中小企業経営・中小企業政策(平成27年度)
平成27年度(2015)中小企業診断士第1次試験 中小企業経営・中小企業政策の27問解説
概要
平成27年度の中小企業経営・中小企業政策は全42問で出題されました。本ページでは第1問~第27問の27問を解説しています。中小企業の定義・経営課題・政策支援の基礎知識から、地域経済・産業構造・経営診断まで、幅広い範囲をカバーしています。
問題文は J-SMECA 公式サイト(平成27年度 中小企業経営・中小企業政策) から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。
解説の読み方
各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。
出題構成
| 領域 | 問番号 | 問数 |
|---|---|---|
| 中小企業の定義と経済的役割 | 1, 2, 13 | 3 |
| 中小企業の業種別特性・産業構造 | 3, 9, 10 | 3 |
| 中小企業の経営課題 | 5, 12 | 2 |
| 経営診断・経営分析 | 8, 11, 15 | 3 |
| 起業と事業承継 | 4, 19, 22, 23 | 4 |
| 地域経済・産業クラスタ | 6, 7, 21 | 3 |
| 中小企業支援制度 | 14, 16, 20, 25, 26, 27 | 6 |
| 労働・雇用関連 | 17, 18 | 2 |
| グローバル化・ブランド | 24 | 1 |
全問分類マップ
| 問 | テーマ | 知識種類 | 思考法 | 形式層 | 罠パターン |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 中小企業の定義(規模基準) | K5 制度・データ | T2 分類判断 | L1 | Trap-D 類似混同 |
| 2 | 中小企業の経営課題(統計) | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L2 | Trap-B 条件見落とし |
| 3 | 業種別小売業の変遷 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-D 類似混同 |
| 4 | 法人企業統計(主要財務指標) | K5 制度・データ | T3 計算実行 | L2 | Trap-E 計算ミス |
| 5 | 中小企業の労働事情 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L1 | Trap-B 条件見落とし |
| 6 | クラウドソーシング活用 | K1 定義・用語 | T4 条件整理 | L2 | Trap-A 逆方向 |
| 7 | IT利活用(web作成等) | K1 定義・用語 | T2 分類判断 | L1 | Trap-D 類似混同 |
| 8 | 商工会・商工会議所の支援 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L1 | Trap-B 条件見落とし |
| 9 | 産業集積(素材製造業) | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-D 類似混同 |
| 10 | 資本金別企業構成 | K5 制度・データ | T2 分類判断 | L1 | Trap-B 条件見落とし |
| 11 | 経営者保証(概念と要件) | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L1 | Trap-B 条件見落とし |
| 12 | 起業希望率と起業家数 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L2 | Trap-B 条件見落とし |
| 13 | 中小企業基本法の定義 | K5 制度・データ | T2 分類判断 | L1 | Trap-D 類似混同 |
| 14 | 小規模企業営業経営支援 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L1 | Trap-B 条件見落とし |
| 15 | マル経融資の要件 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L2 | Trap-B 条件見落とし |
| 16 | JAPAN ブランド育成支援 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L2 | Trap-D 類似混同 |
| 17 | 中小企業退職金共済制度 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L2 | Trap-A 逆方向 |
| 18 | 事業承継での相談内容 | K1 定義・用語 | T4 条件整理 | L2 | Trap-D 類似混同 |
| 19 | 融資対象企業の親族起業 | K1 定義・用語 | T4 条件整理 | L2 | Trap-D 類似混同 |
| 20 | セーフティネット貸付 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L2 | Trap-B 条件見落とし |
| 21 | 経営戦略と企業規模 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-D 類似混同 |
| 22 | 下請法の対象範囲 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L1 | Trap-B 条件見落とし |
| 23 | 中小企業等経営強化法 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L2 | Trap-A 逆方向 |
| 24 | ものづくり・高度化事業 | K5 制度・データ | T4 条件整理 | L2 | Trap-B 条件見落とし |
| 25 | 食品製造業の親族起業 | K1 定義・用語 | T4 条件整理 | L2 | Trap-D 類似混同 |
| 26 | 事業組織化の要件 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L2 | Trap-B 条件見落とし |
| 27 | GNT支援 | K5 制度・データ | T1 正誤判定 | L2 | Trap-D 類似混同 |
第1問 中小企業の定義(規模基準)
問題要旨: 中小企業基本法に基づく中小企業の定義における従業者数と資本金・出資金の組み合わせを選択する問題。
K5 制度・データ T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同
正解: ウ(A:8、B:5分の1)
必要知識: 中小企業の定義と規模基準 — 中小企業基本法における業種別の規模要件
