財務・会計(令和6年度)
令和6年度(2024)中小企業診断士第1次試験 財務・会計の全25問解説
概要
令和6年度の財務・会計は全24問(第12問に設問1・設問2があり合計25マーク、各4点、100点満点)で出題されました。簿記・会計が問1〜12、ファイナンスが問13〜24という構成です。
問題文は J-SMECA 公式サイト(令和6年度 財務・会計) から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。
解説の読み方
各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。
出題構成
| 領域 | 問番号 | 問数 |
|---|---|---|
| 簿記基礎(仕訳・売上原価・経過勘定) | 1〜2, 5 | 3 |
| 制度会計(資産・負債・純資産・表示) | 3〜4, 6 | 3 |
| 企業会計基準・法人税 | 8〜9 | 2 |
| キャッシュ・フロー計算書 | 7 | 1 |
| 原価計算(個別原価) | 10 | 1 |
| 経営分析(安全性・CVP・財務指標) | 11〜12 | 2(3マーク) |
| 資金調達・資本構成 | 13〜14 | 2 |
| 配当政策・株式分割 | 15〜16 | 2 |
| 投資意思決定(NPV・IRR) | 17〜18 | 2 |
| ポートフォリオ・資産選択 | 19〜20 | 2 |
| 企業価値評価(成長率・DCF・マルチプル) | 21〜23 | 3 |
| デリバティブ(通貨オプション) | 24 | 1 |
全問分類マップ
| 問 | テーマ | 知識種類 | 思考法 | 形式層 | 罠パターン |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 貸倒引当金繰入額(検収基準) | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 2 | 金銭債権・経過勘定の記述 | K1 定義・用語 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-D 類似混同 |
| 3 | 金融商品に関する会計基準 | K2 分類・表示 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-C 部分正解 |
| 4 | 会社法の資本金等の規定 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-B 条件見落とし |
| 5 | 法定福利費の分類 | K1 定義・用語 | T2 分類判断 | L1 | Trap-D 類似混同 |
| 6 | 貸借対照表の表示 | K2 分類・表示 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-C 部分正解 |
| 7 | 営業活動によるCF計算 | K4 手続・手順 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 8 | 中小企業の会計に関する指針 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L1 | Trap-B 条件見落とし |
| 9 | 法人税の記述 | K5 制度・基準 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-C 部分正解 |
| 10 | 個別原価計算(製造指図書) | K4 手続・手順 | T4 条件整理 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 11 | 長期借入と財務指標への影響 | K4 手続・手順 | T4 条件整理 | L2 | Trap-A 逆方向 |
| 12-1 | 損益分岐点売上高 | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 12-2 | 目標営業利益の販売量 | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 13 | 資金調達の分類 | K2 分類・表示 | T2 分類判断 | L1 | Trap-D 類似混同 |
| 14 | WACC計算とリスクプレミアム | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 15 | 配当政策(一定額vs業績連動型) | K1 定義・用語 | T4 条件整理 | L2 | Trap-A 逆方向 |
| 16 | 株式分割の影響(穴埋め) | K4 手続・手順 | T5 穴埋め推論 | L2 | Trap-D 類似混同 |
| 17 | IRRとNPV(永続CF) | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 18 | 投資プロジェクト評価(機会原価) | K4 手続・手順 | T1 正誤判定 | L2 | Trap-B 条件見落とし |
| 19 | ポートフォリオのリスクプレミアム | K2 分類・表示 | T2 分類判断 | L2 | Trap-D 類似混同 |
| 20 | リスク中立的投資家の資産選択 | K1 定義・用語 | T4 条件整理 | L2 | Trap-B 条件見落とし |
| 21 | サステナブル成長率と株主価値 | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 22 | FCF現在価値(DCF法) | K3 数式・公式 | T3 計算実行 | L3 | Trap-E 計算ミス |
| 23 | マルチプル法(EBITDA倍率) | K1 定義・用語 | T5 穴埋め推論 | L2 | Trap-D 類似混同 |
| 24 | 通貨オプション | K4 手続・手順 | T5 穴埋め推論 | L3 | Trap-A 逆方向 |
思考法の分布
| 思考法 | マーク数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| T1 正誤判定 | 7 | 28% | 2, 3, 4, 6, 8, 9, 18 |
| T2 分類判断 | 3 | 12% | 5, 13, 19 |
| T3 計算実行 | 8 | 32% | 1, 7, 12-1, 12-2, 14, 17, 21, 22 |
| T4 条件整理 | 4 | 16% | 10, 11, 15, 20 |
| T5 穴埋め推論 | 3 | 12% | 16, 23, 24 |
