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需要と供給、市場均衡

需要曲線、供給曲線、弾力性、余剰分析の基礎を整理する

このページの役割

このページは、ミクロ経済学の最初の一歩です。需要、供給、均衡、弾力性は、以降のすべての論点の土台になります。ここを固めると、消費者行動、企業行動、産業構造、政策効果も一気に理解しやすくなります。

このページを読む前に

このページはミクロ経済学の入口であり、特に前提となる知識はありません。ここが出発点です。

まずイメージをつかむ

スーパーでトマトを思い浮かべてください。値段が 100 円なら毎日買う人も、500 円になったら「缶詰でいいか」と考え直すはずです。これが「需要」です。一方、農家の側から見ると、トマトの値段が高いと聞くと「今年はうちもたくさん作ろう」と考えます。これが「供給」です。需要と供給は対立しているのではなく、最終的にぶつかって一つの価格に落ち着く、その押し合いが市場メカニズムなのです。

次に「弾力性」を考えます。コメの値段が 10% 上がっても、毎日食べる量はあまり変わりませんよね。でも映画館の値段が 10% 上がると、「今月は家で映画を見よう」と考える人は多いでしょう。同じ 10% の値上げでも、反応の大きさが全く違います。この「反応の程度」を数字で測ったのが弾力性です。

最後に「余剰」です。あなたが「800 円まで出してもいい」と思っていた弁当が 500 円で買えたら、心の中で 300 円「得した」と感じます。これが消費者余剰です。一方、弁当屋さんが「400 円で売れたら十分」と考えていたのに 500 円で売れたら、お店は 100 円「得した」わけです。これが生産者余剰です。税や補助金、価格規制がこの「得した分」をどう変えるかが、政策効果の問題の中心になります。

試験で何が問われるか

  • 価格変化と外部条件の変化(所得、代替財価格など)を区別できるか
  • 均衡より高い/低い価格で何が起きるか判断できるか
  • 弾力性の大小が売上高や財の関係(代替財、補完財)とどう結びつくか
  • 税、補助金、価格規制が消費者余剰・生産者余剰・社会全体にどう影響するか

出題実績(R2〜R6)

この論点は直近5年で 11問 出題されています(5年連続出題)。

R6: Q14 / R5: Q15, Q16 / R4: Q13, Q14, Q15, Q16 / R3: Q15, Q16 / R2: Q12, Q17

詳細な問題の入手は JF-CMCA 公式 から対応年度のPDFをご確認ください。

需要と供給の基本

なぜ需要曲線が下向きなのか

「価格が高いと量が減る」というのは、経験的に誰もが知っています。しかしなぜそうなるのか、2 つの効果から説明できます。

まず、その商品が高くなると、別の安い代替品に乗り換える人が増えます。これを代替効果と言います。次に、値段が高いと全体的に買える量が減るので、その商品の購入量も落ちます。これを所得効果と言います。このふたつが重なって、需要曲線は右下がりになっているわけです。

ここで重要なのは「曲線上の移動」と「曲線のシフト」を分けることです。価格が高くなって需要量が減るなら、需要曲線の上を沿って下へ移動します。でも、もし別の条件が変わると、需要曲線**全体が動く(シフトする)**ことになります。需要曲線をシフトさせる主な要因は、所得の変化、関連財の価格変化(代替財・補完財)、消費者の嗜好の変化、人口の変化の 4 つです。試験問題では「何が変わったのか」で判断します。

供給曲線はなぜ上向きか

企業の視点を考えると、価格が高いほど「生産を増やしたい」と考えます。高く売れるなら、生産コストがかかってもやる価値があるからです。逆に価格が安いと「生産を絞ろう」となります。これが供給曲線が右上がりになる理由です。

供給曲線も、「価格自体の変化」と「条件の変化」を区別します。価格が上がって供給量が増えるなら曲線に沿って上へ移動。供給曲線をシフトさせる主な要因は、生産技術の改善、原材料価格の変化、補助金や課税、企業数の増減の 4 つです。

特殊なケース:垂直な供給曲線

通常は供給曲線が右上がりですが、供給量が価格に関わらず固定されているという特殊な状況があります。この場合、供給曲線は垂直になります。

垂直供給曲線の特徴:

  • 供給量が完全に固定:供給量は Q₀ で、価格がどう変わっても供給量は変わらない
  • 供給弾力性 = 0:価格が上がっても下がっても反応がない
  • 需要変化だけが価格を決める:需要曲線が左右に移動すると、価格だけが大きく変動する

具体的な例:

土地の供給

  • 特定の土地の面積は、価格がいくら高くても増えません
  • 価格が 100 万円/m² になっても、1,000 万円/m² になっても、面積は変わらない
  • このため、土地価格は需要の動き次第で大きく変動する

農産物の短期供給(収穫後)

  • 麦の刈り取り直後、その年の供給量は既に決まっている
  • 価格が上がっても「来年増やそう」となるだけで、今年の供給は増えない
  • 需要が多ければ価格は上昇し、少なければ下降する

垂直供給曲線と市場均衡

需要曲線が右下がり、供給曲線が垂直の場合:

Q需要=Qs(固定)Q_{\text{需要}} = Q_s \quad (\text{固定})

この時、均衡は供給量で決まり、価格は需要によってのみ決定されます。

グラフで読むと:

  • 需要曲線が右にシフト(需要増加)⇒ 供給量は Q₀ のまま ⇒ 価格が上昇
  • 需要曲線が左にシフト(需要減少)⇒ 供給量は Q₀ のまま ⇒ 価格が下降

つまり、供給が垂直な市場では「需要の変化が直接価格に反映される」というメカニズムが働きます。

試験での出題パターン

診断士試験では、この垂直供給曲線の理解が問われます:

  • 「土地取引で価格が大きく変動するのはなぜか?」⇒ 供給が固定(垂直曲線)だから
  • 「農産物の価格が需給を反映して大きく動くのはなぜか?」⇒ 短期には供給が固定だから
  • 「価格が上がったのに供給量が増えないケースは?」⇒ 供給が垂直(完全非弾力的)な場合

市場均衡

なぜ均衡点で取引が止まるのか

需要曲線と供給曲線が交わる点が「均衡」です。この点では、消費者が欲しい量と企業が売りたい量がちょうど一致しています。

でも、もし現在の価格が均衡より高かったらどうなるか。企業は「この値段なら売りたい」と思う量よりも、消費者が「この値段では買いたくない」量の方が多くなります。つまり「売り残し」が起きて、企業は値下げを始めます。逆に均衡より低い価格なら、消費者が欲しい量よりも企業が売りたい量が少ないので「品不足」になり、値段は上がります。こうして自動的に均衡価格へ収束するわけです。

試験では「現在の価格がどこに置かれているか」を素早く判断することが大事です。

超過供給と超過需要

超過供給=供給量需要量>0(均衡価格より高い)\text{超過供給} = \text{供給量} - \text{需要量} > 0 \quad (\text{均衡価格より高い}) 超過需要=需要量供給量>0(均衡価格より低い)\text{超過需要} = \text{需要量} - \text{供給量} > 0 \quad (\text{均衡価格より低い})

計算例 需要関数 QD=1002PQ^D = 100 - 2P、供給関数 QS=10+3PQ^S = 10 + 3P のとき、均衡点を求めます。

均衡では QD=QSQ^D = Q^S なので:

1002P=10+3P90=5PP=18100 - 2P = 10 + 3P \\ 90 = 5P \\ P^* = 18

このとき均衡数量は Q=1002(18)=64Q^* = 100 - 2(18) = 64 です。

もし P=20P = 20 なら、QD=10040=60Q^D = 100 - 40 = 60QS=10+60=70Q^S = 10 + 60 = 70 なので、供給が 10 単位過剰になり、値段は下がります。

曲線の移動 vs シフト

  • 移動:価格が変わって、同じ曲線上で点が動く。需要曲線は、価格が下がると右下方向へ、価格が上がると左上方向へ移動する。
  • シフト:所得・技術・競合財など別の条件が変わって、曲線全体が動く。右へシフト=全体の量が増える。

弾力性:反応の大きさを測る

弾力性とは何か

弾力性は「変化率どうしの比」です。「価格が 10% 上がったときに、数量は何% 変わるか」を見ます。これを知ると「値上げで売上高は増えるのか、減るのか」が判断できるようになります。

