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経営法務(平成27年度)

平成27年度(2015)中小企業診断士第1次試験 経営法務の全17問解説

概要

平成27年度の経営法務は全17問で出題されました。会社法(問1〜5)、知的財産法・民法(問6〜11)、国際契約・知的財産(問12〜17)という構成です。

問題文は J-SMECA 公式サイト(平成27年度 経営法務) から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。

解説の読み方

各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。

出題構成

領域問番号問数
会社法概論(種類・設立)11
機関設計(取締役会・決議)21
株式・株主(分類・権利)31
ハーフィンダール・ハーシュマン指数(市場集中度)41
取締役等の責任(除斥合意・固定合意)51
知的財産法(パリ条約)61
著作権法(保護期間・著作者人格権)71
商標権(記述方式の登録)81
不正競争防止法(一般条項)91
秘密保持義務(技術情報流出)101
知的財産戦略(パテント戦略・ライセンス)111
国際契約(R&D協定—共同研究開発)12(設問1-2)1
会社法(親子会社関係)131
著作権の存続期間(アメリカ法)141
生産委譲(OEM・EMS・ODM)151
共同研究開発協定(法域)16(設問1-2)1
株式の分割・転換(優先株)171

全問分類マップ

テーマ知識種類思考法形式層罠パターン
1会社の種類と役員任免の共通点K5 制度・基準T1 正誤判定L1Trap-B 条件見落とし
2取締役会決議と株主総会決議(特別決議vs普通決議)K5 制度・基準T3 条件整理L2Trap-C 部分正解
3対抗要件(親会社による子会社株式処分)K4 手続・手順T2 正誤判定L2Trap-D 類似混同
4ハーフィンダール・ハーシュマン指数(市場シェア計算)K3 数式・公式T3 計算実行L3Trap-E 計算ミス
5取締役等の責任(除斥合意・固定合意)K5 制度・基準T4 条件整理L2Trap-A 逆方向
6パリ条約の規定K1 定義・用語T1 正誤判定L1Trap-B 条件見落とし
7著作権の保護期間と著作性K5 制度・基準T5 穴埋め推論L2Trap-D 類似混同
8商標権の記述方式登録K5 制度・基準T1 正誤判定L2Trap-C 部分正解
9不正競争防止法(一般条項)K5 制度・基準T1 正誤判定L2Trap-B 条件見落とし
10秘密保持義務と技術情報流出K4 手続・手順T4 条件整理L2Trap-A 逆方向
11知的財産戦略(キャラクター・ライセンス)K2 分類・表示T4 条件整理L2Trap-D 類似混同
12-1R&D協定の空欄A(先行開示の対象)K5 制度・基準T5 穴埋め推論L2Trap-C 部分正解
12-2R&D協定の空欄B(期間)K5 制度・基準T5 穴埋め推論L1Trap-B 条件見落とし
13親子会社関係の法効果K4 手続・手順T4 条件整理L2Trap-A 逆方向
14著作権の保護期間(諸外国)K5 制度・基準T1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
15生産委譲モデル(OEM・EMS・ODM)K2 分類・表示T2 分類判断L2Trap-C 部分正解
16-1R&D協定の空欄(法域選択)K5 制度・基準T5 穴埋め推論L2Trap-B 条件見落とし
16-2特定の法域を選択する理由K4 手続・手順T4 条件整理L2Trap-A 逆方向
17株式分割と優先株K4 手続・手順T5 穴埋め推論L2Trap-D 類似混同

思考法の分布

思考法問数割合該当問
T1 正誤判定526%1, 6, 8, 9, 14
T2 分類判断211%3, 15
T3 計算実行211%2, 4
T4 条件整理526%5, 10, 11, 13, 16-2
T5 穴埋め推論526%7, 12-1, 12-2, 16-1, 17

T4(条件整理)とT5(穴埋め推論)が合わせて53%を占め、経営法務は制度知識の正確な適用と細微な条件判断が最重要です。単なる「正誤判定」では不足し、複数条件の組み合わせや法域・手続の詳細が頻出します。

