デリバティブとリスク管理
先物、オプション、スワップの違いと、ヘッジの基本を整理する
このページの役割
このページは、デリバティブの仕組みと使い分けを整理する解説ページです。デリバティブとは「原資産から派生した金融商品」であり、先物、オプション、スワップがあります。試験で問われるのは「何のリスクをどう管理したいか」を判断し、その目的に適した商品を選べるか、そして計算できるかです。
このページを読む前に
金利、為替、株価といった「原資産」の変動リスクが企業経営に影響する場面を想像してください。例えば、輸入企業が3か月後にドルで100万ドルの支払いをする場合、「1ドル = 150円の今と、3か月後が異なるリスク」に対処する必要があります。このページでは、そのリスクにどう対処するかという視点から、デリバティブの仕組みを学びます。
デリバティブの根本 ── 義務か権利か
デリバティブの最も根本的な分かれ目は「将来の取引を 義務 として負うか」「権利 として持つか」です。ここが理解できていると、試験問題の多くが自動的に解ける仕組みになっています。
先物と先渡 は双方が義務を負う商品です。あらかじめ決められた日時に、あらかじめ決められた価格で、必ず売買しなければなりません。価格が自分たちに有利に動いても不利に動いても、その契約を実行する義務があります。「確実に固定したい」というニーズに応えます。
オプション は買い手に権利を与えます。買い手は「行使するか、放棄するか」を選べます。不利に動けば放棄し、有利に動けば行使できます。ただし、この権利の対価として、買い手はプレミアム(オプション料)を売り手に支払います。「不利な方向だけ避けたい。有利な方向の利益は残したい」というニーズに応えます。
価格固定、下振れ回避、金利固定をどう切るか
過去問では、先物、オプション、スワップ の定義だけを知っていても、場面に応じた選択で迷いやすいです。そこで、まず 何を固定したいのか から逆算します。
3 つのニーズを並べる
| 何をしたいか | まず見ている対象 | 使いやすい手段 | 選ぶ理由 | 典型例 |
|---|---|---|---|---|
将来価格を今すぐ固定したい | 商品価格、為替レート | 先物 / 先渡 / 為替予約 | 双方に義務があり、将来の取引価格を決めやすい | 原材料仕入価格の固定、収穫物販売価格の固定 |
不利な方向だけ避けたい | 価格や為替の片側リスク | オプション購入 | 権利だけを持ち、不利なら行使、有利なら放棄できる | 輸入企業の ドル・コール、輸出企業の ドル・プット |
支払い条件そのものを変えたい | 金利や通貨建てのキャッシュフロー条件 | スワップ | 既存契約は残しつつ、支払い条件を交換できる | 変動金利借入 → 固定金利負担 |
試験での判断順
- まず
何が変動するのかを見ます。商品価格か、為替か、金利かを切ります。 - 次に
完全に固定したいのか、不利な方向だけ避けたいのかを切ります。 完全固定なら先物 / 先渡 / 為替予約、片側保護ならオプションを考えます。先物を使うなら、将来買う側で価格上昇が困る = 買いヘッジ、将来売る側で価格下落が困る = 売りヘッジと整理します。支払い条件や利払い条件を変えたいなら、スワップを優先して考えます。
受験生向けの一本線
価格固定 = 先物 / 先渡 / 為替予約、片側だけ保護 = オプション、金利条件の変換 = スワップ と置き、その後で 買う側か売る側か を決めると、デリバティブの選択問題を外しにくくなります。
先物と先渡 ── 将来価格を確実に固定する
先物と先渡は、どちらも「将来のある日に、決めた価格で売買する契約」です。しかし、取引の場所、信用リスク、決済方法が異なります。これが試験で頻出です。
| 項目 | 先物(Futures) | 先渡(Forward) |
|---|---|---|
| 取引場所 | 取引所(標準化) | 店頭(相対取引) |
| 契約条件 | 標準化 | 当事者間で自由に設定 |
| 信用リスク | 清算機関が介在するため低い | カウンターパーティリスクあり |
| 決済 | 日次で値洗い(差金決済) | 満期時に一括決済 |
| 流動性 | 高い | 低い |
先物の最大の特徴は、清算機関(例:日本証券クリアリング機構(JSCC))が取引の間に入ることです。そのため、相手方が倒産しても私たちの代金は守られます。また、日次で値洗い(毎日の価格変動で利益または損失を確定)するため、不意の大きな損失を避けられます。
先渡は条件をカスタマイズできる反面、相手方の信用リスクを丸ごと負います。銀行が輸入企業と「3か月後、1ドル = 150円で100万ドルを売る」という契約をしても、もし銀行が倒産したら?という懸念が残ります。
どちらも「双方に義務がある」という点は同じです。
先物のヘッジ活用
先物は「ヘッジ」(リスク回避)に使われます。具体例で見ましょう。
買いヘッジ:将来の購入資金が今より上がると困る場合
- 精油企業が3か月後に原油を仕入れる予定
- 「原油価格が上がると、仕入原価が増えて困る」
- 対策:原油先物の買い契約を結ぶ
- 結果:価格が上がっても、先物で利益が出るため、実質的に購入価格は固定
売りヘッジ:将来の販売価格が下がると困る場合
- 麦の生産農家が3か月後に収穫・販売予定
- 「麦価が下がると、売却収入が減る」
- 対策:麦先物の売り契約を結ぶ
- 結果:価格が下がっても、先物で利益が出るため、実質的な販売価格は固定
オプション ── 権利を買うか売るか
オプションは、原資産を買う権利か売る権利かで2種類に分かれます。
| 種類 | 権利の内容 | 買い手の判断 | 売り手の立場 |
|---|---|---|---|
| コール・オプション | 原資産を 買う権利 | 行使するか放棄するか選択 | 買い手の行使に応じる義務 |
| プット・オプション | 原資産を 売る権利 | 行使するか放棄するか選択 | 買い手の行使に応じる義務 |