需要が弾力的(絶対値が 1 より大)な商品では、値下げすると数量がぐっと増えるので売上高は上がります。逆に非弾力的(絶対値が 1 より小)な商品では、値下げしても数量はあまり増えないので売上高は下がる傾向です。「何を売っているか」によって戦略が変わるわけです。

需要の価格弾力性

需要が価格変化にどう反応するか:

Ep=ΔQ/QΔP/P=% 数量変化% 価格変化E_p = \frac{\Delta Q / Q}{\Delta P / P} = \frac{\% \text{ 数量変化}}{\% \text{ 価格変化}}

絶対値で判定します:

  • Ep>1|E_p| > 1:弾力的(値下げで売上増、値上げで売上減)
  • Ep=1|E_p| = 1:単位弾力的(値上げ・値下げで売上不変)
  • Ep<1|E_p| < 1:非弾力的(値上げで売上増、値下げで売上減)

計算例 需要関数 Q=1002PQ = 100 - 2P で、P=30P = 30 のときの弾力性を求めます。

Q=10060=40Q = 100 - 60 = 40 dQ/dP=2dQ/dP = -2 Ep=2×3040=1.5E_p = -2 \times \frac{30}{40} = -1.5

絶対値は 1.5 なので弾力的です。したがってこの商品は値下げで売上が増えやすいことになります。

点弾力性と弧弾力性

種類使う場面
点弾力性E=dQdP×PQE = \frac{dQ}{dP} \times \frac{P}{Q}需要関数が与えられた場合
弧弾力性E=ΔQΔP×(P1+P2)/2(Q1+Q2)/2E = \frac{\Delta Q}{\Delta P} \times \frac{(P_1 + P_2)/2}{(Q_1 + Q_2)/2}2 点間の数値が与えられた場合

弧弾力性の計算例 (P1,Q1)=(10,80)(P_1, Q_1) = (10, 80) から (P2,Q2)=(12,70)(P_2, Q_2) = (12, 70) への変化:

E=70801210×(10+12)/2(80+70)/2=102×1175=5×11750.73E = \frac{70-80}{12-10} \times \frac{(10+12)/2}{(80+70)/2} = \frac{-10}{2} \times \frac{11}{75} = -5 \times \frac{11}{75} \approx -0.73

絶対値が 0.73 < 1 なので非弾力的です。

所得弾力性と交差弾力性

所得が 1% 上がると、その商品の需要が何% 変わるか:

EY=ΔQ/QΔY/YE_Y = \frac{\Delta Q / Q}{\Delta Y / Y}
  • EY>0E_Y > 0:正常財(所得が増えると需要も増える)
  • EY<0E_Y < 0:下級財(所得が増えると需要は減る)

他の財の価格が 1% 上がると、この商品の需要が何% 変わるか:

EXY=ΔQX/QXΔPY/PYE_{XY} = \frac{\Delta Q_X / Q_X}{\Delta P_Y / P_Y}
  • EXY>0E_{XY} > 0:代替財(相手が高くなると、こちらの需要が増える)
  • EXY<0E_{XY} < 0:補完財(相手が高くなると、こちらの需要も減る)

弾力性の3種類の体系的整理

以下の表は、ミクロ経済学の需要関連の3つの弾力性をまとめたものです。試験では、どの弾力性を問われているかを素早く判断することが重要です。

弾力性の種類定義計算式実例
需要の価格弾力性価格が1%変化するとき、需要量は何%変化するかEp=ΔQ/QΔP/P\lvert E_p \rvert = \frac{\Delta Q/Q}{\Delta P/P}必需品(米、医薬品)は小さい、贅沢品(ブランド品、映画)は大きい
需要の所得弾力性所得が1%変化するとき、需要量は何%変化するかEY=ΔQ/QΔY/YE_Y = \frac{\Delta Q/Q}{\Delta Y/Y}正常財 > 0(洋服)、下級財(劣等財)< 0(安い外食)
需要の交差弾力性他財Bの価格が1%変化するとき、財Aの需要量は何%変化するかEAB=ΔQA/QAΔPB/PBE_{AB} = \frac{\Delta Q_A/Q_A}{\Delta P_B/P_B}代替財 > 0(バター・マーガリン)、補完財 < 0(コーヒー・砂糖)

