IS-LM と政策効果
消費、投資、乗数、IS-LM と財政政策、金融政策のつながりを整理する
このページの役割
このページは、マクロ経済学の中核である IS-LM 分析を、前提知識ゼロから理解できるように解説するページです。消費と乗数の仕組みから始めて、IS 曲線と LM 曲線の意味を理解し、最終的に「財政政策と金融政策はそれぞれ何にどう効くか」を自分の言葉で説明できることを目指します。
このページを読む前に
国民所得計算と主要指標 で GDP や物価指標の基本を押さえておくと、このページの内容がスムーズに入ります。消費理論と投資理論の詳細は 消費理論と投資理論 にありますが、このページでも必要な部分は説明します。
まずイメージをつかむ
経済には「モノの市場(財市場)」と「お金の市場(貨幣市場)」の 2 つがあります。政府が道路を作る(財政政策)とモノの需要が増え、中央銀行がお金を増やす(金融政策)とお金の借りやすさが変わります。この 2 つの市場は利子率でつながっているので、片方だけ見ても全体像は掴めません。
IS-LM 分析は、この 2 つの市場を 1 枚のグラフで同時に見る道具です。IS は Investment = Savings(投資=貯蓄、財市場の均衡)、LM は Liquidity preference = Money supply(流動性選好=貨幣供給、貨幣市場の均衡)の頭文字です。2 本の曲線の交点が「両方の市場が同時に均衡する所得と利子率」を示します。
政策の効果を考えるときは、「どちらの曲線が動くか → 交点がどう移るか」を追えばよく、これが分かると財政政策と金融政策の違いが図 1 枚で整理できます。
このページでは、まず財市場の仕組み(消費関数と乗数効果)を理解し、次に貨幣市場の仕組み(お金の需要と信用創造)を理解し、最後にこの 2 つを組み合わせた IS-LM 分析で政策効果を読む、という順番で進みます。
試験で何が問われるか
- 限界消費性向と乗数の関係を説明できるか
ISとLMの意味を区別できるか- 財政政策と金融政策が、所得と利子率にどう効くか読めるか
- クラウディングアウトの考え方を説明できるか
- 国債価格と利回りの逆関係を、公開市場操作と結び付けて説明できるか
- 金融政策の伝播メカニズムを、利子率チャネルを中心に整理できるか
- 開放経済で
IS-LM-BPを使うべき場面を判定できるか
出題実績(R2〜R6)
この論点は直近5年で 23問 出題されています(うち△2問。最頻出マクロ論点)。
R6: Q5, Q6, Q7, Q8, Q11-12 / R5: Q7, Q8, Q9, Q13-14 / R4: Q4, Q5, Q6-7 / R3: Q2△, Q4, Q5-6, Q7-8, Q9, Q10 / R2: Q1△, Q4, Q5, Q6, Q10
△は統計データ読み取り問題です。詳細な問題の入手は J-SMECA 公式 から対応年度のPDFをご確認ください。
財市場の基礎: 消費と乗数
消費関数 ── 所得が増えると消費はどう増えるか
月収が 5 万円増えたとき、あなたはその全額を使うでしょうか。多くの人は一部を貯金に回し、残りを使います。たとえば 5 万円のうち 4 万円を使って 1 万円を貯金するなら、「所得が 1 円増えたとき消費が 0.8 円増える」と表現でき、この 0.8 が 限界消費性向(記号 c)です。
ケインズ型消費関数はこの考え方を式にしたものです。
C₀ は「所得がゼロでも必要な最低限の消費」(基礎消費)、c は限界消費性向、Y は所得です。所得がゼロでも食費や住居費は必要なので C₀ が存在し、所得が増えるほど cY の分だけ消費が上乗せされます。
ここから派生する概念を整理します。
| 概念 | 式 | 意味 |
|---|---|---|
限界消費性向 c | ΔC / ΔY | 所得が 1 増えたとき消費が増える量。必ず 0 < c < 1 |
限界貯蓄性向 s | 1 - c | 所得が 1 増えたとき貯蓄が増える量 |
| 平均消費性向 APC | C / Y = C₀/Y + c | 所得に対する消費の割合。所得が増えると C₀/Y が小さくなるので APC は低下する |
限界消費性向が 0 < c < 1 になるのは、人は所得増加分のすべてを消費には回さないからです。この「使い残し」が貯蓄となり、限界貯蓄性向 s = 1 - c として表されます。
乗数効果 ── なぜ支出の増加は何倍にも膨らむか
ここから、マクロ経済学で最も重要な仕組みの一つである「乗数効果」を見ていきます。
政府が公共事業に 100 万円を支出したとしましょう。この 100 万円は建設会社の売上になり、その従業員の所得になります。限界消費性向が 0.8 なら、従業員は所得増加分の 80 万円を消費に使います。その 80 万円は別の誰かの所得になり、その人はまた 64 万円(80 万円 × 0.8)を使います。この連鎖が繰り返されることで、最初の 100 万円は経済全体では何倍もの所得増加をもたらします。
これが乗数効果です。連鎖を足し合わせると 100 + 80 + 64 + 51.2 + … = 100 × 1/(1-0.8) = 100 × 5 = 500 万円になります。この「5」が 乗数 です。
