掲載内容は正確性・最新性の確保に努めていますが、一次情報をご確認ください。
shindanshi中小企業診断士 wiki

リーダーシップ論

特性理論から変革型リーダーシップまで、各理論の見分け方と使い分けを整理する

このページの役割

このページの役割

このページは、「良いリーダーとは何か」という問いに対する理論の発展を時系列で整理します。特性行動状況との適合変革 という見方の違いを理解し、試験で「どの理論か」を瞬時に見分け、正しい判断ができるようにします。

このページの読み方

リーダーシップ論は 暗記と理解の両立 が必要です。まず「理論の流れ」で時間軸を押さえ、次に各理論を見分けるための「比較表」で違いを整理してください。最後に「成熟度とスタイルの対応」「環境と対応スタイル」など、試験で問われる 条件付き対応 を確実に答えられるようにしましょう。


リーダーシップ理論の発展系統

リーダーシップの問い方は、時代とともに変わってきました。この流れを押さえることが、複数の理論を混同しないコツです。

理論の世代時期何を見るか代表理論と研究者視点
第1世代:特性理論1930~1940年代リーダー本人の資質知能、決断力、社交性「優れた人はどんな特性を持つか?」
第2世代:行動理論1940~1950年代リーダーの行動パターンレビン、オハイオ研究、PM理論(三隅)「どんな行動が有効か?」
第3世代:状況適応理論1960~1980年代フォロワー・状況との適合フィードラー、SL理論、パス=ゴール理論「いつどのスタイルが有効か?」
第4世代:変革型リーダーシップ1980年代~組織変革と個人の内発動機バス、グリーンリーフ、オーセンティック「組織をどう変革するか?」

学習のポイント

  • 特性理論と行動理論の限界 から状況適応理論へ移行した歴史的背景を理解する
  • SL理論(成熟度)とパス=ゴール理論(環境) は、両者ともコンティンジェンシー理論だが、見ている軸が異なる
  • 変革型と交流型 は、部下への影響メカニズムが根本的に異なる
  • 各理論の代表研究者と論点を正確に対応させることが、試験での得点差になる

特性理論

定義と基本思想

リーダーの優秀さは、リーダー本人の 個人的な資質 によって決まるという理論です。知能、決断力、社交性、エネルギー、自信など、リーダーに求められる特性があるはずだと考えていました。最初の体系的なリーダーシップ理論として、組織研究の出発点になりました。

主な特性

特性理論が注目した資質の例です:

特性説明組織での見え方
知能判断力、分析力、問題解決能力複雑な経営課題を的確に理解できる
決断力迅速で確実な判断迷いなく指示を出し、部下が従いやすい
社交性対人関係構築力、コミュニケーション様々な立場の人と関係を築ける
自信自分の判断に対する確信部下が安心感を持ち、信頼する
エネルギー精力的な行動、継続力長時間労働や困難な状況でも推進できる

限界と歴史的転機

特性理論は幅広く研究されましたが、決定的な課題に直面しました:

  1. 普遍的な特性が見つからない:軍隊の指揮官に必要な特性と、企業経営者に必要な特性が異なる。公共部門と民間企業でも求められる資質が違う
  2. 同じ人が環境で成功も失敗もする:優秀と評価された人が、別の組織や環境では失敗することが説明できない
  3. 例外が多すぎる:知能が低くても部下から信頼されるリーダーや、決断力がなくても成果を出すリーダーが実在する

この「何を見ても普遍則が引き出せない」という限界から、研究の焦点は 「リーダーが何をしているか(行動)」 へとシフトしていきます。

つまずきポイント

  • 特性理論を「リーダー育成の根拠」として残す誤解:特性が決まっていれば教育は不要という結論になり、現代のリーダーシップ育成論と矛盾する
  • 「リーダーは生まれ、作られない」という誤った記憶:実際には特性理論の限界を認識して、後続理論が「行動と状況の観点」を加えた

行動理論

定義と転機

特性理論が失敗した理由は「何を見ているか(視点)」の問題でした。行動理論は視点を転換し、「 リーダー本人の具体的な行動パターン が部下のモティベーション、満足度、組織成果に影響する」と考えました。同じ特性を持つリーダーでも、行動によって成果が変わるはずです。

