財務・会計(令和5年度)
令和5年度(2023)中小企業診断士第1次試験 財務・会計の全23問解説
概要
令和5年度(2023年7月実施)中小企業診断士試験第1次試験「財務・会計」の全23問を網羅した解説です。
解説の読み方
各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。
基本情報
- 試験年度: 令和5年度(R5)
- 実施日: 2023年8月
- 試験時間: 11:30〜12:30(60分)
- 出題形式: 四肢択一式
- 総問数: 23問
PDF入手先
全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。
解説の読み方
各問の解説は以下の構成で記載しています:
- 問題要旨 — 出題内容を簡潔に説明
- 分類タグ —
K(知識種類)T(思考法)L(形式層)Trap(誤答パターン) - 正解 — 正答を記載
- 必要知識 — wiki の関連ノードへのリンク
- 解法の思考プロセス — 正答までの論理的ステップ
- 誤答の落とし穴 — 引っかかりやすい誤りパターン
- 学習アドバイス — 試験本番での確認事項
出題構成テーブル
| 領域 | 問番号 | 問数 | 主な論点 |
|---|---|---|---|
| 簿記 | 1-3 | 3 | 商品売買、重要な会計方針、減価償却 |
| 連結・会社法 | 4-8 | 5 | 連結会計、計算書類、配当と処分、貸借対照表表示 |
| 法人税・CF | 6, 9 | 2 | 法人税計算、CF分類 |
| 原価計算 | 10 | 1 | プロセスコスティング、度外視法 |
| 財務分析 | 11-14 | 4 | 財務比率、生産性、配当計算、CCC |
| 経営意思決定 | 15-17 | 3 | 資本構成・MM理論、追加的原価分析 |
| ポートフォリオ・投資評価 | 18-20 | 3 | ポートフォリオ理論、有効市場仮説、DCF |
| 成長率・リスク管理 | 21-23 | 3 | サステナブル成長率、市場リスク、為替リスク |
全問分類マップテーブル
| 問 | テーマ | 知識種類 | 思考法 | 形式層 | 誤答パターン |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 移動平均法・売上原価 | K3 | T3 | L3 | 単価計算の誤り |
| 2 | 収益認識・契約資産 | K5 | T2 | L2 | 複数履行義務の認識ずれ |
| 3 | 定率法・保証率 | K3 | T3 | L3 | 保証率の適用時期 |
| 4 | 連結会計 | K2 | T1 | L1 | のれん処理の誤解 |
| 5 | 計算書類 | K2 | T1 | L1 | 開示範囲の誤解 |
| 6 | 法人税計算 | K3 | T3 | L3 | 益金不算入・損金不算入の混同 |
| 7 | 配当・処分 | K2 | T1 | L1 | 中間配当と期末配当の制限 |
| 8 | 貸借対照表表示 | K2 | T1 | L1 | 資産分類の期間判断 |
| 9 | CF計算書 | K2 | T1 | L1 | 棚卸資産増加の方向性 |
| 10 | 度外視法・平均法 | K3 | T3 | L3 | 減損配分方法 |
| 11 | 財務比率(設備投資vs返済) | K3 | T4 | L2 | 比率変動の個別判断 |
| 12-1 | 付加価値率 | K3 | T3 | L2 | 付加価値の定義 |
| 12-2 | 生産性分析 | K3 | T4 | L2 | 労働装備率の理解 |
| 13 | キャッシュ・コンバージョン・サイクル | K3 | T2 | L2 | CCC計算式の正確な理解 |
| 14 | 配当計算 | K3 | T3 | L3 | ROE と期首資本の関係 |
| 15-1 | MM理論(税金なし) | K3 | T3 | L3 | 負債とROE関係 |
| 15-2 | MM理論(法人税あり) | K3 | T3 | L3 | 節税効果の計算 |
| 16 | 意思決定会計用語 | K1 | T2 | L1 | 機会原価と埋没原価 |
| 17 | 投資評価(事業部別資本コスト) | K3 | T3 | L2 | IRR と事業部別資本コストの比較 |
| 18 | ポートフォリオ理論 | K3 | T1 | L1 | 相関係数とリスク低減効果 |
| 19 | 効率的市場仮説 | K1 | T1 | L1 | セミストロング型の定義 |
| 20 | DCF(フリーキャッシュフロー) | K3 | T3 | L3 | FCF計算・成長率適用 |
| 21 | サステナブル成長率 | K3 | T1 | L1 | 配当性向との関係 |
| 22 | 市場リスク分類 | K2 | T2 | L1 | リスク種別の区別 |
| 23 | 為替予約 | K3 | T3 | L3 | 予約と直物の損益計算 |
形式層の分布
| 形式層 | 問数 | 特徴 |
|---|---|---|
| L1(知識・定義選択) | 9 | 正誤判定・用語定義。知識そのもので判断可能 |
| L2(判断・比較) | 8 | 複数情報から条件判定・因果判定が必要 |
| L3(計算実行) | 6 | 数式適用・多段階計算が必須 |
傾向: 定義理解とアルゴリズム正確性が約6割、判断思考が約3割、純粋計算が約1割。
各問の解説
第1問:移動平均法による売上原価計算
問題要旨 7月の商品A取引(前月繰越、2回の仕入、1回の売上)について、移動平均法で7月の売上原価を求める。
分類タグ
K3-原価計算方法 T3-計算実行 L3-多段階計算 Trap-単価誤算
正解: イ(2,300円)
必要知識
- 移動平均法の計算手順
解法の思考プロセス
移動平均法では、仕入のたびに平均単価を更新し、その時点の平均単価で払出原価を計算します。
- 7月12日までの平均単価を出す
- 前月繰越:
10個 × 100円 = 1,000円 - 7月12日仕入:
30個 × 120円 = 3,600円 - 合計原価:
4,600円 - 合計数量:
40個 - 平均単価:
4,600 ÷ 40 = 115円
- 前月繰越:
- 7月15日の売上原価を計算する
- 売上数量:
20個 - 売上原価:
20 × 115 = 2,300円
- 売上数量:
- 7月25日の仕入は7月15日の売上原価には影響しない
- 7月25日の仕入は、次回以降の払出単価と月末在庫の評価にだけ影響します。
したがって、7月の売上原価は 2,300円 です。
正答:イ(2,300円)
誤答の落とし穴
- ア 2,200円: 前月繰越と仕入を平均せず、途中の数字を混ぜた場合
- ウ 2,400円: 7月12日の仕入単価