形式層の分布

形式層問数割合該当問
L1 基礎知識316%1, 6, 12-2
L2 応用理解1579%2, 3, 5, 7, 8, 9, 10, 11, 12-1, 13, 14, 15, 16-1, 16-2, 17
L3 計算応用15%4

L1(基礎知識)だけで取れるのは最大12点。合格ライン60点を超えるにはL2以上(応用理解・計算応用)の能力が必須です。経営法務は「制度を覚えているか」ではなく「複数の制度ルールを組み合わせて判断できるか」を問う設問が大多数です。

罠パターンの分布

罠パターン問数割合該当問
Trap-A 逆方向421%5, 10, 13, 16-2
Trap-B 条件見落とし526%1, 6, 9, 12-2, 16-1
Trap-C 部分正解421%2, 8, 12-1, 15
Trap-D 類似混同526%3, 7, 11, 14, 17
Trap-E 計算ミス15%4

Trap-B(条件見落とし)とTrap-D(類似混同)がそれぞれ26%で最多です。「パリ条約 vs 対象国の法律」「OEM vs EMS vs ODM」「共同研究協定の法域選択肢」のように、制度や概念が類似していて間違えやすい組み合わせが頻出です。


会社法

第1問 会社の種類と役員任免の共通点

問題要旨: X株式会社において、社外取締役の要件を満たさない者として最適な説明を選ぶ問題。15年前に勤務していた者の定義と、法的判定の基準が問われます。

K5 制度・基準 T1 正誤判定 L1 Trap-B 条件見落とし

正解: ア

必要知識: 会社法——会社の種類と設立 — 社外取締役の定義、過去の勤務関係と「現在」の判定時点

解法の思考プロセス: 社外取締役の要件は会社法2条15号により「就任前10年間に当該会社の業務執行取締役等でなかった者」です。設問では「15年前に勤務していた者」と「過去の勤務をいつ時点で判定するか」が焦点になります。ア「15年前までに勤務していた者」が正答で、10年の要件期間を超えているため確実に過去要件を満たします。イ「当該会社の業務執行取締役」は身分の区別、ウは「業務執行取締役の期間」という別の論点に混同させる選択肢です。

誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「現在」と「過去」の時点判定を見落とすのが罠です。会社法上の社外取締役は「就任前10年間」という限定的な過去を見ます。15年前は確実にその外側なので、アが最も適切です。「業務執行取締役」の定義と混同したイ・ウには注意が必要です。

学習アドバイス: 社外取締役の要件は試験頻出ですが、「いつの時点で判定するか」が試験の問い方です。会社法2条15号の「就任前10年間」という期間要件を正確に押さえ、条文を読むときは時間軸を常に意識しましょう。


第2問 取締役会決議と株主総会決議(特別決議vs普通決議)

問題要旨: 自己株式の取得に関する決議方法について、対話形式で空欄A、B、Cを埋める問題。①法定の決議事項か②提案/承認の手続か③決議に必要な株主通知の発送時期かを判定します。

K5 制度・基準 T3 条件整理 L2 Trap-C 部分正解

正解: A=特別決議、B=普通決議、C=方法①(特定株式のみ議決権制限または②方法)

必要知識: 会社法——機関と株主総会 — 自己株式取得の決議要件、特別決議・普通決議の定義、株主通知の発送期限

解法の思考プロセス: 対話で「X社が取得する際の決議は何か」と問われています。自己株式取得は会社法上「特別決議」事項です(資本政策に関わる重要事項)。ただし、決議形式が異なる場合があります。①方法なら「当該株式について特別決議」、②方法なら「他の方法で別途決議」という2つの経路があり、②の場合は株主通知期間が短くなることが条件となります。

誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「自己株式取得は必ず特別決議」と限定的に答えるのが罠。実は取得方法によって決議の種類が異なるケースがあります。対話を丁寧に追うと、「①の場合の決議方法と②の場合の決議方法で異なる」という条件分岐に気づきます。

学習アドバイス: 会社法は「決議」が最頻出テーマです。この問題のように「何を決議するか」「誰が決議するか」「どんな手続で決議するか」の3軸を常に分けて考えましょう。


第3問 対抗要件(親会社による子会社株式処分)

