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生産形態と生産計画・生産統制

受注・見込の選択と個別・ロット・連続の流れを区別し、3段階計画と統制を実装で理解する

このページの役割

前提知識

このページは「生産の決定」(いつ、どうやって作るか)と「進捗の管理」(計画どおり進んでいるか)を区別できるようにする解説ページです。受注・見込の選択が「在庫リスク」と「納期リスク」のバランスを決め、個別・ロット・連続の選択が「現場の流れ」と「管理の難度」を決めます。その上で、3段階の計画と生産統制が相互に機能します。関連ページ:資材・在庫管理工場レイアウト

このページの読み方

試験では「いつ作るか」と「どう流すか」を混ぜて出題され、その上で計画と統制を組み合わせる出題が続きます。まず分類軸を区別してから、数値例で計画の段階的な展開を追い、最後に統制の機能(進捗・余力・現品)を仕掛在庫の管理と関連づけて理解します。このページを読む前に、組織や業種による制約(多品種少量か少品種大量か)が決まることを意識しましょう。


第1層:生産形態の分類軸

生産形態は2つの独立した軸で分類されます。この軸を混同すると、試験で選択肢問題に落とされます。

タイミング軸:受注生産 vs 見込生産

「いつ生産を開始するか」は、顧客の注文タイミングに基づいて決まります。

比較軸受注生産(MTO)見込生産(MTS)
生産開始のタイミング注文を受けてから需要予測に基づき先に
在庫リスク低い(確定注文に基づく)高い(売れ残り・品切れリスク)
納期長くなりやすい(加工後の納期)短い(在庫から即出荷)
適用先多品種少量、カスタム品少品種大量、標準品
典型業種金型、機械加工、建設機械食品、飲料、家電、衣料
管理上の重点納期管理(個別進捗追跡)在庫管理(需要予測の精度)

受注生産は「在庫リスク低・納期リスク高」、見込生産は「在庫リスク高・納期リスク低」という トレードオフ関係 にあります。

流れ軸:個別・ロット・連続

「どの流れで作るか」は、製品の特性と工程の設計で決まります。

生産類型特徴生産量品種数設備配置典型例
個別生産1個ずつ異なる仕様を処理少量多品種工程別レイアウト金型、特注機械、造船
ロット生産同種品をまとめて生産し段取替え中量中品種工程別 or セル電子部品、衣料品、医薬品
連続生産同一品を連続で流す大量少品種製品別レイアウト飲料、石油精製、自動車

3つの違いは、「段取替え」の頻度と「仕掛品」の流れ方に現れます。個別は「何度も順番が入れ替わる」、ロットは「ロット単位で流れ、ロット内では一直線」、連続は「常に流動」です。

実務例で軸を区別する

タイミング軸流れ軸組み合わせ特徴
注文住宅受注生産個別生産ETO設計から受注後に開始、納期長・コスト高
セミオーダースーツ受注生産ロット生産ATO部品(生地・ボタン)は見込、仕立ては受注後
建売住宅見込生産個別生産MTS市場予測で建築、納期短い
ビール工場見込生産連続生産MTS大量販売予測で製造、在庫リスク高

第2層:なぜ分類が必要か

生産形態の選択は「何を管理するか」と「何が課題か」を決めます。試験では、この選択に基づいた経営判断を問われます。

受注 vs 見込での管理上の焦点

受注生産を選ぶ場合

  • 例:航空機、大型機械
  • 課題:「個別の納期を守れるか」が生死を分ける
  • 管理:納期別の進捗追跡、遅れの検出と対策、部品の手配タイミング
  • リスク:計画遅延によるプロジェクト全体の遅延、追加コスト

見込生産を選ぶ場合

  • 例:食品、家電
  • 課題:「需要予測は正確か」「在庫は適正か」が生死を分ける
  • 管理:需要予測精度、安全在庫水準、売上機会ロス vs 売れ残り
  • リスク:予測外れによる在庫積み増しまたは品切れ、キャッシュフロー悪化

個別・ロット・連続での現場の流れ

個別生産の現場

  • ジョブショップ型:「次はどの製品を加工するか」が毎日変わる
  • 進捗管理は「各製品がどこまで進んだか」を製品単位で追う
  • 設備稼働率は低い(待ち時間が多い)が、急な変更に対応できる

ロット生産の現場

  • 一度に複数個の同じ品を処理し、次に別品へ「段取替え」
  • 段取替え時間は原価と納期に直結する圧力ポイント
  • セル生産への転換は「段取替え時間短縮」と「多能工育成」をセットで考える