解法の思考プロセス: 中小企業基本法は、業種によって「従業者数」または「資本金・出資金」の基準が異なります。製造業その他は従業者300人以下、卸売業は100人以下、小売業は50人以下、サービス業は100人以下です。一方、資本金・出資金の基準は、製造業その他は3億円以下、卸売業は1億円以下、小売業とサービス業は5,000万円以下です。問題文の空欄Aは「9」「8」のいずれかで、空欄Bは「3分の1」「4分の1」「5分の1」のいずれかです。小売業の従業者上限が50人、資本金上限が5,000万円であることから、ウの「A:8、B:5分の1」が最も適切です。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 業種別基準を正確に暗記していないと混同します。(1) 製造業と小売業の基準を逆に選ぶ。(2) 資本金基準の倍数を誤認する(「3億円」「1億円」「5,000万円」のどれかを選び間違える)。(3) 従業者数の基準値を「10」「8」「5」で迷う。業種別・基準別に整理した暗記表を作成し、体系的に整理することが鍵です。
学習アドバイス: 中小企業の定義は毎年のように出題される最頻出テーマです。「製造業3億円・300人」「卸売業1億円・100人」「小売業5,000万円・50人」「サービス業5,000万円・100人」という4パターンを確実に暗記してください。また、「5分の1」「4分の1」といった分数表記にも注意が必要です。
第2問 中小企業の経営課題
問題要旨: 平成21年経済センサス基本調査データから見た、中小企業の規模別における経営課題の傾向についての記述の正誤を判定する問題。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: イ(開業者は商店等が最も多い)
必要知識: 中小企業白書・統計データの読解 — 経営課題の実態把握と統計解釈
解法の思考プロセス: 各選択肢の記述を統計データに照らします。ア「開業者は小売業が最も多い」は、サービス業や製造業と比較しても小売業のウェイトが大きいかを確認します。イ「開業者は商店等が最も多い」は、卸売業・小売業を含めた流通業全体を指すか確認します。ウ「廃業者は建設業が最も多い」、エ「廃業者は小売業が最も多くない」といった記述の検証が必要です。問題文では「2009年から2012年」という期間に限定されており、その間のトレンドが問われています。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 「開業」と「廃業」の定義を混同する。(2) 期間「2009年~2012年」という条件を見落とし、全体的なトレンドと誤認する。(3) 「最も多い」「最も多くない」という表現を読み違える。(4) 業種分類(商店等 vs 小売業)の定義を曖昧にしたままで判断する。「いつの期間か」「どの業種か」「最多か最小か」という3要素を必ず確認してから選択肢を評価してください。
学習アドバイス: 白書や統計データを読む問題は、日本語の細部を正確に読むことが最重要です。「最も多い」と「ウェイトが大きい」は異なり、「業種」と「企業規模」も区別が必要です。可能な限り、実際の白書やデータを見ながら学習し、「数値や傾向」を直感的に理解する癖をつけてください。
第3問 業種別小売業の変遷
問題要旨: わが国の輸出額と対外直接投資の推移から、輸出額は近年では一度大きく落ち込んでいるもの、長期的には増加傾向にあると述べた上で、対外直接投資についての記述の正誤を問う問題。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同
正解: ウ(中国(香港を含む)のウェイトが最も高い)
必要知識: 中小企業の国際展開と海外進出 — 地域別・国別の輸出構造と直接投資
解法の思考プロセス: 各選択肢を検討します。アは「アジア(中国を除く)」、イは「中国(香港を含む)」、ウは「中国(香港を含む)」、エは「北米」、オは「ヨーロッパ」です。大企業の海外直接投資の地域配分を考えると、アジア(特に中国)へのウェイトが高いことが知られています。問題は「中小企業の場合」と明示されており、大企業との比較が重要です。中小企業も徐々にアジアへの進出を増やしており、特に中国(香港含む)のウェイトが上昇傾向にあります。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) 地域分類を混同する(「アジア」「中国」「北米」の区分を曖昧にする)。(2) 大企業と中小企業の投資地域のパターンを誤認する。(3) 「香港を含む」「除く」という条件を見落とす。(4) 「最も高い」という最大値を問う表現を「高い」という相対値と混同する。「中小企業特有の傾向」を意識し、大企業との差異を常に念頭に置いてください。
学習アドバイス: 海外直接投資や輸出の地域別分布は、統計データの更新が頻繁であり、試験出題時点の最新データを確認することが重要です。東アジア(特に中国)へのシフトは中小企業の重要な経営課題となっているため、白書の最新版を必ず確認してください。
第4問 法人企業統計(主要財務指標)
問題要旨: 財務省法人企業統計年報に基づき、法人企業の主要財務指標(一次産業、2012年度、中央値)を比較する問題で、最も適切なものを選択します。
K5 制度・データ T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス
正解: ウ(大企業の総資産回転率は中小企業を上回っている)
必要知識: 経営分析の基本指標 — ROA、総資産回転率、労働生産性などの計算と解釈
解法の思考プロセス: 各選択肢を検討します。ア「大企業の総資産経常利益率は中小企業を上回っている」は、利益率の大小を問います。イ「大企業の自己資本比率は中小企業を上回っている」は、財務安定性を問います。ウ「大企業の総資産回転率は中小企業を上回っている」は、資産効率性を問います。エ「大企業の付加価値額は中小企業を上回っている」は、規模の差を問います。オ「大企業の労働生産性は中小企業を上回っている」は、1人当たりの生産性を問います。統計データでは、一般に大企業の総資産回転率が中小企業を上回る傾向が見られます。これは大企業が設備投資効率を重視し、資産活用が効率的であることを反映しています。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 回転率と比率を混同する(「総資産回転率」と「自己資本比率」を区別できない)。(2) 大企業と中小企業の数値を逆に読む。(3) 「自己資本比率が高い = 良い」と単純に判断し、統計値の大小を見落とす。(4) 2012年度というデータ取得時点を無視し、時代遅れの知識で判断する。必ず統計年報の原文を確認し、実数値で比較してください。
学習アドバイス: 法人企業統計は中小企業診断士試験の頻出データソースです。「2012年度」という試験実施時点での統計資料として機能するため、年度を常に意識してください。また、「大企業」と「中小企業」の定義(資本金基準)も試験時点のものを参照する必要があります。
第5問 中小企業の労働事情
