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経営法務(令和6年度)

令和6年度(2024)中小企業診断士第1次試験 経営法務の全24問解説

概要

令和6年度(2024年)経営法務は、会社法(監査・株式・資金調達)、民法(売買・手形・債権)、知的財産法(商標・著作権)、その他法律(特許、不正競争、景品表示法)など幅広い領域から24問出題されました。

問題文は J-SMECA 公式サイト(令和6年度(2024) 経営法務) から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。

解説の読み方

各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。

会社法が総出題数の約50%を占め、特に監査等委員会設置会社株式に関する制度が重要論点となっています。その他、知的財産権の登録・権利化、消費者契約法、不正競争防止法など、中小企業経営に直結する実務的知識が問われています。

出題分布

  • 会社法関連: 約12問(50%)
  • 知的財産法: 約6問(25%)
  • 民法(債権): 約4問(17%)
  • その他(景品表示法、不正競争防止法、消費者契約法など): 約2問(8%)

全問分類マップ

問番領域論点難度正解
1会社法監査等委員会設置会社標準
2会社法監査役の選定と権限標準
3会社法公開会社の少数株主権標準
4会社法剰余金配当と利益準備金標準
5会社法社債と社債権標準
6会社法定款の絶対記載事項標準
7会社法名義株と株式の譲渡制限設問1:イ、設問2:エ
8会社法株式の併合と分割標準
9独占禁止法独占禁止法と課徴金減免制度標準
10知的財産法特許法の職務発明標準
11知的財産法産業財産権の先使用権標準
12知的財産法営業秘密と不正競争防止法標準
13知的財産法商標登録の対象(動き・立体商標)イ(①:b、②:e)
14知的財産法電子書籍・電子雑誌と商標法標準エ(①:b、②:d)
15知的財産法著作権(写り込み)と意匠権エ(①:b、②:d)
16知的財産法パリ条約と優先権標準
17知的財産法職務発明の権利帰属標準
18知的財産法商標権の通常使用権と移転標準
19民法英文契約と国際取引(Severability)標準
20民法売買契約と契約不適合責任標準
21民法売買契約における手付標準
22その他法律不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)標準
23その他法律消費者契約法標準
24民法民法上の不法行為標準

形式層分布

出題形式

  • 択一型: 多数
  • 複合問題(空欄補充型):問7(設問1・2)、問13(①②の組み合わせ)、問14(①②の組み合わせ)、問15(①②の組み合わせ)

難度別分布

  • 基礎標準: 大多数
  • 応用難問
    • 問7(名義株・株式譲渡制限・事業譲渡の複合)
    • 問13(動き商標・立体商標の現代的論点)
    • 問15(著作権の写り込み規定・意匠権)

各問解説

問1 監査等委員会設置会社

問題要旨 会社法が定める監査等委員会設置会社に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K5-会社形態と機関設計
  • 監査等委員会設置会社
  • 会社法327条の2・328条

正解: イ(監査等委員会設置会社は、大会社であるか否かにかかわらず、会計監査人を設置しなければならない)

監査等委員会設置会社は、会社の規模(大会社か否か)に関わらず、会計監査人の設置が義務付けられています(会社法327条の2)。これは監査等委員会設置会社が選択的に採用できる機関設計でありながら、外部監査を必須とする点で特徴的です。

必要知識

  • 3つの機関設計形態(監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社)の違い
  • 会計監査人の設置要件

解法の思考プロセス

  1. 監査等委員会設置会社の特徴を確認:2015年会社法改正で導入された中間的な機関設計
  2. 執行役・代表執行役は指名委員会等設置会社の制度であり、監査等委員会設置会社には執行役が置かれないことを確認
  3. 監査等委員である取締役は公開会社か否かを問わず3人以上必要(過半数は社外取締役)
  4. 会計監査人の設置義務を確認:大会社要件に関わらず義務

誤答の落とし穴

  • ア:「執行役の中から代表執行役を選定しなければならず、執行役が1人のときは、その者が代表執行役になる」指名委員会等設置会社の規定(会社法420条)。監査等委員会設置会社には執行役が置かれない
  • **ウ:「公開会社でない監査等委員会設置会社は、監査等委員である取締役を1人選任すればよい」**は誤り。公開会社か否かを問わず3人以上が必要
  • **エ:「公開会社でない監査等委員会設置会社は、社外取締役である監査等委員を選任する必要はない」**は誤り。公開会社か否かを問わず監査等委員の過半数は社外取締役が必要

学習アドバイス 会社法の3つの機関設計(監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社)を比較表で整理することが重要です。特に「執行役」は指名委員会等設置会社のみに置かれる役職であり、監査等委員会設置会社と混同しやすい論点です。


問2 監査役の選定と権限

問題要旨 会社法が定める監査役および監査役会に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K5-会社形態と機関設計
  • 監査役の選定と権限
  • 会社法335条~340条

正解: ア(監査役会設置会社においては、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならないが、社外監査役を常勤の監査役とすることもできる)

監査役会設置会社では、常勤の監査役の選定が義務付けられています(会社法390条3項)。ただし、常勤の監査役は社外監査役でも構いません。「常勤=社内の者」という誤解がないよう注意が必要です。

必要知識

解法の思考プロセス

  1. 監査役会設置会社の特徴を確認:3人以上、うち半数以上は社外監査役
  2. 常勤監査役の選定義務と、誰でも常勤になれるか確認(社外監査役でも可)
  3. イ「過半数は社外監査役でなければならない」は誤り(「半数以上」が正確な要件)
  4. ウ「報酬は株主総会の決議のみ」は誤り(定款で定めることも可能)
  5. エ「解任に正当な理由が必要」は誤り(正当な理由は損害賠償の免責条件)

