮説:後進国のキャッチアップ

初期資本が少ない国(途上国)は、定常状態に向かう過程で高い成長率を示します。日本が高度成長期に 10% の成長を達成できたのは、戦後資本が少なかったから定常状態に向かう過程だったと説明できます。一方、既に定常状態に近い先進国は、成長率が技術進歩率程度に落ち着きます。

ハロッド=ドーマー・モデルと不安定性

ソロー・モデル出現以前の成長理論で、投資の「二重性」(需要効果と供給効果)を強調しました。

基本概念:

  • 保証成長率 Gw = s / v:財市場が均衡を保つ成長率
    • s は貯蓄率、v は資本係数(v = K/Y、GDP を 1 単位増やすのに必要な資本ストック)
  • 自然成長率 Gn = n + g:労働人口成長と技術進歩を合わせた供給側の成長上限
  • 現実の成長率 G:実際に達成される成長率

ナイフエッジの不安定性(ハロッド=ドーマーの最大の特徴):

3 つの成長率が完全に一致することは偶然に等しく、ズレると経済は悪化の道をたどります。

  • G > Gw のとき:需要が供給を上回る → 在庫不足 → 企業がさらに投資増 → ギャップが広がる(好況加速)
  • G < Gw のとき:供給が需要を上回る → 在庫過剰 → 企業が投資削減 → ギャップが広がる(不況悪化)

つまり、わずかなズレが拡大する「ナイフの刃の上を歩くような不安定さ」があります。

さらに、長期的には Gw > Gn なら供給不足でインフレ、Gw < Gn なら需要不足で失業、という問題も生じます。

ソロー・モデルによる安定化:

ソロー・モデルは資本係数 v可変 にしました。これにより、経済が自動的に定常状態に向かう安定的な均衡が実現します。

項目ハロッド=ドーマーソロー・モデル
資本係数固定(ナイフエッジ)可変(資本と労働の代替可能)
均衡の安定性不安定(わずかなズレが拡大)安定(定常状態に自動収束)
政策含意成長率を一致させるための細かい調整が必要技術進歩が唯一の持続的成長源

成長理論で最も誤解されるポイント

「貯蓄率を上げれば長期成長率が上がる」という考えは誤りです。ソロー・モデルではそれは水準効果で、成長率は技術進歩率のみで決まります。これが OECD 諸国で貯蓄率は異なるのに成長率は似ているという観察と合致します。


国際マクロ

国際収支の構造

開放経済では、国内経済だけでなく海外との取引が重要です。国際収支統計は 2 つの大きなブロック(経常収支と資本移動収支)に分かれます。

大勘定小勘定具体例
経常収支貿易収支財の輸出・輸入(自動車、食糧など)
サービス収支旅行、輸送料、知財使用料
第一次所得収支海外投資の利子・配当・利益(日本は大幅黒字)
第二次所得収支無償援助、国際機関への拠出金
金融勘定(資本移動など)直接投資海外現地法人への投資、M&A
証券投資外国債、外国株の売買
その他投資銀行預金、ローンなど
金融収支外貨準備中央銀行の為替介入

基本等式:

経常収支+金融勘定+誤差脱漏0\text{経常収支} + \text{金融勘定} + \text{誤差脱漏} ≈ 0

経常収支が黒字なら金融勘定は赤字になり、逆もしかり。日本の場合、経常収支が大幅黒字なのは、金融勘定が赤字(海外投資が多い)ということです。

IS バランス識別式との関係:

経常収支=(SI)+(TG)\text{経常収支} = (S - I) + (T - G)

  • S - I:民間貯蓄超過(貯蓄が投資を上回る分)
  • T - G:政府財政収支(税収が支出を上回る分)

つまり、家計・企業が貯蓄超過で、その余剰が海外投資に向かうか、政府が貯蓄超過(財政黒字)かで経常黒字が生まれます。

購買力平価説(PPP)

為替レートの決定理論の一つで、物価水準に基づいて説明します。

絶対的購買力平価:

e=PPe = \frac{P}{P^*}

  • e:為替レート(円/ドル)
  • P:自国物価水準(日本の物価)
  • P*:外国物価水準(米国の物価)