T3(計算実行)が32%と最大で、財務・会計は計算科目であることが数字に表れています。正誤判定(T1)も28%ですが、これは簿記・会計の基準知識を問うもので、経済学のような因果推論とは質が異なります。
形式層の分布
| 形式層 | マーク数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| L1 基礎知識 | 4 | 16% | 2, 5, 8, 13 |
| L2 応用理解 | 11 | 44% | 3, 4, 6, 9, 11, 15, 16, 18, 19, 20, 23 |
| L3 計算応用 | 10 | 40% | 1, 7, 10, 12-1, 12-2, 14, 17, 21, 22, 24 |
L1(基礎知識)だけで取れるのは最大16点。合格ライン60点を超えるにはL2(応用理解)+ L3(計算応用)の能力が不可欠です。とくにL3が40%を占めており、計算力が合否を分けます。
罠パターンの分布
| 罠パターン | マーク数 | 割合 | 該当問 |
|---|---|---|---|
| Trap-A 逆方向 | 3 | 12% | 11, 15, 24 |
| Trap-B 条件見落とし | 4 | 16% | 4, 8, 18, 20 |
| Trap-C 部分正解 | 3 | 12% | 3, 6, 9 |
| Trap-D 類似混同 | 6 | 24% | 2, 5, 13, 16, 19, 23 |
| Trap-E 計算ミス | 9 | 36% | 1, 7, 10, 12-1, 12-2, 14, 17, 21, 22 |
Trap-E(計算ミス)が36%で最大の失点要因です。経済学では Trap-D(混同誘発)が最多でしたが、財務・会計では計算の正確性が最重要です。
簿記・会計
第1問 貸倒引当金繰入額(検収基準)
問題要旨: 検収基準を採用している場合の貸倒引当金繰入額を計算する問題。出荷基準での売掛金残高、決算日後の検収額、繰入前残高、繰入率が与えられる。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: ア
必要知識: 決算整理仕訳 — 貸倒引当金の計算手順、収益認識基準(検収基準と出荷基準の違い)
解法の思考プロセス: まず「検収基準」のもとでの正しい売掛金残高を求めます。出荷基準なら150,000円ですが、検収基準では当期出荷・決算日後検収分20,000円はまだ売上計上できません。検収基準の売掛金 = 150,000 - 20,000 = 130,000円。貸倒引当金の必要額 = 130,000 × 2% = 2,600円。繰入前残高1,000円があるので、繰入額 = 2,600 - 1,000 = 1,600円。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 出荷基準の売掛金150,000円にそのまま繰入率を掛ける → 150,000 × 2% = 3,000円(エ)。(2) 検収基準の調整を忘れる。(3) 繰入前残高1,000円の差引を忘れて2,600円とする(ウ)。「基準の違いによる売掛金の修正 → 引当金算定 → 既存残高との差額」の3段階を漏れなく踏むことが鍵です。
学習アドバイス: 貸倒引当金の計算は毎年のように出題される定番テーマです。この問題のように収益認識基準の違い(検収基準 vs 出荷基準)が絡むと難度が上がります。「基準ごとに売掛金の認識タイミングが変わる → 期末残高が変わる」というロジックを押さえておきましょう。
第2問 金銭債権・金銭債務と経過勘定
問題要旨: 金銭債権・金銭債務や経過勘定項目に関する記述の正誤を問う問題。未払費用、貸倒見積高、未収入金、買掛金の定義と区別がテーマ。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同
正解: ア
必要知識: 5分類と仕訳 — 経過勘定(前払費用・未払費用・前受収益・未収収益)の定義、金銭債権・金銭債務の区別
解法の思考プロセス: まずは勘定科目を「継続的役務の未払いか」「商品売買の未払いか」「固定資産購入の未払いか」で切り分けます。
- ア: 継続して役務の提供を受け、すでに受けた部分の対価が未払いなら 未払費用 です。定義どおりなので正しい。
- イ: 貸倒懸念債権は個別に回収可能性を見積もりますが、設問のように「必ず財務内容評価法で算定する」と言い切るのは不適切です。
- ウ: 自社商品の販売代金の未収は 未収入金 ではなく 売掛金 です。
- エ: 有形固定資産の購入代金の未払いは、通常の営業取引ではないので 買掛金 ではなく 未払金 です。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 受験生が崩れやすいのは次の3組です。
- 未払費用: 継続的な役務契約に基づく未払い
- 未払金: 商品売買以外の未払い
- 買掛金: 商品など通常の営業取引による未払い
学習アドバイス: 迷ったら「何の対価か」を先に見ます。サービスの未払いなら経過勘定、商品の未払いなら買掛金、固定資産の未払いなら未払金、という順で切ると安定します。
第3問 金融商品に関する会計基準
問題要旨: 有価証券の分類と評価に関する記述の正誤を問う問題。子会社株式、その他有価証券、売買目的有価証券、満期保有目的の債券の会計処理がテーマ。
K2 分類・表示 T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解
正解: イ
必要知識: 資産会計 — 有価証券の4分類(売買目的、満期保有、子会社・関連会社、その他)と評価方法
解法の思考プロセス: 有価証券は「何のために保有しているか」で分類し、その分類ごとに評価方法と表示区分を確認します。
- イ: その他有価証券に該当する株式は、貸借対照表では 投資その他の資産 に表示します。これが正しい。
- ア: 子会社株式は連結で消去されても、個別財務諸表では 時価の著しい下落時に評価損の検討が必要です。
- ウ: 関連会社株式は時価評価ではなく、個別財務諸表では原則として取得原価で処理します。
- エ: 償却原価法の説明としては近いのですが、「差額を債券金額に加減する」としている点が不正確です。実際には取得価額を償還まで毎期調整していく考え方で押さえるのが安全です。
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: この論点は、選択肢の一部だけ合っていることが多いです。特に 連結で消去される と 個別でどう処理するか を混同すると崩れます。
学習アドバイス: 有価証券は次の4点を一緒に覚えると速く切れます。
- 売買目的: 時価評価
