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イノベーション・国際経営・デジタル戦略

技術経営、オープンイノベーション、海外進出形態、プラットフォーム、DXの概念を整理する

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このページは、イノベーション、国際経営、デジタル戦略の理論体系をまとめた解説ページです。試験で頻出の比較論点(破壊的 vs 持続的、グローバル vs ローカル適応)と実践フレームワークをつかみ直すための参考資料として機能します。

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「シュンペーターの5類型と破壊的イノベーションのジレンマの関係は何か」「海外進出でライセンスと合弁はどう異なるか」「プラットフォームのネットワーク効果とは」──試験で出題が増えている論点を、既存の競争優位フレームワークとの対比で整理します。各セクションは「定義→比較表→事例→誤答パターン」の流れで読み進められます。

学習のポイント

  • イノベーションは「新結合」による価値創造、技術開発そのものではない
  • 国際経営は進出形態のトレードオフ(統制 vs スピード)を理解する
  • デジタル戦略はビジネスモデル変革、IT化ではない

シュンペーターのイノベーション5類型

イノベーションの基本理論。シュンペーターは「新結合」という定義のもと、イノベーションを5つの形態に分類しました。試験でも頻出です。

類型内容事例
新製品消費者にとって新しい商品やサービスの創出スマートフォン、サブスクリプション型音楽配信
新生産方法製造プロセスの革新自動化、3Dプリント、トヨタ生産方式
新市場未開拓の市場領域への進出オンライン音楽配信(従来CDから移行)、シェアリングエコノミー
新原材料・供給源既存製品の素材や中間投入財の革新植物由来プラスチック、バイオ燃料、新しい鉱山採掘地
新組織形態産業組織や経営体制の革新プラットフォーム企業、ギグエコノミー、デジタル・プラットフォームの台頭

最も重要な理解:イノベーション=「技術開発」ではなく、「新しい組み合わせ」による価値創造という結果です。同じ技術でも、市場の受け入れられ方や組織化の仕方で、イノベーションになるか否かが決まります。


プロダクト vs プロセス、持続的 vs 破壊的

2つの分類軸

分類軸類型①類型②
対象プロダクトイノベーション(新製品・新サービス)プロセスイノベーション(生産・業務プロセスの改善)
変化の度合いインクリメンタル(漸進的、段階的改良)ラディカル(急進的、非連続的変化)

クリステンセンの破壊的イノベーション

イノベーションのジレンマ

優良企業が既存の優良顧客の声に忠実であるがゆえに、破壊的イノベーションへの対応が遅れ、市場地位を失う現象です。既存企業はなぜ後発者に敗れるのか、その構造を説明する理論。

視点持続的イノベーション破壊的イノベーション
方向性既存顧客の高度なニーズに応えるローエンドまたは新市場から参入
対象顧客既存の優良顧客非消費者やローエンド顧客
性能特性主流市場の基準では優れる当初は既存製品より劣って見える
既存企業得意(既存能力を活用できる)苦手(既存の価値基準と合わない)

具体例:携帯電話市場での「ガラケー vs スマートフォン」。ガラケーメーカー(DoCoMo、au)は既存ユーザーの「通話・メール品質」の改良に注力していた一方、スマートフォンは「多機能統合デバイス」という価値基準で新市場を開拓しました。既存企業の利益構造とスマートフォンの低価格モデルが相容れず、対応が遅れた例です。


技術のSカーブと破壊的イノベーションのジレンマ

技術は導入から成熟までの間に、典型的なS字形の成長曲線をたどります。このモデルは、既存技術と破壊的イノベーションの関係を説明する上で重要です。

Sカーブの3段階

1. 初期段階(曲線の下部)

  • 投資が必要だが成果が少ない
  • 技術的な課題が多く、学習期間が長い
  • 市場でのシェアは限定的

2. 成長期(曲線の急勾配部分)

  • 技術が安定化し、スケーラビリティが高まる
  • 投資収益率が急速に改善
  • 市場での採用が加速(キャズムを超えた状態)

3. 成熟期(曲線の頭部)

  • 技術の限界が見える
  • 改善速度が鈍化、投資効率が低下
  • 市場飽和に向かう

なぜジレンマが生じるのか

既存企業は、自社の主力技術が成長期にあるときは持続的イノベーションに成功します。しかしその技術が成熟期の頭打ちに近づくと、破壊的イノベーション(次の新技術のSカーブの立ち上がり)に対応できず、衰退する傾向があります。これが「イノベーションのジレンマ」の根本的な理由です。

