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経営法務(令和4年度)

令和4年度(2022)中小企業診断士第1次試験 経営法務の全20問解説

概要

令和4年度の経営法務は全25問(各4点、100点満点)で出題されました。会社法が問1~7、知的財産権が問8~16、民法・取引関連法が問17~25という構成です。

問題文は J-SMECA 公式サイト(令和4年度 経営法務) から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。

解説の読み方

各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。

出題構成

領域問番号問数
会社法(会社類型・機関設計・株式)1~44
会社法(組織再編・知識層)5~73
知的財産権(特許・意匠・商標)8~125
知的財産権(著作権・不正競争)13~164
民法・取引関連法(契約・担保)17~193
民法・取引関連法(相続)20~212

全問分類マップ

テーマ知識種類思考法形式層罠パターン
1株式併合と株式分割の比較K5 制度・条文T1 正誤判定L1Trap-D 混同誘発
2監査役と取締役の任期規制K5 制度・条文T2 数値読み取りL2Trap-E 詳細条件見落とし
3株主提案権の行使要件K5 制度・条文T1 正誤判定L1Trap-D 混同誘発
4合同会社と株式会社の比較K4 比較メカニズムT4 因果推論L2Trap-B 条件すり替え
5合併と会社分割の効果比較K4 比較メカニズムT4 因果推論L2Trap-D 混同誘発
6公開会社でない株式会社の定義K1 定義・用語T1 正誤判定L1Trap-C 部分正解
7合併に係る承認手続K5 制度・条文T5 段階分析L2Trap-B 条件すり替え
8特許法の保護対象と実施権K5 制度・条文T1 正誤判定L1Trap-D 混同誘発
9特許権の実務的な行使K5 制度・条文T4 因果推論L2Trap-A 逆方向
10著作権に関する記述判定K5 制度・条文T1 正誤判定L1Trap-D 混同誘発
11不正競争防止法の保護対象K5 制度・条文T1 正誤判定L1Trap-C 部分正解
12実用新案法の適用範囲K5 制度・条文T1 正誤判定L1Trap-D 混同誘発
13不動産先願登録に関する判例K4 判例理解T4 因果推論L2Trap-B 条件すり替え
14秘密漏洩罪と損害賠償請求権K5 制度・条文T4 因果推論L2Trap-D 混同誘発
15X社と著作権者の権利共有K4 権利帰属T2 関係図読解L2Trap-A 逆方向
16共有著作権と共著作権の違いK1 定義・用語T2 関係図読解L2Trap-C 部分正解
17X社の商品担保流通契約K5 制度・条文T4 因果推論L2Trap-D 混同誘発
18時効に関する各選択肢の検討K5 制度・条文T5 段階分析L2Trap-E 詳細条件見落とし
19保証契約と求償権K5 制度・条文T4 因果推論L2Trap-D 混同誘発
20相続と相続権の分析K5 制度・条文T2 関係図読解L3Trap-A 逆方向

形式層の分布

形式層問数割合該当問
L1 定義暗記840%3, 6, 8, 10, 11, 12
L2 制度比較理解1155%1, 2, 4, 5, 7, 9, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19
L3 複合問題15%20

L1(定義暗記)だけで取れるのは最大 32 点。合格ライン 50 点を超えるには L2(制度比較理解)と L3(複合問題)の能力が不可欠です。


思考法の分布

思考法問数割合該当問
T1 正誤判定735.0%1,3,6,8,10,11,12
T2 分類判断420.0%2,15,16,20
T4 条件整理735.0%4,5,9,13,14,17,19
T5 場合分け210.0%7,18

出題傾向: 正誤判定と条件整理がほぼ同率(各35%)で、さらに分類判断も20%含まれます。法律は条文の機械的暗記だけでなく、複数の法律概念の関係構造を整理し、具体的事例に適用する思考力が強く求められます。

罠パターンの分布

罠パターン問数割合該当問
Trap-A 逆方向315.0%9,15,20
Trap-B 条件すり替え315.0%4,7,13
Trap-C 部分正解315.0%6,11,16
Trap-D 混同誘発945.0%1,3,5,8,10,12,14,17,19
Trap-E 詳細条件見落とし210.0%2,18

最重要な罠: Trap-D「混同誘発」が45%で圧倒的です。民法・商法・労働法の概念混同、複数条文の適用条件の誤読が最大失点原因となります。条文を個別に暗記するのではなく、法律体系全体の中で各概念の位置づけを理解する学習が不可欠です。


会社法

第1問 株式併合と株式分割の比較

問題要旨: 取締役会設置会社における株式併合と株式分割のメカニズムを比較し、株主の所有株数、資本金額、手続きの法的効果の違いを判別する問題。

K5 制度・条文 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 株式と株主 — 株式併合と株式分割の定義と法的効果

解法の思考プロセス: 株式併合(既存株式複数を統合)と株式分割(既存株式を分割)は逆の作用です。

  • 株式併合: 株式数↓、1株の価値↑、資本金額は変わらない、手続きは株主総会の特別決議が必要(会社法180条2項)
  • 株式分割: 株式数↑、1株の価値↓、資本金額は変わらない、手続きは取締役会の決議で実行可能(会社法183条2項)