乗数の大きさは、経済のモデル(税の仕組み、貿易の有無)によって変わります。以下、基本から順に見ていきます。
パターン 1: 定額税モデル(最も基本)
税額が所得にかかわらず一定のモデルです。均衡所得の式は Y = C₀ + c(Y - T) + I + G で、これを Y について解くと乗数が求まります。
| 乗数 | 公式 | 意味 |
|---|---|---|
| 政府支出乗数 | 1 / (1 - c) | G が 1 増えたとき Y がどれだけ増えるか |
| 租税乗数 | -c / (1 - c) | T が 1 増えたとき Y がどれだけ減るか |
| 均衡予算乗数 | 1 | G と T を同額増やしたとき Y も同額増加する |
なぜ政府支出乗数と租税乗数の大きさが違うのかというと、政府支出 1 円はそのまま 1 円の需要になりますが、減税 1 円は家計の可処分所得を 1 円増やすだけで、そのうち消費に回るのは c 円だからです。最初の一撃が小さい分、租税乗数は政府支出乗数より絶対値が小さくなります。
均衡予算乗数が常に 1 になることは、1/(1-c) + (-c/(1-c)) = (1-c)/(1-c) = 1 と確認できます。c の値に依存しない点が試験で問われやすいです。
計算例: c = 0.8 なら、政府支出乗数 = 1/(1-0.8) = 5、租税乗数 = -0.8/(1-0.8) = -4。政府支出を 100 増やせば所得は 500 増え、増税を 100 行えば所得は 400 減ります。
パターン 2: 比例税モデル
現実の税制では、所得が増えると税額も増えます(所得税など)。これを T = tY(t: 税率)とモデル化すると、乗数は次のようになります。
| 乗数 | 公式 |
|---|---|
| 政府支出乗数 | 1 / (1 - c(1 - t)) |
c = 0.8, t = 0.25 なら 1/(1 - 0.8×0.75) = 1/0.4 = 2.5 です。定額税モデルの乗数 5 と比べてかなり小さくなります。
なぜ比例税で乗数が小さくなるか:
定額税では均衡所得 Y = (1/(1-c)) × (C_0 + I + G - cT) で、所得が増えるたびに消費に回る限界消費性向は常に c です。
一方、比例税では可処分所得が Y - tY = (1-t)Y になるので、所得が 1 増えるたびに税も増え、消費に回る額は c(1-t) に縮小します。この c(1-t) が定額税モデルの c より小さいため、乗数 1/(1-c(1-t)) も小さくなるのです。
| 定額税 | 比例税 (税率t) | |
|---|---|---|
| 均衡所得の式 | Y = (1/(1-c)) × (C_0 + I + G - cT) | Y = (1/(1-c(1-t))) × (C_0 + I + G) |
| 政府支出乗数 | 1/(1-c) | 1/(1-c(1-t)) |
| 租税乗数 | -c/(1-c) | (所得に比例する税の場合、計算が異なる) |
| 均衡予算乗数 | 1 | (比例税では定義が異なる) |
| 乗数の大小 | より大きい | より小さい |
| 例:c=0.8, t=0.25 | G乗数 = 1/(1-0.8) = 5 | G乗数 = 1/(1-0.8×0.75) = 1/0.4 = 2.5 |
ビルトインスタビライザー(自動安定化装置)
比例税モデルの乗数が定額税より小さいということは、景気変動に対する経済の自動調整が「より強い」ということです。この自動調整の仕組みを ビルトインスタビライザー と呼びます。
好況期のシナリオ:
- 景気が良くなり、所得
Yが増加する - 比例税では税収
T = tYも自動的に増加する - 可処分所得の増加幅が抑制される → 消費の増加幅も抑制
- 結果として、景気の過熱が自動的に緩和される
不況期のシナリオ:
- 景気が悪くなり、所得
Yが低下する - 比例税では税収
T = tYも自動的に減少する - 可処分所得の低下幅が縮小される → 消費の低下幅も緩和
- 結果として、景気悪化が自動的に緩和される
重要な性質:
- 追加の政策判断や裁量的な政策実行を 必要としない → 自動的に機能
- 税率を変えたり、政府支出を増減させたりする必要がない
- 所得変動に対して、税制が自動的に「衝撃吸収」を行う役割
- グローバルな財政政策の遅滞(認識の遅れ、議論の時間、実行の遅れ)を補う
数値例で見る効果:
- 定額税、乗数 5 の場合:所得が 100 増えると、追加の景気刺激政策なしで所得は 500 増える(乗数 5 倍で膨らむ)
- 比例税(t=0.25)、乗数 2.5 の場合:同じ初期ショック 100 に対して、所得は 250 にとどまる(自動で「ブレーキ」がかかる)
パターン 3: 開放経済モデル
外国との貿易がある場合、所得が増えると輸入も増えます(M = mY、m: 限界輸入性向)。輸入は国内の需要が海外に流出することを意味するので、乗数はさらに小さくなります。
| 乗数 | 公式 |
|---|---|
