資産会計
棚卸資産、固定資産、減価償却、減損の考え方を整理する
このページの役割
このページは、企業会計の根幹である資産会計を、受験生の視点から整理し直すページです。棚卸資産をいつどう見直すか、固定資産の取得から償却・処分までの全プロセスを、「なぜそう処理するのか」という因果関係を通じて理解することを目指します。試験では毎年この分野から得点差が大きく出ます。
このページを読む前に
企業会計の基礎で会計の原則と財務諸表の全体像を押さえておくと、このページの各論点がどこに位置付けられるかが分かりやすくなります。特に「取得原価主義」と「保守主義」という考え方が基盤となります。
まずイメージをつかむ
企業の資産には 2 つの「見直すタイミング」があります。第 1 は棚卸資産の期末評価です。棚卸資産(商品や製品)は、仕入れたときの価格で記録しますが、期末には市場価格が下がっていないか確認して、必要に応じて評価を切り下げます。第 2 は固定資産の期末処理です。固定資産(建物、機械など)は、購入したときの価格を使用期間に按分する「減価償却」と、想定外に価値が落ちた場合の「減損会計」を通じて、帳簿価額を適切に保ちます。
この 2 つの処理は一見異なりますが、共通の想い——「企業の実態を正しく財務諸表に反映させる」——に支配されています。以下、棚卸資産から固定資産へと進み、最後に有価証券やリース、国庫補助金など、より細かい資産処理を見ていきます。
試験で何が問われるか
- 棚卸資産の評価方法(先入先出法と移動平均法)の使い分けと計算
- 低価法がなぜ「強制適用」なのか、その考え方
- 減価償却の定額法と定率法の比較、月割計算
- 減損会計の 3 段階(兆候→認識→測定)と回収可能価額の求め方
- 有価証券の 4 分類と評価方法の対応
- リース会計におけるファイナンスリースとオペレーティングリースの区別
- 圧縮記帳と資産除去債務の仕訳
棚卸資産の評価 ── 期末にいつ、何を見直すか
棚卸資産評価のポイント
棚卸資産の評価は、取得原価の確定と期末評価の見直しの 2 ステップです。はじめに、期中の仕入れを取得方法(先入先出法、移動平均法など)で記録します。次に、決算時には低価法という切下げルールを強制適用し、市場価格が下落していれば評価額を引き下げます。
取得方法と低価法を混同する受験生が多いので注意が必要です。取得方法は「期中の在庫をどう記録するか」(FIFO なら古い順)、低価法は「期末に取得原価と市場価格を比べて、低い方を資産計上する」という別の判断です。
評価方法の仕組みと選択基準
棚卸資産の取得原価を確定する方法は、企業会計基準第 9 号では 4 種類が定められています(移動平均法・総平均法はともに「平均原価法」の下位区分)。
| 方法 | 計算方法 | 物価上昇時の影響 |
|---|---|---|
| 個別法 | 個々の商品を個別に取得原価で評価 | 個別に対応 |
| 先入先出法(FIFO) | 先に仕入れた商品から払い出す | 期末在庫↑、売上原価↓、利益↑ |
| 移動平均法 | 仕入るたびに加重平均単価を再計算 | 中間的な結果 |
| 総平均法 | 期間全体の加重平均単価で決算時に計算 | 中間的な結果 |
| 売価還元法 | 期末棚卸資産の売価合計に原価率を乗じて算出 | 小売業等で広く採用 |
補足:後入先出法(LIFO)は 2010 年に日本基準で廃止済みです(IFRS との国際的な調和のため)。また、最終仕入原価法は法人税法上の評価方法であり、企業会計基準第 9 号には含まれません。期末棚卸資産の大部分が最終仕入価格で取得されている場合など限定的な条件でのみ容認されます。
これらの方法が意味するところは、インフレーション下ではどの商品が期末在庫として残っているとみなすかによって、売上原価と利益が大きく変わる、ということです。FIFO は古い商品から売れたと考えるので、期末に残る在庫は新しい(高い価格)商品になり、売上原価は低くなって利益は高くなります。反対に移動平均法は毎回の平均で緩和されるため、中間的な結果になります。
低価法 ── なぜ必要か、どう計算するか
