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企業経営理論(平成25年度)

平成25年度(2013)中小企業診断士第1次試験 企業経営理論の全30問(設問数38)解説

概要

平成25年度(2013)の企業経営理論は全30問・設問数38(100点満点)で出題されました。経営戦略論(問1〜10)・組織論および人的資源管理(問11〜23)・マーケティング論(問24〜30)の3領域から構成され、定義理解と因果関係の深い理解が求められた年度です。

問題文は J-SMECA 公式サイト(平成25年度 企業経営理論) から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。

解説の読み方

各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。

出題構成

領域問番号問数
経営戦略論1〜1010
組織論・人的資源管理11〜2313
マーケティング論24〜307

全問分類マップ

テーマ知識種類思考法形式層罠パターン
1経営計画の策定と実行K1 定義・用語T1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
2PPM(プロダクト・ポートフォリオ)K4 因果メカニズムT1 正誤判定L2Trap-C 部分正解
3オペレーション効率性K1 定義・用語T1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
4戦略的提携K4 因果メカニズムT4 因果推論L3Trap-A 逆方向
5企業ドメインと事業ドメインK4 因果メカニズムT1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
6a垂直統合と価値連鎖K4 因果メカニズムT1 正誤判定L2Trap-B 条件見落とし
6b完備契約とスポット市場契約K5 制度・基準T1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
7a発注先分散と調達管理K4 因果メカニズムT4 因果推論L3Trap-A 逆方向
7b部品メーカーの対応策K4 因果メカニズムT4 因果推論L3Trap-D 類似混同
8モジュラー型製品開発K4 因果メカニズムT1 正誤判定L2Trap-C 部分正解
9中小企業の海外進出戦略K4 因果メカニズムT4 因果推論L3Trap-B 条件見落とし
10a同族経営の組織文化K4 因果メカニズムT4 因果推論L3Trap-B 条件見落とし
10bコーポレートガバナンス改革K5 制度・基準T1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
11組織設計と部門間関係K1 定義・用語T1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
12チーム活動とアカウンタビリティK4 因果メカニズムT1 正誤判定L2Trap-C 部分正解
13期待理論に基づくリーダーシップK4 因果メカニズムT2 分類判断L2Trap-D 類似混同
14複合組織の環境適応K4 因果メカニズムT4 因果推論L3Trap-B 条件見落とし
15渉外担当者の役割K1 定義・用語T1 正誤判定L2Trap-A 逆方向
16a動機付け(二要因理論)K4 因果メカニズムT4 因果推論L3Trap-D 類似混同
16b内発的動機付けの低下K4 因果メカニズムT4 因果推論L3Trap-C 部分正解
17イノベーションと組織学習K4 因果メカニズムT1 正誤判定L2Trap-B 条件見落とし
18ドミナントデザインと生産性のジレンマK4 因果メカニズムT2 分類判断L3Trap-D 類似混同
19専門経営者による企業支配K1 定義・用語T1 正誤判定L2Trap-A 逆方向
20弾力的な労働時間制度K5 制度・基準T1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
21労働基準法の休業規定K5 制度・基準T1 正誤判定L2Trap-B 条件見落とし
22労働契約と就業規則変更K5 制度・基準T1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
23賃金の基本用語K5 制度・基準T1 正誤判定L2Trap-B 条件見落とし
24a売上高の象限分析K3 数式・公式T3 計算実行L3Trap-E 計算ミス誘発
24b象限別の戦略的対応K4 因果メカニズムT4 因果推論L3Trap-B 条件見落とし
25a購買意思決定プロセス(穴埋め)K1 定義・用語T2 分類判断L2Trap-D 類似混同
25b消費者行動の理論K4 因果メカニズムT1 正誤判定L2Trap-C 部分正解
26a市場占有率の分析K3 数式・公式T3 計算実行L3Trap-E 計算ミス誘発
26bハーフィンダール指数K3 数式・公式T3 計算実行L4Trap-E 計算ミス誘発
27aAIDMA と購買行動分析K1 定義・用語T2 分類判断L2Trap-D 類似混同
27b認知的不協和と口コミ効果K4 因果メカニズムT1 正誤判定L2Trap-C 部分正解
27cセールス・プロモーションK1 定義・用語T1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
28フランチャイジングK1 定義・用語T1 正誤判定L2Trap-D 類似混同
29ブランド戦略(PB・ダブルチョップ)K1 定義・用語T2 分類判断L2Trap-D 類似混同
30a営業の定義と信頼K1 定義・用語T1 正誤判定L2Trap-C 部分正解
30b消費財部門の営業管理K4 因果メカニズムT4 因果推論L3Trap-B 条件見落とし

形式層の分布

形式層問数配点該当問
L1(定義暗記のみ)00なし
L2(構造理解必須)24571-3, 5, 6b, 8, 10b, 11-13, 15, 17, 19-23, 25a-b, 27a-c, 28-29, 30a
L3(因果推論必須)13394, 6a, 7a-b, 9, 10a, 14, 16a-b, 18, 24a-b, 26a, 30b
L4(数式操作必須)1226b

合格ライン考察: L2 レベルを確実に取ることが合格の基盤。L2 の 24 設問で 57 点を獲得した上で、L3 の因果推論問題で 5〜6 問正解すれば合格ラインに到達します。


経営戦略論

第1問 経営計画の策定と実行

問題要旨: 経営計画の策定と実行において留意すべき点に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: イ

必要知識: 経営戦略の定義と計画立案 — 経営計画は策定のみならず、実行段階での学習を通じた修正が重要

解法の思考プロセス:

  • イ: 正解。「経営計画になかった機会や脅威から生まれてくる新規な戦略要素を取り入れていくには、計画遂行プロセスで学習が起こることが重要」。ミンツバーグの創発的戦略の概念に通じ、計画実行中の学習の重要性を正しく述べている
  • ア:「定量的なデータを収集して分析することによって新機軸の戦略を構築することができる」→ データ分析だけでは新機軸の戦略は保証できない
  • ウ: 戦略ビジョンを予算計画と連動させても「戦略行動の柔軟性を失わせる」とは限らない
  • エ: シナリオ分析で「起こりそうな未来を確定することができる」→ 未来は確定できない
  • オ:「双方向的にコントロールすることは、事業の機会や脅威の発見には無効」→ 無効ではない

