経営法務(令和7年度)
令和7年度(2025)中小企業診断士第1次試験 経営法務の全25問解説
概要
令和7年度の経営法務は全25問で出題されました。会社法(株主総会・監査役・譲渡制限株式)、商法(約定・契約)、民法(保証・消費貸借・遺言・証拠)、知的財産法(著作権・特許法・意匠法)、特殊法(独占禁止法・消費者保護法・個人情報保護法・労働法)という構成です。
問題文は J-SMECA 公式サイト(令和7年度 経営法務) から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。
解説の読み方
各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。
出題構成
| 領域 | 問番号 | 問数 |
|---|---|---|
| 会社法(株主総会・定款・特別決議) | 1〜4 | 4 |
| 会社法(監査役・定款規定) | 3 | 1 |
| 会社法(譲渡制限株式・みなし承認) | 4 | 1 |
| 商法(約定・支払期限) | 5〜6 | 2 |
| 商法(仲裁条項・準拠法) | 8 | 1 |
| 民法(保証・連帯責任) | 17〜18 | 2 |
| 民法(消費貸借・物の瑕疵) | 19〜20 | 2 |
| 民法(遺言・証拠) | 21〜22 | 2 |
| 知的財産(著作権・二次著作物) | 14〜15 | 2 |
| 知的財産(商標法) | 11 | 1 |
| 知的財産(意匠法) | 12 | 1 |
| 知的財産(ハーグ協定) | 13 | 1 |
| 不正競争防止法(営業秘密・商品表示) | 11 | 1 |
| 独占禁止法 | 16 | 1 |
| その他法律(工業所有権・特許第35条) | 9〜10 | 2 |
全問分類マップ
| 問 | テーマ | 知識種類 | 思考法 | 形式層 | 罠パターン |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 株主総会の決議権と特別利益関係 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 条件読み違い |
| 2 | 取締役会の決議定義と関与条件 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-C 部分正解 |
| 3 | 監査役の職務と定款の定めによる制限 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-B 要件緩和読み |
| 4 | 譲渡制限株式の承認機関とみなし承認制度 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-A 拡張解釈 |
| 5 | 合同会社の定款変更と解散手続 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 条件読み違い |
| 6 | X株式会社の支払期限と子会社設立 | K4 手続・手順 | T4 条件整理 | L2 | Trap-B 複数論点統合 |
| 7 | 商法下請法の支払期限と利息制限 | K5 制度・基準 | T5 穴埋め推論 | L2 | Trap-D 理由認識 |
| 8 | 海外企業との仲裁・準拠法条項 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-C 部分正解 |
| 9 | 特許法35条の職務発明と相当対価 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-B 要件見落とし |
| 10 | 特許権の補償金請求の法的根拠 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 権利認識 |
| 11 | 不正競争防止法の商品表示と商標保護 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-E 法律混同 |
| 12 | 意匠登録の実体的条件とワインボトル形状 | K5 制度・基準 | T2 分類判断 | L2 | Trap-A 形状誤認 |
| 13 | ハーグ協定による意匠保護の多国間確保 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-D 要件認識 |
| 14 | 著作権法46条の美術著作物と複製権 | K5 制度・基準 | T2 分類判断 | L2 | Trap-C 権利範囲 |
| 15 | 著作権27・28条の二次著作物と著作権移転 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-B 権利帰属 |
| 16 | 独占禁止法による企業責任と罰則 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 認識誤り |
| 17 | 連帯保証と個別交渉権の有無 | K4 手続・手順 | T4 条件整理 | L2 | Trap-A 権利誤認 |
| 18 | 保証と主たる債務の消滅 | K4 手続・手順 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 要件誤認 |
| 19 | 消費貸借の返済完成と目的物喪失 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-C 物と金銭混同 |
| 20 | 注文者による瑕疵通知の効力 | K4 手続・手順 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-A 期間制限 |
| 21 | 遺言の効力と通知義務 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-B 方式要件 |
| 22 | 遺留分と被相続人兄弟姉妹 | K4 手続・手順 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 相続人範囲 |