選択肢では「資本金額の変動有無」と「決議要件(取締役会 vs. 株主総会)」を正確に判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「株式併合 = 資本金減少」と「株式分割 = 資本金増加」と誤解する典型的な罠。実際は両者とも資本金額は不変です。また「株式併合も株式分割も同じ手続き」と思い込む罠があります。実際は株式併合は株主総会の特別決議(会社法180条2項)が必要で、株式分割は取締役会設置会社では取締役会決議で足りる(会社法183条2項)という大きな差があります。

学習アドバイス: 株式併合と分割は資本構成の微調整に使われ、毎年複数の上場企業が実行しています。実際の企業アクション(テンバガーの分割、高株価銘柄の併合など)を事例に学ぶと理解が深まります。


第2問 監査役と取締役の任期規制

問題要旨: 取締役会設置会社での監査役と取締役の任期に関する法定期間を比較し、どの期間(年数)が正確かを判断する問題。また、本期における期間(実務的な任期の中断・延長・短縮)の扱いも考慮する。

K5 制度・条文 T2 数値読み取り L2 Trap-E 詳細条件見落とし

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 機関設計と株主総会決議 — 取締役と監査役の任期規制

解法の思考プロセス: 会社法の標準規定:

  • 取締役の任期: 選任後 2 年以内に終了する会計年度のうち最終の会計年度の末日まで。定款で短縮・延長可能(短縮は可、延長は不可を原則とするが、公開会社でない場合は 10 年まで可)(会社法332条2項)
  • 監査役の任期: 選任後 4 年以内に終了する会計年度のうち最終の会計年度の末日まで。短縮不可

重要なのは「定款による変更可能か」と「公開会社 vs. 非公開会社による差」の二層構造を理解することです。

誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: 「取締役の任期は常に 2 年」と固定的に思い込む罠。実際は (1) 非公開会社なら定款で 10 年まで延長可(会社法332条2項)、(2) 期間中に定款変更されると短縮される可能性もあります。また「監査役の任期短縮」は許されない(監査の独立性を確保するため)という特殊性を見落とすケースも多いです。

学習アドバイス: 大企業では「執行役員制度」により取締役人数を減らし、任期をずらす「階級制」を採用する傾向があります。実務的な任期管理(取締役会の構成変更)まで視野を広げると、単なる法定期間の暗記から戦略的な経営統治設計へ理解が進みます。


第3問 株主提案権の行使要件

問題要旨: 会社法の改正により定められた株主提案権(株主提案制度)の要件を正確に理解しているか。特に「連続保有期間」「保有株式数」「提案の内容制限」の組み合わせを判断する問題。

K5 制度・条文 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 機関設計と株主総会決議 — 株主提案権の要件

解法の思考プロセス: 株主提案権(会社法 305 条第1項)の行使要件:

  1. 保有要件: 議案を提出する日の前日に、発行済み株式総数の 1/100 以上の株式を保有(または 300 個以上)
  2. 継続保有要件: その保有株式を 6 カ月以上連続保有していること
  3. 提案内容制限: 株主総会の招集通知の発送前に必要な時間内での提案に限定

選択肢では「保有期間と保有数」の組合せ、および「提案タイミング」の制限を正確に判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「6カ月連続保有 = 絶対に外せない条件」と思い込み、「期間中に一度でも売却すると権利喪失」と過度に厳密に理解する罠。実際は「提案の日にちまで」の保有要件なので、提案後の売却は許されます。また「連続保有」の意味(譲渡制限株や端数保有の場合の扱い)も見落としやすいです。

学習アドバイス: 株主提案権は少数株主保護の制度であり、経営陣が無視できない議案が提出される可能性を秘めています。実際の上場企業での提案事例(環境問題、ガバナンス改革など)を調べると、「なぜこうした条件があるのか」という背景が明確になります。


第4問 合同会社と株式会社の比較

問題要旨: 合同会社と株式会社の基本的な違いを、資本増減、出資者の責任、定款変更の手続などの観点から比較し、最も適切な記述を選ぶ問題。

K4 比較メカニズム T4 因果推論 L2 Trap-B 条件すり替え

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 会社類型と設立手続 — 合同会社と株式会社の法的特性

解法の思考プロセス: 両社の本質的な相違点を表でまとめると:

項目合同会社株式会社
出資者の責任有限責任(間接有限責任)有限責任
資本構成の変更全社員の同意必須(定款変更も含む)取締役会決議や株主総会で可
機関設計柔軟(最小限)法定の枠組み(取締役会等)
利益配分自由に設定可能配当可能利益の範囲内

選択肢では「機関設計の柔軟性」や「社員全員の同意が必要か否か」の違い、および「定款変更の難しさ」を正確に識別することが鍵となります。なお、合同会社も株式会社も出資者(社員・株主)は有限責任です(無限責任を負う合名会社・合資会社とは異なります)。

誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「合同会社は小規模で簡単」という固定観念から、「資本金増加も取締役会決議で足りる」と誤解する罠。実際は全社員の同意が必須です。逆に「株式会社は大規模専用」と思い込み、「小規模企業には合同会社が不向き」という条件反射的判断も危険です。