レビンのリーダーシップ類型(アイオワ研究)

クルト・レビンが子どもグループの実験で検証した、最初の体系的な行動分類です。民主型が最も評価されましたが、環境による変動も観察され、後の状況適応理論へのきっかけになりました。

類型リーダーの行動意思決定部下への関わり効果
専制型一方的に指示リーダーが独断で決定命令と監視が中心短期的に生産性は高いが、離脱率が高く依存度が強い
民主型部下と相談部下を巻き込んで決定励まし、助言、議論満足度・自発性が高い;効率では専制型に劣る場合がある
放任型ほぼ関わらない部下に全て任せる消極的;ほぼなし満足度低く、混乱や怠惰が生じやすい

オハイオ州立大学研究

大規模な実証研究により、リーダー行動の 2つの独立した側面 を発見しました。これはPM理論やマネジリアル・グリッドの理論的基礎になります。

2つの行動次元

次元日本語説明リーダーの具体的行動
Initiating Structure構造づくり役割の明確化、業務規則、目標達成に向けた組織化「〇〇さんは△△を担当」「期限は××」
Consideration配慮部下との人間関係構築、心配り、相互信頼「大変だったね」「意見を聞きたい」

組み合わせによる有効性

スタイル構造づくり配慮評価と限界
高構造・高配慮最も有効;目標達成と人間関係を両立
高構造・低配慮短期効果は高いが長期は反発・離職増加
低構造・高配慮人間関係は良いが目標設定が曖昧で成果不十分
低構造・低配慮最も無効;リーダーシップ機能を果たさない

PM理論(三隅二不二)

日本の組織心理学者・三隅二不二が、日本的組織に適合させた理論です。オハイオ研究と同じ構造ですが、より実践的で日本の中小企業事例に頻繁に登場します。

P機能とM機能

機能正式名説明リーダーの具体例
P機能Performance(目的達成機能)目標設定、計画立案、成果評価、指示「今期の目標は売上150%」と明確に指示する
M機能Maintenance(集団維持機能)部下の満足度、心理的安定、信頼関係、集団結束部下の悩みに耳を傾け、励ましと指導を行う

PM理論の4つのリーダーシップ型

PM効果と特徴
PM型最も有効;目標達成と集団維持を両立。理想的なリーダー像
Pm型成果志向が強いが人間関係が冷淡。短期効果はあるが長期は問題化
pM型関係構築は得意だが目標達成が曖昧。満足度は高いが成果不十分
pm型最も効果なし;集団維持もできず、目標達成も曖昧

試験では「PM型が理想」という記憶だけでなく、「Pm型が短期的に生産性を示すが持続しない理由」を理解することが重要です。

マネジリアル・グリッド(ブレイク&ムートン)

業績への関心と人への関心を、それぞれ1~9の段階でマッピングし、5つのリーダーシップスタイルに分類しました。オハイオ研究やPM理論と同じ概念ですが、より視覚的で、グリッド上の位置が記憶しやすいという利点があります。

5つのスタイルと位置

スタイル位置業績への関心人への関心特徴と限界
チーム型(9,9)最も有効;目標達成と人間関係を統合。相互信頼と参加が高い
権力型(9,1)独裁的;短期効果は高いが反発と離職を招く
人情型(1,9)調和重視;成果は後回し。心理的安全性は高いが目標達成が疎ろ
中道型(5,5)バランス志向;「無難」だが突破力に欠ける。平均点だが最適ではない
放任型(1,1)最も無効;関わらない。成果も人間関係も醸成されない

行動理論の共通メッセージ

オハイオ研究、PM理論、マネジリアル・グリッドは、本質的に同じ結論に達しています:「 両方高いリーダーが最も有効 」という点です。これは現代のリーダーシップ教育の基礎になっており、試験でも頻出です。


状況適応理論(コンティンジェンシー理論)

理論転換の理由

行動理論が「高構造・高配慮が最善」「PM型が理想」と結論づけても、実際の組織では「なぜか失敗する」ケースが多く報告されました。原因は何か。研究者たちは気づきます:「 状況が違えば、同じ行動でも効果が逆転する 」。このシンプルな気づきが、リーダーシップ論を次のステージへ導きました。