| 政府支出乗数(比例税+開放) | 1 / (1 - c(1 - t) + m) |
| 政府支出乗数(定額税+開放) | 1 / (1 - c + m) |
c = 0.8, t = 0.25, m = 0.1 なら 1/(0.4 + 0.1) = 2.0 です。
乗数の大小関係と覚え方
3 つのパターンを並べると、乗数の大きさは次の順です。
定額税(閉鎖)> 比例税(閉鎖)> 比例税(開放)
考え方はシンプルで、「漏れ」(貯蓄・税・輸入)が多いほど乗数は小さくなります。定額税モデルでは漏れは貯蓄だけですが、比例税が加わると税も漏れになり、さらに輸入が加わるともう一つ漏れが増えます。
典型的な誤答パターン(乗数)
- 誤り: 均衡予算乗数は
cに依存する → 正: 常に 1 - 誤り: 開放経済では乗数が大きくなる → 正: 輸入という漏れが加わるので小さくなる
- 誤り: 比例税率
tを上げると乗数が大きくなる → 正:tが大きいほどc(1-t)が小さくなり、乗数は小さくなる
確認問題(乗数)
45 度線分析(ケインジアンクロス)── グラフで見る乗数効果
ここまで、乗数効果を代数式(均衡所得の式)で説明してきました。同じ仕組みをグラフで視覚化したのが「45 度線分析」です。
基本的なセットアップ
縦軸と横軸: どちらも所得 Y です(45 度線の意味はここから来ます)。
- 横軸: 所得
Y(GDP、国民所得) - 縦軸: 総支出(aggregate expenditure)
AD
45 度線: Y = AD を表す直線。この線上の全ての点で、所得と支出が等しい(= 均衡状態)。
総支出線(AD 線)
政府支出や投資を含めた総需要は:
これは Y に対する1 次関数です。Y の係数は c(限界消費性向)で、0 < c < 1 なので、AD 線は 45 度線より傾きが緩い直線になります。
AD 線の要素:
- 切片(
C_0 + I + G - cT): 所得がゼロのときの支出(自動的に発生する支出) - 傾き(
c): 所得が 1 増えたとき、支出がc増える
均衡とは何か
45 度線と AD 線の交点が均衡所得 Y* です。この点で Y = AD が成立します。
もし AD < Y(AD 線が 45 度線より下)なら:
- 所得 > 支出 → 在庫が積み上がる → 企業が生産を減らす → Y が低下して交点に向かう
もし AD > Y(AD 線が 45 度線より上)なら:
- 所得 < 支出 → 在庫が枯渇する → 企業が生産を増やす → Y が上昇して交点に向かう
つまり、市場メカニズムは自動的に 45 度線と AD 線の交点に向かいます。
グラフで見る乗数効果
政府支出 G が ΔG だけ増えたとしましょう。
- AD 線が上へシフト: 切片が
ΔGだけ上がるので、AD 線全体が上にシフト - 新しい交点: 45 度線と新しい AD 線の交点が新しい均衡
Y' - 所得の増加:
ΔY = ΔG × 1/(1-c)
グラフの見た目:
- 元の AD 線(傾き
c)が上方シフト - 新しい AD 線と 45 度線の交点までの距離が、直線的な移動で示される
- その距離が乗数効果の大きさを表す
乗数効果がグラフに見える仕組み
AD 線が ΔG だけ上にシフトしたとき、45 度線との新しい交点までの距離は ΔG より大きいです。なぜか:
この幾何級数の和が、グラフでは 45 度線に沿った「斜めの移動」として視覚化されます。
| グラフの要素 | 意味 |
| --- | --- | --- |
| 45 度線 | 均衡(Y = AD)の軌跡 |
| AD 線の傾き | 限界消費性向 c |
| AD 線の位置(切片) | 自動支出 C_0 + I + G - cT |
| 交点 | 現在の均衡所得 |
| AD 線のシフト距離 | 政府支出などの変化 ΔG |
| 45 度線に沿った移動距離 | 乗数効果を含めた実際の所得変化 |
代数的分析との対応
45 度線分析は、あくまで乗数効果を視覚化したもので、新しい理論ではありません。
- 代数式:
Y = (1/(1-c)) × (C_0 + I + G - cT)← 乗数1/(1-c)を明示的に計算 - グラフ: 45 度線と AD 線の交点 ← 乗数効果が「傾きの違い」として表現される
グラフを見れば、「c が大きい(消費性向が高い)ほど、AD 線の傾きが 45 度線に近づき、交点が高くなる」ことが直感的に分かります。これが「c が大きいほど乗数が大きい」という事実の図解です。
乗数計算の完全な例 ── ステップバイステップ
試験では乗数の概念だけでなく、実際の計算を求められることが多いです。以下、定額税モデルと比例税モデルの両方で,同じ経済を例に取って示します。
前提条件(定額税モデル):
- 基礎消費
C_0 = 100 - 限界消費性向
c = 0.8 - 民間投資
I = 200 - 政府支出
G = 300 - 定額税
T = 100
Step 1: 均衡所得の導出
均衡条件は Y = C + I + G です。消費関数 C = C_0 + c(Y - T) を代入します。
展開:
Step 2: 政府支出が 50 増加した場合の変化
新しい均衡は G = 350 になります。