120円をそのまま使った場合 - エ 2,600円: 7月25日の仕入まで7月15日の売上原価に混ぜた場合
学習アドバイス 移動平均法では、「いつ売ったか」より前にある仕入だけを使うことが重要です。受験本番では、仕入と売上の時系列に印を付けてから平均単価を作ると取り違えにくくなります。
第2問:IFRS15号 収益認識と複数履行義務
問題要旨 商品Bと商品Cを同時に販売する契約で、各商品が独立した履行義務の場合、仕訳を選ぶ。商品Bは8/12引渡、商品Cは8/25引渡、代金請求は両方引渡後。
分類タグ
K5-重要な会計方針 T2-分類判断 L2-条件整理 Trap-複数履行義務の混同
正解: ア
必要知識
- IFRS15号(5ステップ分析)
解法の思考プロセス
IFRS15号における収益認識は、履行義務を充足する時点で収益を認識します。
ポイント
- 複数履行義務の識別
- 商品Bと商品C はそれぞれ独立した履行義務
- 顧客は個別に引き渡された商品を利用可能 → 別々に認識
- タイムライン分析
- 8/12:商品B引渡 → 履行義務充足 → 売上B 25,000円を認識
- 8/25:商品C引渡 → 履行義務充足 → 売上C 35,000円を認識
- 8/25以降:請求書送付 → 売掛金認識
- 各時点での仕訳
8/12(商品B引渡のみ):
借 契約資産 25,000 貸 売上 25,000- 商品Bの履行義務充足 → 売上認識
- 商品Cは未引渡 → まだ売上不認識
- 代金請求まで → 契約資産として計上(将来の請求権)
借 売掛金 60,000 貸 契約資産 25,000 売上 35,000- 商品Cも引渡 → 売上35,000円認識
- 請求書送付 → 契約資産25,000円 → 売掛金60,000円へ
- 企業は請求権を確定的に取得
正答:ア
誤答の落とし穴
- イ:契約負債の概念を誤用。契約負債は「先に現金受取」した場合に使用
- ウ:全額を売上認識。複数履行義務を無視し、単一取引として処理
- エ:複合的な誤り。負債と売上の対応が不正確
学習アドバイス IFRS15号では 「引渡時点」 が収益認識の重要なトリガーです。複数履行義務がある場合、各々の引渡時点で独立して認識します。請求書発行は 売上認識後の行政手続き であり、収益認識そのものではありません。
第3問:200%定率法と保証率・改定償却率
問題要旨 取得原価300,000円、耐用年数5年の機械について、200%定率法と保証率・改定償却率を用いてX4年度の減価償却費を求める。
分類タグ
K3-減価償却計算 T3-計算実行 L3-多段階計算 Trap-保証率適用時期
正解: エ(32,400円)
必要知識
- 定率法の計算原理
解法の思考プロセス
この問題のポイントは、X4年度で保証額に達するかどうかを比較することです。
- まず通常の200%定率法で計算する
- 定額法償却率:
1 ÷ 5 = 20% - 定率法償却率:
20% × 200% = 40%
- 定額法償却率:
| 年度 | 期首簿価 | 通常償却額 | 期末簿価 |
|---|---|---|---|
| X1 | 300,000円 | 120,000円 | 180,000円 |
| X2 | 180,000円 | 72,000円 | 108,000円 |
| X3 | 108,000円 | 43,200円 | 64,800円 |
- 保証額を計算する
300,000 × 0.10800 = 32,400円
- X4年度の通常償却額と比較する
- 通常償却額:
64,800 × 40% = 25,920円 25,920円 < 32,400円なので、X4年度から改定償却率へ切り替えます。
- 通常償却額:
- 改定償却率でX4年度を計算する
- 改定取得価額は切替時の簿価
64,800円 - 減価償却費:
64,800 × 0.500 = 32,400円
- 改定取得価額は切替時の簿価
正答:エ(32,400円)
誤答の落とし穴
- ア 18,750円: 定額法へ誤って早く切り替えた場合
- イ 25,920円: 保証額との比較をせず、40%をそのまま続けた場合
- ウ 30,000円: 保証率や改定償却率の意味を曖昧に覚えていた場合
学習アドバイス
定率法で 保証率 と 改定償却率 が出たら、毎年「通常償却額」と「保証額」を比較するのが解き筋です。ここを飛ばすと、今回のように 25,920円 をそのまま選んでしまいます。
第4問:連結会計に関する記述
問題要旨 連結会計のルール(親会社の所有割合、決算日差異、のれん、持分法)について、最も適切な記述を選ぶ。
分類タグ
K2-連結会計ルール T1-正誤判定 L1-知識選択 Trap-のれん処理と持分法の混同
正解: イ
必要知識
- のれん、非支配株主持分
解法の思考プロセス
各選択肢を検討します。
ア「非支配株主持分」
- 正確には:親会社の所有割合が100%未満の場合、非支配株主持分(非支配持分)は連結貸借対照表の純資産の部に計上
- ✗ 「負債の部に計上」は誤り
イ「決算日差異3か月以内」
- ✓ 子会社の決算日が連結決算日と異なる場合、3か月以内の差異なら子会社の実績で連結可能
- 3か月超の場合は、3か月の間として見積もり調整が必要
- 正解
ウ「負ののれんは固定負債」
- 負ののれん(バーゲン・パーチェス)は、発生時に特別利益(負ののれん発生益)として一括計上される(企業会計基準第21号)
- 固定負債には計上されない
- ✗ 誤り
エ「持分法による投資損益の計上」
- 持分法は 連結子会社ではなく、関連会社に適用
- 連結子会社は完全に連結(100%or非支配株主持分)
- ✗ 誤り(混同)
正答:イ
誤答の落とし穴
- ア:非支配株主持分の表示位置(負債vs純資産)の誤解
- ウ:負ののれんの処理ルール(資産計上→利益化)の不理解
- エ:持分法が関連会社用であることを忘れ、連結子会社と混同
学習アドバイス 連結会計の基本ルール(100%連結、非支配持分、のれん)と、関連会社の持分法は異なる制度です。3か月ルールは実務上の便宜規定であり、試験でも頻出です。
第5問:会社法 計算書類の作成と開示
問題要旨 会社法における計算書類(決算書)の定義、連結義務、開示義務について選ぶ。
分類タグ
K2-会社法・計算書類 T1-正誤判定 L1-知識選択 Trap-開示範囲の誤解
正解: ウ
必要知識
- 会社法 計算書類の種類
解法の思考プロセス
会社法と金融商品取引法では異なる規定があります。
ア「計算書類の定義」
- 会社法上の計算書類 = 貸借対照表、損益計算書(必須)
- キャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書は任意開示(ただし大企業は金融商品取引法で義務)
- ✗ 誤り(キャッシュフロー計算書は会社法では必須ではない)
イ「子会社を有するすべての株式会社は連結義務」