フィードラーのコンティンジェンシー理論

フレッド・フィードラーが実証研究から導き出した、最初の体系的な状況適応論です。重要な限界を指摘し、後続理論(SL理論)へのきっかけになりました。

LPC尺度(Least Preferred Coworker)

リーダーの 本来のスタイル(変えにくい傾向) を診断します。

スコア解釈スタイル有効な状況
LPC高い苦手な同僚も好意的に評価関係志向型状況が中程度に有利な場合
LPC低い苦手な同僚を厳しく評価タスク志向型状況が非常に有利、または非常に不利な場合

状況の有利さを決める3要素(優先順)

要素説明有利な条件
1. リーダー・メンバー関係信頼関係の質関係が良い
2. タスク構造業務の明確さ・定型性手順が明確で構造化されている
3. 地位権限リーダーの正式な権限権限が強い

有効性の基本法則

状況有利さ有効なリーダーシップ
リーダー・メンバー関係が良く、タスク明確、権限強い非常に有利タスク志向(LPC低い)
関係は普通;タスク中程度;権限中程度中程度関係志向(LPC高い)
リーダー・メンバー関係が悪く、タスク不明確、権限弱い非常に不利タスク志向(LPC低い)

理論の限界と後続理論への道

フィードラー理論は重要な教訓を残しました:

  • 「リーダーシップスタイルは変えにくい」 → だから状況をリーダーに合わせる(状況エンジニアリング)、または異なるスタイルのリーダーを交代させる
  • この限界に対して、「リーダーが状況に応じてスタイルを柔軟に変える」 という新しい仮説が生まれます。それがSL理論です。

SL理論(シチュエーショナル・リーダーシップ理論)

ポール・ハーシーとケン・ブランチャードが提唱した、最も 実践的で直感的 な状況適応理論です。試験での出題率が非常に高く、パターン学習で対応可能です。

フォロワーの成熟度4段階

成熟度は「能力」と「意欲」の組み合わせで判定します。能力だけでなく、自信や意欲も重要な指標です。

段階能力意欲説明
M1低い高い新人;知識・スキルに欠けるが、やる気は満々。すぐに指示を必要とする
M2低~中中~低初期の失敗や困難で意欲が低下。能力も未発達。サポートと励まし両方が必要
M3中~高変動ある程度の能力がある;でも自信が揺らぐ。「得意な時と不得意な時がある」
M4高い高い経験豊富で自信がある。ベテラン;自律的に行動できる

対応するリーダーシップスタイル4つ

リーダーの行動は「指示的行動」と「支援的行動」の2軸で構成されます。

スタイル対応段階指示的行動支援的行動具体的リーダー行動
S1:教示型(Telling)M1細かく手順を指示;理由は最小限;頻繁に指示を出す
S2:説得型(Selling)M2指示しつつ、なぜそうするのか理由を説明;励ましと指導を同時
S3:参加型(Participating)M3部下と一緒に考える;最終決定権は部下に委ねる;相談型
S4:委任型(Delegating)M4ほぼ任せる;選択肢は示すが決定と実行は部下;ほぼ干渉しない

SL理論の重要な気づき

  • 成熟度が上がるにつれて、スタイルは変わる:M1→S1→S2(両方高い)→S3(支援↑指示↓)→S4(両方低い)
  • S2が唯一「両方高い」理由:M2は能力が不足しているので、指示(何をするか)と説得(なぜするか)が同時に必要
  • 複数の部下がいる場合、成熟度に応じた使い分けが必須;全員に同じスタイルを適用すると失敗

パス=ゴール理論(ハウス)

ロバート・ハウスが提唱した理論です。SL理論より 理論的な根拠(期待理論) が明確で、より学術的な論述を求める試験で出題されます。

理論のコア:「リーダーの役割」

リーダーの役割は、部下が 目標(ゴール)に到達する道筋(パス)を明確にし、障害を除去する ことです。期待理論(ブルーム)を基盤としており、「リーダーの行動が部下の期待と誘意性に影響を与える」と考えます。

