リーダーシップ論
特性理論から変革型リーダーシップまで、各理論の見分け方と使い分けを整理する
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このページは、「良いリーダーとは何か」という問いに対する理論の発展を時系列で整理します。特性→行動→状況との適合→変革 という見方の違いを理解し、試験で「どの理論か」を瞬時に見分け、正しい判断ができるようにします。
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リーダーシップ論は 暗記と理解の両立 が必要です。まず「理論の流れ」で時間軸を押さえ、次に各理論を見分けるための「比較表」で違いを整理してください。最後に「成熟度とスタイルの対応」「環境と対応スタイル」など、試験で問われる 条件付き対応 を確実に答えられるようにしましょう。
リーダーシップ理論の発展系統
リーダーシップの問い方は、時代とともに変わってきました。この流れを押さえることが、複数の理論を混同しないコツです。
| 理論の世代 | 時期 | 何を見るか | 代表理論と研究者 | 視点 |
|---|---|---|---|---|
| 第1世代:特性理論 | 1930~1940年代 | リーダー本人の資質 | 知能、決断力、社交性 | 「優れた人はどんな特性を持つか?」 |
| 第2世代:行動理論 | 1940~1950年代 | リーダーの行動パターン | レビン、オハイオ研究、PM理論(三隅) | 「どんな行動が有効か?」 |
| 第3世代:状況適応理論 | 1960~1980年代 | フォロワー・状況との適合 | フィードラー、SL理論、パス=ゴール理論 | 「いつどのスタイルが有効か?」 |
| 第4世代:変革型リーダーシップ | 1980年代~ | 組織変革と個人の内発動機 | バス、グリーンリーフ、オーセンティック | 「組織をどう変革するか?」 |
学習のポイント
- 特性理論と行動理論の限界 から状況適応理論へ移行した歴史的背景を理解する
- SL理論(成熟度)とパス=ゴール理論(環境) は、両者ともコンティンジェンシー理論だが、見ている軸が異なる
- 変革型と交流型 は、部下への影響メカニズムが根本的に異なる
- 各理論の代表研究者と論点を正確に対応させることが、試験での得点差になる
特性理論
定義と基本思想
リーダーの優秀さは、リーダー本人の 個人的な資質 によって決まるという理論です。知能、決断力、社交性、エネルギー、自信など、リーダーに求められる特性があるはずだと考えていました。最初の体系的なリーダーシップ理論として、組織研究の出発点になりました。
主な特性
特性理論が注目した資質の例です:
| 特性 | 説明 | 組織での見え方 |
|---|---|---|
| 知能 | 判断力、分析力、問題解決能力 | 複雑な経営課題を的確に理解できる |
| 決断力 | 迅速で確実な判断 | 迷いなく指示を出し、部下が従いやすい |
| 社交性 | 対人関係構築力、コミュニケーション | 様々な立場の人と関係を築ける |
| 自信 | 自分の判断に対する確信 | 部下が安心感を持ち、信頼する |
| エネルギー | 精力的な行動、継続力 | 長時間労働や困難な状況でも推進できる |
限界と歴史的転機
特性理論は幅広く研究されましたが、決定的な課題に直面しました:
- 普遍的な特性が見つからない:軍隊の指揮官に必要な特性と、企業経営者に必要な特性が異なる。公共部門と民間企業でも求められる資質が違う
- 同じ人が環境で成功も失敗もする:優秀と評価された人が、別の組織や環境では失敗することが説明できない
- 例外が多すぎる:知能が低くても部下から信頼されるリーダーや、決断力がなくても成果を出すリーダーが実在する
この「何を見ても普遍則が引き出せない」という限界から、研究の焦点は 「リーダーが何をしているか(行動)」 へとシフトしていきます。
つまずきポイント
- 特性理論を「リーダー育成の根拠」として残す誤解:特性が決まっていれば教育は不要という結論になり、現代のリーダーシップ育成論と矛盾する
- 「リーダーは生まれ、作られない」という誤った記憶:実際には特性理論の限界を認識して、後続理論が「行動と状況の観点」を加えた