低価法は、期末に棚卸資産の取得原価と正味売却価額(実際に売れると見込まれる価額)を比べ、低い方を貸借対照表に計上するルールです。
正味売却価額は以下のように計算します。
たとえば、100 個の商品を 1 個当たり 1,000 円で仕入れた場合(取得原価 100,000 円)、期末の市場価格が 1 個当たり 800 円に下落していれば、正味売却価額は 80,000 円です。この場合、貸借対照表に計上する棚卸資産は 80,000 円となり、20,000 円の棚卸資産評価損を損益計算書に計上します。
低価法が「強制適用」される理由は、企業の保有資産を実現可能な価値で表示するという会計の保守主義から来ています。市場価格が下がっているのに簿価を維持すれば、資産が過大評価され、利益が過度に計上されてしまうためです。
棚卸減耗損と棚卸資産評価損の違い
試験で常に混同される 2 つの損失があります。
棚卸減耗損は、帳簿上の在庫数量と実地棚卸(実際に数えた)数量が合わないときに発生します。盗難、蒸発、破損などで、帳簿に記録された商品が物理的に減少した場合です。
棚卸資産評価損は、期末の市場価格が取得原価を下回った場合に発生します。商品の数は帳簿と合っていても、その価値が下がった場合の損失です。
つまり、棚卸減耗損は数量の差、評価損は単価の差です。出題では「帳簿 150 個、実地 140 個」と数字を示して棚卸減耗損を聞き、別の問題で「正味売却価額が取得原価を下回った」と評価損を聞く、というパターンが多く見られます。
先入先出法(FIFO)の計算手順
以下のデータで期末在庫と売上原価を求めます。
期首在庫:100個 × @100円 = 10,000円
仕入① :200個 × @110円 = 22,000円
仕入② :150個 × @120円 = 18,000円
当期販売数量:160個ステップ 1: 在庫数量を確認 期末在庫数量 = 100 + 200 + 150 − 160 = 290 個
ステップ 2: FIFO の考え方を適用 先に仕入れたものから払い出すので、売却された 160 個は期首 100 個と仕入① の 60 個。期末に残る 290 個は、仕入① の 140 個と仕入② の 150 個です。
ステップ 3: 期末在庫の取得原価を計算 期末在庫額 = (140 × 110) + (150 × 120) = 15,400 + 18,000 = 33,400 円
ステップ 4: 売上原価を計算 売上原価 = 期首在庫 + 当期仕入 − 期末在庫 = 10,000 + 40,000 − 33,400 = 16,600 円
移動平均法の計算手順
移動平均法は仕入のたびに平均単価を再計算するため、問題文の時系列を丁寧に追う必要があります。
期首在庫:100個 × @100円 = 10,000円
仕入① :200個 × @110円 = 22,000円
販売① :150個を売却
仕入② :150個 × @120円 = 18,000円仕入① 後の平均単価 (100 × 100 + 200 × 110) ÷ (100 + 200) = 32,000 ÷ 300 = @106.67 円
販売① 後の残存在庫 300 − 150 = 150 個 × @106.67 円
仕入② 後の平均単価 (150 × 106.67 + 150 × 120) ÷ (150 + 150) = (16,000 + 18,000) ÷ 300 = @113.33 円
移動平均法で最も多い誤りは、「期間全体の平均を一度だけ計算する」という総平均法との混同です。移動平均法では、毎回の仕入時点で新しい平均単価が生まれるため、問題文に「〇月△日に 150 個販売」と書かれたら、そこまでの仕入に基づいた平均単価を使わなければなりません。
減価償却 ── なぜ固定資産の価値を毎年配分するのか
減価償却の役割
建物や機械は購入したときの価格で一括費用化してはいけません。なぜなら、それらは複数の年度にわたって利益を生み出すからです。たとえば 600 万円の機械が 5 年間使えるなら、その価値を 5 年間に按分し、毎年 120 万円を費用(減価償却費)として計上する。これが費用収益対応の原則です。