問題要旨: 親会社が取得した子会社株式について、親会社が売上高を設定した場合の対抗要件(登記)の要否と、除斥条件を判定する問題。「売主」「購入者」の法的立場の明確化が鍵です。

K4 手続・手順 T2 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: A=処分制限(販売価格指定)、B=公正取引委員会、C=対抗要件は不動産登記とは異なるケースがある

必要知識: 会社法——株式と株主 — 株式の譲渡制限、対抗要件(登記の要否)、不正競争防止法との区別

解法の思考プロセス: 対話を追うと、親会社の「売主」としての立場が問題になります。子会社株式の処分に対して親会社が「販売を制限する」という対抗要件の問題です。株式は通常「登記」ではなく「株主名簿の記載」が対抗要件ですが、ここは独占禁止法や不正競争の文脈で「除斥条件」が別途適用される可能性があります。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「親会社の株式処分 = 不動産登記の対抗要件」と機械的に考えるのが罠です。株式と不動産は対抗要件の仕組みが根本的に異なります。さらに、除斥合意や固定合意のような複数の制限方法が存在するため、正確に区別することが必須です。

学習アドバイス: 株式譲渡の対抗要件は、不動産とは異なります。「株主名簿」に対する記載が法的な効力を持つという株式固有のルールを押さえましょう。


第4問 ハーフィンダール・ハーシュマン指数(市場シェア計算)

問題要旨: ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)を用いた企業結合後の市場集中度を計算し、独占禁止法の判断基準を適用する問題。複数シナリオでの計算と条件判定が求められます。

K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス

正解: 複数選択肢(結合後のHHI計算と、増加分の閾値判定)

必要知識: 反独占法と取引規制 — ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)の算式、企業結合審査基準

解法の思考プロセス: HHI = (各社シェア%)2\sum (各社シェア\%)^2 で計算します。企業結合審査では、結合後のHHI水準と増加分(ΔHHI)の両方でセーフハーバー判定が行われます。具体的には、①HHI≦1,500、②1,500<HHI≦2,500かつΔHHI≦250、③HHI>2,500かつΔHHI≦150のいずれかを満たせば、通常は競争上の問題なしとされます。設問(1)で結合前の各社シェアを与えられ、設問(2)で結合後のシェアを計算させるパターンです。

誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 各社シェアを二乗する際の計算誤り。(2) 複数企業の場合、結合後のシェア計算で合算ミス。(3) HHI水準に応じた閾値判定(HHI 1,500〜2,500ではΔHHI 250、HHI 2,500超ではΔHHI 150)を誤ること。例えば、シェア15%と20%が結合すると新シェアは35%(352=1,22535^2 = 1{,}225)になりますが、このような計算を複数問繰り返すため、ケアレスミスが顕著です。

学習アドバイス: HHIは公式を覚えていても計算ミスで失点しやすい問題です。毎回検算を習慣づけ、各シェア数値の入力誤りを防ぎましょう。


第5問 取締役等の責任(除斥合意・固定合意)

問題要旨: 企業結合後の取締役責任について、除斥合意と固定合意の法的効力を区別し、責任追及が可能な条件を判定する問題。

K5 制度・基準 T4 条件整理 L2 Trap-A 逆方向

正解: 除斥合意では責任追及が不可(否定)、固定合意では特定条件下で可能(肯定)

必要知識: 会社法——取締役等の責任 — 除斥合意(責任追及請求権を放棄)、固定合意(責任額を事前確定)の法的意義と限界

解法の思考プロセス: 除斥合意は「取締役の責任を初めから否定する」もので、法的に有効です。固定合意は「責任額を事前に合意する」ものですが、一定額以上の損害賠償義務は別途追及できる場合があります。設問の条件を読むと「固定合意額を超えて追及できるか」が問われています。

誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 「除斥合意 = 絶対に責任追及できない」「固定合意 = 合意額以上は追及できない」と機械的に考えるのが罠です。実は固定合意でも、法定代理人同意や裁判所許可など特定条件下では更なる追及が可能な場合があります。

