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デリバティブとリスク管理

先物、オプション、スワップの違いと、ヘッジの基本を整理する

このページの役割

このページは、デリバティブの仕組みと使い分けを整理する解説ページです。デリバティブとは「原資産から派生した金融商品」であり、先物、オプション、スワップがあります。試験で問われるのは「何のリスクをどう管理したいか」を判断し、その目的に適した商品を選べるか、そして計算できるかです。

このページを読む前に

金利、為替、株価といった「原資産」の変動リスクが企業経営に影響する場面を想像してください。例えば、輸入企業が3か月後にドルで100万ドルの支払いをする場合、「1ドル = 150円の今と、3か月後が異なるリスク」に対処する必要があります。このページでは、そのリスクにどう対処するかという視点から、デリバティブの仕組みを学びます。


デリバティブの根本 ── 義務か権利か

デリバティブの最も根本的な分かれ目は「将来の取引を 義務 として負うか」「権利 として持つか」です。ここが理解できていると、試験問題の多くが自動的に解ける仕組みになっています。

先物と先渡 は双方が義務を負う商品です。あらかじめ決められた日時に、あらかじめ決められた価格で、必ず売買しなければなりません。価格が自分たちに有利に動いても不利に動いても、その契約を実行する義務があります。「確実に固定したい」というニーズに応えます。

オプション は買い手に権利を与えます。買い手は「行使するか、放棄するか」を選べます。不利に動けば放棄し、有利に動けば行使できます。ただし、この権利の対価として、買い手はプレミアム(オプション料)を売り手に支払います。「不利な方向だけ避けたい。有利な方向の利益は残したい」というニーズに応えます。


価格固定、下振れ回避、金利固定をどう切るか

過去問では、先物オプションスワップ の定義だけを知っていても、場面に応じた選択で迷いやすいです。そこで、まず 何を固定したいのか から逆算します。

3 つのニーズを並べる

何をしたいかまず見ている対象使いやすい手段選ぶ理由典型例
将来価格を今すぐ固定したい商品価格、為替レート先物 / 先渡 / 為替予約双方に義務があり、将来の取引価格を決めやすい原材料仕入価格の固定、収穫物販売価格の固定
不利な方向だけ避けたい価格や為替の片側リスクオプション購入権利だけを持ち、不利なら行使、有利なら放棄できる輸入企業の ドル・コール、輸出企業の ドル・プット
支払い条件そのものを変えたい金利や通貨建てのキャッシュフロー条件スワップ既存契約は残しつつ、支払い条件を交換できる変動金利借入 → 固定金利負担

試験での判断順

  1. まず 何が変動するのか を見ます。商品価格か、為替か、金利かを切ります。
  2. 次に 完全に固定したいのか不利な方向だけ避けたいのか を切ります。
  3. 完全固定 なら 先物 / 先渡 / 為替予約片側保護 なら オプション を考えます。
  4. 先物 を使うなら、将来買う側で価格上昇が困る = 買いヘッジ将来売る側で価格下落が困る = 売りヘッジ と整理します。
  5. 支払い条件利払い条件 を変えたいなら、スワップ を優先して考えます。

受験生向けの一本線

価格固定 = 先物 / 先渡 / 為替予約片側だけ保護 = オプション金利条件の変換 = スワップ と置き、その後で 買う側か売る側か を決めると、デリバティブの選択問題を外しにくくなります。


先物と先渡 ── 将来価格を確実に固定する

先物と先渡は、どちらも「将来のある日に、決めた価格で売買する契約」です。しかし、取引の場所、信用リスク、決済方法が異なります。これが試験で頻出です。

項目先物(Futures)先渡(Forward)
取引場所取引所(標準化)店頭(相対取引)
契約条件標準化当事者間で自由に設定
信用リスク清算機関が介在するため低いカウンターパーティリスクあり
決済日次で値洗い(差金決済)満期時に一括決済
流動性高い低い

先物の最大の特徴は、清算機関(例:日本証券クリアリング機構(JSCC))が取引の間に入ることです。そのため、相手方が倒産しても私たちの代金は守られます。また、日次で値洗い(毎日の価格変動で利益または損失を確定)するため、不意の大きな損失を避けられます。

先渡は条件をカスタマイズできる反面、相手方の信用リスクを丸ごと負います。銀行が輸入企業と「3か月後、1ドル = 150円で100万ドルを売る」という契約をしても、もし銀行が倒産したら?という懸念が残ります。

どちらも「双方に義務がある」という点は同じです。

先物のヘッジ活用

先物は「ヘッジ」(リスク回避)に使われます。具体例で見ましょう。

買いヘッジ:将来の購入資金が今より上がると困る場合

  • 精油企業が3か月後に原油を仕入れる予定
  • 「原油価格が上がると、仕入原価が増えて困る」
  • 対策:原油先物の買い契約を結ぶ
  • 結果:価格が上がっても、先物で利益が出るため、実質的に購入価格は固定

売りヘッジ:将来の販売価格が下がると困る場合

  • 麦の生産農家が3か月後に収穫・販売予定
  • 「麦価が下がると、売却収入が減る」
  • 対策:麦先物の売り契約を結ぶ
  • 結果:価格が下がっても、先物で利益が出るため、実質的な販売価格は固定

オプション ── 権利を買うか売るか

オプションは、原資産を買う権利か売る権利かで2種類に分かれます。

種類権利の内容買い手の判断売り手の立場
コール・オプション原資産を 買う権利行使するか放棄するか選択買い手の行使に応じる義務
プット・オプション原資産を 売る権利行使するか放棄するか選択買い手の行使に応じる義務

さらに、行使できるタイミングで2つに分かれます。ヨーロピアン型 は満期日のみ、アメリカン型 は満期日までいつでも行使可能です。試験で頻出なのはヨーロピアン型です。