政府支出が 50 増加:
所得増加:ΔY = 2850 - 2600 = 250
乗数の検証:政府支出乗数 = 1/(1-c) = 1/(1-0.8) = 1/0.2 = 5
確認:50 × 5 = 250 ✓
Step 3: 比例税モデルでの同じ計算
次に、定額税ではなく 比例税(税率 t = 0.25) に変更した場合を見ます。
前提条件(比例税モデル):
C_0 = 100c = 0.8I = 200G = 300- 税収
T = 0.25Y(比例税)
均衡所得:
政府支出が 50 増加(G = 350):
所得増加:ΔY = 1625 - 1500 = 125
乗数の検証:政府支出乗数 = 1/(1-c(1-t)) = 1/(1-0.8×0.75) = 1/(1-0.6) = 1/0.4 = 2.5
確認:50 × 2.5 = 125 ✓
Step 4: 比較まとめ
| 項目 | 定額税モデル | 比例税モデル |
|---|---|---|
初期均衡所得 Y₁ | 2,600 | 1,500 |
| 政府支出乗数 | 5 | 2.5 |
| G が 50 増加時の ΔY | 250 | 125 |
| 所得増加の理由 | 乗数効果が大 | 乗数効果が小(自動安定化が機能) |
重要な洞察:
- 同じ政府支出の増加 50 に対して、定額税モデルでは所得が 250 増える一方、比例税モデルでは 125 増にとどまります
- これは、比例税が増える所得の一部を「自動的に吸収」するため、消費に回る金額が抑制されるからです
- 定額税では税額 100 は変わらないので、所得増加による消費増加がフルに乗数効果を生みます
典型的な誤解
誤り 1: 「AD 線の傾きが大きいほど乗数が大きい」
正解: 逆です。AD 線の傾き = c なので、c が大きいほど AD 線は 45 度線に近づき、交点が高くなります。傾きが 45 度に近い = 乗数が大きい。
誤り 2: 「45 度線の位置は政策で変わる」
正解: 45 度線は常に Y = AD を表す基準線。変わるのは AD 線です。
デフレギャップ ── 景気が悪いとき何が足りないか
乗数効果を理解したところで、もう一つ重要な概念を見ておきます。
経済には「みんなが働ける状態での GDP」(完全雇用 GDP、Y_F)があります。しかし需要が足りないと、現実の均衡 GDP(Y_E)はそこまで届きません。この「完全雇用 GDP と現実の均衡 GDP の差を生んでいる需要の不足額」がデフレギャップです。
| 概念 | 条件 | 意味 |
|---|---|---|
| デフレギャップ | Y_E < Y_F | 総需要不足。非自発的失業が発生している |
| インフレギャップ | Y_E > Y_F | 総需要超過。物価上昇圧力がかかっている |
重要なのは、デフレギャップの「大きさ」は GDP の差そのものではなく、完全雇用 GDP における「総需要の不足額」だということです。乗数効果があるので、必要な政府支出は GDP ギャップよりも小さくなります。
計算例: 完全雇用 GDP = 500、均衡 GDP = 400、乗数 = 5 の場合を考えます。GDP ギャップは 500 - 400 = 100 ですが、デフレギャップ(= 必要な政府支出増)は 100 / 5 = 20 です。20 の支出増が乗数 5 で膨らんで 100 の所得増加をもたらし、完全雇用 GDP に到達します。
リカードの等価定理 ── 国債で景気刺激は効くか
ここまでの議論では、政府支出を増やせば乗数効果で所得が増えるとしてきました。しかし、その財源を国債で賄った場合、本当に効果があるのでしょうか。
リカードの等価定理は、「国債発行による財政支出は、将来の増税と同じだから消費に影響しない」という考え方です。
その論理はこうです。政府が減税して国債を発行すると、合理的な消費者は「いずれこの国債を返済するために増税される」と予想します。そのため、減税で増えた可処分所得を消費に回さず、将来の増税に備えて貯蓄に回します。結果として消費は変わらず、財政政策は無効になります。
ただし、この定理が成り立つには厳しい条件が必要です。消費者が完全に合理的で将来を見通せること、借入制約がないこと、世代間の利他的連帯があることなどです。現実にはこれらの条件は満たされにくいため、財政政策は一定の効果を持つと考えるのが一般的です。試験では「等価定理が成り立つ条件」と「成り立たない理由」の両方が問われます。
ここまでのまとめ
財市場では、所得が増えると消費が増え、それがさらに誰かの所得を増やす「乗数効果」が働きます。乗数の大きさは経済の構造(税制、貿易)で変わり、漏れが多いほど小さくなります。次に見る貨幣市場と組み合わせることで、IS-LM 分析の土台が揃います。
貨幣市場の基礎: お金の需要と供給
財市場の次は、貨幣市場(お金の市場)を見ていきます。「なぜ利子率が動くのか」「中央銀行は何をしているのか」を理解するためのセクションです。
なぜ人はお金を持ちたがるか ── 貨幣需要の 3 動機