問題要旨: 人口減少・少子高齢化、グローバル化の進展、就業構造の変化を受けて、地域経済を取り巻く環境は大きく変わっており、短期資金の活用が地域性化の方策の一つとして注目されている点について、記述の正誤を判定する問題。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-B 条件見落とし
正解: ア(サービス業の給与所得者は増加している)
必要知識: 中小企業経営の課題と労働 — 雇用・労働条件・人材確保の現状
解法の思考プロセス: 各選択肢の記述を検討します。ア「サービス業の給与所得者は増加している」は、産業別雇用のシフト(製造業から対面型サービスへ)を反映しています。イ「サービス業の平均給与は減少している」は、サービス業の低賃金化傾向を述べています。ウ「製造業の給与所得者は減少している」は、産業空洞化を述べています。問題文では「中小企業において短期資金活用が重視される」という文脈が与えられており、その背景を理解することが重要です。短期資金とは、給与・福利厚生など即座の現金需要を指すため、給与所得者の増加とサービス業の拡大が関連しています。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 「給与所得者」と「給与額」を混同する(増加していても総賃金が減る可能性)。(2) 産業分類の範囲を明確にしないまま判断する(「サービス業」の定義の曖昧さ)。(3) 時間軸を無視し、「近年」の傾向と長期トレンドを混同する。(4) 質問の背景文脈「短期資金活用が注目される」という条件を見落とす。問題文全体の論理構造を理解してから、各選択肢を評価してください。
学習アドバイス: 労働関連統計は白書に詳細が記載されています。雇用・給与・産業別就業者数は、試験時点での最新データ(通常は前年度のセンサスデータ)を確認することが重要です。
第6問 クラウドソーシング活用
問題要旨: 近年、IT を利用した外部資源活用の手段として、クラウドソーシングが注目されている。クラウドソーシングサイトにおいて注力するメリットと課題について、正しい組み合わせを選択する問題。
K1 定義・用語 T4 条件整理 L2 Trap-A 逆方向
正解: エ(b 画像・動画加工関連 - c デザイン関連)
必要知識: ICT活用と中小企業 — クラウドソーシングの定義、メリット、利用業務
解法の思考プロセス: クラウドソーシングとは、インターネットを介して不特定多数の個人や企業に業務を発注する仕組みです。出題では「クラウドソーシングサイトにおいて注力するメリットについて」と「課題について」の2つの要素が問われています。メリットとしては、(a) web開発関連、(b) 画像・動画加工関連、(c) デザイン関連が列挙されており、課題には、(a) web開発関連、(b) 画像・動画加工関連、(c) デザイン関連が含まれます。適切な組み合わせを探します。一般的には、デザイン業務(ロゴ作成、キャラクター作成など)と動画加工業務がクラウドソーシングで外注しやすく、マージン率が比較的低い領域として知られています。
誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: (1) メリット(注力領域)と課題を逆に選択する。(2) web開発と画像加工の相対的な優位性を誤判定する。(3) 「画像加工は簡単だから課題が少ない」という主観的判断をする。(4) 実務経験なしに「一般的な常識」で推測する。「クラウドソーシングのメリット = 簡単に外注できる業務」と「課題 = 品質管理や納期調整が難しい業務」の関係を整理することが鍵です。
学習アドバイス: クラウドソーシング、クラウド会計、SaaS など、クラウド関連の新しいビジネスモデルは、企業経営情報システムや中小企業政策で頻出テーマになっています。白書の最新版で実例を確認し、メリット・課題をペアで暗記してください。
第7問 IT利活用(web作成等)
問題要旨: 中小企業が IT を活用した経営課題の補足を目指してクラウドソーシングを利用するメリットと課題について、最も適切な組み合わせを選択する問題。
K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同
正解: ア(a ウェブ開発関連 - b 画像・動画加工関連)
必要知識: 中小企業の情報化支援 — IT活用の課題と支援制度
解法の思考プロセス: クラウドソーシングのメリット領域(外注しやすい業務)とデメリット領域(品質管理が困難な業務)を整理します。web関連、画像加工、デザイン、ロゴ制作などが該当します。選択肢は「メリット側」と「課題側」の業務分野の組み合わせであり、矛盾のない組み合わせを探します。一般的には、ウェブ開発(単純な html コーディング)はクラウドソーシングでのメリットが大きく、一方で動画加工などの複雑業務は課題が多いとされています。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) a, b, c の分類を正確に理解していないと、異なる組み合わせを選んでしまう。(2) 「web開発」と「デザイン」の相対的な難度・品質管理コストを誤判定する。(3) 過去問や類似問題の記憶に頼ると、異なるコンテキストで誤選択する。(4) メリット・課題の対立軸を曖昧にしたまま判断する。必ず「メリット側の業務」と「課題側の業務」が相互に異なることを確認してください。
学習アドバイス: クラウドソーシングやオンラインプラットフォームの活用は、最近の中小企業診断士試験で急速に重要度が上昇しています。具体的な業務分野(web、動画、デザイン、ロゴなど)とそれぞれのメリット・課題をペアで学習してください。
第8問 商工会・商工会議所の支援
問題要旨: 我が国の中小企業支援において、従来から地方・商工会、商工会議所、中小企業団体中央会などが大きな役割を果たしてきた。中小企業支援機関が提供する支援内容についての記述の正誤を判定する問題。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-B 条件見落とし
正解: ア(会計数、職員数も一貫して減少している)
必要知識: 中小企業支援制度の体系 — 商工会・商工会議所の機能と役割
解法の思考プロセス: 2003年度から2012年度の期間における、商工会・商工会議所の会計数と職員数の推移を比較する問題です。各選択肢を検証します。ア「会計数、職員数も一貫して減少している」は、小規模企業の統廃合や経営環境の悪化を反映しているかを確認します。イ「会計数、職員数も一貫して増加している」は、これと逆の傾向を述べています。ウ「会計数は一貫して減少しているが、職員数は増加している」は、効率化と再配置の傾向を述べています。問題文では「2003年度から2012年度」という期間が明示されており、この間の統計推移を正確に把握することが重要です。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 「会計数」と「職員数」という2つの指標の推移を正確に読み分けていない。(2) 期間「2003年~2012年」という条件を見落とし、より古いデータや新しいデータでの印象で判断する。(3) 「一貫して」という言葉の意味を曖昧にしたまま、部分的な傾向で判断する。(4) 「減少」「増加」の相対値を誤認する。「いつからいつまで」「何が増減したのか」「一貫しているか変動しているか」を3段階に分けて確認してください。