オプションの損益パターン ── 4つの視点

オプションの損益は、買い手と売り手、コールとプット、計4つの組み合わせが存在します。これは「ペイオフ図」で視覚的に理解するのが最速です。

コール買いの損益

  • 原資産価格が上昇したとき、行使して利益を得る
  • 利益 = 原資産価格 - 行使価格 - プレミアム
  • 原資産価格が下落したなら、行使しない(損失 = プレミアムのみ)
  • 損益分岐点 = 行使価格 + プレミアム

プット買いの損益

  • 原資産価格が下落したとき、行使して利益を得る
  • 利益 = 行使価格 - 原資産価格 - プレミアム
  • 原資産価格が上昇したなら、行使しない(損失 = プレミアムのみ)
  • 損益分岐点 = 行使価格 - プレミアム

買い手の最大損失は、常にプレミアムに限定されます。これがオプションの最大の特徴です。

コール売りの損益:買い手の損益を反転。最大利益はプレミアムですが、原資産が上昇し続けると損失は理論上無限大です。

プット売りの損益:買い手の損益を反転。最大利益はプレミアムで、最大損失は行使価格 - プレミアムです。

4ポジションを最大利益、最大損失、損益分岐点で並べる

オプションの4ポジションは、上昇で得するか / 下落で得するか だけでなく、最大利益最大損失損益分岐点 を並べると一気に整理できます。とくに試験では、買い手の最大損失売り手の最大利益 をプレミアムで固定できるかが分かれ目です。

ポジションどちらに動くと有利か最大利益最大損失損益分岐点最初に固定すること
コール買い原資産価格の 上昇理論上大きい支払プレミアム行使価格 + プレミアム買い手 なので最大損失はプレミアム
プット買い原資産価格の 下落行使価格 - プレミアム(原資産価格が 0 まで下がると仮定)支払プレミアム行使価格 - プレミアム買い手 なので最大損失はプレミアム
コール売り原資産価格が 上がらない と有利受取プレミアム理論上大きい行使価格 + プレミアム売り手 なので最大利益はプレミアム
プット売り原資産価格が 下がらない と有利受取プレミアム行使価格 - プレミアム(原資産価格が 0 まで下がると仮定)行使価格 - プレミアム売り手 なので最大利益はプレミアム

試験での判断順

  1. まず 買い売り かを見ます。買い手 = 最大損失はプレミアム売り手 = 最大利益はプレミアム と先に固定します。
  2. 次に コールプット かを見ます。上昇で有利 = コール下落で有利 = プット と戻します。
  3. 損益分岐点 は、コール = 行使価格 + プレミアムプット = 行使価格 - プレミアム と整理します。
  4. 売り買い の損益を反転した形だと考えると、最大利益 / 最大損失 を逆にしにくくなります。

4ポジションの最短整理

買い手の最大損失 = プレミアム売り手の最大利益 = プレミアムコールは K + Pプットは K - P を先に置くと、損益図を描かなくても方向をかなり切りやすくなります。

具体的な計算例

コール・オプション。行使価格 1,000円、プレミアム 80円の場合:

ケース1:原資産価格が 1,200円

  • 権利行使:1,200 - 1,000 = 200円の利益
  • プレミアムを引く:200 - 80 = 120円の利益

ケース2:原資産価格が 1,050円

  • 権利行使:1,050 - 1,000 = 50円の利益
  • プレミアムを引く:50 - 80 = 30円の損失(損益分岐点1,080円には届かず純損失だが、ITMのため行使が合理的。行使すれば損失30円、放棄すればプレミアム全額の80円の損失になるため、行使して損失を抑えた方がよい)

ケース3:原資産価格が 900円

  • 権利行使する価値なし
  • 損失 = プレミアムの 80円(最大損失)

損益分岐点 = 1,000 + 80 = 1,080円(この価格以上で利益)


オプション価値の構成 ── 本質的価値と時間価値

オプションの価格がいくらになるかを理解するには、2つの構成要素を知る必要があります。

オプション価格 = 本質的価値 + 時間的価値

本質的価値 は「今すぐ行使したら得られる金額」です。

  • コールの本質的価値 = max(原資産価格 - 行使価格, 0)
  • プットの本質的価値 = max(行使価格 - 原資産価格, 0)

時間的価値 は「満期までに状況が好転する可能性への対価」です。満期が長いほど、また価格変動が大きい(ボラティリティが高い)ほど、この価値は大きくなります。逆に満期に近づくと、時間的価値はゼロに近づきます。

ITM・ATM・OTMの分類

オプションが行使に値するかどうかは、現在の原資産価格と行使価格の関係で判断します。

状態コール・オプションプット・オプション
ITM(イン・ザ・マネー)原資産価格 > 行使価格(行使すると利益)原資産価格 < 行使価格(行使すると利益)
ATM(アット・ザ・マネー)原資産価格 = 行使価格原資産価格 = 行使価格
OTM(アウト・オブ・ザ・マネー)原資産価格 < 行使価格(行使すると損失)原資産価格 > 行使価格(行使すると損失)

ATMのオプションは本質的価値がゼロで、時間的価値のみで構成されています。

本質的価値、時間価値、ITM、ATM、OTMを一緒に見る

試験では、ITM / ATM / OTM の判定だけでなく、その価格のうち何が本質的価値で、何が時間価値か まで問われやすいです。ここでは状態ごとに、満期接近ボラティリティ がどう効くかまでまとめて押さえます。

状態本質的価値時間価値満期接近でどうなるかボラティリティ上昇でどうなるか受験生向けの読み方
ITM残る ことが多い時間価値 が縮み、満期では 本質的価値 に近づく一般に上がりやすい本質的価値だけ ではない
ATM0価格の中心時間価値 が縮み、満期では 0 に近づく上がりやすい価格は時間価値だけ
OTM0価格は 時間価値だけ時間価値 が縮み、満期では 0 に近づく上がりやすい満期前なら価格ゼロとは限らない