| 23 | 製造物責任法と製造事業者の責任 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-A 責任主体誤認 |
| 24 | 裁判所の給付訴訟と調停の関係 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 手続限界 |
| 25 | 特許法35条の職務発明と補償 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-B 適用範囲 |
思考法の分布
| 思考法 | マーク数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| T1 正誤判定 | 20 | 80% | 1, 2, 3, 4, 5, 8, 9, 10, 11, 13, 15, 16, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25 |
| T2 分類判断 | 2 | 8% | 12, 14 |
| T4 条件整理 | 2 | 8% | 6, 17 |
| T5 穴埋め推論 | 1 | 4% | 7 |
経営法務は正誤判定(T1)が80%で圧倒的。知識系科目であり、制度・基準の理解が不可欠です。
形式層の分布
| 形式層 | マーク数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| L1 基礎知識 | 11 | 44% | 1, 2, 5, 10, 16, 18, 19, 20, 21, 22, 24, 25 |
| L2 応用理解 | 14 | 56% | 3, 4, 6, 7, 8, 9, 11, 12, 13, 14, 15, 17, 23 |
L1(基礎知識)だけで取れるのは最大44点。合格ライン60点を超えるにはL2(応用理解)での理解が必須です。
罠パターンの分布
| 罠パターン | マーク数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| Trap-A 拡張・誤認 | 3 | 12% | 4, 12, 17, 20, 23 |
| Trap-B 要件・権利誤認 | 5 | 20% | 3, 9, 13, 15, 21, 25 |
| Trap-C 部分正解・権利範囲 | 2 | 8% | 2, 11, 14, 19 |
| Trap-D 条件・概念読み違い | 10 | 40% | 1, 5, 7, 8, 10, 13, 16, 18, 22, 24 |
| Trap-E 法律混同 | 1 | 4% | 11 |
Trap-D(条件・概念読み違い)が40%で最大の失点要因。制度の細かい要件を確認する必要があります。
会社法
問1 株主総会の決議権と特別利益関係
問題要旨
株主総会における決議権行使の制限に関する記述として最も適切なものはどれか。特別の利益関係にある株主について、会社法が定める規制を理解する問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-D
正解
エ
必要知識
株主総会の決議において、特別の利害関係を有する株主が議決権を行使した結果として著しく不当な決議がなされた場合、決議取消しの訴え(会社法831条1項3号)の対象となりうる。なお、会社法上は特別利害関係株主の議決権行使を一般的に禁止する規定は存在せず、取締役会決議で特別利害関係取締役を除外する規定(会社法369条2項)とは異なる扱いである。
解法の思考プロセス
- 特別な利益関係の有無を確認する
- 議決権行使が可能か不可か、その条件を整理する
- 事業譲渡の場合は会社分割とは異なることを確認する
誤答の落とし穴
- イ:特別な利益関係があっても、事業譲渡では全株主が議決権を行使できる(会社分割と異なる)
- ウ:非公開会社であっても事業譲渡では反対株主の議決権行使は認められない
- エ:定款で定めることにより、書面による議決権行使で定款の変更が可能になるという誤解
学習アドバイス
会社法の特別決議には「種類株主総会決議」「普通株主総会決議」などがあり、それぞれ異なる要件で規制される。第327条の「特別な利益関係」は取締役選任に限定される点を覚えておくこと。
問2 取締役会の決議定義と関与条件
問題要旨
取締役会の決議定義について、最も適切なものはどれか。特別な関与条件と決議成立の要件を区別する問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-C
正解
イ
必要知識
取締役会の決議は、取締役全員の合意またはいずれかの取締役会開催要件(招集通知など)を満たした場合に成立する。ただし、定款で法定要件より厳格な要件を定めることはできない。
解法の思考プロセス
- 「決議が成立する」条件と「決議が有効である」条件を区別する
- 定款による上乗せ規制が可能か確認する
- 招集手続きの不備と決議成立の関係を整理する
誤答の落とし穴
- ア:会社分割の場合は別途の定款規定が必要だが、決議成立要件そのものではない
- ウ:非公開会社であっても定款で定める場合は別途手続きが必要
- エ:定款規定により、書面による決議権行使で定款変更が可能になるわけではない
学習アドバイス
取締役会決議の成立要件(必要定足数と承認要件)と、決議後の相互協力義務は別の問題。取締役会の決議方法は会社法369条で定められており、特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができない(同条2項)。招集手続については会社法368条で規定されており、招集通知を欠く瑕疵がある場合の決議の効力は判例により判断される点が重要。
問3 監査役の職務と定款による制限
問題要旨
監査役の職務について、定款が制限できる範囲として最も適切なものはどれか。監査役の法定権限と定款による変更の限界を問う。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 応用理解 | Trap-B