誤答の落とし穴

  • **イ:「過半数は社外監査役」**は数値の誤り(「半数以上」が正確)
  • **ウ:「定款での報酬規定は不可」**の誤認
  • **エ:「解任に正当な理由が必要」**と損害賠償請求権の関係を混同

学習アドバイス 監査役会設置会社の要件(3人以上・半数以上は社外・常勤1人以上)と、各役割の定義(常勤・非常勤・社外・非社外)を組み合わせて整理してください。「常勤の監査役」は社外監査役でも選定できる点が本問の核心です。


問3 公開会社の少数株主権

問題要旨 下表は、会社法が定める公開会社である取締役会設置会社における少数株主権の議決権および継続保有期間をまとめたものである。表の中の空欄A~Dに入る数値の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

分類タグ

  • K5-少数株主権
  • 公開会社の権利要件
  • 会社法303条~311条

正解: イ

公開会社における少数株主権は、議決権数(株式数)と継続保有期間の両要件で決まります:

  • 株主提案権:議決権の100分の1以上または300個以上 + 6ヶ月継続保有
  • 株主による株主総会の招集請求権:上位議決権の1/100以上 + 6ヶ月継続保有

必要知識

  • 公開会社と非公開会社の権利要件の違い
  • 議決権と提案権の関係

解法の思考プロセス

  1. 公開会社と非公開会社で要件が異なることを確認
  2. 各権利の最低株式数と保有期間を設問から読み取り
  3. 表の行「株主提案権」と「株主総会招集請求権」で異なる数値を注意

誤答の落とし穴

  • 議決権数と継続保有期間を混同
  • 公開会社と非公開会社の要件を混同

学習アドバイス 少数株主権は、会社の規模(公開・非公開)によって大きく異なるため、表として整理して覚えることが効果的です。試験では「最も適切な組み合わせ」として出題されることが多いため、複数の権利の要件を同時に比較できる準備が必要です。


問4 剰余金配当と利益準備金

問題要旨 会社法が定める剰余金配当に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、中間配当は考慮しないものとし、取締役の任期は2年とする。

分類タグ

  • K5-資金調達と配当
  • 剰余金配当の制限
  • 会社法460条~461条

正解: ア

剰余金配当の制限は複雑ですが、重要な原則は:

  1. 配当可能額は、剰余金から利益準備金を控除した額
  2. 利益準備金は毎決算で積立(配当金の1/10、最高で資本金の1/4まで)
  3. 剰余金配当が承認された場合、配当請求権は株式に基づく権利(不可分)

必要知識

解法の思考プロセス

  1. 剰余金配当の可能額を確認:利益準備金を差し引く
  2. 設問の「取締役の任期2年」から「中間配当」の除外理由を理解
  3. 配当請求権は「株式に付着する権利」であることを確認
  4. 各選択肢を吟味:ア・イは利益準備金の要件、エは配当の全体構成を誤認

誤答の落とし穴

  • ア:株式配当の制限と通常配当を混同
  • イ:利益準備金の算出根拠を誤認(配当金の1/10 OR 資本金の1/4まで)
  • エ:配当可能額の算定における利益準備金の役割を過小評価

学習アドバイス 剰余金配当は、会社の資本充実原則を守るための制度です。利益準備金、配当可能額、配当請求権という3つのレイヤーを段階的に理解することが大切です。


問5 社債と社債権

問題要旨 会社法が定める社債に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、本問における株式会社は、取締役会設置会社であり、定款において特段の定めはないものとする。

分類タグ

  • K5-資金調達と社債
  • 社債権の法的性質
  • 会社法676条~702条

正解: イ(社債権者が社債権者集会の目的である事項を提案した場合において、当該提案が会社の意見を得たことにより合意の意思を示したときは、当該提案を可否決議する旨の社債権者集会の決議があったものとみなされる)

社債権者集会は、複数の社債権者の利益を調整するための機関です。集会開催の簡略化として、提案に対する会社の事前同意があれば、決議不要とみなす仕組みがあります。

必要知識

  • 社債権者集会の機能
  • 社債権と共有性
  • 会社と社債権者の関係

解法の思考プロセス

  1. 社債権の性質を確認:債権性(株式と異なる)
  2. 社債権者集会と取締役会の関係を整理
  3. 集会開催要件と決議簡略化の仕組みを確認
  4. 各選択肢:ア・ウ・エは社債権者集会の構成や決議要件の誤認

誤答の落とし穴

  • ア:社債権者集会の構成と株主総会を混同
  • ウ:社債権者の報告請求権と決議を分離せず理解
  • エ:社債権の相互補完性を過度に適用

学習アドバイス 社債は、株式と異なり債権性を持つため、社債権者集会も株主総会とは異なるルールが適用されます。特に「集会簡略化」の仕組みは実務的に重要な論点です。


問6 定款の絶対記載事項

問題要旨 定款の記載事項は、絶対的記載事項(定款に必ず記載または記載しなくない事項であって、これらの記載または記載しないといいその事項の効力が認められないもの)、相対的記載事項(定款で定めないといいその事項の効力が認められないもの)、任意的記載事項(定款に記載されても他の方法で定めてもいずれでも有効であるにもかかわらず、会社の意思で定款に記載する事項)に分類される。

次の事項のうち、株式会社の定款における絶対的記載事項ではないものの組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

分類タグ

  • K5-定款と会社の基本事項
  • 定款の記載事項分類
  • 会社法27条~36条

正解: エ(dとe)