学習アドバイス: 商工会と商工会議所は、日本の中小企業支援体制の基盤を担う公的機関です。組織規模の推移(会計数・職員数)も、試験出題時点での最新統計を確認することが重要です。また、両機関の相違(地域カバーの重複など)も理解しておくと、より深い学習につながります。
第9問 産業集積(素材製造業)
問題要旨: 産業集積は、地理的に近接した特定の地域内に多数の企業が、相互関連性を以って立地している状態である。そうした産業集積の形成過程や特質に比して、企業城下町や製品集積など、産業集積に属する地域の多くは地域内に小規模企業が多く立地している状況である。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同
正解: ウ(生産用機械具製造業の割合が最も高い)
必要知識: 地域経済と産業クラスタ — 産業集積の分類、形成パターン、具体的事例
解法の思考プロセス: 金属製品製造業、電気機械器具製造業、機械製造業など複数の素材・機械加工産業について、集積度を比較する問題です。各選択肢で異なる業種が列挙されており、実際のデータに基づいて最も集積度が高い業種を選ぶ必要があります。機械製造業、特に生産用機械具製造業は、地域集積が極めて強い産業として知られています(例:愛知県豊田市周辺、大田区の精密機械など)。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) 同じ素材・機械関連でも業種が異なり、集積度が大きく異なることを見落とす。(2) 「機械製造」「機械具」「電気機械」などの類似表記を区別できていない。(3) 具体的な地域(静岡県、兵庫県など)と業種の対応を知識として持たない。(4) 「割合が最も高い」という最大値に着目できていない。業種ごとの地域集積の実例(テキスタイル、ファスナー、包装材、精密機械など)を具体的に学習してください。
学習アドバイス: 産業集積は地域経済論の重要なテーマであり、白書の第4章「産業立地と地域経済」に詳細が記載されています。具体的な地名(加賀市のカーペット、備後町のアパレル、諏訪市の精密機械など)と産業の対応を整理し、ケース学習を行うことをお勧めします。
第10問 資本金別企業構成
問題要旨: 東京商工リサーチの全国企業倒産調査データに基づき、2008年から2013年の期間における、企業別従業者数の推移を見た場合の記述として、最も適切なものはどれか。
K5 制度・データ T2 分類判断 L1 Trap-B 条件見落とし
正解: ウ(全企業倒産件数は一貫して増加している)
必要知識: 中小企業の経営課題と倒産動向 — 企業倒産統計の解釈
解法の思考プロセス: 2008年~2013年という期間は、リーマンショック(2008年9月)からの景気回復期にあたります。企業倒産件数の推移を辿ると、2008年から2009年にかけて急増し、その後減少傾向が続きます。したがって「一貫して増加」という表現は不正確です。むしろ「ピークアウト後は減少」という方が正確です。選択肢を精査して、最もデータに合致するものを選ぶ必要があります。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 期間「2008年~2013年」の経済背景(リーマンショック、その後の景気回復)を見落とす。(2) 「一貫して」という言葉が「全期間同一の方向」を意味することを理解していない。(3) 倒産件数(戸数)と倒産額(金額)を混同する。(4) 資本金別や従業者別の区分を見落とし、単純な総数で判断する。必ずデータの時系列トレンドを視覚化し、「増加」「減少」「横ばい」を明確に判定してください。
学習アドバイス: 倒産動向は景気動向と密接に関連しており、試験実施年度の経済環境を理解することが重要です。また、東京商工リサーチ以外にも帝国データバンクなど複数の統計機関があり、若干のデータ差がある場合があります。問題文で引用されている統計の出典を確認することが大切です。
第11問 経営者保証(概念と要件)
問題要旨: 経営者保証は、経営者への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方で、経営者による思い切った事業展開や、早期の事業再生等を阻害する要因となるなど、様々な課題を抱えている。このため経営者保証に関するガイドラインが策定され、平成26年から適用されている。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-B 条件見落とし
正解: ア(ガイドラインは法的拘束力を有していない)
必要知識: 中小企業金融支援制度 — 経営者保証ガイドラインの内容と性格
解法の思考プロセス: 経営者保証ガイドラインは、金融機関の自主的な取り組みを促すための指針であり、法的拘束力(強制力)を持つものではありません。各選択肢の記述を検証します。ア「ガイドラインは法的拘束力を有していない」は、このガイドラインの性格を正確に述べています。イ「早期に事業再生や機械装置の決断した際、一定の生活費等を続けることや経営者の個人保証を求めることができない」は、ガイドラインの具体的な内容を述べています。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) ガイドラインと法令の相違を理解していない。(2) 「平成26年から適用」という発効時期を見落とす。(3) 金融庁と商工中金、業界団体など複数の主体が関係していることを混同する。(4) 「法的拘束力がない = 効力がない」と誤解する。ガイドラインは自主的申し合わせであるが、実務上の影響は大きいという性質を理解してください。
学習アドバイス: 経営者保証ガイドラインは、2014年(平成26年)の制定で、日本の金融制度における重要な改革です。中小企業経営に及ぼす影響、具体的な内容(連帯保証廃止の条件、公庫・商工中金の対応など)について白書に詳しく記載されています。
第12問 起業希望率と起業家数
問題要旨: 総務省「国勢調査」および経済産業省「平成21年経済センサス基本調査」に基づき、起業希望率と起業家数の推移を見た場合の記述として、最も適切なものはどれか。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: ウ(起業家数は1997年と2012年で比較するとほぼ横ばいしている)
必要知識: 起業・創業と事業承継 — 起業率・起業数の推移
解法の思考プロセス: 各選択肢の記述を統計データと照合します。1997年と2012年は15年間の隔たりがあり、この期間における起業の動きを追跡します。起業希望者の割合(起業希望率)と、実際の起業家数(起業数)は別の指標であり、両者の関連性と乖離を理解することが重要です。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 「起業希望率」と「起業家数」を混同する。(2) 年号「1997年」「2012年」という具体的な時点を見落とし、一般的な傾向で判断する。(3) 景気動向(1990年代の不況、2000年代の回復)の影響を無視する。(4) 「増加」「減少」「横ばい」の判定基準を曖昧にしたまま選択する。統計グラフを実際に見て、数値の増減を定量的に確認してください。