行動理論
定義と転機
特性理論が失敗した理由は「何を見ているか(視点)」の問題でした。行動理論は視点を転換し、「 リーダー本人の具体的な行動パターン が部下のモティベーション、満足度、組織成果に影響する」と考えました。同じ特性を持つリーダーでも、行動によって成果が変わるはずです。
レビンのリーダーシップ類型(アイオワ研究)
クルト・レビンが子どもグループの実験で検証した、最初の体系的な行動分類です。民主型が最も評価されましたが、環境による変動も観察され、後の状況適応理論へのきっかけになりました。
| 類型 | リーダーの行動 | 意思決定 | 部下への関わり | 効果 |
|---|---|---|---|---|
| 専制型 | 一方的に指示 | リーダーが独断で決定 | 命令と監視が中心 | 短期的に生産性は高いが、離脱率が高く依存度が強い |
| 民主型 | 部下と相談 | 部下を巻き込んで決定 | 励まし、助言、議論 | 満足度・自発性が高い;効率では専制型に劣る場合がある |
| 放任型 | ほぼ関わらない | 部下に全て任せる | 消極的;ほぼなし | 満足度低く、混乱や怠惰が生じやすい |
オハイオ州立大学研究
大規模な実証研究により、リーダー行動の 2つの独立した側面 を発見しました。これはPM理論やマネジリアル・グリッドの理論的基礎になります。
2つの行動次元
| 次元 | 日本語 | 説明 | リーダーの具体的行動 |
|---|---|---|---|
| Initiating Structure | 構造づくり | 役割の明確化、業務規則、目標達成に向けた組織化 | 「〇〇さんは△△を担当」「期限は××」 |
| Consideration | 配慮 | 部下との人間関係構築、心配り、相互信頼 | 「大変だったね」「意見を聞きたい」 |
組み合わせによる有効性
| スタイル | 構造づくり | 配慮 | 評価と限界 |
|---|---|---|---|
| 高構造・高配慮 | 高 | 高 | 最も有効;目標達成と人間関係を両立 |
| 高構造・低配慮 | 高 | 低 | 短期効果は高いが長期は反発・離職増加 |
| 低構造・高配慮 | 低 | 高 | 人間関係は良いが目標設定が曖昧で成果不十分 |
| 低構造・低配慮 | 低 | 低 | 最も無効;リーダーシップ機能を果たさない |
PM理論(三隅二不二)
日本の組織心理学者・三隅二不二が、日本的組織に適合させた理論です。オハイオ研究と同じ構造ですが、より実践的で日本の中小企業事例に頻繁に登場します。
P機能とM機能
| 機能 | 正式名 | 説明 | リーダーの具体例 |
|---|---|---|---|
| P機能 | Performance(目的達成機能) | 目標設定、計画立案、成果評価、指示 | 「今期の目標は売上150%」と明確に指示する |
| M機能 | Maintenance(集団維持機能) | 部下の満足度、心理的安定、信頼関係、集団結束 | 部下の悩みに耳を傾け、励ましと指導を行う |
PM理論の4つのリーダーシップ型
| 型 | P | M | 効果と特徴 |
|---|---|---|---|
| PM型 | 高 | 高 | 最も有効;目標達成と集団維持を両立。理想的なリーダー像 |
| Pm型 | 高 | 低 | 成果志向が強いが人間関係が冷淡。短期効果はあるが長期は問題化 |
| pM型 | 低 | 高 | 関係構築は得意だが目標達成が曖昧。満足度は高いが成果不十分 |
| pm型 | 低 | 低 | 最も効果なし;集団維持もできず、目標達成も曖昧 |
試験では「PM型が理想」という記憶だけでなく、「Pm型が短期的に生産性を示すが持続しない理由」を理解することが重要です。
マネジリアル・グリッド(ブレイク&ムートン)
業績への関心と人への関心を、それぞれ1~9の段階でマッピングし、5つのリーダーシップスタイルに分類しました。オハイオ研究やPM理論と同じ概念ですが、より視覚的で、グリッド上の位置が記憶しやすいという利点があります。
5つのスタイルと位置
| スタイル | 位置 | 業績への関心 | 人への関心 | 特徴と限界 |
|---|---|---|---|---|