正解
エ
必要知識
監査役の権限の大部分は法定であり、定款では緩和や制限ができない。ただし、会社の大きさなどの実情に応じて、定款で限定的な変更を許容する規定がある場合がある。一般的には監査役の職務は定款で実質的に制限できないと考える。
解法の思考プロセス
- 監査役の権限が法定権限か定款可変権限かを整理する
- 定款で権限を縮小できる範囲を確認する
- 企業規模や形態による例外を検討する
誤答の落とし穴
- ア:監査役の職務は定款で完全に制限できない
- イ:子会社の監査役を兼ねることについては親会社と別基準の判断が必要
- エ:取締役会の同意がなくても監査役は独立した権限行使ができる
学習アドバイス
会社法381条以下で監査役の権限(調査権、報告請求権、意見陳述権)が定められており、これらは原則として定款で制限できない。ただし中小企業や特殊な組織形態では例外があることを意識する。
問4 譲渡制限株式の承認機関とみなし承認制度
問題要旨
譲渡制限株式の譲渡承認手続きについて、最も適切なものはどれか。みなし承認制度と定款変更の要件を区別する問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 応用理解 | Trap-A
正解
イ
必要知識
会社法136条〜145条に定める譲渡制限株式の承認手続きについて、株主から譲渡承認請求を受けた会社は、2週間(定款で短縮可)以内に承認するか否かを通知しなければならない(会社法145条)。この期間内に通知をしなかった場合は、承認したものとみなされる(みなし承認制度)。なお、公開会社が全株式に譲渡制限を設ける定款変更には、株主総会の特別決議が必要であり(会社法309条2項11号)、「総株主の同意」は要件とされていない。
解法の思考プロセス
- 譲渡制限株式の承認機関(取締役会設置会社では取締役会、それ以外は株主総会が原則)を確認する
- みなし承認制度の発動条件(2週間以内の不通知)を整理する
- 全株式への譲渡制限を設ける定款変更の要件(特別決議)を確認する
誤答の落とし穴
- ア:全株式に譲渡制限を設ける定款変更には「総株主の同意」ではなく「特別決議」が必要(要件の誤認)
- ウ:相続により取得した株式についても、定款で売渡請求規定(会社法174条)を設けることで会社が買い取れる場合があるが、相続自体は会社の承認不要
- エ:取締役会設置会社でも、定款の定めにより株主総会を承認機関とすることができる(会社法139条1項ただし書)
学習アドバイス
譲渡制限株式は閉鎖会社における所有者構成管理の重要な制度。みなし承認制度(2週間以内の不通知で承認みなし)は試験頻出。会社法136条〜145条の承認手続きフローと、定款変更時の特別決議要件を合わせて整理することが重要。
問5 合同会社の定款変更と解散手続
問題要旨
合同会社の定款変更と解散手続について、最も適切なものはどれか。定款変更の要件と解散後の手続きを区別する問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-D
正解
ウ
必要知識
合同会社の定款変更には全社員の同意が必要である。法人が業務執行社員である場合、別の法人を業務執行者として選任することはできない。
解法の思考プロセス
- 合同会社の定款変更の要件を確認する
- 社員と業務執行社員の関係を整理する
- 外部者の業務執行社員への昇格可能性を検討する
誤答の落とし穴
- イ:労務や信用を出資する社員が業務執行社員になることができる
- ウ:新たな社員が加入する場合、既存社員の同意が必要だが全員同意は不要な場合もある
- エ:合同会社は法人が代表社員になることも可能(個人のみに限定されない)
学習アドバイス
合同会社は定款の自由度が高い一方で、社員の権限と責任が個人有限責任社員よりも重い。定款変更の手続きと実際の業務執行の関係を理解することが重要。
商法・契約法
問6 X株式会社の支払期限と子会社設立
問題要旨
X株式会社と中小企業診断士が関わる支払期限と子会社設立の要件について、最も適切なものはどれか。複数の法的論点を統合して判断する問題。
分類タグ
K4 手続・手順 | T4 条件整理 | L2 応用理解 | Trap-B
正解
ア
必要知識
商人の売買契約では、特別な定めがない限り支払期限の定めについて、受領から60日以内で行わなければならない。会社分割と事業譲渡では異なる要件がある。
解法の思考プロセス
- 商人間の売買契約の支払期限規定を確認する
- 会社分割による新設と既存子会社への業務移転の手続きを整理する
- 定款の変更が必要な場合と不要な場合を区別する
誤答の落とし穴
- ア:支払期限が60日を超える契約も可能だが、商法では「短期間内に行うこと」が前提
- イ:下請法の適用範囲外での時間制限は商法の原則より柔軟な場合がある
- ウ:資産規模からすると簡易手続きが可能でも、定款には特別な定めが必要な場合がある
学習アドバイス
商法の支払期限に関する規定は複雑で、例外が多い。下請法との併存適用や、定款による特約との関係を整理することが合格への近道。
問7 商法下請法の支払期限と利息制限
問題要旨
商法上の受領から支払までの期限規定について、下請法との関係で最も適切なものはどれか。支払期限と利息制限の両面を問う問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T5 穴埋め推論 | L2 応用理解 | Trap-D
正解
ウ
必要知識
商法の規定では、親企業が下請事業者の発注から60日以内に支払わなければならないとされている。ただし、親企業が下請事業者に対して不当な利息を付けることは禁止される。
解法の思考プロセス
- 支払期限の法定期間を確認する
- 親企業が下請事業者に対する不当な利益供与の禁止を理解する
- 利息制限法との区別を正確にする
誤答の落とし穴
- ア:下請法では支払期限の明記が必須であり、デフォルト期間は暗黙の了解では効力がない
- イ:親企業の販売実績に依存する時間制限は下請法では認められない可能性がある