試験での判断順

  1. まず コール / プット原資産価格と行使価格の大小 を見て、ITM / ATM / OTM を判定します。
  2. 本質的価値 は、ITM なら正ATM / OTM なら 0 と置きます。
  3. オプション価格 - 本質的価値時間価値 です。ATM / OTM で価格が残っていれば、それは 時間価値 です。
  4. 満期接近時間価値を減らすボラティリティ上昇時間価値を増やす と戻します。
  5. その結果、満期前の ATM / OTM には価格が残りうる一方、満期では 時間価値 が消えやすいと読みます。

価値構成の最短整理

ITM = 本質的価値ありATM / OTM = 本質的価値 0オプション価格 = 本質的価値 + 時間価値満期接近で時間価値は減るボラティリティ上昇で時間価値は増える と置くと、価値構成の問題をかなり外しにくくなります。

オプション価格に影響する5つの要因

試験でよく出題されるのが「オプション価格はどうなるか」という問題です。次の表を暗記する必要はありませんが、理屈で理解することが大切です。

要因コール価格プット価格
原資産価格が上昇上昇下落
行使価格が上昇下落上昇
満期までの期間が長い上昇上昇
ボラティリティ(価格変動)が大きい上昇上昇
金利が上昇上昇下落

特に注目すべきは 「満期までの期間」と「ボラティリティ」はコール・プット両方を上昇させる ということです。不確実性が高いほど、大きく有利に動く可能性が高まるからです。


プット=コール・パリティ ── コールとプットの価格関係

同じ原資産、同じ行使価格、同じ満期のコールとプットの間には、必ず成り立つ関係式があります。これが プット=コール・パリティ です。

C + PV(K) = P + S

ここで:

  • C:コール・オプション価格
  • P:プット・オプション価格
  • S:現在の原資産価格
  • PV(K):行使価格の現在価値 = K / (1+r)^t
  • K:行使価格
  • r:無リスク金利
  • t:満期までの期間

この関係を使えば、3つの値がわかれば、残りの1つを求められます。

計算例

原資産価格 S = 1,000円、行使価格 K = 1,050円、無リスク金利 r = 5%、満期 t = 1年、コール価格 C = 80円の場合:

まず、行使価格の現在価値を計算します: PV(K) = 1,050 / 1.05 = 1,000円

パリティの式に代入: 80 + 1,000 = P + 1,000 P = 80円

つまり、プット・オプション価格は80円です。


二項モデル ── オプション価格を理論的に算出する

オプションの価格を理論的に求める方法が 二項モデル です。このモデルは「リスク中立確率」という概念を使って、オプション価格を計算します。

二項モデルの基本仮定:原資産価格は次の期間に「上昇」か「下降」のいずれかにのみ動く。

計算に必要な数値:

  • S:現在の原資産価格
  • u:上昇倍率(例:u = 1.2なら20%上昇)
  • d:下降倍率(例:d = 0.9なら10%下降)
  • K:オプションの行使価格
  • r:無リスク金利(1期間あたり)

手順1:上昇時と下降時の原資産価格を計算

  • 上昇時:Su = S × u
  • 下降時:Sd = S × d

手順2:各時点でのオプション価値を計算

  • コール買いが上昇した場合:Cu = max(Su - K, 0)
  • コール買いが下降した場合:Cd = max(Sd - K, 0)

手順3:リスク中立確率を計算 リスク中立確率 p は、実際の確率ではなく「価格計算上の確率」です。

p = (1 + r - d) / (u - d)

手順4:コール価格を計算 C = [p × Cu + (1 - p) × Cd] / (1 + r)

具体的な計算例

現在の原資産価格 S = 100、上昇倍率 u = 1.2、下降倍率 d = 0.9、行使価格 K = 105、無リスク金利 r = 5%(期間あたり)のコール・オプション価格を求めます。

手順1:上昇・下降時の原資産価格

  • Su = 100 × 1.2 = 120
  • Sd = 100 × 0.9 = 90

手順2:上昇・下降時のコール価値

  • Cu = max(120 - 105, 0) = 15
  • Cd = max(90 - 105, 0) = 0(行使しない)

手順3:リスク中立確率 p = (1.05 - 0.9) / (1.2 - 0.9) = 0.15 / 0.3 = 0.5

つまり、50%の確率で上昇、50%の確率で下降するという計算上の確率です。

手順4:コール価格 C = (0.5 × 15 + 0.5 × 0) / 1.05 = 7.5 / 1.05 ≒ 7.14円

計算上のコール価格は約7.14円です。

二項モデルでよくある計算ミス

リスク中立確率の分子を間違える受験生が多いです。必ず (1 + r - d) が分子になることを確認してください。(u - d) が分母です。

プット=コール・パリティ、二項モデル、オプション価格をどう切るか

オプション論点は、どれも「価格」に見えるため、式の選択で混乱しやすいです。ここでは、価格の中身を見るのかコールとプットの整合関係を見るのか上昇 / 下降シナリオから理論価格を出すのか を先に切ります。

論点何を求めるときか計算の流れ前提典型的な誤答
オプション価格現在価格の中身や価格変化を見たいITM / ATM / OTM → 本質的価値 → 時間価値 → 満期 / ボラティリティ満期前の 時間価値 を見るATM / OTM = 価格 0 と考える
プット=コール・パリティコールとプットの一方の価格や価格整合性を見たいPV(K) を出す → C + PV(K) = P + S に代入する同一原資産 / 同一行使価格 / 同一満期、欧州型、無裁定K をそのまま足し引きして 現在価値化 を忘れる
二項モデル上昇 / 下降シナリオから理論価格を出したいSu / Sd → Cu / Cd → p → 現在価値1期間2状態、無裁定、pリスク中立確率p を実際の発生確率だと思う