解釈:同じバスケットの商品が、日本では 100 円、米国では 1 ドルで買えるなら、為替レートは 100 円 = 1 ドルになるべき、という理屈です。

相対的購買力平価:

Δeeππ\frac{\Delta e}{e} \approx \pi - \pi^*

  • Δe/e:為替レート変化率(年率、例:5%)
  • π:自国インフレ率(日本、例:2%)
  • π*:外国インフレ率(米国、例:-3%)

意味:自国のインフレが外国より 5 ポイント高いなら、自国通貨は 5% 減価(円安)する傾向がある、ということです。

現実での限界:

  • 非貿易財(理髪、外食など)は物価には反映されるが、輸出入されないので PPP 仮説で説明できない
  • 運送費、関税、流通マージンで価格に差がつく
  • 短期的には為替は変動するが、PPP は長期傾向を説明するのが役割

金利平価説(利子率平価)

資本が自由に国境を越えるとき、異なる国の利子率がどう関係するかを説明します。

カバーなし金利平価:

ii=eeeei - i^* = \frac{e^e - e}{e}

各項の意味:

  • i:自国名目金利(日本の金利)
  • i*:外国名目金利(米国の金利)
  • e:現在の為替レート
  • ee:予想される将来為替レート(1 年後など)

直感的な説明:

自国金利が外国より高い(i > i*)と仮定します。そうすると、皆が「高い金利で運用できる」と考えて自国に資本流入し、自国通貨が高騰(円高)することが予想されます。すると、通貨高による損失を考慮に入れると、実質的なリターンは等しくなる、という理屈です。

計算例:

  • 日本金利 i = 0%(0.00)、米国金利 i* = 3%(0.03)
  • 現在の為替レート e = 100 円/ドル

式に代入:

00.03=ee1001000 - 0.03 = \frac{e^e - 100}{100}

0.03=ee100100-0.03 = \frac{e^e - 100}{100}

ee100=3e^e - 100 = -3

ee=97e^e = 97

つまり、米国の方が 3% 高い金利を提供しているから、将来ドルが 100円から 97円へと下落(円高)すると予想される、という意味です。

金利平価説の重要な含意

「高金利通貨は常に増価する」という素朴な考えは誤りです。むしろ金利平価説では「高金利通貨は将来減価が予想される」のです。高い利息は、通貨価値低下のリスクへの補償なのです。

J カーブ効果(J曲線効果)

通貨安(円安)になると、長期的には経常収支が改善するはずですが、短期では一旦悪化することがあります。その時系列グラフが J の字に見えることから名付けられました。

メカニズムの 3 ステップ:

  1. 直後(価格効果が先行)
    • 円安になると、外国から輸入する商品の円建て価格が上昇
    • 例:米国から買うジーンズが 50 ドル → 円安で 5,000 円から 5,500 円に
    • しかし輸出・輸入の「数量」はすぐには変わらない(契約済みなど)
    • 結果:輸入金額が増える → 経常収支悪化
  2. 中期(数量効果が遅れて現れる)
    • 円安が続くと、外国人「日本製品が安くなった」と感じて購入増
    • 日本企業も「外国が儲かる」と輸出に注力
    • 輸出数量増、輸入数量減
    • 経常収支改善へ向かう
  3. グラフ形状
    • 最初は下に落ち込む(J の下部)
    • 時間とともに上向く(J の上部)

このため、政策当局が「為替改善で経常黒字化」と期待しても、短期では逆に悪化して国民の不安が高まることがあります。

アブソープション・アプローチと国家財政恒等式

経常収支を考えるとき、為替だけでなく「国内でどれだけ使い、どれだけ貯蓄しているか」という視点でも整理できます。過去問で頻出なのが アブソープション・アプローチ国家財政恒等式 です。

アブソープション・アプローチ は、

経常収支=YA\text{経常収支} = Y - A

で表します。

  • Y:国民所得(GDP に近い国内生産)
  • A:国内需要(吸収。消費 + 投資 + 政府支出)