さらに、行使できるタイミングで2つに分かれます。ヨーロピアン型 は満期日のみ、アメリカン型 は満期日までいつでも行使可能です。試験で頻出なのはヨーロピアン型です。
オプションの損益パターン ── 4つの視点
オプションの損益は、買い手と売り手、コールとプット、計4つの組み合わせが存在します。これは「ペイオフ図」で視覚的に理解するのが最速です。
コール買いの損益:
- 原資産価格が上昇したとき、行使して利益を得る
- 利益 = 原資産価格 - 行使価格 - プレミアム
- 原資産価格が下落したなら、行使しない(損失 = プレミアムのみ)
- 損益分岐点 = 行使価格 + プレミアム
プット買いの損益:
- 原資産価格が下落したとき、行使して利益を得る
- 利益 = 行使価格 - 原資産価格 - プレミアム
- 原資産価格が上昇したなら、行使しない(損失 = プレミアムのみ)
- 損益分岐点 = 行使価格 - プレミアム
買い手の最大損失は、常にプレミアムに限定されます。これがオプションの最大の特徴です。
コール売りの損益:買い手の損益を反転。最大利益はプレミアムですが、原資産が上昇し続けると損失は理論上無限大です。
プット売りの損益:買い手の損益を反転。最大利益はプレミアムで、最大損失は行使価格 - プレミアムです。
4ポジションを最大利益、最大損失、損益分岐点で並べる
オプションの4ポジションは、上昇で得するか / 下落で得するか だけでなく、最大利益、最大損失、損益分岐点 を並べると一気に整理できます。とくに試験では、買い手の最大損失 と 売り手の最大利益 をプレミアムで固定できるかが分かれ目です。
| ポジション | どちらに動くと有利か | 最大利益 | 最大損失 | 損益分岐点 | 最初に固定すること |
|---|---|---|---|---|---|
コール買い | 原資産価格の 上昇 | 理論上大きい | 支払プレミアム | 行使価格 + プレミアム | 買い手 なので最大損失はプレミアム |
プット買い | 原資産価格の 下落 | 行使価格 - プレミアム(原資産価格が 0 まで下がると仮定) | 支払プレミアム | 行使価格 - プレミアム | 買い手 なので最大損失はプレミアム |
コール売り | 原資産価格が 上がらない と有利 | 受取プレミアム | 理論上大きい | 行使価格 + プレミアム | 売り手 なので最大利益はプレミアム |
プット売り | 原資産価格が 下がらない と有利 | 受取プレミアム | 行使価格 - プレミアム(原資産価格が 0 まで下がると仮定) | 行使価格 - プレミアム | 売り手 なので最大利益はプレミアム |
試験での判断順
- まず
買いか売りかを見ます。買い手 = 最大損失はプレミアム、売り手 = 最大利益はプレミアムと先に固定します。 - 次に
コールかプットかを見ます。上昇で有利 = コール、下落で有利 = プットと戻します。 損益分岐点は、コール = 行使価格 + プレミアム、プット = 行使価格 - プレミアムと整理します。売りは買いの損益を反転した形だと考えると、最大利益 / 最大損失を逆にしにくくなります。
4ポジションの最短整理
買い手の最大損失 = プレミアム、売り手の最大利益 = プレミアム、コールは K + P、プットは K - P を先に置くと、損益図を描かなくても方向をかなり切りやすくなります。
具体的な計算例
コール・オプション。行使価格 1,000円、プレミアム 80円の場合:
ケース1:原資産価格が 1,200円
- 権利行使:1,200 - 1,000 = 200円の利益
- プレミアムを引く:200 - 80 = 120円の利益
ケース2:原資産価格が 1,050円
- 権利行使:1,050 - 1,000 = 50円の利益
- プレミアムを引く:50 - 80 = 30円の損失(損益分岐点1,080円には届かず純損失だが、ITMのため行使が合理的。行使すれば損失30円、放棄すればプレミアム全額の80円の損失になるため、行使して損失を抑えた方がよい)
ケース3:原資産価格が 900円
- 権利行使する価値なし
- 損失 = プレミアムの 80円(最大損失)
損益分岐点 = 1,000 + 80 = 1,080円(この価格以上で利益)
オプション価値の構成 ── 本質的価値と時間価値
オプションの価格がいくらになるかを理解するには、2つの構成要素を知る必要があります。
オプション価格 = 本質的価値 + 時間的価値
本質的価値 は「今すぐ行使したら得られる金額」です。
- コールの本質的価値 = max(原資産価格 - 行使価格, 0)
- プットの本質的価値 = max(行使価格 - 原資産価格, 0)
時間的価値 は「満期までに状況が好転する可能性への対価」です。満期が長いほど、また価格変動が大きい(ボラティリティが高い)ほど、この価値は大きくなります。逆に満期に近づくと、時間的価値はゼロに近づきます。
ITM・ATM・OTMの分類
オプションが行使に値するかどうかは、現在の原資産価格と行使価格の関係で判断します。
| 状態 | コール・オプション | プット・オプション |
|---|---|---|
| ITM(イン・ザ・マネー) | 原資産価格 > 行使価格(行使すると利益) | 原資産価格 < 行使価格(行使すると利益) |
| ATM(アット・ザ・マネー) | 原資産価格 = 行使価格 | 原資産価格 = 行使価格 |
| OTM(アウト・オブ・ザ・マネー) | 原資産価格 < 行使価格(行使すると損失) | 原資産価格 > 行使価格(行使すると損失) |
ATMのオプションは本質的価値がゼロで、時間的価値のみで構成されています。
本質的価値、時間価値、ITM、ATM、OTMを一緒に見る
試験では、ITM / ATM / OTM の判定だけでなく、その価格のうち何が本質的価値で、何が時間価値か まで問われやすいです。ここでは状態ごとに、満期接近 と ボラティリティ がどう効くかまでまとめて押さえます。
| 状態 | 本質的価値 | 時間価値 | 満期接近でどうなるか | ボラティリティ上昇でどうなるか | 受験生向けの読み方 |