過去問での判断順

  1. 本質的価値時間価値満期接近ボラティリティ が出たら、まず オプション価格 の論点です。
  2. 同じ原資産 / 同じ行使価格 / 同じ満期 のコールとプットが並び、どちらか一方の価格が欠けているなら、プット=コール・パリティ を考えます。
  3. SudKr上昇 / 下降の2状態 が出てきたら、二項モデル を考えます。
  4. 二項モデルp を出すだけでは不十分で、上昇 / 下降時のペイオフ を期待値化して現在へ割り引くところまでが計算です。
  5. プット=コール・パリティ二項モデル で出した理論値と市場価格がずれているなら、裁定機会 を疑います。

3つの道具の最短整理

価格の分解 = オプション価格整合関係 = プット=コール・パリティ上昇 / 下降シナリオ = 二項モデル と置くと、オプションの式をかなり選びやすくなります。


スワップ ── キャッシュフロー条件を交換する

スワップは「異なる条件のキャッシュフロー(支払い)を、当事者間で交換する契約」です。重要なのは「元本そのものは移動しない」という点です。あくまで支払い条件の交換です。

種類内容活用場面
金利スワップ固定金利と変動金利の支払いを交換金利変動リスクのヘッジ
通貨スワップ異なる通貨の元本・利息を交換為替リスクと金利リスクのヘッジ

金利スワップの具体例

A社とB社の例を考えます:

  • A社:銀行から「TIBOR(東京銀行間取引金利)+ 1%」の変動金利で借りている。金利が上昇すると支払いが増えて困る
  • B社:銀行から「固定3%」の金利で借りている。金利が下がっても割高なまま。金利低下の恩恵を受けられない

スワップ契約を結びます。「A社とB社がお互いに支払いを交換する」という契約です:

  • A社がB社に「固定3%」を支払う
  • B社がA社に「TIBOR + 1%」を支払う

結果:

  • A社は実質的に「固定3%」での借入に変換(金利変動リスクを回避)
  • B社は実質的に「変動TIBOR + 1%」での借入に変換(金利低下時に恩恵を受ける)

スワップのポイントは、既存の借入契約は変更せず、キャッシュフロー(支払い)の交換だけで実質的に条件を変える ことです。


リアルオプション ── 投資判断に「柔軟性」の価値を加える

これまで学んだオプションは「金融資産」のオプションです。これを「実物投資」に応用するのが リアルオプション です。

たとえば、ある新規事業への投資を考えているとします。従来のNPV計算では「今、投資すべきか」という二者択一の判断になります。しかし現実には「今は情報が不足しているから、様子を見てから判断する権利」に価値があるのではないか、という考え方です。

5 つの実物オプション

リアル・オプションの種類内容対応する金融オプション
延期オプション投資実行を遅らせ、情報を得る権利コール
拡張オプション最初は小規模で始め、成功時に追加投資する権利コール
縮小オプション需要悪化時に規模を絞り、損失を抑える権利プット
切替オプション製品、用途、原材料を有利な方へ切り替える権利コール / プット
撤退オプションうまくいかない場合に中止・撤退する権利プット

過去問での判断順

  1. 投資前に待てるか を見ます。情報が出てから実行を決められるなら 延期オプション です。
  2. 成功したら大きくできるか を見ます。追加投資で上振れを取りにいくなら 拡張オプション です。
  3. 悪化時に規模を落とせるか を見ます。操業度や店舗規模を絞れるなら 縮小オプション です。
  4. 用途や投入物を変えられるか を見ます。製品や原材料を切り替えられるなら 切替オプション です。
  5. やめて回収できるか を見ます。売却価値や運転資本回収で損失を止められるなら 撤退オプション です。

受験生向けの一本線

待つ = 延期広げる = 拡張絞る = 縮小変える = 切替やめる = 撤退 と固定すると、リアルオプション の場面選択をかなり外しにくくなります。

計算式: 拡張NPV = 従来のNPV + リアルオプションの価値

従来のNPVがマイナスでも、リアルオプションの価値を加えると、投資が正当化される場合もあります。


為替リスクのヘッジ手法 ── 複数の選択肢

企業が外貨での支払い・受取をするとき、為替変動リスクに対処する方法は複数あります。

手法内容特徴
為替予約将来の特定日に一定レートで外貨を売買する契約先渡と同じ。価格を完全に固定
通貨オプション一定レートで外貨を売買する 権利 を取得不利な方向だけ避けて、有利な方向の利益を残す
リーズ・アンド・ラグズ為替見通しに応じて決済時期を前倒し・後ろ倒し積極的な為替見通しがあるときに使用
マッチング外貨建て債権と債務を同額にして相殺自然な相殺で、追加手段を使わない
ネッティンググループ内の外貨建て債権債務を相殺多国籍企業グループで使用

どの手法を選ぶかは、「為替が変動したときのリスク許容度」と「積極的な為替見通しがあるか」で判断します。

為替予約、通貨オプション、通貨スワップの使い分け

過去問では、為替予約通貨オプション通貨スワップ を全部「為替リスク対策」とだけ覚えると、支払いなのか受取りなのか単発なのか継続なのか で崩れやすいです。

場面最初に切ること使いやすい手段選び方
3か月後に ドルを支払う。今のレートで固定したい単発の外貨支払い為替予約後で ドルを買う ので ドル買い予約
3か月後に ドルを支払う。円安だけ避けたい単発の外貨支払い + 片側保護通貨オプション後で ドルを買う権利 なので ドル・コール
3か月後に ドルを受け取る。今のレートで固定したい単発の外貨受取り為替予約後で ドルを売る ので ドル売り予約
3か月後に ドルを受け取る。円高だけ避けたい単発の外貨受取り + 片側保護通貨オプション後で ドルを売る権利 なので ドル・プット
数年間の ドル建て借入円建て負担 に近づけたい継続的な元本・利息の交換通貨スワップ一度の決済ではなく、契約期間全体の条件を交換