定款の絶対記載事項(会社法27条):

  1. 目的(事業目的)
  2. 商号
  3. 本店の所在地
  4. 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  5. 発起人の氏名または名称および住所
  6. 発行可能株式総数

絶対記載事項ではないもの:

  • d「取締役の員数」→任意的記載事項(定款で定めなくても有効)
  • e「定時株主総会の招集時期」→任意的記載事項(定款で定めなくても有効)

必要知識

  • 定款の3分類(絶対的・相対的・任意的)
  • 会社法27条の記載事項

解法の思考プロセス

  1. 絶対記載事項の範囲を確認(会社法27条の1〜5号と発行可能株式総数)
  2. a(本店の所在地)・b・c(発起人の氏名)はいずれも絶対的記載事項
  3. d(取締役の員数)・e(定時株主総会の招集時期)は任意的記載事項
  4. 「絶対的記載事項ではないもの」の組み合わせ=エ(dとe)

誤答の落とし穴

  • ア(aとc):本店所在地(a)も発起人の氏名住所(c)も絶対的記載事項なので誤り
  • イ・ウ:bを含む組み合わせも誤り(bは絶対的記載事項)

学習アドバイス 定款の絶対記載事項は会社法27条に列挙された6項目のみです。「取締役の員数」「株主総会の開催時期」などは任意的記載事項であり、定款に記載しなくても会社は有効に設立されます。「記載しないと無効になるか」という視点で分類を整理してください。


問7 名義株と株式譲渡制限

問題要旨 以下の会話は、X株式会社(以下「X社」という。)の株主兼中小企業診断士である甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。

設問1: イ 設問2: エ

分類タグ

  • K5-株式と株主の権利
  • 名義株の法的性質
  • 株式譲渡制限
  • 会社法107条、113条

正解と根拠

設問1

正解: イ 「会話の中の空欄Aと Bに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか」

会話の文脈:

  • 甲氏が「私以外に他人名義で記載された株主がいるが、名義株の法的性質はどうか」→実質的株主と名義株主の関係
  • 対話者が「名義株の場合、実質的株主と名義株主の間で株がどちらであるかが曖昧になる」→株主名簿に記載されることが株式の権利帰属を決定する(対抗要件)
  • 甲氏が「X社の株式を他社に譲渡するに当たって、どのような手続が必要か」→譲渡制限株式の場合は譲渡制限がある

設問2

正解: エ 「会話の中の空欄Cと Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか」

会話の文脈:

  • 対話者が「会社全部をY社に事業譲渡する場合、X社では株主総会の特別決議が必要」→会社の根本的変更には特別決議
  • 「反対株主には、株式買取請求権がある」→特別決議に反対した株主は株式買取請求権を行使可能

必要知識

  • 名義株の法的問題と対抗要件
  • 株式譲渡制限の制度設計
  • 事業譲渡と株主決議
  • 反対株主請求権

解法の思考プロセス

  1. 名義株の本質を理解:実質的株主 ≠ 名義株主の乖離が法的問題を生む
  2. 対抗要件としての株主名簿:株主名簿への記載が「株主」を定める
  3. 実質的株主が他者に譲渡する場合:非公開会社なら譲渡制限あり
  4. 会社全体をY社に譲渡する場合:根本的変更なので株主総会の特別決議必須
  5. 反対株主は買取請求権を行使可能(株主総会の特別決議の保護機構)

誤答の落とし穴

  • **設問1:「A=総株主の議決権」「B=発行株式数」**と誤認(全く異なる概念)
  • 設問2:「C=普通決議」と思い込む(根本的変更は株主総会の特別決議が必須)
  • 実質的株主と名義株主の法律上の地位を混同
  • 非公開会社の譲渡制限と公開会社の規制を混同

学習アドバイス この問題は、名義株の実務的複雑性株式譲渡制限制度、そして会社の根本的変更という3つの論点を同時に問う難問です。

重要なポイント:

  1. 名義株の本質:法律上の形式(株主名簿記載者)と経済的実質(実質的出資者)が乖離する状況
  2. 対抗要件:会社法107条により「株主名簿に記載されること」が最も強い権利帰属の根拠
  3. 譲渡制限:非公開会社では株主の同意が必須(少数株主権の発動と対になる)
  4. 株主総会の特別決議と反対株主保護:会社の存亡にかかる事項だからこそ、株主総会の特別決議 + 買取請求権のセット

この問題を解くには、会社法全体の体系的理解が必要です。


問8 株式の併合と分割

問題要旨 会社法が定める株式の併合および分割に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、本問における株式会社は既存役会設置会社であり、種族株式発行会社ではないものとする。

分類タグ

  • K5-株式と資本構成
  • 株式併合と株式分割
  • 会社法180条~184条

正解: イ(株式の併合には反対株主の株式買取請求権があるが、株式の分割にはそのような規定がない)

  • 株式の併合:株主総会の特別決議が必要。少数株主を強制排除する効果があるため、反対株主の株式買取請求権が認められる
  • 株式の分割:取締役会設置会社では取締役会決議で足りる(特別決議は不要)。株主全体の株式数が同比率で増加するため株主に不利益がなく、買取請求権もない

必要知識

  • 株式併合と株式分割の決議要件の違い
  • 反対株主の株式買取請求権

解法の思考プロセス

  1. 株式の分割:株主全員が均等に利益を受けるため取締役会決議で足りる
  2. 株式の併合:1株未満の株式が生じる可能性があり少数株主保護が必要→特別決議
  3. 反対株主の買取請求権:株式の併合にはあるが、分割にはない点が本問の核心
  4. アの「いずれも特別決議」は誤り(分割は取締役会決議で可)

