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経営法務(令和元年度)

令和元年度(2019)中小企業診断士第1次試験 経営法務の全24問解説

概要

令和元年度(2019)の経営法務は全24問(各4点、100点満点)で出題されました。会社法、契約法、知的財産法、労働法、消費者保護法など、中小企業経営に直結する法律知識が幅広く出題されます。条文の正確な理解と実務的な制度運用が問われます。

問題文は J-SMECA 公式サイト(令和元年度 経営法務) から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。

解説の読み方

各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。


形式層の分布

形式層問数割合該当問
L1(定義暗記で解ける)6問25%1, 5, 15, 21, 23, 24
L2(構造理解が必要)18問75%2, 3, 4, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 16, 17, 18, 19, 20, 22

合格ラインへのコメント: 経営法務は大半がL2(構造理解)。判例・ケーススタディを通じて論理を理解することが合格の必須条件。条文の丸暗記では対応困難。


第1問 会社法における設立と記載事項

問題要旨: 会社設立時に定款に記載すべき事項(絶対的記載事項、相対的記載事項)の区別。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-記載義務の混淆

正解: イ

必要知識: 経営法務:会社法の基本 — 定款記載事項

解法の思考プロセス:

  1. 絶対的記載事項:記載なければ定款として効力がない
    • 商号、目的、本店所在地、出資額(出資者が数人の場合)、設立時社員(発起人)
  2. 相対的記載事項:記載なければ定款として有効だが、法定の内容が適用される
    • 社員の変更、新たな出資、議決権制限
  3. 任意的記載事項:定款に記載してもしなくても有効
    • 役員報酬、配当方針、紛争解決手続き
  4. 設立時の手続き:定款作成 → (公証人認証) → 登記申請

誤答の落とし穴 Trap-記載義務の混淆:

  • 「定款に記載すること=絶対的記載事項」と過度に厳格に解釈
  • 相対的記載事項を記載しないと「設立が無効」と誤認
  • 会社形態(株式会社、合同会社など)で記載事項が異なることに気づかない

学習アドバイス: 定款記載事項は「記載義務」と「効力」の二軸で整理する。不足しても会社設立は有効だが、法定の内容が適用されることが重要。


第2問 株式会社の機関構成と権限

問題要旨: 株式会社における取締役、監査役、株主総会の権限と責任の分界点。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-機関権限の錯誤

正解: ウ

必要知識: 経営法務:会社法の機関 — 権力分立と牽制機制

解法の思考プロセス:

  1. 株主総会:最高意思決定機関、基本的事項を決定
    • 定款変更、役員選任・解任、合併・分割、配当決定
    • 取締役の意思決定内容を監視(事後的)
  2. 取締役:業務執行機関、日常的経営判断
    • 契約締結、投資決定、人事採用
    • 但し「重大な経営判断」は株主総会の承認が必要
  3. 監査役:監視機関
    • 取締役の違法行為・不当行為を監視
    • 監査報告書作成、株主総会に報告

誤答の落とし穴 Trap-機関権限の錯誤:

  • 「取締役会がすべてを決定できる」と誤認(基本事項は株主総会)
  • 監査役が「積極的に経営に干渉」できると誤認(監視のみ)
  • 代表取締役と取締役の権限区別が曖昧

学習アドバイス: 会社機関は「権力分立」の思想に基づく。各機関の「専管事項」を明確にすることが理解の鍵。取締役が越権するリスク、監査役が監視を怠るリスクを常に念頭に置く。


第3問 取締役の忠実義務と善管注意義務

問題要旨: 取締役に課せられる法的義務、およびそれらの違反時の責任。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-義務内容の混淆

正解: エ

必要知識: 経営法務:取締役責任 — 義務と責任追及

解法の思考プロセス:

  1. 忠実義務:会社の利益のために行動する義務
    • 自己取引の禁止、競業避止、情報の私的流用防止
    • 違反時:会社に対する損害賠償責任(民事)、場合により刑事責任
  2. 善管注意義務:善良な管理者の注意をもって業務を行う義務
    • 経営判断の合理性、情報収集の充実、リスク管理
    • 違反時:会社への損害賠償責任
  3. 責任追及:株主代表訴訟(株主が会社に代わって請求)、直接訴訟
  4. 免責:会社と取締役が合意による責任軽減(法定限度内)

誤答の落とし穴 Trap-義務内容の混淆:

  • 「忠実義務違反=刑事犯」と単純化(民事責任が先行)
  • 「経営判断の失敗=善管注意義務違反」と誤認(経営陥阱は許容される場合がある)
  • 取締役の個人資産から損賠を賠償する際の法人格否認理論を見落とす