| チーム型 | (9,9) | 高 | 高 | 最も有効;目標達成と人間関係を統合。相互信頼と参加が高い |
| 権力型 | (9,1) | 高 | 低 | 独裁的;短期効果は高いが反発と離職を招く |
| 人情型 | (1,9) | 低 | 高 | 調和重視;成果は後回し。心理的安全性は高いが目標達成が疎ろ |
| 中道型 | (5,5) | 中 | 中 | バランス志向;「無難」だが突破力に欠ける。平均点だが最適ではない |
| 放任型 | (1,1) | 低 | 低 | 最も無効;関わらない。成果も人間関係も醸成されない |
行動理論の共通メッセージ
オハイオ研究、PM理論、マネジリアル・グリッドは、本質的に同じ結論に達しています:「 両方高いリーダーが最も有効 」という点です。これは現代のリーダーシップ教育の基礎になっており、試験でも頻出です。
状況適応理論(コンティンジェンシー理論)
理論転換の理由
行動理論が「高構造・高配慮が最善」「PM型が理想」と結論づけても、実際の組織では「なぜか失敗する」ケースが多く報告されました。原因は何か。研究者たちは気づきます:「 状況が違えば、同じ行動でも効果が逆転する 」。このシンプルな気づきが、リーダーシップ論を次のステージへ導きました。
フィードラーのコンティンジェンシー理論
フレッド・フィードラーが実証研究から導き出した、最初の体系的な状況適応論です。重要な限界を指摘し、後続理論(SL理論)へのきっかけになりました。
LPC尺度(Least Preferred Coworker)
リーダーの 本来のスタイル(変えにくい傾向) を診断します。
| スコア | 解釈 | スタイル | 有効な状況 |
|---|---|---|---|
| LPC高い | 苦手な同僚も好意的に評価 | 関係志向型 | 状況が中程度に有利な場合 |
| LPC低い | 苦手な同僚を厳しく評価 | タスク志向型 | 状況が非常に有利、または非常に不利な場合 |
状況の有利さを決める3要素(優先順)
| 要素 | 説明 | 有利な条件 |
|---|---|---|
| 1. リーダー・メンバー関係 | 信頼関係の質 | 関係が良い |
| 2. タスク構造 | 業務の明確さ・定型性 | 手順が明確で構造化されている |
| 3. 地位権限 | リーダーの正式な権限 | 権限が強い |
有効性の基本法則
| 状況 | 有利さ | 有効なリーダーシップ |
|---|---|---|
| リーダー・メンバー関係が良く、タスク明確、権限強い | 非常に有利 | タスク志向(LPC低い) |
| 関係は普通;タスク中程度;権限中程度 | 中程度 | 関係志向(LPC高い) |
| リーダー・メンバー関係が悪く、タスク不明確、権限弱い | 非常に不利 | タスク志向(LPC低い) |
理論の限界と後続理論への道
フィードラー理論は重要な教訓を残しました:
- 「リーダーシップスタイルは変えにくい」 → だから状況をリーダーに合わせる(状況エンジニアリング)、または異なるスタイルのリーダーを交代させる
- この限界に対して、「リーダーが状況に応じてスタイルを柔軟に変える」 という新しい仮説が生まれます。それがSL理論です。
SL理論(シチュエーショナル・リーダーシップ理論)
ポール・ハーシーとケン・ブランチャードが提唱した、最も 実践的で直感的 な状況適応理論です。試験での出題率が非常に高く、パターン学習で対応可能です。
フォロワーの成熟度4段階
成熟度は「能力」と「意欲」の組み合わせで判定します。能力だけでなく、自信や意欲も重要な指標です。
| 段階 | 能力 | 意欲 | 説明 |
|---|---|---|---|
| M1 | 低い | 高い | 新人;知識・スキルに欠けるが、やる気は満々。すぐに指示を必要とする |
| M2 | 低~中 | 中~低 | 初期の失敗や困難で意欲が低下。能力も未発達。サポートと励まし両方が必要 |
| M3 | 中~高 | 変動 | ある程度の能力がある;でも自信が揺らぐ。「得意な時と不得意な時がある」 |
| M4 | 高い | 高い | 経験豊富で自信がある。ベテラン;自律的に行動できる |
対応するリーダーシップスタイル4つ
