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財務・会計(平成25年度)

平成25年度(2013)中小企業診断士第1次試験 財務・会計の全23問解説

概要

平成25年度(2013)の財務・会計は 全23問 です。ただし、第1問第5問第20問 がそれぞれ2設問なので、公式正答表に並ぶ正答数は 26件 あります。旧原稿は 25問 前提で組み直されており、途中からテーマと正答がずれていました。

この年度は、前半で伝票式会計、剰余金処分、株主資本等変動計算書、財務分析を押さえ、中盤でのれん、CVP、標準原価計算、仕掛品評価を処理し、後半でリース、WACC、ペッキングオーダー仮説、回収期間法、ベータ、為替ヘッジ、オプションまで問う構成です。設問の切り分け計算式をどこで使うか を落とさないことが得点の鍵になります。

問題文は J-SMECA 試験問題ページ から、正答は 平成25年度 一次試験正答 PDF を参照してください。

簿記・会計基礎

第1問 伝票式会計

問題要旨: 伝票式会計の基本ルールと、伝票から売掛金残高を追う設問である。

設問1 伝票式会計の説明

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同

正解: ア

必要知識: 帳簿体系と伝票式会計 — 売上伝票、仕入伝票、振替伝票、仕訳日計表

解法の思考プロセス:

売上戻りは、売上取引の修正なので売上伝票で処理します。また、伝票式会計では伝票が仕訳帳の役割を代替するため、通常の仕訳帳は使いません。したがって ab が正しい組み合わせです。

一方で、

  • c: 仕訳日計表には売上伝票や仕入伝票の集計額を載せる
  • d: 補助簿は仕訳日計表ではなく各伝票を基礎に記入する

ので誤りです。

誤答の落とし穴:

  • 仕訳帳を使わない集計しない を同じ意味で読んでしまう
  • 補助簿の記入元を 仕訳日計表 だと思い込む

学習アドバイス:

伝票式会計は、各伝票で細かく記録し、仕訳日計表で合計する という流れで覚えると整理しやすくなります。

設問2 売掛金勘定の本日残高

K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: ウ(100,000円)

必要知識: 帳簿体系と伝票式会計 — 売掛金に影響する伝票だけを拾う

解法の思考プロセス:

昨日の売掛金残高は借方 120,000円 です。今日の伝票のうち売掛金を動かすものだけを反映します。

  • A店からの入金: -60,000
  • B店への売上: +50,000
  • C店への売上: +70,000
  • B店売掛金の受取手形化: -80,000

したがって、

120,000 - 60,000 + 50,000 + 70,000 - 80,000 = 100,000

です。

誤答の落とし穴:

  • 受取手形(B店) 70,000円 を売掛金回収と決めつけて二重に引く
  • 買掛金や裏書手形の振替伝票まで足し込んでしまう

学習アドバイス:

勘定残高問題は、まず どの勘定を増減させる伝票か を仕訳ベースで切ってください。関係ない伝票を消すだけで事故が減ります。


第2問 利益準備金

問題要旨: 配当時に積み立てるべき利益準備金の最低額を会社法ルールで判定する。

K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-B 条件見落とし

正解: イ(50千円)

必要知識: 純資産区分と法定準備金 — 資本準備金と利益準備金

解法の思考プロセス:

会社法では、配当額の10分の1を利益準備金として積み立てます。ただし、資本準備金 + 利益準備金 が資本金の4分の1に達していれば不要です。

この問題では、

  • 資本金の4分の1: 15,000 × 1/4 = 3,750
  • 既存の準備金合計: 2,200 + 1,500 = 3,700

なので不足額は 50 です。配当2,000の10分の1は 200 ですが、必要なのは不足分だけなので 50千円 です。

誤答の落とし穴:

  • 配当額の10分の1である 200千円 をそのまま答えてしまう
  • 資本準備金 を合計に入れ忘れる

学習アドバイス:

この論点は、まず準備金合計が1/4に届いているかを確認する と安定します。配当額の10分の1はその次です。


第3問 株主資本等変動計算書

問題要旨: 株主資本等変動計算書から当期末純資産合計を求める。

K2 因果メカニズム T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: エ(64,500千円)

必要知識: 純資産の増減 — 配当と当期純利益

解法の思考プロセス:

純資産合計を見るなら、別途積立金への振替のような 純資産内部の振替 は無視できます。効くのは 配当当期純利益 です。

  • 前期末純資産合計: 60,900
  • 剰余金の配当: -6,000
  • 当期純利益: +9,600

よって、

60,900 - 6,000 + 9,600 = 64,500

です。

誤答の落とし穴:

  • 別途積立金の積み立てを純資産の増加だと見て足してしまう
  • 利益剰余金の一部科目だけを追って、合計列を見失う

学習アドバイス:

株主資本等変動計算書は、外へ出たか、外から入ったか を見ると速いです。配当は外へ出る、当期純利益は中へ入る、と整理してください。


第4問 現金同等物

問題要旨: キャッシュ・フロー計算書における現金同等物に含まれる短期投資を選ぶ。

K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同

正解: エ(c と d)

必要知識: 現金および現金同等物 — 取得日から満期まで3か月以内、価格変動リスクが小さい

解法の思考プロセス:

現金同等物に含まれる 短期投資 は、満期が短く、価格変動リスクが小さいものです。該当するのは コマーシャル・ペーパー定期預金 です。

一方で、

  • 株式
  • 株式投資信託

は価格変動リスクが大きく、現金同等物に入りません。また 普通預金 は現金そのものであり、問題文が問う 短期投資 とは切り分けます。

誤答の落とし穴:

  • 普通預金 を見て何でも現金同等物の組み合わせに入れてしまう
  • 満期の短さだけで株式投資信託も入れてしまう

学習アドバイス:

現金同等物は 短期 だけでは足りません。すぐ現金化でき、価格がほぼ動かない まで確認してください。


第5問 財務分析

問題要旨: 同じ財務諸表データから、収益性と安全性の変化をそれぞれ判定する。

設問1 収益性の動向

K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス

正解: ア

必要知識: 収益性と効率性 — 総資本営業利益率、売上高営業利益率、総資本回転率

解法の思考プロセス:

まず比率をそれぞれ計算します。

  • 総資本営業利益率
    • X1: 30,000 / 130,000 ≒ 23.1%
    • X2: 18,000 / 120,000 = 15.0%
    • 悪化
  • 売上高営業利益率
    • X1: 30,000 / 180,000 ≒ 16.7%
    • X2: 18,000 / 170,000 ≒ 10.6%
    • 悪化
  • 総資本回転率
    • X1: 180,000 / 130,000 ≒ 1.38回
    • X2: 170,000 / 120,000 ≒ 1.42回
    • 改善

したがってアです。

誤答の落とし穴:

  • 売上高が少ししか減っていないので売上高営業利益率も改善と誤読する
  • 総資本回転率で 売上高 / 資本 を逆にしてしまう

学習アドバイス:

財務分析は 利益率回転率 を別物として見てください。利益率が悪化しても、資産効率は改善することがあります。

設問2 安全性の動向

K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス

正解: ア

必要知識: 安全性分析 — 流動比率、固定長期適合率、負債比率

解法の思考プロセス:

安全性指標も順番に計算します。

  • 流動比率
    • X1: 35,000 / 16,000 ≒ 218.8%
    • X2: 29,000 / 15,000 ≒ 193.3%
    • 悪化
  • 固定長期適合率
    • X1: 95,000 / (86,000 + 28,000) ≒ 83.3%
    • X2: 91,000 / (85,000 + 20,000) ≒ 86.7%
    • 悪化
  • 負債比率
    • X1: (16,000 + 28,000) / 86,000 ≒ 51.2%
    • X2: (15,000 + 20,000) / 85,000 ≒ 41.2%
    • 改善

したがってアです。

誤答の落とし穴:

  • 固定長期適合率は 低いほど望ましい のに、数値上昇を改善と見てしまう
  • 負債総額が減っているのに、純資産も減ったから悪化と早合点する

学習アドバイス:

安全性指標は、上がればよい下がればよい が混ざります。固定長期適合率と負債比率は 低い方が安全 です。


第6問 のれん

問題要旨: 買収価格と時価純資産の差額から、のれんまたは負ののれんを判定する。

K2 因果メカニズム T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: イ(のれん100,000千円)

必要知識: のれんは 取得原価 - 被取得企業の時価純資産

解法の思考プロセス:

まず時価純資産を求めます。

  • 売掛金: 150,000
  • 棚卸資産: 450,000
  • 備品: 220,000
  • 負債: 300,000

したがって時価純資産は

150,000 + 450,000 + 220,000 - 300,000 = 520,000

です。買収価格は 620,000 なので、

620,000 - 520,000 = 100,000

のれん が生じます。

誤答の落とし穴:

  • 帳簿価額の純資産 800,000 をそのまま使ってしまう
  • 時価が下がっている資産を見て 負ののれん だと決めつける

学習アドバイス:

のれん問題は、必ず 時価に直した純資産 を先に作ってください。買収価格と帳簿純資産を直接比べると外します。

原価計算・管理会計

第7問 損益計算上の利益が増加する要因

問題要旨: 生産量、販売量、生産コストの変化が損益計算上の利益にどう効くかを問う。

K2 因果メカニズム T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: イ(a と c)

必要知識: 全部原価計算では、生産量が増えると固定製造間接費の一部が在庫へ繰り延べられる

解法の思考プロセス:

a は正しいです。生産コストが下がれば、販売条件が同じなら利益は増えます。

c も、損益計算上の利益 に限れば正しいです。全部原価計算では、生産量が増えると固定製造間接費の一部が棚卸資産に含まれ、当期費用にならない分だけ利益が増えます。

一方で、

  • b: 生産量減少は在庫への繰延額を減らしやすく、利益増加とはいえない
  • d: 販売量減少は通常、利益減少要因

です。

誤答の落とし穴:

  • 販売量生産量 を同じものとして読む
  • CVPの感覚だけで 生産量増加は利益に関係ない と判断する

学習アドバイス:

管理会計では、販売数量の論点棚卸資産に固定費が残る論点 を分けて考えるのが重要です。問題文に 損益計算上 とあれば全部原価計算を疑ってください。


第8問 安全余裕率

問題要旨: 変動費と固定費から損益分岐点売上高を出し、安全余裕率を求める。

K3 数式・公式 T3 計算実行 L1 Trap-E 計算ミス

正解: ア(10.0%)

必要知識: CVP分析と損益分岐点 — 安全余裕率

解法の思考プロセス:

変動費は

5,000 + 3,000 = 8,000

で、貢献利益は 20,000 - 8,000 = 12,000 です。したがって貢献利益率は

12,000 / 20,000 = 60%

です。

固定費は

9,000 + 800 + 1,000 = 10,800

なので、損益分岐点売上高は

10,800 / 0.6 = 18,000

です。安全余裕率は

(20,000 - 18,000) / 20,000 = 10%

となります。

誤答の落とし穴:

  • 一般管理費を変動費に混ぜる
  • 安全余裕額 2,000 をそのまま答えてしまう

学習アドバイス:

CVPは、変動費を引いて貢献利益率固定費をそれで割って損益分岐点最後に安全余裕率 の順が基本です。


第9問 労務費

問題要旨: 労務費に含まれない費目の組み合わせを選ぶ。

K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同

正解: イ(a と d)

必要知識: 原価要素の分類 — 材料費、労務費、経費

解法の思考プロセス:

労務費は 従業員に対する賃金・給料 です。

  • 外注加工賃 は外部への支払なので経費
  • 所得税預り金 は給与から天引きした預り金であり、労務費そのものではない

したがって a と d のイです。

雑給従業員賞与手当割増賃金 は従業員への支払いなので労務費に含まれます。

誤答の落とし穴:

  • 雑給 を雑費だと誤認する
  • 所得税預り金を給与支払の一部だから労務費と考える

学習アドバイス:

原価要素の分類では、誰に何の対価として払うか を見ると切りやすいです。従業員への対価なら労務費、それ以外なら経費を疑ってください。


第10問 材料数量差異

問題要旨: 標準原価計算で、当月の材料数量差異を求める。

K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: ア(不利差異30,000円)

必要知識: 原価差異分析 — 数量差異は 標準価格 × (実際数量 - 標準数量)

解法の思考プロセス:

この問題で大事なのは、材料は工程の始点で投入 され、しかも 月初仕掛品200単位 があることです。今月新たに材料投入された単位数は

当月完成品900 + 月末仕掛品300 - 月初仕掛品200 = 1,000単位

です。

標準では1単位あたり材料 3kg なので、標準数量は

1,000 × 3 = 3,000kg

です。実際消費量は 3,100kg なので、100kg多く使っています。したがって数量差異は

300円 × (3,100 - 3,000) = 30,000円

の不利差異です。

誤答の落とし穴:

  • 完成品900単位だけで標準数量を出してしまう
  • 月初仕掛品がすでに材料投入済みであることを落とす

学習アドバイス:

仕掛品がある標準原価問題では、今月どの単位に新たに材料を入れたか を先に出してください。ここを外すと数量差異は一気に崩れます。


第11問 期末仕掛品原価

問題要旨: 材料を始点投入する工程で、期末仕掛品原価を求める。

K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: ア(560千円)

必要知識: 総合原価計算 — 材料と加工費で完成度の扱いが違う

解法の思考プロセス:

当月投入800単位、月末仕掛品200単位なので、材料は工程始点投入ゆえ 800単位全部 に投入済みです。加工費の等価生産量は

完成品600 + 仕掛品200 × 0.5 = 700単位

です。

単位当たり原価は

  • 材料: 1,440 / 800 = 1.8千円
  • 加工費: 1,400 / 700 = 2.0千円

となります。したがって期末仕掛品原価は

200 × 1.8 + 200 × 0.5 × 2.0 = 360 + 200 = 560

千円です。

誤答の落とし穴:

  • 月末仕掛品200単位の加工費を100%で評価してしまう
  • 材料費も加工費も同じ等価生産量で割る

学習アドバイス:

総合原価計算は、材料の進捗加工の進捗 を分けるのが基本です。始点投入なら材料は100%、加工費だけ進捗度を掛けます。


第12問 現金増加要因

問題要旨: 現金が増える要因として最も不適切なものを選ぶ。

K2 因果メカニズム T1 正誤判定 L1 Trap-A 逆方向

正解: ア

必要知識: キャッシュフローの増減要因 — 資産・負債・純資産の変化と現金

解法の思考プロセス:

現金以外の流動資産の減少固定資産の減少負債の増加 は、一般に現金増加と結びつきやすい変化です。

これに対して 株主資本の減少 は、配当や自己株式取得のように 現金流出 と結びつくことが多く、現金増加要因としては最も不適切です。

誤答の落とし穴:

  • 純資産が減ると負担が減るから現金は増える、と感覚で読んでしまう
  • 固定資産減少を 減価償却 だけで考えてしまう

学習アドバイス:

この種の問題は、現金を直接受け取るか、現金を直接払うか をイメージすると切りやすいです。配当は典型的な現金流出です。

ファイナンス

第13問 ファイナンス・リース

問題要旨: ファイナンス・リースの性質と会計処理について、不適切な記述を選ぶ。

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同

正解: イ

必要知識: リース会計 — 所有権移転外ファイナンス・リース

解法の思考プロセス:

ファイナンス・リースでは、通常は借り手が中途解約できず、リース資産を借り手の貸借対照表に計上し、借り手側で減価償却も行います。したがってア、ウ、エは適切です。

誤りはイです。維持管理費用は原則として 借り手が負担 します。

誤答の落とし穴:

  • 貸し手所有の資産 という感覚で維持管理費も貸し手負担だと思ってしまう
  • オペレーティング・リースと混同する

学習アドバイス:

ファイナンス・リースは、会計上は 借りているが実質的には買っている に近い処理です。この感覚を持つと判断しやすくなります。


第14問 加重平均資本コスト

問題要旨: CAPMで株主資本コストを出し、税引後負債コストと加重平均する。

K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス

正解: ウ(7.8%)

必要知識: MM理論と資本コスト — WACC と CAPM

解法の思考プロセス:

まず株主資本コストをCAPMで求めます。

3% + 1.5 × (8% - 3%) = 10.5%

次に税引後負債コストは

4% × (1 - 0.4) = 2.4%

です。資本構成比は、負債 4/12、株主資本 8/12 なので、

WACC = 2.4% × 4/12 + 10.5% × 8/12 = 0.8% + 7.0% = 7.8%

となります。

誤答の落とし穴:

  • 負債コストを税引前4%のまま使う
  • CAPMで β × 市場収益率 として安全利子率を落とす

学習アドバイス:

WACCは 負債は税引後、株主資本はCAPM と分けて考えると崩れません。いきなり一式で計算せず、部品を先に作ってください。


第15問 ペッキングオーダー仮説

問題要旨: ペッキングオーダー仮説で優先される資金調達順序を問う。

K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同

正解: エ

必要知識: 資本構成理論 — ペッキングオーダー仮説

解法の思考プロセス:

ペッキングオーダー仮説では、情報の非対称性を踏まえ、企業は

  1. 内部資金
  2. 負債
  3. 株式発行

の順で調達を好むと考えます。したがって、Aは 内部留保、Bは デット・ファイナンス です。

誤答の落とし穴:

  • 企業間信用 を内部資金と誤認する
  • 株式発行の方が安全だから先に選ばれると考える

学習アドバイス:

この論点は、まず社内のお金、次に借金、最後に新株 と日本語で覚えると速いです。


第16問 埋没原価

問題要旨: 将来の意思決定に無関連な原価を選ぶ。

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同

正解: エ

必要知識: 埋没原価は、すでに発生して回収できないため、将来の選択で変わらない原価

解法の思考プロセス:

将来の選択を変えても金額が変わらないなら、意思決定には無関係です。これに当たるのが 埋没原価 です。

機会原価は意思決定で失う便益なので関連原価ですし、限界原価も生産量選択に関わるので関連原価です。

誤答の落とし穴:

  • すでに支払ったから重要 と考えてしまう
  • 機会原価と埋没原価を反対に覚える

学習アドバイス:

意思決定会計では、これから変わるか が軸です。過去に使ったお金は、惜しくても意思決定から切り離します。


第17問 投資評価手法

問題要旨: NPV以外の投資評価手法と、経営の柔軟性を評価するアプローチを問う。

K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同

正解: エ

必要知識: 投資評価指標 — IRR、回収期間法、リアル・オプション

解法の思考プロセス:

NPVの代替的手法として代表的なのは 内部収益率法(IRR) です。また、不確実性下での経営の柔軟性を評価する手法は リアル・オプション・アプローチ です。したがってエです。

誤答の落とし穴:

  • 線形計画法を投資評価指標だと読んでしまう
  • マーケット・アプローチを投資案評価の柔軟性評価と混同する

学習アドバイス:

投資評価は、NPV / IRR / 回収期間 / 会計的利益率 が基本の並びです。リアル・オプションはその発展形として覚えると位置づけしやすくなります。


第18問 回収期間法

問題要旨: 税金と減価償却を織り込みつつ、目標回収期間を満たす最低年間コスト低減額を求める。

K4 手続・手順 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス

正解: エ(1,900万円)

必要知識: 回収期間法 — 税後キャッシュフローと減価償却の節税効果

解法の思考プロセス:

問題文の条件では、取得原価 4,500万円3年 で回収したいので、必要な年間税後キャッシュフローは

4,500 / 3 = 1,500万円

です。

また、設備の経済命数は 5年 なので、減価償却費は毎年

4,500 / 5 = 900万円

です。年間のコスト低減額を S とすると、税後キャッシュフローは

S × (1 - 0.4) + 900 × 0.4

すなわち

0.6S + 360

万円です。これが1,500万円以上になればよいので、

0.6S + 360 = 1,500

0.6S = 1,140

S = 1,900

万円です。

誤答の落とし穴:

  • 税金を無視して 4,500 / 3 = 1,500 をそのまま答えてしまう
  • 減価償却費を現金流出だと思って差し引いてしまう

学習アドバイス:

回収期間法で税金が出たら、税後の営業効果 + 減価償却の節税効果 で年次キャッシュフローを作るのが安全です。


第19問 リスク回避者の無差別曲線

問題要旨: 期待収益率と標準偏差の平面上で、リスク回避者の無差別曲線の形を選ぶ。

K2 因果メカニズム T2 分類判断 L2 Trap-D 類似混同

正解: ア

必要知識: ポートフォリオ理論 — リスク回避と無差別曲線

解法の思考プロセス:

リスク回避者は、同じ満足度を保つために リスクが高くなるほど、それに見合うより高い期待収益率 を要求します。したがって無差別曲線は

  • 右上がり
  • リスクが大きくなるほど傾きが急になる

形になります。これに当たるのがアです。

誤答の落とし穴:

  • 右下がりの曲線を選んでしまう
  • 直線でもよいと考えて、リスク回避の強まりを落とす

学習アドバイス:

無差別曲線は、より危険なら、もっと見返りが要る という日本語に直すと判断しやすいです。


第20問 DOEとPER

問題要旨: 与えられた倍率指標から、DOEとPERを求める。

設問1 自己資本配当率(DOE)

K3 数式・公式 T3 計算実行 L1 Trap-E 計算ミス

正解: ア(3.6%)

必要知識: 倍率評価 — DOE = ROE × 配当性向

解法の思考プロセス:

DOEは

当期配当額 / 自己資本

ですが、これは

ROE × 配当性向

と同じです。したがって

10% × 36% = 3.6%

でアです。

誤答の落とし穴:

  • 自己資本比率60%も掛けてしまう
  • 配当利回り5%をDOEと取り違える

学習アドバイス:

DOEは ROEのうち何割を配当に回すか と覚えると、式変形なしでも切れます。

設問2 PER

K3 数式・公式 T3 計算実行 L1 Trap-E 計算ミス

正解: ウ(12倍)

必要知識: 倍率評価PBR = PER × ROE

解法の思考プロセス:

倍率の基本関係

PBR = PER × ROE

を使うと、

PER = PBR / ROE = 1.2 / 0.10 = 12

倍です。

誤答の落とし穴:

  • ROE10%を 10 として割ってしまう
  • PBRとPERの定義を逆に覚えている

学習アドバイス:

倍率問題では、PBR = PER × ROE を1本持っておくと一気に速くなります。財務会計でも企業価値評価でも使います。


第21問 ベータ値

問題要旨: ベータ値に関する説明のうち、最も不適切なものを選ぶ。

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同

正解: ア

必要知識: CAPMとベータ値 — ベータ値はシステマティック・リスクの感応度

解法の思考プロセス:

ベータ値は、市場全体の動きに対する個別証券の感応度を表す指標で、システマティック・リスク に関わります。したがってイ、ウ、エは適切です。

誤りはアです。アは アンシステマティック・リスクを測る値 としており、ベータの説明になっていません。

誤答の落とし穴:

  • 収益率の変動 という言葉だけで何でもベータと結びつける
  • システマティックとアンシステマティックの区別が曖昧

学習アドバイス:

ベータは 市場が1動いたときに、その証券が何動くか です。分散投資で消えるリスクまでは測りません。


第22問 輸入企業の為替ヘッジ

問題要旨: 将来ドル支払いがある輸入企業が取るべき為替ヘッジを問う。

K2 因果メカニズム T2 分類判断 L1 Trap-A 逆方向

正解: イ

必要知識: デリバティブと為替ヘッジ — 将来の外貨支払いには外貨買いで備える

解法の思考プロセス:

輸入企業は、将来 ドルを支払う側 です。怖いのは円安で、将来ドルを高く買わされることです。したがって今のうちに ドル買いの為替予約 をして、将来の購入レートを固定するのが自然です。

誤答の落とし穴:

  • 為替ヘッジだから売買を逆にする と感覚で反転させる
  • コール・オプション売りを保険だと誤認する

学習アドバイス:

外貨ヘッジは、まず 将来その通貨を受け取るのか、支払うのか を確認してください。支払うなら その通貨を買う 方向で考えます。


第23問 現物株買いとプット買いの組み合わせ

問題要旨: 現物株の買いとプット・オプションの買いを組み合わせた戦略の損益図を選ぶ。

K2 因果メカニズム T2 分類判断 L2 Trap-D 類似混同

正解: ウ

必要知識: オプション戦略 — 保護的プット

解法の思考プロセス:

この組み合わせは 保護的プット です。

  • 株価が権利行使価格 X より低くなると、プットを行使できるので損失が一定水準で下げ止まる
  • 株価が X より高ければプットは使わず、現物株の買いポジションと同じく右上がりになる

したがって、左側で損失が限定され、右側で上昇余地を残す 図が正解であり、ウが該当します。

誤答の落とし穴:

  • 株買い + プット買い をコール買いと同じ形だと思ってしまう
  • 左側が一直線で下がり続ける図を選んでしまう

学習アドバイス:

オプション図形は、まず単体の形を思い出し、次に 下値保険を付けた株 と日本語に直してください。保護的プットは 下は守って上は取りに行く 形です。

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