学習アドバイス: 取締役責任は「会社に対する責任」と「第三者に対する責任」で分かれる。経営判断の「過程」が適切であれば、結果の失敗は保護される(経営判断の法則)ことを理解する。


第4問 株式譲渡と株主権の移転

問題要旨: 株式譲渡の要件、非公開会社における譲渡制限、および譲渡に伴う権利義務の変動。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-譲渡制限の実務

正解: ウ

必要知識: 経営法務:株式と株主権 — 譲渡要件と効力

解法の思考プロセス:

  1. 株式譲渡の効力:
    • 合意のみで有効(定款に制限規定がない場合)
    • 株主権は譲渡日から移転
  2. 非公開会社の譲渡制限:
    • 定款で株式譲渡を制限可能(定款記載が必須)
    • 譲受人が会社の承認を得ずに譲渡した場合、効力なし
    • 会社が譲受人として引き受けるか、他の株主に買取請求権がある
  3. 配当請求権、議決権は株主権に含まれ、譲渡と同時に移転
  4. 会社に対する責任(失敗した事業の責任等)は、原則として旧株主に帰属(一部例外あり)

誤答の落とし穴 Trap-譲渡制限の実務:

  • 「株式譲渡=自由」と誤認(定款制限が有効)
  • 譲渡制限に違反した場合の「効力」を曖昧に理解
  • 特定の配当請求権や議決権が譲渡されず残存すると誤認

学習アドバイス: 非公開会社の譲渡制限は「経営支配権の維持」が目的。定款規定の有無と内容を必ず確認することが実務での鉄則。


第5問 合同会社と合名会社の責任形態

問題要旨: 持分会社における出資者の責任形態、利益配分、および経営参加の相違。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-責任形態の混淆

正解: ウ

必要知識: 経営法務:持分会社 — 合同・合名・合資の比較

解法の思考プロセス:

  1. 合同会社:
    • 全員有限責任(出資額範囲内)
    • 全員が経営参加可能(代表社員選定も可能)
    • 利益配分:出資比率による(定款自治)
  2. 合名会社:
    • 全員無限責任(個人資産も負担)
    • 全員が経営参加義務あり
    • 利益配分:出資比率以外でも自由に設定可
  3. 合資会社:
    • 無限責任社員と有限責任社員が混在
    • 無限責任社員が経営参加(有限責任社員は不可が原則)
    • 利益配分:定款自治

誤答の落とし穴 Trap-責任形態の混淆:

  • 「合同会社=小規模事業の会社」と実務的先入観で判定
  • 無限責任の意味を軽視(会社債務により個人資産が奪われうる)
  • 経営参加と責任形態が必ずしも相関しないことに気づかない

学習アドバイス: 持分会社は「会社資本が限定的」な中小企業向けの形態。株式会社との最大の相違は「経営者と投資家が同一」という特性にあることを理解する。


第6問 募集株式の発行と相場

問題要旨: 株式会社における増資時の新株発行、払込金額、および既存株主の権利保護。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-希薄化と公正な価格

正解: イ

必要知識: 経営法務:株式発行 — 新株予約権、希薄化

解法の思考プロセス:

  1. 新株発行の権限:取締役会決議(一定額以上は株主総会承認が必要な場合も)
  2. 払込金額:
    • 公開会社:時価相場が基準(割引発行は一定規制)
    • 非公開会社:柔軟(但し著しく不公正な価格は無効のリスク)
  3. 既存株主の権利保護:
    • 新株引受権(優先権):既存株主の希薄化防止
    • 譲渡制限:非公開会社で新株引受人の限定
  4. 発行価格の決定:取締役会の裁量だが、不公正に低額の場合は株主から異議あり

誤答の落とし穴 Trap-希薄化と公正な価格:

  • 「新株発行は自由」と誤認(特に公開会社では厳格な規制)
  • 既存株主の「希薄化」(1株当たりの価値低下)を軽視
  • 新株引受権行使の期限・手続きを見落とし

学習アドバイス: 新株発行は既存株主の実質的権益を侵害する可能性がある。不公正な価格設定が無効となるメカニズムと、既存株主の保護制度を理解することが重要。


第7問 配当金の支払要件と制限

問題要旨: 株式会社の配当における「配当可能利益」の計算、および配当可能額の制限。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-赤字会社の配当

正解: ウ

必要知識: 経営法務:配当と準備金 — 配当可能利益の計算

解法の思考プロセス:

  1. 配当可能利益の計算:
    • 最終利益(当期純利益)+ 前期繰越利益 - 当期繰越利益予定額
    • または = 純資産額から(資本金 + 法定準備金) を引いた額
  2. 配当制限:
    • 赤字会社でも利益があれば配当可(但し準備金の積立後)
    • 累積赤字の場合、配当可能利益が負となり配当不可
  3. 準備金の積立:
    • 法定準備金:利益配当額の10%を積み立て義務(資本金の4分の1(25%)まで)
    • 任意準備金:経営方針により任意に積立
  4. 過度配当時の責任:取締役および受取株主の連帯責任

誤答の落とし穴 Trap-赤字会社の配当:

  • 「赤字会社は配当不可」と単純化(過去利益の蓄積があれば可)
  • 法定準備金の役割(債権者保護)を見落とし
  • 配当実行後に不正が判明した場合の責任追及方法を曖昧に

学習アドバイス: 配当可能利益は「過去利益の取り崩し」を許容する制度。会社の支払能力(キャッシュフロー)と会計利益のズレを理解することが実務的な判断の鍵。


第8問 監査役の権限と責任

問題要旨: 監査役の業務監査権と会計監査権、違法行為報告義務、および監査範囲。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-監査役の積極的関与

正解: ア

必要知識: 経営法務:監査役制度 — 監視権と報告義務

解法の思考プロセス:

  1. 監査役の権限:
    • 業務監査:取締役の業務執行が適法・適切か監視
    • 会計監査:財務諸表の真実性を監査
    • 報告請求権:取締役に対して業務報告・会計資料の提出を請求
  2. 独立性の保障:
    • 解任に株主総会決議が必要(普通決議より高い要件)
    • 報酬は取締役と独立
  3. 義務:
    • 違法行為の取締役への警告義務
    • 株主総会への報告義務
    • 検査役がいる場合の協力義務
  4. 責任:株主への説明責任、過失がある場合の損害賠償

誤答の落とし穴 Trap-監査役の積極的関与:

  • 監査役が「積極的に経営改善を指示できる」と誤認(監視のみ)
  • 違法行為を発見しても報告しない場合の責任を軽視
  • 会計監査の対象が「財務諸表」に限定されることに気づかない

学習アドバイス: 監査役は「権力分立」における制御機制。監視権を正当に行使する義務がある一方で、経営支配権はない。独立性と責任のバランスを理解することが重要。


第9問 会社分割と事業譲渡

問題要旨: 会社分割と事業譲渡の相違、法的効果、および債権者保護。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-包括承継と個別承継

正解: ウ

必要知識: 経営法務:組織再編 — 権利義務の承継

解法の思考プロセス:

  1. 会社分割(法定合併と同様):
    • 包括承継:分割会社の資産・負債・契約がすべて承継会社に移転
    • 債権者保護:債権者異議手続き(期間内に異議があれば弁済請求可)
  2. 事業譲渡:
    • 個別承継:個別契約により資産のみ移転(負債は原則として移転しない)
    • 債権者保護:譲渡会社の債権者が担保権を失わない
  3. 雇用契約の扱い:
    • 会社分割:労働者の同意なしに分割会社から新会社への移籍(法的に強制)
    • 事業譲渡:労働者の個別同意が必要(同意しなければ旧会社に残留)
  4. 税務:会社分割はより有利な処遇(特に分割型分割)

誤答の落とし穴 Trap-包括承継と個別承継:

  • 「会社分割=事業譲渡」と混淆(法的効果が大きく異なる)
  • 負債の承継が「分割は強制、譲渡は自由」であることを誤認
  • 雇用契約の承継について「労働者の同意」が分割で不要なことに気づかない

学習アドバイス: 会社分割は「包括承継」という大きな法的効果をもつ。どの資産・負債・契約が移転するか、どの程度の債権者保護が働くかを正確に理解することが実務的に重要。


第10問 合併と新設合併

問題要旨: 吸収合併と新設合併の相違、株主への対価配分、および手続き。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-対価と価値評価

正解: イ

必要知識: 経営法務:合併制度 — 合併比率と効力

解法の思考プロセス:

  1. 吸収合併:存続会社が消滅会社の資産・負債・契約を承継
    • 消滅会社の株主に存続会社の株式を交付
    • 合併比率:通常、簿価ではなく時価総資産で決定
  2. 新設合併:複数会社が消滅し、新会社が設立
    • 新会社の株主は複数の消滅会社の出資者の組み合わせ
    • 手続きがより複雑(新会社設立 + 権利義務承継)
  3. 株主への対価:原則として存続会社または新会社の株式(現金交付も可)
  4. 手続き:
    • 取締役会での承認
    • 株主総会での特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)
    • 債権者異議手続き
    • 登記