- ウ:親企業が強制的に延長できる権限は下請法では禁止されている
学習アドバイス
下請法と商法が相互に影響する領域では、より厳しい規制が優先される。親企業の義務と下請事業者の保護が中心的なテーマ。
問8 海外企業との仲裁・準拠法条項
問題要旨
海外企業との契約における仲裁条項と準拠法の定め方について、最も適切なものはどれか。国際商事仲裁と国内法域選択の関係を理解する問題。
分類タグ
K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L2 応用理解 | Trap-C
正解
ウ
必要知識
国際商事仲裁では日本商事仲裁協会(JCAA)の仲裁規則を適用する場合、仲裁地を東京に指定することで日本法の適用が可能となる。仲裁手続きは英語で行われることが多い。
解法の思考プロセス
- 仲裁条項の有効性を確認する
- 準拠法の選択肢を整理する
- 仲裁地と準拠法の関係を理解する
誤答の落とし穴
- ア:仲裁条項では国内裁判所への訴訟提起ができなくなることを認識すること
- イ:判断内容が不確かなときは裁判所に訴える権利が制限される可能性がある
- エ:仲裁地が日本国内であれば、日本語での実施が求められる場合が多い
学習アドバイス
国際商事仲裁は複雑な制度であり、UNCITRAL仲裁規則と各国の仲裁法が共存している。特に準拠法の選択(法律選択)と仲裁地の選択(地域選択)を区別することが重要。
知的財産法
問9 特許法35条の職務発明と相当対価
問題要旨
特許法35条における職務発明について、相当対価の額決定に関する記述として最も適切なものはどれか。職務発明時の契約と後発事象の関係を問う問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 応用理解 | Trap-B
正解
ウ
必要知識
特許法35条の職務発明では、従業者が発明した場合、使用者は特許を受ける権利を取得する。相当対価の額は、従業者が特許出願時に「その発明の対価」として当初に取り決めた額があれば、それに従う。定めがない場合は、その発明から生じた利益を考慮して算定される。
解法の思考プロセス
- 職務発明の定義(従業者が職務に属する発明)を確認する
- 相当対価の決定時点を整理する
- 当初契約と後発事象の優先順位を判定する
誤答の落とし穴
- イ:使用者が新たに他の発明者に対して対価を支払っても、当初契約の金額を超える対価は請求できない
- ウ:使用者が当初の対価契約に基づいて登録しても、後になって特許の価値が上昇した場合の追加対価請求は原則として認められない
- エ:業務上の地位や給与に含まれるという約定がされていても、特許35条の対価請求権そのものは残される
学習アドバイス
特許法35条は改正が繰り返されており、現在は「当初に定めた相当の利益があれば優先」という新ルール(平成27年〔2015年〕改正、平成28年4月1日施行)が適用される。試験年度の改正内容を確認すること。
問10 特許権の補償金請求の法的根拠
問題要旨
特許権者が補償金請求権を行使する際の法的根拠として、最も適切なものはどれか。特許35条の補償金請求権の存在要件を理解する問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-D
正解
ア
必要知識
特許法35条に基づく補償金請求権は、従業者が職務発明の特許化によって利益を得ない場合(使用者が特許を実施しない場合など)に、従業者が使用者に対して「相当な対価」の支払いを請求する権利である。この権利の行使は当該特許が登録されてはじめて意味を持つ。
解法の思考プロセス
- 補償金請求権の主体と客体を確認する
- 請求権が発生する時点(登録時点か発明時点か)を整理する
- 請求可能な相手(使用者に限定か、第三者も含むか)を判定する
誤答の落とし穴
- ア:出願公開時点では補償金請求権は生じない
- イ:特許権者であっても登録されていなければ請求権がない
- ウ:子会社が独立して特許取得した場合、親企業への請求は原則できない
学習アドバイス
特許法35条の相当の利益請求権の消滅時効は、旧民法下では10年、令和2年施行の改正民法では「権利行使できると知った時から5年」または「権利発生時から10年」の短い方が適用される。また金額算定が困難な場合が多い。実務での紛争を念頭に置きながら、法的根拠を押さえること。
問11 不正競争防止法の商品表示と商標保護
問題要旨
不正競争防止法が保護する「商品表示」と商標法による保護の範囲について、最も適切なものはどれか。両者の関係と限界を問う問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 応用理解 | Trap-E
正解
ウ
必要知識
不正競争防止法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示(商品・サービスの名称、容器の形状など)と同一または類似の表示を使用し、その者の商品・営業と混同を生じさせる行為(周知表示混同惹起行為)を不正競争と定めている。商標法上の登録商標でなくても、周知性を獲得した商品等表示は独立した保護対象となる。
解法の思考プロセス
- 不正競争防止法の保護対象「商品表示」を確認する
- 営業秘密との重複保護(ダブルカウント)を避ける
- 商標法の保護範囲との棲み分けを理解する
誤答の落とし穴
- イ:営業秘密としての地位を失っても、商品表示は独立して保護される
- ウ:商品の形状が立体商標として登録されなくても、商品表示として保護される場合がある
- エ:営業秘密漏洩に該当しない商品表示についても不正競争防止法の保護を受ける
学習アドバイス
不正競争防止法は商標法よりも広い保護を提供できる場合がある。特に商品の容器・包装の形状や色彩組合せなど、商標登録が困難な要素についても保護されることを意識する。
問12 意匠登録の実体的条件とワインボトル形状
問題要旨
意匠登録において、ワインボトルの形状が登録要件を満たすかについて、最も適切なものはどれか。意匠の新規性と業界慣行の関係を問う問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T2 分類判断 | L2 応用理解 | Trap-A