過去問での判断順

  1. まず 一回きりの外貨受払複数年の元利払い かを見ます。継続的な条件交換なら 通貨スワップ を優先します。
  2. 単発の外貨受払なら、完全固定不利な方向だけ避けたいか を切ります。
  3. 完全固定 なら 為替予約片側保護 なら 通貨オプション を選びます。
  4. その後で 後で外貨を払う = 後で外貨を買う側後で外貨を受け取る = 後で外貨を売る側 と読み替えます。
  5. 外貨を買う権利 = コール外貨を売る権利 = プット に落とすと、ドル・コールドル・プット を逆にしにくくなります。

受払方向の覚え方

輸入 = 後で外貨を払う = 後で外貨を買う輸出 = 後で外貨を受け取る = 後で外貨を売る と固定すると、為替予約通貨オプション の方向をかなり安定して選べます。

リーズ・アンド・ラグズ、マッチング、ネッティングと契約ヘッジをどう切るか

為替リスクでは、為替予約 / 通貨オプション のような契約ヘッジだけでなく、決済時期を動かす外貨建ての受払を相殺する という内部調整も出題されます。ここを 社内で吸収するか契約で固定・保護するか の順で切ると、かなり整理しやすくなります。

手段まず見ること向く場面向かない場面
リーズ・アンド・ラグズ決済時期を前倒し・後ろ倒しできるか為替見通しに応じて 支払いを早める / 受取りを遅らせる などの調整をしたいレート自体を 完全固定 したい
マッチング自社内に同じ通貨の受取りと支払いがあるか輸出代金の受取りと輸入代金の支払いを 自社内で自然に相殺 したい一方しか外貨取引がない
ネッティンググループ会社間で外貨債権債務をまとめられるか海外子会社どうしの外貨受払を グループ全体で相殺 したい単独企業の 1 件の受払
為替予約契約でレートを完全固定したいか単発の外貨受払を 今のレートで固定 したい有利な方向の利益も残したい
通貨オプション不利な方向だけ避けたいか単発の外貨受払で 片側保護 をしたいプレミアムなしで完全固定したい

自然ヘッジと契約ヘッジの判断順

  1. まず 自社内に同じ通貨の受取りと支払いがあるか を見ます。相殺できるなら マッチング を考えます。
  2. それが グループ会社間 の話なら、ネッティング を考えます。
  3. 相殺ではなく 決済時期を動かせる なら、リーズ・アンド・ラグズ を考えます。
  4. 社内調整では吸収できず、レートを完全固定したい なら 為替予約 を考えます。
  5. 社内調整では吸収できず、不利な方向だけ避けたい なら 通貨オプション を考えます。

自然ヘッジと契約ヘッジの最短整理

自社内で相殺 = マッチンググループで相殺 = ネッティング時期調整 = リーズ・アンド・ラグズ契約で固定 / 片側保護 = 為替予約 / 通貨オプション と置くと、為替リスクの比較問題をかなり切りやすくなります。

商品価格、為替、金利をまたいでどう選ぶか

デリバティブの総合問題では、原油価格ドル円変動金利 が同じ設問の中に並ぶことがあります。ここでは 何が動くか単発の取引か、継続的な条件交換か を軸に、手段を一気に切ります。

場面主に動くもの何をしたいか最初に考える手段決め手
3か月後に原油を仕入れる商品価格上昇リスクを固定したい買い先物将来 買う側完全固定
3か月後に小麦を販売する商品価格下落リスクを固定したい売り先物将来 売る側完全固定
3か月後にドルを支払う為替円安だけ避けたい通貨オプションドル・コール単発の外貨支払いで 片側保護
3か月後にドルを受け取る為替レートを今の時点で固定したい為替予約ドル売り予約単発の外貨受取りで 完全固定
変動金利借入を固定金利へ近づけたい金利利払い条件を変えたい金利スワップ継続的な 利払い条件 の交換
ドル建て借入を円建て負担へ近づけたい通貨 + 金利元本と利息の条件を変えたい通貨スワップ継続的な 元本 + 利息 の交換

横断問題での判断順

  1. まず 商品価格為替金利 のどれが主に変動しているかを見ます。
  2. 次に 単発の将来取引継続的な条件交換 かを切ります。
  3. 単発の将来取引で 完全固定 なら、商品価格は 先物、為替は 為替予約 を考えます。
  4. 単発の将来取引で 片側保護 なら、オプション を考えます。
  5. 継続的な 利払い条件 の交換なら 金利スワップ通貨建ての元本・利息 の交換なら 通貨スワップ を考えます。

横断問題の最短整理

商品価格の単発固定 = 先物為替の単発固定 / 片側保護 = 為替予約 / 通貨オプション継続条件の交換 = スワップ と置くと、総合問題でもかなり整理しやすくなります。

輸入、輸出、仕入、販売を買いヘッジ、売りヘッジ、コール、プットへどう落とすか

仕入輸入販売輸出 は対象が 商品外貨 か違うだけで、ヘッジ方向の考え方は同じです。ここを 後で買う側 / 後で売る側 の 2 つに戻すと、買いヘッジ / 売りヘッジコール / プット の向きを同じ規則で決められます。