お金を銀行に預けておけば利息がつきます。それでも財布に現金を入れておいたり、普通預金にすぐ引き出せる形で置いておくのは、利息よりも「すぐ使える便利さ」を優先しているからです。ケインズはこの「お金を手元に持っておきたい理由」を 3 つに整理しました。
| 動機 | どういう理由か | 何に依存するか |
|---|---|---|
| 取引動機 | 日常の買い物や支払いに必要だから | 所得 Y が多いほど必要(正の関係) |
| 予備的動機 | 急な出費(病気、修理など)に備えたいから | 所得 Y が多いほど備えも大きい(正の関係) |
| 投機的動機 | 債券投資のタイミングを待つために手元に置きたいから | 利子率 r が低いほど持ちたい(負の関係) |
3 つ目の「投機的動機」がやや分かりにくいので補足します。債券と利子率には「利子率が下がると債券価格が上がる」という関係があります。利子率がすでに低い状態では、債券価格が高く、これから下がるリスクが大きい。だから債券を買わずにお金のまま持っておこう ── これが投機的動機です。
これらをまとめて、貨幣需要関数は L = kY - hr と表します(k: 所得感応度、h: 利子率感応度)。所得が増えるほど貨幣需要は増え、利子率が上がるほど貨幣需要は減ります。
流動性の罠 ── 金融政策が無効になる極端なケース
利子率が極端に低くなると、誰もが「これ以上債券を買っても損するだけ」と考え、全員がお金を持ちたがります。この状態では貨幣需要が無限大に近づき、h → ∞ となります。結果として、いくらお金を供給しても利子率が下がらなくなります。これが 流動性のわな です。
流動性の罠の発生条件:
- 利子率がゼロ下限に到達(通常、名目利子率は0未満にはならない)
- LM 曲線が水平に近づく
- 金融政策によるマネーサプライの増加が、全て「貨幣需要の増加」として吸収される
グラフ上での表現:
- LM 曲線が水平(通常は右上がりだが、利子率がゼロ下限では水平)
- 中央銀行が通常の金融政策(公開市場操作など)を行っても、LM が右にシフトしない
- IS-LM の交点が変わらず、所得は増えない
なぜ金融政策が無効か:
所得が増えると貨幣需要 L = kY - hr の第一項 kY が増えます。しかし利子率 r はすでにゼロ下限に張り付いているため、第二項 -hr で調整できません。代わりに、マネーサプライ M が増えても、全量が流動性需要(お金を持ちたいという需要)に吸収され、利子率は動きません。投資は I = I_0 - arで決まるので、利子率が変わらなければ投資も変わらず、乗数効果が生まれないのです。
現実の例:日本の1990年代から2010年代 1990年代のバブル崩壊後、日本は長期停滞(「失われた20年」)を経験しました。バブル崩壊直後は公定歩合が5〜6%台でしたが、段階的に引き下げられ、1995年には0.5%、1999年2月にはゼロ金利政策が導入されるまでになりました。こうした状況下で日本銀行が何度も金融緩和(マネーサプライ増加)を行っても、実体経済の成長に結びつきませんでした。これは流動性のわなの典型的な事例とされています。企業や家計が先行き不安から「手元にお金を置いておきたい」と考え、銀行や日銀がいくらお金を供給しても、経済全体に回らなかったのです。このケースでは、金融政策ではなく 財政政策 (政府支出の増加)の方が直接的に需要を押し上げるため、より有効と考えられました。
古典派 vs ケインズ ── 貨幣は実体経済に影響するか
貨幣と経済の関係について、2 つの対立する考え方があります。
古典派は フィッシャーの交換方程式 MV = PT で考えます。貨幣量 M × 流通速度 V = 物価 P × 取引量 T という恒等式で、V と T が一定なら、お金を増やしても物価が上がるだけで実体経済(生産量や雇用)には影響しないとしました。これが 貨幣の中立性 です。
| 理論 | 公式 | 意味 |
|---|---|---|
| フィッシャーの交換方程式 | MV = PT | 貨幣量 × 流通速度 = 物価 × 取引量 |
| ケンブリッジ方程式 | M = kPY | 貨幣需要は名目所得の一定割合(k = 1/V) |
ケインズはこれに異を唱えました。先ほど見た「投機的動機」を導入し、利子率を通じて貨幣量が投資に影響し、投資が所得に影響する経路を示しました。つまり お金を増やす → 利子率が下がる → 投資が増える → 所得が増える という連鎖です。この経路があるからこそ、金融政策が実体経済に効く可能性が出てきます。
典型的な誤答パターン(貨幣需要)
- 誤り: 貨幣数量説では貨幣は実体経済に影響する → 正: 古典派の貨幣数量説では貨幣の中立性が成り立つ
- 誤り: 流動性のわなでは利子率が高い → 正: 利子率が下限に張り付いている状態
- 誤り: マーシャルの k が大きいほど貨幣の流通速度が速い → 正:
k = 1/Vなので逆の関係
信用創造 ── 銀行はお金を「増やす」
中央銀行が経済に供給するお金を ハイパワードマネー(H) と呼びます。しかし、実際に経済を回っているお金の量(マネーサプライ M)はハイパワードマネーより遥かに多い。これは銀行が「信用創造」を行っているからです。