正解
ア
必要知識
意匠法の保護対象は「物品の形状、色彩、模様、その他の視覚的特性」である。ワインボトルは長年の業界慣行により標準的な形状が確立されているため、単なる外観の改変では新規性を欠く可能性がある。ただし、普通では想定されない革新的な形状変更の場合は登録される可能性がある。
解法の思考プロセス
- 意匠の新規性(先行意匠との比較)を判定する
- 業界の標準的形状との差異を評価する
- 視覚的変化が実質的か形式的かを区別する
誤答の落とし穴
- ア:形状が業界標準と異なっていても、その差異が視覚的に明白でなければ登録不可
- イ:意匠登録では商標とは異なり、文字や紋様より物理的な形状が主要な評価対象
- ウ:用途が装飾品ではなく実用品(ワイン容器)である場合でも意匠法の保護対象となる
学習アドバイス
意匠法における「新規性」は、先行する同一物品との比較だけでなく、業界内での一般的な慣行や先例との関係でも判断される。形状の「創造性」と「視覚的特異性」の両面を強調することが重要。
問13 ハーグ協定による意匠保護の多国間確保
問題要旨
ハーグ協定(意匠国際登録)による多国間の意匠保護について、最も適切なものはどれか。国際登録の効力と各国の独立した登録の関係を理解する問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 応用理解 | Trap-D
正解
ア
必要知識
意匠の国際登録に関するハーグ協定(ジュネーブ改正協定)に基づく国際登録により、複数国における意匠保護を一度の出願で取得できる(日本は2015年加盟)。しかし、各国での保護効力は個別に判定され、一国での拒絶や無効が他国の登録を自動的に無効にすることはない。
解法の思考プロセス
- 国際登録による「統一的な出願手続」と「各国独立主義の保護効力」の区別を理解する
- 各国での拒絶理由の判定が独立していることを確認する
- 登録維持とその効力の範囲を整理する
誤答の落とし穴
- ア:ハーグ協定加盟国のすべてで自動的に保護されるわけではなく、国際登録は各国指定制
- イ:一国での登録無効が他国の登録を巻き添えにしないため、戦略的な登録国選択が重要
- エ:国際登録の優先権の効力は各国の法律に従って個別に判断される
学習アドバイス
ハーグ協定は多国間登録の手続き簡便性を提供する一方で、各国の意匠法の独立性は維持されている。パリ条約・PCT(特許協力条約)・マドリッド協定(商標)と並んで、知財の国際保護条約体系として整理しておくこと。
問14 著作権法46条の美術著作物と複製権
問題要旨
著作権法46条に規定される「美術著作物の展示」と複製権の関係について、最も適切なものはどれか。原作品所有者の権限と著作権者の権限の区別を問う問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T2 分類判断 | L2 応用理解 | Trap-C
正解
ウ
必要知識
著作権法46条は、屋外の場所(公開の場所)に恒常的に設置された美術著作物を、一定の条件下で自由に利用できることを定めている(パノラマの自由)。ただし、「専ら美術著作物の複製物の販売を目的として複製し、またはその複製物を販売する場合」はこの自由利用の対象外となり、著作権者の許可が必要。なお、美術著作物の原作品の所有者による展示権は著作権法45条に定められており、46条とは別の規定である。
解法の思考プロセス
- 「展示権」(原作品所有者)と「複製権」(著作権者)の主体を区別する
- 展示の際に伴う二次的利用の許可要件を整理する
- 原作品の改変と複製の境界線を確認する
誤答の落とし穴
- ア:原作品を展示する際、著作権者の許可がなくても展示は可能だが、複製の際は許可が必要
- イ:著作権者が複製を許可しても、それは展示の自由を拡張しない
- エ:美術著作物の展示に伴う複製でも、「引用」や「教育目的」の例外が全て適用されるわけではない
学習アドバイス
著作権法46条の「展示権」は限定的であり、原作品所有者の権利であって著作権者の権利ではない。複製、翻案、放映など、著作権者の各種権利との重層的な許可構造を理解することが重要。
問15 著作権27・28条の二次著作物と著作権移転
問題要旨
著作権27・28条に規定される翻案権と二次著作物の著作権帰属について、最も適切なものはどれか。原著作権者の権利と二次著作者の権利の関係を問う問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 応用理解 | Trap-B
正解
イ
必要知識
著作権法27条(翻案権)により、原著作物の著作権者に対して無許可で翻案(改変)することはできない。二次著作物が創作された場合、二次著作物それ自体についても新たな著作権が生じるが、原著作権者の権利は引き続き有効である。原著作権者が著作権を移転しない限り、翻案物の著作権者であっても原著作を利用する際には原著作権者の許可が必要。
解法の思考プロセス
- 翻案権(原著作権者)と二次著作物の著作権(翻案者)の独立性を理解する
- 原著作権者の許可の必要性をどの場面で判定するかを整理する
- 著作権の移転と許諾の相違を確認する
誤答の落とし穴
- ア:二次著作物の著作権者になっても、原著作物の利用については原著作権者の許可が必要(権利の統合ではない)
- ウ:契約により著作権を移転していない場合、二次著作物の著作権帰属は翻案者にあるが原著作権は原著作者にある
- エ:翻案者が著作権者に対して新たな使用料を請求することはできない(著作権の独立性の原則)
学習アドバイス
著作権の重層構造(原著作権と二次著作権の並存)は複雑で、実務でも頻繁に問題となる。特に映画化やゲーム化などの場面での権利処理手続きを念頭に置きながら学習することが効果的。
問16 独占禁止法による企業責任と罰則
問題要旨
独占禁止法における企業の不当な取引制限について、企業自体の法的責任として最も適切なものはどれか。法人としての刑事責任と行政処分の区別を問う問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-D