- 満期保有目的: 償却原価法
- 子会社・関連会社株式: 原則として取得原価
- その他有価証券: 時価評価し、評価差額は純資産へ
第4問 会社法・会社計算規則の資本金等
問題要旨: 会社法および会社計算規則における資本金の額、資本準備金、配当可能限度額に関する規定の正誤を問う問題。
K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: エ
必要知識: 負債・純資産会計と税効果会計 — 会社法上の資本金・準備金の規定
解法の思考プロセス: この問題は、似た用語を取り違えないことが最優先です。
- エ: その他資本剰余金 は、繰越利益剰余金の欠損補填に充てることができます。これが正しい。
- ア: 払込額の 2 分の 1 まで資本金にしないことはできますが、振り替える先は 利益準備金 ではなく 資本準備金 です。
- イ: 自己株式の取得は配当可能限度額に影響します。
- ウ: 資本準備金を取り崩して資本金に組み入れることはあっても、資本準備金がマイナスになることまで認められているわけではありません。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: ここは 資本準備金 と 利益準備金、資本剰余金 と 利益剰余金 の言い換えに見える単語が最大の罠です。名前が似ていても役割は別です。
学習アドバイス: 会社法の純資産項目は、まず次の2本柱で覚えると整理しやすくなります。
- 払込資本の世界: 資本金、資本準備金、その他資本剰余金
- 利益の世界: 利益準備金、繰越利益剰余金
この2つを混ぜないだけで正答率が上がります。
第5問 法定福利費の分類
問題要旨: 従業員の給与に関連する法定福利費として計上するものを選ぶ問題。厚生年金保険料の事業主負担額、通勤定期代、住宅手当、住民税の特別徴収から正しいものを識別する。
K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同
正解: ア
必要知識: 5分類と仕訳 — 給与関連の勘定科目分類(法定福利費、福利厚生費、給与手当)
解法の思考プロセス: 法定福利費とは「法律で事業主に負担が義務づけられている社会保険料等」です。厚生年金保険料の事業主負担額(ア)が該当します。イの通勤定期代は「旅費交通費」または「通勤手当」、ウの住宅手当は「給与手当」、エの住民税の特別徴収は従業員の負担分を会社が代理納付するものであり費用ではありません(預り金)。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 住民税の特別徴収を法定福利費と混同する受験生が多い。特別徴収は単に会社が従業員に代わって納付する仕組みであり、会社の費用(法定福利費)ではありません。
学習アドバイス: 法定福利費に含まれるもの(健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・労災保険料・介護保険料の事業主負担分)を列挙できるようにしておきましょう。
第6問 貸借対照表の表示
問題要旨: 貸借対照表の表示に関する記述の正誤を問う問題。貸倒引当金の表示方法、繰延税金資産の分類、資産除去債務の表示、販売用不動産の分類がテーマ。
K2 分類・表示 T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解
正解: ア
必要知識: 決算整理仕訳 — B/S表示ルール、資産除去債務の会計処理
解法の思考プロセス: 貸借対照表の表示は、一括控除できるか 流動か固定か 負債か資産か の3点を順に見ます。
- ア: 売掛金や短期貸付金に対する貸倒引当金は、資産の控除項目として一括表示できます。これが正しい。
- イ: 繰延税金資産は一年基準で流動・固定に分けるのではなく、現在は固定区分で表示するので誤りです。
- ウ: 資産除去債務は有形固定資産の控除項目ではなく、負債の部 に計上します。
- エ: 不動産販売業者が販売目的で保有する土地・建物は 棚卸資産 であり、有形固定資産ではありません。
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: 受験生が崩れやすいのは、資産から引くもの と 負債として独立計上するもの の混同です。貸倒引当金は前者、資産除去債務は後者です。
学習アドバイス: 表示問題は仕訳よりも分類が勝負です。迷ったら「販売目的か」「使用目的か」を確認すると、不動産や有価証券の表示区分を切りやすくなります。
第7問 営業活動によるキャッシュ・フロー
問題要旨: 損益計算書と貸借対照表の一部データから、間接法による営業活動キャッシュ・フローを計算する問題。
K4 手続・手順 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: エ
必要知識: キャッシュ・フロー管理 — 間接法によるCF計算書の作成手順
解法の思考プロセス: 間接法の手順に沿って計算します。
税引前当期純利益: 営業利益200,000千円(営業外・特別項目がゼロのため)
非資金項目の加算: +減価償却費 30,000千円
運転資本の変動:
- 売掛金の減少(50,000→46,000): +4,000千円
- 棚卸資産の増加(30,000→33,000): -3,000千円
- 買掛金の増加(35,000→36,200): +1,200千円
小計 = 200,000 + 30,000 + 4,000 - 3,000 + 1,200 = 232,200千円
法人税等の支払額: 未払法人税等が前期30,000→当期30,000で変動なし。当期の法人税計上60,000千円がそのまま支払額 = -60,000千円
営業CF = 232,200 - 60,000 = 172,200千円
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 税引前ではなく当期純利益140,000千円からスタートして法人税の加減を忘れる → 112,200千円(ア付近)。(2) 売掛金の増減方向を逆にする(減少なのに減算してしまう)。(3) 未払法人税等の変動処理を誤る。「税引前利益スタート → 非資金調整 → 運転資本調整 → 税金支払」の4ステップを順序通りに。
学習アドバイス: CF計算書の間接法は**「利益 ≠ キャッシュ」を橋渡しする手法**です。「利益に含まれるが現金が動かない項目(減価償却費)」「現金が動いたが利益に反映されない項目(運転資本変動)」の2つの調整を分けて考えると間違いが減ります。
第8問 中小企業の会計に関する指針
問題要旨: 「中小企業の会計に関する指針」の内容に関する記述として、最も不適切なものを選ぶ問題。