仕組みを追いかけてみましょう。法定準備率 r = 0.1(銀行は預金の 10% を準備として残す義務がある)とします。
- 中央銀行が銀行 A に 100 万円を供給します
- 銀行 A は 10 万円を準備として残し、90 万円を企業に貸し出します
- 企業がその 90 万円で資材を購入し、資材会社が銀行 B に預金します
- 銀行 B は 9 万円を準備として残し、81 万円を貸し出します
- この連鎖が繰り返され、最終的な預金総額は
100 / 0.1 = 1000万円になります
最初の 100 万円から 1000 万円の預金が生まれたので、信用創造額は 900 万円です。簡単な場合(現金保有なし)の公式は 信用創造額 = ΔH × (1 - r) / r です。
ハイパワードマネーとマネーサプライの関係は M = m × H で、この m が 貨幣乗数 です。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
H | ハイパワードマネー = 現金通貨 + 準備預金 |
c | 現金・預金比率(= 現金 / 預金)※消費関数の c とは全く別物 |
r | 法定準備率(= 準備預金 / 預金) |
m | 貨幣乗数 = (1 + c) / (c + r) |
c = 0.1, r = 0.05 なら m = 1.1/0.15 ≈ 7.33 です。中央銀行が 1 億円供給すれば、経済全体では約 7.3 億円の貨幣が回ることになります。
典型的な誤答パターン(貨幣乗数)
- 誤り: 法定準備率を下げると貨幣乗数が下がる → 正:
rが分母にあるので、rを下げるとmは上がる - 誤り: 信用創造額は最初の預金と同じ → 正: 準備率の逆数倍まで膨らむ
- 誤り: 貨幣乗数の
cは限界消費性向と同じ → 正: 現金・預金比率であり全く別の概念
中央銀行の道具箱 ── 金融政策の手段
中央銀行がマネーサプライを操作する手段は主に 3 つです。
| 手段 | 操作 | H への影響 | M への影響 |
|---|---|---|---|
| 公開市場操作(買いオペ) | 中央銀行が国債を買い取り、代金を銀行に支払う | H 増加 | M 増加 |
| 公開市場操作(売りオペ) | 中央銀行が国債を売り、代金を銀行から回収する | H 減少 | M 減少 |
| 法定準備率引き下げ | 銀行が残す準備の割合を下げる | 不変 | 貨幣乗数 m 上昇で M 増加 |
| 政策金利引き下げ | 基準金利を下げて貸出を促す | 貸出増で H が動く | M 増加方向 |
最も使われるのは公開市場操作です。たとえば景気を刺激したいとき、中央銀行は銀行が持つ国債を買い取って代金を支払います。銀行の手元資金が増え、貸し出しが増え、信用創造で経済全体のお金が増えます。
国債価格と利回りの逆関係
公開市場操作の問題では、国債価格と利回りは逆方向に動く ことが前提になります。
固定クーポンの債券をイメージすると分かりやすいです。毎年 1 円の利子が受け取れる国債があるとき、
- 価格が
100 円なら利回りは1 / 100 = 1% - 価格が
125 円に上がると利回りは1 / 125 = 0.8%
つまり、価格が上がるほど利回りは下がる ので、中央銀行が国債を買うと国債価格は上がり、金利には低下圧力がかかります。
| 中央銀行の行動 | 国債価格 | 利回り・金利 | その先 |
|---|---|---|---|
| 買いオペ | 上昇 | 低下 | 投資しやすくなる |
| 売りオペ | 低下 | 上昇 | 投資しにくくなる |
金融政策の伝播メカニズム
試験では、金融緩和 → 何がどう動くか を 1 本の因果で追わせる問題が多いです。基本は 利子率チャネル ですが、周辺チャネルも知っておくと選択肢を切りやすくなります。
| チャネル | 出発点 | 途中で起きること | 最終的な効果 |
|---|---|---|---|
| 利子率チャネル | 貨幣供給増加 | 利子率低下 → 投資増加 | 所得増加 |
| 資産価格チャネル | 金融緩和 | 株価・不動産価格上昇 | 資産効果で消費・投資増加 |
| 為替チャネル | 金融緩和 | 金利低下 → 通貨安 | 純輸出増加 |
| 期待チャネル | 緩和継続の発信 | 先行きの金利・物価予想が変化 | 企業・家計の行動変化 |
受験上は、まず 利子率が下がるか を見て、次に 投資が利子率に反応するか を確認してください。ここが切れていれば、流動性のわなや投資の利子弾力性ゼロの選択肢も処理しやすくなります。
ここまでのまとめ
財市場では消費と乗数効果が所得を決め、貨幣市場ではお金の需要と供給が利子率を決めます。そしてこの 2 つは利子率でつながっています(利子率が変わると投資が変わり、投資が変わると所得が変わる)。次のセクションでは、この 2 つの市場を 1 枚のグラフにまとめた IS-LM 分析に進みます。
IS-LM 分析: 2 つの市場を 1 枚のグラフで見る
いよいよ IS-LM 分析です。ここまでで学んだ財市場と貨幣市場を、横軸に所得 Y、縦軸に利子率 r をとった 1 枚のグラフに描きます。
IS 曲線 ── 財市場の均衡を線で表す