誤答の落とし穴 Trap-D 類似混同: アの「データ分析→新機軸の戦略構築」は一見正しく見えるが、データだけでは創造的戦略は生まれない点を見落としやすい

学習アドバイス: 計画主義(アンゾフ)と学習主義(ミンツバーグ)の対比を理解してください。計画は実行段階で修正されるものであり、創発的戦略の概念を押さえましょう。


第2問 PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)

問題要旨: PPM に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K4 因果メカニズム T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解

正解: ア

必要知識: プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント — BCG が開発した4象限フレームワーク。経験曲線効果を前提とする

解法の思考プロセス:

  • ア: 正解。「金のなる木」は市場成長率が低くても相対的シェアが高く高収益。「負け犬」でも資金流出が小さければ高収益事業となりうる
  • イ:「花形製品」はシェア維持のための再投資が大きく、キャッシュフローが再投資を「上回る」とは限らない
  • ウ: PPM は経験曲線効果(内部の累積生産量によるコスト優位)を前提としており、外部からの技術導入による規模の経済とは前提が異なる
  • エ: PPM では相対的マーケットシェアが重要な軸であり、シェアが小さければ大きなキャッシュフローは通常見込めない

誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: エの「製品市場の定義とはかかわりなく」という部分に注目。PPM では市場定義が分析の前提であり、これを無視する記述は不適切

学習アドバイス: PPM の4象限(花形・金のなる木・問題児・負け犬)の各キャッシュフロー特性(流入・流出の大小)を正確に暗記してください。特に「花形=高収益だがキャッシュフローは相殺される」点を見落としやすいです。


第3問 オペレーション効率性

問題要旨: オペレーション効率の特徴に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: エ

必要知識: オペレーション効率性と戦略的差別化 — ポーター「What Is Strategy?」(HBR, 1996)に基づく概念

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解。「オペレーション効率は、企業が投入した資源を有効に活用できるような活動のすべてを指している」。ポーターの定義と一致する
  • ア:「ライバル企業と異なる活動を効率的に行う」→ これは戦略的ポジショニングの説明であり、オペレーション効率性とは異なる
  • イ:「優れた収益性を長期にわたって企業にもたらす」→ オペレーション効率の競争は模倣されやすく、長期的に優れた収益性は保証されない
  • ウ:「差別化のレベルに直接的に影響を与えることはない」→ オペレーション効率は品質等を通じて差別化にも影響しうる

誤答の落とし穴 Trap-D 類似混同: アの「異なる活動を効率的に」は戦略的ポジショニングとオペレーション効率性を混同させる典型的な罠

学習アドバイス: ポーターの「同じ活動をより効率的に(OE)」vs「異なる活動を行う(戦略的ポジショニング)」の対比を確実に区別してください。


第4問 戦略的提携

問題要旨: 戦略的提携に関する記述で、最も不適切なものを選ぶ

K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-A 逆方向

正解: オ

必要知識: 戦略的提携と事業ドメイン — 戦略的提携は独立性を維持しつつ相乗効果を追求する手法

解法の思考プロセス:

  • オ: 正解(不適切)。「内部開発による範囲の経済を実現するコストが戦略的提携によるコストよりも小さい場合、内部開発は戦略的提携の代替とはならない」→ 論理が逆。内部開発のコストが小さければ、内部開発は有力な代替手段となる
  • ア: 適切。企業の評判リスクは裏切りの抑止力として機能する
  • イ: 適切。VRIO 分析の観点から、希少でも低コストで代替可能なら持続的競争優位にはならない
  • ウ: 適切。新市場・新セグメントへの低コスト参入はシナジー活用の一形態
  • エ: 適切。機会主義的行動の抑制と協力の恩恵最大化のバランスが提携の主要課題

誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向: オは「コストが小さい場合→代替とならない」と因果関係が逆転している。論理の方向性を確認する必要がある

学習アドバイス: 「最も不適切なもの」を選ぶ問題では、論理の方向性(因果関係の向き)が逆転していないかを常に確認してください。


第5問 企業ドメインと事業ドメイン

問題要旨: 医療分野の A 社が将来的なドメイン定義を企図する際の、企業ドメインと事業ドメインの決定に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K4 因果メカニズム T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: オ

必要知識: 企業ドメイン・事業ドメイン定義 — 企業ドメインは全社的資源配分の範囲、事業ドメインは個別事業の展開領域

解法の思考プロセス:

  • オ: 正解。「事業ドメインは全社的な資源配分に影響を受けるため、企業ドメインの決定に合わせて見直すこともありうる」。企業ドメイン(上位)→ 事業ドメイン(下位)の正しい階層関係を示している
  • ア:「注意の焦点を絞り込んで資源分散を防止するのには適さない」→ ドメイン定義は注意の焦点を絞り込む機能を持つ
  • イ: 差別化の基本方針や顧客セグメント選択は「事業ドメイン」の役割であり、「企業ドメイン」の役割ではない
  • ウ:「現在の生存領域や事業分野との関連性は示していない」→ 企業ドメインは現在の事業との関連も示す
  • エ:「将来手がける事業をどう定義するか」は企業ドメインの説明であり、事業ドメインとの用語が入れ替えられている

誤答の落とし穴 Trap-D 類似混同: イとエは「企業ドメイン」と「事業ドメイン」の用語が入れ替えられており、概念の混同を狙っている

学習アドバイス: 企業ドメイン(what to do: 全社レベルの事業範囲・資源配分)と事業ドメイン(how to compete: 個別事業の競争領域)の違いを明確に区別しましょう。


第6問 垂直統合と統治選択

問題要旨: 2つの出題。

  • 設問1: 企業が価値連鎖の中で携わる活動の範囲(垂直統合)に関する記述
  • 設問2: 非垂直統合時の管理方法(完備契約・スポット市場契約)に関する記述

設問1 K4 因果メカニズム T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし

正解設問1: エ

必要知識: 戦略的提携と垂直統合 — 垂直統合度は売上高付加価値率で測定できる

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解。外部に価値創出活動を委託する企業は、自社で付加価値を生む割合が低いため売上高付加価値率が低くなる。これは垂直統合度が低いことを正確に示している
  • ア・イ: 「企業が携わる活動の数は一定で安定する必要がある」が誤り。活動数は戦略変更等により変動する
  • ウ: 携わる活動数の増減から垂直統合度をある程度推測可能であり、「推測できない」は不正確

設問2 K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解設問2: ア

必要知識: コーポレートガバナンスと契約形態 — 完備契約・逐次契約・スポット市場契約の3つの統治形態

解法の思考プロセス:

  • ア: 正解。「完備契約は、詳細なモニタリングと法的制裁の脅威で機会主義をコントロールできる」。完備契約の特徴を正確に説明している
  • 他の選択肢は完備契約とスポット市場契約の特徴を混同した記述

学習アドバイス: 完備契約(事前に全事態を網羅)、逐次契約(段階的に合意)、スポット市場契約(取引単位ごと)の3つを、取引頻度と環境不確実性の2軸で整理してください。


第7問 完成品メーカーと部品メーカーの取引関係

問題要旨: 2つの出題。

  • 設問1: 完成品メーカーによる発注先見直し・内製化に関する記述
  • 設問2: 部品メーカーの対応策に関する記述

設問1 K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-A 逆方向

正解設問1: オ

必要知識: サプライチェーン管理 — 資源依存モデルにおける取引関係

解法の思考プロセス:

  • オ: 正解。複数社への分散発注により品質競争が生まれ品質向上が期待でき、一社に問題が生じても他社から調達可能で供給リスクを分散できる
  • ア: 発注先分散→1社あたりの生産量減少→生産効率低下・コスト増加傾向のため、「コスト低下」は誤り
  • イ: 複数社を競合させることと忠誠心向上の因果関係が矛盾
  • エ: 発注先増加→管理コストは増加する(低下ではない)

設問2 K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-D 類似混同

正解設問2: エ

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解。不可欠な部品の場合、特殊設備への投資負担を完成品メーカーに求めることができる。資源依存の観点から正しい
  • ア:「範囲の経済」の誤用。正しくは「規模の経済」
  • ウ: 技術ブラックボックス化は製品開発への参加拡大とは逆方向(情報共有が必要)
  • オ:「貸与図方式」は完成品メーカーが設計した図面を貸与する方式であり、自社設計への転換とは異なる

学習アドバイス: 「規模の経済」と「範囲の経済」の違い、「貸与図方式」と「承認図方式」の違いを正確に区別しましょう。


第8問 モジュラー型製品開発

問題要旨: モジュラー的な製品開発に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K4 因果メカニズム T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解

正解: イ

必要知識: イノベーション戦略と製品アーキテクチャ — モジュラー型と擦り合わせ型の対比

解法の思考プロセス:

  • イ: 正解。モジュラー化により標準部品使用が進み、自社固有技術開発の余地が狭まる。結果として製品間の差別化が困難になり価格競争が激化する
  • ア:「差別化による高い収益性を発揮できる」→ モジュラー化は差別化を困難にするため、高収益性は発揮しにくい
  • ウ:「技術開発と製品開発の緊密な連携が不可欠」→ これは擦り合わせ型の特徴
  • エ: 外部調達の増加で社内設備が直ちに全て埋没原価になるとは限らない
  • オ: 参入障壁の低下は先発企業にとって重大な脅威となりうる

誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: アは前半「低価格・高機能の実現」は正しいが、後半「差別化による高い収益性」が誤り。部分的に正しい記述に騙されやすい

学習アドバイス: モジュラー型(標準化・価格競争激化)と擦り合わせ型(独自技術・差別化)のメリット・デメリットを対比して整理しましょう。


第9問 中小企業の海外進出戦略

問題要旨: 産業の空洞化・国内市場縮小に直面する中小企業の対応に関する記述で、最も不適切なものを選ぶ

K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-B 条件見落とし

正解: エ

必要知識: イノベーション戦略と国際展開 — 中小企業の経営資源を活かした海外展開

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解(不適切)。特定工業部品製造に特化した中小企業が生産設備を全て売却し、アジア新興国の汎用商品輸入・流通に参入する「成長戦略」。自社のコアコンピタンスを完全に放棄する飛び地的多角化であり、経営戦略として不合理
  • ア: 適切。カントリーリスク分析と現地人材の能力・適性に基づく活用は合理的
  • イ: 適切。親企業の支援を受けつつ段階的に進出するのは中小企業にとって現実的
  • ウ: 適切。国内にとどまりつつコスト低減と体質改善を図るのは合理的な対応策

誤答の落とし穴 Trap-B 条件見落とし: エの「成長戦略」という表現に惑わされやすいが、コアコンピタンスの放棄という重大な条件を見落としてはならない

学習アドバイス: 中小企業の海外進出では「既存の経営資源の活用」が前提。コアコンピタンスを捨てる戦略は中小企業にとって極めてリスクが高いと判断できます。


第10問 同族経営・コーポレートガバナンス

問題要旨: 2つの出題。

  • 設問1: 同族経営の中小企業B社の組織文化に関して最も不適切な記述
  • 設問2: B社のコーポレートガバナンス改革に関して最も不適切な記述

設問1 K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-B 条件見落とし

正解設問1: イ

必要知識: 組織文化と変革 — 同族企業の組織文化は創業者の価値観に強く依存する

解法の思考プロセス:

  • イ: 正解(不適切)。「技術関係部門同士の連携による問題解決が定型化されている」→ B社は創業者の価値観を第一とする同族経営であり、技術部門主導の定型的連携とは矛盾する
  • ア: 適切。創業者の戦略的解決法が常套手段として繰り返されている
  • ウ: 適切。外部人材が創業者の価値観を理解して意思決定に同化することは同族経営として整合的
  • エ: 適切。過去の成功体験が現在の失策原因となっている(成功の罠)
  • オ: 適切。創業期の経験に基づく問題解決法の確立は老舗同族企業として整合的

設問2 K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解設問2: エ

必要知識: コーポレートガバナンス — 委員会設置会社(指名委員会等設置会社)における執行役と代表執行役

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解(不適切)。委員会設置会社で業務執行を担うのは「執行役」であり、指揮するのは「代表執行役」。選択肢は「代表取締役」としており用語が誤り
  • ア: 適切。株式公開による持株比率低下で創業者一族の影響力低下を懸念するのは事実
  • イ: 適切。米国型ガバナンスの指名委員会・報酬委員会・監査委員会設置は正しい説明
  • ウ: 適切。ウォールストリートルールは機関投資家が大量保有の場合に機能しにくい
  • オ: 適切。ドイツ型の監査役会は株主代表と従業員代表で構成される共同決定制度