需要の価格弾力性の5つのケース

価格弾力性の大きさによって、5つの特殊なケースに分類されます。これらはグラフの形と直結しているので、図と一緒に覚えると試験で即座に判断できます。

弾力性記号グラフの形特徴価格上昇時の売上変化
完全弾力的E=E = \infty(無限大)水平線完全競争市場で個別企業が直面する需要曲線がこの形。わずかな値上げで需要が完全に消えて、値下げで無限に増える少しの値上げで売上は0
弾力的E>1E > 1(絶対値)緩い下り坂値上げで売上が減り、値下げで売上が増える売上減少
単位弾力的E=1E = 1(絶対値)中程度の下り坂この点では売上高が最大になる。MR = 0 の点と一致する売上不変
非弾力的E<1E < 1(絶対値)急な下り坂値上げで売上が増え、値下げで売上が減る。必需品や習慣的な商品に多い売上増加
完全非弾力的E=0E = 0垂直線代替品のない必需品(医薬品など)の需要に見られる。価格がどう変わっても数量は変わらない常に売上増加

直線需要曲線上での弾力性の変化

重要な性質として、直線の需要曲線では、同じ直線上でも点によって弾力性が異なります

需要曲線 Q=abPQ = a - bP を考えると、点弾力性 Ep=dQdP×PQ=b×PQE_p = \frac{dQ}{dP} \times \frac{P}{Q} = -b \times \frac{P}{Q} なので、Pが大きい(高い価格)ほど弾力的になり、Qが大きい(低い価格)ほど非弾力的になります。

グラフ上の三つのゾーン:

  • 上半分(高価格・低数量):Ep>1E_p > 1弾力的 → 値下げで売上増
  • 中点(中程度):Ep=1E_p = 1単位弾力的 → 売上最大
  • 下半分(低価格・高数量):Ep<1E_p < 1非弾力的 → 値上げで売上増

計算例 需要曲線 Q=1002PQ = 100 - 2P で、複数の点での弾力性を求めます。

  • P=40P = 40 のとき:Q=20Q = 20Ep=2×4020=4E_p = -2 \times \frac{40}{20} = -4(弾力的)
  • P=25P = 25 のとき:Q=50Q = 50Ep=2×2550=1E_p = -2 \times \frac{25}{50} = -1(単位弾力的)
  • P=10P = 10 のとき:Q=80Q = 80Ep=2×1080=0.25E_p = -2 \times \frac{10}{80} = -0.25(非弾力的)

同じ直線でも、価格が高いほど弾力的になることが分かります。

弾力性と売上高の関係

売上高 R=P×QR = P \times Q が価格変化でどう動くか:

弾力性値下げ(ΔP<0\Delta P < 0値上げ(ΔP>0\Delta P > 0
弾力的 E>1\lvert E \rvert > 1数量↑が価格↓を上回る → 売上増数量↓が価格↑を上回る → 売上減
単位弾力的 E=1\lvert E \rvert = 1売上不変売上不変
非弾力的 E<1\lvert E \rvert < 1数量↑が価格↓に及ばない → 売上減数量↓が価格↑に及ばない → 売上増

この表を見れば、「医薬品は値上げで売上が増えやすい(非弾力的)」「映画チケットは値下げで売上が増えやすい(弾力的)」といった戦略判断ができます。

弾力性 = 1 と限界収入の関係: 弾力性がちょうど 1(単位弾力的)の点では、売上高が最大になります。これは限界収入(MR)がゼロになる点と一致します。価格をそこからどちらに動かしても売上は減ります。独占企業の「総収入最大化点」はこの MR = 0 の点です。

従量税の帰着 ── 誰が税を負担するか

市場に従量税(1 個あたり t 円の税)が課されたとき、消費者と生産者のどちらがどれだけ負担するかは、弾力性の大小で決まります。

原則: 弾力性が小さい側(価格変化に鈍感な側)がより多くの税を負担します。

ケース消費者の負担生産者の負担
需要が非弾力的、供給が弾力的大きい小さい
需要が弾力的、供給が非弾力的小さい大きい
供給が完全非弾力的(垂直)ゼロ全額
需要が完全非弾力的(垂直)全額ゼロ

直感的な理由: 価格に鈍感な側は、価格が上がっても取引量をあまり減らせないため、税負担を引き受けざるを得ません。逆に弾力的な側は、価格上昇に敏感に反応して取引量を減らすため、税の負担を相手に転嫁できます。