学習アドバイス: 起業統計は白書の重要なテーマです。起業希望率と実起業率の乖離、起業のタイプ(機会型 vs 必要型)、女性起業家の増減など、多角的な指標を統合的に理解する必要があります。
第13問 中小企業基本法の定義
問題要旨: 中小企業基本法の定義に基づく中小企業の範囲を問う問題で、最も適切なものを選択します。
K5 制度・データ T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同
正解: ア(従業者数60人で資本金が6千万円の食糧品小売業は中小企業に該当し、従業員数3人で資本金が100万円の食糧品小売業は小規模企業に該当する)
必要知識: 中小企業の定義と規模基準 — 業種別の規模基準の正確な理解
解法の思考プロセス: 小売業の規模基準は「従業者50人以下」「資本金・出資金5,000万円以下」です。選択肢ア「従業者60人、資本金6,000万円」は基準を超えているため「大企業」、「従業者3人、資本金100万円」は基準内のため「中小企業(実際には小規模企業)」です。ただし、小規模企業は中小企業に包含される概念です。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) 小売業と卸売業の基準を混同する。(2) 「中小企業」と「小規模企業」の包含関係を誤解する。(3) 「従業者50人以下」と「60人」の大小比較を間違える。(4) 「かつ」と「または」という論理演算子を誤解する(規模基準はいずれかを超えれば大企業)。業種別・規模別に体系表を作成し、ボーダーケースを完全に暗記してください。
学習アドバイス: 第1問でも触れた内容ですが、中小企業の定義は試験における最頻出かつ最重要のテーマです。「3億円・300人」「1億円・100人」「5,000万円・50人」「5,000万円・100人」という4パターンを、さらに特例(ゴム製品製造業など)を含めて完全に暗記してください。
第14問 小規模企業営業経営支援
問題要旨: 小規模企業営業経営支援について、中小企業支援機関が実施している支援内容の記述の正誤を判定する問題。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-B 条件見落とし
正解: ア(小規模企業を対象とした特別な経営支援サービスが提供されている)
必要知識: 中小企業支援施策 — 経営診断、ビジネスマッチング、人材育成等の支援内容
解法の思考プロセス: 小規模企業(従業者5~20人程度)は、経営資源が限定的であり、特別な支援が必要です。商工会・商工会議所、中小企業支援センターなどで「小規模企業経営支援」という専門的なプログラムが提供されています。各選択肢を検証し、実際に提供されている支援内容を選ぶ必要があります。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 小規模企業支援の具体的な内容を知識として持たない。(2) 「小規模企業」の定義(従業者数による区分)を曖昧にしたまま判断する。(3) 地域によって支援内容が異なることを見落とす。(4) 「経営支援」という言葉が指す具体的な施策内容を把握していない。実際の商工会や支援センターのウェブサイトで、提供されているサービス内容を確認することをお勧めします。
学習アドバイス: 中小企業支援制度は、施策の内容が頻繁に変更されます。試験実施年度の最新情報を、中小企業庁や経済産業局のウェブサイトで確認することが重要です。
第15問 マル経融資の要件
問題要旨: マル経融資(商工会・商工会議所の経営指導を受けた小規模事業者に対し、日本政策金融公庫が無担保・無保証人で融資する制度)の要件についての記述の正誤を判定する問題。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: ウ(融資期間は5年以内である)
必要知識: 中小企業向けの融資制度 — 日本政策金融公庫融資、マル経融資などの種類と要件
解法の思考プロセス: マル経融資は、商工会・商工会議所の経営指導を受けることを条件に、日本政策金融公庫が提供する融資です。各選択肢で融資条件(借入期間、金額、対象者など)についての記述が異なります。マル経融資の基本的な要件は、「1年以上の経営指導を受けていること」「融資限度額2,000万円」「据置期間を含めた返済期間」などです。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) マル経融資の正式名称と他の融資制度を混同する。(2) 融資限度額(2,000万円)と返済期間(5年)の両方を正確に把握していない。(3) 「経営指導を受けていること」という要件の重要性を見落とす。(4) 金利や担保の要件も含めて混同する。マル経融資の正式な申し込み要件を、公庫のウェブサイトで確認してください。
学習アドバイス: マル経融資は「経営指導 + 融資」という組み合わせが特徴です。単純な融資制度として理解するのではなく、商工会・商工会議所との連携を含む支援体制全体の中で理解することが重要です。
第16問 JAPAN ブランド育成支援
問題要旨: JAPAN ブランド育成支援事業は、複数の中小企業・小規模企業が連携して日本製品のブランド化に向けて行う海外展開活動を支援するものである。この事業に関する記述の正誤を判定する問題。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同
正解: ウ(ブランド確立支援への支援は、具体的な海外展開の経験を把握し、当該戦略に基づきブランド化を推進する支援を施す場合に限定される)
必要知識: 中小企業の国際展開支援 — JAPAN ブランド事業の内容と要件
解法の思考プロセス: JAPAN ブランド育成支援事業は、経済産業省が主導する海外展開支援です。事業の特徴は、(1) 複数企業の協調、(2) 日本の地域ブランド化、(3) 海外市場での認知向上などです。各選択肢で具体的な支援内容についての記述が異なり、正確な内容を把握することが必要です。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) JAPAN ブランド事業と他の海外展開支援事業(中小企業国際展開支援事業など)を混同する。(2) 支援対象企業の規模(従業者数など)についての要件を曖昧にしたまま判断する。(3) 「ブランド化」「国際展開」「地域産業振興」など複数の目的を整理できていない。(4) 企業とコンソーシアムという法的形態の相違を理解していない。白書の当該セクションで、具体的な事例を確認してください。
学習アドバイス: JAPAN ブランド事業は、経済産業局が実施し、毎年採択企業が公表されます。採択事例を調べることで、実際の支援内容と成果を理解できます。
第17問 中小企業退職金共済制度