学習アドバイス: 「代表取締役」(取締役会設置会社)と「代表執行役」(指名委員会等設置会社)の違いは頻出です。日本のガバナンス制度の類型を整理しましょう。


組織論・人的資源管理

第11問 組織設計と部門間関係

問題要旨: 組織設計に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: エ

必要知識: 組織構造設計と部門間関係 — 部門間の相互依存性と調整メカニズム

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解。補完的(相互的)な相互依存関係がある部門では、非定型的な調整が頻繁に必要なため、機能横断的チームや非公式対面的コミュニケーションが重要
  • ア: サービス技術にもルーティン化できるものがあり、「ルーティン化困難」とは一概に言えない
  • イ: 一方向的業務の流れでも横のコミュニケーションが必要
  • ウ: 熟練技術職務は非ルーティン化の程度が「高い」ため、マニュアルだけでは対応不可
  • オ: 小バッチ生産では有機的マネジメントシステムが適する(ウッドワードの研究)

誤答の落とし穴 Trap-D 類似混同: ウの「非ルーティン化の程度が低い」は「高い」の誤りであり、一見もっともらしい記述に惑わされやすい

学習アドバイス: ウッドワードの研究(小バッチ→有機的、大量生産→機械的)とトンプソンの相互依存性(共同的・逐次的・相互的)を組み合わせて整理してください。


第12問 チーム活動とアカウンタビリティ

問題要旨: チーム活動に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K4 因果メカニズム T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解

正解: エ

必要知識: 組織構造設計 — チームにおけるフリーライダー問題と個人のアカウンタビリティ

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解。チームレベルのアカウンタビリティだけでなく、個人レベルのアカウンタビリティも明確にすることでフリーライダーを防止できる
  • ア:「不確実性が低く」→ チームが有効なのは不確実性が「高い」場合
  • イ: 忠誠心が「低い」メンバーとの組み合わせはチーム業績にマイナス
  • ウ: 平等な固定給はフリーライダーを生む可能性があり、必ずしもチーム業績向上に有効ではない
  • オ: チームの本質は相互依存にあり、相互依存度を最小化するとチームの意味がなくなる

誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: ウは「個人別業績評価がチーム成果より個人成果を優先させる」という前半は正しいが、「平等な固定給がチーム業績を高める」という結論が誤り

学習アドバイス: チームの有効性を高める条件(相互依存性、個人とチーム双方の責任明確化、適切な報酬設計)を整理してください。


第13問 期待理論に基づくリーダーシップ行動

問題要旨: 期待理論に基づいたリーダーシップ行動を説明するものとして、最も適切なものを選ぶ

K4 因果メカニズム T2 分類判断 L2 Trap-D 類似混同

正解: オ

必要知識: 動機付け理論(期待理論) — ブルームの期待理論: 動機づけ = 期待 × 道具性 × 誘意性

解法の思考プロセス:

  • オ: 正解。「目標を実現することによって得られる報酬が、いかに魅力的なものであるのかを説得する」。報酬の魅力(誘意性)を高めることは期待理論に基づくリーダーシップ行動として最も適切
  • ア:「報酬を目標達成と切り離す」→ 期待理論では報酬と業績は結びつけるべき
  • イ:「結果を気にせず行動」→ 期待理論は努力→成果の期待を重視
  • ウ:「チーム全員で考えさせる」→ 参加型リーダーシップの説明であり期待理論固有ではない
  • エ:「社会的意義を共有させる」→ 変革型・カリスマ型リーダーシップの特徴

誤答の落とし穴 Trap-D 類似混同: ウの「支持的態度」やエの「社会的意義」は他のリーダーシップ理論の概念であり、期待理論と混同しやすい

学習アドバイス: 期待理論の3要素(期待・道具性・誘意性)を正確に理解し、パス・ゴール理論との関連を押さえてください。


第14問 複合組織の環境適応

問題要旨: 複合組織となった企業が環境変化に対して組織的に適応するために必要な行動として、最も不適切なものを選ぶ

K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-B 条件見落とし

正解: ア

必要知識: 組織構造設計と環境適応 — 環境変化への柔軟な対応

解法の思考プロセス:

  • ア: 正解(不適切)。環境分析に専門部署を割り当て「変化の渦中でも持続可能な長期的戦略計画を立てさせる」→ 環境変化が激しい中で固定的な長期計画に依存することは適応を阻害する
  • イ: 適切。事業部に戦略的重点課題の遂行を割り当て責任を持たせる
  • ウ: 適切。通常業務と新規事業の予算を分けることで環境変化への対応力を維持(両利きの経営の考え方)
  • エ: 適切。複合組織の経営者が専門化された組織間の調整を通じて環境適応を図る

誤答の落とし穴 Trap-B 条件見落とし: アの「環境分析に専門部署を割り当て」は一見適切だが、「持続可能な長期的戦略計画」という条件が環境の不確実性と矛盾する点を見落としやすい

学習アドバイス: 環境の不確実性が高いほど柔軟な計画(適応的戦略)が必要であり、固定的な長期計画は逆効果です。


第15問 渉外担当者(boundary personnel)の役割

問題要旨: 渉外担当者の役割に関する記述で、最も不適切なものを選ぶ

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-A 逆方向

正解: エ

必要知識: 組織構造設計と境界連結 — 渉外担当者は組織と外部環境の境界で情報フィルタリングと代表機能を果たす

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解(不適切)。「組織内部の価値観や規範、組織文化などからは自由に、外部組織の要請にあわせて臨機応変に行動しなければならない」→ 渉外担当者は組織を「代表」する立場にあり、組織の価値観・文化に基づいて行動する必要がある
  • ア: 適切。外部環境情報への接触による不確実性削減機能と組織変革の誘導者としての役割
  • イ: 適切。外部組織の影響力行使に対応する交渉力の必要性
  • ウ: 適切。外部との連結環および境界維持的機能
  • オ: 適切。組織的意思決定の環境適応行動としての実行

誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向: エは渉外担当者の行動原理を組織内部ではなく外部に置いており、方向が逆転している

学習アドバイス: 渉外担当者は「組織の代表」として外部と接するため、組織文化から自由ではありえません。バウンダリー・スパナーの4つの機能(情報フィルタリング、代表、交渉、境界維持)を整理しましょう。


第16問 動機付けと報酬制度

問題要旨: 2つの出題。研究員が自発的に行っていた研究テーマ探索が、作業環境改善と金銭的報酬制度の導入後に減少した事例。

  • 設問1: 作業環境改善後も満足度が向上しなかった理由
  • 設問2: 自発的活動が減少した理由として最も不適切なもの

設問1 K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-D 類似混同

正解設問1: イ

必要知識: 動機付け理論(二要因理論) — ハーズバーグの動機づけ・衛生理論

解法の思考プロセス:

  • イ: 正解。「作業環境に対する不満足の解消と、新たな研究開発テーマの探索を通じて得られる満足は別問題」。ハーズバーグの二要因理論に基づき、作業環境(衛生要因)の改善は不満足の解消にしかならず、探索活動の満足(動機づけ要因)とは独立した次元
  • ア: 改善内容の相違ではなく、そもそも衛生要因では満足に至らないという構造的問題
  • ウ: 希求水準の問題ではなく、要因の性質の違い
  • エ: マズローの欲求階層説との混同。二要因理論は低次/高次の区分ではない
  • オ: ホーソン効果はこの文脈と無関係

設問2 K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-C 部分正解

正解設問2: ウ

必要知識: 動機付け理論(内発的動機付け) — デシのアンダーマイニング効果(外的報酬による内発的動機付けの低下)

解法の思考プロセス:

  • ウ: 正解(不適切な理由)。「困難な仕事内容を考えれば対価としてはふさわしくない」→ これは公平理論的な説明。研究員はもともと報酬を求めていなかったため、報酬額の多寡の問題ではない
  • ア: 適切。自己決定感の喪失(アンダーマイニング効果)
  • イ: 適切。外的報酬による認知変化(過正当化効果)
  • エ: 適切。制度の意図説明がなければ管理・統制と知覚される

学習アドバイス: ハーズバーグの二要因理論とデシの内発的動機付け理論はセットで出題されます。「衛生要因≠動機付け要因」「外的報酬が内発的動機を損なう」の2点を確実に理解してください。


第17問 イノベーションと組織学習

問題要旨: イノベーションを組織学習プロセスとして考えた場合に必要なメカニズムとして、最も不適切なものを選ぶ

K4 因果メカニズム T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: イ

必要知識: イノベーション戦略 — 組織学習としてのイノベーション

解法の思考プロセス:

  • イ: 正解(不適切)。「現場ライン部門への権限委譲・能力開発にともなうスタッフ部門の削減」→ スタッフ部門は知識統合・分析・共有で重要な役割を果たし、イノベーションの組織的基盤を弱体化させるため不適切
  • ア: 適切。結果の可視化とストーリー化は暗黙知の共有・学習効果を高める
  • ウ: 適切。多様な視点は創造性と問題発見能力を促進
  • エ: 適切。試行錯誤を促す評価体系はイノベーションの前提条件
  • オ: 適切。成功・失敗経験のデータベース化は組織記憶の構築

誤答の落とし穴 Trap-B 条件見落とし: イの「権限委譲・能力開発」は正しいが、「スタッフ部門の削減」という条件が不適切であることを見落としやすい

学習アドバイス: 組織学習の要素(知識創造・共有・蓄積)とスタッフ部門の機能を関連づけて理解してください。


第18問 ドミナントデザインと生産性のジレンマ

問題要旨: アバナシー=アッターバックモデルにおける流動化段階・成長段階・特定化段階の各段階に適した組織に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K4 因果メカニズム T2 分類判断 L3 Trap-D 類似混同

正解: ウ

必要知識: イノベーション戦略 — アバナシー=アッターバックモデルの3段階と生産性のジレンマ

解法の思考プロセス:

  • ウ: 正解。特定化段階での脱成熟には垂直統合的な組織対応が必要であることを正しく述べている
  • ア:「成長段階後期に市場規模が縮小し始める」→ 成長段階ではまだ市場は拡大中
  • イ:「工程革新へのシフトにより生産性が低下する」→ 工程革新により生産性は「向上」する
  • オ: 流動化段階ではアーキテクチャが未確定のため水平分業(モジュール化)は困難。むしろ垂直統合的開発が必要

誤答の落とし穴 Trap-D 類似混同: 流動化段階と特定化段階で適する組織形態(垂直統合 vs 水平分業)を混同しやすい

学習アドバイス: 3段階(流動化→成長→特定化)と製品革新・工程革新の関係、適する組織形態をまとめて図で整理してください。


第19問 専門経営者による企業支配

問題要旨: 専門経営者や管理者による企業支配に関する記述で、最も不適切なものを選ぶ

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-A 逆方向

正解: オ

必要知識: コーポレートガバナンス — バーリ=ミーンズの「所有と経営の分離」

解法の思考プロセス:

  • オ: 正解(不適切)。「企業家的な行動が一般的なものとなった」→ 専門経営者支配の文脈では、所有と経営の分離が進むことで企業家的な冒険的行動はむしろ抑制される傾向にある
  • ア: 適切。株価評価の行き過ぎによる CSR 圧迫は実際に存在する問題
  • イ: 適切。バーリ=ミーンズの「所有と経営の分離」の基本命題
  • ウ: 適切。ガルブレイスのテクノストラクチャー論(技術の高度化→専門家支配)
  • エ: 適切。管理者が技術知識を通じて影響力を持つのは専門経営者支配の一形態

誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向: オは専門経営者支配とアントレプレナーシップの方向性が逆

学習アドバイス: バーリ=ミーンズ(所有と経営の分離)、ガルブレイス(テクノストラクチャー)、チャンドラー(組織は戦略に従う)の3大議論を整理してください。


第20問 弾力的な労働時間制度

問題要旨: 弾力的な労働時間制度に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: エ

必要知識: 人的資源管理と労働法規 — 裁量労働制・フレックスタイム制・事業場外みなし労働時間制

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解。在宅勤務における事業場外みなし労働時間制の適用要件(①自宅で行われる、②通信機器が常時通信可能でない、③随時使用者の具体的指示に基づかない)を正確に述べている
  • ア:「一定の年収以上の者に限定」→ 企画業務型裁量労働制に年収要件はない(高度プロフェッショナル制度との混同)
  • イ:「対象労働者の同意が必要」→ 専門業務型裁量労働制には個々の労働者の同意は不要(企画業務型との混同)
  • ウ:「時差出勤もその一種」→ 時差出勤は使用者が始業・終業時刻を指定するものでフレックスタイム制ではない

誤答の落とし穴 Trap-D 類似混同: 専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の要件、フレックスタイム制と時差出勤の違いを混同しやすい