IS 曲線は「財市場が均衡する所得と利子率の組み合わせ」を結んだ線です。
なぜこの曲線が右下がりになるかを、ステップで追いかけます。
- 利子率が下がる → 企業にとって借り入れが安くなるので、設備投資が増える
- 投資が増える → 財市場の需要が増える
- 需要が増える → 乗数効果で所得が膨らむ
つまり「利子率が低いほど所得が大きい」という関係になるので、グラフ上では右下がりの線になります。
政府支出の増加や減税は、利子率が同じでも需要を押し上げるので、IS 曲線全体を右にシフトさせます。
IS 曲線の傾きを決める要因
IS 曲線の傾きは政策効果の大きさに直結するため、試験で重要です。
| 要因 | 大きいとき | IS 曲線 | なぜそうなるか |
|---|---|---|---|
投資の利子弾力性 a | 大きい | 緩やか(水平に近い) | 利子率が少し変わるだけで投資が大きく動くから |
限界消費性向 c | 大きい | 緩やか | 乗数が大きく、投資増加が所得をより大きく押し上げるから |
IS が緩やかだと、金融政策(LM をシフトさせる政策)の所得増加効果が大きくなります。逆に IS が急だと、財政政策(IS をシフトさせる政策)による利子率上昇が小さく、後述するクラウディングアウトが小さくなります。
LM 曲線 ── 貨幣市場の均衡を線で表す
LM 曲線は「貨幣市場が均衡する所得と利子率の組み合わせ」を結んだ線です。
なぜこの曲線が右上がりになるかを追いかけます。
- 所得が増える → 人々の取引量が増え、手元に必要なお金(貨幣需要)が増える
- 貨幣供給は一定なのに貨幣需要が増える → お金の「取り合い」が起きる
- お金を借りたい人が増えるので、利子率が上がる
つまり「所得が大きいほど利子率が高い」という関係になるので、グラフ上では右上がりの線になります。
中央銀行が貨幣供給を増やすと、同じ所得でも利子率が低くなるので、LM 曲線全体が右(下)にシフトします。
LM 曲線の傾きを決める要因
| 要因 | 大きいとき | LM 曲線 | なぜそうなるか |
|---|---|---|---|
貨幣需要の利子率感応度 h | 大きい | 緩やか(水平に近い) | 利子率が少し動くだけで貨幣需要が大きく変わり、均衡が回復するから |
貨幣需要の所得感応度 k | 大きい | 急(垂直に近い) | 所得が少し増えただけで大量の貨幣が必要になり、利子率が急騰するから |
交点の意味と政策効果 ── 財政政策と金融政策はどう違うか
IS 曲線と LM 曲線の交点が、2 つの市場が同時に均衡する所得と利子率です。政策を行うと、どちらかの曲線がシフトして交点が移動します。
財政政策(政府支出増加や減税)は IS 曲線を右にシフトさせます。
IS が右に動くと、交点は右上に移動します。つまり、所得は増えますが利子率も上がります。利子率が上がると民間の投資が減ってしまう ── これが クラウディングアウト(押し出し効果)です。
財政政策は所得を増やす効果がありますが、クラウディングアウトの分だけ効果が目減りします。
金融政策(貨幣供給増加)は LM 曲線を右にシフトさせます。
LM が右に動くと、交点は右下に移動します。つまり、利子率が下がり、所得が増えます。利子率低下 → 投資増加 → 乗数効果で所得増加、という経路です。
| 政策 | 動く曲線 | 所得 | 利子率 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 政府支出増加・減税 | IS を右シフト | 増加 | 上昇 | クラウディングアウトで効果が目減り |
| 貨幣供給増加 | LM を右シフト | 増加 | 低下 | 流動性のわなでは無効 |
IS-LM 交点以外の領域 ── 4 象限の超過需給判定
IS-LM グラフでは、交点だけでなく、交点以外の各領域で何が起きているかを読む問題が出ます(R7 第10問設問1)。
IS 曲線は財市場の均衡線なので、IS より右側(所得が均衡より大きい)では財市場が超過供給、IS より左側では財市場が超過需要です。
LM 曲線は貨幣市場の均衡線なので、LM より上側(利子率が均衡より高い)では貨幣市場が超過供給(=債券市場が超過需要)、LM より下側では貨幣市場が超過需要です。
| 領域 | 財市場 | 貨幣市場 |
|---|---|---|
| IS の右かつ LM の上 | 超過供給(在庫増) | 超過供給(利子率↓圧力) |
| IS の右かつ LM の下 | 超過供給 | 超過需要 |
| IS の左かつ LM の上 | 超過需要 | 超過供給 |
| IS の左かつ LM の下 | 超過需要 | 超過需要 |
この表を覚える必要はありません。「IS の右=財が余る」「LM の上=お金が余る」とだけ理解していれば、どの象限でも即座に判定できます。
クラウディングアウト ── なぜ財政政策は万能ではないか
クラウディングアウトをもう少し丁寧に見ておきます。
政府が支出を増やすと、財市場の需要が増えて所得が上がります。しかし所得が上がると貨幣需要が増え、利子率が上昇します。利子率が上がると民間企業の投資が減る ── つまり、政府の支出増加が民間投資を「押し出して」しまうのです。