既存企業は目先の利益重視で既存技術に注力し続けるため、気づいたときには破壊的イノベーターに市場を奪われているのです。


イノベーターの普及プロセス(ロジャーズ)

新製品・技術が市場全体に浸透するプロセスにおいて、採用の早さで消費者を5つに分類しました。

カテゴリ割合特徴購買動機
イノベーター2.5%冒険的、リスク許容度が高い新しさそのもの、テクノロジー好きな自分
アーリーアダプター13.5%オピニオンリーダー、選別眼がある信頼性・実績を見定めたい
アーリーマジョリティ34%慎重、周囲の採用者の評判を参考にする安定性・広がり、「みんな使ってる」
レイトマジョリティ34%懐疑的、多数派になってから採用慣性、社会圧力
ラガード16%最も保守的、従来技術に執着過去の実績への信頼

重要な観点:イノベーター+アーリーアダプター = 16%を超えると、ネットワーク効果やデファクトスタンダード効果が働き、急速に普及が加速します。


キャズム理論(ムーア)と超える戦略

キャズムの正体

キャズムは、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間の深い溝です。これは単なる「数の問題」ではなく、購買動機の根本的な違いから生じます。

  • アーリーアダプター:「新しさ」「革新性」「変革」を求める層 → テクノロジーに理解がある
  • アーリーマジョリティ:「実績」「安心」「完成度」「普及度」を求める層 → 利用価値の実証が必要

多くの製品がこの溝を越えられずに消えていく理由は、第一段階の採用者の支持を得たとしても、第二段階の大多数には異なるアプローチが必要だからです。

キャズムを越える3つの戦略

1. ホールプロダクト戦略 製品だけでなく、周辺サービス(トレーニング、カスタマーサポート、システム統合、コンサルティング)を整備して、「実用価値の完全解決策」を実証する。例:スマートフォンが普及したのは、AppStoreというアプリエコシステム(ホールプロダクト)を整備し、実用価値が目に見えるようになったから。

2. ニッチ市場の攻略 初期には特定の業界・用途に限定し、その中で圧倒的シェアを獲得して信頼を構築。その実績を隣接市場へ波及させる。例:高性能分析ソフトが、最初は金融機関向けに特化し、その成功実績を製造業へ展開する。

3. オピニオンリーダーの活用 アーリーアダプター層(業界の意思決定者、有識者)の支持を確保し、彼らの評判や事例が口コミで広がるようにする。メディアへの掲載、業界フォーラムでの認知獲得など。


オープンイノベーション vs クローズドイノベーション

クローズドイノベーションオープンイノベーション
知識の源泉自社内のR&D部門のみ自社+外部(大学、研究機関、スタートアップ、顧客)
考え方最高の人材を社内に集めることが理想社外の優秀な人材・知識も戦略的に活用
知的財産守るべきもの、秘密化活用するもの(ライセンスアウトも含む)
開発スピード時間がかかる、開発コスト大スピーディー、リスクを分散
リスク自前主義の非効率、機会喪失ノウハウ流出、統合の難しさ

2つの流れ

インバウンド型(外部→内部) 大学研究、スタートアップのライセンスイン、ベンチャー投資、産学連携など、外部の知識・技術を内部に取り込む。

アウトバウンド型(内部→外部) 自社の技術をライセンスアウト、スピンオフ企業への技術供与、パートナー企業への技術移転など、内部知識を外部に展開。

CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)

事業会社がスタートアップに出資して、新技術や新ビジネスモデルへのアクセスを獲得する手法。オープンイノベーションの実践形態です。M&Aより少額で、将来性のある技術や人材に先制投資できるメリットがあります。


ステージゲート法 ── 新製品開発を段階と意思決定点で進める

新製品開発は、思いついたから一気に市場投入する ものではありません。特に開発費が重い製造業では、段階ごとに情報を増やし、各段階の前で 続行するか / 止めるか / やり直すか を判断する必要があります。これを整理したのが ステージゲート法 です。

ステージとゲートの役割

要素役割典型的な中身
Stage実際の作業を進める段階コンセプト整理、事業性評価、開発、試験、市場投入
Gate次の段階へ進めるかを決める意思決定点Go、Kill、Hold、Recycle の判断