|---|---|---|---|---|---|
ITM | 正 | 残る ことが多い | 時間価値 が縮み、満期では 本質的価値 に近づく | 一般に上がりやすい | 本質的価値だけ ではない |
ATM | 0 | 価格の中心 | 時間価値 が縮み、満期では 0 に近づく | 上がりやすい | 価格は時間価値だけ |
OTM | 0 | 価格は 時間価値だけ | 時間価値 が縮み、満期では 0 に近づく | 上がりやすい | 満期前なら価格ゼロとは限らない |
試験での判断順
- まず
コール / プットと原資産価格と行使価格の大小を見て、ITM / ATM / OTMを判定します。 本質的価値は、ITM なら正、ATM / OTM なら 0と置きます。オプション価格 - 本質的価値が時間価値です。ATM / OTMで価格が残っていれば、それは時間価値です。満期接近は時間価値を減らす、ボラティリティ上昇は時間価値を増やすと戻します。- その結果、
満期前の ATM / OTMには価格が残りうる一方、満期では時間価値が消えやすいと読みます。
価値構成の最短整理
ITM = 本質的価値あり、ATM / OTM = 本質的価値 0、オプション価格 = 本質的価値 + 時間価値、満期接近で時間価値は減る、ボラティリティ上昇で時間価値は増える と置くと、価値構成の問題をかなり外しにくくなります。
オプション価格に影響する5つの要因
試験でよく出題されるのが「オプション価格はどうなるか」という問題です。次の表を暗記する必要はありませんが、理屈で理解することが大切です。
| 要因 | コール価格 | プット価格 |
|---|---|---|
| 原資産価格が上昇 | 上昇 | 下落 |
| 行使価格が上昇 | 下落 | 上昇 |
| 満期までの期間が長い | 上昇 | 上昇 |
| ボラティリティ(価格変動)が大きい | 上昇 | 上昇 |
| 金利が上昇 | 上昇 | 下落 |
特に注目すべきは 「満期までの期間」と「ボラティリティ」はコール・プット両方を上昇させる ということです。不確実性が高いほど、大きく有利に動く可能性が高まるからです。
プット=コール・パリティ ── コールとプットの価格関係
同じ原資産、同じ行使価格、同じ満期のコールとプットの間には、必ず成り立つ関係式があります。これが プット=コール・パリティ です。
C + PV(K) = P + S
ここで:
- C:コール・オプション価格
- P:プット・オプション価格
- S:現在の原資産価格
- PV(K):行使価格の現在価値 = K / (1+r)^t
- K:行使価格
- r:無リスク金利
- t:満期までの期間
この関係を使えば、3つの値がわかれば、残りの1つを求められます。
計算例
原資産価格 S = 1,000円、行使価格 K = 1,050円、無リスク金利 r = 5%、満期 t = 1年、コール価格 C = 80円の場合:
まず、行使価格の現在価値を計算します: PV(K) = 1,050 / 1.05 = 1,000円
パリティの式に代入: 80 + 1,000 = P + 1,000 P = 80円
つまり、プット・オプション価格は80円です。
二項モデル ── オプション価格を理論的に算出する
オプションの価格を理論的に求める方法が 二項モデル です。このモデルは「リスク中立確率」という概念を使って、オプション価格を計算します。
二項モデルの基本仮定:原資産価格は次の期間に「上昇」か「下降」のいずれかにのみ動く。
計算に必要な数値:
- S:現在の原資産価格
- u:上昇倍率(例:u = 1.2なら20%上昇)
- d:下降倍率(例:d = 0.9なら10%下降)
- K:オプションの行使価格
- r:無リスク金利(1期間あたり)
手順1:上昇時と下降時の原資産価格を計算
- 上昇時:Su = S × u
- 下降時:Sd = S × d
手順2:各時点でのオプション価値を計算
- コール買いが上昇した場合:Cu = max(Su - K, 0)
- コール買いが下降した場合:Cd = max(Sd - K, 0)
手順3:リスク中立確率を計算 リスク中立確率 p は、実際の確率ではなく「価格計算上の確率」です。
p = (1 + r - d) / (u - d)
手順4:コール価格を計算 C = [p × Cu + (1 - p) × Cd] / (1 + r)
具体的な計算例
現在の原資産価格 S = 100、上昇倍率 u = 1.2、下降倍率 d = 0.9、行使価格 K = 105、無リスク金利 r = 5%(期間あたり)のコール・オプション価格を求めます。
手順1:上昇・下降時の原資産価格
- Su = 100 × 1.2 = 120
- Sd = 100 × 0.9 = 90
手順2:上昇・下降時のコール価値
- Cu = max(120 - 105, 0) = 15
- Cd = max(90 - 105, 0) = 0(行使しない)
手順3:リスク中立確率 p = (1.05 - 0.9) / (1.2 - 0.9) = 0.15 / 0.3 = 0.5
つまり、50%の確率で上昇、50%の確率で下降するという計算上の確率です。
手順4:コール価格 C = (0.5 × 15 + 0.5 × 0) / 1.05 = 7.5 / 1.05 ≒ 7.14円
計算上のコール価格は約7.14円です。
二項モデルでよくある計算ミス
リスク中立確率の分子を間違える受験生が多いです。必ず (1 + r - d) が分子になることを確認してください。(u - d) が分母です。
プット=コール・パリティ、二項モデル、オプション価格をどう切るか
オプション論点は、どれも「価格」に見えるため、式の選択で混乱しやすいです。ここでは、価格の中身を見るのか、コールとプットの整合関係を見るのか、上昇 / 下降シナリオから理論価格を出すのか を先に切ります。