リーダーの行動は「指示的行動」と「支援的行動」の2軸で構成されます。
| スタイル | 対応段階 | 指示的行動 | 支援的行動 | 具体的リーダー行動 |
|---|---|---|---|---|
| S1:教示型(Telling) | M1 | 高 | 低 | 細かく手順を指示;理由は最小限;頻繁に指示を出す |
| S2:説得型(Selling) | M2 | 高 | 高 | 指示しつつ、なぜそうするのか理由を説明;励ましと指導を同時 |
| S3:参加型(Participating) | M3 | 低 | 高 | 部下と一緒に考える;最終決定権は部下に委ねる;相談型 |
| S4:委任型(Delegating) | M4 | 低 | 低 | ほぼ任せる;選択肢は示すが決定と実行は部下;ほぼ干渉しない |
SL理論の重要な気づき
- 成熟度が上がるにつれて、スタイルは変わる:M1→S1→S2(両方高い)→S3(支援↑指示↓)→S4(両方低い)
- S2が唯一「両方高い」理由:M2は能力が不足しているので、指示(何をするか)と説得(なぜするか)が同時に必要
- 複数の部下がいる場合、成熟度に応じた使い分けが必須;全員に同じスタイルを適用すると失敗
パス=ゴール理論(ハウス)
ロバート・ハウスが提唱した理論です。SL理論より 理論的な根拠(期待理論) が明確で、より学術的な論述を求める試験で出題されます。
理論のコア:「リーダーの役割」
リーダーの役割は、部下が 目標(ゴール)に到達する道筋(パス)を明確にし、障害を除去する ことです。期待理論(ブルーム)を基盤としており、「リーダーの行動が部下の期待と誘意性に影響を与える」と考えます。
4つのリーダーシップスタイル
| スタイル | 説明 | 有効な場面 | リーダーの具体行動 |
|---|---|---|---|
| 指示型(Directive) | 明確な期待値、指示、手順を提供 | タスク曖昧;部下の経験が少ない;環境が不確実 | 「○○の手順で進めてください」と細かく説明 |
| 支援型(Supportive) | 部下の福祉に関心;親切で親しみやすい | ストレス多い環境;単調な業務;部下が疲弊気味 | 部下の相談に乗り、心情に配慮する |
| 参加型(Participative) | 部下と相談して意思決定;部下の意見を尊重 | 部下の能力が高い;複雑な課題;部下が参加したい | 意思決定前に部下と協議する |
| 達成志向型(Achievement-oriented) | 高い目標設定;部下の能力向上を促す | 部下が達成欲求が高い;能力に自信がある;チャレンジ欲がある | 「この目標を達成すれば成長できる」と高い目標を示す |
状況要因による使い分け
| 状況要因 | 効果 |
|---|---|
| 部下が能力に自信がない | 指示型が有効 |
| 業務が明確に構造化されている | 支援型が適切(指示型は冗長で部下がウンザリ) |
| 部下が決定に関わりたい | 参加型が有効 |
| 部下が高い目標を望んでいる | 達成志向型が合致 |
SL理論との違い
試験では両者を区別する問題が頻出です。見分けるポイント:
| 項目 | SL理論 | パス=ゴール理論 |
|---|---|---|
| 何を見ているか | フォロワーの 成熟度(能力×意欲) | 目標達成への障害;環境要因も含む |
| 診断の軸 | 「新人か?ベテランか?」 | 「タスク明確か?部下の能力高いか?」 |
| スタイル数 | 4 | 4 |
| 理論的根拠 | 実践経験から帰納的に構築 | 期待理論;動機づけ理論 |
| 適用難度 | 直感的;実践容易 | やや複雑;理論的思考が必要 |
| 試験での出題 | パターン問題が多い | 複雑な事例で環境要因を読ませる |
変革型リーダーシップとその他
変革型リーダーシップ(バス)
バーナード・バスが提唱した理論です。日常的な報酬・罰による管理ではなく、ビジョンと刺激を通じて部下を変革へ導く リーダーシップです。組織の根本的改革が必要な場面で威力を発揮します。
4つの要素(バスの4I)