- 連結は 大規模な株式会社に限定(法律で一定規模以上)
- すべての株式会社に連結義務があるわけではない
- ✗ 誤り
ウ「すべての株式会社は計算書類を作成」
- ✓ 会社法435条:各事業年度につき、取締役が計算書類を作成することが義務
- 規模や形態による例外はない(ただし開示義務は規模で異なる)
- 正解
エ「定時株主総会終結後、定款で定めれば公告」
- 会社法440条:公告は 定時株主総会終結後
- ただし、すべての株式会社に公告義務があるわけではない(大規模会社が対象)
- 「定款で定めれば」という条件付けが曖昧 → ✗ 誤り
正答:ウ
誤答の落とし穴
- ア:金融商品取引法との混同(CF計算書は有価証券報告書で必須)
- イ:連結の適用範囲を過度に広く解釈
- エ:公告義務の主体要件(規模基準)を見落とし
学習アドバイス 会社法と金融商品取引法は異なる法体系です。一般的な「上場企業」は両法の適用を受けるため、ともに計算書類(拡大版)を作成します。非上場企業は会社法のみで、計算書類は貸借対照表と損益計算書が基本です。
第6問:法人税計算(益金不算入と損金不算入)
問題要旨 税引前当期純利益800,000円に対し、受取配当金益金不算入(24,000円)、交際費損金不算入(36,000円)、前期の貸倒引当金が当期に損金算入された場合の法人税を計算する。
分類タグ
K3-法人税計算 T3-計算実行 L3-多段階計算 Trap-益金不算入と損金不算入の混同
正解: イ(160,400円)
必要知識
- 益金と損金の基本概念
解法の思考プロセス
この問題は、会計利益から税務調整をして課税所得を作るだけです。
- 会計上の税引前当期純利益
800,000円
- 税務調整
- 受取配当金の益金不算入:
△24,000円 - 交際費の損金不算入:
+36,000円 - 前期に損金不算入だった貸倒引当金が当期に損金算入:
△10,000円
- 受取配当金の益金不算入:
- 課税所得
800,000 - 24,000 + 36,000 - 10,000 = 802,000円
- 法人税
802,000 × 20% = 160,400円
正答:イ(160,400円)
誤答の落とし穴
- ア 158,000円: 損金算入が認められた
10,000円を落とした場合 - ウ 162,000円: 益金不算入や損金不算入の符号を取り違えた場合
- エ 164,400円: 貸倒引当金を二重に加算した場合
学習アドバイス
法人税計算では、益金不算入は引く、損金不算入は足すと機械的に置くと崩れにくいです。引当金のように前期と当期で税務上の扱いがずれる項目は、今回の課税所得を増やすのか減らすのか だけを見て判断しましょう。
第7問:剰余金の配当と処分
問題要旨 会社法における配当の回数、配当原資、中間配当の決定機関、利益準備金の積立場面を問う。
分類タグ
K2-剰余金と配当 T1-正誤判定 L1-知識選択 Trap-配当限度額と引当金ルール
正解: ウ
必要知識
- 会社法 剰余金配当ルール
解法の思考プロセス
この問題は、**「配当の回数」「配当原資」「中間配当の決定機関」「利益準備金の積立場面」**を切り分けると判断しやすくなります。
ア「1事業年度につき最大2回」
- 誤りです。
中間配当 + 期末配当だけに限定されず、剰余金の配当は要件を満たせば複数回行えます。
イ「資本剰余金を原資とする配当はできない」
- 誤りです。
- 配当原資は利益剰余金だけでなく、その他資本剰余金を使うこともあります。
ウ「取締役会設置会社は、定款で定めれば取締役会決議で中間配当できる」
- 正しいです。
- ここは会社法の定番論点で、定款の定めがあるかが判定ポイントです。
エ「役員賞与を支払うとき、10分の1を利益準備金に積み立てる」
- 誤りです。
- 利益準備金の積立は、剰余金の配当に伴うルールであって、役員賞与の支払そのものとは結び付きません。
正答:ウ
誤答の落とし穴
- ア:
中間配当という言葉から、配当回数全体にも上限があると早合点する - イ: 配当原資を利益剰余金だけだと思い込む
- エ: 利益準備金の積立場面を役員賞与と混同する
学習アドバイス
配当論点は、**「誰が決めるか」と「何を原資にするか」**で覚えると整理しやすいです。中間配当は 定款の定めがあれば取締役会、原資は 利益剰余金だけに限られない と押さえておくと選択肢を切りやすくなります。
第8問:貸借対照表の資産分類
問題要旨
流動資産・固定資産、流動負債・固定負債の分類について、営業循環基準 と 1年基準 の優先関係を問う。
分類タグ
K2-財務諸表表示 T1-正誤判定 L1-知識選択 Trap-例外的な分類基準
正解: ア
必要知識
- 流動・固定資産の定義
解法の思考プロセス
この問題では、先に営業循環基準、次に1年基準の順で判定します。
ア「売掛金は、回収期間の長短にかかわらず流動資産」
- 正しいです。
- 売掛金は通常の営業取引から生じる債権なので、営業循環基準で流動資産に分類します。
- ここでは
1年超かどうかよりも、営業債権であることが優先されます。
イ「株式は保有目的にかかわらず流動資産」
- 誤りです。
- 売買目的有価証券は流動資産ですが、関係会社株式や投資有価証券は固定資産です。
ウ「棚卸資産は1年以内なら流動、1年超なら固定」
- 誤りです。
- 棚卸資産も営業循環過程にある資産なので、通常は流動資産です。
エ「長期借入金は1年以内返済になっても固定負債」
- 誤りです。
- 決算日後1年以内に返済期限が来るものは、1年内返済予定の長期借入金として流動負債に振り替えます。
正答:ア
誤答の落とし穴
- イ: 有価証券の保有目的別分類を忘れる
- ウ: 棚卸資産にも1年基準をそのまま当てはめてしまう
- エ: 1年以内返済予定債務への振替を見落とす
学習アドバイス
分類問題では、営業取引から生じたものは営業循環基準を優先すると覚えると強いです。売掛金・買掛金・棚卸資産 はまず営業循環で見る、借入金は1年基準で見る、という切り分けが本番で効きます。
第9問:キャッシュ・フロー計算書の表示方法
問題要旨 CF計算書の間接法、資金範囲、支払利息の区分、有形固定資産売却の分類について選ぶ。
分類タグ
K2-CF計算書 T1-正誤判定 L1-知識選択 Trap-棚卸資産変動の方向性
正解: ウ
必要知識
- 間接法の調整項目
解法の思考プロセス
CF計算書は、営業・投資・財務の3区分と、資金の範囲を落ち着いて切る問題です。
ア「棚卸資産の増加額は営業CFの増加要因」
- 誤りです。
- 棚卸資産の増加は、現金が棚卸資産に寝ている状態なので、営業CFの減少要因です。
イ「資金の範囲に定期預金は含まれない」
- 誤りです。
資金 = 現金及び現金同等物なので、満期が短く換金性が高い定期預金は含まれます。- 一律に「含まれない」とは言えません。
ウ「支払利息は営業活動表示と財務活動表示の2つが認められている」