誤答の落とし穴

  • **ア:「分割も特別決議が必要」**の誤認(分割は取締役会決議で足りる)
  • ウ:発行可能株式数の変更に関する要件を誤認
  • エ:公開会社の規制に関する誤認

学習アドバイス 「株式の併合」と「株式の分割」は、決議要件と反対株主保護の有無が全く異なります。「分割は株主に有利→取締役会決議、買取請求なし」「併合は株主に不利→特別決議、買取請求あり」として対比して覚えてください。


問9 独占禁止法と課徴金減免制度

問題要旨 独占禁止法が定める課徴金および課徴金減免制度に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、調査協力減免制度における調査協力度は考慮しないものとする。

分類タグ

  • K4-反競争的行為の規制
  • 課徴金減免制度
  • 独占禁止法20条、65条~67条

正解: イ(課徴金減免制度における申請は、所定の報告書を電子メールで公正取引委員会に提出する方法に限られている)

課徴金減免制度(リーニエンシー制度)は、カルテル等の違反を自主申告した企業に対して課徴金を減免する仕組みです。令和元年改正後の申告順位と減免率:

  • 調査開始前・1番目申告:全額免除(100%)
  • 調査開始前・2番目申告:50%減額
  • 調査開始前・3番目申告:30%減額
  • 調査開始後の申告:減免対象者数の上限廃止、一定の減算あり

必要知識

  • カルテルと不当な取引制限
  • 課徴金の算定基礎
  • 課徴金減免制度(令和元年改正)

解法の思考プロセス

  1. 課徴金減免制度の根本的目的を確認:「自主的是正の奨励」
  2. 申請方法の確認:電子メールで公正取引委員会に提出(これが正解)
  3. アは誤り:課徴金算定率の中小企業への減額規定(10%→4%)は独占禁止法にはない
  4. ウは誤り:調査開始後も申告できる(開始後でも減算を受けられる)
  5. エは誤り:再販売価格維持行為は減免制度の対象外

誤答の落とし穴

  • **ア:「中小企業への特例措置(課徴金算定率の減額)がある」**という誤認(そのような規定はない)
  • ウ:調査開始後は申告できないという誤認(開始後も申告可能)
  • エ:再販売価格維持行為と課徴金減免制度を誤って関連付ける

学習アドバイス 令和元年改正により、申告対象者数の上限廃止・調査協力度に応じた減算が追加されました。「1番申告=全額免除、以降は減免率が低下」という基本構造と、「電子メールによる申請」という手続的要件を押さえてください。


問10 特許法の職務発明

問題要旨 特許法に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K5-特許法の基本
  • 職務発明と権利帰属
  • 特許法35条

正解: イ

職務発明は、従業者が職務に関連して発明した場合、特許を受ける権利が従業者に帰属する原則(帰属主義)から始まります(特許法35条1項)。ただし、会社と従業者の間で特許法35条に基づく契約や勤務規則等がある場合、帰属を会社に移転させることができます。その際、会社は従業者に相応の利益を享受させなければなりません(同条5項)。

必要知識

  • 発明の権利帰属
  • 特許を受ける権利と特許権の区別
  • 従業者の相応の利益享受権

解法の思考プロセス

  1. 職務発明の定義を確認:従業者が「職務に関連して」発明
  2. デフォルト帰属を確認:従業者に帰属(会社へは契約による変更可)
  3. 従業者の権利保護:相応の利益享受権がある
  4. 各選択肢を検証:ア・イは帰属ルールの誤認、エは権利主体の混同

誤答の落とし穴

  • ア:特許庁への出願義務と職務発明を誤関連
  • イ:実用新案登録出願と特許出願を混同
  • エ:特許出願の主体や権利を誤認

学習アドバイス 職務発明制度は、従業者と企業の利益バランスを取るための制度です。「誰が権利を持つのか」「どのように権利移転するのか」を明確に理解してください。


問11 産業財産権の先使用権

問題要旨 産業財産権に関する法律についての記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K5-産業財産権と先使用権
  • 先使用権の発生条件
  • 特許法79条、実用新案法15条

正解: ウ

先使用権は、他者の特許出願よりも先に、その発明を実施していた者が、継続して実施する限度で、特許権の侵害にならない権利です(特許法79条)。出願日前から実施していたことが要件です。

**注意:実用新案には出願公開制度がありません。**特許は出願から1年6ヶ月で出願公開されますが、実用新案は無審査で登録されるため公開制度がなく、出願から約半年で登録されます。これは試験で誤答を誘う重要な違いです。

必要知識

  • 特許出願の公開制度(出願から1年6ヶ月)
  • 実用新案の登録制度(無審査登録、公開制度なし)
  • 先使用権の3つの要件(出願前から実施・善意・継続)

解法の思考プロセス

  1. 先使用権の基本的な要件を確認:「出願日より前の実施」「善意」「継続実施」
  2. 実用新案と特許の出願制度の違いを確認:実用新案には公開制度がない
  3. 商標の先使用権(商標法32条)との比較

誤答の落とし穴

  • **イ:「実用新案登録出願は出願から1年6ヶ月で公開される」**は誤り(実用新案に公開制度はない)
  • 特許の公開制度(1年6ヶ月)と実用新案の登録制度を混同しやすい

学習アドバイス 先使用権は、実務的には「古くから実施していた小規模企業が新興企業の特許侵害請求から守られる」制度として理解すると重要性が明確になります。また、実用新案には公開制度がないという点は特許との大きな違いであり、頻出の論点です。