減価償却を通じて、P/L には毎期の「使用した価値」が費用として計上され、B/S には「今後生み出す価値」が残存額として計上されます。この分離により、企業の真実の経営成績と財政状態が透明になります。
定額法と定率法の仕組み
減価償却の方法は 2 つに大別されます。
定額法は毎年同じ額を計上する最も単純な方法です。
取得原価 1,200 万円、耐用年数 6 年、残存価額 0 なら、毎年 200 万円を 6 年間計上します。
定率法(200% 定率法)は、毎年の期首帳簿価額に一定の償却率を掛ける方法です。初期の数年は多額を計上し、年数が経つにつれて計上額が減少します。
償却率は「定額法の償却率 × 200%」で計算されます。定額法が 6 年なら償却率は 1/6、200% 定率法では 2/6 ≈ 33% となります。
定額法と定率法のどちらを選ぶかは、その資産の利益生出パターンに依存します。機械のように初期に大きな生産性があり、年数とともに効率が落ちる場合は、定率法で早期に高い費用を計上するのが経営実態に合致します。一方、使用パターンが均等な資産(建物など)には定額法が適します。
期中取得の月割計算
試験ではほぼ必出です。4 月 1 日に機械を購入したなら、その年度は 12 か月ではなく、購入から決算日(3 月 31 日の場合は 12 か月)の間の月数で計算します。
取得原価 900 万円、耐用年数 5 年、定額法で 7 月 1 日取得、決算日 3 月 31 日の場合:
年間償却費 = 900 ÷ 5 = 180 万円 第 1 期(7 月〜3 月)= 180 × 9/12 = 135 万円
翌年度以降(第 2 期〜第 5 期)は 12 か月分の 180 万円を 4 年間計上し、第 6 期(4 月〜6 月)は残り 3 か月分の 45 万円を計上して償却完了です(合計 135 + 720 + 45 = 900 万円)。
減損会計 ── 想定外に価値が落ちたとき
減損とは何か、なぜ必要か
企業が保有する固定資産は、通常の減価償却で価値が低下します。しかし、想定外の事象——工場の経営悪化、技術の陳腐化、自然災害による物理的劣化——により、突然に大きく価値が落ちることがあります。この場合、減価償却だけでは企業の実態を適切に報告できません。減損会計は、この「想定外の価値低下」を捉え、一度に帳簿価額を切り下げるメカニズムです。
減損の 3 段階プロセス
減損会計は 3 つの判定を経ます。
①兆候の把握:
まず、減損の可能性を示す事象があるかを確認します。試験で頻出の兆候は:
- 継続的な営業赤字(その資産が生み出す利益がマイナス)
- 市場価格の著しい下落
- 技術的陳腐化
- 法制度の変更による利用不可
これらの兆候がなければ、次のステップに進む必要はありません。
②認識の判定:
兆候がある場合、減損を認識すべきか判定します。判定基準は、その資産が生み出す割引前の将来キャッシュフローと帳簿価額を比較することです。
ここで注意すべきは「割引前」という点です。金利による割引を含めない、単純な将来キャッシュフロー合計を用います。なぜなら、割引は損失額の測定時に初めて登場するからです。
③測定(損失額の計算):
減損損失 = 帳簿価額 − 回収可能価額
回収可能価額は、その資産が提供する価値を 2 つの方法で測り、高い方を選びます。
正味売却価額は、市場で売却した場合の期待価額から処分費用を引いたもの:
使用価値は、その資産を使用し続けた場合の将来キャッシュフロー現在価値(割引適用):
ここで は割引率(通常は加重平均資本コスト)です。
工場の帳簿価額が 5,000 万円で、割引前将来 CF 合計が 4,500 万円の場合、4,500 < 5,000 なので減損を認識します。次に、正味売却価額 3,500 万円と使用価値 3,800 万円を比べ、高い 3,800 万円が回収可能価額となります。減損損失 = 5,000 − 3,800 = 1,200 万円を計上します。
日本基準と IFRS の違い: 日本基準では減損損失の戻入れは認めません。一度減損を認識したら、以降はその減損後の帳簿価額を減価償却の基礎とします。IFRS では条件によって戻入れが可能です。
有価証券の 4 分類と評価方法
有価証券をなぜ分類するか