- 正しいです。
- この論点は、支払利息は表示方法を選択できるという知識を問っています。
エ「固定資産売却収入は財務活動CF」
- 誤りです。
- 固定資産の取得・売却は、投資活動CFに入ります。
正答:ウ
誤答の落とし穴
- ア: 棚卸資産・売上債権・仕入債務の増減方向を逆に覚える
- イ:
定期預金という言葉だけで一律に除外してしまう - エ: 固定資産売却を
資金調達と見て財務活動に入れてしまう
学習アドバイス CF計算書は、営業CFの調整項目と3区分の整理を分けて覚えると安定します。棚卸資産増加は営業CFマイナス、固定資産売却は投資CF、支払利息は表示方法に論点がある、と役割ごとに整理しましょう。
第10問:平均法・度外視法による月末仕掛品原価
問題要旨 プロセスコスティングで、材料は工程始点投入、正常減損は工程終点発生とし、平均法・度外視法で月末仕掛品原価を求める。
分類タグ
K3-プロセスコスティング T3-計算実行 L3-多段階計算 Trap-減損配分法
正解: ア(70,400円)
必要知識
- 度外視法と減損
解法の思考プロセス
この問題の肝は、正常減損が工程終点で発生しているので、単価計算の分母に正常減損分も入ることです。
1. 換算量を出す
材料は工程始点で100%投入、正常減損は工程終点で発生します。
| 区分 | 直接材料費 | 加工費 |
|---|---|---|
| 完成品 300kg | 300 | 300 |
| 正常減損 100kg | 100 | 100 |
| 月末仕掛品 200kg(50%) | 200 | 100 |
| 合計換算量 | 600 | 500 |
2. 1換算量当たり原価を出す
- 直接材料費:
150,000 ÷ 600 = 250円 - 加工費:
102,000 ÷ 500 = 204円
3. 月末仕掛品原価を計算する
直接材料費 = 200 × 250 = 50,000円
加工費 = 200 × 50% × 204 = 20,400円
合計 = 70,400円正答:ア(70,400円)
誤答の落とし穴
- イ 81,000円: 正常減損の扱いか、加工費の換算量を取り違えた場合
- ウ 85,500円: 正常減損分を分母から落としてしまった場合
- エ 108,000円: 月末仕掛品を100%完成とみなした場合
学習アドバイス
正常減損の問題では、**「どこで減損が起きるか」**を先に見てください。工程終点なら、その減損品は材料も加工費もそこまで投入済みです。ここを落とすと、今回のように 85,500円 へずれてしまいます。
第11問:設備投資と長期借入金返済が財務比率に及ぼす影響
問題要旨 余剰現金を設備購入(D案)と長期借入金返済(E案)に充当した場合、固定長期適合率、自己資本比率、総資産、流動比率の変化を判定。
分類タグ
K3-財務分析 T4-条件整理と因果推論 L2-複数指標の比較判定 Trap-個別指標の動きの誤推測
正解: イ
必要知識
解法の思考プロセス
現金使用による資産構成の変化を追跡します。
前提条件(仮設定)
- 設備購入は固定資産増加 → 総資産不変(現金減 = 設備増)
- 借入金返済は負債減 → 総資産不変(現金減 = 負債減)
各選択肢の分析
ア「固定長期適合率(D案悪化、E案改善)」
固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (自己資本 + 長期負債)
- D案(設備購入):
- 分子(固定資産)↑
- 分母(自己資本+長期負債)不変
- 結果:比率 ↑(悪化) ✓
- E案(借入金返済):
- 分子(固定資産)不変
- 分母(長期負債)↓
- 結果:比率 ↑(悪化) ✗(改善ではなく悪化)
選択肢ア は誤り
イ「自己資本比率(D案不変、E案改善)」
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産
- D案(設備購入):
- 分子(自己資本)不変
- 分母(総資産)不変(現金 → 設備への振替)
- 結果:比率 不変 ✓
- E案(借入金返済):
- 分子(自己資本)不変
- 分母(総資産)↓(現金減少)
- 結果:比率 ↑(改善) ✓
選択肢イ は 正解
ウ「総資産(D案、E案ともに不変)」
- D案:現金 ↓ ⇄ 設備 ↑ → 総資産不変 ✓
- E案:現金 ↓ ⇄ 負債 ↓ → 総資産**↓(変化)** ✗
選択肢ウ は誤り
エ「流動比率(D案悪化、E案改善)」
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債
- D案(設備購入):
- 分子(流動資産)↓(現金減少)
- 分母(流動負債)不変
- 結果:比率 ↓(悪化) ✓
- E案(借入金返済、長期負債なら流動負債は不変):
- 返済対象が長期借入金の場合、流動負債に直接影響なし
- ただし、返済直前に「1年以内返済予定債務」に振り替わっていた場合は流動負債にカウント
- 一般的には、長期借入金の返済 → 流動負債不変
- 結果:分子(流動資産)↓ → 比率**↓(悪化)** ✗
選択肢エ は誤り
正答:イ
誤答の落とし穴
- ア:固定長期適合率の「改善」と「悪化」の判定ミス
- ウ:E案で総資産が減少することを見落とし
- エ:流動比率のE案での変化方向を誤推測
学習アドバイス 財務比率を判定する際、分子と分母がどう変わるかを個別に追跡してください。「設備購入 = 資産の組み替え」と「借入金返済 = 負債の減少」は異なる影響を生みます。
第12問-1:付加価値率
問題要旨
与えられた付加価値 12,000万円 と売上高 48,000万円 から、当社の付加価値率を求める。
分類タグ
K3-付加価値分析 T3-計算実行 L2-単純計算 Trap-付加価値の定義
正解: イ(25%)
必要知識
- 付加価値の概念
解法の思考プロセス
付加価値率は、そのまま 付加価値 ÷ 売上高 で計算します。
付加価値率 = 12,000 ÷ 48,000 × 100
= 25%正答:イ(25%)
誤答の落とし穴
- ア 20%: 分母・分子のどちらかを読み違えた場合
- ウ 65%: 人件費比率など別の指標と混同した場合
- エ 75%:
100% - 25%のように補数を取ってしまった場合
学習アドバイス この種の問題では、問題文がすでに付加価値額を与えているかを先に確認してください。与えられているなら、外部購入費用などを逆算する必要はありません。
第12問-2:生産性分析(労働生産性と設備生産性)
問題要旨
当社とF社の 労働生産性、設備生産性、労働装備率 を比較し、どちらの労働生産性が高く、その要因が何かを判断する。
分類タグ
K3-生産性分析 T4-因果推論 L2-複数指標の比較 Trap-労働装備率の誤解
正解: エ
必要知識
- 労働装備率 = 有形固定資産 ÷ 従業員数