問12 営業秘密と不正競争防止法

問題要旨 不正競争防止法に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K5-営業秘密の保護
  • 不正競争防止法2条
  • 営業秘密の要件

正解: ア(営業秘密の定義は、秘密として管理される生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術または経営上の情報であって、公然と知られていないもの)

営業秘密は、3つの要件で定義されます:

  1. 秘密として管理されていること(アクセス制限)
  2. 事業活動に有用な情報(競争上の利益)
  3. 一般に知られていないこと(秘密性)

必要知識

解法の思考プロセス

  1. 営業秘密の定義を3要件で確認
  2. 特許等の登録制度と異なり「登録なしに保護」される点を理解
  3. 各選択肢の検証:イ「物質的な固有性」、ウ「登録要件」、エ「時間制限」

誤答の落とし穴

  • イ:物理的な物質と営業秘密を混同(営業秘密は「情報」)
  • ウ:登録による保護と思い込む(営業秘密は無登録で保護)
  • エ:一定期間のみの保護と誤認(秘密性が保たれる限り保護)

学習アドバイス 営業秘密は、「秘密として管理されている」ことが最重要です。会社内の標識、アクセス制限、秘密保持契約など、実質的な秘密管理体制が整備されていることが、権利者の保護を決定します。


問13 商標登録の対象(動き商標・立体商標)

問題要旨 以下の会話は、レストランを立ち上げる予定の甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話の中の空欄①と②に入る語句として、あなたの発言として「a~f の記述のいずれかが入る。各欄に該当する記述の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

正解: イ(①:b、②:e)

分類タグ

  • K5-商標登録の要件
  • 商標の識別力と登録適格性
  • 商標法2条・3条

正解と根拠

空欄①

正解: b(「文字を含んだ動き商標を登録することは、制度上認められています」)

空欄①の文脈:

  • 甲氏が「動いている店名ロゴの商標登録はできるか」と質問
  • 動き商標(文字や図形が動くもの)は商標法上の登録対象となる
  • 「静止した画像でなければ登録できない」という誤解を解く内容

空欄②

正解: e(「人形のような立体的形状は商標登録の対象になります。文字を含んだ立体商標を登録することも、制度上認められています」)

空欄②の文脈:

  • 甲氏が「立体的な形状(店名が入った人形など)の商標登録は可能か」と質問
  • 立体商標も文字付きでも商標登録が可能であることを説明

必要知識

  • 商標の識別力
  • 商標の表示方法と登録要件
  • 動く商標・立体商標・音商標・色彩商標の扱い

解法の思考プロセス

  1. 商標登録の基本要件を確認:商標法2条(標章の定義)、3条(識別力)
  2. 現代の商標法では多様な形態の商標が保護対象となっている
  3. 設問①:動き商標(文字付き)は登録可能 → b が正解
  4. 設問②:立体商標(文字付き)も登録可能 → e が正解

誤答の落とし穴

  • **a:「動いているものは登録できない」**は誤り(動き商標は登録可能)
  • **d:「文字を含まない動き商標は登録できない」**は誤り(文字の有無を問わず登録可能)

学習アドバイス 商標登録は、**識別力(その商標により商品・役務を識別できるか)**が最重要です。現代の商標法では以下も保護対象になっています:

  • 動く商標(動画)
  • 3次元商標(形状)
  • 音商標(メロディー、音声)
  • 色彩商標(単色)

この問題は、近年の商標法の進化を問う難問です。


問14 電子書籍・電子雑誌と商標法

問題要旨 出版社を立ち上げる予定の甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。

正解: エ(①:b、②:d)

分類タグ

  • K5-商標権と出版業
  • 電子出版物の商標法上の地位
  • 商標法2条・6条

正解と根拠

空欄①

正解: b(「『電子書籍の制作』というような役務について商標登録することは可能です」)

  • 商標登録区分第41類において「電子出版物の提供」が指定役務として認められており、電子書籍の制作・提供は商標法上の役務に該当する
  • 紙媒体の制作だけでなく、電子媒体の制作も商標登録できる

空欄②

正解: d(「『電子化した雑誌』は商標法上の商品に該当します。したがって、そのタイトルも商標登録の対象となり得ます」)

  • 商品「電子出版物」は商標法上第9類で指定商品として認められている
  • 電子化した雑誌も商標法上の「商品」に該当するため、タイトルも商標登録の対象となり得る

必要知識

  • 商標の指定商品・指定役務の区分
  • 電子出版物の商標法上の地位

解法の思考プロセス

  1. 商標法が「商品」と「役務(サービス)」の双方を保護することを確認
  2. 電子書籍制作は「役務」として商標登録可能(第41類)
  3. 電子雑誌は「商品(電子出版物)」として商標登録可能(第9類)
  4. 「電子媒体は商標法の対象外」という誤解が不正解選択肢の根拠

誤答の落とし穴

  • **a:「電子化した媒体については商標登録できない」**は誤り(電子媒体も商標の対象)
  • **c:「電子化した雑誌は商標法上の商品に該当しない」**は誤り(第9類の電子出版物に該当)

学習アドバイス 商標法は、紙媒体と電子媒体を区別なく保護します。出版業においては「本(紙)のタイトル」だけでなく「電子書籍・電子雑誌のタイトル」も商標登録できます。商標の指定商品・役務の区分(ニース協定45区分)を基本的に把握することが重要です。


問15 著作権(写り込み)と意匠権

問題要旨 飲食店を立ち上げる予定の甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話の中の空欄①と②に入る語句として、あなたの発言として「a~f の記述のいずれかが入る。各欄に該当する記述の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

