効率的市場仮説
弱度、準強度、強度の違いと、証券投資論での意味を整理する
このページの役割
このページは、効率的市場仮説 を整理する解説ページです。CAPM やポートフォリオ理論の周辺で埋もれやすいので、独立して比較軸を固定します。
このページの読み方
「チャートを読めば株で必ず儲かる」「決算書を分析すれば市場平均を超えられる」──こうした主張が通用するかどうかを理論的に整理するのが効率的市場仮説です。このページでは、まず「市場価格にはどこまで情報が反映されているか」という枠組みを理解し、次に 3 つの強度を区別し、最後にポートフォリオ理論や CAPM との関係を確認します。
学習のポイント
- まず
市場価格にはどこまで情報が織り込まれるかの議論だと押さえる - 次に
弱度、準強度、強度の違いを切る - そのうえで
超過収益を継続的に得にくいという含意を理解する
試験で何が問われるか
弱度 / 準強度 / 強度の違いを説明できるか- どの情報が価格に反映済みと考えるかを言えるか
- 能動運用(アクティブ運用)と受動運用(パッシブ運用)の選択根拠を説明できるか
効率的市場仮説とは
効率的市場仮説は、市場価格が利用可能な情報をすばやく反映するという考え方です。この考え方が強いほど、公開情報を使って 継続的に市場平均を上回る超過収益 を得るのは難しいとされます。
ここでいう「効率的」は「正しい」という意味ではなく、「情報が速やかに価格に織り込まれる」という意味です。
3 つの強度
| 形態 | 反映される情報の範囲 | 通用しない投資手法 |
|---|---|---|
| 弱度(ウィーク) | 過去の株価・出来高 | テクニカル分析(チャート分析) |
| 準強度(セミストロング) | 過去情報+すべての公開情報 | テクニカル分析+ファンダメンタル分析 |
| 強度(ストロング) | 過去情報+公開情報+内部情報 | あらゆる分析(理論上の極限) |
弱度
過去の株価や出来高 のような過去情報は、すでに価格へ反映されていると考えます。したがって、チャートのパターンだけで継続的に勝つのは難しいという読み方になります。ただし、企業の財務分析(ファンダメンタル分析)には余地が残ります。
準強度
公開情報 まで価格に織り込まれていると考えます。財務諸表やニュースが公表されたあとに、それだけを使って安定的に超過収益を得るのは難しいという立場です。実証研究で最も支持されている形態です。
強度
公開されていない内部情報 まで含めて価格に反映されているという強い考え方です。理論上の整理として扱われますが、現実にはインサイダー取引で利益が出る事例があるため、強すぎる前提として見られています。
弱度 / 準強度 / 強度 の包含関係と、どこまで分析が否定されるか
弱度 / 準強度 / 強度 は、横に並ぶ 3 択ではなく、強い仮説ほど弱い仮説を含む 関係です。ここを押さえると、どの分析手法まで通用しにくくなるか を一気に戻しやすくなります。
| 強度 | 反映される情報の範囲 | 含む関係 | 主に通用しにくくなる分析手法 | 試験での読み方 |
|---|---|---|---|---|
弱度 | 過去情報 | 出発点 | テクニカル分析 | 過去チャートだけでは勝ちにくい |
準強度 | 過去情報 + 公開情報 | 弱度 を含む | テクニカル分析 + ファンダメンタル分析 | 公開情報だけでも勝ちにくい |
強度 | 過去情報 + 公開情報 + 内部情報 | 準強度 と 弱度 を含む | あらゆる分析(理論上の極限) | 内部情報でも勝ちにくい |
試験での判断順
- まず、問題文が
過去情報、公開情報、内部情報のどこまで反映済みだとしているかを見ます。 公開情報まで反映済みなら、準強度が弱度を含むので、テクニカル分析もファンダメンタル分析も通用しにくいと戻します。内部情報まで反映済みなら、強度が準強度と弱度を含むので、否定範囲は最も広いと読みます。- 逆に
テクニカル分析だけが否定されているなら、まず弱度を疑います。 ファンダメンタル分析まで否定されているなら、少なくとも準強度を疑います。
問9:包含関係と否定範囲
次の各説明について、最も近い EMH の強度を 弱度、準強度、強度 の中から答えてください。あわせて、主に通用しにくくなる分析手法の範囲も答えてください。