重要なのは、ステージ = 作業ゲート = 判断 という区別です。初学者はここを逆に覚えやすいですが、試験では「ゲートで何をするか」を問う選択肢が頻出です。

代表的な流れ

  1. 構想・概念化: 顧客課題と製品コンセプトを絞る
  2. 事業性評価: 市場性、採算性、技術的実現性を確かめる
  3. 開発: 設計、試作、量産準備を進める
  4. 試験・検証: 顧客受容性、品質、量産可能性を確かめる
  5. 市場投入: 本格発売し、立ち上がりを管理する

各段階の前で、このまま資源投入を続ける価値があるか を見ます。したがって、ステージゲート法は 開発の手順論 であると同時に、投資リスクを小分けに管理する仕組み でもあります。

どこで誤りやすいか

  • 早い段階で十分な顧客検証をせず、そのまま開発投資を膨らませる
  • ゲートを単なる進捗報告会と誤解し、Go / Kill の意思決定を曖昧にする
  • 開発部門だけで回し、営業や生産の視点を入れない

試験で 段階的に評価する開発の途中で続行判断を行う事業性と技術性を両方見る とあれば、ステージゲート法の説明である可能性が高いです。


製品アーキテクチャとモジュール化 ── 競争構造が変わる理由

製品アーキテクチャは、部品どうしが どれだけ独立しているか を見る考え方です。ここがわかると、エレクトロニクス産業でなぜ水平分業が進み、完成品メーカーの立場が変わったのかを説明しやすくなります。

インテグラル型とモジュラー型

類型特徴向く状況競争への影響
インテグラル型部品間のすり合わせが多い。全体最適が必要自動車、精密機械、高性能機器すり合わせ能力が強みになり、参入障壁が高くなりやすい
モジュラー型部品ごとの役割とインターフェースが標準化されるPC、家電、デジタル機器の一部部品を組み合わせやすくなり、水平分業と新規参入が進みやすい

モジュール化が起こす変化

モジュール化が進むと、完成品メーカーは 全部を自社で抱える優位 を失いやすくなります。なぜなら、部品の組み合わせで一定品質の製品を作りやすくなり、部品メーカーやEMSの存在感が高まるからです。

その結果、次の変化が起こりやすくなります。

  • 部品や工程の外部調達がしやすくなる
  • 参入障壁が下がり、価格競争が強まりやすくなる
  • 完成品メーカーは ブランド顧客接点プラットフォーム で差別化する必要が強くなる

プラットフォーム共通化との関係

モジュール化は、基本部分は共通化し、見える部分で差別化する 戦略とも相性が良いです。自動車の車台共通化や、家電の基幹部品共通化が典型です。これにより、開発コストを抑えながら、製品バリエーションを増やせます。

試験で モジュール化が進むと完成品メーカーの利益率が下がりやすい水平分業が進む標準インターフェースが重要 といった記述が出たら、この論点を思い出してください。


エフェクチュエーション vs コーゼーション

起業家や新規事業の意思決定論理として対比される2つのアプローチです。

比較項目コーゼーション(因果論理)エフェクチュエーション(手段論理)
出発点明確な目標を設定し、逆算して手段を選ぶ今持っている手段から何ができるかを構想する
資源目標達成に必要な資源を調達する手元にある既存の資源を最大限活用する
リスク管理期待リターンを最大化する(最大利益志向)許容可能な損失の範囲内で行動(上限設定)
パートナー競争分析に基づき計画的に選定コミットしてくれる人と手を組む(相互利害一致)
不確実性への対処未来は予測可能。データ分析で予測、計画未来は予測不能。制御可能なことに集中
適する環境予測可能で情報が十分な環境(既知事業)不確実で情報が不足した環境(新規事業、スタートアップ)

エフェクチュエーションの5つの行動原則

1. 手中の鳥(Bird in Hand) 自分は何者か、何を知っているか、誰を知っているかという手持ちの手段から出発する。エンジニアなら得意な技術分野で起業、経営者なら業界ネットワークから最初の顧客を見つける。

2. 許容可能な損失(Affordable Loss) 期待リターンの最大化ではなく、失っても事業を続けられる程度の予算を設定してその範囲内で行動する。「どの程度なら失敗しても大丈夫か」と考えることで、過度なリスクを避ける。

3. クレイジーキルト(Crazy Quilt) パートナーシップで不確実性を共有する。資金を全て自己調達するのではなく、投資家、サプライヤー、スタートアップパートナーなど、利害を一致させた多様な関係者と手を組む。

4. レモネード(Lemonade) 予期しない事態や偶然を機会として転換する。当初の想定市場が機能しなかったとしても、思わぬ顧客セグメントのニーズが見つかったら、それに方向転換する(「酸っぱいレモンでレモネードを作れ」)。