解法の思考プロセス
この問題では、売上高ではなく付加価値を使う点が重要です。
労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数
設備生産性 = 付加価値 ÷ 有形固定資産
労働装備率 = 有形固定資産 ÷ 従業員数さらに、
労働生産性 = 設備生産性 × 労働装備率各社の計算
| 指標 | 当社 | F社 |
|---|---|---|
| 労働生産性 | 12,000 ÷ 20 = 600 | 22,400 ÷ 40 = 560 |
| 設備生産性 | 12,000 ÷ 16,000 = 0.75 | 22,400 ÷ 20,000 = 1.12 |
| 労働装備率 | 16,000 ÷ 20 = 800 | 20,000 ÷ 40 = 500 |
読み取り
- 労働生産性は 当社の方が高い(600 > 560)
- ただし設備生産性は F社の方が高い
- それでも当社の労働生産性が上回るのは、労働装備率が当社の方が高いからです。
したがって、正しいのは
- エ「労働生産性は当社が上回っているが、その要因は労働装備率がF社のそれを上回っていることにある」
です。
正答:エ
誤答の落とし穴
- ア・イ: 労働生産性の大小を逆に見てしまう
- ア・ウ: 売上高ベースで計算してしまい、付加価値ベースを落とす
- イ: 労働装備率の大小を逆に読む
学習アドバイス
生産性分析で迷ったら、**まず「何を分子に使うか」**を確認してください。診断士のこの論点では、付加価値 を使う問題と 売上高 を使う問題が混ざるので、ここを誤ると以後の比較が全部ずれます。
第13問:キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)
問題要旨 運転資金管理指標であるCCCについて、売上債権回転率、仕入債務回転期間、棚卸資産回転期間の影響を選ぶ。
分類タグ
K3-運転資金 T2-分類判断 L2-式の正確性判定 Trap-CCC計算式の方向性
正解: エ
必要知識
- CCC の定義と計算
解法の思考プロセス
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)は、運転資金の効率性を測定します。
CCC計算式
CCC = 棚卸資産回転期間(日数)+ 売上債権回転期間(日数)− 仕入債務回転期間(日数)
または
CCC = (棚卸資産回転日数)+(売掛金回転日数)-(買掛金回転日数)
各要素の役割
| 要素 | 日数増加時のCCC | 説明 |
|---|---|---|
| 棚卸資産回転日数 | CCC ↑(悪化) | 商品を長く保有 → 現金が長く拘束される |
| 売掛金回転日数 | CCC ↑(悪化) | 代金回収に時間 → 現金が長く拘束される |
| 買掛金回転日数 | CCC ↓(改善) | 仕入代金支払を遅延 → 現金の支出遅延 |
各選択肢の判定
ア「売上債権回転率が低くなると、CCCは短くなる」
- 売上債権回転率 ↓ = 回転日数 ↑
- 回転日数 ↑ → CCC ↑(長くなる)
- ✗ 誤り(方向反対)
イ「CCCはマイナスの値になることはない」
- CCC = 棚卸日数 + 売掛日数 − 買掛日数
- 買掛日数が大きい場合 → CCC マイナス可能
- 例:棚卸30日 + 売掛30日 − 買掛80日 = −20日
- ✗ 誤り(マイナス可能)
ウ「仕入債務回転期間が短くなると、CCCは短くなる」
- 仕入債務回転期間 ↓ = CCC式の減算項 ↓
- CCC = A + B − ↓C → CCC ↑(長くなる)
- ✗ 誤り(方向反対)
エ「棚卸資産回転期間が短くなると、CCCは短くなる」
- 棚卸資産回転期間 ↓ → CCC(A↓ + B − C)↓
- 結果:CCC 短くなる ✓
- 正解
正答:エ
誤答の落とし穴
- ア・ウ:回転率と回転日数の関係を逆にカウント
- イ:マイナスCCCの可能性を見落とし
- エ以外:CCC計算式の符号を誤解
学習アドバイス CCC式では、棚卸・売掛は加算(現金拘束)、買掛は減算(支払遅延)という符号を必ず意識してください。実務では「負のCCC = 優位」です。
第14問:配当計算
問題要旨 期首自己資本3,000万円、ROE 5%、配当性向40%、発行済株式数20万株のとき、1株当たり配当を計算。
分類タグ
K3-配当計算 T3-計算実行 L3-多段階計算 Trap-期首資本とROEの関係
正解: イ(3円)
必要知識
- EPS と配当の関係
解法の思考プロセス
配当 = 当期純利益 × 配当性向 1株当たり配当 = 配当 ÷ 発行済株式数
ステップ計算
- 当期純利益の計算
ROE = 当期純利益 ÷ 期首自己資本 × 100%
5% = 当期純利益 ÷ 3,000万円 当期純利益 = 3,000万円 × 5% = 150万円 - 配当金総額
配当金 = 当期純利益 × 配当性向 = 150万円 × 40% = 60万円 - 1株当たり配当
1株当たり配当 = 配当金 ÷ 発行済株式数 = 60万円 ÷ 20万株 = 3円/株
正答:イ(3円)
誤答の落とし穴
- ア 2円:配当性向を誤適用した場合
- ウ 4円:計算誤りまたは株式数の誤解
- エ 5円:ROEをそのまま使用した場合
学習アドバイス ROEと配当性向は独立した指標です。ROE は利益率、配当性向は利益の配当充当比率です。両者を乗じて「総合的な株主還元率」を計算することもあります。
第15問-1:MM理論(税金なし)と資本構成
問題要旨
Y社が全額自己資本から 負債:自己資本 = 1:1 へ資本構成を変えたとき、税金なしのもとでROEがどうなるかを計算する。
分類タグ
K3-MM理論 T3-計算実行 L3-多段階計算 Trap-ROEの計算ロジック
正解: ウ(17%)
必要知識
- レバレッジ効果と資本構成
解法の思考プロセス
- 営業利益を出す
- 総資本
10億円 - 総資本営業利益率
10% - 営業利益:
10億円 × 10% = 1億円
- 総資本
- 変更後の資本構成
- 負債
5億円 - 自己資本
5億円
- 負債
- 支払利息を出す
5億円 × 3% = 0.15億円
- 税金なしなので利益はそのまま
- 当期利益:
1億円 - 0.15億円 = 0.85億円
- 当期利益:
- ROEを計算する
0.85億円 ÷ 5億円 = 17%
正答:ウ(17%)
別解として、MM理論の式
ROE = 総資本営業利益率 + (総資本営業利益率 - 負債利子率)× D/Eに代入しても、
10% + (10% - 3%) × 1 = 17%となります。
誤答の落とし穴
- ア 13%: 利子率の引き方を誤った場合
- イ 13.5%: 分母の自己資本を10億円のまま使った場合
- エ 17.5%: 利息額や比率変換を雑に処理した場合