- a. 過去の株価や出来高はすでに価格へ反映済みだと考える
- b. 過去情報に加えて、財務諸表やニュースなどの公開情報も価格へ反映済みだと考える
- c. 未公表の合併情報のような内部情報まで価格へ反映済みだと考える
解答:
a は 弱度 で、主に通用しにくくなるのは テクニカル分析 です。
b は 準強度 で、弱度 を含むため テクニカル分析 と ファンダメンタル分析 の両方が通用しにくくなります。
c は 強度 で、準強度 と 弱度 を含むため、理論上は 内部情報 を使う取引まで含めて あらゆる分析 が通用しにくいと読みます。
投資戦略との関係
| 仮説の強度 | アクティブ運用 | パッシブ運用 |
|---|---|---|
| 弱度が成立 | ファンダメンタル分析には可能性あり | テクニカル分析より有効 |
| 準強度が成立 | 公開情報だけでは超過収益は困難 | インデックス運用が合理的 |
| 強度が成立 | いかなる分析でも超過収益は困難 | インデックス運用が最善 |
準強度が成立する市場では、コストの低いパッシブ運用(インデックスファンド)が合理的な選択になります。
ランダム・ウォーク仮説、テクニカル分析、弱度をどうつなぐか
ランダム・ウォーク仮説 は、株価変化は過去の値動きだけからは系統的に予測しにくい という見方です。試験では、これを 弱度 と テクニカル分析 と一緒に問うことが多いので、値動きの性質、分析手法、情報反映の範囲 を分けて読むと崩れにくくなります。
| 論点 | まず見ているもの | 直接答える問い | 試験での読み方 |
|---|---|---|---|
ランダム・ウォーク仮説 | 将来の値動きは過去チャートから読めるか | 明日の値動きは今日までのチャートで予測しやすいか | 過去の値動きだけでは系統的に読みにくい |
テクニカル分析 | 過去の株価、出来高、チャートパターン | 過去チャートから売買判断するか | 移動平均線、トレンドライン、出来高 などが手掛かり |
弱度 | 過去の株価、出来高が織り込み済みか | 過去情報だけで超過収益を取れるか | 過去情報は価格に反映済み と読む |
1 本で理解する順
- まず
弱度で、過去の株価や出来高はすでに価格へ反映済みと置きます。 - その含意として、
将来の値動きを過去チャートだけから系統的に読みづらいというランダム・ウォーク仮説的な見方を置きます。 - すると、
過去チャートを使うテクニカル分析だけで継続的に市場平均を上回るのは難しいと読みやすくなります。
試験での判断順
- まず、問題文が
値動きそのものの性質を言っているのか、分析手法を言っているのか、情報反映の範囲を言っているのかを見ます。 過去チャートだけでは将来を系統的に読みづらいなら、ランダム・ウォーク仮説です。チャートや出来高から売買判断をするなら、テクニカル分析です。過去情報は価格に反映済みと置いているなら、弱度です。- 試験では、
弱度とランダム・ウォーク仮説を近い含意として読み、そこからテクニカル分析は通用しにくいへつなぐと崩れにくくなります。
問7:ランダム・ウォーク仮説とテクニカル分析
次の各説明について、最も近い語を ランダム・ウォーク仮説、テクニカル分析、弱度 の中から答えてください。同じ語を複数回使ってかまいません。
- a. 過去のチャートだけから将来の値動きを系統的に予測しにくいという考え方
- b. 移動平均線やトレンドラインから売買判断をしようとする手法
- c. 過去の株価や出来高はすでに価格へ反映済みだと考える立場
- d. c が概ね成り立つ市場で、継続的に通用しにくいと考えやすい分析手法
解答:a は ランダム・ウォーク仮説、b は テクニカル分析、c は 弱度、d は テクニカル分析 です。弱度 では 過去情報は反映済み と考えるので、その含意として ランダム・ウォーク仮説 的に読みやすくなり、過去チャート に頼る テクニカル分析 は継続的な超過収益を取りにくいと整理します。
テクニカル分析、ファンダメンタル分析、インサイダー情報、インデックス運用をどう切るか
弱度 / 準強度 / 強度 の比較問題では、単に情報範囲を暗記するだけでなく、その情報で何をしようとしているか まで読めるかが問われます。ここでは 分析手法 と 合理的な運用 を、使う情報 と 強度の含意 でまとめます。