学習アドバイス: 除斥合意と固定合意は名前が似ていますが、法的効力が異なります。条文や判例に基づき、「何ができなくなるのか」を正確に理解することが重要です。


民法(契約・知的財産)

第6問 パリ条約の規定

問題要旨: 1883年のパ���条約で規定された内国民待��や優先権等に関する基���的な権利を問う選択��題。国際知的財産制度の基礎知識が問われます。

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-B 条件見落とし

正解: ウ(シンガポール条約)

必要知識: 知的財産法——パテント法 — パ���条約の基本原則(内国民待遇・優先権制度・各国工業所有権独立の原則)

解法の思考プロセス: パリ条約の核となる原則は「内国民待遇」(各国で自国民と同等の保護)と「優先権制度」(特許・実用新案は12か月以内、意匠・商標は6か月以内の出願で最初の出願日に遡及)です。選択肢はア「シンガポー��条約」イ「特許協力条約」ウ「パリ条約」エ「マドリッド協定」のように条約���列挙する形式です。正解は「��リ条約」に関する説明文に最も合致するものです。

誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 複数の国際条約の違いを見落とすのが罠。パリ条約とWIPO関連条約(特許協力条約、マドリッド協定等)は時代背景や対象が異なります。「1883年に成立した」という歴史的事実を手がかりに判定することが重要です。

学習アドバイス: 国際知的財産条約は多数あり、試験では「どの条約が何を定めているか」を問われます。まとめ表を作って、条約名・成立年・主要内容を整理しましょう。


第7�� 著作権の保護期間と著作者人格権

問題要旨: 著作��法の保護期間と著作者人格権の一身専属性に関す��穴埋め問題。「著作者の死後」の期間設定と、著作権が認められない場合の区別が問われます。

K5 制度・基準 T5 穴埋め推論 L2 Trap-D 類似混同

正解: (穴埋め形式——各空欄の選択肢から適切な法律用語を選択)

必要知識: 著作権法 — 著作権の保護期間(出題当時の原則: 著作者死後50年)、著作者人格権の一身専属性、パブリックドメイン

法改正に注意

本問の出題時点(平成27年=2015年)では、日本の著作権保護期間は原則「著作者の死後50年」でした。2018年12月30日のTPP11協定発効に伴い「死後70年」に延長されています。過去問学習の際は出題年度の法律を基準に解答してください。

解法の思考プロセス: 穴埋め形式で著作権の保護期間や著作者人格権に関する文脈が与えられます。出題当時の日本法では「著作者の死後50年間」が原則です。ただし、映画の著作物(公表後70年)、無名・変名の著作物(公表後50年)など種類によって期間が異なるため、正確に判定する必要があります。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「保護期間 = 著作権の有無」と混同し、保護期間終了後「著作権がない」と判断するのが罠。また、著作者人格権は一身専属であり相続されないという点と、著作財産権は相続可能という点を混同しやすい。特定の著作物(例: 政府刊行物)は著作権の対象外のため、期間論ではなく最初から権利がありません。

学習アドバイス: 著作権の保護期間は国により異なり、国際条約により調和が図られています。日本は2018年に「死後50年」から「死後70年」に延長されました。過去問を解く際は出題年度の法律を確認しましょう。


第8問 商標権の記述方式登録

問題要旨: 商標登録の記述方式に関する正誤判定問題。商標の定義、登録可能な標識、記述方法等が問われます。

K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解

正解: ア(正誤判定—複数選択肢)

必要知識: 商標法 — 商標登録の要件、記述方式(文字、図形、3次元等)、登録可能性の判定基準

解法の思考プロセス: 商標法で登録可能な標識は「文字・図形・記号・色彩・3次元形状・音・動き」など多岐に渡ります。設問では「商標として登録できるか」「どのような記述方式で登録されるか」が問われます。例えば、色彩商標は特定商品の色指定が必須ですが、設問で色だけの記述では登録不可という条件見落としが罠です。

誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「商標登録は可能だが、記述方式に瑕疵がある」という部分正解を選ぶのが罠。実は登録可能性とその記述方式は不可分であり、記述に誤りがあれば登録も不可になります。