K5 制度・基準 T1 正誤判定 L1 Trap-B 条件見落とし
正解: イ
必要知識: 企業会計原則と連結会計 — 中小企業会計指針の位置づけと基本方針
解法の思考プロセス: イの「会計情報の役割として、利害調整に資することよりも投資家の意思決定に資することが重視されている」が不適切です。中小企業会計指針は、中小企業の実態(非上場、株主=経営者が多い)を踏まえ、利害調整機能(債権者保護・配当計算の基礎)を重視しています。上場企業向けの会計基準が投資家の意思決定を重視するのとは異なります。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 「中小企業の会計に関する指針」と「中小企業の会計に関する基本要領」の混同に注意。両者は適用対象と簡便さの程度が異なります。
学習アドバイス: 中小企業会計指針は1〜2問出題されることがある穴場テーマです。指針の「目的」「適用対象」「主な簡便処理」の3点を押さえるだけで確実に得点できます。
第9問 法人税
問題要旨: 法人税に関する記述の正誤を問う問題。欠損金の繰越控除、所得計算、青色申告、税率の仕組みがテーマ。
K5 制度・基準 T1 正誤判定 L2 Trap-C 部分正解
正解: ウ
必要知識: 負債・純資産会計と税効果会計 — 法人税の基本的な仕組み
解法の思考プロセス: まず、法人税で頻出の3点に照らします。欠損金の扱い 所得計算の用語 青色申告の要件 です。
- ウ: 内国法人は、納税地の所轄税務署長の承認を受ければ、確定申告書を青色申告書で提出できます。これが正しい。
- ア: 欠損金は一定の範囲で繰越控除が認められるので、
損金に算入できないと言い切るのは誤りです。 - イ: 法人税の所得は 益金 - 損金 で計算します。
収益 - 所得控除ではありません。 - エ: 法人税率は資本金区分などの影響を受けるため、無関係ではありません。
誤答の落とし穴 Trap-C 部分正解: イは日本語として自然に見えますが、収益 と 益金、費用 と 損金 は同じではありません。税法独特の言い回しが出たら、そこを疑う癖をつけると強いです。
学習アドバイス: 法人税は深追いしなくてよい科目ですが、次の3つは確実に押さえます。
- 所得 = 益金 - 損金
- 青色申告には承認が必要
- 中小法人には軽減税率などの取扱いがある
第10問 個別原価計算(製造指図書)
問題要旨: 5つの製造指図書(No.110〜150)の製造開始日・完成日・引渡日と各月の原価データから、月末の仕掛品・製品・売上原価を判定する問題。
K4 手続・手順 T4 条件整理 L3 Trap-E 計算ミス
正解: ウ
必要知識: 個別原価計算と総合原価計算 — 個別原価計算のフローとステータス管理
解法の思考プロセス: 各指図書を「月末時点のステータス」で分類します。
8月末時点:
- No.110(7月完成、8月引渡済み)→ 売上原価
- No.120(8月完成、8月引渡済み)→ 売上原価
- No.130(8月完成、8月引渡済み)→ 売上原価
- No.140(8月完成、9月引渡予定)→ 8月末は製品(完成・未引渡)= 400,000円
- No.150(9月完成予定)→ 8月末は仕掛品 = 360,000円(8月までの原価)
ウ「8月末の製品は400,000円」が正解です。
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 完成日と引渡日を取り違えてステータスを誤分類する。(2) No.120の原価を8月分200,000円のみで計算し、7月繰越分420,000円を忘れる。(3) 仕掛品と製品の区別を間違え、No.140を仕掛品に分類する。「仕掛品(未完成)→ 製品(完成・未引渡)→ 売上原価(引渡済み)」の3段階フローを確実に追うことです。
学習アドバイス: 個別原価計算の問題は「指図書ごとのタイムライン管理」がすべてです。表を作って「開始→完成→引渡」のステータスを整理する練習をしておきましょう。
経営分析
第11問 長期借入と財務指標への影響
問題要旨: 当期末に長期借入(60カ月元利均等弁済)で無形固定資産を購入した場合の、財務諸表および財務指標への影響を問う問題。
K4 手続・手順 T4 条件整理 L2 Trap-A 逆方向
正解: ア
必要知識: 安全性分析 — 流動比率・固定比率・自己資本比率の定義と変動要因
解法の思考プロセス: 取引の仕訳を整理し、各指標への影響を追跡します。
(借方) 無形固定資産 ××× / (貸方) 長期借入金 ×××(うち1年内返済分は流動負債)
この結果:
- 流動資産: 変化なし(現金は借入で増え、購入で減り、差し引きゼロ)
- 流動負債: 1年内返済予定長期借入金が増加
- 流動比率 = 流動資産 / 流動負債 → 低下 ✓(ア)
イ「投資と財務のCFに影響しない」は誤り(借入は財務CF+、購入は投資CF-)。ウ「固定比率は改善」は誤り(固定資産↑で悪化)。エ「自己資本比率は変化しない」は誤り(総資産↑で低下)。
誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 固定比率の「改善」と「悪化」の方向を逆に判断する受験生が多い。固定比率 = 固定資産 / 自己資本なので、分子が増えると悪化(数値が大きくなる)です。
学習アドバイス: 「取引が財務指標に与える影響」は定番の出題形式です。まず仕訳を書き、次にB/Sの各項目への影響を整理し、最後に比率の分子・分母を確認する、という3段階の手順で解きましょう。
第12問(設問1) 損益分岐点売上高
問題要旨: 当期実績データ(売上高、変動製造原価、変動販売費、固定製造原価、固定販売費及び一般管理費)から損益分岐点売上高を計算する問題。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: ウ
必要知識: 損益分岐点分析 — BEP売上高 = 固定費 / 限界利益率
解法の思考プロセス:
単価データを整理:
- 販売単価: 1,000円
- 変動費単価: 550(製造)+ 50(販売)= 600円
- 限界利益単価: 1,000 - 600 = 400円
- 限界利益率: 400 / 1,000 = 0.4
固定費合計: 6,000,000(製造)+ 3,000,000(販売管理)= 9,000,000円
BEP売上高 = 9,000,000 / 0.4 = 22,500,000円
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 変動販売費50円を忘れて変動費を550円とする → 限界利益率0.45 → BEP = 20,000,000円(選択肢になくてもこのミスは多い)。(2) 固定費に変動費を混入する。(3) 限界利益「率」ではなく限界利益「額」で割ってしまう。