4つのリーダーシップスタイル

スタイル説明有効な場面リーダーの具体行動
指示型(Directive)明確な期待値、指示、手順を提供タスク曖昧;部下の経験が少ない;環境が不確実「○○の手順で進めてください」と細かく説明
支援型(Supportive)部下の福祉に関心;親切で親しみやすいストレス多い環境;単調な業務;部下が疲弊気味部下の相談に乗り、心情に配慮する
参加型(Participative)部下と相談して意思決定;部下の意見を尊重部下の能力が高い;複雑な課題;部下が参加したい意思決定前に部下と協議する
達成志向型(Achievement-oriented)高い目標設定;部下の能力向上を促す部下が達成欲求が高い;能力に自信がある;チャレンジ欲がある「この目標を達成すれば成長できる」と高い目標を示す

状況要因による使い分け

状況要因効果
部下が能力に自信がない指示型が有効
業務が明確に構造化されている支援型が適切(指示型は冗長で部下がウンザリ)
部下が決定に関わりたい参加型が有効
部下が高い目標を望んでいる達成志向型が合致

SL理論との違い

試験では両者を区別する問題が頻出です。見分けるポイント:

項目SL理論パス=ゴール理論
何を見ているかフォロワーの 成熟度(能力×意欲)目標達成への障害;環境要因も含む
診断の軸「新人か?ベテランか?」「タスク明確か?部下の能力高いか?」
スタイル数44
理論的根拠実践経験から帰納的に構築期待理論;動機づけ理論
適用難度直感的;実践容易やや複雑;理論的思考が必要
試験での出題パターン問題が多い複雑な事例で環境要因を読ませる

変革型リーダーシップとその他

変革型リーダーシップ(バス)

バーナード・バスが提唱した理論です。日常的な報酬・罰による管理ではなく、ビジョンと刺激を通じて部下を変革へ導く リーダーシップです。組織の根本的改革が必要な場面で威力を発揮します。

4つの要素(バスの4I)

要素正式名説明具体例
II:理想化された影響Idealized Influenceリーダーが範を示す;倫理観と自己犠牲困難な局面でも率先垂範;私欲よりも組織の大義を優先
IM:鼓舞する動機付けInspirational Motivation魅力的でビジョンに満ちたメッセージ「このプロジェクトで業界構造を変える」と明確に提示
IS:知的刺激Intellectual Stimulation既存の前提を疑わせ、創意工夫を促す「別の方法で考えてみたら?」と部下の思考を挑戦
IC:個別配慮Individualized Consideration部下を個人として見つめ、成長を支援メンタリング、キャリア開発のサポート

変革型 vs 交流型(交換型)リーダーシップの比較

試験では両者の違いを問う問題が頻出です。特に「どのような変化が起こるか」という部下への影響に注目してください。

項目変革型(トランスフォーメーショナル)交流型(トランザクショナル)
基本メカニズムビジョンと価値観の共有報酬と罰の交換(契約的関係)
動機づけの種類内発的動機付け外発的動機付け
部下への影響価値観の変革;自発的行動へのシフト指示通りの行動を確保
時間軸長期的;組織文化の変革を狙う短期的;即効性を重視
期待値部下の可能性を拡大させる予定通りの遂行を確保
有効な場面組織の根本的改革;不確実で変化の大きい環境日常業務;安定環境;効率重視
問題時の対応例外管理(問題が起きたら対応)-

実証研究から

変革型リーダーは交流型よりも、部下の満足度、組織成果、自発性が高い傾向が示されています。ただし、安定環境では交流型も必要 です。

LMX理論(リーダー・メンバー交換理論)

ジョージ・グレーン(George Graen)らが提唱した、「 リーダーとメンバーの関係の質 」に着目した理論です。試験での出題は増加傾向にあります。

内集団と外集団の形成

リーダーは、無意識のうちに部下全員を同じには扱わない傾向があります。この不公平性が組織行動に影響を与えます。

グループLMXの質リーダーの対応部下への影響
内集団(In-group)高LMX信頼関係が深い;裁量権を与える;情報開示;キャリア支援評価が高い;満足度が高い;組織市民行動が活発
外集団(Out-group)低LMX形式的;指示と監視中心;雑務を割り当てる評価が低い;満足度が低い;離職率が高い