クラウディングアウトの大きさは LM 曲線の傾きに依存します。LM が急なほど(貨幣需要の利子率感応度が小さいほど)、IS のシフトに対して利子率が大きく上がり、クラウディングアウトが大きくなります。
極端なケース ── 政策が効く限界を知る
IS-LM の傾きを極端にすると、政策効果の理論的な限界が見えてきます。試験ではこの 2 つのケースが頻出です。
| ケース | LM の形 | 何が起きているか | 財政政策 | 金融政策 |
|---|---|---|---|---|
流動性のわな(h → ∞) | 水平 | 利子率が下限に張り付き、お金を増やしても吸収されてしまう | 完全に有効(利子率が上がらないのでクラウディングアウトなし) | 無効(LM を右にずらしても交点が動かない) |
古典派ケース(h = 0) | 垂直 | 貨幣需要が利子率に全く反応しない | 無効(IS を右にずらすと利子率だけが急騰し、完全クラウディングアウト) | 完全に有効 |
流動性のわなは「金融政策が効かない極端なケース」、古典派ケースは「財政政策が効かない極端なケース」と覚えておくと、試験で迷いにくくなります。
もう一つ試験で問われるケースが IS 曲線が垂直(投資の利子弾力性がゼロ、a = 0)の場合です。投資が利子率に全く反応しないため、金融政策で LM を右にシフトさせても利子率が下がるだけで投資は増えず、所得は変わりません。この場合、財政政策だけが有効です。IS 垂直と LM 垂直(古典派ケース)は結論が正反対なので、混同に注意してください。
開放経済の入口 ── IS-LM-BP と利子率平価
為替、国際収支、海外金利まで出てきたら、閉鎖経済の IS-LM だけでは足りません。このとき使うのが IS-LM-BP(マンデル=フレミング・モデル)です。
- IS:財市場の均衡
- LM:貨幣市場の均衡
- BP:国際収支が均衡する
所得 Yと利子率 rの組み合わせ
資本移動がかなり自由な世界を単純化すると、国内金利は海外金利から大きく離れにくくなります。これが試験でよく出る 利子率平価 の発想です。厳密な式は期待為替変化率を含みますが、入門問題では 国内金利 ≒ 世界金利 と読んでよいことが多いです。
| 制度・前提 | 財政政策 | 金融政策 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 変動相場制 + 高い資本移動 | 効きにくい | 効きやすい | 財政拡張で金利上昇 → 通貨高 → 純輸出減。金融緩和は通貨安を通じて純輸出を押し上げる |
| 固定相場制 + 高い資本移動 | 効きやすい | 効きにくい | 金融緩和をしても為替維持のために介入が必要となり、LM の移動が打ち消されやすい |
細部を暗記するより、為替調整が働くか、為替維持の介入が必要か を起点に考える方が間違えにくいです。
45 度線・IS-LM・IS-LM-BP の使い分け
似たマクロ図でも、問われている市場が違います。問題文のキーワードで使う道具を切り替えます。
| 問題文のサイン | 使う道具 | 何が分かるか |
|---|---|---|
総支出曲線、45 度線、均衡所得 | 45 度線分析 | 乗数、AD 線のシフト、財市場だけの均衡 |
所得 Y と 利子率 r、財政政策、金融政策 | IS-LM | 財市場と貨幣市場の同時均衡 |
為替、国際収支、海外金利、利子率平価 | IS-LM-BP | 開放経済での政策効果 |
典型的な誤答パターン(IS-LM)
- 誤り: IS が急だと財政政策が無効 → 正: IS が急だとクラウディングアウトが小さく、財政政策は比較的有効
- 誤り: 流動性のわなでは金融政策が有効 → 正: 無効。LM が水平なので LM を右にずらしても均衡が変わらない
- 誤り: LM が急なら財政政策が有効 → 正: LM が急(古典派ケース)だと完全クラウディングアウトで財政政策は無効
- 誤り: 国債価格が上がると利回りも上がる → 正: 逆。価格上昇は利回り低下
- 誤り: 為替が自由に動く開放経済では財政政策が最も効く → 正: 変動相場制では金融政策の方が効きやすい
典型例
- 限界消費性向が高いほど、乗数効果は大きくなりやすい
- 政府支出増加なら、通常は
ISが右へ動く - 金融緩和なら、通常は
LMが右へ動く - 財政政策だけで景気刺激をすると、利子率上昇が起こることがある
典型的なつまずき
ISとLMの名前だけを覚え、何市場の均衡かを言えない- 政策効果を
所得が増えるだけで終え、利子率の変化を落とす - 乗数を計算式としてしか見ず、経済の連鎖として捉えない
- クラウディングアウトの仕組みを説明できない
問題を解くときの観点
- 財市場の話か、貨幣市場の話か
- 政策が最初に効くのは
需要、利子率、貨幣供給のどれか - 所得だけでなく利子率も問われていないか
短期の景気刺激の話か政策比較の話か- 極端なケース(流動性のわな、古典派ケース)が前提にないか
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