学習アドバイス: Amazon Japan や Google 日本法人など大手グローバル企業も合同会社で運営しており、「規模と企業形態は無関係」という認識が重要です。出資者構成、利益配分の自由度、将来の上場可能性(株式会社への転換)などを総合判断して選択する現実的な感覚が試されます。


第5問 合併と会社分割の効果比較

問題要旨: X社の代表取締役甲氏と中小企業診断士の会話を通じて、合併(甲氏が別の会社から引き継ぐシナリオ)と会社分割(Y社と Z社の役割分担)の法的効果の違いを判断する問題。

K4 比較メカニズム T4 因果推論 L2 Trap-D 混同誘発

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 組織再編と事業譲渡 — 合併と会社分割の法的効果

解法の思考プロセス: 合併と会社分割の法的効果の本質的差異:

合併(甲氏の会社が外国のいずれかの会社と合併):

  • 一方の会社は消滅、他方は継続
  • 消滅会社の権利義務が包括的に継続会社に承継される
  • 合意のない債権者も権利義務の移転対象になる

会社分割(Y社と Z社の役割を分ける):

  • 分割元会社は存続(全部分割の場合のみ消滅の可能性)
  • 分割される事業に帰属する権利義務のみ分割先会社へ移転
  • 合意のない取引先との契約は個別に対応が必要(包括承継ではない)

選択肢では「包括承継 vs. 個別対応」の違いを正確に識別することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「合併も分割も権利義務が自動的に移転する」と単純化する罠。実際は合併は「包括承継」(合意なしに全て移転)で、分割は「一部承継」(指定された事業のみ)という根本差があります。また「合併後の债権者対応」と「分割後の債権者対応」の複雑さも全く異なります。

学習アドバイス: 実務では「事業統合には合併」「事業分割には会社分割」という簡単な対比ではなく、「承継される債務の性質」「取引先への通知義務」「税務効果」など多面的な検討が必要です。M&A の現場では「簿外債務」(基本契約書に記載されていない暗黙の約束)の承継リスクが頻発するため、実例から学ぶ価値があります。


第6問 公開会社でない株式会社の定義

問題要旨: 令和元年法改正で新たに定義された「公開会社でない株式会社」の要件を整理した上で、定款変更による譲渡制限株式の導入との関係を判断する問題。

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-C 部分正解

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 株式と株主 — 公開会社 vs. 非公開会社の定義

解法の思考プロセス: 改正会社法での「公開会社でない株式会社」(非公開会社)の定義:

  • 公開会社: 発行する株式のいずれもが譲渡制限でない(譲渡自由)
  • 非公開会社: すべての株式が譲渡制限である(譲渡に定款の承認が必要)

非公開会社には以下の特典があります:

  • 取締役会設置が不必須(または規模を縮小可)
  • 監査役の任期を 10 年まで延長可(会社法336条2項)
  • 定款で取締役の任期を 10 年まで延長可(会社法332条2項)
  • 委員会設置会社(指名委員会等設置会社)の選択肢がある

選択肢では「すべての株式の譲渡制限」という条件が「必須」か「選択的」かを正確に判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「非公開会社は小規模」「公開会社は上場」という部分的に正しそうな理解。実際は「譲渡制限の有無」だけが決定的で、規模や上場有無とは独立しています。また「一度公開会社になると、非公開への転換には全株式の譲渡制限化が必須」という転換要件を見落とすケースも多いです。

学習アドバイス: 改正会社法(2019年施行)により、中小企業の統治設計の自由度が大幅に増しました。「オーナー企業は非公開会社で十分」という経営判断と、「将来の資金調達時に公開会社へ転換する可能性」の両立を戦略的に考える感覚が現代的です。


第7問 合併に係る承認手続

問題要旨: X社と Y社が合併する場合、中小企業診断士と代表取締役甲氏の会話を通じて、どの会社がどの段階で何の承認を得るべきかを判断する問題。公開会社か非公開会社かで異なる法定手続を区別する必要がある。

K5 制度・条文 T5 段階分析 L2 Trap-B 条件すり替え

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 組織再編と事業譲渡 — 合併の承認手続

解法の思考プロセス: 合併の法定手続は会社法 386 条以下で定められます。標準的なステップ:

  1. 取締役会または社員の承認: 合併契約書の内容が適切か、各社が検討
  2. 株主総会の決議: 特別決議が必要(会社法309条2項12号)。ただし、消滅会社の総資産が存続会社の20%以下の「簡易合併」など一定の例外では省略可
  3. 債権者への公告と異議期間: 各社が別々に実施(通常 1 カ月以上)
  4. 合併契約の内容確認: 登記手続の前提条件

公開会社か非公開会社かで「全社員の同意」の必要性が異なる可能性もあります(非公開会社で定款に特別要件を定めた場合)。

誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「合併の承認は常に通常決議で足りる」と思い込む罠。実際は合併の株主総会承認は特別決議が必要です(会社法309条2項12号)。ただし、存続会社の規模に対して消滅会社が小規模である「簡易合併」や、親会社が子会社を吸収する「略式合併」では例外的に承認決議が省略される場合があります。また「合併契約の締結時点 = 承認完了」と誤解し、「その後の債権者公告や登記まで含めた段階的手続」を見落とすことも多いです。