| 手法や運用 | 主に使う情報 | まず結び付ける強度 / 含意 | 試験での読み方 |
|---|---|---|---|
テクニカル分析 | 過去の株価、出来高、チャートパターン | 弱度 で通用しにくい | 過去情報だけで超過収益が取れるか を問われている |
ファンダメンタル分析 | 財務諸表、決算、ニュースなどの公開情報 | 準強度 で通用しにくい | 公開情報だけで超過収益が取れるか を問われている |
インサイダー情報 | 未公表の合併、業績修正などの内部情報 | 強度 の論点 | 内部情報まで織り込み済みか を問われている |
インデックス運用 | 市場平均へ低コストで連動する運用 | 準強度 が概ね成り立つときに合理的 | 特別な情報優位がない投資家の行動 を問われている |
試験での判断順
- まず
過去の値動きを使うかどうかを見ます。そこならテクニカル分析と弱度を結び付けます。 - 次に
公開情報を使うかどうかを見ます。そこならファンダメンタル分析と準強度を結び付けます。 内部情報が出てきたら、インサイダー情報と強度を結び付けます。特別な情報優位がない、市場平均へ低コストで連動するとあれば、インデックス運用を考えます。インデックス運用は強度のときだけではなく、準強度が概ね成り立つ市場でも合理的になりやすいと読みます。
問6:投資手法と EMH 強度
次の各説明について、最も近い 投資手法または運用 と、主に結び付ける EMH の強度を答えてください。
- a. チャートや出来高のパターンから売買判断をして、継続的に市場平均を上回ろうとする
- b. 決算短信や財務諸表などの公表情報を分析して、継続的に市場平均を上回ろうとする
- c. 未公表の合併情報を使って超過収益を狙う
- d. 特別な情報優位を持たない投資家が、低コストで市場平均へ連動する運用を選ぶ
解答:a は テクニカル分析 と 弱度、b は ファンダメンタル分析 と 準強度、c は インサイダー情報 と 強度、d は インデックス運用 と 準強度 です。過去情報 を使う a は 弱度、公開情報 を使う b は 準強度、内部情報 を使う c は 強度 の論点です。d は 分析手法 ではなく 運用方針 ですが、公開情報だけで継続的に勝ちにくいなら、準強度 の含意として インデックス運用 が合理的になりやすいです。
市場ポートフォリオ、アクティブ運用、アノマリーをどうつなぐか
効率的市場仮説 の設問では、弱度 / 準強度 / 強度 の暗記に加えて、市場全体の基準、市場平均をどう扱う運用か、例外パターン を区別できるかが問われます。ここを一続きで押さえると、パッシブ運用がなぜ合理的か、アノマリーが何を示すか がつながります。
| 論点 | 主に見ているもの | 直接答える問い | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|
市場ポートフォリオ | 市場全体を時価総額比で保有した基準 | 市場全体の平均像は何か | 人気銘柄を集めたものだと考える |
アクティブ運用 | 市場平均超えを狙う運用 | 銘柄選択や売買タイミングで勝ちに行くか | 分析すれば平均を超えやすいと考える |
パッシブ運用 | 市場平均へ連動する運用 | 市場平均並みを低コストで取りに行くか | 何も考えない運用だと考える |
アノマリー | EMH だけでは説明しにくい例外パターン | 例外的に観察される収益傾向は何か | 例外があるだけで簡単な超過収益が保証されると考える |
1 本で理解する順
- まず
市場ポートフォリオを市場全体の基準として押さえます。 - その基準を
上回りに行くのがアクティブ運用、連動させるのがパッシブ運用です。 準強度の EMHがだいたい成り立つなら、公開情報だけで継続的に勝つのは難しいため、パッシブ運用が合理的になりやすいです。- それでも
1月効果や小型株効果のような例外が観察されるとき、そのパターンをアノマリーと呼びます。
代表的なアノマリー
| 例 | 内容 | どう読むか |
|---|---|---|
1月効果 | 1月に株価が上がりやすいとされる傾向 | 暦に沿った例外パターン |
小型株効果 | 小型株の収益率が高く見える傾向 | 規模に関する例外パターン |