正解: エ(①:b、②:d)

分類タグ

  • K5-著作権の種類と利用
  • 著作権法第30条の2(写り込み)と意匠権
  • 著作権法30条の2、意匠法5条

正解と根拠

空欄①

正解: b(「この規定は動画に録り込まれた音楽にも適用され得ます。著作権侵害とはならない要件が規定されているので、それを検討する必要があります」)

  • 著作権法第30条の2(付随対象著作物の利用=写り込み規定):写真や動画撮影の際に、本来の目的でない著作物が付随的に写り込む場合、一定の条件下で著作権侵害とならない
  • この規定は音楽が動画に写り込む(録り込まれる)場合にも適用され得る

空欄②

正解: d(意匠権に関する正しい説明)

  • 店舗の内装や建物の外観等の意匠(デザイン)は意匠法の保護対象となり得る

必要知識

  • 著作権法30条の2(付随対象著作物の利用・写り込み)
  • 意匠権の保護対象(内装意匠等)

解法の思考プロセス

  1. 著作権法30条の2(写り込み規定)の適用範囲を確認
  2. 動画に写り込んだ音楽にも写り込み規定が適用され得ることを確認
  3. 意匠権と著作権の違いを確認
  4. 内装意匠が意匠法の保護対象となることを確認

誤答の落とし穴

  • **a:「写り込み規定は動画の音楽には適用されない」**は誤り(適用され得る)
  • 著作権と意匠権の適用領域を混同しやすい

学習アドバイス 著作権法30条の2(写り込み規定)は、SNSやYouTube等で「偶然写り込んだ著作物」を扱う現代的な論点です。「主たる撮影対象」以外の著作物が付随的に写り込む場合に適用されます。また、意匠法は2019年改正で内装(インテリア)デザインも保護対象となりました。


問16 パリ条約と優先権

問題要旨 工業所有権の保護に関するパリ条約に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K5-国際知的財産保護
  • パリ条約の優先権制度
  • 工業所有権の国際的保護

正解: ア(同盟国の中で締結された多数国間の条約によって正規の国内出願として認められるすべての出願は、優先権を生じさせることが、パリ条約に規定されている)

パリ条約は、加盟国間で工業所有権(特許・実用新案・意匠・商標)を相互保護する国際条約です。優先権制度により、一国で出願した場合、12か月以内に他国で出願すれば、最初の出願日を基準日とできます。

必要知識

解法の思考プロセス

  1. パリ条約の基本的目的を確認:国際的な工業所有権保護
  2. 優先権の仕組みを理解:「最初の出願日が基準」
  3. 優先権期間を確認:特許で12か月、商標等で6か月(論点による)
  4. 各選択肢の検証:イ「国内民族主義」、ウ「地域示唆」、エ「優先権期間」

誤答の落とし穴

  • **イ:「国籍や所在地が優先権要件」**と思い込む(条約加盟国であることが要件)
  • **ウ:「原始地表示保護」**と特許・商標を混同
  • **エ:「優先権期間が6か月」**と誤認(特許は12か月)

学習アドバイス 国際知的財産保護制度は、グローバルに活動する企業にとって重要です。パリ条約とPCTの関係、各国の出願制度の違いなど、実務的知識が求められます。


問17 職務発明の権利帰属

問題要旨 特許法上の職務発明に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K5-職務発明と権利帰属
  • 従業者と企業の利益配分
  • 特許法35条

正解: エ

職務発明制度の核は、従業者に帰属する特許受取権を、契約等により企業に帰属させることが可能だということです。ただし企業は従業者に「相応の利益」を与える義務があります。

必要知識

解法の思考プロセス

  1. 職務発明の帰属ルールを確認:デフォルトは従業者
  2. 契約による権利移転の可能性を確認
  3. 従業者保護(相応の利益)の要件を理解
  4. 各選択肢の検証:ア「無償譲渡」、ウ「登録出願義務」、エ「第三者の権利」

誤答の落とし穴

  • **ア:「無償で企業に譲渡可能」**と誤認(相応の利益必須)
  • **ウ:「登録出願義務」**と職務発明を混同
  • **エ:「第三者による出願」**と従業者の権利を混同

学習アドバイス 職務発明制度は、従業者と企業の公正な利益配分を目的としています。「相応の利益」の具体的内容(金銭・地位向上など)については、企業と従業者の協議による決定が重要です。


問18 商標権の通常使用権と移転

問題要旨 商標法に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K5-商標権の利用と移転
  • 通常使用権と商標権移転
  • 商標法31条

正解: イ

商標権は、特許権や著作権と異なり、通常使用権(ライセンス)の移転や設定が可能です。その効力発生のために登録が必須です。

必要知識

解法の思考プロセス

  1. 商標権の特徴を確認:譲渡・ライセンスが可能
  2. 通常使用権設定の登録要件を確認
  3. 特許法との比較:特許権の通常実施権(登録不要)との違い
  4. 各選択肢の検証:ア「通常使用権は移転不可」、イ「登録不要」、エ「相対的無効」

誤答の落とし穴

  • **ア:「通常使用権は移転不可」**と誤認(移転可能)
  • **イ:「登録不要」**と思い込む(商標法では登録が効力要件)
  • **エ:「商標権の絶対的無効」**と相対的無効を混同

学習アドバイス 商標権の移転やライセンス設定は、実務的に極めて重要です。登録手続を含めた正確な権利移転プロセスの理解が必要です。


問19 英文契約とSeverability

問題要旨 次の条項は、日本企業と外国企業との間で締結された英文契約においてです。空欄に入る語句として、最も適切なものはどれか。

Article XX [____]
If any provision of this Agreement shall be held to be invalid,
illegal or unenforceable, such provision shall be ineffective only
to the extent of such invalidity, illegality or unenforceability,
and the validity, legality and enforceability of the remaining
provisions shall not in any way be affected or impaired thereby.