学習アドバイス: CVP分析の鉄則は「変動費と固定費の分離」です。問題文の原価分類(変動製造原価、変動販売費、固定製造原価、固定販管費)を正確に読み取り、間違いなく集計しましょう。
第12問(設問2) 目標営業利益の販売量
問題要旨: 1個当たり営業利益150円を達成する販売量を求める問題。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: エ
必要知識: 損益分岐点分析 — 目標利益達成の販売量計算
解法の思考プロセス:
目標: 1個当たり営業利益 = 150円 営業利益 = 売上高 - 変動費 - 固定費 = 400Q - 9,000,000 1個当たり営業利益 = 営業利益 / Q = 400 - 9,000,000/Q = 150 9,000,000/Q = 250 Q = 9,000,000 / 250 = 36,000個
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1)「目標営業利益150円」を総額150円と読み違える。(2) 限界利益400円と目標利益150円の差250円で割ることに気づかない。(3) BEP販売量(22,500個)に何かを足す方法を試みて混乱する。
学習アドバイス: 設問1と設問2は同じデータを使う連動問題です。設問1で算出した数値(限界利益率、固定費)を設問2でそのまま使えます。連動問題では設問1の計算を正確に行うことが設問2の正答率に直結します。
ファイナンス
第13問 資金調達の分類
問題要旨: 各種資金調達手段を「短期 vs 長期」「内部金融 vs 外部金融」で分類する問題。
K2 分類・表示 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同
正解: イ
必要知識: ファイナンス — 資金調達の分類体系
解法の思考プロセス: この問題は、各手段を お金が外から入るか と 返済・回収までの期間が短いか の2軸で置くと速く解けます。
- イ: 企業間信用 も コマーシャルペーパー も、短期の外部金融です。これが正しい。
- ア: 株式分割は資金調達そのものではありません。当座借越は短期の外部金融です。
- ウ: 減価償却費は現金流出を伴わず社内に資金が残るので 内部金融 です。
- エ: 増資は 外部金融、留保利益は 内部金融 であり、同じ分類にはなりません。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 減価償却費は費用なので外部金融に見えがちですが、実際はキャッシュが社内に留まるため内部金融です。また、株式分割は発行済株式数を分けるだけで、新規資金は入りません。
学習アドバイス: 本番では次の表を頭に置くと強いです。
- 短期・外部: 企業間信用、コマーシャルペーパー、当座借越
- 長期・外部: 増資、社債、長期借入、ファイナンス・リース
- 長期・内部: 留保利益、減価償却費
第14問 WACC計算とリスクプレミアム
問題要旨: 負債コスト、D/E比率、WACC、リスクフリーレート、実効税率が与えられ、自己資本コストに含まれるリスクプレミアムを逆算する問題。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: ア
必要知識: ファイナンス — WACC = (E/(D+E)) × Re + (D/(D+E)) × Rd × (1-t)
解法の思考プロセス:
与えられた条件: Rd=2%, D/E=0.25, WACC=6.28%, Rf=1%, t=30%
Step 1: D/Eから加重を算出 D/E = 0.25 → D = 0.25E → D/(D+E) = 0.25/1.25 = 0.2、E/(D+E) = 0.8
Step 2: WACC式にReを逆算 WACC = 0.8 × Re + 0.2 × 2% × (1-0.3) 6.28% = 0.8 × Re + 0.2 × 1.4% 6.28% = 0.8 × Re + 0.28% 0.8 × Re = 6.0% Re = 7.5%
Step 3: リスクプレミアム リスクプレミアム = Re - Rf = 7.5% - 1.0% = 6.5%
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 税引後の負債コストにし忘れる → 0.2 × 2% = 0.4%として計算。(2) D/E比率を「D/(D+E)」にせずD/Eのまま使う。(3) リスクプレミアムを「Re - Rd」と勘違い(正しくは Re - Rf)。
学習アドバイス: WACC計算は「D/E → ウェイト変換 → 税引後負債コスト → 式を解く」の手順を必ずこの順で踏みましょう。D/Eからウェイトへの変換(D/(D+E) = D/E ÷ (1+D/E))は公式として覚えておくと速いです。
第15問 配当政策(一定額 vs 業績連動型)
問題要旨: 毎期一定額の配当を支払う場合と比べた、業績連動型の配当政策の特徴を問う問題。
K1 定義・用語 T4 条件整理 L2 Trap-A 逆方向
正解: ウ
必要知識: MM理論と配当政策 — 配当政策の類型と各方式の特徴
解法の思考プロセス: 業績連動型配当では「配当性向を一定に保つ」のが基本です。
業績連動型(配当性向一定):
- 配当性向: 安定(毎期一定の割合)
- 1株当たり配当額: 利益に連動して変動が大きい
ウ「毎期の配当性向は安定し、1株当たり配当額の変動は大きくなる」が正解です。
誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: 「配当性向が安定」と「配当額が安定」を逆に捉える。一定額配当では「配当額は安定だが配当性向は利益によって変動」、業績連動型では「配当性向は安定だが配当額は変動」です。方向が完全に逆なので注意。
学習アドバイス: 配当政策の比較は「一定額 / 一定率 / 残余」の3パターンを表にして整理しましょう。
第16問 株式分割の影響
問題要旨: 株式分割が1株当たり株主価値、持分割合、資産内容・キャッシュフロー、株主の富に与える影響を穴埋め形式で問う問題。
K4 手続・手順 T5 穴埋め推論 L2 Trap-D 類似混同
正解: イ
必要知識: ファイナンス — 株式分割の効果
解法の思考プロセス: 株式分割の本質は「パイを細かく切り分けるだけで、パイの大きさは変わらない」ことです。
A(1株当たり株主価値): 減少する(発行済株式数が増えるため) B(持分割合): 変化せず(全株主が同じ比率で分割されるため) C(資産内容やCFへの影響): 与えない(企業の実態は変わらない) D(株主の富の変化): 変化しない(1株当たり価値↓ × 株式数↑ = 同じ)