割安株効果 | PBR や PER が低い株の収益率が高く見える傾向 | バリュー株に関する例外パターン |
受験生向けの一本線
市場ポートフォリオ = 基準、アクティブ / パッシブ = 市場平均との付き合い方、アノマリー = 例外パターン と置くと、EMH の設問がかなり読みやすくなります。
1月効果 / 小型株効果 / 割安株効果 を強度へどう結び付けるか
過去問では、アノマリー の名前を知っているだけでは不十分で、その傾向が何の情報を使って見えているか まで戻して、弱度 / 準強度 / 強度 のどこに引っ掛かるかを選ぶ必要があります。
| 例 | まず見ている情報 | 主に揺さぶる強度 | 理由 |
|---|---|---|---|
1月効果 | 暦、過去の収益率パターン | 弱度 | 過去の価格推移や季節性だけで超過収益の傾向が見えるなら、過去情報は織り込み済み という 弱度 とぶつかりやすい |
小型株効果 | 企業規模、時価総額という公開情報 | 準強度 | 小型株だという公開情報だけで高収益傾向が続くなら、公開情報まで反映済み という 準強度 とぶつかりやすい |
割安株効果 | PBR、PER などの公開情報 | 準強度 | 財務情報や株価指標のような公開情報だけで高収益傾向が続くなら、準強度 とぶつかりやすい |
試験での判断順
- まず、その傾向が
過去の値動きや暦だけで見えているかを確認します。そこなら弱度を疑います。 - 次に、その傾向が
企業規模やPBR / PERのような公開情報に基づくかを確認します。そこなら準強度を疑います。 内部情報を使って超過収益が出る話なら、強度を疑います。1月効果 / 小型株効果 / 割安株効果は、典型的には弱度または準強度と結び付きます。強度は通常、インサイダー情報でも勝てないかで問われます。
最短整理
過去パターン = 弱度、公開情報 = 準強度、内部情報 = 強度 と置くと、アノマリー と EMH の強度対応をかなり切りやすくなります。
市場ポートフォリオ / アクティブ運用 / パッシブ運用 / アノマリー / EMH強度 を一問で往復する
過去問では、市場ポートフォリオ、アクティブ運用、パッシブ運用、アノマリー、EMH強度 が 1 つの文章にまとめて出ることがあります。こういう総合問題では、基準、運用方針、例外、情報反映の範囲 の順で切ると、用語の暗記だけで止まりにくくなります。
| 説明文の手掛かり | 最初に答える語 | 試験での読み方 |
|---|---|---|
| 市場全体を時価総額比で持つ基準 | 市場ポートフォリオ | 市場全体の平均像 を聞かれている |
| 市場平均超えを狙う | アクティブ運用 | 平均に勝ちに行く 方針を聞かれている |
| 市場平均へ連動する | パッシブ運用 | 低コストで平均を取りに行く 方針を聞かれている |
| 例外的な高収益傾向 | アノマリー | EMH だけでは説明しにくい観察事実を聞かれている |
過去情報 / 公開情報 / 内部情報 のどこまで反映済みか | 弱度 / 準強度 / 強度 | どの強度の EMH を前提にしているかを聞かれている |
総合問題での判断順
- まず
市場全体の基準を聞かれたら、市場ポートフォリオを置きます。 - 次に、
市場平均を上回るのか市場平均へ連動するのかで、アクティブ運用 / パッシブ運用を切ります。 公開情報だけで継続的に勝つのは難しいとあれば、まず準強度を疑います。1月効果や小型株効果のような例外が出てきたら、アノマリーと読みます。- 最後に、その例外が
過去パターン、公開情報、内部情報のどれに基づくかを見て、弱度 / 準強度 / 強度を確定します。
問5:総合比較
ある市場では、多くの投資家が市場全体を時価総額比で保有した基準を意識している。投資家Aは銘柄選択によってその基準を上回ることを狙い、投資家Bは低コストでその基準に連動する運用を選んでいる。また、公開情報だけでは継続的な超過収益を得にくいと考えられている一方で、1月効果 のような例外的傾向も観察される。
この文章について、次を答えてください。
- a. 市場全体の基準となるポートフォリオ名
- b. 投資家Aの運用方針
- c. 投資家Bの運用方針
- d.
公開情報まで価格に反映済みと考えるEMHの強度 - e.
1月効果のような例外的傾向の呼び名 - f.