| 論点 | 何を求めるときか | 計算の流れ | 前提 | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|---|
オプション価格 | 現在価格の中身や価格変化を見たい | ITM / ATM / OTM → 本質的価値 → 時間価値 → 満期 / ボラティリティ | 満期前の 時間価値 を見る | ATM / OTM = 価格 0 と考える |
プット=コール・パリティ | コールとプットの一方の価格や価格整合性を見たい | PV(K) を出す → C + PV(K) = P + S に代入する | 同一原資産 / 同一行使価格 / 同一満期、欧州型、無裁定 | K をそのまま足し引きして 現在価値化 を忘れる |
二項モデル | 上昇 / 下降シナリオから理論価格を出したい | Su / Sd → Cu / Cd → p → 現在価値 | 1期間2状態、無裁定、p は リスク中立確率 | p を実際の発生確率だと思う |
過去問での判断順
本質的価値、時間価値、満期接近、ボラティリティが出たら、まずオプション価格の論点です。同じ原資産 / 同じ行使価格 / 同じ満期のコールとプットが並び、どちらか一方の価格が欠けているなら、プット=コール・パリティを考えます。S、u、d、K、rや上昇 / 下降の2状態が出てきたら、二項モデルを考えます。二項モデルはpを出すだけでは不十分で、上昇 / 下降時のペイオフを期待値化して現在へ割り引くところまでが計算です。プット=コール・パリティや二項モデルで出した理論値と市場価格がずれているなら、裁定機会を疑います。
3つの道具の最短整理
価格の分解 = オプション価格、整合関係 = プット=コール・パリティ、上昇 / 下降シナリオ = 二項モデル と置くと、オプションの式をかなり選びやすくなります。
スワップ ── キャッシュフロー条件を交換する
スワップは「異なる条件のキャッシュフロー(支払い)を、当事者間で交換する契約」です。重要なのは「元本そのものは移動しない」という点です。あくまで支払い条件の交換です。
| 種類 | 内容 | 活用場面 |
|---|---|---|
| 金利スワップ | 固定金利と変動金利の支払いを交換 | 金利変動リスクのヘッジ |
| 通貨スワップ | 異なる通貨の元本・利息を交換 | 為替リスクと金利リスクのヘッジ |
金利スワップの具体例
A社とB社の例を考えます:
- A社:銀行から「TIBOR(東京銀行間取引金利)+ 1%」の変動金利で借りている。金利が上昇すると支払いが増えて困る
- B社:銀行から「固定3%」の金利で借りている。金利が下がっても割高なまま。金利低下の恩恵を受けられない
スワップ契約を結びます。「A社とB社がお互いに支払いを交換する」という契約です:
- A社がB社に「固定3%」を支払う
- B社がA社に「TIBOR + 1%」を支払う
結果:
- A社は実質的に「固定3%」での借入に変換(金利変動リスクを回避)
- B社は実質的に「変動TIBOR + 1%」での借入に変換(金利低下時に恩恵を受ける)
スワップのポイントは、既存の借入契約は変更せず、キャッシュフロー(支払い)の交換だけで実質的に条件を変える ことです。
リアルオプション ── 投資判断に「柔軟性」の価値を加える
これまで学んだオプションは「金融資産」のオプションです。これを「実物投資」に応用するのが リアルオプション です。
たとえば、ある新規事業への投資を考えているとします。従来のNPV計算では「今、投資すべきか」という二者択一の判断になります。しかし現実には「今は情報が不足しているから、様子を見てから判断する権利」に価値があるのではないか、という考え方です。
5 つの実物オプション
| リアル・オプションの種類 | 内容 | 対応する金融オプション |
|---|---|---|
| 延期オプション | 投資実行を遅らせ、情報を得る権利 | コール |
| 拡張オプション | 最初は小規模で始め、成功時に追加投資する権利 | コール |
| 縮小オプション | 需要悪化時に規模を絞り、損失を抑える権利 | プット |
| 切替オプション | 製品、用途、原材料を有利な方へ切り替える権利 | コール / プット |
| 撤退オプション | うまくいかない場合に中止・撤退する権利 | プット |
過去問での判断順
投資前に待てるかを見ます。情報が出てから実行を決められるなら延期オプションです。成功したら大きくできるかを見ます。追加投資で上振れを取りにいくなら拡張オプションです。悪化時に規模を落とせるかを見ます。操業度や店舗規模を絞れるなら縮小オプションです。用途や投入物を変えられるかを見ます。製品や原材料を切り替えられるなら切替オプションです。やめて回収できるかを見ます。売却価値や運転資本回収で損失を止められるなら撤退オプションです。
受験生向けの一本線
待つ = 延期、広げる = 拡張、絞る = 縮小、変える = 切替、やめる = 撤退 と固定すると、リアルオプション の場面選択をかなり外しにくくなります。
計算式: 拡張NPV = 従来のNPV + リアルオプションの価値
従来のNPVがマイナスでも、リアルオプションの価値を加えると、投資が正当化される場合もあります。
為替リスクのヘッジ手法 ── 複数の選択肢
企業が外貨での支払い・受取をするとき、為替変動リスクに対処する方法は複数あります。
| 手法 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 為替予約 | 将来の特定日に一定レートで外貨を売買する契約 | 先渡と同じ。価格を完全に固定 |
| 通貨オプション | 一定レートで外貨を売買する 権利 を取得 | 不利な方向だけ避けて、有利な方向の利益を残す |
| リーズ・アンド・ラグズ | 為替見通しに応じて決済時期を前倒し・後ろ倒し | 積極的な為替見通しがあるときに使用 |
| マッチング | 外貨建て債権と債務を同額にして相殺 | 自然な相殺で、追加手段を使わない |