企業が保有する有価証券(株式、債券)は、企業の目的や状況によって異なる会計処理が必要です。売却予定の株式と、永遠に保有する子会社株式では、会計的な扱いが全く異なります。有価証券の 4 分類は、「どの利益(P/L)または純資産の部に評価差額を計上するか」を明確にするためのフレームワークです。
4 分類と評価方法
| 分類 | 保有目的 | B/S 評価 | 評価差額の計上先 |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 短期売却目的 | 時価 | 当期損益(P/L 営業外) |
| 満期保有目的の債券 | 満期まで保有予定 | 償却原価 | 利息として各期配分 |
| 子会社・関連会社株式 | 支配・影響目的 | 取得原価 | なし(個別財務諸表) |
| その他有価証券 | 上記以外 | 時価 | 純資産の部(その他有価証券評価差額金) |
各分類の意図を理解することが重要です。
売買目的有価証券は、決算のたびに時価で再評価し、評価益・評価損を当期損益に計上します。短期で売買する資産であり、市場価格の変動を即座に利益に反映させるのが趣旨です。
満期保有目的の債券は、償却原価法を適用します。取得時の実効金利に基づいて利息を計上し、購入時のプレミアム(割高)やディスカウント(割安)を償却期間で調整します。結果として、毎期計上する「利息」には、実際の利息受取と償却額の合計が含まれます。
子会社・関連会社株式は、個別財務諸表では取得原価で評価します。支配や影響という経営目的が評価方法を決めるため、市場価格の変動は無視します。(連結財務諸表では「のれん」を含め異なる処理が行われます)
その他有価証券は、時価で評価しますが、評価差額は純資産の部に計上され、当期損益には含まれません。つまり、売却するまでは利益に影響しない「含み益・含み損」として処理されます。
償却原価法の仕組み
満期保有目的の債券に適用される償却原価法は、試験の定番論点です。
購入時に債券を額面より高く買った場合(割高購入)を想定します。額面 100 万円、利息率 3% の債券を 105 万円で購入し、3 年後に償還される場合:
| 年度 | 期首帳簿価額 | 利息受取 | 償却額 | 期末帳簿価額 |
|---|---|---|---|---|
| 第 1 期 | 105.00 | 3.00 | 1.67 | 103.33 |
| 第 2 期 | 103.33 | 3.00 | 1.67 | 101.66 |
| 第 3 期 | 101.66 | 3.00 | 1.66 | 100.00 |
利息受取は毎年 3 万円(額面 100 × 3%)で固定ですが、償却額(購入時のプレミアムの配分)は毎期均等(定額法)です。この処理により、3 年後に帳簿価額は確実に額面 100 万円に収束します。
無形固定資産と償却
無形固定資産の特徴と償却方法
無形固定資産(のれん、特許権、ソフトウェアなど)は、有形固定資産と同様に減価償却の対象ですが、償却期間が法定されている点が大きく異なります。
| 項目 | 定義 | 償却方法 | 償却期間 |
|---|---|---|---|
| のれん | 企業買収時に支払額が時価純資産を超える部分 | 定額法 | 20 年以内 |
| 特許権 | 特許が有効期間を持つ知的財産権 | 定額法 | 特許期間(最大 20 年) |
| ソフトウェア(自社利用) | 企業が自社で使うシステム | 定額法 | 5 年以内 |
| ソフトウェア(市場販売目的) | 販売用製品としてのソフトウェア | 見込販売数量基準等 | 3 年以内 |
のれんは有形資産と違い、物理的な価値の低下がないため、定額法で一定期間で償却することになっています。特許権は法定されている有効期間で償却します。ソフトウェアは自社利用と販売目的で扱いが分かれ、販売目的の場合はより短期間で償却されます。
リース会計 ── 資産の使用権をどう扱うか
ファイナンスリースとオペレーティングリースの区別
リースは、企業が資産を「所有する」のではなく「利用する」契約です。会計では、リースが「実質的に購入と同じか」によって処理が変わります。