誤答の落とし穴 Trap-対価と価値評価:

  • 「合併=簿価での受け渡し」と誤認(市場価格が基準)
  • 株主への対価が「必ず株式」と誤認(現金交付も可)
  • 新設合併で「新会社の株主構成」を正確に把握できない

学習アドバイス: 合併は大型の組織再編。株主間の価値配分(公平性)、債権者保護(異議手続き)、手続きの厳格さ(特別決議)の三つの側面を統合的に理解することが重要。


第11問 契約成立の要件と無効・取消し

問題要旨: 契約の成立要件、無効と取消しの相違、および催告による追認。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-無効と取消しの混淆

正解: ウ

必要知識: 経営法務:契約法 — 要件と効力

解法の思考プロセス:

  1. 契約成立の要件:
    • 申し込み(offer):一方が契約条件を提示
    • 承諾(acceptance):相手方が無条件で承諾
    • 合意時点で成立(民法上、特に書面要件なし)
  2. 無効:契約が最初から法的効力がない
    • 違法目的(詐欺、脅迫)、公序良俗違反
    • 誰でも異議可能(時効なし)
  3. 取消し:条件付きで契約を無効にできる権利
    • 詐欺・脅迫による取消し
    • 未成年者の契約
    • 時効:取消権の行使可能期間が限定(追認できる時から5年間、行為の時から20年間:民法126条)
  4. 追認:無効または取消可能な契約を確認・有効にする行為

誤答の落とし穴 Trap-無効と取消しの混淆:

  • 「詐欺契約=無効」と単純化(実は取消し対象、追認で有効になりうる)
  • 取消権の期限がないと誤認
  • 無効な契約について「誰でも異議可」の意味を曖昧に理解

学習アドバイス: 無効と取消しは「法的効果の発生タイミング」で区別する。無効は「最初から効力なし」、取消しは「当事者の請求で遡及的に無効」という発想が基本。


第12問 担保物権と抵当権

問題要旨: 各種担保(保証、抵当権、質権、留置権)の相違と効力。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-物的担保と人的担保

正解: イ

必要知識: 経営法務:担保制度 — 各担保の特性と優先順位

解法の思考プロセス:

  1. 人的担保:保証人が債務者に代わって弁済
    • 保証人は無限責任(減額請求権あり)
    • 主債務者と別の契約(独立性)
  2. 物的担保(担保物権):
    • 抵当権:不動産に設定、先取特権あり、目的物の使用収益は債務者が継続
    • 質権:動産に設定、質権者が目的物を占有
    • 留置権:債権者が債務者の財産を占有し、債務清償まで返還しない権利
  3. 優先順位:複数担保の場合、登記順序が優先度を決定(抵当権)
  4. 被保全債権の消滅時効と担保権の関係

誤答の落とし穴 Trap-物的担保と人的担保:

  • 「抵当権=所有権移転」と誤認(目的物の所有権は債務者に残存)
  • 質権と留置権の「占有」の意味を曖昧に理解
  • 複数の担保がある場合の優先順位を正確に把握できない

学習アドバイス: 担保は「債務履行を確保する仕組み」。物的担保と人的担保のそれぞれの利点(確実性)と限界(回収難)を理解することが実務的判断の基盤。


第13問 転売契約と善意の買主保護

問題要旨: 盗品や詐欺により奪われた物の転売における、善意買主の保護と原所有者の権利。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-動産と不動産の相違

正解: ウ

必要知識: 経営法務:動産売却 — 善意買主保護の原則

解法の思考プロセス:

  1. 動産の場合:
    • 占有改定(現実の受け渡しなし)での所有権移転は認められない場合がある
    • 善意買主(所有権がないことを知らない)は保護される
    • 保護期間の例外:盗難の時から2年間は、被害者が占有者(善意取得者)に対して物の回復を請求できる(民法193条)
  2. 不動産の場合:
    • 登記が重要(登記簿で所有権を表示)
    • 善意無過失の第三者は登記により保護される
    • 登記簿の信頼性が原則(但し表示が誤りの場合の手続き有)
  3. 原所有者の救済:
    • 盗品取得者に対する返還請求権(盗難の時から2年間:民法193条)
    • 善意買主相手には損害賠償請求の可能性が限定的

誤答の落とし穴 Trap-動産と不動産の相違:

  • 「善意買主は完全保護」と過度に拡張(特に高額品では調査義務がある)
  • 動産と不動産の保護ルールの相違を混淆
  • 盗品の回復請求期間(2年)を正確に記憶していない

学習アドバイス: 善意買主保護は「取引の安全」を重視する原則。但し「買主の調査義務」(特にオークション、質屋からの購入)とのバランスを理解することが重要。


第14問 債権譲渡と債務引受

問題要旨: 債権譲渡の効力発生、譲受人への通知要件、および債務者の権利。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-対抗要件と有効性

正解: イ

必要知識: 経営法務:債権譲渡 — 効力と通知

解法の思考プロセス:

  1. 債権譲渡の効力:
    • 当事者(譲渡人と譲受人)間では合意で成立(書面要件なし)
    • 第三者対抗要件:債務者への通知または債務者の同意が必要
  2. 通知の方法:
    • 譲渡人が債務者に通知するか、
    • 譲受人が直接債務者に通知するか
    • 譲受人から債務者への確定日付のある通知が確実
  3. 通知前の弁済:
    • 譲受人に通知がない場合、債務者が譲渡人に弁済 → 有効
    • 通知後に譲渡人に弁済 → 無効(譲受人に対する責任残存)
  4. 債務者の権利:
    • 譲渡人に対する抗弁(品質不良など)は譲受人に対しても主張可

誤答の落とし穴 Trap-対抗要件と有効性:

  • 「債権譲渡=自動的に効力発生」と誤認(通知が必須)
  • 通知方法の要件(確定日付の要否など)を曖昧に理解
  • 譲受人への抗弁権の範囲(元の債務者との関係に基づく抗弁のみ)を見落とし

学習アドバイス: 債権譲渡は「無体財産の移転」。目的物が定まっていることの確認、通知による対抗要件の具備が、実務的に最も重要な確認事項。


第15問 著作権の発生と保護期間

問題要旨: 著作権の発生要件、保護期間、および著作人格権と著作財産権の相違。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-保護期間の計算

正解: ウ

必要知識: 経営法務:知的財産法 — 発生と権利

解法の思考プロセス:

  1. 著作権の発生:
    • 創作と同時に自動発生(登録不要)
    • 最小限の創作性が要件(単なる事実記述は除外)
  2. 保護期間:
    • 著作者の生存中と死後70年(日本、2018年改正後)
    • 法人著作:公表後70年
  3. 著作人格権(著作者のみに帰属、譲渡不可):
    • 公表権:著作物を公表するかどうかを決定
    • 氏名表示権:著作者名の表示方法を決定
    • 同一性保持権:改変から保護
  4. 著作財産権(譲渡可):
    • 複製権、公演権、放映権、翻訳権など

誤答の落とし穴 Trap-保護期間の計算:

  • 保護期間を「著作者の生後50年」と旧法で計算
  • 著作人格権が譲渡できると誤認
  • 法人著作の保護期間を正確に記憶していない

学習アドバイス: 著作権は「自動発生」が特徴。創作と同時に権利が生じることから、「所有権」とは異なり、登録や表示がなくても保護されることが重要。


第16問 特許権と発明者の権利

問題要旨: 特許出願と審査、発明者の認定、および職務発明の帰属。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-発明者と特許権者の相違

正解: ウ

必要知識: 経営法務:特許制度 — 出願から登録まで

解法の思考プロセス:

  1. 特許出願:
    • 出願人(通常は企業)が特許庁に出願
    • 発明者(実際に発明した人)の記載が必須
  2. 審査:
    • 形式審査:出願書類の形式確認
    • 実質審査:先行技術調査、進歩性判定
    • 拒絶理由通知への応答期間(3ヶ月等)
  3. 職務発明:
    • 従業員が職務上発明 → 特許権は企業に帰属(通常)
    • 従業員に「相当な対価」支払い義務(報酬規程で事前定義)
  4. 発明者の権利:
    • 特許登録時に発明者として記載される(名誉的)
    • 特許権の経済的利益は出願人に帰属(職務発明の場合)

誤答の落とし穴 Trap-発明者と特許権者の相違:

  • 「発明者=特許権者」と誤認(企業が特許権者で、従業員は発明者にすぎない)
  • 職務発明の対価支払いが「任意」と誤認(法的義務がある)
  • 審査期間を「出願から登録まで一定」と思い込む(実際は変動)

学習アドバイス: 特許権は「企業の競争優位を確保する知的財産」。職務発明の適切な処遇(対価支払い)が従業員のモチベーション維持に重要。


第17問 商標権の登録と保護範囲

問題要旨: 商標登録の要件、商標権の効力範囲、および類似商標との関係。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-商標の「同一」と「類似」