よってイ「A:減少する、B:変化せず、C:与えない、D:変化しない」が正解。
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: 株式分割と増資を混同する。増資は新たな資金流入があるため企業価値が変わりますが、株式分割は帳簿上の変更のみです。
学習アドバイス: 株式分割・株式併合・株式配当の違いを整理しておきましょう。いずれも「企業の実態に影響するか」が判断の軸です。
第17問 IRRとNPV(永続キャッシュフロー)
問題要旨: 初期投資800百万円、永続的に毎期末100百万円のCFが発生する投資案について、IRR法とNPV法による採否判定の組み合わせを求める問題。資本コスト10%。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: ア
必要知識: ファイナンス — NPV = CF/r - I₀(永続年金)、IRR: CF/IRR = I₀
解法の思考プロセス:
NPV法: 永続年金の現在価値 = 100 / 0.10 = 1,000百万円 NPV = 1,000 - 800 = 200百万円 > 0 → 採択
IRR法: 100 / IRR = 800 → IRR = 100/800 = 12.5% IRR(12.5%) > 資本コスト(10%) → 採択
結論: IRR法=採択、NPV法=採択 → ア
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 永続年金の公式を PV = CF × r と逆にして、PV = 100 × 0.10 = 10百万円としてNPV < 0と誤判定する。(2) IRR計算でIRR = 800/100 = 8%と分子分母を逆にし、IRR < 資本コストで不採択と判断する。(3) NPV > 0 なのに IRR < r というあり得ない組み合わせを選んでしまう(NPVとIRRの結論は通常一致する)。
学習アドバイス: 永続年金 PV = CF/r は最もシンプルな現在価値計算です。「CF/r」と「r × I₀」を混同しないこと。また、NPV法とIRR法は独立した投資案の採否判定では常に同じ結論になることを理解しておきましょう。
第18問 投資プロジェクトの経済性評価
問題要旨: 投資プロジェクト評価における機会原価、埋没原価、売却見積額、乗り換え効果(カニバリゼーション)の考慮要否を問う問題。
K4 手続・手順 T1 正誤判定 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: ア
必要知識: ファイナンス — 投資意思決定に含めるべきキャッシュフローの範囲
解法の思考プロセス: 投資評価では「意思決定に関連するCFのみを含める」が鉄則です。
ア「過去に購入した施設をプロジェクトに利用する場合、当該施設への過去の支出は考慮してはならない」→ 過去の支出は**埋没原価(サンクコスト)**であり、将来の意思決定には関係しない。正しい。
イ「既存機械の売却見積額を考慮しない」→ 売却可能額は機会原価であり考慮すべき。誤り。 ウ「未利用施設の賃貸料収入を考慮しない」→ 賃貸料は機会原価であり考慮すべき。誤り。 エ「乗り換えの影響を考慮しない」→ カニバリゼーションは関連CFに含めるべき。誤り。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: 機会原価の概念を見落とす。「実際に支払っていないもの(逸失利益)もCFに含める」という原則を忘れると、イ・ウを正しいと誤判断します。
学習アドバイス: 投資評価のCF範囲は「埋没原価は除外、機会原価は含める」の一言に尽きます。「過去の支出 = 埋没(除外)」「代替案での収入 = 機会原価(含める)」と覚えましょう。
第19問 ポートフォリオのリスクプレミアム
問題要旨: 効率的フロンティア、資本市場線、投資家の無差別曲線が描かれたグラフの各点(A〜D)を使い、投資家のリスクプレミアムを正しく表す点の組み合わせを選ぶ問題。
K2 分類・表示 T2 分類判断 L2 Trap-D 類似混同
正解: イ
必要知識: ファイナンス — 資本市場線(CML)、リスクプレミアムの定義
解法の思考プロセス: グラフの各点を特定します。
- 点A: 縦軸と横軸の交点 = 原点(期待収益率0%、標準偏差0%)
- 点B: 縦軸と資本市場線の交点 = リスクフリーレート
- 点C: 投資家の無差別曲線と資本市場線の接点 = 投資家の最適ポートフォリオ
- 点D: 効率的フロンティアと資本市場線の接点 = 市場ポートフォリオ
リスクプレミアム = 投資家のポートフォリオの期待収益率 - リスクフリーレート = 点Cの期待収益率 - 点Bの期待収益率
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) 点Aをリスクフリーレートと混同する(Aは原点、Bがリスクフリーレート)。(2) 市場ポートフォリオ(D)のリスクプレミアム(B→D)を選んでしまう。「この投資家の」リスクプレミアムを問われていることに注意。
学習アドバイス: CMLの図はポートフォリオ理論の集大成です。「リスクフリーレート(CMLのy切片)→ 投資家の最適点(CMLと無差別曲線の接点)→ 市場ポートフォリオ(CMLと効率的フロンティアの接点)」の3点の位置関係を正確に把握しましょう。
第20問 リスク中立的投資家の資産選択
問題要旨: 4つの資産(A〜D)の期待収益率と標準偏差がプロットされたグラフから、リスク中立的な投資家が選択する資産を判定する問題。
K1 定義・用語 T4 条件整理 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: イ
必要知識: ファイナンス — リスク中立・リスク回避・リスク愛好の定義
解法の思考プロセス: リスク中立的投資家はリスク(標準偏差)を考慮せず、期待収益率のみで判断します。
グラフから各資産の期待収益率を読み取ると:
- 資産A: 15%、標準偏差1%
- 資産B: 15%、標準偏差4%
- 資産C: 5%、標準偏差3%
- 資産D: 5%、標準偏差5%
期待収益率が最も高いのは資産Aと資産B(ともに15%)。リスク中立的投資家はリスクを考慮しないため、AとBに無差別です。
誤答の落とし穴 Trap-B 条件すり替え: (1) 「リスク中立」を「リスク回避」と読み違え、同じ期待収益率ならリスクが小さい資産Aだけを選ぶ。(2) 分散投資の視点からBとCの組み合わせを選ぶ(リスク中立なら分散の必要がない)。