意味は単純で、国内で生み出した所得より国内支出が小さければ、その差額だけ経常黒字になる ということです。反対に、国内支出が所得を上回れば、足りない分を海外から借りる形になり、経常赤字になります。

この式をさらに貯蓄・投資・財政に分けると、国家財政恒等式 にたどり着きます。

経常収支=(SI)+(TG)\text{経常収支} = (S - I) + (T - G)

  • S - I:民間部門の貯蓄超過
  • T - G:政府部門の財政収支

この式から読めることは、次の通りです。

  • 民間が貯蓄超過 なら、海外へ資金を回しやすく、経常黒字要因になる
  • 政府が財政赤字 なら、その分だけ経常収支を悪化させやすい
  • 経常黒字でも財政赤字があるなら、民間の貯蓄超過がそれ以上に大きい と読める

試験では「経常収支は為替だけで決まる」と考えると外しやすいので、数量面では J カーブ、所得面ではアブソープション、資金面では国家財政恒等式 と整理しておくと強いです。

マーシャル=ラーナー条件

通貨減価(円安)が経常収支を改善するための必要条件です。

εx+εm>1|\varepsilon_x| + |\varepsilon_m| > 1

  • εx:輸出の価格弾力性(為替が 1% 変わるとき、輸出数量がどう変わるか)
  • εm:輸入の価格弾力性(為替が 1% 変わるとき、輸入数量がどう変わるか)

意味:

両国の需要が価格変化に反応しやすいほど(弾力性が高いほど)、通貨減価による経常改善は大きくなります。J カーブ効果は、短期ではこの条件が満たされにくい(特に輸出入の数量変化が遅い)ことで説明できます。


マンデル=フレミング・モデル:開放経済の政策効果

ここが試験の山場

マンデル=フレミング・モデルは、開放経済での財政・金融政策の効き方を決定づけるモデルです。為替制度によって政策効果が反転する非直感的な結果は、経済学の重要な洞察です。

このモデルは、IS-LM を開放経済に拡張し、為替制度による政策効果の違いを分析します。

前提条件:

  • 小国開放経済:この国の政策が世界利子率に影響しない
  • 完全資本移動:資本は国境を自由に移動し、利子率平価が成立(国内利子率 = 世界利子率)
  • 変動制か固定制かで結果が反転

マンデル=フレミング 4ケースの完全図解

マンデル=フレミング・モデルは、為替制度(固定 vs 変動)と政策手段(財政 vs 金融)の 2×2 マトリックスで、政策効果が 4 つのパターンに分かれます。「有効な政策が対角線上」 という配置が試験で何度も出題されます。

金融政策(中央銀行の金融緩和)財政政策(政府支出増加)
変動為替制有効(所得増加)無効(所得変わらず)
固定為替制無効(所得変わらず)有効(所得増加)

「対角線上」という覚え方:

有効な政策は変動制での金融と固定制での財政という対角線上。つまり、「金利差を利用できる制度+その制度に適した政策」という組み合わせだけが有効です。

標準的な 5段の因果連鎖メカニズム

政策が所得に影響するまでの道筋は、必ず 5つのステップを通ります。このチェーンのどこかが「相殺」される(例:為替変動、中央銀行介入)ことで、政策効果が消滅します。

全政策に共通の因果連鎖パターン:

政策実行金利変化資本移動為替変化純輸出変化GDP変化\text{政策実行} \to \text{金利変化} \to \text{資本移動} \to \text{為替変化} \to \text{純輸出変化} \to \text{GDP変化}

このチェーンが どこかで切れたり反転したりする ことで、政策効果が変わります。

  • 変動制で金融有効:5段全て正方向に進む(利子率低下 → 資本流出 → 円安 → 輸出増 → GDP増)
  • 変動制で財政無効:3段目まで進むが 4段目で反転(利子率上昇 → 資本流入 → 円高 → 輸出減 → GDP変わらず)
  • 固定制で財政有効:政策は 3段で止まるが、中央銀行介入が 2段を補強(利子率上昇 → 資本流入 → 為替固定のため CB 介入で LM シフト → 利子率復帰 → GDP増)
  • 固定制で金融無効:政策の効果が 2段で完全に消滅(利子率低下 → 資本流出 → 為替固定のため CB 介入で LM シフト戻す → 利子率復帰 → 元に戻る)