学習アドバイス MM理論でROEを問われたら、**「営業利益 → 利息控除 → 自己資本で割る」**の順で必ず一度は手計算してください。式だけ暗記していると、D/E の扱いで崩れやすいです。
第15問-2:MM理論(法人税あり)と企業価値の変化
問題要旨 同じY社が資本構成を1:1に変更した場合、法人税20%が存在するもとで企業価値がどう変わるか。
分類タグ
K3-MM理論 T3-計算実行 L3-多段階計算 Trap-節税効果の計算
正解:イ(企業価値が1億円増加)
必要知識
- 節税効果(Tax Shield)
解法の思考プロセス
MM理論の第2命題(法人税考慮)では、企業価値が増加します。
節税効果の計算
法人税が存在する場合、利息の支払により節税効果が生じます。
年間節税効果 = 支払利息 × 法人税率
= (負債 × 利子率)× 法人税率
= (5億円 × 3%)× 20%
= 0.15億円 × 20%
= 0.03億円(300万円)永続的節税効果(企業価値増加分)
負債が永続的に存在すると仮定した場合:
企業価値の増加 = 支払利息 × 法人税率 ÷ 利子率
= (負債 × 利子率)× 法人税率 ÷ 利子率
= 負債 × 法人税率
= 5億円 × 20%
= 1億円正答:イ(企業価値が1億円増加)
検証
変更前後の企業価値:
- 変更前(全額自己資本):企業営業利益の現在価値
- 変更後(1:1ミックス):上記 + 節税効果
企業価値増加 = 負債額 × 税率 = 5億円 × 20% = 1億円 ✓正答:イ
誤答の落とし穴
- ア「1億円減少」:節税効果の方向を反対に理解
- ウ「4億円減少」:計算誤りまたは負債全額で計算
- エ「4億円増加」:負債全額に税率を乗じた誤り
学習アドバイス MM理論では、法人税があると負債が有利です。節税効果 = 支払利息が節税できる額です。永続的にその効果が続くと仮定すると、企業価値増加 = 負債 × 税率 となります。
第16問:意思決定会計用語(機会原価と埋没原価)
問題要旨 製造原価100万円の機械をG社(120万円)かH社(130万円)に販売する場合の空欄A〜C(機会原価、埋没原価、関連原価)を選ぶ。
分類タグ
K1-意思決定用語 T2-分類判断 L1-知識選択 Trap-原価分類の混同
正解:イ
必要知識
- 機会原価と埋没原価
解法の思考プロセス
状況分析
- G社購入オプション:120万円
- H社購入オプション:130万円
- どちらかを選ぶと他方を失う → 機会がある(選択的)
A:「G社に販売時は130万円、H社に販売時は120万円」
これは「一方を選ぶと失う他方のメリット」→ 機会原価
- G社を選べば → H社からの利益130万円を失う(機会原価 = 130万円)
- H社を選べば → G社からの利益120万円を失う(機会原価 = 120万円)
A = 機会原価 ✓
B:「100万円の支出原価は変化しない」
過去に支出した100万円は、今後の意思決定に影響しない → 埋没原価
B = 埋没原価 ✓
C:「A(機会原価)はどちらを選ぶかで変化する」
意思決定では、変化する原価のみが重要 → 関連原価(Relevant Cost)
C = 関連原価 ✓
選択肢確認
- ア:機会原価、固定原価、変動原価(誤り:100万円の性質が「埋没」)
- イ:機会原価、埋没原価、関連原価(✓ 正解)
- ウ:限界原価、固定原価、変動原価(誤り)
- エ:限界原価、埋没原価、関連原価(誤り:「機会原価」が正しい)
正答:イ
誤答の落とし穴
- ア:100万円を「固定原価」と誤分類
- ウ:「機会原価」を「限界原価」と混同
- エ:「限界原価」は「機会原価」ではない
学習アドバイス 機会原価 = 次善の選択肢の利益(失われるメリット) 埋没原価 = 過去に支出し、戻らない原価(意思決定では無視) 関連原価 = 意思決定により変化する原価(重要な指標)
第17問:事業部別資本コストに基づく投資評価
問題要旨 H事業部とL事業部の投資案について、各事業部の資本コストとIRRを比べて採否を判断する。
分類タグ
K3-投資評価 T3-計算実行 L2-事業部別判定 Trap-WACC vs事業部別資本コストの使い分け
正解: ウ
必要知識
- IRR と資本コストの比較
解法の思考プロセス
投資判定は、全社WACCではなく、その案件に対応する事業部の資本コストで行います。
IRR > 資本コスト → 採択
IRR < 資本コスト → 棄却H案
- IRR:
10% - H事業部の資本コスト:
11% 10% < 11%なので 棄却
L案
- IRR:
7% - L事業部の資本コスト:
5% 7% > 5%なので 採択
したがって、
- ウ「H案は棄却され、L案は採択される」
が正しいです。
正答:ウ
誤答の落とし穴
- ア: 全社WACC
8%を使って両方棄却と見てしまう - イ: IRR がプラスなら採択と雑に判断する
- エ: H案とL案の資本コストを取り違える
学習アドバイス 多角化企業の投資評価では、平均値である全社WACCをそのまま使わないことが重要です。高リスク事業には高いハードルレート、低リスク事業には低いハードルレートを当てる、という発想を持っておきましょう。
第18問:ポートフォリオ理論と相関係数
問題要旨 2つのリスク資産からなるポートフォリオについて、リターン、リスク、相関係数の基本関係を問う。
分類タグ
K3-ポートフォリオ理論 T1-正誤判定 L1-知識選択 Trap-リスク計算式と相関係数の関係
正解: イ
必要知識
- リスク低減効果と相関係数
解法の思考プロセス
ア「リスクは各資産リスクの加重平均」
- 誤りです。
- ポートフォリオのリスクは、相関係数を含む分散の式で決まります。
イ「リターンは各資産リターンの加重平均」
- 正しいです。
- 期待リターンは 線形なので、加重平均で求めます。
ウ「相関係数が大きいほどリスク低減効果が大きい」
- 誤りです。
- 相関係数が 小さいほど 分散効果が働きやすくなります。
エ「安全資産とリスク資産のポートフォリオのリスクは、リスク資産比率に反比例する」
- 誤りです。
- 安全資産のリスクを0とすれば、ポートフォリオのリスクは リスク資産比率に比例します。
したがって、正しいのは イ です。
正答:イ
誤答の落とし穴
- ア:
リターンは加重平均をリスクも加重平均と取り違える - ウ: 相関係数と分散効果の方向を逆に覚える
- エ:
比例と反比例の日本語だけで引っかかる
学習アドバイス
ポートフォリオ理論では、リターンは単純、リスクは複雑と覚えると整理しやすいです。リターン = 加重平均、リスク = 相関係数次第 の2本柱で押さえましょう。
第19問:効率的市場仮説(セミストロング型)
問題要旨 セミストロング型の効率的市場仮説の定義について選ぶ。
分類タグ
K1-効率的市場仮説 T1-正誤判定 L1-知識選択 Trap-強型と弱型の混同