正解
ア
必要知識
独占禁止法上、企業が不当な取引制限を行った場合、法人そのものが行政処分(排除措置命令、課徴金納付命令)の対象となる。刑事責任(罰金)については法人と従業者の両者が問われる可能性があるが、企業が自体が直接的な刑事責任を負う場合と従業者のみが負う場合とがある。
解法の思考プロセス
- 不当な取引制限の法的定義を確認する
- 行政処分と刑事責任の区別を整理する
- 法人責任と従業者責任の関係を判定する
誤答の落とし穴
- ア:企業が排除措置命令を受けても、個別の従業者が罰金を免れるわけではない
- ウ:課徴金納付命令は企業に対する行政処分であり、従業者の刑事責任とは別個に科される
- エ:独占禁止法で行政処分と刑事罰が併科される場合が多いが、二重処罰ではないと解釈されている
学習アドバイス
独占禁止法は行政法的色彩が強く、公正取引委員会の行政処分が中心的救済手段となる。刑事責任は悪質な場合に限定されることが多く、法人と従業者の責任分配の実務を理解することが重要。
民法(保証・消費貸借・遺言)
問17 連帯保証と個別交渉権の有無
問題要旨
連帯保証人が複数いる場合の求償権と主債務者との関係について、最も適切なものはどれか。連帯保証人同士の負担分割と原則的取扱いの関係を問う問題。
分類タグ
K4 手続・手順 | T4 条件整理 | L2 応用理解 | Trap-A
正解
ウ
必要知識
複数の連帯保証人がいる場合、それぞれが全額弁済責任を負う(連帯性)。一の保証人が弁済した場合、他の保証人に対して求償権を行使できるが、各保証人の間での負担分割は、保証契約の内容により異なる。主債務者との交渉により個別条件を定めることはできるが、他の保証人との関係では原則として等分割される。
解法の思考プロセス
- 連帯保証人の全額弁済責任を確認する
- 求償権の相手方(主債務者か他の保証人か)を整理する
- 負担分割の原則と契約による変更の可能性を検討する
誤答の落とし穴
- ア:複数の連帯保証人の間では、弁済額の分割について個別交渉ができない原則
- イ:主債務者と一部の保証人が個別に合意しても、他の保証人の権利を害することはできない
- エ:連帯保証の性質上、一の保証人の責任軽減が他の保証人の負担増加に自動的に結びつかない
学習アドバイス
連帯保証は民法446条以下で定める複雑な制度であり、保証人の求償権(民法459条以下)と人的抗弁の相対性(民法457条)が試験で頻出。実務では連帯保証人間の負担割合についても慎重に設計することが重要。
問18 保証と主たる債務の消滅
問題要旨
主たる債務が消滅した場合の保証人の責任について、最も適切なものはどれか。付従性の原則と保証人の独立した責任の限界を問う問題。
分類タグ
K4 手続・手順 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-D
正解
エ
必要知識
保証人の責任は主たる債務に「付従する」ため、主たる債務が消滅(弁済、相殺、時効など)すれば、保証人の責任も自動的に消滅する。ただし、保証人が主債務者の時効を知らずに保証契約を実行してしまった場合でも、時効成立後は保証人は責任を免れる(付従性は主債務の状態に随従)。
解法の思考プロセス
- 保証人責任の「付従性」の意味を理解する
- 主たる債務の消滅事由(弁済、相殺、時効など)を列挙する
- 保証人が知らなかった場合の効力を判定する
誤答の落とし穴
- ア:主たる債務が時効で消滅しても、保証人が知らなければ契約責任が残るという誤解
- ウ:保証人が主たる債務者の時効完成を知らずに保証を実行しても、時効成立の効力には影響しない
- エ:主たる債務が当初から無効であっても、保証人は「無効な債務の保証」として独立した責任を負わない
学習アドバイス
保証人責任の付従性は民法446条の根本原則。この原則を理解すれば、保証人が主債務者以上の責任を負うことはない(附従性の逆説)という結論に至る。
問19 消費貸借の返済完成と目的物喪失
問題要旨
消費貸借における借主の返済完成義務と貸主の受領義務について、目的物(金銭など)の喪失時点における責任分配として最も適切なものはどれか。消費貸借の特有な構造を問う問題。
分類タグ
K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-C
正解
エ
必要知識
消費貸借とは、貸主が目的物(通常は金銭)の所有権を借主に移転し、借主がそれと「同種・同等・同量」のものを返却する契約。返済義務は「返還」ではなく「等価物の給付」であるため、借主が受け取った金銭を失ったとしても、同額の金銭を返済する義務は消滅しない。これは消費貸借の本質(所有権の一時的移転)から生じる。
解法の思考プロセス
- 消費貸借の定義(所有権移転型)と賃貸借(所有権非移転型)の区別を確認
- 返済義務の内容(「返還」vs「給付」)を整理する
- 借主が目的物を喪失した場合の責任所在を判定する
誤答の落とし穴
- ア:消費貸借で借主が目的物を受け取った時点で所有権が移転するため、その後の喪失リスクは原則として借主が負う
- イ:借主が受け取った金銭の返済義務は「返還」ではなく「同等額の給付」であり、実額の喪失は言い訳にならない
- エ:貸主が受領を拒絶しても、借主の返済義務は消滅しない(供託可能)
学習アドバイス
消費貸借は所有権の移転を伴う特殊な契約であり、留置権や担保権の設定方法も異なる。不動産の消費貸借(金銭借り入れ)との区別も試験で頻出。
問20 注文者による瑕疵通知の効力
問題要旨
請負契約における瑕疵の通知期間と修補請求権について、最も適切なものはどれか。瑕疵発見の通知時期と請求権消滅の関係を問う問題。
分類タグ
K4 手続・手順 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-A
正解
エ
必要知識
請負契約において、注文者は仕事の目的物に瑕疵がある場合、瑕疵を発見した時から原則として「1年以内」に請負人に通知しなければ、瑕疵を理由とした請求権(修補請求・損害賠償請求)を失う。この期間は通知義務の期間であり、実際の修補が1年以内に完了する必要はない。