| ネッティング | グループ内の外貨建て債権債務を相殺 | 多国籍企業グループで使用 |
どの手法を選ぶかは、「為替が変動したときのリスク許容度」と「積極的な為替見通しがあるか」で判断します。
為替予約、通貨オプション、通貨スワップの使い分け
過去問では、為替予約、通貨オプション、通貨スワップ を全部「為替リスク対策」とだけ覚えると、支払いなのか受取りなのか、単発なのか継続なのか で崩れやすいです。
| 場面 | 最初に切ること | 使いやすい手段 | 選び方 |
|---|---|---|---|
3か月後に ドルを支払う。今のレートで固定したい | 単発の外貨支払い | 為替予約 | 後で ドルを買う ので ドル買い予約 |
3か月後に ドルを支払う。円安だけ避けたい | 単発の外貨支払い + 片側保護 | 通貨オプション | 後で ドルを買う権利 なので ドル・コール |
3か月後に ドルを受け取る。今のレートで固定したい | 単発の外貨受取り | 為替予約 | 後で ドルを売る ので ドル売り予約 |
3か月後に ドルを受け取る。円高だけ避けたい | 単発の外貨受取り + 片側保護 | 通貨オプション | 後で ドルを売る権利 なので ドル・プット |
数年間の ドル建て借入 を 円建て負担 に近づけたい | 継続的な元本・利息の交換 | 通貨スワップ | 一度の決済ではなく、契約期間全体の条件を交換 |
過去問での判断順
- まず
一回きりの外貨受払か複数年の元利払いかを見ます。継続的な条件交換なら通貨スワップを優先します。 - 単発の外貨受払なら、
完全固定か不利な方向だけ避けたいかを切ります。 完全固定なら為替予約、片側保護なら通貨オプションを選びます。- その後で
後で外貨を払う = 後で外貨を買う側、後で外貨を受け取る = 後で外貨を売る側と読み替えます。 外貨を買う権利 = コール、外貨を売る権利 = プットに落とすと、ドル・コールとドル・プットを逆にしにくくなります。
受払方向の覚え方
輸入 = 後で外貨を払う = 後で外貨を買う、輸出 = 後で外貨を受け取る = 後で外貨を売る と固定すると、為替予約 と 通貨オプション の方向をかなり安定して選べます。
リーズ・アンド・ラグズ、マッチング、ネッティングと契約ヘッジをどう切るか
為替リスクでは、為替予約 / 通貨オプション のような契約ヘッジだけでなく、決済時期を動かす、外貨建ての受払を相殺する という内部調整も出題されます。ここを 社内で吸収するか、契約で固定・保護するか の順で切ると、かなり整理しやすくなります。
| 手段 | まず見ること | 向く場面 | 向かない場面 |
|---|---|---|---|
リーズ・アンド・ラグズ | 決済時期を前倒し・後ろ倒しできるか | 為替見通しに応じて 支払いを早める / 受取りを遅らせる などの調整をしたい | レート自体を 完全固定 したい |
マッチング | 自社内に同じ通貨の受取りと支払いがあるか | 輸出代金の受取りと輸入代金の支払いを 自社内で自然に相殺 したい | 一方しか外貨取引がない |
ネッティング | グループ会社間で外貨債権債務をまとめられるか | 海外子会社どうしの外貨受払を グループ全体で相殺 したい | 単独企業の 1 件の受払 |
為替予約 | 契約でレートを完全固定したいか | 単発の外貨受払を 今のレートで固定 したい | 有利な方向の利益も残したい |
通貨オプション | 不利な方向だけ避けたいか | 単発の外貨受払で 片側保護 をしたい | プレミアムなしで完全固定したい |
自然ヘッジと契約ヘッジの判断順
- まず
自社内に同じ通貨の受取りと支払いがあるかを見ます。相殺できるならマッチングを考えます。 - それが
グループ会社間の話なら、ネッティングを考えます。 - 相殺ではなく
決済時期を動かせるなら、リーズ・アンド・ラグズを考えます。 - 社内調整では吸収できず、
レートを完全固定したいなら為替予約を考えます。 - 社内調整では吸収できず、
不利な方向だけ避けたいなら通貨オプションを考えます。
自然ヘッジと契約ヘッジの最短整理
自社内で相殺 = マッチング、グループで相殺 = ネッティング、時期調整 = リーズ・アンド・ラグズ、契約で固定 / 片側保護 = 為替予約 / 通貨オプション と置くと、為替リスクの比較問題をかなり切りやすくなります。
商品価格、為替、金利をまたいでどう選ぶか
デリバティブの総合問題では、原油価格、ドル円、変動金利 が同じ設問の中に並ぶことがあります。ここでは 何が動くか と 単発の取引か、継続的な条件交換か を軸に、手段を一気に切ります。
| 場面 | 主に動くもの | 何をしたいか | 最初に考える手段 | 決め手 |
|---|---|---|---|---|
| 3か月後に原油を仕入れる | 商品価格 | 上昇リスクを固定したい | 買い先物 | 将来 買う側 で 完全固定 |
| 3か月後に小麦を販売する | 商品価格 | 下落リスクを固定したい | 売り先物 | 将来 売る側 で 完全固定 |
| 3か月後にドルを支払う | 為替 | 円安だけ避けたい | 通貨オプション の ドル・コール | 単発の外貨支払いで 片側保護 |
| 3か月後にドルを受け取る | 為替 | レートを今の時点で固定したい | 為替予約 の ドル売り予約 | 単発の外貨受取りで 完全固定 |
| 変動金利借入を固定金利へ近づけたい | 金利 | 利払い条件を変えたい | 金利スワップ | 継続的な 利払い条件 の交換 |
| ドル建て借入を円建て負担へ近づけたい | 通貨 + 金利 | 元本と利息の条件を変えたい | 通貨スワップ | 継続的な 元本 + 利息 の交換 |
横断問題での判断順
- まず
商品価格、為替、金利のどれが主に変動しているかを見ます。 - 次に
単発の将来取引か継続的な条件交換かを切ります。 - 単発の将来取引で
完全固定なら、商品価格は先物、為替は為替予約を考えます。 - 単発の将来取引で
片側保護なら、オプションを考えます。 - 継続的な