| 要素 | 正式名 | 説明 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| II:理想化された影響 | Idealized Influence | リーダーが範を示す;倫理観と自己犠牲 | 困難な局面でも率先垂範;私欲よりも組織の大義を優先 |
| IM:鼓舞する動機付け | Inspirational Motivation | 魅力的でビジョンに満ちたメッセージ | 「このプロジェクトで業界構造を変える」と明確に提示 |
| IS:知的刺激 | Intellectual Stimulation | 既存の前提を疑わせ、創意工夫を促す | 「別の方法で考えてみたら?」と部下の思考を挑戦 |
| IC:個別配慮 | Individualized Consideration | 部下を個人として見つめ、成長を支援 | メンタリング、キャリア開発のサポート |
変革型 vs 交流型(交換型)リーダーシップの比較
試験では両者の違いを問う問題が頻出です。特に「どのような変化が起こるか」という部下への影響に注目してください。
| 項目 | 変革型(トランスフォーメーショナル) | 交流型(トランザクショナル) |
|---|---|---|
| 基本メカニズム | ビジョンと価値観の共有 | 報酬と罰の交換(契約的関係) |
| 動機づけの種類 | 内発的動機付け | 外発的動機付け |
| 部下への影響 | 価値観の変革;自発的行動へのシフト | 指示通りの行動を確保 |
| 時間軸 | 長期的;組織文化の変革を狙う | 短期的;即効性を重視 |
| 期待値 | 部下の可能性を拡大させる | 予定通りの遂行を確保 |
| 有効な場面 | 組織の根本的改革;不確実で変化の大きい環境 | 日常業務;安定環境;効率重視 |
| 問題時の対応 | 例外管理(問題が起きたら対応) | - |
実証研究から
変革型リーダーは交流型よりも、部下の満足度、組織成果、自発性が高い傾向が示されています。ただし、安定環境では交流型も必要 です。
LMX理論(リーダー・メンバー交換理論)
ジョージ・グレーン(George Graen)らが提唱した、「 リーダーとメンバーの関係の質 」に着目した理論です。試験での出題は増加傾向にあります。
内集団と外集団の形成
リーダーは、無意識のうちに部下全員を同じには扱わない傾向があります。この不公平性が組織行動に影響を与えます。
| グループ | LMXの質 | リーダーの対応 | 部下への影響 |
|---|---|---|---|
| 内集団(In-group) | 高LMX | 信頼関係が深い;裁量権を与える;情報開示;キャリア支援 | 評価が高い;満足度が高い;組織市民行動が活発 |
| 外集団(Out-group) | 低LMX | 形式的;指示と監視中心;雑務を割り当てる | 評価が低い;満足度が低い;離職率が高い |
LMXの質が高い部下の特徴
- 人事評価が高い傾向
- 仕事の満足度が高い
- 離職率が低い
- 組織市民行動(自発的な貢献)が活発
組織への示唆
リーダーは意識的に、内集団と外集団の関係の質を改善する努力が求められます。特に外集団メンバーへの意識的な働きかけが、組織全体の活性化につながります。
サーバントリーダーシップ
ロバート・グリーンリーフが提唱した、従来の権力構造と 逆の概念 です。「導くために奉仕する」という新しいリーダーシップ像であり、近年の人材育成論で注目されています。
10の要素(グリーンリーフ)
サーバントリーダーが実践する、中心的な姿勢と行動:
| 要素 | 説明 | リーダーの具体的行動 |
|---|---|---|
| 傾聴 | 部下の声に耳を傾ける | 質問を多くし、相手の話を最後まで聞く |
| 共感 | 部下の立場や感情を理解 | 「そういう気持ちなんですね」と受け止める |
| 癒し | 心理的な傷や疲れを認識し回復を支援 | メンタルの不調に気づき、サポートする |
| 気づき | 自分と組織の問題に気づかせる | 客観的視点から課題を指摘する |
| 説得 | 強制ではなく説得と対話 | 「〇〇すべき」ではなく、理由を説明して納得させる |
| 概念化 | 長期ビジョンを描く | 5年後、10年後の組織像を示す |
| 先見性 | 過去の教訓と現在から未来を予見 | 歴史の学びを活かして、将来の課題を予測 |