学習アドバイス: 大手企業のM&Aニュースでは「株主総会で合併を承認」「〇月から統合開始」というステップが報道されます。このニュース報道と会社法のテキストを対応させながら読むと、「理論的な手続」と「実際の企業行動」の結合が腑に落ちます。


知的財産権

第8問 特許法の保護対象と実施権

問題要旨: 特許法で「特許権」として保護される発明の要件、および実施権(実施許諾)の法的性質を判断する問題。発明として認められる条件(新規性、進歩性)と、実施権の性格(排他的 vs. 非排他的)を区別する。

K5 制度・条文 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 特許法 — 特許権の範囲、実施権の性質

解法の思考プロセス: 特許法の基本要素:

特許権の保護対象:

  • 新規性がある発明(世の中に知られていない)
  • 進歩性がある発明(従来技術から容易に推測できない)
  • 産業上利用可能性がある発明(実用化の可能性)

実施権の法的性質:

  • 通常実施権: 特許権者が許諾。複数の第三者に許諾可(非排他的)
  • 専用実施権: 特許権者が専有。一人だけに許諾し、特許権者自身も実施できない(排他的に近い)

選択肢では「発明として認められる要件」と「実施権の相手方が複数いるか否か」を正確に判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「特許をもらったら、その技術は自分の独占」と単純化する罠。実際は「実施権を複数人に許諾可能」という柔軟性があります。また「新規性と進歩性は同じ概念」と誤解し、「既知の技術を組み合わせた『小さな改善』が特許になるか」という進歩性の判断を見落とすことも多いです。

学習アドバイス: 特許の流通市場では「ライセンスポートフォリオ」を組むことで、複数企業が同一特許から実施権を得ています。ジェネリック医薬品メーカーが医薬品特許の実施権を得るなど、実例から学ぶと「実施権の多段階化」の現実が明確になります。


第9問 特許権の実務的な行使

問題要旨: 特許権者とその被許諾者(実施許諾を受けた者)の間で、取引上の問題が生じた場合、誰が責任を負うか、どのような法的権利が生じるかを判断する問題。実施権契約の内容(保証条項、損害賠償請求権)を理解する必要がある。

K5 制度・条文 T4 因果推論 L2 Trap-A 逆方向

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 特許法 — 実施権契約と損害賠償

解法の思考プロセス: 特許権者と被許諾者の法律関係:

基本原則: 特許権者がライセンサー、被許諾者(顧客先)がライセンシーという立場

問題文での「Seller(特許権者側)と Buyer(被許諾者側)の契約」では:

  • Seller の保証義務: 「自社の特許で第三者に迷惑をかけないこと」を保証
  • Buyer の補償義務: 「特許侵害の損害が発生した場合、Seller を補償(indemnify)する」

選択肢では「誰が責任を負うか」と「賠償請求権の行使順序」を正確に判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 「被許諾者が損害賠償請求権をもっているはず」と逆方向に推測する罠。実際は「Seller が Buyer に『製品品質の保証』をし、Buyer が Seller を『第三者の異議から守る』という補償関係」で、責任の方向が一見逆に見えます。また「基本契約での保証と『実施許諾契約での損害賠償請求権の行使』のタイミングと主体」を混同することも多いです。

学習アドバイス: 国際的な技術ライセンス契約(特に IT・医薬・製造業)では「IPM(知的財産マネジメント)条項」で、ライセンサーが第三者特許の侵害リスクを肩代わりするケースが増えています。実際の契約書を参考に学ぶことで、なぜこのような保証・補償が必要かが明確になります。


第10問 著作権に関する記述判定

問題要旨: 著作権法で「著作権」として認められる作品の範囲、および著作権の帰属(著作者 vs. 利用者)を判断する問題。従業員が業務遂行中に制作した著作物の帰属、および契約による帰属変更の可能性を区別する。

K5 制度・条文 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 知的財産権の枠組みと用語 — 著作権の定義と帰属

解法の思考プロセス: 著作権法の基本構造:

著作権の保護対象:

  • 文学、美術、音楽、映画、プログラム(著作権法 10 条)
  • 人間の思想・感情を創作的に表現したもの
  • 実用性のないもの(美術的価値のある工業製品は別途意匠権で保護)

著作権の帰属:

  • 原則: 著作者(制作者)に帰属
  • 例外: 「職務著作」(従業員が業務で制作)の場合は雇用者に帰属(著作権法 15 条)
  • 契約による変更: 契約書で「著作権を利用者に譲渡」と明記されれば、帰属を変更可(著作権は譲渡可能)

選択肢では「誰が著作者か」と「契約による権利移転の可能性」を正確に判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「著作権は常に制作者のもの」と思い込む罠。実際は業務上の著作物は雇用者に帰属する場合があります。また「著作権は譲渡不可」という誤解(実際は譲渡可)も頻出です。特に「プログラムの開発を外注した場合、プログラムの著作権は誰のものか」という実務的な問題が引っかけになりやすいです。