場面後で何をするか完全固定なら片側保護なら間違えやすい点
3か月後に銅を 仕入れる後で 商品を買う買いヘッジコール・オプション売りヘッジ を選ぶ
3か月後に小麦を 販売する後で 商品を売る売りヘッジプット・オプション買いヘッジ を選ぶ
3か月後にドル建てで 輸入代金を支払う後で 外貨を買うドル買い予約ドル・コールドル・プット を選ぶ
3か月後にドル建てで 輸出代金を受け取る後で 外貨を売るドル売り予約ドル・プットドル・コール を選ぶ

方向を決める判断順

  1. まず 仕入 / 輸入 なのか、販売 / 輸出 なのかを見ます。
  2. 仕入 / 輸入 = 後で買う側販売 / 輸出 = 後で売る側 と読み替えます。
  3. 完全固定 なら、商品価格は 買いヘッジ / 売りヘッジ、為替は ドル買い予約 / ドル売り予約 を選びます。
  4. 片側保護 なら、買う側 = コール売る側 = プット と落とします。
  5. 最後に 商品価格 の話か 為替 の話かを見て、先物 / 為替予約 / 通貨オプション の具体名へ進みます。

方向の最短整理

仕入 / 輸入 = 買う側販売 / 輸出 = 売る側 と固定すると、商品価格と為替の設問を同じ手順で解きやすくなります。


問題を解くときの観点チェックリスト

試験で出題されたとき、次の順番で考えると間違いが減ります。

  1. 何が変動するのか を確認する:金利か、為替か、商品価格か
  2. 上昇が困るのか、下落が困るのか を確認する
  3. 有利な方向の利益を残したいのか、完全に固定したいのか を分ける
  4. 完全固定なら買う側か売る側か を決める:将来買うなら 買いヘッジ、将来売るなら 売りヘッジ
  5. 仕入 / 輸入販売 / 輸出 を見て、後で買う側 / 後で売る側 のどちらかへ戻す
  6. そのニーズに応える商品は何か を選ぶ:先物か、オプションか、スワップか
  7. オプションなら 買い手か売り手か を確認する:買い手の最大損失 = プレミアム売り手の最大利益 = プレミアム
  8. 計算が必要なら 損益分岐点 を戻す:コール = 行使価格 + プレミアムプット = 行使価格 - プレミアム
  9. 価値構成が問われたら ITM / ATM / OTM を判定する:ITM なら本質的価値ありATM / OTM なら本質的価値 0
  10. 満期やボラの変化が出たら 時間価値 を見る:満期接近で減るボラティリティ上昇で増える
  11. コールとプットの関係が問われたら プット=コール・パリティ を見る:同一原資産 / 同一行使価格 / 同一満期PV(K) を確認する
  12. u / d / r上昇 / 下降の2状態 が出たら 二項モデル を見る:Su / Sd → Cu / Cd → p → 現在価値 の順で計算する
  13. オプションの式選択で迷ったら 価格の分解整合関係上昇 / 下降シナリオ のどれかへ戻す

よくあるつまずきと対策

  • 先物とオプションの違いを「義務と権利」で切れない → 先物は 双方に義務、オプションは買い手に 権利。これが全ての出発点
  • 買いヘッジと売りヘッジを混同する将来買う側で価格上昇が困る なら 買いヘッジ将来売る側で価格下落が困る なら 売りヘッジ
  • 仕入販売 でヘッジ方向を逆にする仕入 = 後で買う側販売 = 後で売る側 と読む
  • ドル支払いとドル受取りで、コールとプットを逆にする後で払う外貨は後で買う後で受け取る外貨は後で売る と読めば、ドル・コール / ドル・プット を決めやすい
  • 輸入輸出 を商品売買と別ルールだと思う輸入 = 後で外貨を買う側輸出 = 後で外貨を売る側 なので、買う側 = コール売る側 = プット の規則は同じ
  • オプション損益でプレミアムを忘れる → 利益 = 行使価値 - プレミアム(すべての計算で忘れずに)
  • コール買いコール売り最大利益 / 最大損失 を逆にする買い手の最大損失 = プレミアム売り手の最大利益 = プレミアム を先に固定する
  • プット買いプット売り で同じ 行使価格 - プレミアム を見て、利益方向まで同じだと思う損益分岐点 は同じでも、買いは下落で得売りは下落しない方が得 と逆向き
  • ATMOTM なら価格もゼロだと思う → 満期前なら 時間価値 が残るので、本質的価値 0価格 0 は同じではない
  • ITM なら価格は全部 本質的価値 だと思う → 満期前なら 時間価値 も含まれることが多い
  • 満期接近はコールだけを下げると思う → 減るのは 時間価値 なので、コールでもプットでも下がりやすい
  • ボラティリティ上昇でコールだけ上がると思う時間価値 が増えるので、一般にコールもプットも上がりやすい
  • プット=コール・パリティK をそのまま使う → 使うのは K ではなく PV(K)。行使価格は現在価値へ直してから式へ入れる
  • 満期や行使価格が違うコールとプットでも プット=コール・パリティ が使えると思う同一原資産 / 同一行使価格 / 同一満期 がそろっていないと、そのままは使えない
  • スワップを「新しい借入」と誤解する → スワップは既存の借入は変わらず、キャッシュフロー交換だけ
  • 商品価格リスクなのに通貨手段を選ぶ → まず 何が動くか を見て、商品価格 なら 先物為替 なら 為替予約 / 通貨オプション金利 なら スワップ と切る
  • 通貨スワップを単発の輸出入決済に当てはめる → 通貨スワップは 元本 + 利息 を継続的に交換する場面で使い、単発決済の固定は 為替予約 が基本
  • 金利スワップと通貨スワップを混同する金利スワップ は主に 金利条件通貨スワップ通貨建て + 利払い条件 を変える
  • リーズ・アンド・ラグズレート固定手段 だと考える → これは 決済時期の調整 であり、レートを契約で固定するのは 為替予約
  • マッチングネッティング を同じ相殺だと思う自社内の受払相殺 なら マッチンググループ会社間の相殺 なら ネッティング
  • 二項モデルでリスク中立確率の分子を間違える → 必ず (1 + r - d) が分子(r は金利、d は下降倍率)
  • ボラティリティが高いとコールだけ上がると思う → プットも上がる(両方に「変動の可能性」が有利に働く)