LMXの質が高い部下の特徴

  • 人事評価が高い傾向
  • 仕事の満足度が高い
  • 離職率が低い
  • 組織市民行動(自発的な貢献)が活発

組織への示唆

リーダーは意識的に、内集団と外集団の関係の質を改善する努力が求められます。特に外集団メンバーへの意識的な働きかけが、組織全体の活性化につながります。

サーバントリーダーシップ

ロバート・グリーンリーフが提唱した、従来の権力構造と 逆の概念 です。「導くために奉仕する」という新しいリーダーシップ像であり、近年の人材育成論で注目されています。

10の要素(グリーンリーフ)

サーバントリーダーが実践する、中心的な姿勢と行動:

要素説明リーダーの具体的行動
傾聴部下の声に耳を傾ける質問を多くし、相手の話を最後まで聞く
共感部下の立場や感情を理解「そういう気持ちなんですね」と受け止める
癒し心理的な傷や疲れを認識し回復を支援メンタルの不調に気づき、サポートする
気づき自分と組織の問題に気づかせる客観的視点から課題を指摘する
説得強制ではなく説得と対話「〇〇すべき」ではなく、理由を説明して納得させる
概念化長期ビジョンを描く5年後、10年後の組織像を示す
先見性過去の教訓と現在から未来を予見歴史の学びを活かして、将来の課題を予測
管理者性部下と組織の福祉を守るルール作りと実行;メンバーの利益を優先
部下の成長成長と自立を最優先キャリア開発;責任ある仕事の委譲
コミュニティへの貢献組織を超えた社会的責任地域活動;業界への貢献

組織文化への影響

サーバントリーダーシップが浸透した組織では、メンバーも互いに奉仕する姿勢が広がり、心理的安全性と相互信頼が高まる傾向が報告されています。

オーセンティックリーダーシップ

「本物(authentic)」のリーダーシップを強調する理論です。リーダーの自己認識と本来の自分に基づくリーダーシップであり、以下の特性を持ちます:

  • 自己認識:自分の強み、弱み、価値観を理解している
  • 透明性:部下に対して誠実で、隠蔽がない
  • 倫理的行動:道徳的原則に基づいて行動
  • バランスの取れた処理:異なる視点を積極的に求める

典型的なつまずきと正解への道

つまずき1:モチベーション理論とリーダーシップ論の混同

誤り:「マズロー、ハーズバーグはリーダーシップ論」と思い込む

正解

  • モチベーション理論:「人のやる気をどう引き出すか」という個人の心理
  • リーダーシップ論:「人をどう導き、組織目標を達成するか」という集団の関係と成果

異なるレベルの問い。モチベーション理論はリーダーシップの一部を説明しますが、リーダーシップはより広い概念です。

つまずき2:SL理論とパス=ゴール理論の条件の混同

誤り:「両方とも4スタイルだから同じ」と思い込む

正解

  • SL理論:フォロワーの 成熟度(能力×意欲)が主軸;部下の発達段階を見ている
  • パス=ゴール理論:目標達成の 障害除去 が主軸;環境とタスク特性を見ている

例:高い能力と意欲の部下(M4)には SL理論では S4(委任型)が正解ですが、その部下の業務が複雑で曖昧な場合、パス=ゴール理論では 参加型 が有効かもしれません。

つまずき3:変革型を「カリスマ性」だけで理解する

誤り:「変革型 = 話術が上手で感動させるリーダー」と狭く理解

正解

  • カリスマ性は見た目や話術だけではない
  • 倫理観、知的刺激、個別配慮など、具体的で地道な行動が重要
  • 「感動させる」だけでなく「思考と行動の根本的変化を促す」ことが目標

つまずき4:民主型を常に最善と固定化する

誤り:「民主型が最善だから、いつもこれを使うべき」

正解

  • 不確実で複雑な環境では民主型が有効
  • 危機時や緊急時は専制型の迅速さが必要
  • 部下の成熟度が低い場合(M1)は S1(教示型)が適切;民主型では部下が困惑する