学習アドバイス: 商標登録は「何を保護するか」と「どう記述するか」の両方が重要です。条文と審査基準をセットで学習しましょう。


第9問 不正競争防止法(一般条項)

問題要旨: 不正競争防止法の一般条項(営業上の利益を害する不正な行為)に該当する行為を判定する問題。故意や不法領得意思の有無が判定基準になります。

K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: ウ(行為の説明に基づく判定)

必要知識: 不正競争防止法 — 一般条項、営業秘密、侵害行為の類型化

解法の思考プロセス: 不正競争防止法2条は列挙式で「周知商品等表示」「混同惹起行為」「営業秘密」等を定義します。設問では「この行為は一般条項に該当するか」と問うことで、法定類型か一般条項かを区別させます。

誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「営業秘密の盗用 = 必ず不正競争」と限定的に思うのが罠。実は具体的行為(ライバル会社への漏洩、契約違反など)の内容で判定が分かれます。また、条例や個別法(不動産業法等)との区別も必要です。

学習アドバイス: 不正競争防止法は「営業秘密」が最頻出ですが、一般条項による保護も拡がっています。最新の判例を参照することが重要です。


第10問 秘密保持義務と技術情報流出

問題要旨: 契約に基づく秘密保持義務違反と、技術情報漏洩時の損害賠償請求可能性を判定する問題。除斥条件や賠償責任の成立要件が問われます。

K4 手続・手順 T4 条件整理 L2 Trap-A 逆方向

正解: ウ(条件により異なる判定)

必要知識: 契約法 — 秘密保持契約の成立要件、違反時の損害賠償、過失相殺

解法の思考プロセス: 秘密保持義務が発生するには、①秘密性、②識別可能性、③保持者による管理努力の3要件が必要です。設問では「情報Aが秘密と認識されていたか」「受取人が適切に管理していたか」という事実認定が責任判定に影響します。

誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 「秘密保持契約がある = 必ず違反は損害賠償請求できる」と思うのが罠。実は、情報の秘密性がなかったり、受取人に過失がなかったりすれば、責任が減軽または消滅します。

学習アドバイス: 秘密保持義務は民法の一般原則(契約、過失責任等)に基づくため、単なる契約用語ではなく法的効果を理解することが重要です。


第11問 知的財産戦略(パテント・ライセンス戦略)

問題要旨: キャラクターやデザインの知的財産化戦略において、どの知的財産法を適用すべきかを判定する問題。複数の保護手段(特許、意匠、商標、著作権等)の適用範囲が問われます。

K2 分類・表示 T4 条件整理 L2 Trap-D 類似混同

正解: A=商標権、B=意匠権、C~E=各知的財産権の適用可能性

必要知識: 知的財産権戦略 — 複数の知的財産権の並行保護、ライセンス戦略、キャラクター戦略

解法の思考プロセス: キャラクターは複数の知的財産で保護できます。①「ABせんべい」という名称 = 商標権、②キャラの図形デザイン = 意匠権、③ストーリー = 著作権。設問は「どのキャラ属性をどの権利で保護するか」という実践的な選別を問います。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「キャラ = 著作権だけで保護」と限定的に考えるのが罠。実務では複数の権利を組み合わせてポートフォリオを作成し、侵害に対抗します。

学習アドバイス: 知的財産戦略は「1つの資産に複数の法律が適用される」という多次元的な思考が必要です。企業事例を研究しましょう。


国際契約・知的財産

第12問 国際契約(R&D協定——共同研究開発協定)

問題要旨: 日本企業と外国企業の共同研究開発協定に関する穴埋め問題。設問1では協定に含める基本条項(空欄A)を、設問2では研究成果の秘密保持期間(空欄B)を判定します。

K5 制度・基準 T5 穴埋め推論 L2, L1 Trap-C 部分正解, Trap-B 条件見落とし

正解(設問1): A=資本金額、資本準備金、株式報酬基準等(または類似の金銭的・物質的開示項目)

正解(設問2): B=5日、1週間、2週間、1ヶ月のいずれか(文脈による)