ファイナンスリースは、リース契約がほぼ購入と同様の性質を持つ場合です。判定基準:
- リース期間が耐用年数の 75% 以上(経済的耐用年数基準)
- リース料総額の現在価値が見積現金購入価額の概ね 90% 以上(現在価値基準)
- リース期間終了後に所有権が移転
- 所有権移転リース、バイアウトオプション付きリース
この場合、企業は資産を「購入した」と同様に処理します。B/S に「リース資産」として計上し、毎期減価償却費を計上します。
オペレーティングリースは、リース期間が短く、リース終了後に資産が返却される場合です。この場合、リース料金をそのまま費用(営業外費用など)として計上し、B/S には資産として計上しません。
ファイナンスリースの仕訳パターン
リース資産 800 万円、リース期間 5 年、リース料金年 200 万円の場合:
開始時: (借)リース資産 800 /(貸)リース債務 800
毎期(定額法で減価償却): (借)減価償却費 160 /(貸)減価償却累計額 160
毎年のリース料支払い: (借)リース債務 200 /(貸)現金 200
圧縮記帳と資産除去債務
補助金会計 ── 負債性補助金と非負債性補助金
補助金の問題では、まず 返還義務が残っているか を見ます。ここを見誤ると、負債計上すべきものを収益計上したり、その逆をしてしまいます。
| 区分 | 典型場面 | 基本的な考え方 |
|---|---|---|
| 負債性補助金 | 一定の条件を満たせないと返還義務が残る補助金 | まだ自由に使える利益ではないため、前受金など負債として捉える |
| 非負債性補助金 | 返還義務がなく、受領が確定している補助金 | 企業に帰属する利益として収益計上を検討する |
返還義務の有無で処理が分かれる理由
会計の基本は、「まだ自社のものと確定していない金額を利益にしない」ことです。補助金に達成条件や返還条件が付いているなら、その時点では企業が自由に使える利益とは言えません。したがって、まずは負債として扱うのが自然です。
一方で、補助金の受給が確定し、返還義務がないなら、その金額は企業に帰属する経済的便益です。ここでは収益として処理する発想が出てきます。
資産取得補助金では圧縮記帳もセットで問われる
診断士試験では、固定資産取得のための補助金について、次の2段階で考えると整理しやすくなります。
- 補助金そのものの性質:返還義務があるか、ないか
- 取得資産への反映方法:収益計上だけで終えるか、圧縮記帳まで行うか
つまり、補助金問題は「補助金の性質」と「固定資産の表示」の両方を見る論点です。圧縮記帳だけ暗記すると、条件付き補助金の設問で崩れやすくなります。
圧縮記帳 ── 国庫補助金を受けた場合の処理
企業が国庫補助金(または特定の寄付金)を受けて固定資産を取得した場合、圧縮記帳という特殊な処理が認められています。
通常:補助金 1,000 万円 + 自己資金 4,000 万円 = 資産 5,000 万円を計上し、補助金は当期収益として P/L に計上します。
圧縮記帳適用時(直接減額方式):補助金 1,000 万円を「国庫補助金受贈益」として P/L に計上する一方、同額を「固定資産圧縮損」として P/L 特別損失に計上し、固定資産の帳簿価額を直接 4,000 万円に圧縮します。結果として両者が相殺され、課税所得は実質的に増加しません。翌期以降は圧縮後の 4,000 万円を基礎に減価償却を行うため、補助金分の課税が繰り延べられます。
仕訳(直接減額方式): (借)現金 1,000 /(貸)国庫補助金受贈益 1,000 ← 補助金受取時 (借)機械装置 5,000 /(貸)現金 5,000 ← 固定資産取得時 (借)固定資産圧縮損 1,000 /(貸)機械装置 1,000 ← 圧縮記帳
資産除去債務 ── 将来の除去費用をいつ計上するか
土地を借りて工場を建設した場合、契約期間終了時に工場を取り壊して原状復帰しなければなりません。この「将来の除去費用」が資産除去債務です。
定義:法律や契約によって、固定資産を将来に除去することが確定している場合、その見積除去費用を債務として計上する義務のこと。
例:取得した借地上の建物、将来の撤去が確定している設備。
処理のポイント:
- 初期測定時に見積除去費用を現在価値で計算し、負債として計上
- 毎期、金利計算により見積額が増加(「資産除去債務調整費」として営業外費用に計上)
- 除去時に実際の除去費用を支払い、負債を消滅させる
例:除去費用が 1,000 万円、割引率 2%、10 年後に除去予定の場合: 初期計上額 = 1,000 ÷ 1.02^10 ≈ 820 万円
この 820 万円を「資産除去債務」として B/S の固定負債に計上し、対応する額を「固定資産—資産除去債務見積額」として資産側に追加します。毎期、割引計算による増加分を営業外費用として P/L に計上し、10 年後に債務額が 1,000 万円に達したところで現金で支払う。
典型的なつまずき
- 低価法と評価方法の混同:低価法は FIFO などの評価方法ではなく、評価方法で算出した取得原価に対して追加で適用する切下げルール
- 減価償却費と減価償却累計額の取り違え:減価償却費は P/L の費用、減価償却累計額は B/S の資産控除項目。両者は別物
- 固定資産売却損益の計算ミス:帳簿価額(= 取得原価 − 減価償却累計額)との比較が正しい。取得原価との比較ではない
- 減損認識判定での割引ミス:認識は割引前将来 CF で判定、測定は割引後で計算。この 2 段階を混同しやすい
- 棚卸減耗損と棚卸資産評価損の混同:減耗損は数量差、評価損は単価差。名称は似ていても全く異なる
- 移動平均法での総平均法化:仕入のたびに再計算することを忘れ、期間全体の平均で計算してしまう誤り
確認問題
問1:先入先出法による期末在庫と売上原価
以下のデータから、先入先出法による期末商品棚卸高と売上原価を求めよ。
期首商品:50 個 × @200 円 当期仕入:第 1 回 100 個 × @220 円、第 2 回 80 個 × @250 円 当期販売数量:160 個
解答: 期末在庫数量 = 50 + 100 + 80 − 160 = 70 個 FIFO では古い順に払い出すため、売却 160 個は期首 50 個 + 仕入① の 100 個 + 仕入② の 10 個。 期末 70 個は仕入② の 70 個 → 70 × 250 = 17,500 円 売上原価 = (50 × 200 + 100 × 220 + 80 × 250) − 17,500 = 52,000 − 17,500 = 34,500 円
問2:減価償却の月割計算
取得原価 900 万円、耐用年数 5 年、残存価額 0、定額法。X1 年 7 月 1 日取得、決算日 X2 年 3 月 31 日。X1 年度とX2年度の減価償却費をそれぞれ求めよ。
解答: 年間償却費 = 900 ÷ 5 = 180 万円 X1 年度:180 × 9/12 = 135 万円(7 月〜3 月は 9 か月) X2 年度:180 万円(12 か月分フル)
問3:減損の認識と測定
店舗の帳簿価額 8,000 万円。割引前将来 CF 合計 7,200 万円、正味売却価額 5,500 万円、使用価値 6,300 万円。減損損失の額を求めよ。
解答: 割引前 CF 7,200 < 帳簿価額 8,000 → 減損を認識 回収可能価額 = max(5,500, 6,300) = 6,300 万円 減損損失 = 8,000 − 6,300 = 1,700 万円
問題を解くときの観点
このセクションの問題を解く際は、常に 3 つの問いを念頭に置いてください。
この論点は取得時か、期末か、処分時か? 棚卸資産の評価は期末、減価償却も期末、減損も期末です。処分時には売却益・損を計算します。時系列を誤ると解答が逆になります。
比較しているのは取得原価か帳簿価額か? 固定資産を売却するときは帳簿価額(= 取得原価 − 減価償却累計額)との差を見ます。取得原価で比較してしまう誤りが多く見られます。
P/L の費用・損益と B/S の残高をどう結ぶか? 減価償却費は費用(P/L)、減価償却累計額は B/S の控除項目。減損損失も特別損失(P/L)で計上されます。フローとストックの関係を常に意識してください。
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