正解: イ

必要知識: 経営法務:商標権 — 登録要件と侵害判定

解法の思考プロセス:

  1. 商標登録の要件:
    • 標識であること(文字、図形、記号等)
    • 識別力:商品・役務の出所表示として機能
    • 先願権:先に出願した者が優先(同一・類似商標との競合時)
  2. 登録除外事由:
    • 他人の周知商標と同一・類似(不正の目的でなくても除外)
    • 公序良俗違反
    • 記述的商標(「赤いシャツ」など一般的表現)
  3. 商標権の効力:
    • 同一商標:完全に侵害行為(権利者の許可なく使用不可)
    • 類似商標:「混同のおそれあり」と判定されれば侵害
  4. 保護期間:登録から10年(更新可、何度でも更新可能)

誤答の落とし穴 Trap-商標の「同一」と「類似」:

  • 「商標登録=絶対的保護」と過度な期待(「類似」判定により侵害有無が変わる)
  • 類似商標の判定基準(商品カテゴリー、使用状況など)を正確に理解していない
  • 商標権は「更新可能で半永久的」であることを知らない

学習アドバイス: 商標権は「ブランド価値」を保護する制度。同一・類似の判定は「一般的な購買者が混同するか」という基準で判断される。業種別の慣行も影響する。


第18問 知的財産と企業秘密保護

問題要旨: 営業秘密の定義、保護方法(契約、アクセス制限)、および不正競争行為。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-秘密の漏洩と過失

正解: ウ

必要知識: 経営法務:営業秘密 — 秘密の定義と保護制度

解法の思考プロセス:

  1. 営業秘密の要件(3つ):
    • 秘密であること(非公知)
    • 経済的価値があること(競争優位)
    • 合理的な保護措置がなされていること(アクセス制限、NDA等)
  2. 保護方法:
    • 契約:機密保持契約(NDA)、競業避止特約
    • 物理的措置:鍵、防犯カメラ、アクセス管理
    • 組織的措置:従業員教育、情報分類
  3. 不正競争行為:
    • 営業秘密の盗用・横領 → 民事責任(差止請求、損賠)
    • 不正領得目的:刑事責任(懲役)
  4. 損害賠償額:競争によって失われた利益(ロイヤリティ相当額など)

誤答の落とし穴 Trap-秘密の漏洩と過失:

  • 「営業秘密=盗用されても証明困難」と諦観(適切な保護措置があれば立証可能)
  • 「従業員が退職し競合企業に就職 = 自動的に秘密漏洩」と誤認(競業避止契約と別)
  • 不正領得目的の有無で民事・刑事責任が変わることに気づかない

学習アドバイス: 営業秘密は「著作権や特許と異なり、登録がない」ため、企業側の保護責任が重い。「非公知性」と「保護措置」の両方が重要。


第19問 労働契約と就業規則

問題要旨: 労働契約成立の要件、就業規則の法的効力、および労働基準法との関係。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L2 Trap-契約自由と最低基準

正解: イ

必要知識: 経営法務:労働法 — 契約成立と規則の効力

解法の思考プロセス:

  1. 労働契約成立:
    • 使用者と労働者の合意で成立(書面要件なし、ただし実務上は労働条件通知書を交付)
    • 契約内容:勤務地、職務内容、給与、勤務時間
  2. 就業規則の効力:
    • 使用者が作成、労働基準監督署に届出
    • 労働者に周知があれば、就業規則の規定が契約条件を補充・修正
    • ただし労働基準法の最低基準より低い内容は無効
  3. 労働基準法の最低基準:
    • 最低賃金、休日(週1日以上)、残業時間上限(月45時間)
    • 解雇予告(30日前または手当支払い)
  4. 契約自由と最低基準のバランス:企業が工夫する範囲が限定される

誤答の落とし穴 Trap-契約自由と最低基準:

  • 「就業規則がなければ労働契約無効」と誤認(契約成立には就業規則不要)
  • 労働基準法より不利な就業規則を「有効だが不履行」と誤認(無効)
  • 就業規則変更に関する手続き(労働者代表の意見聴取)を見落とし

学習アドバイス: 労働法は「最低基準が強制的」という特異性がある。契約自由を前提とする民法と異なり、使用者の一方的有利は原則無効。


第20問 解雇と雇用調整

問題要旨: 解雇の有効要件、解雇予告、および不当解雇の救済。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-解雇理由の正当性