典型的な誤答パターン(弾力性)

価格規制と市場の歪み

上限価格規制(価格上限)の効果

上限価格規制とは、政府が商品の最高価格を法律で定める政策です。例えば家賃統制、牛乳の最高価格など、生活に必要な財を保護する名目で導入されます。

上限価格が均衡価格より低い場合の結果:

P上限<PP_{\text{上限}} < P^*

このとき以下の問題が生じます:

  • 超過需要の発生:価格が低いので消費者の需要量は増えるが、生産者の供給量は減る
  • 品不足:取引量は供給量に制約される。欲しい人全員が買えない
  • 売り手側の対応:品不足の中で、売り手は裏金要求、品質低下、差別的販売などの悪影響を起こす
  • 消費者余剰の矛盾した変化:価格は安くなるが、品不足で買えない人が増えるので、実際の満足度は低下することもある

余剰分析:

規制前の社会的総余剰を基準にすると:

  • 消費者余剰の一部は増える(実際に買える人は安く買える)
  • 生産者余剰は大きく減る(売上が減るため)
  • その減少分の一部は消費者に移転するが、**残りは死荷重(社会全体の損失)**として消える

実例:家賃規制(R5第16問)

東京の賃貸住宅で上限家賃が定められたとする:

  • 家主は高い家賃が見込めないため、新しい物件の建設を控える
  • 既存物件の修繕・改善も減る
  • 家を探している人の多くが見つからず、引っ越しを断念する
  • 結果として「誰も幸せにならない(死荷重)」という政策効果になりやすい

下限価格規制(価格下限)の効果

下限価格規制とは、商品の最低価格を政府が定める政策です。最低賃金、農産物の最低買上価格などが典型例です。

下限価格が均衡価格より高い場合の結果:

P下限>PP_{\text{下限}} > P^*

このとき以下の問題が生じます:

  • 超過供給の発生:価格が高いので生産者の供給量は増えるが、消費者の需要量は減る
  • 余剰の発生:売りたい人の方が多い。農産物なら余った分は傷んで廃棄。労働市場なら失業
  • 政府の買い取り:農業保護では政府が余った農産物を買い取ることが多い。税金で賄われる
  • 生産者余剰は増えるが、社会全体では非効率

余剰分析:

  • 生産者余剰:増える(売上が増える人もいる)
  • 消費者余剰:減る(価格が高いため)
  • 取引量:減る(供給者が売れない部分が出現)
  • 死荷重:発生する(売り手が作ったのに買い手がない)

実例:最低賃金

最低賃金が時給 1,500 円に設定されたとします:

  • 企業は高い給与を払わない人材は採用しない
  • 若年層や経験浅い労働者の失業が増える
  • 実際に働き始められるまでの待機時間(職探し)が長くなる
  • 結果として、働きたい人(供給)と雇いたい企業(需要)の間にギャップが出現

消費者余剰と生産者余剰の意味

あなたが「800 円までなら払ってもいい」と考えていた弁当が 500 円で買えたとき、心の中で 300 円「得した」と感じます。これが消費者余剰です。正式には「最大支払意思額と実際の支払額の差」です。

一方、弁当屋さんが「最低でも 400 円で売りたい」と思っていたのに 500 円で売れたら、お店は 100 円「得した」わけです。これが生産者余剰です。「実際の売却価格と最低供給価格の差」です。

図では、需要曲線と価格線に囲まれた三角形が消費者余剰、供給曲線と価格線に囲まれた三角形が生産者余剰になります。

消費者余剰と生産者余剰の計算方法

余剰はグラフの面積で計算します。ここは試験で数値を求めさせる問題が頻出なので、手順を正確に理解することが重要です。

消費者余剰(CS)の意味と計算

消費者余剰とは「消費者が支払ってもよいと思った金額(需要曲線)と、実際に支払った金額(市場価格)の差」です。

CS=需要曲線と価格線の間の面積CS = \text{需要曲線と価格線の間の面積}

直線需要曲線 QD=abPQ^D = a - bP の場合:

CS=12×(PmaxP)×QCS = \frac{1}{2} \times (P_{\text{max}} - P^*) \times Q^*

ここで:

  • PmaxP_{\text{max}} = 需要曲線が縦軸と交わる点(誰も買わない価格)= a/ba/b または式から求める
  • PP^* = 均衡価格
  • QQ^* = 均衡数量

生産者余剰(PS)の意味と計算

生産者余剰とは「生産者が実際に受け取った金額(市場価格)と、最低限欲しかった金額(供給曲線)の差」です。

PS=価格線と供給曲線の間の面積PS = \text{価格線と供給曲線の間の面積}

直線供給曲線 QS=c+dPQ^S = c + dP の場合:

PS=12×(PPmin)×QPS = \frac{1}{2} \times (P^* - P_{\text{min}}) \times Q^*

ここで:

  • PP^* = 均衡価格
  • PminP_{\text{min}} = 供給曲線が縦軸と交わる点(供給量が0になる価格)= c/d-c/d または式から求める
  • QQ^* = 均衡数量

社会的総余剰

完全競争市場では:

総余剰=CS+PS=社会全体の価値\text{総余剰} = CS + PS = \text{社会全体の価値}

この総余剰は、市場が自由に機能するとき(税や規制がないとき)に最大化されます。

計算例(段階的)

需要:QD=1002PQ^D = 100 - 2P(P = 0 で Q = 100) 供給:QS=10+3PQ^S = 10 + 3P(P = 0 で Q = 10)

ステップ1: 均衡点を求める

1002P=10+3P90=5PP=18100 - 2P = 10 + 3P \\ 90 = 5P \\ P^* = 18

均衡数量:Q=1002(18)=64Q^* = 100 - 2(18) = 64

ステップ2: 縦軸との交点を求める

  • 需要曲線:Pmax=50P_{\text{max}} = 50(Q = 0 のとき)
  • 供給曲線:Pmin=10/33.33P_{\text{min}} = -10/3 \approx -3.33(Q = 0 のとき、負の値だが計算に使う)

ステップ3: 消費者余剰を計算

CS=12×(5018)×64=12×32×64=1024CS = \frac{1}{2} \times (50 - 18) \times 64 = \frac{1}{2} \times 32 \times 64 = 1024

ステップ4: 生産者余剰を計算

PS=12×(18(103))×64=12×(18+103)×64=12×643×64=20483682.67PS = \frac{1}{2} \times (18 - (-\frac{10}{3})) \times 64 = \frac{1}{2} \times (18 + \frac{10}{3}) \times 64 \\ = \frac{1}{2} \times \frac{64}{3} \times 64 = \frac{2048}{3} \approx 682.67

ステップ5: 社会的総余剰

総余剰=1024+682.67=1706.67\text{総余剰} = 1024 + 682.67 = 1706.67

従量税と補助金による余剰の変化

従量税を導入した場合

消費者や生産者に1単位あたり tt 円の税を課すと:

  • 供給曲線がシフト:企業は「税分を取り戻す」ため、供給量が同じならより高い価格を要求する → 供給曲線が上へシフト
  • 消費者余剰は減少:新しい均衡での価格が上がり、また取引量が減る
  • 生産者余剰も減少:取引量が減り、また企業が受け取れる価格(税引後)も下がる
  • 税収:政府が得る収入 = 実際の取引量 × 税率
  • 死荷重CSCSPSPS の減少分 > 税収 であり、その差が社会的な無駄になる

税の帰着(誰がどれだけ負担するか)

  • 需要が非弾力的、供給が弾力的 → 消費者がより多く負担
  • 需要が弾力的、供給が非弾力的 → 生産者がより多く負担

補助金を導入した場合

政府が生産者に1単位あたり ss 円の補助金を給付すると、税とは逆の効果が起きます。

メカニズム

  • 供給曲線が下へシフト:企業は「補助金で儲かる」ため、同じ価格でも供給を増やす(または低い価格でも供給する)
  • 新しい均衡:取引量が増え、消費者が支払う価格は低下

余剰への影響

  • 消費者余剰:増加 → 価格が下がるため
  • 生産者余剰:増加 → 価格が若干下がっても、取引量がぐっと増え、さらに補助金が入るため
  • 政府支出:取引量 × 補助金 = 政府が支出する総額
  • 死荷重:発生 → 政府支出 > (CS増加 + PS増加) であり、差分が無駄になる

補助金と課税の対称性

補助金は税と対称的な関係にあります:

項目課税補助金
供給曲線の動き上へシフト下へシフト
消費者余剰減少増加
生産者余剰減少増加
取引量減少増加
政府の支出/収入+税収−補助金支出
死荷重発生発生

計算例

需要:QD=1202PQ^D = 120 - 2PP=60P = 60Q=0Q = 0) 供給:QS=3P30Q^S = 3P - 30P=10P = 10Q=0Q = 0

補助金導入前の均衡 1202P=3P305P=150P=30120 - 2P = 3P - 30 \Rightarrow 5P = 150 \Rightarrow P^* = 30Q=60Q^* = 60

  • CS = 12×(6030)×60=900\frac{1}{2} \times (60 - 30) \times 60 = 900
  • PS = 12×(3010)×60=600\frac{1}{2} \times (30 - 10) \times 60 = 600

1個あたり 5 円の補助金を導入 供給者は価格 PP に加えて補助金 5 円を受け取るため、実質的な供給関数は QS=3(P+5)30=3P15Q^S = 3(P + 5) - 30 = 3P - 15 となります。 新しい均衡: 1202P=3P155P=135P消費者=27120 - 2P = 3P - 15 \Rightarrow 5P = 135 \Rightarrow P_{\text{消費者}} = 27 新しい取引量:Q=1202(27)=66Q = 120 - 2(27) = 66

  • 消費者が支払う価格:27 円(3 円低下)
  • 生産者が受け取る実質価格:27 + 5 = 32 円(2 円上昇)
  • 新しい CS12×(6027)×66=1089\frac{1}{2} \times (60 - 27) \times 66 = 1089(+189 増加)
  • 新しい PS12×(3210)×66=726\frac{1}{2} \times (32 - 10) \times 66 = 726(+126 増加)
  • 政府支出:66(個)× 5(円)= 330 円
  • CS増 + PS増:189 + 126 = 315 円
  • 死荷重:330 - 315 = 15 円(政府が支出した330の内、315は消費者と生産者に移転し、15は無駄になる)

補助金で一見「皆が得する」ように見えても、政府支出(税金)の大部分が死荷重として消えてしまう構図が理解できます。

典型的な誤答パターン(余剰)

ここまでのまとめ

需要と供給が交わる点が均衡です。ここでの消費者余剰と生産者余剰は「社会全体の価値の合計」を表します。税や補助金、価格規制は、この余剰配分を変えるとともに、死荷重(無駄)を生むことを常に意識します。弾力性が大きい商品ほど、規制による影響が大きくなるのも重要なポイントです。

確認問題

典型例

  • 価格が上がって需要量が減る → 需要曲線上を動く(曲線のシフトではない)
  • 所得が増えて普通財の需要が増える → 需要曲線が右へシフト
  • 新しい代替財が出現する → 元の商品の需要曲線が左へシフト
  • 生産技術が改善される → 供給曲線が右へシフト
  • 弾力的な商品では値下げで売上が増える → 映画館、飲食店など
  • 非弾力的な商品では値上げで売上が増える → 医薬品、生活必需品

典型的なつまずき

  • 曲線上の移動とシフトを混同する:価格変化は移動、所得や技術の変化はシフト。問題文をよく読むこと。
  • 弾力性の絶対値だけを覚えて、売上高と結び付けられない:弾力的なら値下げで売上増、非弾力的なら値上げで売上増。正反対。
  • 余剰の図で、価格線より上と下のどちらを見るか混乱する:消費者余剰は価格線より上、生産者余剰は下。需要曲線と供給曲線の場所で判定します。
  • 税が導入されたとき、誰が負担するかを読み落とす:供給曲線と需要曲線の傾きで負担割合が変わります。

問題を解くときの観点

  1. 何が変わったのか確認する:価格そのもの?所得?技術?代替財の値段?
  2. 曲線の移動かシフトか判断する:価格変化なら沿って移動、別条件なら曲線が動く。
  3. 弾力性は何を問われているか:売上高?財の関係(代替財 vs 補完財)?所得の影響?
  4. 余剰問題では誰を見ているか:消費者だけ?生産者だけ?社会全体?税収と死荷重を分ける。

読む順序ガイド

このミクロ経済学の序列は以下です。また、マクロ経済学から始めることもできます:国民所得計算と主要指標消費理論と投資理論 ...

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