分類タグ

  • K5-英文契約と国際取引
  • 契約の有効性と条項の分離性
  • Severability条項

正解: エ(Severability)

Severability条項は、「契約の一部が無効となった場合、残りの条項の有効性は損なわれない」という分離可能性条項です。これにより、一部の無効が全体契約の無効につながるのを防ぎます。

必要知識

解法の思考プロセス

  1. 条文の意味を確認:「一部無効でも残りは有効」
  2. 英文契約の標準的な条項を確認
  3. 各選択肢の検証:
    • ア「Entire Agreement」:全体的合意
    • イ「Force Majeure」:不可抗力
    • ウ「No Waiver」:放棄の禁止
    • エ「Severability」:分離可能性

誤答の落とし穴

  • **ア:「Entire Agreement」**と思い込む(契約全体の統一性を示す別の条項)
  • **イ:「Force Majeure」**は天災や戦争などの不可抗力
  • **ウ:「No Waiver」**は権利の放棄禁止

学習アドバイス 英文契約の標準的な条項と、その日本法での対応概念を理解することが重要です。国際ビジネスにおいては、これらの英文条項が実務的に非常に重要です。


問20 売買契約と瑕疵担保責任

問題要旨 民法が定める売買契約の瑕疵不適合責任に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K4-売買契約と担保責任
  • 瑕疵担保責任と契約不適合
  • 民法570条、575条

正解: ウ

売買契約における瑕疵担保責任は、民法改正(2020年施行)により「契約不適合責任」に変わりました。買主は、売主が目的物を引き渡す際に「契約と異なる状態」であった場合、追完請求・代金減額請求・契約解除などの救済が可能です。

必要知識

解法の思考プロセス

  1. 瑕疵担保責任から契約不適合責任への改正内容を確認
  2. 買主の救済手段(追完・代金減額・解除)を理解
  3. 期間制限と免責特約について確認
  4. 各選択肢の検証:ア「売主の免責」、イ「買主の救済手段限定」、ウ「期間制限」

誤答の落とし穴

  • **ア:「売主は責任を免除される」**と誤認(買主の救済権が強化)
  • **イ:「買主の救済が追完のみ」**と限定(複数の手段あり)
  • **ウ:「古い瑕疵担保責任制度」**を想定(民法改正後の内容を確認)

学習アドバイス 民法改正(2020年)は、売買契約分野で大きな変更をもたらしました。旧法では「瑕疵担保責任」だったのが、新法では「契約不適合責任」に拡大し、買主保護が強化されました。試験ではこの改正内容が重要なポイントです。


問21 売買契約における手付

問題要旨 売買契約における手付に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K4-売買契約と手付金
  • 手付金の性質と効力
  • 民法557条~559条

正解: ウ

売買契約における手付金は、3つの性質を持つことがあります:

  1. 解約手付:買主が手付を放棄、売主が倍額返却で解除可能
  2. 違約手付:契約違反時に手付を没収(償金)
  3. 証約手付:契約成立の証拠

解約手付が最も一般的です。

必要知識

解法の思考プロセス

  1. 手付金の3つの性質を確認
  2. 解約手付における解除権の行使方法を確認
  3. 買主・売主それぞれの解除権の内容を理解
  4. 各選択肢の検証:ア「証約手付」、ウ「違約手付」、エ「手付金の返却」

誤答の落とし穴

  • **ア:「証約手付の規定」**と解約手付を混同
  • **ウ:「違約手付による没収」**と解約手付を混同
  • **エ:「手付金の返却条件」**を誤認

学習アドバイス 手付金は、売買契約実務で極めて重要です。「誰が」「どの段階で」「どのような権利を」行使できるのかを、状況ごとに整理することが必要です。


問22 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)

問題要旨 不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K5-消費者保護法制
  • 不当表示と景品規制
  • 景品表示法5条

正解: イ(広告であるにもかかわらず広告であることを隠すこと(ステルスマーケティング)は、景品表示法の規制対象に含まれている)

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、消費者を保護する法律です。令和5年(2023年)10月より、ステルスマーケティング(広告であることを隠した表示)も景品表示法の規制対象となりました。

不当表示の種類(5条各号):

  1. 優良誤認表示(1号):商品・役務の品質・規格・内容についての不当表示(例:「100%天然成分」が虚偽)
  2. 有利誤認表示(2号):商品・役務の価格・取引条件についての不当表示(例:「本来1万円が今だけ1千円」が虚偽)
  3. 指定告示(3号):上記以外で消費者庁長官が指定する表示(ステルスマーケティングはこれに該当)

必要知識

  • 景品表示法の規制対象
  • 不当表示の種類(優良誤認・有利誤認の区別)
  • ステルスマーケティング規制(令和5年10月施行)

解法の思考プロセス

  1. 景品表示法の規制対象を確認:不当表示と景品類
  2. アは誤り:「優良誤認表示」は品質・内容についての誤認であり、「価格その他の取引条件」は**有利誤認表示(2号)**の説明
  3. イが正解:令和5年10月からステルスマーケティングが景品表示法違反となった
  4. ウは誤り:口頭でのセールストークも景品表示法上の「表示」に含まれ得る