利払い条件の交換なら金利スワップ、通貨建ての元本・利息の交換なら通貨スワップを考えます。
横断問題の最短整理
商品価格の単発固定 = 先物、為替の単発固定 / 片側保護 = 為替予約 / 通貨オプション、継続条件の交換 = スワップ と置くと、総合問題でもかなり整理しやすくなります。
輸入、輸出、仕入、販売を買いヘッジ、売りヘッジ、コール、プットへどう落とすか
仕入 と 輸入、販売 と 輸出 は対象が 商品 か 外貨 か違うだけで、ヘッジ方向の考え方は同じです。ここを 後で買う側 / 後で売る側 の 2 つに戻すと、買いヘッジ / 売りヘッジ と コール / プット の向きを同じ規則で決められます。
| 場面 | 後で何をするか | 完全固定なら | 片側保護なら | 間違えやすい点 |
|---|---|---|---|---|
3か月後に銅を 仕入れる | 後で 商品を買う | 買いヘッジ | コール・オプション | 売りヘッジ を選ぶ |
3か月後に小麦を 販売する | 後で 商品を売る | 売りヘッジ | プット・オプション | 買いヘッジ を選ぶ |
3か月後にドル建てで 輸入代金を支払う | 後で 外貨を買う | ドル買い予約 | ドル・コール | ドル・プット を選ぶ |
3か月後にドル建てで 輸出代金を受け取る | 後で 外貨を売る | ドル売り予約 | ドル・プット | ドル・コール を選ぶ |
方向を決める判断順
- まず
仕入 / 輸入なのか、販売 / 輸出なのかを見ます。 仕入 / 輸入 = 後で買う側、販売 / 輸出 = 後で売る側と読み替えます。完全固定なら、商品価格は買いヘッジ / 売りヘッジ、為替はドル買い予約 / ドル売り予約を選びます。片側保護なら、買う側 = コール、売る側 = プットと落とします。- 最後に
商品価格の話か為替の話かを見て、先物 / 為替予約 / 通貨オプションの具体名へ進みます。
方向の最短整理
仕入 / 輸入 = 買う側、販売 / 輸出 = 売る側 と固定すると、商品価格と為替の設問を同じ手順で解きやすくなります。
問題を解くときの観点チェックリスト
試験で出題されたとき、次の順番で考えると間違いが減ります。
- 何が変動するのか を確認する:金利か、為替か、商品価格か
- 上昇が困るのか、下落が困るのか を確認する
- 有利な方向の利益を残したいのか、完全に固定したいのか を分ける
- 完全固定なら買う側か売る側か を決める:将来買うなら
買いヘッジ、将来売るなら売りヘッジ 仕入 / 輸入か販売 / 輸出か を見て、後で買う側 / 後で売る側のどちらかへ戻す- そのニーズに応える商品は何か を選ぶ:先物か、オプションか、スワップか
- オプションなら
買い手か売り手かを確認する:買い手の最大損失 = プレミアム、売り手の最大利益 = プレミアム - 計算が必要なら
損益分岐点を戻す:コール = 行使価格 + プレミアム、プット = 行使価格 - プレミアム - 価値構成が問われたら
ITM / ATM / OTMを判定する:ITM なら本質的価値あり、ATM / OTM なら本質的価値 0 - 満期やボラの変化が出たら
時間価値を見る:満期接近で減る、ボラティリティ上昇で増える - コールとプットの関係が問われたら
プット=コール・パリティを見る:同一原資産 / 同一行使価格 / 同一満期とPV(K)を確認する u / d / rや上昇 / 下降の2状態が出たら二項モデルを見る:Su / Sd → Cu / Cd → p → 現在価値の順で計算する- オプションの式選択で迷ったら
価格の分解、整合関係、上昇 / 下降シナリオのどれかへ戻す
よくあるつまずきと対策
- 先物とオプションの違いを「義務と権利」で切れない → 先物は 双方に義務、オプションは買い手に 権利。これが全ての出発点
- 買いヘッジと売りヘッジを混同する →
将来買う側で価格上昇が困るなら買いヘッジ、将来売る側で価格下落が困るなら売りヘッジ 仕入と販売でヘッジ方向を逆にする →仕入 = 後で買う側、販売 = 後で売る側と読む- ドル支払いとドル受取りで、コールとプットを逆にする →
後で払う外貨は後で買う、後で受け取る外貨は後で売ると読めば、ドル・コール / ドル・プットを決めやすい 輸入と輸出を商品売買と別ルールだと思う →輸入 = 後で外貨を買う側、輸出 = 後で外貨を売る側なので、買う側 = コール、売る側 = プットの規則は同じ- オプション損益でプレミアムを忘れる → 利益 = 行使価値 - プレミアム(すべての計算で忘れずに)
コール買いとコール売りの最大利益 / 最大損失を逆にする →買い手の最大損失 = プレミアム、売り手の最大利益 = プレミアムを先に固定するプット買いとプット売りで同じ行使価格 - プレミアムを見て、利益方向まで同じだと思う →損益分岐点は同じでも、買いは下落で得、売りは下落しない方が得と逆向きATMやOTMなら価格もゼロだと思う → 満期前なら時間価値が残るので、本質的価値 0と価格 0は同じではないITMなら価格は全部本質的価値だと思う → 満期前なら時間価値も含まれることが多い- 満期接近はコールだけを下げると思う → 減るのは
時間価値なので、コールでもプットでも下がりやすい - ボラティリティ上昇でコールだけ上がると思う →
時間価値が増えるので、一般にコールもプットも上がりやすい プット=コール・パリティでKをそのまま使う → 使うのはKではなくPV(K)。行使価格は現在価値へ直してから式へ入れる- 満期や行使価格が違うコールとプットでも
プット=コール・パリティが使えると思う →同一原資産 / 同一行使価格 / 同一満期がそろっていないと、そのままは使えない - スワップを「新しい借入」と誤解する → スワップは既存の借入は変わらず、キャッシュフロー交換だけ
- 商品価格リスクなのに通貨手段を選ぶ → まず
何が動くかを見て、商品価格なら先物、為替なら為替予約 / 通貨オプション、金利ならスワップと切る - 通貨スワップを単発の輸出入決済に当てはめる → 通貨スワップは