問題要旨: 家具小売業を経営する A 氏から、従業員確保と退職金制度についての相談を受けた中小企業診断士は、A 氏に対して、「中小企業退職金共済(以下『中退共』)制度」の利用を勧める場合の説明内容として、最も適切なものはどれか。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-A 逆方向
正解: ア(戦略選択に関しては非課税拠出可能である)
必要知識: 中小企業の人事・給与制度 — 中退共制度の基本的な仕組みと税務上の取扱い
解法の思考プロセス: 中退共制度は、国が推奨する中小企業向けの退職金制度です。その特徴は、(1) 経営者拠出金は非課税扱い、(2) 従業者ごとの積立、(3) 掛金は全額事業費控除可能、などです。各選択肢で制度の異なる側面が述べられており、正確な内容を把握することが必要です。
誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: (1) 中退共制度と一般の退職金積立を混同する。(2) 「非課税」と「費用控除」の相違を理解していない。(3) 従業者向けと経営者向けの制度を混同する。(4) 拠出金と給付の税務上の取扱いを逆に理解する。中退共のパンフレットを取り寄せ、正確な制度内容を確認してください。
学習アドバイス: 中退共制度は、中小企業庁が推奨する代表的な退職金制度であり、試験出題の可能性が高いテーマです。仕組み(積立型)、税務上の取扱い、加入企業の負担などを整理しておくことをお勧めします。
第18問 事業承継での相談内容
問題要旨: 中小企業診断士が事業承継の相談を受けた際に、経営者から複数の課題が提示される場合がある。これらの課題について、最も適切な相談内容の組み合わせはどれか。
K1 定義・用語 T4 条件整理 L2 Trap-D 類似混同
正解: ウ(b サービス業 - a 卸売業 - c 製造業)
必要知識: 事業承継と M&A — 事業承継の課題と支援内容
解法の思考プロセス: 事業承継の相談内容は、(1) 法的・財務的課題(相続税対策、会社分割など)、(2) 事業戦略の承継、(3) 経営人材の確保、などが挙げられます。業種によって優先順位が異なることが重要です。例えば、サービス業では人材確保が最優先課題であり、製造業では設備投資と技術継承が重要です。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) 業種による課題の優先順位の相違を理解していない。(2) 「相談内容」と「相談者の属性(経営者の年齢、健康状態など)」を混同する。(3) 法的対応と経営対応の領域を分離できていない。(4) 事業承継の「問題点」と「解決策」を混同する。各業種における事業承継の固有の課題を、具体例で学習してください。
学習アドバイス: 事業承継は、診断士の実務において極めて重要なテーマです。「親族承継」「従業員承継」「M&A」の3つのパターンごとに、解決すべき課題と支援方法を整理することをお勧めします。
第19問 融資対象企業の親族起業
問題要旨: 融資対象企業の A 社から、下記のア~エの4人の個人企業主からの経営資金借り入れ相談があった。A 社に貸付資金のメリットを勧めるとすれば、最も適切なのはどれか。
K1 定義・用語 T4 条件整理 L2 Trap-D 類似混同
正解: ア(雇用契約に関して6年を経過する B 氏(28歳、男性))
必要知識: 中小企業向けの融資制度と要件 — 融資対象企業の範囲と要件
解法の思考プロセス: 融資制度によっては、企業の年齢(設立からの経過年数)、経営者の年齢、雇用実績などが要件になる場合があります。各選択肢で異なる条件が提示されており、最も融資の対象になりやすいパターンを選ぶ必要があります。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) 融資制度による要件の相違を理解していない。(2) 「従業者数」「経営者年齢」「企業年齢」などの複数の要件を整理できていない。(3) 小規模企業と中小企業の要件の相違を認識していない。(4) 「年齢」と「経営年数」を混同する。実際の公庫の融資制度ガイドで、各要件を確認してください。
学習アドバイス: 融資要件は極めて細かい実務的な内容であり、試験出題では「常識的判断」で選択肢を絞り込むことが有効です。「より若い経営者」「より経営年数の長い企業」などの一般的な優遇基準を念頭に置いてください。
第20問 セーフティネット貸付
問題要旨: セーフティネット貸付の経済環境変動対応資金に該当するための要件に関する記述について、最も適切なものはどれか。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: エ(融資期間は5年以内である)
必要知識: 中小企業向けの融資制度 — セーフティネット融資の要件と融資条件
解法の思考プロセス: セーフティネット融資は、経済情勢の変化に対応する中小企業向けの特別な融資です。通常融資より優遇された金利・条件が提供されます。各選択肢で異なる要件(融資対象企業の範囲、融資限度額、融資期間など)が述べられており、正確な内容を把握することが必要です。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 「セーフティネット融資」と通常の日本政策金融公庫融資を混同する。(2) 「経済環境変動対応資金」の定義を曖昧にしたまま判断する。(3) 融資期間(5年)と据置期間を区別できていない。(4) 融資限度額(一般に8,000万円)と期間を混同する。セーフティネット融資のパンフレットで、具体的な要件を確認してください。
学習アドバイス: セーフティネット融資は景気変動への対応策として重要であり、試験出題の可能性が高いテーマです。「経営環境変動」「取引先企業の倒産」「売上減少」など、対象となる事由を整理しておくことをお勧めします。
第21問 経営戦略と企業規模
問題要旨: ポーターの競争戦略論や RBV(リソース・ベースド・ビュー)などの経営学的知見を踏まえて、企業規模に適切な競争戦略が存在することが知られている。中小企業が採用すべき戦略についての記述として、最も適切なものはどれか。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同
正解: ウ(集中戦略により、特定市場での競争優位を獲得する)
必要知識: 経営戦略と競争優位 — ポーターの戦略類型、中小企業に適した戦略
解法の思考プロセス: ポーターの3つの基本戦略は、(1) コスト・リーダーシップ戦略(全市場での低価格化)、(2) 差別化戦略(付加価値・ブランド化)、(3) 集中戦略(ニッチ市場での卓越性)です。中小企業は資金・人材が限定的であるため、全市場での競争は困難であり、特定の市場セグメントでの優位を目指す「集中戦略」が適切とされています。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) 「コスト・リーダーシップ」と「差別化」「集中」の相違を理解していない。(2) 大企業向けの戦略と中小企業向けの戦略を混同する。(3) ポーター理論とほかの経営戦略論を混同する。(4) 「集中」の意味を「縦統合」などの組織構造と誤解する。ポーターの『競争の戦略』を参照し、各戦略の定義を正確に理解してください。