1月効果が主にぶつかりやすいEMHの強度
解答:a は 市場ポートフォリオ、b は アクティブ運用、c は パッシブ運用、d は 準強度、e は アノマリー、f は 弱度 です。市場全体の基準 なら 市場ポートフォリオ、市場平均超えを狙う なら アクティブ運用、市場平均へ連動する なら パッシブ運用 と読めます。公開情報だけでは継続的に勝ちにくい は 準強度 の含意であり、1月効果 は EMH だけでは説明しにくい アノマリー で、主に 過去パターン に基づくため 弱度 とぶつかりやすいです。
CAPM / CML / 市場ポートフォリオ / EMH をどう切るか
証券投資論では、市場ポートフォリオ、CML、CAPM、EMH が連続して出てきます。どれも 市場全体 や 市場平均 に触れるため混ざりやすいですが、実際は 基準、効率的ポートフォリオの線、個別証券の価格づけ、情報反映 と役割が違います。
| 語 | 主な前提 / 土台 | 基準 / 中心 | 直接答える問い | 試験での読み方 |
|---|---|---|---|---|
市場ポートフォリオ | すべてのリスク資産を市場全体として見る | 全リスク資産を 時価総額比 で持つ理論上の基準 | 市場全体の平均像は何か | CAPM や CML の土台 |
CML | 無リスク資産と 市場ポートフォリオ を組み合わせられる | 効率的ポートフォリオの最良の直線 | 効率的ポートフォリオ全体のリスクと期待収益率はどう並ぶか | 標準偏差、総リスク、最良の直線 が手掛かり |
CAPM | 分散後にも残る市場リスクだけが報酬の対象 | 市場ポートフォリオ に対する β | 個別証券の期待収益率は何%か | β、要求収益率、株主資本コスト が手掛かり |
EMH | 利用可能な情報が素早く価格へ反映される | 過去情報 / 公開情報 / 内部情報 の範囲 | どの情報だけでは継続的な超過収益が取りにくいか | 公開情報で勝てるか、パッシブ運用が合理的か が手掛かり |
試験での判断順
市場全体の基準ポートフォリオを聞かれたら、まず市場ポートフォリオです。無リスク資産と市場ポートフォリオを結ぶ最良の直線、効率的ポートフォリオ全体、標準偏差が出てきたら、CMLです。β、個別証券の期待収益率、株主が何%を要求するかが出てきたら、CAPMです。何の情報まで価格へ反映済みか、公開情報だけで継続的に勝てるかが出てきたら、EMHです。- 迷ったときは、
基準、効率的ポートフォリオの線、個別証券の価格づけ、情報反映のどれを問うているかへ戻ります。
受験生向けの一本線
市場ポートフォリオ = 基準、CML = 効率的ポートフォリオの線、CAPM = βで個別証券を価格づけ、EMH = 情報反映 と固定すると、CML と CAPM、市場ポートフォリオ と EMH を混同しにくくなります。
CAPM・CML・市場ポートフォリオとの関係
EMH は CAPM や CML と同じ理論ではありません。EMH は「情報がどこまで価格へ反映されるか」の話で、CAPM は「個別証券の期待収益率をどう決めるか」、CML は「効率的ポートフォリオ全体のリスクと期待収益率がどう並ぶか」の話です。
ここで中心になるのが 市場ポートフォリオ です。市場ポートフォリオ は CAPM では β を測る基準になり、CML では無リスク資産と結ばれる接点になります。つまり、市場ポートフォリオ は 基準、CAPM は 個別証券の価格づけ、CML は 効率的ポートフォリオの線、EMH は 情報反映 と置くと整理しやすいです。
問10:`CAPM / CML / 市場ポートフォリオ / EMH`
次の各説明について、最も近い語を CAPM、CML、市場ポートフォリオ、EMH の中から答えてください。
- a. すべてのリスク資産を時価総額比で保有した、市場全体の理論上の基準
- b. 無リスク資産と a を結んだ、効率的ポートフォリオ全体の最良の直線
- c. 個別証券の
βを使って期待収益率や株主資本コストを見積もる考え方 - d. 過去情報や公開情報など、利用可能な情報が価格へ速やかに反映されるとみる考え方
解答:a は 市場ポートフォリオ、b は CML、c は CAPM、d は EMH です。a は 基準、b は 効率的ポートフォリオの線、c は 個別証券の価格づけ、d は 情報反映 を見ています。特に c は β と 個別証券、b は 標準偏差 と 効率的ポートフォリオ を見る点で切り分けると、CAPM と CML を逆にしにくくなります。