学習アドバイス: 裁量労働制の2類型(専門業務型・企画業務型)の適用要件の違い、フレックスタイム制と時差出勤の定義の違いを確実に区別してください。


第21問 労働基準法の休業規定

問題要旨: 労働基準法または育児・介護休業法に定める休業に関する記述で、最も不適切なものを選ぶ

K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: ウ

必要知識: 人的資源管理と労働法規 — 産前産後休業・育児休業・介護休業・業務上災害の休業補償

解法の思考プロセス:

  • ウ: 正解(不適切)。「産前休業が4週間しかとれなかった場合には、産後休業を10週間与えなければならない」→ 産前休業と産後休業はそれぞれ独立して定められており、産前が短くなっても産後に上乗せする制度は存在しない。産後休業は8週間のまま
  • ア: 適切。育児休業中の社会保険料免除の規定を正しく説明
  • イ: 適切。介護休業の回数と日数制限の規定(当時の法律に基づく)
  • エ: 適切。業務災害時の休業補償と労災保険からの給付による免責の関係

誤答の落とし穴 Trap-B 条件見落とし: ウの「産前休業が短かった分を産後に上乗せ」は一見合理的だが、法制度上は両者が独立していることを見落としやすい

学習アドバイス: 産前休業(6週間/多胎14週間、請求制)と産後休業(8週間、強制)はそれぞれ独立した制度です。日数の通算・振替はありません。


第22問 労働契約と就業規則変更

問題要旨: 労働契約に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: ア

必要知識: 人的資源管理と労働法規 — 労働契約法の規定

解法の思考プロセス:

  • ア: 正解。「使用者が就業規則を変更し労働者に周知させ、その変更が合理的なものであるとき、労働条件は変更後の就業規則による」。労働契約法第10条の規定どおり
  • イ:「客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と認められる場合」は無期契約の解雇権濫用法理(同法16条)の要件。有期契約の期間中解雇は「やむを得ない事由」が必要(同法17条)でより厳しい
  • ウ: 無期転換後の労働条件は「別段の定め」があれば異なる条件も可能であり、「同一のものとしなければならない」は厳格すぎる
  • エ: 定年後再雇用等の事情を考慮すると一定の待遇差が認められる場合もあり、「相違することは認められない」は不正確

誤答の落とし穴 Trap-D 類似混同: イの「客観的に合理的な理由」(解雇権濫用法理)と「やむを得ない事由」(有期契約の期間中解雇)を混同しやすい

学習アドバイス: 労働契約法の条文番号と適用場面を整理してください。特に第10条(就業規則変更)、第16条(解雇権濫用)、第17条(有期契約の期間中解雇)、第18条(無期転換)は頻出です。


第23問 賃金の基本用語

問題要旨: 賃金に関する基本用語の定義として、最も不適切なものを選ぶ

K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: オ

必要知識: 人的資源管理と賃金制度 — 労働基準法第12条の平均賃金の定義

解法の思考プロセス:

  • オ: 正解(不適切)。「算定事由の発生した日以前3カ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の所定労働日数で除した金額」→ 正しくは「総日数(暦日数)」で除する。「所定労働日数」は誤り
  • ア: 適切。基本給の定義として正確
  • イ: 適切。賞与の定義(労働基準法上の定義)として正確
  • ウ: 適切。定期昇給とベースアップの違いを正しく説明
  • エ: 適切。モデル賃金の定義として正確

誤答の落とし穴 Trap-B 条件見落とし: 「所定労働日数」と「総日数(暦日数)」の違いは細かいが、平均賃金の計算結果に大きく影響する重要な条件

学習アドバイス: 平均賃金の計算式(賃金総額 ÷ 暦日数)は解雇予告手当や休業手当の基礎となるため、正確に暗記してください。


マーケティング論

第24問 売上高の戦略的対応

問題要旨: 2つの出題。売上高 = 対象市場規模 × 市場シェアの定義式に基づく4象限分析。

  • 設問1: 各象限における売上高の変化
  • 設問2: 各象限における戦略的対応

設問1 K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス誘発

正解設問1: イ

必要知識: STP とマーケティング戦略 — 市場成長率と市場シェアの組み合わせによる分析

解法の思考プロセス:

  • イ: 正解。「市場成長率がプラス・市場シェアが減少」の象限では、市場成長による増加分とシェア減少による減少分が相殺し、売上高に変化が見られないケースが起こりうる
  • 他の選択肢は各象限の売上高変化の方向性を誤って記述

設問2 K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-B 条件見落とし

正解設問2: ア

解法の思考プロセス:

  • ア: 正解。「市場成長率がマイナス・市場シェアも減少」の象限では、対象市場の適否分析と競争戦略の抜本的な見直しが必要

学習アドバイス: 売上高 = 市場規模 × シェア の定義式を使って、各象限で売上高がどう変化するかを数式で確認する練習をしてください。


第25問 消費者の購買意思決定プロセス

問題要旨: 2つの出題。

  • 設問1: 情報発信型消費者の影響力に関する空欄穴埋め
  • 設問2: 消費者行動に関する記述の正誤判定

設問1 K1 定義・用語 T2 分類判断 L2 Trap-D 類似混同

正解設問1: ウ

必要知識: 消費者行動と購買意思決定 — 準拠集団、イノベーター理論、キャズム、マーケットメイブン

解法の思考プロセス:

  • ウ: 正解。A = 準拠(集団)、B = イノベーター、C = キャズム、D = マーケットメイブン。ロジャースの普及理論とムーアのキャズム理論の用語を正しく組み合わせている

設問2 K4 因果メカニズム T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解

正解設問2: ア

解法の思考プロセス:

  • ア: 正解。「よりどり3点」の販促で普段と異なる商品も購買される現象はバラエティ・シーキング(多様性追求)と合致
  • イ: マーケターは消費者特性を「変容させる」のではなく、適応したマーケティングを行う
  • ウ: 高関与時の意思決定は「単純化」ではなく「複雑化」する
  • エ: 生産財の購買は購買センター(DMU)が関与し、消費財より複雑・長期化する

学習アドバイス: ロジャースの普及理論(イノベーター→アーリーアダプター→アーリーマジョリティ→レイトマジョリティ→ラガード)とキャズム理論をセットで学習してください。


第26問 市場占有率とハーフィンダール指数

問題要旨: 2つの出題。清涼飲料水市場の占有率データを用いた分析。

  • 設問1: 市場占有率の分析
  • 設問2: ハーフィンダール指数(HHI)の算出

設問1 K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス誘発

正解設問1: エ

必要知識: STP とマーケティング戦略 — 数量ベース占有率と金額ベース占有率の違い

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解。価格プレミアム化に成功した場合、販売数量は少なくても売上金額は高くなるため、数量ベース占有率 < 金額ベース占有率となる