変動為替制:金融有効、財政無効

変動為替制では、為替相場は市場で自由に決定されます。

財政政策(政府支出増)の場合:

  1. IS 右シフト:政府支出増で IS が右に動く
  2. 利子率上昇圧力:所得増で貨幣需要増 → 利子率上昇圧力
  3. 資本流入:高い利子率に引き付けられて海外から資本流入 → 自国通貨高(円高)
  4. 輸出減・輸入増:円高で日本製品は高くなり、外国製品は安くなる → 輸出減、輸入増
  5. IS が左へ戻る:輸出減は GDP を減らし、IS が再び左にシフト
  6. 結果:所得は変わらず、政策効果ゼロ

金融政策(金融緩和)の場合:

  1. LM 右シフト:貨幣供給増で LM が右に動く
  2. 利子率低下:貨幣増で利子率低下
  3. 資本流出:低い利子率から逃げるように海外へ資本流出 → 自国通貨安(円安)
  4. 輸出増・輸入減:円安で日本製品が安くなり、外国製品は高くなる → 輸出増、輸入減
  5. IS も右シフト:輸出増は GDP を増やし、IS も右にシフト
  6. 結果:所得が増加、政策効果あり

固定為替制:財政有効、金融無効

固定為替制では、政府が為替レートを固定レートに保つため、為替が自由に動きません。その代わり、中央銀行が外貨買い・売りで介入し、マネーサプライが変わります。

財政政策(政府支出増)の場合:

  1. IS 右シフト:政府支出増で IS が右に動く
  2. 利子率上昇圧力:所得増で利子率上昇
  3. 資本流入:高い利子率に引き付けられて資本流入
  4. 為替が上がる圧力:通常なら円高になるが、中央銀行がそれを阻止
  5. 中央銀行の介入:円高を阻止するため、外貨買い・自国通貨売りで為替を固定維持 → 自国通貨供給が増える(LM 右シフト)
  6. 利子率が戻る:LM シフトで利子率が世界利子率に戻る
  7. 結果:所得が増加、政策効果あり

金融政策(金融緩和)の場合:

  1. LM 右シフト:貨幣供給増で LM が右に動く
  2. 利子率低下:貨幣増で利子率低下
  3. 資本流出:低い利子率から資本流出 → 為替が下がる圧力
  4. 中央銀行の介入:円安になるのを阻止するため、外貨売り・自国通貨買い → 自国通貨供給が減る(LM 左シフト)
  5. 貨幣供給増の効果が相殺:LM が元に戻る
  6. 結果:所得は変わらず、政策効果ゼロ

制度による効果の比較表

為替制度政策メカニズム効果覚え方
変動制財政拡大IS 右 → 利子率↑ → 資本流入 → 通貨高 → NX 減 → IS 戻る無効為替変動が政策を打ち消す
変動制金融緩和LM 右 → 利子率↓ → 資本流出 → 通貨安 → NX 増 → IS も右有効為替変動が政策を強化
固定制財政拡大IS 右 → 利子率↑ → 資本流入 → 為替維持のため LM も右有効介入が政策を強化
固定制金融緩和LM 右 → 利子率↓ → 資本流出 → 為替維持のため LM 戻る無効介入が政策を打ち消す

記憶法:

「変動→金融有効、固定→財政有効」

または

「為替が変わると、金融は強化・財政は相殺。為替固定だと、逆」

マンデル=フレミングは現実の政策で何を教えるか

変動為替制の国は金融政策に頼らざるを得ず、固定為替制(または準固定の中国など)の国は財政政策が有効です。現在の日本は変動制なので、金融政策が政策の要です。


典型的な誤答パターンと確認問題


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