解法の思考プロセス
- 瑕疵の定義(契約で定めた仕様からの逸脱)を確認する
- 瑕疵通知の期間制限(1年)の意味を理解する
- 通知義務と修補義務の関係を整理する
誤答の落とし穴
- ア:瑕疵を発見してから1年以内に修補が完了する必要はなく、「通知」が1年以内であれば足りる
- イ:瑕疵通知の後、請負人が修補を拒否しても、注文者の請求権は失われない場合もある
- エ:修補請求の代わりに損害賠償を請求する場合にも、1年の期間制限が適用される(二者択一ではない)
学習アドバイス
請負契約の瑕疵責任(634条)は民法でも最重要条文。工事請負や製作物納入の場面で瑕疵通知期間の厳密な遵守が実務的に重要であり、試験でも頻出。
問21 遺言の効力と通知義務
問題要旨
遺言の有効要件として、遺言者の意思表示の明確性と方式要件について、最も適切なものはどれか。遺言の方式(自筆、公正証書など)と内容の有効性の区別を問う問題。
分類タグ
K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-B
正解
ア
必要知識
遺言は遺言者の最終意思を法的に表現する行為であり、民法が定める方式(自筆証書、公正証書、秘密証書)のいずれかを満たす必要がある。遺言書作成後、遺言者が相続人に通知する法定義務はなく、遺言の存在・内容は遺言者のプライベートな事柄とされる。ただし、相続手続きのため、遺言執行者の指定などが重要。
解法の思考プロセス
- 遺言の方式要件(民法967条〜974条)を確認する
- 遺言の有効成立と相続人への通知の関係を整理する
- 遺言執行者の役割と通知義務を区別する
誤答の落とし穴
- ア:遺言者が相続人に遺言内容を秘密にしても、遺言の効力は失われない
- イ:遺言の方式要件を満たさないと、内容がいかに合理的であっても無効
- ウ:遺言の方式要件と内容の合法性・妥当性は別問題。内容が不公正でも方式を満たせば有効
学習アドバイス
遺言の方式要件は厳格で、実務的な落とし穴が多い。民法968条(自筆証書遺言)では全文を遺言者が自筆する必要があるなど、細かい要件を試験頻出で押さえること。なお、民法969条は公正証書遺言の規定であり混同しないよう注意。
問22 遺留分と被相続人兄弟姉妹
問題要旨
遺留分の請求権者について、兄弟姉妹が相続人である場合の権利帰属として最も適切なものはどれか。遺留分権の相続人範囲を問う問題。
分類タグ
K4 手続・手順 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-D
正解
ア
必要知識
遺留分は民法上一定の相続人が法律で保護される「相続分の一部」であり、兄弟姉妹は遺留分権を有しない。遺留分権者は配偶者と直系卑属(子)、直系尊属(親)に限定されている。したがって、被相続人の兄弟姉妹が遺言により相続から除外されても、遺留分侵害請求権は行使できない。
解法の思考プロセス
- 遺留分権者の範囲(1043条)を確認する
- 兄弟姉妹の法定相続分と遺留分権の有無を区別する
- 遺留分侵害請求権行使の主体適格を判定する
誤答の落とし穴
- ア:兄弟姉妹が法定相続人であっても、遺留分権者ではないため遺留分侵害請求権がない
- ウ:配偶者と子がいない場合、兄弟姉妹が相続人になるが、遺留分権はない
- エ:被相続人が兄弟姉妹に一切相続させないとの遺言をしても、法的には有効(遺留分で保護されない)
学習アドバイス
遺留分権者の範囲は法律で限定されており、試験での頻出問題。特に相続人の組み合わせ(配偶者のみ、親のみ、子のみなど)による遺留分額の計算まで含めて学習すること。
特殊法(知的財産・競争・消費者保護)
問23 製造物責任法と製造事業者の責任
問題要旨
製造物責任法(PL法)における「製造事業者」の定義と責任負担について、最も適切なものはどれか。製造事業者の責任主体の範囲を問う問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 応用理解 | Trap-A
正解
ア
必要知識
製造物責任法では、製造事業者とは当該製造物を製造した事業者を指す。輸入事業者や販売事業者は原則として責任を負わないが、PL法3条で「欠陥」(安全性の欠如)について無過失責任を負う対象は製造事業者に限定される。ただし、表示や取扱説明書の不備により損害が生じた場合は、販売事業者も責任を負う可能性がある。
解法の思考プロセス
- PL法の「製造事業者」の定義を確認する
- 無過失責任の主体を整理する
- 販売事業者や輸入事業者の責任範囲を判定する
誤答の落とし穴
- ア:製造事業者のみがPL法3条の無過失責任を負い、販売事業者の責任は限定的
- イ:PL法の対象は「製造物」で、サービスや農畜産物などは原則として対象外
- エ:「欠陥」の判断は過失の有無に関わらず、製品の安全性基準と比較されて判定される
学習アドバイス
PL法は1995年施行の現代的制度であり、不法行為法(709条)との違いを理解することが重要。特に「欠陥」の定義(安全性欠如)と過失の関係を整理すること。
問24 裁判所の給付訴訟と調停の関係
問題要旨
給付訴訟と調停制度の関係について、調停での合意内容の効力として最も適切なものはどれか。裁判と調停の法的相違を問う問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-D
正解
ア
必要知識
民事調停は非訟事件であり、当事者の合意に基づいて紛争解決を図る手続き。調停成立により合意内容は「調停調書」に記録され、判決と同等の執行力を持つ。ただし、調停成立には双方当事者の合意が必須で、一方的な調停の申し立てだけでは訴訟を停止するなど特別な効果は生じない。
解法の思考プロセス
- 調停制度の基本(非訟事件性、合意ベース)を確認する
- 調停成立と不成立の効力を整理する
- 調停調書の執行力と判決との相違を判定する
誤答の落とし穴
- ア:調停が成立しなかった場合、訴訟を提起して初めて給付請求が可能