連続生産の現場

  • 流れラインは一直線:品切れや遅れは全工程に波及する
  • 1つのボトルネックが全体速度を制限する
  • 設備の柔軟性は低いが、単位あたりコストが最小

第3層:3段階計画の構造と段階的な詰め込み

計画層は「時間が短い → 詳細度が上がる」という単純な階層構造です。ここで大事なのは「上位計画の制約の中で下位計画を立てること」です。

計画の3段階と役割

計画期間単位決めること使う情報下層への制約
大日程計画6ヶ月〜1年月別年間の生産量、設備投資の方向需要予測、経営方針「月あたり何個作るか」の枠
中日程計画1〜3ヶ月週別品目別の月次生産量(基準生産計画MPS)、工程別の工数大日程計画、受注状況、在庫「品目A は月400個、品目B は月350個」と決定
小日程計画1週間〜1ヶ月日別作業者・機械ごとの日次作業指示中日程計画、現場の余力、部品在庫「月400個を日次20個ペースで」と指示

数値例で流れを追う:冷蔵庫メーカーの4月計画

ステップ1:大日程計画で「月1,000個ペース」を決定

4月の需要予測は1,100個。4月〜6月の合計3,200個を3ヶ月で賄う方針から、月平均1,000〜1,200個の処理能力が必要と判断。

4月5月6月
需要予測1,100個1,200個900個3,200個
大日程決定1,000個1,000個1,200個3,200個

決定事項:4月の生産は1,000個。設備稼働率を90%に設定し、月20営業日で稼働。

ステップ2:中日程計画で品目ごとに配分

4月1,000個を3品目に配分し、各品目の必要工数を計算。

品目生産量標準工数(時間/個)必要工数生産比率
冷蔵庫A400個0.5200h40%
冷蔵庫B350個0.6210h35%
冷凍庫C250個0.8200h25%
1,000個610h100%

決定事項:4月の総必要工数は610時間。各工程の必要工数は、組立360h、検査150h、梱包100h。

ステップ3:小日程計画で日次の作業指示

610時間を20営業日で割ると日1日あたり30.5時間。これを各工程の作業者に日次で割り当て。

工程計(5日分)
組立A×18A×20B×15B×17C×1484個
検査A×20A×18A×22B×16B×1894個
梱包前繰20A×18A×20B×14B×1688個

第4層:工数計画で余力を見える化する

計画段階では「能力と負荷のバランス」を判断します。余力管理は統制ですが、計画段階で「ボトルネック」を検出することが重要です。

余力計算の手順

公式

処理可能工数 = 作業者数 × 営業日数 × 1日稼働時間 × 稼働率
余力 = 処理可能工数 − 必要工数

稼働率は「休憩・段取替え・トラブル・保守」を見込んで0.8〜0.9に設定します。

具体例:各工程の余力判断

入力データ(前述の中日程計画から)

  • 4月の営業日数:20日
  • 1日の稼働時間:8時間
  • 稼働率:0.9(90%)
  • 必要工数:組立360h、検査150h、梱包100h

計算表

工程作業者数処理可能工数必要工数余力状態対策例
組立5人720h360h+360h大幅に余裕他ラインへ配置転換、または予備を温存
検査2人288h150h+138h余裕あり同上
梱包2人288h100h+188h余裕あり同上

判断:全工程で能力過剰。この場合、組立の作業者を他の製品ラインや品質改善に投入できます。

ボトルネック工程が生まれた場合

もし検査が「1人のみ、稼働率0.85」に変わったら:

計算値
処理可能工数1人 × 20日 × 8h × 0.85 = 136h
必要工数150h
余力−14h(能力不足)

この場合、検査がボトルネックになり、全体の納期が遅延します。対策:

  1. 検査の作業者を2人に増やす
  2. 検査の作業効率化(自動化、簡略化)
  3. 外注に出す
  4. 納期を延長する

第5層:生産統制の3機能と実務判断

計画が決まった後、「計画どおりに進んでいるか」を毎日見て、差を埋めます。統制には3つの機能があり、混同すると誤判断します。

統制の3機能の区別

統制機能何を見るか比較軸判断の時間軸アクション例
進捗管理製品がどこまで進んだか計画 vs 実績日単位で遅れ検出遅延品の急ぎ、他の品の先送り
余力管理各工程の遊休度能力 vs 負荷週単位で負荷平準化多忙工程への人員配置、遊休工程の活用
現品管理仕掛品がどこにあるか在庫リスト vs 実査毎日の紛失防止仕掛品タグの貼付、ロケーション明記、盗難防止

進捗管理の可視化:ガントチャートと製造三角図

ガントチャートの読み方

冷蔵庫A  計画: |████████████┐
        実績: |██████████──┤ ← 2日遅延

冷蔵庫B  計画: |─────████████┐
        実績: |─────████████┤ ← 順調

冷凍庫C  計画: |──────────████┐
        実績: |────────████──┤ ← 3日前倒し(安全在庫活用)