| 管理者性 | 部下と組織の福祉を守る | ルール作りと実行;メンバーの利益を優先 |
| 部下の成長 | 成長と自立を最優先 | キャリア開発;責任ある仕事の委譲 |
| コミュニティへの貢献 | 組織を超えた社会的責任 | 地域活動;業界への貢献 |
組織文化への影響
サーバントリーダーシップが浸透した組織では、メンバーも互いに奉仕する姿勢が広がり、心理的安全性と相互信頼が高まる傾向が報告されています。
オーセンティックリーダーシップ
「本物(authentic)」のリーダーシップを強調する理論です。リーダーの自己認識と本来の自分に基づくリーダーシップであり、以下の特性を持ちます:
- 自己認識:自分の強み、弱み、価値観を理解している
- 透明性:部下に対して誠実で、隠蔽がない
- 倫理的行動:道徳的原則に基づいて行動
- バランスの取れた処理:異なる視点を積極的に求める
典型的なつまずきと正解への道
つまずき1:モチベーション理論とリーダーシップ論の混同
誤り:「マズロー、ハーズバーグはリーダーシップ論」と思い込む
正解:
- モチベーション理論:「人のやる気をどう引き出すか」という個人の心理
- リーダーシップ論:「人をどう導き、組織目標を達成するか」という集団の関係と成果
異なるレベルの問い。モチベーション理論はリーダーシップの一部を説明しますが、リーダーシップはより広い概念です。
つまずき2:SL理論とパス=ゴール理論の条件の混同
誤り:「両方とも4スタイルだから同じ」と思い込む
正解:
- SL理論:フォロワーの 成熟度(能力×意欲)が主軸;部下の発達段階を見ている
- パス=ゴール理論:目標達成の 障害除去 が主軸;環境とタスク特性を見ている
例:高い能力と意欲の部下(M4)には SL理論では S4(委任型)が正解ですが、その部下の業務が複雑で曖昧な場合、パス=ゴール理論では 参加型 が有効かもしれません。
つまずき3:変革型を「カリスマ性」だけで理解する
誤り:「変革型 = 話術が上手で感動させるリーダー」と狭く理解
正解:
- カリスマ性は見た目や話術だけではない
- 倫理観、知的刺激、個別配慮など、具体的で地道な行動が重要
- 「感動させる」だけでなく「思考と行動の根本的変化を促す」ことが目標
つまずき4:民主型を常に最善と固定化する
誤り:「民主型が最善だから、いつもこれを使うべき」
正解:
- 不確実で複雑な環境では民主型が有効
- 危機時や緊急時は専制型の迅速さが必要
- 部下の成熟度が低い場合(M1)は S1(教示型)が適切;民主型では部下が困惑する
つまずき5:理論を背景情報なしで機械的に適用する
誤り:「M3なので S3」と暗記だけに頼る
正解:
- 「なぜこの成熟度なのか」を背景から判定する
- 「環境は安定しているか」「タスクは明確か」を含めて考える
- 事例問題では、細部から最適なスタイルを推論する
試験で確実に得点するための整理
ステップ1:「どの理論か」を瞬時に見分ける
| 問題文のシグナル | 該当理論 |
|---|---|
| 「知能、決断力、社交性...リーダーの特性」 | 特性理論 |
| 「リーダーの行動パターン、指示と支援のバランス」 | 行動理論(オハイオ、PM理論等) |
| 「新人、経験豊富、成熟度が低い/高い」 | SL理論 |
| 「タスク明確か不明確か、障害は何か」 | パス=ゴール理論 |
| 「ビジョン、組織変革、カリスマ性」 | 変革型リーダーシップ |
| 「リーダーと部下の関係の質が異なる」 | LMX理論 |
| 「奉仕、部下の成長を最優先」 | サーバントリーダーシップ |
ステップ2:主語を確認する
| 主語 | 見るポイント | 該当理論 |
|---|---|---|
| リーダー本人 | 資質?行動? | 特性理論、行動理論 |
| フォロワー(部下) | 成熟度?能力?意欲? | SL理論 |
| フォロワーと環境 | タスク明確か?ストレスか? | パス=ゴール理論 |
| リーダーとフォロワーの関係 | 信頼度、裁量権の度合い | LMX理論 |
| 組織全体 | 文化変革?新事業? | 変革型リーダーシップ |
ステップ3:「条件付き対応」を確実に答える
試験は「AさんはM2だから、どのスタイル?」という 条件付き問題 が大多数です。以下の対応を暗記してください:
SL理論の成熟度と対応スタイル
- M1(低能力・高意欲)→ S1:教示型
- M2(低~中能力・中~低意欲)→ S2:説得型
- M3(中~高能力・変動する意欲)→ S3:参加型
- M4(高能力・高意欲)→ S4:委任型
パス=ゴール理論の状況と対応スタイル
- タスク曖昧 → 指示型
- ストレス多い環境 → 支援型
- 部下が参加したい → 参加型
- 達成欲求が高い → 達成志向型
確認問題
確認問題 1:SL理論の基本
問:成熟度の判定と対応スタイル
ある営業チームで、新しい営業手法を導入しました。営業成績が良く、顧客対応の能力が高い営業Aさんは、新手法を学ぶ際に「本当にこのやり方で売上が伸びるのか」と疑問を抱いており、判断が迷っています。SL理論に基づき、リーダーが取るべきスタイルはどれか。
(A) S1:教示型。新手法の手順を細かく指示する (B) S2:説得型。指示しながら新手法が有効である理由を詳しく説明する (C) S3:参加型。Aさんと一緒に新手法の運用方法を考える (D) S4:委任型。ほぼ任せて、相談があれば乗る
解答:(C) S3:参加型
解説:
- Aさんの能力:高い(営業成績が良く、顧客対応能力が高い)
- Aさんの意欲:中~低下(新手法への疑問と判断の迷い)
- 成熟度判定:M3(中~高能力・変動する意欲)
- M3に対応するスタイル:S3:参加型
- 理由:Aさんは能力があるので「やり方を指示される」ことを嫌がります。重要なのは、新手法の有効性をAさん自身が納得し、主体的に取り組むこと。そのため「一緒に考える」参加型が最適です。
確認問題 2:パス=ゴール理論の状況判定
問:環境と対応スタイルの選択
生産管理部門では、作業手順が標準化され、各メンバーの業務内容が明確に決められています。しかし、納期に追われる日々が続き、メンバーは単調な業務に疲弊し、やり甲斐を感じていません。心理的なストレスが高まっており、部下との関係構築が課題です。パス=ゴール理論に基づき、リーダーが取るべきスタイルはどれか。
(A) 指示型。標準化を徹底し、業務のばらつきをなくす (B) 支援型。メンバーの心情に配慮し、親しみやすい雰囲気づくり (C) 参加型。メンバーと相談して業務改善案を一緒に考える (D) 達成志向型。高い納期目標を設定し、達成意欲を刺激する
解答:(B) 支援型
解説:
- 環境分析:業務が明確に構造化されている(手順が決まっている)
- 課題:単調さのストレスと所属感・やり甲斐の低下(心理的な満足度不足)
- パス=ゴール理論では、タスク構造が既に明確な場合、さらに指示型を強化すると逆効果です
- 必要な対応:メンバーの心理的福祉への配慮と親しみやすい関係構築
- 結果:支援型 が適切
補足:パス=ゴール理論では「障害の除去」がリーダーの役割。ここで最大の障害は「心理的なストレスと不安」です。
確認問題 3:変革型 vs 交流型の場面判定
問:組織変革局面での最適なリーダーシップ
業界内での競争が激化し、既存事業の市場が急速に縮小しています。経営層は、組織全体が新しい事業領域に積極的にチャレンジし、失敗を恐れず創意工夫を発揮することを望んでいます。このような根本的な組織変革の局面で、より有効なリーダーシップはどちらか。また、その理由を簡潔に述べよ。
(A) 交流型リーダーシップ (B) 変革型リーダーシップ
解答:(B) 変革型リーダーシップ
解説:
- 状況分析:既存事業の縮小 → 必要なのは根本的な事業転換と組織文化の変革
- 求められるもの:新領域へのチャレンジ、失敗許容、創意工夫(内発的動機)
- 交流型の限界:報酬と罰による日常管理に適している。既存業務の安定した遂行には有効だが、組織変革には不向き
- 変革型の有効性:
- ビジョン:新事業領域での成長像を明確に示す
- 知的刺激:既存の前提を疑わせ、新視点を促す
- 個別配慮:チャレンジを支援し、失敗から学ぶ環境をつくる
- 理想化された影響:率先垂範してチャレンジの姿勢を示す
補足:変革型リーダーシップは、部下の内発的動機付けを高め、組織文化の根本的な変革に有効です。
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