元本 + 利息を継続的に交換する場面で使い、単発決済の固定は為替予約が基本 - 金利スワップと通貨スワップを混同する →
金利スワップは主に金利条件、通貨スワップは通貨建て + 利払い条件を変える リーズ・アンド・ラグズをレート固定手段だと考える → これは決済時期の調整であり、レートを契約で固定するのは為替予約マッチングとネッティングを同じ相殺だと思う →自社内の受払相殺ならマッチング、グループ会社間の相殺ならネッティング- 二項モデルでリスク中立確率の分子を間違える → 必ず (1 + r - d) が分子(r は金利、d は下降倍率)
- ボラティリティが高いとコールだけ上がると思う → プットも上がる(両方に「変動の可能性」が有利に働く)
確認問題
問1:オプション損益分岐点
プット・オプション。行使価格 500円、プレミアム 30円の場合、損益分岐点を求めよ。また、原資産価格が 450円のときの利益を計算せよ。
解答: 損益分岐点 = 500 - 30 = 470円
原資産価格 450円のとき: 利益 = (500 - 450) - 30 = 20円
問2:二項モデルによるオプション価格
S = 200、u = 1.3、d = 0.8、K = 220、r = 10% のとき、コール・オプション価格を求めよ。
解答: Su = 200 × 1.3 = 260、Sd = 200 × 0.8 = 160 Cu = max(260 - 220, 0) = 40、Cd = max(160 - 220, 0) = 0
p = (1.1 - 0.8) / (1.3 - 0.8) = 0.3 / 0.5 = 0.6
C = (0.6 × 40 + 0.4 × 0) / 1.1 = 24 / 1.1 ≒ 21.82円
問3:ヘッジ手段の選択
輸入企業が3か月後に 100万ドルの支払いを予定している。現在のレートは1ドル = 150円。円安リスクを回避しつつ、円高時の利益は残したい。最適なヘッジ手段は何か。
(a) ドル買い先物 (b) ドル・コール・オプションの購入 (c) ドル・プット・オプションの購入 (d) 金利スワップ
解答:(b) ドル・コール・オプションの購入
理由:
- 「円安(ドル高)が困る」= 「ドルを買う権利」が欲しい = コール購入
- 円安になっても、オプション行使価格でドルを買える(損失を限定)
- 円高になれば、権利を放棄して市場で安く買える(利益を残す)
- (a) は先物で価格を完全に固定するため、円高時の利益も失う
- (c) プット(売る権利)は円安対策にはならない
- (d) 金利スワップは金利リスク対策であり、為替リスク対策ではない
問4:為替予約、通貨オプション、通貨スワップ
次の各場面で、最も近い手段を答えてください。
- a. 3か月後に 50 万ドルを支払う予定。円安も円高も関係なく、今のレートで固定したい
- b. 3か月後に 50 万ドルを受け取る予定。円高だけ避けて、円安の利益は残したい
- c. 5 年間のドル建て借入があり、元本と利息の負担を円建てに近づけたい
解答:
- a は
為替予約です。単発の支払いで完全固定を求めるので、ドル買い予約が合います。 - b は
通貨オプションです。後でドルを受け取る = ドルを売る側なので、ドル・プットの発想で下振れだけを防ぎます。 - c は
通貨スワップです。単発の決済ではなく、元本 + 利息の条件を継続的に交換する場面だからです。
問5:商品価格、為替、金利の横断比較
次の各場面で、最も近い手段を答えてください。
- a. 3か月後に銅を仕入れる企業が、価格上昇で採算が崩れるのを避けたい。
価格は今の時点で固定したい - b. 3か月後に大豆を販売する企業が、価格下落で収入が減るのを避けたい。
販売価格は今の時点で固定したい - c. 3か月後にドルを支払う輸入企業が、
円安だけ避けたいが、円高の利益は残したい - d. 変動金利借入をしている企業が、
支払金利を固定したい - e. ドル建て借入の元本と利息を、円建て負担へ近づけたい
解答:
- a は
買い先物です。商品価格の上昇リスクを、将来買う側として完全固定したいからです。 - b は
売り先物です。商品価格の下落リスクを、将来売る側として完全固定したいからです。 - c は
通貨オプションのドル・コールです。為替の片側保護であり、後でドルを買う権利が必要だからです。 - d は
金利スワップです。単発の取引ではなく、利払い条件を変動から固定へ近づけたいからです。 - e は
通貨スワップです。通貨建ての元本 + 利息の条件を継続的に交換したいからです。
問6:自然ヘッジと契約ヘッジ
次の各場面で、最も近い手段を答えてください。
- a. 輸出企業が毎月 80 万ドルを受け取り、同じ月に原材料輸入で 70 万ドルを支払っている。まずは外貨の受払いを自社内で相殺したい
- b. 親会社が、海外子会社どうしのドル建て債権債務を集約して差額だけ決済したい
- c. 円安が進みそうなので、2 か月後の輸入代金の支払いを前倒ししたい
- d. 3 か月後に 60 万ドルを支払う予定で、レートを今の時点で固定したい
- e. 3 か月後に 60 万ドルを受け取る予定で、円高だけ避けて円安の利益は残したい
解答:
- a は
マッチングです。自社内に同じ通貨の受取りと支払いがあり、自然に相殺したい場面だからです。 - b は
ネッティングです。グループ会社間の外貨債権債務をまとめて相殺したい場面だからです。 - c は
リーズ・アンド・ラグズです。為替見通しに応じて決済時期を前倒し・後ろ倒しする手段だからです。 - d は
為替予約のドル買い予約です。単発の外貨支払いで完全固定をしたいからです。 - e は
通貨オプションのドル・プットです。単発の外貨受取りで片側保護をしたいからです。
問7:輸入、輸出、仕入、販売とヘッジ方向
次の各場面で、最も近い手段を答えてください。完全固定 が必要なら 買いヘッジ / 売りヘッジ / 為替予約、片側保護 が必要なら コール / プット の向きまで答えてください。