正解: イ
必要知識
- 3つの形態(弱型・セミストロング型・強型)
解法の思考プロセス
効率的市場仮説の3形態
| 形態 | 反映する情報 | インサイダー取引 | 技術的分析 |
|---|---|---|---|
| 弱型 | 過去の価格・取引量 | 可能 | 不可能 |
| セミストロング型 | 公に入手可能な情報 | 可能 | 不可能 |
| 強型 | 全情報(公開・非公開) | 不可能 | 不可能 |
各選択肢の検討
ア「インサイダー取引では過大リターンを獲得できない」
- これは 強型 の特徴
- セミストロング型では、インサイダー(非公開)情報で利益可能
- ✗ 誤り
イ「市場価格は公に入手可能な情報を反映する」
- ✓ セミストロング型の定義
- 公開情報はすべて価格に織り込まれている
- 正解
ウ「市場価格は規則的に変動する」
- ✗ 誤り
- 効率的市場では、価格はランダムウォーク(不規則)
- これは逆説的だが、規則を利用できない市場を指す
エ「すべての証券の将来の価格は確実に予測できる」
- ✗ 誤り
- 効率的市場では、将来価格は 予測不可能(サープライズあり)
- 完全予測できるなら、市場は効率的ではない
正答:イ
誤答の落とし穴
- ア:強型と混同(インサイダー取引は禁止だが、セミストロング型では利益可能)
- ウ:「規則的 = 予測可能」の誤解
- エ:「効率的 = 予測可能」の誤解(逆)
学習アドバイス セミストロング型は現実の市場に最も近いと考えられています。新聞に載った情報(公開)は既に価格に反映されていますが、内部情報(非公開)を知っていれば利益可能です。これが「インサイダー取引」禁止の根拠です。
第20問:割引キャッシュフロー(DCF)と株主価値
問題要旨 次期の予測データからフリーキャッシュフローを求め、成長率3%、要求収益率6%のもとで株主価値を計算する。
分類タグ
K3-DCF法 T3-計算実行 L3-永続成長モデル計算 Trap-FCF定義と成長率適用
正解: イ(30,000万円)
必要知識
- ゴードンの成長モデル
解法の思考プロセス
問題文は 次期の予測データ を与えているので、まず FCF1 を出します。
FCF1 = 税引後純利益 + 減価償却費 - 設備投資額 - 正味運転資本増加額
= 1,200 + 300 - 500 - 100
= 900万円A社には負債がないので、企業価値 = 株主価値です。
永続成長モデルより、
株主価値 = FCF1 ÷ (要求収益率 - 成長率)
= 900 ÷ (0.06 - 0.03)
= 900 ÷ 0.03
= 30,000万円正答:イ(30,000万円)
誤答の落とし穴
- ア 15,000万円: 分母を
0.06のままにした場合 - ウ 35,000万円:
FCF1に不要な増額をした場合 - エ 70,000万円: 成長率控除を落とした場合
学習アドバイス
DCFで 次期の予測データ と書かれていたら、すでに FCF1 が与えられていると考えるのが基本です。ここでさらに 1.03 を掛けると一段先へずれてしまいます。
第21問:サステナブル成長率
問題要旨 サステナブル成長率(持続可能な成長率)の定義・計算について選ぶ。ROEと配当性向が一定。
分類タグ
K3-成長率分析 T1-正誤判定 L1-知識選択 Trap-配当性向との関係
正解: エ
必要知識
- サステナブル成長率の定義
解法の思考プロセス
サステナブル成長率の定義
サステナブル成長率 = ROE × 内部留保率
= ROE × (1 − 配当性向)内部留保(利益に配当を引いた部分)がすべて再投資されると仮定した場合の理論的な成長率。
各選択肢の検討
ア「全額配当する場合、SGR = リスクフリー・レート」
- 全額配当 → 内部留保率 = 0% → SGR = 0%
- リスクフリー・レートは無関係
- ✗ 誤り
イ「SGR = ROE × 配当性向」
- ✗ 誤り(逆)
- SGR = ROE × 内部留保率 = ROE × (1 − 配当性向)
ウ「事業環境に左右されるが、内部留保率には左右されない」
- ✗ 誤り
- SGR は内部留保率に直接依存
- 配当を増やせば(内部留保↓)、成長率↓
エ「SGR は配当割引モデルにおける配当成長率として用いることができる」
- ✓ 正しい
- 配当割引モデル:株価 = D₁ ÷ (r − g)
- ここで g = SGR(長期の配当成長率)
- 正解
正答:エ
誤答の落とし穴
- ア:全額配当時の解釈誤り
- イ:配当性向と内部留保率の混同
- ウ:内部留保率の重要性を見落とし
学習アドバイス サステナブル成長率は、内部留保がすべて再投資されたときの理論的成長率です。配当を増やせば成長率は低下します。これは配当政策と企業成長のトレードオフを示唆しています。
第22問:市場リスクの分類
問題要旨 以下の4つのリスク(為替、信用、金利、流動性)のうち、「市場リスク」に該当するものを選ぶ。
分類タグ
K2-リスク分類 T2-分類判断 L1-知識選択 Trap-リスク種別の区別
正解: イ(aと c)
必要知識
- 市場リスク、信用リスク、流動性リスク
解法の思考プロセス
リスク分類の確認
| リスク種別 | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| 市場リスク | 市場価格の変動 | 為替、金利、株価 |
| 信用リスク | 債務不履行リスク | 貸付先破綻 |
| 流動性リスク | 売買が成立しないリスク | 取引相手不在 |
各選択肢の検討
a「為替レートの変動」
- ドル円相場の変動 → 市場リスク ✓
b「貸付先の財務悪化」
- 債務不履行、貸付金価値低下 → 信用リスク ✗
c「債券売却時の金利変動に伴う価格変動」
- 金利上昇 → 既発債の価格下落 → 市場リスク ✓
d「需給がマッチしないため売買が成立しない」
- 取引相手不在、取引量不足 → 流動性リスク ✗
正答:イ(aと c)
誤答の落とし穴
- ア(aと b):信用リスクを市場リスクと混同
- ウ(aと d):流動性リスクを市場リスクと混同
- エ(bと c):信用リスクを含める
- オ(bと d):市場リスクを見落とし
学習アドバイス 市場リスク = 市場価格の変動(為替、金利、株価など)。貸し手が債務者の経営悪化を心配する「信用リスク」とは異なります。
第23問:為替予約と直物相場の損益計算
問題要旨
3か月後に1万ドルを支払う企業が、131円/ドル の為替予約をしたとき、直物が 134円 と 125円 の場合に予約なしと比べて円支出がどう変わるかを求める。
分類タグ
K3-為替リスク管理 T3-計算実行 L3-シナリオ分析 Trap-予約と直物の損益方向
正解: イ
必要知識
- 為替予約と直物の比較
解法の思考プロセス
まず、予約をした場合の円支出は固定です。