設問2 K3 数式・公式 T3 計算実行 L4 Trap-E 計算ミス誘発

正解設問2: イ

解法の思考プロセス:

  • HHI = (0.25)² + (0.15)² + (0.15)² + (0.10)² + (0.05)² + 30 × (0.01)²
  • = 0.0625 + 0.0225 + 0.0225 + 0.0100 + 0.0025 + 0.003
  • = 0.123
  • イ: 正解(約0.12)

学習アドバイス: HHI の計算では「その他」のシェアを個別企業に分解する必要があります。「その他30% = 30社 × 各1%」のように分解して計算してください。


第27問 消費者行動・AIDMA・認知的不協和・SP

問題要旨: 3つの出題。機械部品メーカー2代目経営者の電子手帳購入行動に基づく。

  • 設問1: 購買行動の分析(AIDMA・AISAS)
  • 設問2: 消費者レビューと口コミ効果
  • 設問3: セールス・プロモーション

設問1 K1 定義・用語 T2 分類判断 L2 Trap-D 類似混同

正解設問1: ア

必要知識: 消費者行動と購買意思決定 — AIDMA モデル(注意→興味→欲望→記憶→行動)

解法の思考プロセス:

  • ア: 正解。受信した e メールが AIDMA の M(Memory = 記憶)を活性化させた
  • イ: 問題文では商品比較中であり、事前に明確なブランド選好マップは形成されていなかった
  • ウ: AISAS の Share(共有)ステップを踏んだ記述がない
  • エ: 実店舗で確認しネットで購入する行為は「ショールーミング」であり「ブラウジング」ではない

設問2 K4 因果メカニズム T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解

正解設問2: ア

必要知識: サービスマーケティングと CRM — 認知的不協和と顧客満足

解法の思考プロセス:

  • ア: 正解。返品・交換時の送料無料は購入後の不安(認知的不協和)を軽減する施策
  • イ: 熟知性が高いブランドはネガティブ口コミの影響が相対的に小さい
  • ウ: 新規獲得コストは既存顧客維持コストの約5倍(1:5の法則)
  • エ: 顧客満足は事前期待と実際の成果とのギャップで決まり、期待度は重要な要素

設問3 K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解設問3: ウ

必要知識: 流通チャネルとプロモーション戦略 — セールス・プロモーションの種類と効果

解法の思考プロセス:

  • ウ: 正解。ポイントサービスは将来の値引きを約束する施策であり、再来店促進の機能を持つ
  • イ: おまけ(プレミアム)は短期的購買促進策であり、長期的ブランドロイヤルティの醸成には向かない
  • エ: メーカーのインセンティブには消費者向けと流通業者向け(トレード・プロモーション)の両方がある

学習アドバイス: AIDMA、AISAS、SIPS 等の購買行動モデルの違いを整理し、ショールーミングやウェブルーミング等の現代的購買行動パターンも押さえてください。


第28問 フランチャイジング

問題要旨: フランチャイジングを用いた海外進出に関する記述で、最も適切なものを選ぶ

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: ア

必要知識: 流通チャネル戦略 — フランチャイジングの形態とマスターフランチャイズ方式

解法の思考プロセス:

  • ア: 正解。現地企業との合弁で現地本部を設立し、マスター・フランチャイジング契約でサブ・フランチャイジングを展開する方法は海外進出の一般的手法
  • イ:「ダイレクト・マーケティング」は通信販売等の販売手法であり、本部がフランチャイジーと直接契約する形態は「ダイレクト・フランチャイジング」
  • ウ: 権利を付与するのはフランチャイザー(本部)であり、フランチャイジー(加盟店)ではない
  • エ: フランチャイジングに基づくチェーンは「フランチャイズチェーン(FC)」。直営方式が「コーポレートチェーン(レギュラーチェーン)」

誤答の落とし穴 Trap-D 類似混同: ダイレクト・フランチャイジングとダイレクト・マーケティング、フランチャイズチェーンとコーポレートチェーンの用語混同を狙っている

学習アドバイス: フランチャイズの基本構造(フランチャイザー→フランチャイジー)と、マスターフランチャイズ方式の特徴を整理してください。


第29問 ブランド戦略(PB・ダブルチョップ)

問題要旨: 酒屋4代目の品揃え戦略に関する空欄穴埋め問題

K1 定義・用語 T2 分類判断 L2 Trap-D 類似混同

正解: オ

必要知識: 製品戦略とブランド管理 — プライベートブランド(PB)、ストアブランド、ダブルチョップ

解法の思考プロセス:

  • オ: 正解。A = プライベート(ブランド)、B = 流通(加工)、C = チョップ(ダブルチョップ)、D = ストア(ブランド)
  • 「ダブルチョップ」とは、メーカーブランドと小売業者ブランドの両方を1つの商品に併記する方式
  • 他の選択肢は「ダブルマー」「ダブルコンテンツ」等の存在しない用語を含む

学習アドバイス: NB(ナショナルブランド)、PB(プライベートブランド)、ダブルチョップの違いを整理し、流通加工の意義(付加価値創造)も理解しましょう。


第30問 営業組織と営業管理

問題要旨: 2つの出題。中小サプライヤーT社が消費財分野への参入を図る場面。

  • 設問1: 営業に関する記述で最も適切なもの
  • 設問2: 消費財部門の営業管理のあり方

設問1 K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解

正解設問1: エ

必要知識: 流通チャネルとプロモーション戦略 — 営業活動における企業信頼と人格信頼

解法の思考プロセス:

  • エ: 正解。「個々の営業パーソンに対する顧客の評価は、企業信頼と人格信頼の両者によって支えられている」。営業担当者への信頼は企業への信頼と個人への信頼の両面から形成される
  • ア: 営業の目的は新規顧客獲得だけでなく、既存顧客の維持・深耕も含む
  • イ:「固有に含まれる人的販売」→ 営業は人的販売だけでなく幅広い活動を含む
  • ウ: 国際展開すると複雑さは「増加」する

設問2 K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-B 条件見落とし

正解設問2: ウ

解法の思考プロセス:

  • ウ: 正解。新規分野には柔軟な若手を配置し、固定給にインセンティブを上乗せする制度で動機づけを行うのが合理的
  • ア: 新規参入分野で営業組織を放棄するのは不適切
  • イ: 産業財と消費財では営業手法が異なり、産業財のエースを引き抜くと両部門に悪影響
  • エ: 完全歩合制では品質管理が困難で、ブランド構築に悪影響

学習アドバイス: 産業財と消費財のマーケティング・営業手法の違いを理解し、新規事業参入時の組織設計の考え方を押さえてください。


年度総括

思考法の分布

思考法問数配点該当問
T1 正誤判定22521-3, 5, 6a-b, 8, 10b, 11-12, 15, 17, 19-23, 25b, 27b-c, 28, 30a
T2 分類判断51213, 25a, 27a, 29
T3 計算実行3624a, 26a-b
T4 因果推論8244, 7a-b, 9, 10a, 14, 16a-b, 18, 24b, 30b

出題傾向: T1(正誤判定)が全体の約6割を占め、定義の正確な理解が最も重要。T4(因果推論)も約2割あり、複数概念の関連理解が必要。

罠パターンの分布

罠パターン問数該当問
Trap-A 逆方向44, 7a, 15, 19
Trap-B 条件見落とし96a, 9, 10a, 14, 17, 21, 23, 24b, 30b
Trap-C 部分正解72, 8, 12, 16b, 25b, 27b, 30a
Trap-D 類似混同151, 3, 5, 6b, 7b, 10b, 11, 13, 16a, 18, 20, 22, 25a, 27a, 27c, 28, 29
Trap-E 計算ミス誘発324a, 26a-b

最重要な罠: Trap-D(類似混同)が最多で全体の約4割。類似概念の正確な区別が合否を分ける。

Tier 別学習優先度

Tier 1(確実に取りたい — 定義の正確な暗記で得点):

  • 経営計画の策定(問1)、PPM(問2)、オペレーション効率性(問3)
  • 組織設計(問11)、渉外担当者(問15)、専門経営者支配(問19)
  • フランチャイジング(問28)、ブランド戦略(問29)
  • 8設問 = 16点

Tier 2(合格ラインの鍵 — 概念の区別と制度理解):

  • 企業ドメイン(問5)、垂直統合(問6)、モジュラー型製品(問8)
  • チーム活動(問12)、期待理論(問13)、イノベーション(問17)
  • 労働時間制度(問20)、休業規定(問21)、労働契約(問22)、賃金用語(問23)
  • 購買意思決定(問25)、消費者行動(問27)、営業管理(問30)
  • 17設問 = 40点、Tier 1 + Tier 2 = 56点が基本ライン

Tier 3(差をつける問題 — 因果推論と計算):

  • 戦略的提携(問4)、取引関係(問7)、海外進出(問9)、同族経営(問10)
  • 複合組織(問14)、動機付け(問16)、ドミナントデザイン(問18)
  • 売上高分析(問24)、市場占有率・HHI(問26)
  • 13設問 = 38点

本番セルフチェック5項目

試験直前と試験当日の朝に確認:

  1. 類似概念を区別できているか: 企業ドメイン vs 事業ドメイン、OE vs 戦略的ポジショニング、専門業務型 vs 企画業務型裁量労働制
  2. 因果関係の方向を確認したか: 「A→B」なのか「B→A」なのか、特に Trap-A 対策
  3. 条件の見落としがないか: 「部分的に正しいが結論が誤り」のパターンに注意(Trap-B, C)
  4. 計算問題は定義に忠実か: HHI の「その他」の分解、平均賃金の「暦日数」など
  5. 「最も不適切」を選ぶ問題で逆に答えていないか: 問4, 9, 14, 15, 17, 19, 21, 23 は不適切選択

分類タグの凡例

知識種類(K)

タグ意味
K1定義・用語PPM、STP、CSR の定義
K2分類・表示組織形態の分類
K3数式・公式HHI = Σ(シェア)²
K4因果メカニズム / 手続・手順戦略→利益という因果鎖
K5制度・データ / 制度・基準労働基準法、ガバナンス制度

思考法(T)

タグ意味例題
T1正誤判定「述べている内容が経営理論と一致するか」
T2グラフ読解 / 分類判断「複数の選択肢から該当する分類を選ぶ」
T3計算実行「HHI を算出する」
T4因果推論 / 条件整理「複数の条件から最適な戦略を推論する」
T5場合分け「状況別に異なる対応を判定する」

形式層(L)

タグ意味特徴
L1定義暗記で解ける知識があれば即座に判定可能
L2構造理解が必要複数概念の関係を理解する必要あり
L3因果連鎖・推論が必要複数ステップの推論が必要
L4数式操作・応用が必要公式を適用して計算・比較が必要

罠パターン(Trap)

タグ意味対策
Trap-A逆方向因果関係の向きを図で確認
Trap-B条件見落とし前提条件を最初に箇条書き
Trap-C部分正解最後の一段までの論理確認
Trap-D類似混同類似概念を対比表で明確化
Trap-E計算ミス誘発公式の意味を理解して検算

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概要出題構成全問分類マップ形式層の分布経営戦略論第1問 経営計画の策定と実行第2問 PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)第3問 オペレーション効率性第4問 戦略的提携第5問 企業ドメインと事業ドメイン第6問 垂直統合と統治選択第7問 完成品メーカーと部品メーカーの取引関係第8問 モジュラー型製品開発第9問 中小企業の海外進出戦略第10問 同族経営・コーポレートガバナンス組織論・人的資源管理第11問 組織設計と部門間関係第12問 チーム活動とアカウンタビリティ第13問 期待理論に基づくリーダーシップ行動第14問 複合組織の環境適応第15問 渉外担当者(boundary personnel)の役割第16問 動機付けと報酬制度第17問 イノベーションと組織学習第18問 ドミナントデザインと生産性のジレンマ第19問 専門経営者による企業支配第20問 弾力的な労働時間制度第21問 労働基準法の休業規定第22問 労働契約と就業規則変更第23問 賃金の基本用語マーケティング論第24問 売上高の戦略的対応第25問 消費者の購買意思決定プロセス第26問 市場占有率とハーフィンダール指数第27問 消費者行動・AIDMA・認知的不協和・SP第28問 フランチャイジング第29問 ブランド戦略(PB・ダブルチョップ)第30問 営業組織と営業管理年度総括思考法の分布罠パターンの分布Tier 別学習優先度本番セルフチェック5項目分類タグの凡例知識種類(K)思考法(T)形式層(L)罠パターン(Trap)