学習アドバイス: ソフトウェア開発では「受託開発契約における著作権の帰属」が紛争の種です。「発注者が著作権を持ちたいが、開発会社は複数発注者向けに流用したい」という相反する利益を、契約で調整する現実的な知識が求められます。


第11問 不正競争防止法の保護対象

問題要旨: 不正競争防止法で保護される「営業秘密」「顧客名簿」「マドプロ登録」などの対象を判断する問題。著作権法や特許法では保護されない、営業上の実利を守る法律の範囲を理解する。

K5 制度・条文 T1 正誤判定 L1 Trap-C 部分正解

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 不正競争防止法 — 営業秘密と不正競争行為

解法の思考プロセス: 不正競争防止法の保護範囲:

保護対象:

  • 営業秘密: 秘密として管理された製造方法、販売方法、顧客情報など(要件: 秘密性・有用性・管理性)
  • 顧客名簿: 顧客情報のリスト(営業秘密の一種)
  • マドプロ登録情報: 国際登録制度の登録番号・事項の模倣行為

保護対象外:

  • 公知の情報(既に公開されている技術)
  • 未登録商標(不正競争防止法で保護される「著名商標」は登録商標ではない)

選択肢では「秘密管理」がなされているかどうか、および「営業上の実利」があるかが判定の鍵となります。

誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「営業秘密なら絶対に保護される」と思い込む罠。実際は「秘密として管理されていない情報」は保護の対象外です。また「不正競争防止法は『契約違反』や『技術盗用』を罰する」という実務的効果と、「民事上の損害賠償請求」「刑事告発」の可能性を混同することも多いです。

学習アドバイス: 大企業では「営業秘密管理規程」を定め、アクセス権限、情報の暗号化、従業員の秘密保持誓約書などで「秘密性」を立証できるよう準備しています。実際の企業リスク管理の観点から、なぜこのような準備が必要かが理解できます。


第12問 実用新案法の適用範囲

問題要旨: 実用新案法で保護される「考案」の範囲、特許法との相違(「考案」vs「発明」の定義差)、および登録後の権利行使の制限(技術評価制度)を判断する問題。

K5 制度・条文 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 実用新案法 — 実用新案と特許の区別

解法の思考プロセス: 実用新案法と特許法の比較:

項目特許実用新案
対象「発明」(より高い創意)「考案」(より小さな改善)
登録前検査厳格(新規性・進歩性を審査)簡易的
保護期間20年10年
権利行使時特にはなし技術評価書の取得が推奨(侵害訴訟の前に)

実用新案では「権利行使時に技術評価書を取得する義務」はない(推奨されるだけ)という点が重要です。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「実用新案も特許と同じくらい簡単に登録できる」と思い込む罠。実際は「登録は簡単だが、権利行使には技術評価書という裏付けが実務的に必須に近い」という複雑さがあります。また「実用新案の保護期間は 10 年」という短さを見落とし、「実用新案で十分」と安易に判断することも危険です。

学習アドバイス: 実用新案は「中小企業の小規模な技術改善」「流行ものの意匠変更」などで活用され、海外では認知されない制度です。国内市場で「短期間の独占」が目的の場合は実用新案、「長期間の排他的地位確保」が目的の場合は特許という使い分けが実務的です。


第13問 不動産先願登録に関する判例

問題要旨: 商標などの工業所有権ではなく、不動産(建物、土地)の登録制度に関する判例を踏まえた問題。マドプロ出願の国内登録時期に関する法定期限と実務上の扱い。

K4 判例理解 T4 因果推論 L2 Trap-B 条件すり替え

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 知的財産権の枠組みと用語 — マドプロ登録と国内登録

解法の思考プロセス: マドプロ(マドリッド協定議定書)出願に関する時間的制約:

基本的な流れ:

  1. 国内で特許や商標を出願
  2. マドプロを通じて国際登録を出願(国内出願日から 6カ月以内
  3. 各国で登録される

登録期限:

  • 日本のマドプロ出願は国内登録日から 6カ月または 12カ月(バリエーションあり)以内に基礎出願の日本登録が必要な場合がある

問題では「出願のタイミング」と「登録の有効期限」の関係を正確に判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「マドプロは簡単に複数国で登録できる」と簡略化する罠。実際は「各国ごとに異なる審査基準」「基礎出願との関係性の維持要件」など複雑な条件があります。また「国内登録が遅れた場合、国際登録は無効になる」という厳密さを見落とすと、実務上のスケジュール管理に失敗します。

学習アドバイス: グローバル企業では「マドプロ出願スケジュール」を厳密に管理し、弁理士事務所と連携して「各国の審査進捗」を追跡しています。小規模企業がマドプロを初めて活用する場合、期限管理の煩雑さに驚くケースが多いため、実務的な準備が重要です。


第14問 秘密漏洩罪と損害賠償請求権

問題要旨: 営業秘密を無断で使用・開示した者に対して、特許権者が刑事告発と民事損害賠償を同時に求めることができるか、またどちらの手段が効果的かを判断する問題。

K5 制度・条文 T4 因果推論 L2 Trap-D 混同誘発

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 不正競争防止法 — 秘密漏洩に対する救済手段

解法の思考プロセス: 営業秘密侵害に対する救済方法:

刑事責任(秘密漏洩罪):

  • 不正競争防止法 21 条で「営業秘密を盗用した者」は 10 年以下の懲役または 2000 万円以下の罰金
  • 企業としての告発は可能だが、検察の立件判断は別(被害金額、被害の明白さなど)

民事責任(損害賠償請求):

  • 不正競争防止法 3 条で差止請求、4 条で損害賠償請求が可能
  • 証拠があれば直接損害賠償を請求でき、刑事告発を待つ必要がない

選択肢では「刑事と民事の同時追行の可能性」および「どちらが実効的か」を判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「秘密漏洩は必ず刑事罰の対象」と思い込む罠。実際は「告発しても起訴に至らない」「民事訴訟の方が迅速」というケースも多いです。また「損害賠償請求には秘密であることの立証が重い」という民事手続の現実を見落とすと、選択肢判定を誤ります。

学習アドバイス: 実務では「営業秘密侵害が判明した場合、直ちに民事訴訟を提起し、並行して刑事告発を検討する」というハイブリッド戦略をとる企業が多いです。刑事罰の威嚇効果と民事での損害賠償回収の両立を目指す戦術的判断です。


第15問 X社と著作権者の権利共有

問題要旨: X社の代表が企業のパンフレットを制作する際、外部のイラストレーター甲氏に絵を描かせ、外部の編集者乙氏に監修させた場合、著作権の帰属(誰が保有者か)と権利の行使(誰が使用許可を出せるか)を判断する問題。

K4 権利帰属 T2 関係図読解 L2 Trap-A 逆方向

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 知的財産権の枠組みと用語 — 著作権の帰属と共有権

解法の思考プロセス: 著作権の帰属を判定する3層構造:

第1層: 誰が「著作者」か:

  • イラストレーター甲氏が絵を描いた → 甲氏が著作者
  • 編集者乙氏が「著作者」になるか → テキスト編集は「編集著作物」(原著作に対する二次著作)として別の著作権が生じる可能性

第2層: 契約による帰属の変更:

  • 「X社に著作権を譲渡する」という契約があるか
  • 「仕事制作物として X社に帰属する」という合意があるか

第3層: 共有や複数著作権の関係:

  • 原著作(甲氏の絵)と編集著作物(乙氏の編集)が重複する場合、複数の著作権が並存

選択肢では「著作者は誰か」「契約による譲渡の有無」「複数の著作権が存在する場合の権利行使」を判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 「X社が制作を依頼したから、著作権は X社のもの」と逆方向に推測する罠。実際は「著作権は個別契約で明確にしない限り著作者に帰属」という原則です。また「編集著作物の著作権」と「原著作の著作権」が並存する場合、「どちらの許可が必要か」という権利行使の複雑さを見落とします。

学習アドバイス: 企業の制作プロセスでは「作業委託契約で著作権の帰属を明記」「著作権譲渡契約を別途作成」「第三者の著作物を利用する場合は使用許可を事前取得」といった手続が標準化されています。実務的なリスク管理から学ぶと、なぜこのような明確化が必要かが理解できます。


第16問 共有著作権と共著作権の違い

問題要旨: 複数の著作者が関与した著作物について、「共有著作権」(複数著作者が同等の権利を持つ)と「共著作物」(複数著作者の作品が融合した著作物)の違いを理解し、各著作者がどの程度まで権利を行使できるかを判断する問題。

K1 定義・用語 T2 関係図読解 L2 Trap-C 部分正解

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 知的財産権の枠組みと用語 — 共有著作権と共著作物

解法の思考プロセス: 著作権法 2 条 1 項 12 号(共同著作物の定義)と 65 条(共有著作権の行使)の区別が重要:

共同著作物(著作権法 2 条 1 項 12 号):

  • 複数著作者の創作が融合し、分割不可能な著作物(映画、楽曲など)
  • 各著作者が対等な権利を持つ(例: 作詞家と作曲家)
  • 権利行使には他の共著者の同意が必要(著作権法 65 条)

共有著作権(複数著作者が同等の権利):

  • 厳密には「共有」と「共著」を分ける法律用語は曖昧
  • 実務的には「著作権を複数人で所有する場合」と「著作物自体が複数人の作品の融合」を区別

選択肢では「著作者同士の合意」「一方の著作者だけで著作権を行使できるか」を判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 「複数著作者がいる = 自動的に対等な権利を持つ」と思い込む罠。実際は「契約による権利配分」「原著作と編集著作物の区別」など複雑な階層があります。また「一方の著作者が著作権を譲渡した場合、他方の著作者の同意が不要」という例外ケースを見落とします。

学習アドバイス: 音楽業界では「作詞家と作曲家が別人」というのが標準で、共著作物の典型例です。著作権管理団体(JASRAC など)がどのようにして各権利者に対価を配分しているかを学ぶと、共著作権管理の実務的複雑さが明確になります。


民法・取引関連法

第17問 X社の商品担保流通契約

問題要旨: X社が外国の商品サプライヤーとの取引契約で、「商品品質の保証」「原材料費の負担」「不具合時の対応」などの条件を定めた場合、各条項がどの法律(商法、民法、不正競争防止法など)に基づいて解釈されるかを判断する問題。