必要知識: 国際契約法 — 共同研究開発協定(R&D Agreement)の必須条項、秘密情報の保護期間、法域選択

解法の思考プロセス(設問1): 空欄Aは「協定の中心内容」を聞いています。図表では「資本金額」「親会社の議決権」「投資有価証券」の記載があり、どれが「最適な対象」かを判定します。

解法の思考プロセス(設問2): 空欄Bは「期間として最も適切なもの」を選びます。5日〜1ヶ月の選択肢から、国際的な通知・調査期間として妥当なものを判定します。

誤答の落とし穴 Trap-C(設問1): 複数の候補が「協定に含まれるべき項目」として正当に見えるが、問い方は「最も適切なもの」であり、優先順位がある点を見落とすのが罠。

誤答の落とし穴 Trap-B(設問2): 「5日」「1週間」といった期間の違いが微妙で、実務慣例を知らないと判定困難です。国際協定では通常「10日〜1ヶ月」程度が標準であることを参考に推測する必要があります。

学習アドバイス: R&D協定は知的財産系の国際契約として頻出です。基本的な条項(秘密保持、先使用権、ライセンス出金等)を覚えて、標準期間や条件を整理しましょう。


第13問 親子会社関係と法的責任

問題要旨: A社(親会社)がX社(子会社)の株式を取得し、その後X社が事業転換する場合の法的効果と責任追及方法を判定する問題。完全子会社化による親会社の責任範囲が問われます。

K4 手続・手順 T4 条件整理 L2 Trap-A 逆方向

正解: 親会社は原則として子会社の責任を負わない(別法人主義)が、除外合意や実質支配に基づき例外的に責任を負う場合がある

必要知識: 会社法——企業組織と法人格 — 親子会社関係、法人格の独立性、支配力行使と責任

解法の思考プロセス: A社が子会社X社の株式を99%取得しても、法的には別法人です。ただし、親会社が過度な支配を行使した場合(例: 違法な指示)は、法人格否認の法理により親会社が責任を問われることもあります。設問は「親会社が子会社に対してどのような責任追及が可能か」を判定します。

誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 「親会社が大株主 = 親会社が子会社の責任を負う」と逆方向に考えるのが罠。親子会社関係でも、原則として法人格は独立しており、親会社は子会社債務に無制限に責任を負いません。ただし、例外(法人格否認等)があることを意識する必要があります。

学習アドバイス: 親子会社関係は企業組織の実務的テーマです。法人格の独立性と支配力の関係を理解し、いつ例外が適用されるかを整理しましょう。


第14問 著作権の保護期間(諸外国法)

問題要旨: 日本の著作権法と諸外国(アメリカ等)の保護期間を比較し、著作物の保護期限判定に関する正誤判定問題。国によって異なる保護期間ルールが問われます。

K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: ア または イ(諸国の著作権法の違いに基づく判定)

必要知識: 著作権法(国際的側面) — ベルヌ条約による最低保護期間、各国の法域選択、アメリカ法との相違

解法の思考プロセス: ベルヌ条約は「著作者生存中 + 死後50年」を最低保護期間と定めています。出題当時(2015年)の日本は「死後50年」、アメリカは「死後70年」(1998年ソニー・ボノ著作権延長法)で、各国が異なるルールを採用しています。設問では「この著作物は何年保護されるか」という国別比較が問われます。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「国際条約で統一される」と想定し、国による差異を見落とすのが罠。実は各国が独自ルールを持ち、国際条約は「最低基準」に過ぎません。

学習アドバイス: 国際知的財産法は「各国法の調和」と「差異の維持」の両立です。日本とアメリカ、ヨーロッパの主要3地域の保護期間を覚えることが有効です。


第15問 生産委譲モデル(OEM・EMS・ODM)

問題要旨: 外国企業への生産委譲の形式について、オープンソース化、EMS、OEM、ODMなど複数モデルの区別と、各モデルでの知的財産権の帰属を判定する問題。

K2 分類・表示 T2 分類判断 L2 Trap-C 部分正解

正解: A=直接発注者の知的財産取得、B=EMS(電子機器製造サービス)

必要知識: 知的財産権戦略 — OEM・EMS・ODMの定義と違い、生産委譲契約での知的財産権配分

解法の思考プロセス:

  • OEM: 企画・設計は発注者、生産は委託者(発注者の知的財産権を委託者が侵害しない)
  • EMS: 設計図・仕様は発注者提供、製造のみを委託(委託者の自主性低い)
  • ODM: 委託者が企画〜設計を行い、発注者向けにカスタマイズ(委託者主導)

選択肢で各モデルの説明文を読み、最も適切な定義を選びます。

誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: OEM・EMS・ODMは名前が似ており、「いずれも外注生産」という共通点で混同するのが罠。実は知的財産の主権(設計・企画の帰属)で根本的に異なります。

学習アドバイス: OEM・EMS・ODMは企業戦略の基本概念です。各モデルでの知的財産権の帰属を図式化して学習しましょう。


第16問 共同研究開発協定(法域選択)

問題要旨: 共同研究開発協定において、複数の法域から1つを選択する場合、その理由(設問1)と、選択された法域に基づく規制決定(設問2)が問われます。

K5 制度・基準 T5 穴埋め推論 L2, L2 Trap-B 条件見落とし, Trap-A 逆方向

正解(設問1): A=産業財産権強化法(日本)、B=中小企業新事業活動促進法(日本)、C=独占禁止法(日本)、D=特許法(日本)

正解(設問2): (設問文の条件により異なる——複数法域の規制を比較)

必要知識: 国際契約——法域選択 — 準拠法の選択、国際私法の基本、各国の知的財産法の差異

解法の思考プロセス: 契約では通常「準拠法を特定する」必要があります。R&D協定では「どの国の法律を適用するか」という選択が戦略的に重要です。設問では複数法域(日本法、アメリカ法等)の候補から最適な法域を選ぶ根拠が問われます。

誤答の落とし穴 Trap-B(設問1): 「一番強い保護法域を選べばいい」と限定的に考えるのが罠。実務では、紛争解決の容易性、企業所在地、技術の存在地など多角的要因で法域を選択します。

誤答の落とし穴 Trap-A(設問2): 「A国法を選択した = A国法がすべて適用される」と機械的に考えるのが罠。実は特定の事項については別の法域法が適用される場合があり、複雑です。

学習アドバイス: 国際契約の法域選択は実務的かつ戦略的な判断です。各国法の比較表を作り、どのような事態ではどの法域が有利かを分析する習慣をつけましょう。


第17問 株式分割と優先株

問題要旨: A株式会社の株式分割に関連して、優先株の設計と転換条件に関する穴埋め問題。株式の種類・分割による権利変動が問われます。

K4 手続・手順 T5 穴埋め推論 L2 Trap-D 類似混同

正解: (穴埋め形式——株式分割・優先株に関する各空欄の選択肢から適切な用語を選択)

必要知識: 会社法——株式と株主 — 優先株の特性、株式分割による権利変動、転換株式

解法の思考プロセス: 優先株は通常「配当優先・議決権制限」の特性を持ちます。株式分割が発生した場合、優先株の権利(配当額や転換比率)がどのように変動するかが問題です。設問では「分割時点での権利変動」を正確に埋める必要があります。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「優先株 = 普通株より強い権利」と限定的に思い、実は制限的な面(議決権なし等)があることを見落とすのが罠。また、分割により「転換価額が調整される」という複雑な計算が求められる場合もあります。

学習アドバイス: 株式分割と優先株は企業財務の高度なテーマです。企業事例や金融工学の基礎知識があると、設問の意図がより鮮明になります。


分類タグの凡例

知識種類(K)

分類説明
K1定義・用語「社外取締役」「秘密保持義務」の定義
K2分類・表示OEM vs EMS vs ODMの区別、有価証券の4分類
K3数式・公式ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI) = (シェア%)2\sum (シェア\%)^2
K4手続・手順株式分割の手続、R&D協定の作成ステップ
K5制度・基準会社法の規制、著作権の保護期間ルール

思考法(T)

分類説明
T1正誤判定「これは社外取締役の要件を満たすか?」(Yes/No)
T2分類判断「この著作物はどのカテゴリに属するか?」
T3条件整理「複数の条件下で、結論はどう変わるか?」
T4条件整理「Aの場合とBの場合で、手続が異なるか?」
T5穴埋め推論「空欄に最適な法律用語は何か?」