学習アドバイス: リスク選好の3分類(回避・中立・愛好)を定義から理解しましょう。リスク回避なら「同じリターンではリスクが低い方を選ぶ」、リスク中立なら「リターンだけで判断」、リスク愛好なら「同じリターンではリスクが高い方を好む」です。
第21問 サステナブル成長率と株主価値
問題要旨: 自己資本3,000万円、ROE 5%、配当性向40%、要求収益率5%の条件で、サステナブル成長率と当期末配当支払後の株主価値を算出する問題。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: エ
必要知識: ファイナンス — サステナブル成長率 g = ROE × (1 - 配当性向)、配当割引モデル
解法の思考プロセス:
Step 1: サステナブル成長率 g = ROE × 内部留保率 = 5% × (1 - 0.4) = 5% × 0.6 = 3%
Step 2: 当期の数値 当期純利益 = ROE × 期首自己資本 = 5% × 3,000 = 150万円 配当 = 150 × 40% = 60万円 内部留保 = 150 - 60 = 90万円 当期末自己資本 = 3,000 + 90 = 3,090万円
Step 3: 株主価値(配当割引モデル) ROE = 要求収益率(5% = 5%)の場合、市場価値 = 簿価。当期末配当支払後の株主価値 = 3,090万円。
(補足: ゴードンモデルで計算すると、次期配当 = 60 × 1.03 = 61.8、株主価値 = 61.8 / (0.05 - 0.03) = 3,090)
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) サステナブル成長率を g = ROE × 配当性向 = 5% × 0.4 = 2%と計算する。(2) 株主価値を期首の3,000万円のままとする(配当支払後の自己資本を計算していない)。(3) ROE = r のとき株主価値 = 簿価という関係に気づかず、複雑な計算をして間違える。
学習アドバイス: サステナブル成長率の公式は「ROE × 内部留保率」です。配当性向と内部留保率を取り違えるミスが最多なので、「留保 = 1 - 配当」を毎回確認しましょう。また ROE = r のとき市場価値 = 簿価は重要な特殊ケースです。
第22問 FCF現在価値(DCF法)
問題要旨: 第11期から13期まで定額FCF 200百万円/年、14期以降は成長率4%で一定成長。資本コスト8%のもと、14期以降のFCFの第11期期首における現在価値を計算する問題。複利現価係数表あり。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: エ
必要知識: ファイナンス — 継続価値(ターミナルバリュー)= FCF₁₄ / (r - g)、複利現価係数による割引
解法の思考プロセス:
Step 1: 14期のFCFを算出 FCF₁₄ = FCF₁₃ × (1 + g) = 200 × 1.04 = 208百万円
Step 2: 13期末時点の継続価値 TV₁₃ = FCF₁₄ / (r - g) = 208 / (0.08 - 0.04) = 208 / 0.04 = 5,200百万円
Step 3: 11期期首に割り引く 11期期首から13期末 = 3年 PV = 5,200 × 0.794(3年の複利現価係数)= 4,128.8 ≒ 4,129百万円
誤答の落とし穴 Trap-E 計算ミス: (1) 14期のFCFを200のまま成長させない → TV = 200/0.04 = 5,000 → PV = 5,000 × 0.794 = 3,970(ウ)。これが最頻出のミス。(2) 割引年数を3年ではなく4年とする → PV = 5,200 × 0.735 = 3,822(イ)。(3) 年金現価係数と複利現価係数を取り違える。
学習アドバイス: DCF法の2段階モデル(予測期間 + 継続価値)は診断士試験の定番です。「継続価値は予測期間の末尾に立つ → そこからさらに現在へ割り引く」という2段階を確実に踏みましょう。「14期以降のCFなのに13期末の価値」というズレに慣れることが重要です。
第23問 マルチプル法(EBITDA倍率)
問題要旨: 乗数法(マルチプル法)の分類と EBITDA倍率の計算構造を穴埋め形式で問う問題。
K1 定義・用語 T5 穴埋め推論 L2 Trap-D 類似混同
正解: ウ
必要知識: マルチプル法 — マルチプル法の分類、EBITDA倍率の定義
解法の思考プロセス:
穴埋めを順に判断します。
- A: 乗数法は「マーケットアプローチ」に分類(コストアプローチでもインカムアプローチでもない)
- B: DCF法は「インカムアプローチ」に分類
- C: EBITDAの分母は「営業利益」に減価償却費を加えたもの
よって A: マーケットアプローチ、B: インカムアプローチ、C: 営業利益 → ウ
誤答の落とし穴 Trap-D 混同誘発: (1) マルチプル法を「インカムアプローチ」と混同する(利益の倍率を使うのでインカムに見えるが、市場データを参照するためマーケットアプローチ)。(2) EBITDAの「A」が何を指すか分からず「経常利益」を選ぶ。EBITDA = Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization で、簡便的には営業利益 + 減価償却費。
学習アドバイス: 企業価値評価の3アプローチ(コスト・マーケット・インカム)の分類は頻出です。「DCF = インカム」「マルチプル = マーケット」「時価純資産 = コスト」の対応を覚えておきましょう。
第24問 通貨オプション
問題要旨: ドル建て仕入代金1,200ドルの支払いに備え、行使価格132円のドルコールオプション(オプション料100円)を購入した場合の権利行使条件と円支出削減額を穴埋めで問う問題。
K4 手続・手順 T5 穴埋め推論 L3 Trap-A 逆方向
正解: ウ
必要知識: デリバティブとリスク管理 — コールオプション、インザマネー条件
解法の思考プロセス:
ドルコールオプション = ドルを132円で買う権利。ドルの支払いが必要な企業にとって、為替が円安(ドル高)に動くと損失が大きくなるので、132円で買える権利を確保しておきます。
インザマネー = 権利行使が有利な状態:
- 直物が行使価格(132円)より高いとき → 権利行使(市場より安く買える)
- 直物が行使価格(132円)より低いとき → 権利不行使(市場で安く買える)
A: 135円のとき権利行使(135 > 132、インザマネー) B: 129円のとき権利不行使(129 < 132、アウトオブザマネー)