学習アドバイス: 経営戦略は企業経営理論の基本テーマです。ポーター、ハメルとプラハラード、ポーターの「バリュー・チェーン」など、複数の理論フレームワークを理解した上で、中小企業への応用を考えることが重要です。
第22問 下請法の対象範囲
問題要旨: 下請代金支払遅延等防止法(下請法)の適用対象についての記述の正誤を判定する問題。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-B 条件見落とし
正解: ア(資本金5,000万円以下の法人企業)
必要知識: 下請取引の保護と規制 — 下請法の適用対象企業と規制内容
解法の思考プロセス: 下請法は、資本金規模によって適用対象を限定しています。親事業者の資本金規模が一定以上、下請事業者の資本金規模が一定以下の場合に適用されます。各選択肢で異なる資本金基準(5,000万円、1億円、3,000万円など)が述べられており、正確な基準を把握することが必要です。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 下請法の適用基準(資本金規模)を曖昧にしたまま判断する。(2) 「親事業者」「下請事業者」の定義を混同する。(3) 業種(製造業 vs サービス業)による基準の相違を見落とす。(4) 下請法と独占禁止法を混同する。公正取引委員会のウェブサイトで、下請法の詳細を確認してください。
学習アドバイス: 下請法は中小企業を保護する重要な法律です。「4条」「5条」などの主要条項(代金支払い、支払期限、返品禁止など)と、適用対象の範囲を整理しておくことをお勧めします。
第23問 中小企業等経営強化法
問題要旨: 中小企業経営強化税制に関する記述について、最も適切なものはどれか。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-A 逆方向
正解: エ(小企業等経営強化法における経営力強化計画は、事業承継や経営革新に対する支援の基礎となる制度である)
必要知識: 中小企業経営強化法と経営力強化計画 — 制度の概要と申請要件
解法の思考プロセス: 経営力強化計画は、中小企業が事業承継や経営革新を実施する際に、経営目標や実行計画を経営診断士とともに策定するものです。この計画を承認される と、税制優遇や融資優遇などの支援を受けられます。各選択肢で異なる説明が述べられており、制度の正確な位置付けを理解することが必要です。
誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: (1) 経営力強化計画が「前提」なのか「結果」なのかを逆に理解する。(2) 事業承継と経営革新の異なる要件を混同する。(3) 計画の策定者(経営診断士など)の役割を誤解する。(4) 税制優遇の具体内容を誤認する。中小企業庁のウェブサイトで、経営力強化計画の要件と特典を確認してください。
学習アドバイス: 経営力強化計画は、数年前に新設された比較的新しい制度であり、試験出題の可能性が高まっています。白書の最新版で詳細を確認し、実例(事業承継型、経営革新型)を学習することをお勧めします。
第24問 ものづくり・高度化事業(ものづくり補助金)
問題要旨: ものづくり・高度化事業は、中小企業が革新的な製品・サービスや生産プロセスの開発・導入を支援するものである。この補助事業に関する記述の正誤を判定する問題。
K5 制度・データ T4 条件整理 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: ウ(ア 製品開発計画を記述した事業計画書を作成し、その実効性についてウ 確認を受けているか)
必要知識: 中小企業向けの補助金制度 — ものづくり補助金の申請要件と選定基準
解法の思考プロセス: ものづくり補助金は、経済産業省が提供する代表的な中小企業向け支援制度です。補助対象となるためには、(1) 従業者数の要件、(2) 事業計画書の提出、(3) 認定経営革新等支援機関(認定支援機関)によるサポートなどが必要です。各選択肢で異なる要件が述べられており、正確な申請手続きを把握することが重要です。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 補助対象企業の従業者数要件を見落とす。(2) 「事業計画書」の必須性を認識していない。(3) 「認定支援機関」のサポート要件の重要性を無視する。(4) 補助率や補助上限額などの金額条件を混同する。ものづくり補助金の公式サイト(jGrants)で、最新の要件を確認してください。
学習アドバイス: ものづくり補助金は毎年度の予算枠が決定され、要件や補助率が変更される可能性があります。試験実施年度の最新情報を確認することが重要です。
第25問 食品製造業の親族起業
問題要旨: 食品製造業の A 社において、経営者から経営資金の借り入れに際する相談を受けた中小企業診断士が、A 社に貸付資金のメリットを説明する場合の説明内容として、最も適切なものはどれか。
K1 定義・用語 T4 条件整理 L2 Trap-D 類似混同
正解: ア(教育訓練を行う場合、訓練経費として1人1日当たり一定額の加算がある)
必要知識: 人材育成と労働支援 — キャリア形成促進助成金などの人材育成施策
解法の思考プロセス: 食品製造業の経営課題として、衛生管理、品質管理、人材育成などが挙げられます。従業員教育に関連した支援制度を検討する際に、各選択肢で異なる支援方法が述べられています。キャリア形成促進助成金など、従業員訓練に対する補助が存在することを確認する必要があります。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) 「訓練経費補助」「給与補助」「設備投資補助」などの異なる支援形態を区別できていない。(2) 食品製造業固有の要件を理解していない。(3) 「1人1日当たり」という単位を正確に計算できていない。(4) 補助対象経費と補助対象外経費の区分を曖昧にしたまま判断する。労働局や訓練機関のウェブサイトで、人材育成支援の詳細を確認してください。
学習アドバイス: 人材育成は、特に製造業や飲食業において重要な経営課題です。キャリア形成促進助成金、特定訓練奨励金など、複数の支援制度が存在することを理解し、その対象や補助内容を整理することをお勧めします。
第26問 事業組織化の要件
問題要旨: 中小企業の事業化支援に関連して、個人企業が事業組織化する際に満たす必要がある法的要件についての記述の正誤を判定する問題。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: ウ(設立する場合は、組合員の2分の1以上は組合に投資する組合員となるとする)
必要知識: 事業協同組合と事業組織化 — 事業協同組合の設立要件と法的性格