確認問題

問1:オプション損益分岐点

プット・オプション。行使価格 500円、プレミアム 30円の場合、損益分岐点を求めよ。また、原資産価格が 450円のときの利益を計算せよ。

解答: 損益分岐点 = 500 - 30 = 470円

原資産価格 450円のとき: 利益 = (500 - 450) - 30 = 20円

問2:二項モデルによるオプション価格

S = 200、u = 1.3、d = 0.8、K = 220、r = 10% のとき、コール・オプション価格を求めよ。

解答: Su = 200 × 1.3 = 260、Sd = 200 × 0.8 = 160 Cu = max(260 - 220, 0) = 40、Cd = max(160 - 220, 0) = 0

p = (1.1 - 0.8) / (1.3 - 0.8) = 0.3 / 0.5 = 0.6

C = (0.6 × 40 + 0.4 × 0) / 1.1 = 24 / 1.1 ≒ 21.82円

問3:ヘッジ手段の選択

輸入企業が3か月後に 100万ドルの支払いを予定している。現在のレートは1ドル = 150円。円安リスクを回避しつつ、円高時の利益は残したい。最適なヘッジ手段は何か。

(a) ドル買い先物 (b) ドル・コール・オプションの購入 (c) ドル・プット・オプションの購入 (d) 金利スワップ

解答:(b) ドル・コール・オプションの購入

理由:

  • 「円安(ドル高)が困る」= 「ドルを買う権利」が欲しい = コール購入
  • 円安になっても、オプション行使価格でドルを買える(損失を限定)
  • 円高になれば、権利を放棄して市場で安く買える(利益を残す)
  • (a) は先物で価格を完全に固定するため、円高時の利益も失う
  • (c) プット(売る権利)は円安対策にはならない
  • (d) 金利スワップは金利リスク対策であり、為替リスク対策ではない

問4:為替予約、通貨オプション、通貨スワップ

次の各場面で、最も近い手段を答えてください。

  • a. 3か月後に 50 万ドルを支払う予定。円安も円高も関係なく、今のレートで固定したい
  • b. 3か月後に 50 万ドルを受け取る予定。円高だけ避けて、円安の利益は残したい
  • c. 5 年間のドル建て借入があり、元本と利息の負担を円建てに近づけたい

解答

  • a は 為替予約 です。単発の支払いで 完全固定 を求めるので、ドル買い予約 が合います。
  • b は 通貨オプション です。後で ドルを受け取る = ドルを売る側 なので、ドル・プット の発想で下振れだけを防ぎます。
  • c は 通貨スワップ です。単発の決済ではなく、元本 + 利息 の条件を継続的に交換する場面だからです。

問5:商品価格、為替、金利の横断比較

次の各場面で、最も近い手段を答えてください。

  • a. 3か月後に銅を仕入れる企業が、価格上昇で採算が崩れるのを避けたい。価格は今の時点で固定したい
  • b. 3か月後に大豆を販売する企業が、価格下落で収入が減るのを避けたい。販売価格は今の時点で固定したい
  • c. 3か月後にドルを支払う輸入企業が、円安だけ避けたいが、円高の利益は残したい
  • d. 変動金利借入をしている企業が、支払金利を固定したい
  • e. ドル建て借入の元本と利息を、円建て負担へ近づけたい

解答

  • a は 買い先物 です。商品価格 の上昇リスクを、将来 買う側 として 完全固定 したいからです。
  • b は 売り先物 です。商品価格 の下落リスクを、将来 売る側 として 完全固定 したいからです。
  • c は 通貨オプションドル・コール です。為替 の片側保護であり、後で ドルを買う権利 が必要だからです。
  • d は 金利スワップ です。単発の取引ではなく、利払い条件変動 から 固定 へ近づけたいからです。
  • e は 通貨スワップ です。通貨建ての元本 + 利息 の条件を継続的に交換したいからです。

問6:自然ヘッジと契約ヘッジ

次の各場面で、最も近い手段を答えてください。

  • a. 輸出企業が毎月 80 万ドルを受け取り、同じ月に原材料輸入で 70 万ドルを支払っている。まずは外貨の受払いを自社内で相殺したい
  • b. 親会社が、海外子会社どうしのドル建て債権債務を集約して差額だけ決済したい
  • c. 円安が進みそうなので、2 か月後の輸入代金の支払いを前倒ししたい
  • d. 3 か月後に 60 万ドルを支払う予定で、レートを今の時点で固定したい
  • e. 3 か月後に 60 万ドルを受け取る予定で、円高だけ避けて円安の利益は残したい

解答

  • a は マッチング です。自社内 に同じ通貨の受取りと支払いがあり、自然に相殺したい場面だからです。
  • b は ネッティング です。グループ会社間 の外貨債権債務をまとめて相殺したい場面だからです。
  • c は リーズ・アンド・ラグズ です。為替見通しに応じて 決済時期 を前倒し・後ろ倒しする手段だからです。
  • d は 為替予約ドル買い予約 です。単発の外貨支払いで 完全固定 をしたいからです。
  • e は 通貨オプションドル・プット です。単発の外貨受取りで 片側保護 をしたいからです。

問7:輸入、輸出、仕入、販売とヘッジ方向

次の各場面で、最も近い手段を答えてください。完全固定 が必要なら 買いヘッジ / 売りヘッジ / 為替予約片側保護 が必要なら コール / プット の向きまで答えてください。