遅延品(冷蔵庫A)が出たら、次工程での待ち時間が生まれ、最終納期に影響する可能性があります。対策:「検査の追加投入」「梱包との連携」「顧客への納期短縮連絡」など。

製造三角図(流動数曲線)の読み方

累積投入量と累積産出量のグラフを描くと:

  • 2つの線の 縦軸の差 = 仕掛在庫量
  • 2つの線の 横軸の差 = リードタイム
  • 実績線が計画線より右 = 遅延

例えば、計画では10日で全量産出予定が、実績では12日かかれば、リードタイムが2日延びていることが一目でわかります。

「計画と統制を混同する」ミス

試験では次のような混同が出題されます。

誤り1:「大日程計画を立てたら、進捗管理で日々追跡する」 → 大日程は方針決定、進捗管理は小日程の実行管理。層が違う。

誤り2:「余力管理は中日程計画の一部である」 → 余力管理は統制(実行中の判断)。中日程は計画(事前の決定)。

誤り3:「受注生産なのに見込生産の在庫管理を適用する」 → 受注生産は納期管理重視、見込生産は在庫管理重視。リスクが反対。


需要予測と在庫のバランス

見込生産では、需要予測の精度が在庫リスクに直結します。予測が外れると「売れ残り」または「品切れ」が生まれます。

移動平均法 vs 指数平滑法

比較軸移動平均法指数平滑法
考え方直近n期を平等に扱う直近を重視した加重平均
トレンド追従性遅れやすい速い
計算の簡易性単純(電卓で可)複雑(前期予測が必要)
適用先需要が安定している場合トレンド変化がある場合

計算例:3期移動平均

過去の需要:1月800、2月850、3月900、4月950、5月1,000

6月を予測:

6月予測 = (950 + 1,000 + 900) ÷ 3 = 950個

計算例:指数平滑法(α=0.3)

公式

新予測値 = α × 前期実績 + (1−α) × 前期予測

5月の実績が1,000個、4月の予測が900個だった場合:

5月末時点での6月予測 = 0.3 × 1,000 + 0.7 × 900 = 300 + 630 = 930個

αが大きい(0.5以上)と「実績の変化に敏感」になり、在庫変動が大きくなります。αが小さい(0.1未満)と「実績の変化に鈍感」になり、予測の修正が遅れます。


過去問で戻りやすい補助論点

QCD と PQCDSME をどう切り分けるか

生産管理の基本概念では、何を管理目標にするか を問う設問が出ます。ここで重要なのは、QCD は中核3要素、PQCDSME はそれを広げた現場管理指標だと理解することです。

指標何を見るか初学者が混同しやすい点
Q(Quality)品質不良率低下だけでなく品質保証全体を含む
C(Cost)原価単なる購入価格ではなく総コスト
D(Delivery)納期早ければよいのではなく、約束どおりかが重要
P(Productivity)生産性稼働率と同じではない
S(Safety)安全労働災害防止や安全衛生を含む
M(Morale)士気精神論ではなく定着や協力体制にも関わる
E(Environment)環境廃棄物、エネルギー、環境配慮設計など

つまり、QCD は 品質・原価・納期 の核、PQCDSME は 現場を安定運営するための評価軸 です。設問で 管理項目 を聞いているのか、改善手法 を聞いているのかを先に見分けます。

MPS と MRP のつながり

過去問では MPSMRP発注点方式 が混ぜて出されます。違いは、完成品の計画 なのか、部品の所要量計算 なのか、在庫補充のルール なのかです。

論点何を決めるか典型的な用途
MPS(基準生産計画)完成品をいつ・何個作るか月次・週次の完成品計画
MRP部品や材料をいつ・何個手配するかBOM をもとに部品所要量を逆算
発注点方式在庫が一定水準を切ったら発注する定量補充、独立需要品の管理

流れとしては、MPS で完成品計画を立てる → BOM を展開して MRP で部品手配を決める です。ここに対して発注点方式は、毎回部品表を展開して計算するのではなく、在庫量の減少をきっかけに補充する仕組みです。

補充・投入方式の使い分け

どの方式も「品切れを防ぐ」ために見えますが、発注のきっかけと管理の仕方が違います。

方式発注・投入のきっかけ向いている場面典型的な誤読
定量方式在庫が発注点を下回る比較的安定した独立需要毎回同じ日に発注する方式と混同
定期方式決めた時点で在庫を確認するまとめ発注や巡回補充発注量が固定だと誤解
かんばん方式後工程の引取りJIT、反復生産需要予測で先に押し込む方式と混同
予約方式受注・予約に応じて確保する受注品、希少部材見込生産の在庫方式と混同