誤答の落とし穴

  • ア:「優良誤認表示=価格・取引条件の表示」の誤認。優良誤認は品質・内容、有利誤認が価格・取引条件
  • **ウ:「口頭でのセールストークは規制対象外」**の誤認
  • エ:不動産広告についての誤認

学習アドバイス 景品表示法の頻出論点として「優良誤認(品質)vs 有利誤認(価格)」の区別を明確にしてください。また令和5年10月からのステルスマーケティング規制は時事的な重要論点です。「広告主が分からない広告=ステルスマーケティング=景品表示法違反」と押さえてください。


問23 消費者契約法

問題要旨 消費者契約法に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K5-消費者保護法制
  • 消費者契約の無効と取消権
  • 消費者契約法4条~8条

正解: イ

消費者契約法は、消費者と事業者の力関係の不均衡を是正する法律です。主な規制は:

  1. 取消権:事業者の不公正な勧誘(誤解・困惑など)による契約解除
  2. 条項規制:消費者に著しく不利な特約の無効化
  3. 過失相殺制限:事業者側の過失がある場合、消費者の過失相殺を制限

必要知識

  • 取消権の類型
  • 消費者に不利な条項の無効化

解法の思考プロセス

  1. 消費者契約法の基本目的を確認:消費者保護
  2. 事業者の責任制限と消費者保護の関係を理解
  3. 過失相殺制限の具体例を確認
  4. 各選択肢の検証:イ「取消権の制限」、ウ「条項規制」、エ「情報提供義務」

誤答の落とし穴

  • **イ:「取消権が無い」**と誤認(取消権は保障)
  • **ウ:「消費者の条項は無効」**と逆認識(事業者の不利な条項が無効)
  • エ:「事業者の情報提供義務と消費者契約法の直接的内容を混同

学習アドバイス 消費者契約法は、消費者利益保護に特化した強い保護規制を持つ法律です。事業者側でも「消費者とみなされる者」との取引では常にこの法律が適用される可能性があることを認識してください。


問24 民法上の不法行為

問題要旨 民法上の不法行為に関する記述として、最も適切なものはどれか。

分類タグ

  • K4-不法行為と損害賠償
  • 債務者の過失と責任
  • 民法709条、715条

正解: ウ

不法行為の損害賠償請求には、時効がある重要な原則があります。2020年の民法改正後(民法724条):

  • 短期時効:損害及び加害者を知った時から3年(生命・身体の侵害は5年)
  • 長期時効:不法行為の時から20年(改正前は10年かつ除斥期間)

必要知識

  • 不法行為の成立要件
  • 使用者責任(民法715条)
  • 時効制度

解法の思考プロセス

  1. 不法行為の成立要件を確認:違法行為 + 過失 + 因果関係 + 損害
  2. 使用者責任の仕組みを理解
  3. 損害賠償請求権の時効を確認
  4. 各選択肢の検証:ア「過失の推定」、イ「被用者責任」、エ「損害賠償額の制限」

誤答の落とし穴

  • **ア:「被害者が過失を証明する必要がない」**と誤認(過失の立証は被害者負担が原則)
  • **イ:「被用者は責任を負わない」**と誤認(被用者も不法行為責任あり)
  • **エ:「損害賠償額の制限」**と不法行為の時効を混同

学習アドバイス 不法行為と時効は、民法の中でも特に実務的に重要な論点です。「誰がいつから」「何年間」請求権を行使できるのか、という時間軸の管理が実務では不可欠です。


年度総括

出題特性

令和6年度の経営法務は、以下の特徴がありました:

  1. 会社法の重点化:全出題の約50%が会社法関連であり、特に監査等委員会設置会社株式に関する制度が集中
  2. 知的財産権の実務化:商標(動き商標・立体商標)、著作権(写り込み規定)など実際の利用シーンでの権利保護が問われた
  3. 民法改正への対応:2020年の民法改正(契約不適合責任への転換)が明確に出題
  4. 時事的論点の増加:令和5年10月施行のステルスマーケティング規制(景品表示法)など最新改正が出題
  5. 複合問題の増加:問7、13、14、15など、複数段階の判断が必要な問題が増加(従来より難化傾向)

学習上の重要ポイント

  • 体系的理解:会社法の3つの機関設計(監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社)を体系的に整理する
  • 国際対応:英文契約や国際知的財産保護制度への理解が必須に
  • 消費者保護法の強化:景品表示法(ステルスマーケティング)・消費者契約法の規制が厳格化傾向
  • 改正法への追随:民法改正(2020年・時効制度改正、契約不適合責任)、意匠法改正(内装意匠)、特許法改正(職務発明)など最新動向の把握が重要

分類タグ凡例

K5(知識層の分類)

  • K5-会社形態と機関設計:株式会社の組織構造
  • K5-会社の基本事項:商号、本店、目的など
  • K5-少数株主権:300個以上・1/100以上の議決権保有と継続保有要件
  • K5-資金調達と配当:剰余金配当、社債
  • K5-株式と株主の権利:名義株、譲渡制限
  • K5-知的財産権:特許、商標、著作権など
  • K5-消費者保護法制:景品表示法、消費者契約法

K4(応用層)

  • K4-売買契約と担保責任:瑕疵担保、手付金
  • K4-不法行為と損害賠償:時効、使用者責任
  • K4-反競争的行為の規制:独占禁止法、課徴金

特記

  • 難問:複合問題、判断層が多い問題
  • 標準:基本的知識で解ける問題

関連ページ

会社法関連:

知的財産法関連:

民法関連:

その他法律:

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