正解: ウ

必要知識: 経営法務:解雇制度 — 有効性と救済

解法の思考プロセス:

  1. 解雇の有効要件:
    • 客観的で合理的な理由(経営困難、職務不適格)
    • 手続き的な妥当性(予告、説明、改善機会の付与)
    • 「懲戒解雇」と「普通解雇」で基準が異なる
  2. 解雇予告:
    • 30日前に予告、または手当支払い(平均賃金の30日分)
    • 予告期間中の給与は支払い義務
  3. 不当解雇の救済:
    • 職場復帰請求(和解金で決着が多い)
    • 給与遡及請求
    • 慰謝料請求(精神的損害)
  4. 争点:「正当な理由」の判定が紛争の中心(裁判所が個別判断)

誤答の落とし穴 Trap-解雇理由の正当性:

  • 「経営困難なら解雇は自由」と誤認(整理解雇には厳格な基準)
  • 解雇予告手当と給与の二重払いを誤認
  • 予告なし解雇が「即座に無効」と判定(手当支払いで有効化の余地)

学習アドバイス: 解雇は労働法上「最後の手段」。懲戒解雇・普通解雇・整理解雇で要件が大きく異なる。実務では「解雇に至る前の改善指導」が重要な証拠になる。


第21問 消費者保護と特定商取引法

問題要旨: 特定商取引法の規制対象(訪問販売、通信販売)、クーリングオフ、および消費者の権利。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-対象取引の範囲

正解: イ

必要知識: 経営法務:消費者保護法 — 規制対象と消費者権利

解法の思考プロセス:

  1. 特定商取引法の対象:
    • 訪問販売:事業者が消費者の家に訪問して販売
    • 通信販売:カタログ、インターネット、電話での販売
    • 連鎖販売取引(マルチ商法):加盟者が加盟金を支払い製品販売
    • 電話勧誘販売
  2. クーリングオフ(解除権):
    • 訪問販売:8日以内(支払い有無関わらず)
    • 通信販売:事業者が返品可能期間を定める(通常14日)
    • 連鎖販売:20日以内
  3. 表示義務:
    • 事業者名、勧誘の旨の明示
    • 商品情報の正確な表示
    • 誇大広告禁止
  4. 違反時の処罰:行政処分、刑事罰

誤答の落とし穴 Trap-対象取引の範囲:

  • 「すべての販売にクーリングオフ権あり」と誤認(対象取引に限定)
  • クーリングオフの期間を業種別に正確に記憶していない
  • 通信販売のクーリングオフ有無を曖昧に(実は事業者判断に任せられる場合が多い)

学習アドバイス: 特定商取引法は「消費者の冷静な判断を損なう販売方法」を規制。訪問販売の8日ルールと通信販売の14日ルールを確実に区別する。


第22問 製造物責任法(PL法)

問題要旨: PL法の適用要件、製造業者の責任、および消費者の損害賠償請求。

K5 制度・データ T2 グラフ読解 L2 Trap-過失と責任

正解: ウ

必要知識: 経営法務:製造物責任 — 無過失責任と因果関係

解法の思考プロセス:

  1. PL法の適用:
    • 対象:製造物(加工食品、自動車、家電など)
    • 「欠陥」の存在(安全性が一般的期待に達しない)
    • 消費者(購入者のみでなく、使用者も含む)
  2. 製造業者の責任(無過失責任):
    • 故意・過失がなくても責任あり(従来民法と異なる)
    • 「注意義務に違反したか」は問わない
  3. 責任の要件:
    • 製造物であること
    • 欠陥があること
    • 欠陥と損害の因果関係
  4. 損害賠償の対象:身体損害、財産損害(製造物自体の損害は除外)

誤答の落とし穴 Trap-過失と責任:

  • 「PL法=製造業者は必ず責任」と過度に厳格に判定(因果関係の証明が必要)
  • 「欠陥」の定義を曖昧に理解(一般的な安全期待基準)
  • 消費者の「過度な使用」による損害にも責任ありと誤認(使用方法の不適切は抗弁)

学習アドバイス: PL法は「無過失責任」が特徴。製造業者のリスク管理(品質管理、表示・警告)が実務的に最も重要。


第23問 個人情報保護法の規制

問題要旨: 個人情報保護法の対象企業(小規模事業者の扱い)、個人情報の定義、および適切な取得・利用。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-小規模事業者の適用

正解: ウ

必要知識: 経営法務:個人情報保護 — 規制範囲と義務

解法の思考プロセス:

  1. 適用企業:
    • 旧法では個人情報の件数が5,000件以下の事業者は適用除外だったが、2017年(平成29年)5月30日施行の改正でこの要件が廃止
    • 現在はすべての事業者が適用対象(小規模事業者を含む)
  2. 個人情報の定義:
    • 生存する個人に関する情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス)
    • 個人を識別可能な情報(顔写真、指紋)
    • 個人を特定できない情報は除外(但し複数データから識別可能なら個人情報)
  3. 事業者の義務:
    • 取得時の本人への通知(利用目的、保管期間)
    • 適切な管理(セキュリティ対策)
    • 本人の要求に応じた開示・訂正
    • 漏洩時の報告義務
  4. 違反時:行政処分(改善命令)、刑事罰(懲役、罰金)

誤答の落とし穴 Trap-小規模事業者の適用:

  • 「個人情報保護法は大企業のみ対象」と誤認(現在はすべての事業者)
  • 顧客リストが「個人情報に当たらない」と誤認(当たる)
  • 本人同意なしの個人情報利用が常に違法と誤認(特定の目的内では自由)

学習アドバイス: 個人情報保護法は「規制対象の拡大傾向」にある。小規模事業者も対応が必須。透明性(本人への通知)とセキュリティが実務的には重要。


第24問 下請法(下請代金支払遅延等防止法)

問題要旨: 下請法の適用対象(資本金規模)、親事業者の義務(下請代金支払い、責任明確化)。

K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-業種別の資本金基準

正解: ウ

必要知識: 経営法務:下請保護 — 親事業者の義務

解法の思考プロセス:

  1. 適用対象:
    • 親事業者(大企業)と下請事業者(中小企業)の関係
    • 資本金基準(業種別ではなく取引種類別に区分):
      • 製造委託・修理委託:親3億円超→下3億円以下(または親1,000万超3億円以下→下1,000万円以下)
      • 情報成果物作成委託・役務提供委託:親5,000万円超→下5,000万円以下(または親1,000万超5,000万円以下→下1,000万円以下)
  2. 親事業者の義務:
    • 発注時:発注内容の書面交付
    • 代金支払い:60日以内(遅延禁止)
    • 責任明確化:検査期間の確定
    • 一方的な減額・返金禁止
  3. 違反時:公正取引委員会に報告、改善命令、罰金

誤答の落とし穴 Trap-業種別の資本金基準:

  • 「すべての取引に下請法が適用」と誤認(資本金規模で判定)
  • 取引種類別の資本金基準を混淆(製造委託・修理委託と情報成果物作成委託・役務提供委託で異なる)
  • 親事業の「過度な要求」(品質向上、納期短縮)が自動的に違反と誤認(通常の商慣行は許容)

学習アドバイス: 下請法は「力の不均衡を是正」する法律。親事業者の「書面交付」「期間内支払い」「一方的変更禁止」の3つが基本。


分類タグの凡例

知識種類(K)

タグ意味
K1 定義・用語定義・用語個人情報の定義
K5 制度・データ制度・基準会社法の機関構成

思考法(T)

タグ意味
T1 正誤判定条文・規定の直接適用
T2 グラフ読解複数の条件を組み合わせた判定が必要

形式層(L)

タグ意味
L1条文の直接的理解で解ける
L2法律概念の理解と適用が必要
L3複雑な法律関係の推論が必要

落とし穴パターン(Trap)

パターン説明
Trap-記載義務の混淆絶対的・相対的記載事項を混同
Trap-機関権限の錯誤取締役と株主総会の権限境界の誤解
Trap-無効と取消しの混淆法的効果の発生タイミングの誤解
Trap-業種別の資本金基準業種による基準の相違を見落とし

分類タグ凡例

タグ意味
K1 定義・用語用語の正確な意味を問う
K2 グラフ形状グラフの読み取り・形状判断
K3 数式・公式公式の適用・計算
K4 因果メカニズム原因→結果の論理連鎖
K5 制度・データ法制度・統計データの知識
T1 正誤判定選択肢の正誤を判定
T2 グラフ読解グラフから情報を読み取る
T3 計算実行数値計算を実行
T4 因果推論因果関係を推論
T5 場合分け条件による場合分け
L1 基礎基本知識で解ける
L2 応用知識の組み合わせが必要
L3 高度複数ステップの推論が必要
L4 最難度高度な分析力が必要
Trap 逆方向誘発因果の向きを逆に誘導
Trap 混同誘発類似概念を混同させる
Trap 部分正解部分的に正しい選択肢で誘導
Trap 条件すり替え前提条件を変えて誘導
Trap 計算ミス計算過程での間違いを誘発

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