ここでのコツは、いつ確認するか誰が引き金を引くか を見ることです。定量方式は在庫量、定期方式は時点、かんばん方式は後工程、予約方式は顧客や個別案件が起点です。

タクトタイムとサイクルタイム

ライン問題では、時間概念の混同が頻出です。

用語意味見るべきもの
タクトタイム市場要求から逆算した、1個あたりに許される時間需要に対して何秒で流す必要があるか
サイクルタイム実際に1個を作るのにかかる時間現場が実際に何秒かかっているか

タクトタイムは 外から与えられる目標値、サイクルタイムは 内側の実力値 です。したがって、サイクルタイムがタクトタイムを上回ると、計画どおりに市場へ供給できません。

典型的なつまずき

  • 受注 / 見込個別 / ロット / 連続 を同じ分類軸だと思ってしまう
  • 大日程 / 中日程 / 小日程進捗 / 余力 / 現品管理 を、すべて計画論点として一括りにする
  • MPSMRP をどちらも 生産計画 とだけ覚えて、完成品か部品かを見ない
  • 定量方式定期方式 の違いを、発注量の固定かどうかで誤って覚える
  • タクトタイムサイクルタイム を同じ時間とみなす

問題を解くときの観点

  • いま問われているのは いつ作るか か、どう流すか
  • 論点は 事前計画 か、実行中の統制
  • 完成品の計画を見ているのか、部品手配を見ているのか
  • 発注の起点は 在庫量確認時点後工程受注 のどれか
  • 時間概念は 需要から逆算した目標 か、実績としての作業時間

確認問題

問1:生産形態の選択

「顧客ごとに仕様が異なる産業機械を、注文を受けてから1台ずつ製造する場合」の次のうち、正しいのはどれか。

ア.タイミング軸は受注生産、流れ軸は連続生産 イ.在庫リスクは高く、納期リスクは低い ウ.タイミング軸は受注生産、流れ軸は個別生産であり、納期管理が最重要 エ.流れ軸がロット生産のため、段取替え時間の短縮が課題である

解答:ウ 解説:注文後に生産開始なので受注生産、1台ずつ異なる仕様なので個別生産。受注生産は納期リスク高(注文から完成まで時間がかかる)、在庫リスク低(売れ残りなし)。個別生産なので段取替えよりも「製品ごとの納期追跡」が課題。

問2:工数計画と余力判断

ある工程の処理可能工数が500時間、必要工数が480時間の場合、この工程と全体計画への影響を述べよ。

解答

  • この工程の状態:余力 = 500h − 480h = +20h。能力に若干の余裕がある。
  • 全体計画への影響:ボトルネックではないため、他工程の制約を受けない。納期遅延の直接原因にはならない。
  • 対策例:余力20hを、他の多忙工程への人員支援、予備作業(品質改善など)に充当。

問3:計画と統制の役割分担

「4月に品目ごとの月次生産数量を決定する」活動はどの計画層か。また「明日の各工程の作業が計画どおり進むか」を確認する活動は何か。

解答

  • 月次生産数量の決定:中日程計画(または基準生産計画MPS)。1〜3ヶ月先の品目別生産量を決定する層。
  • 日々の作業確認:進捗管理(生産統制の機能)。計画との差を検出し、対策を打つ活動。進捗管理は統制であり、計画ではない。

問4:需要予測手法の選択

「直近の需要トレンドが上昇しており、安定していない市場」で、移動平均法と指数平滑法(α=0.4)のどちらを採用すべきか、理由とともに述べよ。

解答

  • 採用すべき手法:指数平滑法(α=0.4)
  • 理由:指数平滑法は直近の実績(トレンド)に大きな重みを置くため、需要の変化に速く反応。α=0.4なら、最新実績に40%、前期予測に60%の重みを付けるため、トレンド上昇を予測に反映させやすい。一方、移動平均法は過去n期を平等に扱うため、トレンド変化への反応が遅い。

問5:進捗管理と余力管理の混同

「ある品目の生産が2日遅れている」という報告を受けた場合、進捗管理と余力管理の観点から、それぞれ次に何を確認するべきか述べよ。

解答

  • 進捗管理の観点:計画では何日に完成予定か、遅れが最終納期に影響するか、後続工程に待ち時間が生まれるか確認。遅れが確定したら、急行指示、並行処理、外注手配など対策を打つ。
  • 余力管理の観点:「なぜ遅れたのか」を問う。該当工程のボトルネックか、前工程の遅れの連鎖か、人員不足か、品質トラブルか。ボトルネック工程なら人員投入で能力を上げるか、別工程との人員融通を検討。

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