  • a. 3か月後に銅を仕入れる製造業者。価格上昇で採算が崩れるのを避けたい。価格は今の時点で固定したい
  • b. 3か月後にコーヒー豆を販売する商社。価格下落だけ避けたいが、価格上昇の利益は残したい
  • c. 3か月後に 80 万ドルを支払う輸入企業。円安だけ避けたいが、円高の利益は残したい
  • d. 3か月後に 80 万ドルを受け取る輸出企業。レートは今の時点で固定したい
  • e. 3か月後に小麦を販売する企業。価格下落で収入が減るのを避けたい。販売価格は今の時点で固定したい

解答

  • a は 買いヘッジ です。仕入 = 後で商品を買う側 であり、完全固定 をしたいからです。
  • b は プット・オプション です。販売 = 後で商品を売る側 であり、片側保護 なら 売る側 = プット だからです。
  • c は 通貨オプションドル・コール です。輸入 = 後で外貨を買う側 であり、買う側 = コール だからです。
  • d は 為替予約ドル売り予約 です。輸出 = 後で外貨を売る側 であり、完全固定 をしたいからです。
  • e は 売りヘッジ です。販売 = 後で商品を売る側 であり、価格下落を完全固定 したいからです。
  • 過去問では、仕入 / 輸入 = 後で買う側販売 / 輸出 = 後で売る側 と先に戻すと、買いヘッジ / 売りヘッジ / コール / プット の方向をかなり安定して選べます。

問8:コール買い、プット買い、コール売り、プット売りの比較

次の各説明について、最も近いポジションを コール買いプット買いコール売りプット売り の中から答えてください。

  • a. 原資産価格の上昇で利益が大きくなり、最大損失は支払プレミアムで止まる。損益分岐点は 行使価格 + プレミアム
  • b. 受取プレミアムが最大利益であり、原資産価格が大きく上がると損失が膨らむ。損益分岐点は 行使価格 + プレミアム
  • c. 原資産価格の下落で利益が大きくなり、最大損失は支払プレミアムで止まる。損益分岐点は 行使価格 - プレミアム
  • d. 受取プレミアムが最大利益であり、原資産価格が大きく下がると損失が膨らむ。損益分岐点は 行使価格 - プレミアム

解答

  • a は コール買い です。上昇で得する買い手なので最大損失はプレミアムコールなので K + P だからです。
  • b は コール売り です。受取プレミアムが最大利益 なので 売り上昇で損失が膨らむ ので コール です。
  • c は プット買い です。下落で得する買い手なので最大損失はプレミアムプットなので K - P だからです。
  • d は プット売り です。受取プレミアムが最大利益 なので 売り下落で損失が膨らむ ので プット です。

問9:本質的価値、時間価値、ITM、ATM、OTM

次の各場面について、状態(ITM / ATM / OTM)本質的価値時間価値 を答えてください。必要な場合は、満期接近やボラティリティ変化の影響も答えてください。

  • a. コール・オプション。原資産価格 120円、行使価格 100円、オプション価格 28円
  • b. プット・オプション。原資産価格 100円、行使価格 100円、オプション価格 14円
  • c. コール・オプション。原資産価格 90円、行使価格 100円、オプション価格 6円
  • d. b と c のように 本質的価値が 0 のオプションで、他の条件を一定として 満期までの期間が短くなる場合ボラティリティが上昇する場合 の価格変化

解答

  • a は ITM です。本質的価値は 120 - 100 = 20円、時間価値は 28 - 20 = 8円 です。ITM でも満期前なら時間価値が残ります。
  • b は ATM です。本質的価値は 0円、時間価値は 14円 です。価格のすべてが時間価値です。
  • c は OTM です。本質的価値は 0円、時間価値は 6円 です。OTM でも満期前なら価格が付くことがあります。
  • d は、満期接近 なら 時間価値 が減るので、b と c の価格は下がりやすいです。ボラティリティ上昇 なら 時間価値 が増えるので、b と c の価格は上がりやすいです。

問10:プット=コール・パリティ、二項モデル、オプション価格の使い分け

次の各場面で、まず使う考え方を オプション価格プット=コール・パリティ二項モデル の中から答え、必要な答えも示してください。

  • a. 同じ原資産、同じ行使価格 100円、同じ満期 1年 の欧州型オプション。原資産価格 98円、コール価格 12円、無リスク金利 2% のとき、プット価格を求めたい
  • b. 現在の原資産価格 100円。1期間後に 120円 へ上がるか 90円 へ下がるかのどちらか。行使価格 105円、無リスク金利 5% のとき、コール価格を求めたい
  • c. ATM のコール・オプションが 10円 で取引されている。ほかの条件を一定として、満期までの期間が短くなる場合ボラティリティが上昇する場合 の価格変化を知りたい

解答

  • a は プット=コール・パリティ です。同じ原資産 / 同じ行使価格 / 同じ満期 のコールとプットが並んでいるからです。PV(K) = 100 / 1.02 ≒ 98.04 なので、P = C + PV(K) - S = 12 + 98.04 - 98 ≒ 12.04円 です。
  • b は 二項モデル です。上昇 / 下降 の 2 状態と 無リスク金利 が与えられているからです。Cu = max(120 - 105, 0) = 15Cd = max(90 - 105, 0) = 0p = (1.05 - 0.9) / (1.2 - 0.9) = 0.5C = (0.5 × 15 + 0.5 × 0) / 1.05 ≒ 7.14円 です。
  • c は オプション価格 です。現在価格の中身時間価値 の増減を見る問題だからです。ATM なので価格の中心は 時間価値 であり、満期接近 なら下がりやすく、ボラティリティ上昇 なら上がりやすいです。
  • 過去問では、価格の分解整合関係上昇 / 下降シナリオ のどれかを先に切ると、3 つの道具を混同しにくくなります。

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