- イ:調停での合意内容は両当事者を拘束し、後になって「認識不足」を理由に覆すことはできない
- エ:調停手続きの進行中は訴訟係属が停止するが、終局的な解決には調停成立または調停不成立の決定が必要
学習アドバイス
調停制度は民事訴訟法と別個の「民事調停法」で規制されており、出題が限定的だが、実務での役割は重要。訴訟と調停の並存可能性(調停申し立て中の訴訟提起など)を理解することが重要。
問25 特許法35条と職務発明の補償
問題要旨
特許法35条における職務発明の相当対価について、改正法の適用と計算方法として最も適切なものはどれか。平成27年(2015年)改正以降の新ルールを問う問題。
分類タグ
K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 基礎知識 | Trap-B
正解
イ
必要知識
特許法35条は平成27年(2015年)改正(平成28年4月1日施行)により、「相当の利益」の内容を契約・勤務規則等によってあらかじめ定められる制度が導入された。契約や勤務規則で相当の利益を「あらかじめ」定めておけば、その定めが不合理でない限り当該定めに従う。定めがない場合または定めが不合理な場合のみ、裁判所が相当の利益額を決定する。この改正により、企業が事前に利益の内容を明記しておくことの重要性が強調されている。
解法の思考プロセス
- 改正特許法35条の新ルール(当初定額優先)を確認する
- 「あらかじめ定めた」という要件の厳密性を理解する
- 当初定額と発明後の金銭請求権の違いを整理する
誤答の落とし穴
- ア:改正前のルール(発明創作時に基準を定めてから対価計算)は現在では適用されない
- ウ:特許登録後に初めて対価を定めたとしても、新ルール下では「あらかじめ定めた」ことにはならない
- エ:従業者が当初対価に不満でも、改正後は裁判による増額請求の道が限定される
学習アドバイス
特許法35条は改正が繰り返されており(平成16年改正・平成27年改正)、試験年度の最新ルールを確認することが重要。平成27年改正の背景(企業負担の軽減と従業者の予見可能性の調和)を理解すること。
年度総括
令和7年度の経営法務は、制度・基準(K5)を問う正誤判定(T1)が80%で圧倒的であり、知識系科目の本質が最も明確に表れている年度となりました。
出題の特徴
- L1(基礎知識)でも44点取得可能だが、L2(応用理解)で60点突破が必須
- 会社法の細かな要件(定款、監査役、譲渡制限株式など)
- 民法の制度理解(保証、消費貸借、遺言)
- 知的財産法と不正競争防止法の棲み分け
- Trap-D(条件・概念読み違い)が40%で最大の失点要因
- 「どのような場合に」という条件を見落とすミス
- 「だれが」と「だれに」の主体・客体の混同
- 法律間の相互関係(商法×下請法、著作権×商標法)の誤認
- 複合論点の少なさが特徴
- T4(条件整理)T5(穴埋め)が計12%に過ぎない
- 単一の法律条文の理解でほぼすべての問題が解答可能
- 相互関連性より「個別制度の正確な理解」が重視される
合格戦略
- まず L1(基礎知識)で40点確保:各法律の基本定義と制度枠組み
- 次に L2(応用理解)で20点上乗せ:細かい要件と例外規定を丁寧に
- Trap-D 対策に注力:条件を読み忘れない習慣、主体・客体を常に意識する
- 法律間の境界線を引く:不正競争と商標、著作権と二次著作物など
分類タグの凡例
知識種類(K)
| タグ | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| K1 定義・用語 | 制度の名称、用語の定義、基本概念 | 遺言の定義、消費貸借の意味 |
| K2 分類・表示 | 対象物の分類、表示方法、カテゴリ分け | 資産の分類、商品表示の範囲 |
| K3 数式・公式 | 計算式、評価方法、数値基準 | 遺留分の計算、対価額の算式 |
| K4 手続・手順 | 手続きの流れ、段階的プロセス、実行方法 | 調停手続き、瑕疵通知の期間 |
| K5 制度・基準 | 法律制度、規制内容、判定基準 | 特許法35条、独占禁止法の規制 |
思考法(T)
| タグ | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| T1 正誤判定 | 正しい/誤りの判定、正誤選択 | 「この記述は適切か」という問い |
| T2 分類判断 | 複数の選択肢から適切な分類を選ぶ | 「どの法律に該当するか」 |
| T3 計算実行 | 数値計算、公式適用、定量分析 | 対価額の算定(経営法務では少数) |
| T4 条件整理 | 複数の条件を整理して推論 | 複数の要件を満たす場合の判定 |
| T5 穴埋め推論 | 空白部分を埋める、矛盾解消 | 「正当な理由は __ である」 |
形式層(L)
| タグ | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| L1 基礎知識 | 教科書レベル、制度の枠組み理解 | 遺言の方式要件、保証の定義 |
| L2 応用理解 | 細かい要件、例外・特例、複合理解 | 兄弟姉妹の遺留分権の有無 |
| L3 計算応用 | 複雑な計算、多段階手続き(経営法務では少数) | 複合的な対価額計算(仮想) |
罠パターン(Trap)
| タグ | 特徴 | 対策 |
|---|---|---|
| Trap-A 拡張・誤認 | 原則と例外を逆転させる | 「~を除いて」という限定句に注目 |
| Trap-B 要件・権利誤認 | 「だれが」と「だれに」を混同 | 主体・客体を常に整理 |
| Trap-C 部分正解 | 一部正しいが全体は誤り | 「かつ」と「または」の条件を確認 |
| Trap-D 条件・概念読み違い | 「どのような場合に」を見落とす | 条件句(「ただし」「除き」)を強調読み |
| Trap-E 法律混同 | 異なる法律の規定を混同 | 関連法律の対比表を作成 |
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