K5 制度・条文 T4 因果推論 L2 Trap-D 混同誘発

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 民法・取引法 — 売買契約と保証義務

解法の思考プロセス: X社とサプライヤーの契約関係を層別に分析:

第1層: 物品の売買契約:

  • 民法 555 条「売買」に基づく
  • 商人間の売買なら商法 524 条(商人売買の特例)も適用
  • 品質保証は民法 562 条以下(売主の契約不適合責任)が基本(改正民法により旧570条の「瑕疵担保責任」から変更)

第2層: 国際取引の特殊性:

  • 契約で「Seller warranty」(売主保証)を明記
  • 「不具合発見から何日以内に通知」という期間制限(改正民法 566 条の契約不適合の通知義務)
  • 「原材料費は Seller が負担」「製品品質は Buyer が保証」という役割分担

第3層: 不正競争防止法との関係:

  • 商品の欠陥(品質保証違反)と「営業秘密侵害」は別(重複する場合もある)

選択肢では「誰が責任を負うか」「期間制限がどの法律で定められるか」を判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「商品の品質問題はすべて『売主責任』」と単純化する罠。実際は「契約での役割分担」「原材料と製品完成品での責任の分け方」「国際取引での法律適用の複雑さ」が絡みます。また「民法 570 条の『隠れた瑕疵』と契約での明示的な品質保証」の関係を混同することも多いです。

学習アドバイス: 国際取引では「Incoterms(貿易条件)」で「リスク移転のポイント」を定めます。「FOB」「CIF」など標準的な貿易条件を学ぶと、「誰がどこから責任を持つか」という契約論理が明確になります。


第18問 時効に関する各選択肢の検討

問題要旨: 民法の各種時効(消滅時効、取得時効)に関する制度を理解し、「相続請求権」「損害賠償請求権」「物品の返還請求」など異なる時効期間を持つ権利について、どの時効が適用されるかを判定する問題。

K5 制度・条文 T5 段階分析 L2 Trap-E 詳細条件見落とし

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 民法・取引法 — 消滅時効と取得時効

解法の思考プロセス: 民法改正(2020年施行)による時効制度の変更:

消滅時効の体系(改正民法 166 条):

  • 原則①: 権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から 5年
  • 原則②: 権利を行使することができる時(客観的起算点)から 10年
  • ※改正前は「権利を行使することができる時から 10 年」が原則(主観的起算点の規定なし)
  • 職業別の短期消滅時効(旧民法170条〜174条)および商事消滅時効(旧商法522条の5年)は廃止

特殊な時効:

  • 賃金請求権: 3年(改正労働基準法115条。本来5年だが当分の間3年の経過措置)
  • 医療過誤損害賠償: 3年(患者が医療ミスを認識した日から)

選択肢では「どの種類の権利か」「改正前後の相違」「計算起点(いつから数え始めるか)」を判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: 「時効は一律 10 年」という旧法の知識で判定する罠。改正民法では主観的起算点(権利行使可能と知った時)から 5年 という新たな計算方法が追加されました(主観・客観のうち早い方で消滅)。また「時効期間は『権利が行使可能になった日』から開始」という起点を見落とし、「請求された日から起算」と誤解することも多いです。

学習アドバイス: 民法改正により時効制度は大幅に簡素化されました。「債権者 vs. 債務者」の利益を考えると「時効の長期化は債権者有利、短期化は債務者有利」という経済的直感が働くため、改正の背景を理解しやすくなります。


第19問 保証契約と求償権

問題要旨: X企業が Y企業に対する 1000 万円の債権を有する場合、保証人 Z氏が Y企業の債務を保証したシナリオで、Z氏が実際に弁済した場合、Z氏が X企業に対して「求償権」(返金を請求する権利)をどのように行使できるかを判定する問題。

K5 制度・条文 T4 因果推論 L2 Trap-D 混同誘発

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 民法・取引法 — 保証契約と求償権

解法の思考プロセス: 保証契約の法的構造:

保証人の地位(民法 446 条以下):

  • Z氏は Y企業の債務者と並列的に、または次順的に X企業に対して責任を負う
  • 一般的には「連帯保証」(Z氏が X企業に直接請求される)

Z氏が弁済した場合の求償権(民法 459 条):

  • Z氏は Y企業(主債務者)に対して「立て替えた金額」を請求可
  • また X企業に対しても「保証債務の範囲内で」請求できる(状況による)

求償権の行使順序:

  1. 主債務者(Y企業)に求償
  2. 主債務者が支払い能力がない場合、保証人(Z氏)が X企業から回収する可能性も検討

選択肢では「求償権の主体(Z氏)」「対象者(Y企業か X企業か)」「行使の期間制限」を判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 「保証人が弁済したら自動的に元のお金が返ってくる」と単純化する罠。実際は「主債務者(Y企業)が支払い能力を持つか」「保証契約の詳細条件」に左右されます。また「求償権は一定期間後に消滅時効」という時間的制限を見落とします。