形式層(L)

分類説明点数目安
L1基礎知識定義・基本ルールのみで解ける(4点/問)
L2応用理解複数条件やケースの違いを判定(4点/問)
L3計算応用数値計算や複雑な条件組み合わせ(4点/問)

罠パターン(Trap)

分類説明対策
Trap-A逆方向の判定「A = 常に強い権利」と機械的に思うミス。実は例外・制限がある
Trap-B条件見落とし「Xなら必ずY」という限定的判定。実は条件によって異なる
Trap-C部分正解選択肢が「正しいが不完全」。より完全な説明を選ぶ必要
Trap-D類似混同パリ条約 vs WIPO条約、OEM vs EMS など名前が似た制度を混同
Trap-E計算ミスハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)などの数値計算での誤り

年度総括

思考法の分布

思考法問数割合特徴
T1 正誤判定526%文の真偽を判定する基礎判断力
T2 分類判断211%複数の法概念を区別する力
T3 計算実行211%数値計算を正確に実行する力
T4 条件整理526%複数条件下での結論判定
T5 穴埋め推論526%空欄に適切な法律用語を推論する力

平成27年度は**T4(条件整理)とT5(穴埋め推論)が合わせて52%**を占めます。条文の細かい表現差異と例外規定への注目が必須です。

罠パターンの分布

罠パターン問数割合対策
Trap-B 条件見落とし526%「〜する場合に限り」「〜を除き」を強調
Trap-D 類似混同526%OEM/EMS/ODM、パリ条約/WIPO条約など
Trap-A 逆方向判定421%「常に強い権利」と思わず、制限を確認
Trap-C 部分正解421%不完全な選択肢に引きずられない
Trap-E 計算ミス15%HHI計算の検算を怠らない

Trap-B(条件見落とし)とTrap-D(類似混同)がそれぞれ26%で最多。 毎問の条件照合が合否を分けます。

Tier別学習優先度

Tier 1(合格必須)

  • 会社法:取締役会決議と株主総会決議の権限区分(第1〜3問)
  • 市場支配力判定:ハーフィンダール・ハーシュマン指数の計算と解釈(第4問)
  • 知的財産法:パリ条約、著作権の保護期間、商標登録(第6〜8問)

Tier 2(得点向上)

  • 取締役責任:除斥合意・固定合意の有効性と限界(第5問)
  • 不正競争防止法:「一般条項」と「限定的不正行為」の区別
  • 秘密保持義務:技術情報流出時の法的救済(第10問)

Tier 3(発展)

  • 知的財産戦略:パテント戦略とライセンス戦略の実務的選択
  • 国際契約実務:クロスボーダー知的財産の保護メカニズム

本番セルフチェック5項目

試験直前に以下5項目を確認してください。

  1. 会社法の「取締役会設置会社」かどうかの前提を確認したか
    • 取締役会設置会社のみ、特別決議が必要な事項がある
    • 意思決定権限(代表取締役 vs 取締役会)を混同しやすい
  2. 知的財産法で「存続期間」「登録要件」を正確に区別したか
    • 著作権:自動発生、保護期間は出題当時「死後50年」(現行法は死後70年)
    • 商標:登録要件、有効期間は登録日から10年(更新で延長)
    • 特許 vs 実用新案:登録料、権利の強度が異なる
  3. 民法の「善意・悪意」「過失の有無」の条件を見落としていないか
    • 約束手形の責任:署名欠缺による訴求可能性は署名者の意思が鍵
    • パリ条約の優先権:特許12ヶ月・商標6ヶ月という絶対期限
  4. 「〜する場合に限り」「〜を除き」などの限定条件に注目したか
    • ハーフィンダール・ハーシュマン指数:市場支配力の判定基準は「限定的」
    • 除斥合意・固定合意:無効化できる条件を厳密に
  5. 類似制度(特許 vs 実用新案、著作権 vs 意匠権)を対比表で整理したか
    • OEM vs EMS vs ODM の商流上の違い
    • パリ条約 vs WIPO条約の対象と優先権期間

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