- a. 3か月後に銅を仕入れる製造業者。価格上昇で採算が崩れるのを避けたい。
価格は今の時点で固定したい - b. 3か月後にコーヒー豆を販売する商社。価格下落だけ避けたいが、価格上昇の利益は残したい
- c. 3か月後に 80 万ドルを支払う輸入企業。
円安だけ避けたいが、円高の利益は残したい - d. 3か月後に 80 万ドルを受け取る輸出企業。
レートは今の時点で固定したい - e. 3か月後に小麦を販売する企業。価格下落で収入が減るのを避けたい。
販売価格は今の時点で固定したい
解答:
- a は
買いヘッジです。仕入 = 後で商品を買う側であり、完全固定をしたいからです。 - b は
プット・オプションです。販売 = 後で商品を売る側であり、片側保護なら売る側 = プットだからです。 - c は
通貨オプションのドル・コールです。輸入 = 後で外貨を買う側であり、買う側 = コールだからです。 - d は
為替予約のドル売り予約です。輸出 = 後で外貨を売る側であり、完全固定をしたいからです。 - e は
売りヘッジです。販売 = 後で商品を売る側であり、価格下落を完全固定したいからです。 - 過去問では、
仕入 / 輸入 = 後で買う側、販売 / 輸出 = 後で売る側と先に戻すと、買いヘッジ / 売りヘッジ / コール / プットの方向をかなり安定して選べます。
問8:コール買い、プット買い、コール売り、プット売りの比較
次の各説明について、最も近いポジションを コール買い、プット買い、コール売り、プット売り の中から答えてください。
- a. 原資産価格の上昇で利益が大きくなり、最大損失は支払プレミアムで止まる。損益分岐点は
行使価格 + プレミアム - b. 受取プレミアムが最大利益であり、原資産価格が大きく上がると損失が膨らむ。損益分岐点は
行使価格 + プレミアム - c. 原資産価格の下落で利益が大きくなり、最大損失は支払プレミアムで止まる。損益分岐点は
行使価格 - プレミアム - d. 受取プレミアムが最大利益であり、原資産価格が大きく下がると損失が膨らむ。損益分岐点は
行使価格 - プレミアム
解答:
- a は
コール買いです。上昇で得する、買い手なので最大損失はプレミアム、コールなので K + Pだからです。 - b は
コール売りです。受取プレミアムが最大利益なので売り、上昇で損失が膨らむのでコールです。 - c は
プット買いです。下落で得する、買い手なので最大損失はプレミアム、プットなので K - Pだからです。 - d は
プット売りです。受取プレミアムが最大利益なので売り、下落で損失が膨らむのでプットです。
問9:本質的価値、時間価値、ITM、ATM、OTM
次の各場面について、状態(ITM / ATM / OTM)、本質的価値、時間価値 を答えてください。必要な場合は、満期接近やボラティリティ変化の影響も答えてください。
- a. コール・オプション。原資産価格 120円、行使価格 100円、オプション価格 28円
- b. プット・オプション。原資産価格 100円、行使価格 100円、オプション価格 14円
- c. コール・オプション。原資産価格 90円、行使価格 100円、オプション価格 6円
- d. b と c のように
本質的価値が 0のオプションで、他の条件を一定として満期までの期間が短くなる場合とボラティリティが上昇する場合の価格変化
解答:
- a は
ITMです。本質的価値は120 - 100 = 20円、時間価値は28 - 20 = 8円です。ITMでも満期前なら時間価値が残ります。 - b は
ATMです。本質的価値は0円、時間価値は14円です。価格のすべてが時間価値です。 - c は
OTMです。本質的価値は0円、時間価値は6円です。OTMでも満期前なら価格が付くことがあります。 - d は、
満期接近なら時間価値が減るので、b と c の価格は下がりやすいです。ボラティリティ上昇なら時間価値が増えるので、b と c の価格は上がりやすいです。
問10:プット=コール・パリティ、二項モデル、オプション価格の使い分け
次の各場面で、まず使う考え方を オプション価格、プット=コール・パリティ、二項モデル の中から答え、必要な答えも示してください。
- a. 同じ原資産、同じ行使価格
100円、同じ満期1年の欧州型オプション。原資産価格98円、コール価格12円、無リスク金利2%のとき、プット価格を求めたい - b. 現在の原資産価格
100円。1期間後に120円へ上がるか90円へ下がるかのどちらか。行使価格105円、無リスク金利5%のとき、コール価格を求めたい - c.
ATMのコール・オプションが10円で取引されている。ほかの条件を一定として、満期までの期間が短くなる場合とボラティリティが上昇する場合の価格変化を知りたい
解答:
- a は
プット=コール・パリティです。同じ原資産 / 同じ行使価格 / 同じ満期のコールとプットが並んでいるからです。PV(K) = 100 / 1.02 ≒ 98.04なので、P = C + PV(K) - S = 12 + 98.04 - 98 ≒ 12.04円です。 - b は
二項モデルです。上昇 / 下降の 2 状態と無リスク金利が与えられているからです。Cu = max(120 - 105, 0) = 15、Cd = max(90 - 105, 0) = 0、p = (1.05 - 0.9) / (1.2 - 0.9) = 0.5、C = (0.5 × 15 + 0.5 × 0) / 1.05 ≒ 7.14円です。 - c は
オプション価格です。現在価格の中身と時間価値の増減を見る問題だからです。ATMなので価格の中心は時間価値であり、満期接近なら下がりやすく、ボラティリティ上昇なら上がりやすいです。 - 過去問では、
価格の分解、整合関係、上昇 / 下降シナリオのどれかを先に切ると、3 つの道具を混同しにくくなります。
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