131円 × 1万ドル = 131万円A: 3か月後の直物が134円の場合
- 予約なし:
134円 × 1万ドル = 134万円 - 予約あり:
131万円 - 差額:
131 - 134 = -3万円
つまり、3万円少なくなる。
B: 3か月後の直物が125円の場合
- 予約なし:
125円 × 1万ドル = 125万円 - 予約あり:
131万円 - 差額:
131 - 125 = 6万円
つまり、6万円多くなる。
したがって、
- A: 3万円少なくなる
- B: 6万円多くなる
を選ぶ イ が正解です。
正答:イ
誤答の落とし穴
- ア: AとBの方向を取り違える
- ウ・エ: 円高・円安の有利不利を曖昧にしたまま計算する
学習アドバイス 外貨を後で払う側は、円安になると不利、円高になると有利です。為替予約はその振れ幅を消す代わりに、円高になったときの有利さも放棄する取引だと整理すると迷いにくくなります。
年度総括
思考法の分布
| 思考法 | 問数 | 特徴 |
|---|---|---|
| T1(正誤判定) | 9問 | 定義理解、記述正確性の判定 |
| T2(分類判断) | 6問 | カテゴリ分け、該当性判定 |
| T3(計算実行) | 6問 | 数式適用、多段階計算 |
| T4(条件整理) | 2問 | 複数条件の整理、因果推論 |
傾向:定義知識と計算スキルが1:1で重要。判断思考も約26%を占める。
罠パターンの分布
| 罠パターン | 出現問 | 防御ポイント |
|---|---|---|
| 計算誤り | 1, 3, 6, 10, 14, 15-1, 15-2, 20, 23 | 式の正確性確認、丸め処理 |
| 逆向き理解 | 9, 13, 18, 19, 22 | 増加/減少、改善/悪化の方向性 |
| 概念混同 | 2, 4, 5, 7, 8, 16 | 類似用語の定義区別 |
| 条件見落とし | 11, 12-2, 17 | 問題文の細部確認 |
対策:毎回「方向性」と「定義」を確認。試験本番では選択肢を「なぜそれが誤りか」という視点で検討。
Tier別学習優先度
Tier 1(必須・全員合格ライン)
- 第1-10問:基本的な簿記、原価計算、財務諸表知識
- 学習時間:全体の40%
- 確保すべき正答率:90%以上
Tier 2(標準・上位合格ライン)
- 第11-17問:財務分析、意思決定会計、投資評価
- 学習時間:全体の40%
- 確保すべき正答率:70-80%
Tier 3(発展・満点狙い)
- 第18-23問:ポートフォリオ理論、為替、効率的市場仮説
- 学習時間:全体の20%
- 確保すべき正答率:60%以上(完璧を目指さない)
本番セルフチェック5項目
試験開始時に以下を確認:
- 計算問題の単位確認:「万円」「個」「%」など、単位を最初に統一
- 定義の最新化:収益認識基準(IFRS15号)、計算書類(会社法改正)など最新基準を念頭に
- 方向性の再確認:「増加 = 良い」「減少 = 悪い」の判定が問題ごとに異なることを警戒
- 選択肢の「絶対表現」に注意:「常に」「すべて」「必ず」など絶対的表現は誤りが多い
- 時間配分:T3(計算)に5分以上かけず、わからなければ次問へ(回答時間目安:2分30秒/問)
分類タグの凡例
知識種類(K)
| タグ | 定義 | 試験での扱い |
|---|---|---|
| K1 | 定義・用語 | 教科書的知識、記述の正確性が問われる |
| K2 | 分類・表示 | カテゴリ分け、財務諸表上の扱い |
| K3 | 数式・公式 | 計算適用、多段階計算が必要 |
| K4 | 手続・手順 | 会計処理の順序、プロセス |
| K5 | 制度・基準 | 会社法、会計基準、税法ルール |
思考法(T)
| タグ | 定義 | 特徴 |
|---|---|---|
| T1 | 正誤判定 | 記述が正確か判定。選択肢の細部確認が重要 |
| T2 | 分類判断 | 複数カテゴリのどれに該当するか判定 |
| T3 | 計算実行 | 公式を適用し、正確に計算する必要がある |
| T4 | 条件整理 | 複数条件から因果関係を推論 |
| T5 | 穴埋め推論 | 空欄を埋める問題。前後の文脈から推理 |
形式層(L)
| タグ | 問数 | 特徴 |
|---|---|---|
| L1 | 9問 | 知識選択・定義判定。教科書復習で対応 |
| L2 | 8問 | 複数情報の組み合わせ。判断力が問われる |
| L3 | 6問 | 計算過程が複雑。手順を正確に追跡 |
| L4 | — | 本試験には出現しない(高度な分析) |
誤答パターン(Trap)
| 分類 | 内容 | 防御策 |
|---|---|---|
| Trap-A | 計算誤り(単位、丸め、順序) | 最初に単位を統一。式を二重確認 |
| Trap-B | 方向性の逆転(増加↔減少) | CF、比率の変化方向を毎回確認 |
| Trap-C | 概念混同(類似用語) | 定義表を試験直前に確認 |
| Trap-D | 条件見落とし(but、ただし) | 問題文の「例外」を枠で囲む習慣 |
| Trap-E | 選択肢の「絶対表現」 | 「常に」「必ず」は高確率で誤り |
分類タグ凡例
| タグ | 意味 |
|---|---|
| K1 定義・用語 | 用語の正確な意味を問う |
| K2 グラフ形状 | グラフの読み取り・形状判断 |
| K3 数式・公式 | 公式の適用・計算 |
| K4 因果メカニズム | 原因→結果の論理連鎖 |
| K5 制度・データ | 法制度・統計データの知識 |
| T1 正誤判定 | 選択肢の正誤を判定 |
| T2 グラフ読解 | グラフから情報を読み取る |
| T3 計算実行 | 数値計算を実行 |
| T4 因果推論 | 因果関係を推論 |
| T5 場合分け | 条件による場合分け |
| L1 基礎 | 基本知識で解ける |
| L2 応用 | 知識の組み合わせが必要 |
| L3 高度 | 複数ステップの推論が必要 |
| L4 最難度 | 高度な分析力が必要 |
| Trap 逆方向誘発 | 因果の向きを逆に誘導 |
| Trap 混同誘発 | 類似概念を混同させる |
| Trap 部分正解 | 部分的に正しい選択肢で誘導 |
| Trap 条件すり替え | 前提条件を変えて誘導 |
| Trap 計算ミス | 計算過程での間違いを誘発 |
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他年度の過去問解説
(リンク構造に応じて、他年度(R4, R6等)への誘導を追加)
最終更新:2024年12月 | 確認日時:令和6年度対応版
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