5. 飛行機のパイロット(Pilot in the Plane) 予測に頼るのではなく、制御可能な活動に集中して未来を自ら創り出す。上記4つの原則を統合する上位原則。「将来5年後の市場予測」にこだわるのではなく、「今から3ヶ月で検証できることは何か」に集中。

コーゼーションとエフェクチュエーションの使い分け

両者はどちらか一方が正しいのではなく、事業フェーズに応じて使い分けます。初期スタートアップ段階ではエフェクチュエーション、事業が成熟し市場が予測可能になるとコーゼーションに移行するのが現実的です。


両利きの経営(オライリー&タッシュマン)

既存事業の深化(exploitation)と新規事業の探索(exploration)を同時に行う経営のあり方です。

知の深化知の探索
目的既存の能力・知識の改善・活用新しい知識・能力の探索
特徴効率化、改善、確実性実験、リスクテイク、不確実性
陥りやすい罠能力の罠(成功体験への固執)失敗の罠(探索コストの浪費)

能力の罠:過去の成功体験に引きずられ、既存事業の深化にばかり資源を集中させてしまい、探索がおろそかになる現象。これがイノベーション・ジレンマの根本原因でもあります。

失敗の罠:探索に過度な投資をしても、成果がなかなか出ないため、結果的に投資が無駄になる。


海外進出形態とトレードオフ

企業が国際市場に進出する際、統制、リスク、投資額、スピードの間には必ずトレードオフが生じます。戦略目標によって最適形態が異なります。

形態統制リスク投資額スピード
間接輸出速い
直接輸出やや低やや低小〜中速い
ライセンシング速い
フランチャイズ
合弁(JV)
完全所有子会社遅い

各形態の選択肢と特徴

ライセンシング:知識や技術をライセンス契約で供与し、ロイヤリティを得る形態。投資が小さく、統制は低い。品質統制が難しいデメリット。

フランチャイズ:自社のビジネスモデル・ブランドをフランチャイジー(現地企業)に供与し、統一した運営を行う。投資と統制のバランスをとった形態。

合弁(ジョイントベンチャー):現地企業と共同出資して新会社を設立。統制を現地企業と共有するため、文化の違いや経営判断の遅延が課題。

完全所有子会社:100%出資で現地に子会社を設立。統制は最高、投資額・リスク・時間がかかる。長期的視点が必要。


ダニングのOLIパラダイム

海外直接投資(FDI)の意思決定を説明するフレームワーク。企業が海外で利益を上げるには、以下の3つの優位が必要です。

要素内容具体例
O: 所有優位性企業が独自に保有する無形資産特許、ブランド力、経営ノウハウ、技術力
L: 立地優位性その国にしかない自然資源、労働力、市場規模、インフラ鉱物資源が豊富な国、低賃金労働力、大規模市場
I: 内部化優位性市場を通じて取引するより、自社内で管理した方がコスト・品質管理で有利品質統制のため完全所有子会社とする、技術流出防止

OLIの組み合わせと進出形態

  • O + L + I すべて揃う海外直接投資(現地子会社設立):最高の統制と利益が期待できる
  • O + I あるが L がない輸出:立地優位性がないため自国で生産して輸出する(内部化はしたいが、その国で生産する理由がない)
  • O はあるが I がないライセンス供与:内部化優位性がないため現地企業へのライセンス供与でロイヤリティを得る

日本の自動車メーカーが米国進出する際は、O(自動車技術・品質管理能力)、L(米国市場の規模)、I(品質統制のため現地工場を自社所有)の3つを活用しています。


国際経営戦略(バートレット&ゴシャル)

多国籍企業の経営戦略は、「グローバル統合」と「ローカル適応」のバランスの取り方で4つに分類されます。

戦略グローバル統合ローカル適応特徴適用産業
インターナショナル戦略本国で開発した製品・サービスを海外にそのまま展開高級ブランド(初期段階)、特殊技術製品
マルチドメスティック戦略各国市場に合わせて、製品・マーケティングを大幅にカスタマイズ食品・飲料、日用消費財、流通、医療
グローバル戦略世界統一の製品・マーケティングで、規模の経済を追求エレクトロニクス、自動車、医薬品、半導体
トランスナショナル戦略グローバル統合と各国適応の両立。本国・各地域から知識を吸収・活用コンサルティング、複合企業、先端技術産業

戦略選択の流れ

初期段階ではインターナショナル戦略で進出し、市場が成熟すると2つの道に分かれます:

  • 規模の経済を求める企業(電子機器、自動車)→ グローバル戦略:技術スタンダード統一で効率化
  • 各国ニーズの差が大きい企業(食品・飲料)→ マルチドメスティック戦略:各国市場に適応

成熟した多国籍企業は、複数地域から知識を吸収・活用する トランスナショナル戦略 を目指します。


プラットフォーム戦略とネットワーク効果

複数の利用者グループをつなぎ、ネットワーク効果で価値を増大させる戦略です。Amazon、Google、Meta などプラットフォーム企業の競争優位の中心です。

ネットワーク効果の3種類

効果の種類説明
直接ネットワーク効果同じグループの利用者が増えるほど、各利用者にとっての価値が上がるLINE、WhatsApp:ユーザーが増えるほど連絡可能な友人が増える
間接ネットワーク効果(クロスサイド効果)片方のグループの利用者が増えると、反対側のグループの価値が上がるAppStore:アプリ開発者増加→ユーザーの選択肢増加、ユーザー増加→開発者の収益機会増加
データネットワーク効果利用データが蓄積されるほど、AIやレコメンデーション機能が精度を高めるNetflix、Spotify:視聴履歴増→個人向けレコメンドの精度向上

勝者総取り(WTA)と条件

WTA現象:ネットワーク効果が強いプラットフォームでは、1社が市場の大多数のシェアを獲得する傾向があります。

WTAが起こる条件

  1. 間接ネットワーク効果が強い(双方向の正のループが大きい)
  2. スイッチングコストが高い(別のプラットフォームへの乗り換えが困難)
  3. 初期段階での規模競争が激しい(先行者が優位)

マルチホーミング

マルチホーミング:利用者が複数のプラットフォームを同時に利用すること。

  • 強マルチホーミング:複数プラットフォームの併用が常態化(例:複数のSNS同時利用)
  • 弱マルチホーミング:1つのプラットフォームが主で、他は補助的(例:主にInstagram、たまにTikTok)

マルチホーミングが多い市場では、WTAが緩和される傾向があります。YouTubeとTikTok、NetflixとPrimeVideoの並用ユーザーは多く、複数企業が共存可能になります。


デジタルトランスフォーメーション(DX)

DXは単なるIT化やシステムの近代化ではなく、デジタル技術を用いてビジネスモデルや組織文化そのものを変革する取り組みです。

DXの段階

1. IT化(単なるデジタル化) 既存の業務をシステムやクラウドに移す。費用がかかり、効率化は限定的。

2. デジタル化(業務プロセスの改善) 業務フローを見直し、デジタルツールで効率化する。例:ペーパーレス化、自動化。

3. DX(ビジネスモデル変革) デジタルを活用して、顧客体験、収益モデル、組織形態そのものを変える。例:小売企業がオムニチャネル戦略で店舗とオンラインを統合、サブスクリプションモデルへ移行。

DXの本質は、テクノロジー導入ではなく、新しい価値提供の仕組みの創造です。


典型的なつまずきと誤答パターン

よくある誤解

  • 技術開発 vs イノベーション

    • 誤:「R&D投資を増やせばイノベーションが起きる」
    • 正:技術開発は手段、イノベーションは価値創造の結果。市場の受け入れと組織化で初めて成立。
  • 破壊的イノベーション

    • 誤:「すごい新しい技術が出現するのが破壊的イノベーション」
    • 正:ローエンドや非消費者から始まる市場構造の変化。既存企業が対応できない理由は「性能が悪い」ではなく「既存の利益構造と相容れない」。
  • 海外進出形態

    • 誤:「完全所有子会社が常に最善」「ライセンスでも統制できる」
    • 正:統制、リスク、投資額、スピードはバランス関係。戦略目標で最適形態が変わる。
  • キャズム理解

    • 誤:「アーリーアダプター向けの広告をもっと打てばマジョリティに届く」
    • 正:購買動機が異なる層。ホールプロダクト整備、ニッチでの実績構築など別アプローチが必要。
  • 国際経営戦略

    • 誤:「グローバル戦略が最先端、マルチドメスティックは後進的」
    • 正:市場特性や企業の強み次第。食品ではマルチドメスティック有効(文化・嗜好の違い大),電子機器ではグローバル有効(技術スタンダード統一)。
  • DX理解

    • 誤:「既存システムをクラウドに移す = DX」
    • 正:ビジネスモデルと組織文化の変革まで含む。テクノロジー導入はDXの手段に過ぎない。
  • プラットフォームとWTA