権利行使した場合の総円支出: 行使価格での支払: 132 × 1,200 = 158,400円 オプション料: 100円 合計: 158,500円
オプションなしの場合: 135 × 1,200 = 162,000円
削減額 C = 162,000 - 158,500 = 3,500円
誤答の落とし穴 Trap-A 逆方向誘発: (1) コールオプションの権利行使方向を逆にする(「安いときに行使」と勘違い)。(2) オプション料100円を1,200ドル分と掛け算する。問題文をよく読むと「オプション料100円を支払う」とあり、これは総額100円です。(3) 円支出の比較で「オプションありの方が高くなる」方向に間違える。
学習アドバイス: 通貨オプションは「誰が何を買う権利か」を最初に明確にしましょう。ドルコール = ドルを買う権利。仕入代金(ドル支払い)の企業は円安リスクをヘッジするためドルコールを買います。「直物 > 行使価格なら行使(=円安ヘッジ成功)」と覚えましょう。
年度総括
思考法分布の特徴(経済学との比較)
| 思考法 | 財務R6 | 経済学R6 | 差異 |
|---|---|---|---|
| T1 正誤判定 | 28% | 8% | 財務は制度・基準の正誤問題が多い |
| T2 分類/グラフ読解 | 12% | 24% | 経済学はグラフ問題が多い |
| T3 計算実行 | 32% | 16% | 財務は計算が倍以上 |
| T4 条件整理/因果推論 | 16% | 36% | 経済学は因果推論が中心 |
| T5 穴埋め/場合分け | 12% | 16% | 同程度 |
罠頻度の特徴(経済学との比較)
| 罠パターン | 財務R6 | 経済学R6 | 差異 |
|---|---|---|---|
| Trap-A 逆方向 | 12% | 16% | 同程度 |
| Trap-B 条件見落とし | 16% | 16% | 同程度 |
| Trap-C 部分正解 | 12% | 12% | 同じ |
| Trap-D 類似混同 | 24% | 28% | 経済学の方が混同が多い |
| Trap-E 計算ミス | 36% | 28% | 財務は計算ミスが最大の失点要因 |
Tier別学習優先度
| Tier | テーマ | 問数 | 理由 |
|---|---|---|---|
| S(最優先) | CF計算書(間接法)、CVP分析、WACC計算 | 4 | 毎年出題かつ配点が高い計算問題 |
| A(優先) | 有価証券・資産会計、個別原価計算、DCF法 | 5 | 理解すれば安定得点が見込める |
| B(標準) | B/S表示、法人税、資金調達分類、配当政策 | 8 | 基礎知識の正確さが鍵 |
| C(余裕時) | 中小企業会計指針、通貨オプション | 2 | 出題頻度が低いが出ると差がつく |
本番セルフチェック(財務・会計版)
- 検収基準 vs 出荷基準の違いで売掛金を修正したか
- CF計算書で「税引前利益スタート」を守ったか
- WACC計算で「税引後負債コスト」にしたか
- D/E比率をウェイト(D/(D+E))に変換したか
- サステナブル成長率で「内部留保率」を使ったか(配当性向ではなく)
- DCFの継続価値で「翌期のFCF」を成長させたか
- 投資評価で「埋没原価は除外、機会原価は含める」を守ったか
- 通貨オプションの行使方向を正しく判断したか
分類タグの凡例
知識種類(K)— 財務・会計版
| タグ | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| K1 | 定義・用語 | 経過勘定の定義、法定福利費の範囲 |
| K2 | 分類・表示 | B/S表示区分、有価証券4分類、資金調達分類 |
| K3 | 数式・公式 | BEP公式、WACC計算式、永続年金PV |
| K4 | 手続・手順 | CF計算書の間接法手順、個別原価計算フロー |
| K5 | 制度・基準 | 会社法規定、中小企業会計指針、法人税 |
思考法(T)— 財務・会計版
| タグ | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| T1 | 正誤判定 | 記述の正誤を個別に検証 |
| T2 | 分類判断 | 項目をカテゴリに仕分ける |
| T3 | 計算実行 | 数値を求める計算問題 |
| T4 | 条件整理 | 複数条件を整理して結論を導く |
| T5 | 穴埋め推論 | 文章の空欄に適切な語句を選ぶ |
形式層(L)
| タグ | 意味 | 到達に必要な力 |
|---|---|---|
| L1 | 基礎知識 | 定義を覚えていれば正解できる |
| L2 | 応用理解 | ルールを具体的な場面に当てはめる力 |
| L3 | 計算応用 | 複数ステップの計算を正確にやり遂げる力 |
罠パターン(Trap)— 財務・会計版
| タグ | 意味 | 典型的な引っかけ |
|---|---|---|
| Trap-A | 逆方向 | 借方・貸方の逆、比率の改善・悪化の逆方向 |
| Trap-B | 条件見落とし | 税率、基準の違い、適用条件の見落とし |
| Trap-C | 部分正解 | 一部正しいが全体としては誤りの記述 |
| Trap-D | 類似混同 | 似た概念の取り違え(未払費用vs未払金等) |
| Trap-E | 計算ミス | 公式の取り違え、桁ミス、符号ミス、変換漏れ |
分類タグ凡例
| タグ | 意味 |
|---|---|
| K1 定義・用語 | 用語の正確な意味を問う |
| K2 グラフ形状 | グラフの読み取り・形状判断 |
| K3 数式・公式 | 公式の適用・計算 |
| K4 因果メカニズム | 原因→結果の論理連鎖 |
| K5 制度・データ | 法制度・統計データの知識 |
| T1 正誤判定 | 選択肢の正誤を判定 |
| T2 グラフ読解 | グラフから情報を読み取る |
| T3 計算実行 | 数値計算を実行 |
| T4 因果推論 | 因果関係を推論 |
| T5 場合分け | 条件による場合分け |
| L1 基礎 | 基本知識で解ける |
| L2 応用 | 知識の組み合わせが必要 |
| L3 高度 | 複数ステップの推論が必要 |
| L4 最難度 | 高度な分析力が必要 |
| Trap 逆方向誘発 | 因果の向きを逆に誘導 |
| Trap 混同誘発 | 類似概念を混同させる |
| Trap 部分正解 | 部分的に正しい選択肢で誘導 |
| Trap 条件すり替え | 前提条件を変えて誘導 |
| Trap 計算ミス | 計算過程での間違いを誘発 |
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