SML / CML / β / 標準偏差 をどう切るか
CAPM と CML の比較まで進むと、次は SML と CML、β と 標準偏差 が混ざりやすくなります。ここでは、どの線か と どのリスク指標か を先に切ると、図問題でも文章問題でも崩れにくくなります。
| 語 | 何を表すか | 主に見るリスク指標 | 主な対象 | 試験での読み方 |
|---|---|---|---|---|
SML | CAPM の 期待収益率と β の関係を表す線 | β | 個別証券 や ポートフォリオ | 個別証券を何%で価格づけるか を聞いている |
CML | 無リスク資産と市場ポートフォリオを結ぶ最良の線 | 標準偏差(総リスク) | 効率的ポートフォリオ | 効率的ポートフォリオ全体 のリスクと収益率を聞いている |
β | 市場全体の動きに対する感応度 | 系統的リスク | 個別証券 や ポートフォリオ | 市場が 1% 動いたとき何% 動きやすいか を聞いている |
標準偏差 | 収益率のばらつき全体 | 総リスク | 個別証券 や ポートフォリオ | ボラつき全体の大きさ を聞いている |
試験での判断順
個別証券の期待収益率とβを結び付けているなら、SMLです。無リスク資産、市場ポートフォリオ、効率的ポートフォリオが並び、横軸が標準偏差なら、CMLです。市場全体に対する感応度を聞いているなら、βです。収益率のばらつき全体を聞いているなら、標準偏差です。- 迷ったときは、
個別証券か / 効率的ポートフォリオか、βか / 標準偏差かの 2 つに戻ります。
問11:`SML / CML / β / 標準偏差`
次の各説明について、最も近い語を SML、CML、β、標準偏差 の中から答えてください。
- a. 市場全体が 1% 動いたとき、その証券が何% 動きやすいかを表す指標
- b.
CAPMで、個別証券の期待収益率と a の関係を表す線 - c. 無リスク資産と市場ポートフォリオを結び、効率的ポートフォリオ全体の最良の組み合わせを表す線
- d. 収益率のばらつき全体を表し、
CMLの横軸で使う指標
解答:a は β、b は SML、c は CML、d は 標準偏差 です。β は 市場感応度、標準偏差 は 総リスク を表します。したがって、CAPM の線である SML は β を使い、効率的ポートフォリオ の線である CML は 標準偏差 を使うと戻すと整理しやすいです。
典型的なつまずき
弱度 / 準強度 / 強度を反映情報の 範囲 で切れない → 弱度⊂準強度⊂強度の包含関係効率的市場仮説を株価は常に正しいと雑に理解する → 「情報が速やかに反映される」であって「正しい」ではないCAPMと効率的市場仮説を同じ理論だと思い込む →CAPMはリスク・リターンの均衡、EMHは情報反映の速度市場ポートフォリオをEMHと同じ意味だと思う →市場ポートフォリオはCAPMとCMLの基準CMLとCAPMを同じ線だと思う →CMLは標準偏差と効率的ポートフォリオ、CAPMはβと個別証券SMLとCMLを同じ線だと思う →SMLはβ、CMLは標準偏差を使うβを標準偏差の言い換えだと思う →βは系統的リスク、標準偏差は総リスクランダム・ウォーク仮説 = 完全な偶然と雑に読む → 試験では過去チャートだけでは系統的に読みにくいと押さえるランダム・ウォーク仮説と弱度を完全に同義だと思う → 厳密には別だが、試験では弱度の含意として近く問われやすい- 準強度で「ファンダメンタル分析が無意味」と言い切る → 正確には「公開 情報だけでは 継続的な超過収益 が困難」
準強度が成り立つのにテクニカル分析はまだ通用すると読む →準強度は弱度を含むので、テクニカル分析も通用しにくい強度を準強度と横並びの別物だと思う →強度は準強度と弱度を含む最も強い仮説アノマリーがあるならEMHは全て間違いだと飛躍する → 例外の存在と、低コストのパッシブ運用がなお合理的かは別問題
問題を解くときの観点
- 問われているのは
どの情報まで反映済みかか 公開情報と内部情報のどちらを比較しているか- 結論が