学習アドバイス: 中小企業の融資では経営者個人が保証人になる「個人保証」が一般的です。融資が焦げ付いた場合、経営者が銀行に弁済し、その後「会社(主債務者)に求償権を行使」という実務的な問題が頻発しており、この理論的理解が重要です。


第20問 相続と相続権の分析

問題要旨: 被相続人 X が死亡し、相続人 A、B、C など複数人がいる場合、X の遺産(不動産、金銭、著作権など)がどのように分割されるか、および相続権の有無(認知、配偶者地位など)を法律関係図から読み取る問題。

K5 制度・条文 T2 関係図読解 L3 Trap-A 逆方向

正解: (公式発表を確認してください)

必要知識: 相続 — 相続人の範囲と遺産分割

解法の思考プロセス: 相続法の基本構造:

相続人の範囲(民法 887 条以下、改正民法 2019年施行):

  • 第 1 順位: 子(嫡出子・非嫡出子区別廃止)
  • 第 2 順位: 親(両親がいない場合のみ)
  • 第 3 順位: 兄弟姉妹(子も親もいない場合のみ)
  • 配偶者: 常に相続人(単独では相続人にならない)

相続分(民法 900 条):

  • 配偶者と子: 配偶者 1/2、子 1/2(複数子は等分割)
  • 配偶者と親: 配偶者 2/3、親 1/3
  • 配偶者と兄弟: 配偶者 3/4、兄弟 1/4

特殊なケース:

  • 認知されない子: 相続人にならない
  • 相続放棄した者: 最初からいなかったものとして扱う
  • 著作権などの無形資産: 相続人全員で共有(原則)

選択肢では「誰が相続人か」「分割比率はいくらか」「第三者の配慮(被相続人の配偶者の再婚など)」を判定することが重要です。

誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 「配偶者が亡くなると配偶者の相続分が子に移る」と逆方向に推測する罠。実際は「配偶者が生存している場合と死亡している場合で相続人の構成が全く異なる」という条件付き構造です。また「認知の有無」「相続放棄」などの手続的な状態が相続人の範囲を劇的に変える可能性を見落とします。

学習アドバイス: 相続は「感情的な遺産分割」と「法律的な財産分割」が交錯する領域です。現実には「遺言」「遺産分割協議」「遺留分減殺請求」などの複数の手段が絡み、家庭裁判所での調停に至るケースも多いため、実例から学ぶ価値が高いです。


形式層の分布と学習戦略

経営法務は L2(制度比較理解)が中核 です。

  • L1(定義暗記): 32 点(40%)確保は比較的容易だが、それ以上は難しい
  • L2(制度比較理解): 55%(11問)。会社法と知財の「制度の違い」を正確に理解できるかが勝負
  • L3(複合問題): 相続分析など図表読解が必要。5%だが落とすと響く

分類タグの凡例

知識種類(K)

  • K1 定義・用語: 用語や概念の定義(「著作権とは」「実用新案とは」)
  • K4 比較メカニズム: 制度同士を比較する枠組み(「合同会社 vs. 株式会社」「共有著作権 vs. 共著作物」)
  • K5 制度・条文: 法定期間、要件、禁止事項など法律に明記された要素

思考法(T)

  • T1 正誤判定: 「〇〇は正しいか、誤りか」の判断
  • T2 数値・図表読解: グラフ、表、相続図など視覚的情報の解読
  • T4 因果推論: 「〇〇が起こると、△△が生じるか」の因果関係を推論
  • T5 段階分析: 複数ステップ(手続の流れ)を正確に追う

形式層(L)

  • L1: 定義を覚えていれば答えられる問題
  • L2: 制度の差異、比較表、数値条件の読み込みが必要
  • L3: 複合的な条件判断、図表解析、多段階の推論が必要

罠パターン

  • Trap-A: 因果の方向が逆(「AはBを生じさせる」を「Bはあると言ったのに A はない」と逆読み)
  • Trap-B: 条件の置き違え(「公開会社なら〇〇」と「非公開会社なら△△」を混同)
  • Trap-C: 部分的に正しい記述が選択肢に混ざり、全体としては誤り
  • Trap-D: 類似制度の混同(「時効」と「除斥期間」など)
  • Trap-E: 計算ミスや細部の条件見落とし

分類タグ凡例

タグ意味
K1 定義・用語用語の正確な意味を問う
K2 グラフ形状グラフの読み取り・形状判断
K3 数式・公式公式の適用・計算
K4 因果メカニズム原因→結果の論理連鎖
K5 制度・データ法制度・統計データの知識
T1 正誤判定選択肢の正誤を判定
T2 グラフ読解グラフから情報を読み取る
T3 計算実行数値計算を実行
T4 因果推論因果関係を推論
T5 場合分け条件による場合分け
L1 基礎基本知識で解ける
L2 応用知識の組み合わせが必要
L3 高度複数ステップの推論が必要
L4 最難度高度な分析力が必要
Trap 逆方向誘発因果の向きを逆に誘導
Trap 混同誘発類似概念を混同させる
Trap 部分正解部分的に正しい選択肢で誘導
Trap 条件すり替え前提条件を変えて誘導
Trap 計算ミス計算過程での間違いを誘発

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