解法の思考プロセス: 個人企業が協同組合化する際には、商法や協同組合法の要件を満たす必要があります。各選択肢で異なる要件(出資金、構成員数、意思決定手続きなど)が述べられており、正確な法的要件を把握することが必要です。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 事業協同組合と有限責任事業組合の相違を理解していない。(2) 「組合員」と「従業者」の定義を混同する。(3) 設立時の要件と運営時の要件を混同する。(4) 出資金と加入金の相違を認識していない。中小企業庁が提供する「事業協同組合設立マニュアル」を参照してください。
学習アドバイス: 事業協同組合は、中小企業の共同組織化を支援する制度です。設立要件、税務上の取扱い、運営ルールなどを正確に理解することが重要です。
第27問 GNT支援(グローバルニッチトップ企業)
問題要旨: グローバルニッチトップ(GNT)支援は、経営資源が限定された中小企業が、グローバル市場での特定分野での競争力を獲得することを支援するものである。この支援制度に関する記述の正誤を判定する問題。
K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同
正解: ウ(自社製品について、海外において一定のシェアを確保している企業が融資対象となる)
必要知識: グローバルニッチトップ企業育成支援 — GNT企業の定義と支援内容
解法の思考プロセス: GNT企業とは、「グローバル市場での特定分野でのトップシェア」を目指す中小企業です。経済産業省がこれらの企業を認定し、融資や専門家派遣などの支援を提供しています。各選択肢で異なる定義が述べられており、GNT企業の正確な定義を把握することが重要です。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) 「グローバル」と「国内」の市場範囲を混同する。(2) 「ニッチ」の意味(限定的市場 vs 高付加価値)を誤解する。(3) 「トップ」の定義(世界一 vs 上位3位など)を曖昧にしたまま判断する。(4) GNT企業と他の成長企業育成プログラムを混同する。経済産業省のウェブサイトで、GNT企業の定義と採択企業一覧を確認してください。
学習アドバイス: グローバルニッチトップ企業は、日本の中小企業の国際競争力強化を象徴する制度です。白書でも詳しく取り上げられており、具体的な採択企業事例を学習することで、制度の理解が深まります。
分類タグの凡例
知識種類(K)
- K1 定義・用語: 概念、制度用語、専門用語の定義
- K5 制度・データ: 政策フレームワーク、統計データ、法令の詳細規定
思考法(T)
- T1 正誤判定: 記述文の真偽を判定する単純な論理判定
- T2 分類判断: 複数の選択肢から最適なカテゴリを選択する分類タスク
- T3 計算実行: 数値計算や統計解析を伴う定量的判断
- T4 条件整理: 複数条件を組み合わせて、最適な組み合わせを選択する
- T5 穴埋め推論: 不完全な情報から論理的に結論を推論する
形式層(L)
- L1 基礎知識: 教科書的な基本知識でカバー可能
- L2 応用理解: 複数の基本概念の組み合わせ、比較判断が必要
- L3 計算応用: 公式の応用、複雑な計算手順、統計データの総合判断
罠パターン
- Trap-A 逆方向: 因果関係や対立軸を逆に理解する
- Trap-B 条件見落とし: 「いつ」「どこで」「誰が」などの限定条件を無視
- Trap-C 部分正解: 選択肢の一部は正しいが全体としては誤り
- Trap-D 類似混同: よく似た概念・用語・数値を区別できない
- Trap-E 計算ミス: 計算手順の誤りまたは数値入力の誤認
年度総括
思考法の分布
| 思考法 | 出題数 | 割合 | 学習優先度 |
|---|---|---|---|
| T1 正誤判定 | 17 | 63.0% | 最高 |
| T4 条件整理 | 5 | 18.5% | 高 |
| T2 分類判断 | 4 | 14.8% | 中 |
| T3 計算実行 | 1 | 3.7% | 低 |
解説: 本ページで解説した27問では「T1 正誤判定」が63%を占めており、複数の政策説の正誤を判定する力が最重要です。次に「T4 条件整理」が高い割合(18.5%)を示しており、複雑な要件条件を整理する能力が重要です。
罠パターンの分布
| 罠パターン | 出題数 | 特徴 |
|---|---|---|
| Trap-B 条件見落とし | 12 | 最頻出。年度、対象地域、企業規模、期間などの限定条件の見落とし |
| Trap-D 類似混同 | 11 | 次点。類似した支援施策、政策制度の混同 |
| Trap-A 逆方向 | 3 | 加算/減算、拡大/縮小の向きの誤認 |
| Trap-E 計算ミス | 1 | 稀。計算問題は多くない |
解説: 本ページで解説した27問では Trap-B(条件見落とし)が最頻出(44.4%)となり、細かい条件判定が極めて重要です。「この施策はいつから対象か」「どの地域が対象か」などの条件を丁寧に読み込むことが合格の鍵です。
Tier別学習優先度
優先度 1(必須・定期復習)
- 「中小企業」と「小規模企業」の定義(業種別の資本金・従業員基準)を確認
- 白書データの「年度」「対象期間」「調査時点」を正確に把握
- 支援施策の「対象者要件」「申請時期」「申請先」を正確に区別
- 類似施策(ものづくり補助金 vs 小規模事業者持続化補助金など)の違い
優先度 2(政策根拠・制度設計)
- 政策の「根拠法」(中小企業基本法 vs 小規模基本法 vs 地方創生法)の確認
- 地域経済振興、産業集積、商店街活性化の区別
- 経営改善・事業承継支援の具体的内容と対象要件
優先度 3(周辺知識)
- 労働環境改善、働き方改革関連施策
- 国際化・最新課題の トレンド
本番セルフチェック5項目
- 「中小企業」と「小規模企業」の定義(業種別の資本金・従業員基準)を確認したか
- 業種ごとに異なる基準(製造業、卸売業、小売業、サービス業)を正確に識別
- 資本金基準 vs 従業員基準の両方を確認
- 「以下」「未満」の違いを理解
- 白書データの「年度」「対象期間」を見落としていないか
- 白書発刊年と対象データ年度の異なり(例:2015年版白書は2014年度データを掲載)
- 調査実施時期と統計発表時期の時間差
- 「年度」と「暦年」の計算ミスを防止
- 支援施策の「対象者要件」「申請先」を正確に区別したか
- 補助金ごとの対象企業規模(中小企業 vs 小規模企業 vs 個人事業主)を確認
- 認定支援機関の関与有無
- 申請締切と採択結果の時間差
- 類似施策(ものづくり補助金 vs 小規模事業者持続化補助金など)を混同していないか
- 施策名に含まれるキーワード(「ものづくり」「持続化」「革新」「承継」など)で分類
- 目的(生産性向上 vs 経営課題解決 vs 事業承継)で区別
- 対象企業規模と補助上限額を対比で整理
- 政策の「根拠法」(中小企業基本法 vs 小規模基本法)を確認したか
- 中小企業基本法に基づく政策 vs 小規模企業活性化法に基づく政策の区別
- 地方創生推進法、地方自治法など他の法律との関連性
- 各施策の法的位置付けと対象地域・企業の整合性を確認
関連ページ
参考リンク
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