超過収益の取りにくさへつながるか テクニカル分析とファンダメンタル分析のどちらが否定されるか強度 ⊃ 準強度 ⊃ 弱度の包含関係を崩していないかテクニカル分析だけ、ファンダメンタル分析まで、内部情報までのどこまで否定されるかランダム・ウォーク仮説、テクニカル分析、弱度のどれを聞かれているか過去情報 / 公開情報 / 内部情報 / 市場平均連動のどれを聞かれているか市場全体の基準を聞かれているなら市場ポートフォリオか市場ポートフォリオ = 基準、CML = 効率的ポートフォリオの線、CAPM = 個別証券の価格づけ、EMH = 情報反映と切れているかCAPMはβ、CMLは標準偏差を見ていると切れているかSML = β / 個別証券、CML = 標準偏差 / 効率的ポートフォリオの違いを切れているかβ = 系統的リスク、標準偏差 = 総リスクと戻せるか市場平均を超えに行くのか市場平均へ連動させるのか1月効果や小型株効果のような例外をアノマリーとして読めているか基準、運用方針、例外、情報反映の範囲のどれを問われているか過去パターン、公開情報、内部情報のどれに基づく話か1月効果 = 弱度、小型株効果 / 割安株効果 = 準強度のどちらに近いか
確認問題
問1:効率的市場仮説の形態
準強度の効率的市場仮説が成立する場合、次の投資手法のうち継続的な超過収益が期待できるのはどれか。(a) テクニカル分析 (b) ファンダメンタル分析 (c) インサイダー情報に基づく取引 (d) インデックス運用
解答:(c)。準強度では公開情報まで反映済みのため、(a)(b) は超過収益が困難。(d) は市場平均並みのリターンであり超過収益ではない。(c) の内部情報は反映されていないため超過収益の余地がある(ただし法律で禁止)。
問2:EMH と CAPM の関係
「効率的市場仮説が成立すれば CAPM も必ず成立する」は正しいか。
解答:正しくない。両者は扱う問いが異なる別の理論であり、一方が他方を自動的に導くわけではない。効率的市場仮説は「情報が価格へ速やかに反映されるか」を扱い、CAPM は「β を用いて個別証券のリスク・リターン均衡をどう決めるか」を扱う。CAPM が成立するには投資家の合理性・均一期待・無リスク資産への自由な借入など、効率的市場仮説とは独立した前提が別途必要であり、効率的市場仮説が成立するだけでは CAPM は導かれない。
問3:市場ポートフォリオと運用方針
準強度の効率的市場仮説が概ね成り立つ市場で、特別な情報優位を持たない投資家がいる。このとき、(a) 市場全体の基準として考えるポートフォリオは何か、(b) 合理的になりやすい運用方針は何か、(c) 1月効果 は何と呼ばれるか。
解答: (a) 市場ポートフォリオ、(b) パッシブ運用、(c) アノマリー。市場全体の平均像を基準にし、公開情報だけで継続的に勝つのが難しいなら、低コストで市場平均へ連動する運用が合理的です。1月効果 は、EMH だけでは説明しにくい例外パターンとして扱います。
問4:アノマリーと EMH の強度
次の各現象について、主にどの強度の EMH とぶつかりやすいかを 弱度、準強度、強度 の中から答えてください。
- a.
1月効果 - b.
小型株効果 - c.
割安株効果 - d. 未公表の合併情報を使うと超過収益が得られるという話
解答:a は 弱度、b と c は 準強度、d は 強度 です。1月効果 は暦や過去収益率パターンに基づくため 弱度 とぶつかりやすく、小型株効果 と 割安株効果 は公開されている企業属性や財務指標に基づくため 準強度 とぶつかりやすいです。未公表の合併情報は 内部情報 なので、強度 の論点です。
問8:ランダム・ウォーク仮説の読み方
ある受験生は「過去 3 か月のチャート上昇が続いているから、来月も上がりやすい」と主張している。別の受験生は「過去チャートだけでは次の値動きを系統的に予測しにくい」と考えている。この対立を最もよく説明する EMH の強度と、通用しにくいとされる分析手法を答えてください。
解答:弱度 と テクニカル分析 です。過去チャートだけでは次の値動きを系統的に読みづらい という見方は ランダム・ウォーク仮説 的であり、試験では 弱度 の含意として読まれやすいです。そのため、過去の株価や出来高 に依存する テクニカル分析 は継続的な超過収益を取りにくいと整理します。
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