つまずき5:理論を背景情報なしで機械的に適用する

誤り:「M3なので S3」と暗記だけに頼る

正解

  • 「なぜこの成熟度なのか」を背景から判定する
  • 「環境は安定しているか」「タスクは明確か」を含めて考える
  • 事例問題では、細部から最適なスタイルを推論する

試験で確実に得点するための整理

ステップ1:「どの理論か」を瞬時に見分ける

問題文のシグナル該当理論
「知能、決断力、社交性...リーダーの特性」特性理論
「リーダーの行動パターン、指示と支援のバランス」行動理論(オハイオ、PM理論等)
「新人、経験豊富、成熟度が低い/高い」SL理論
「タスク明確か不明確か、障害は何か」パス=ゴール理論
「ビジョン、組織変革、カリスマ性」変革型リーダーシップ
「リーダーと部下の関係の質が異なる」LMX理論
「奉仕、部下の成長を最優先」サーバントリーダーシップ

ステップ2:主語を確認する

主語見るポイント該当理論
リーダー本人資質?行動?特性理論、行動理論
フォロワー(部下)成熟度?能力?意欲?SL理論
フォロワーと環境タスク明確か?ストレスか?パス=ゴール理論
リーダーとフォロワーの関係信頼度、裁量権の度合いLMX理論
組織全体文化変革?新事業?変革型リーダーシップ

ステップ3:「条件付き対応」を確実に答える

試験は「AさんはM2だから、どのスタイル?」という 条件付き問題 が大多数です。以下の対応を暗記してください:

SL理論の成熟度と対応スタイル

  • M1(低能力・高意欲)→ S1:教示型
  • M2(低~中能力・中~低意欲)→ S2:説得型
  • M3(中~高能力・変動する意欲)→ S3:参加型
  • M4(高能力・高意欲)→ S4:委任型

パス=ゴール理論の状況と対応スタイル

  • タスク曖昧 → 指示型
  • ストレス多い環境 → 支援型
  • 部下が参加したい → 参加型
  • 達成欲求が高い → 達成志向型

確認問題

確認問題 1:SL理論の基本

問:成熟度の判定と対応スタイル

ある営業チームで、新しい営業手法を導入しました。営業成績が良く、顧客対応の能力が高い営業Aさんは、新手法を学ぶ際に「本当にこのやり方で売上が伸びるのか」と疑問を抱いており、判断が迷っています。SL理論に基づき、リーダーが取るべきスタイルはどれか。

(A) S1:教示型。新手法の手順を細かく指示する (B) S2:説得型。指示しながら新手法が有効である理由を詳しく説明する (C) S3:参加型。Aさんと一緒に新手法の運用方法を考える (D) S4:委任型。ほぼ任せて、相談があれば乗る

解答:(C) S3:参加型

解説:

  • Aさんの能力:高い(営業成績が良く、顧客対応能力が高い)
  • Aさんの意欲:中~低下(新手法への疑問と判断の迷い)
  • 成熟度判定:M3(中~高能力・変動する意欲)
  • M3に対応するスタイル:S3:参加型
  • 理由:Aさんは能力があるので「やり方を指示される」ことを嫌がります。重要なのは、新手法の有効性をAさん自身が納得し、主体的に取り組むこと。そのため「一緒に考える」参加型が最適です。

確認問題 2:パス=ゴール理論の状況判定

問:環境と対応スタイルの選択

生産管理部門では、作業手順が標準化され、各メンバーの業務内容が明確に決められています。しかし、納期に追われる日々が続き、メンバーは単調な業務に疲弊し、やり甲斐を感じていません。心理的なストレスが高まっており、部下との関係構築が課題です。パス=ゴール理論に基づき、リーダーが取るべきスタイルはどれか。

(A) 指示型。標準化を徹底し、業務のばらつきをなくす (B) 支援型。メンバーの心情に配慮し、親しみやすい雰囲気づくり (C) 参加型。メンバーと相談して業務改善案を一緒に考える (D) 達成志向型。高い納期目標を設定し、達成意欲を刺激する