    • 誤:「ネットワーク効果が大きい=必ずWTA」
    • 正:マルチホーミング常態化市場では複数プラットフォーム共存可能。

確認問題

問1:シュンペーターのイノベーション5類型と新結合

シュンペーターが定義するイノベーション5類型をすべて列挙し、「新結合」という定義の意味を述べよ。

解答:新製品、新生産方法、新市場、新原材料・供給源、新組織形態。「新結合」とは、既存の技術や資源を新しい組み合わせ方で活用し、新たな価値を創造すること。つまりイノベーション=技術開発そのものではなく、価値創造の結果であることを意味する。

問2:破壊的イノベーションとイノベーションのジレンマ

「既存製品より性能は劣るが、低価格で簡便な製品が新たな顧客層を開拓し、やがて主流市場を奪う」現象を何というか。また、既存企業がなぜこれに対応できないのかを説明せよ。

解答:破壊的イノベーション。既存企業は既存顧客(優良顧客)の声に忠実であるがゆえに、持続的イノベーション(既存製品の改良)に注力し続ける。一方、破壊的イノベーターはローエンドや非消費者向けに進出し、既存企業の利益構造と相容れない低価格モデルを展開するため、既存企業は採算が合わずに対応遅れになる。これが「イノベーションのジレンマ」。

問3:技術のSカーブと破壊的イノベーション

既存技術がSカーブの成熟期に向かうと、破壊的イノベーションのリスクが高まるのはなぜか。説明せよ。

解答:既存技術が成熟期に入ると、改善速度が鈍化し投資効率が低下する。一方、次の新技術のSカーブは初期段階で投資効率が悪く見える。既存企業は目先の利益重視で既存技術に注力し続けるため、気づいたときには破壊的イノベーターに市場を奪われている。既存技術のSカーブ成熟化と新技術の立ち上がりのタイミングずれが根本原因。

問4:キャズムを越える戦略

「アーリーアダプターは採用したが、アーリーマジョリティへの広がりが停滞している」という状況を何というか。またこれを超えるための戦略を述べよ。

解答:キャズム。キャズムを越える戦略は:(1)ホールプロダクト戦略(製品周辺の整備・サポート),(2)ニッチ市場の攻略(限定市場での圧倒的シェア獲得),(3)オピニオンリーダーの活用(アーリーアダプターの信頼を口コミで広める)。重要は購買動機の違い(新しさ求める層 vs 実績・安心求める層)を理解すること。

問5:エフェクチュエーション vs コーゼーション

エフェクチュエーションとコーゼーションの意思決定論理の違いを説明し、各々が有効な環境を述べよ。

解答:コーゼーション=目標から逆算して手段を決める(目標ベース)。エフェクチュエーション=手持ち手段から何ができるか考える(手段ベース)。コーゼーションは環境が予測可能で目標が明確な場合に有効(既知事業)。エフェクチュエーションは不確実性が高く市場が未知の場合に有効(スタートアップ、新規事業)。

問6:OLIパラダイムと進出形態

ダニングのOLIパラダイムの3要素を説明し、各要素が揃わない場合の進出形態を述べよ。

解答:O=所有優位性(特許、ブランド),L=立地優位性(資源、労働力、市場規模),I=内部化優位性(自社内管理の有利性)。3つ全て揃えば海外直接投資、O+Iあるが L ないなら輸出、O あるが I ないならライセンス供与。

問7:国際戦略の4類型と適用段階

バートレット&ゴシャルの国際戦略4類型と、企業がいつどの戦略に移行するかを述べよ。

解答:インターナショナル(低統合・低適応)→初期段階で本国製品をそのまま展開。市場成熟に伴い、規模の経済を狙えばグローバル戦略(高統合),各国ニーズ差が大きければマルチドメスティック戦略(高適応)に分岐。成熟企業はトランスナショナル戦略(高統合・高適応)で複数地域の知識を活用。

問8:ネットワーク効果と勝者総取り(WTA)

プラットフォーム市場で「勝者総取り」が起きるのはなぜか。またWTAが緩和される条件は何か。

解答:ネットワーク効果(特に間接ネットワーク効果)とスイッチングコストが高いため、先行者が規模で優位になると後発は追い付けず1社支配になる。WTA緩和条件:マルチホーミング傾向が強い(複数プラットフォーム並用が当たり前)場合、複数企業が共存可能になる。例:YouTubeとTikTok、NetflixとPrimeVideo。


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