解答:(B) 支援型

解説:

  • 環境分析:業務が明確に構造化されている(手順が決まっている)
  • 課題:単調さのストレスと所属感・やり甲斐の低下(心理的な満足度不足)
  • パス=ゴール理論では、タスク構造が既に明確な場合、さらに指示型を強化すると逆効果です
  • 必要な対応:メンバーの心理的福祉への配慮と親しみやすい関係構築
  • 結果:支援型 が適切

補足:パス=ゴール理論では「障害の除去」がリーダーの役割。ここで最大の障害は「心理的なストレスと不安」です。

確認問題 3:変革型 vs 交流型の場面判定

問:組織変革局面での最適なリーダーシップ

業界内での競争が激化し、既存事業の市場が急速に縮小しています。経営層は、組織全体が新しい事業領域に積極的にチャレンジし、失敗を恐れず創意工夫を発揮することを望んでいます。このような根本的な組織変革の局面で、より有効なリーダーシップはどちらか。また、その理由を簡潔に述べよ。

(A) 交流型リーダーシップ (B) 変革型リーダーシップ

解答:(B) 変革型リーダーシップ

解説:

  • 状況分析:既存事業の縮小 → 必要なのは根本的な事業転換と組織文化の変革
  • 求められるもの:新領域へのチャレンジ、失敗許容、創意工夫(内発的動機)
  • 交流型の限界:報酬と罰による日常管理に適している。既存業務の安定した遂行には有効だが、組織変革には不向き
  • 変革型の有効性:
    • ビジョン:新事業領域での成長像を明確に示す
    • 知的刺激:既存の前提を疑わせ、新視点を促す
    • 個別配慮:チャレンジを支援し、失敗から学ぶ環境をつくる
    • 理想化された影響:率先垂範してチャレンジの姿勢を示す

補足:変革型リーダーシップは、部下の内発的動機付けを高め、組織文化の根本的な変革に有効です。


このページの後で読むページ

リーダーシップ論を理解した後は、以下のページで知識を深め、事例問題に応用してください:

このページは役に立ちましたか?

評価とひとことを残してもらえると、内容と導線の改善に使えます。

Last updated on

On this page

このページの役割リーダーシップ理論の発展系統学習のポイント特性理論定義と基本思想主な特性限界と歴史的転機つまずきポイント行動理論定義と転機レビンのリーダーシップ類型(アイオワ研究)オハイオ州立大学研究2つの行動次元組み合わせによる有効性PM理論(三隅二不二)P機能とM機能PM理論の4つのリーダーシップ型マネジリアル・グリッド(ブレイク&ムートン)5つのスタイルと位置行動理論の共通メッセージ状況適応理論(コンティンジェンシー理論)理論転換の理由フィードラーのコンティンジェンシー理論LPC尺度(Least Preferred Coworker)状況の有利さを決める3要素(優先順)有効性の基本法則理論の限界と後続理論への道SL理論(シチュエーショナル・リーダーシップ理論)フォロワーの成熟度4段階対応するリーダーシップスタイル4つSL理論の重要な気づきパス=ゴール理論(ハウス)理論のコア:「リーダーの役割」4つのリーダーシップスタイル状況要因による使い分けSL理論との違い変革型リーダーシップとその他変革型リーダーシップ(バス)4つの要素(バスの4I)変革型 vs 交流型(交換型)リーダーシップの比較実証研究からLMX理論(リーダー・メンバー交換理論)内集団と外集団の形成LMXの質が高い部下の特徴組織への示唆サーバントリーダーシップ10の要素(グリーンリーフ)組織文化への影響オーセンティックリーダーシップ典型的なつまずきと正解への道つまずき1:モチベーション理論とリーダーシップ論の混同つまずき2:SL理論とパス=ゴール理論の条件の混同つまずき3:変革型を「カリスマ性」だけで理解するつまずき4:民主型を常に最善と固定化するつまずき5:理論を背景情報なしで機械的に適用する試験で確実に得点するための整理ステップ1:「どの理論か」を瞬時に見分けるステップ2:主語を確認するステップ3:「条件付き対応」を確実に答える確認問題このページの後で読むページ