店舗立地と商圏分析
立地の3類型、商圏の定義と3圏域、ライリー・コンバース・ハフモデルの計算手順、商圏調査方法、小売理論を整理する
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このページは「どこに出店し、どこから客が来るか」を判断する知識体系です。立地選定と商圏分析の両輪を、店舗運営の入口として押さえます。後ろの実行段階(店舗設計、在庫管理)につなぐための基礎です。
まずイメージをつかむ
シナリオ:新しいカフェチェーンの出店判断
あなたは3つの候補地を比較しています。
- A駅前(商業集積型):商店街の中。賃料30万円/月。駅客の流動で自動集客。
- 県道沿い(独立型):駐車場付き。賃料10万円/月。看板と車通りに依存。
- 近隣SC内(計画型):新ショッピングセンター。賃料15万円/月。SC集客に乗れるが時間制限あり。
さらに競合がいます。駅前には既存カフェ(売場面積150㎡)、SC内には他チェーン(200㎡)。
問い:
- 駅前に出店したら、既存カフェとの商圏境界は何km地点か?
- 各候補地から何km範囲の客が来るか(第1次〜第3次商圏)?
- どこで出店すれば売上が最大か?
これらを ライリーの法則(吸引力比較)、コンバースの法則(商圏分界点)、ハフモデル(来店確率)で定量的に判断します。
学習のポイント
- 立地類型:環境の分類(3パターン)と業態適合性
- 商圏の階層:距離と来店頻度で3段階に分ける
- 計算モデル:ライリー(吸引力の比)、コンバース(境界点)、ハフ(確率)で何を求めるか使い分ける
- 小売理論:中心地理論、輪仮説、アコーディオン理論で市場構造を理解する
試験で何が問われるか
- 立地類型の違いを説明し、業態別最適立地を選べるか
- コンバースの法則で商圏境界を計算し解釈できるか
- ハフモデルで来店確率を計算できるか
- 商圏調査の方法(実査とデータ分析)を区別できるか
- 小売理論(中心地理論、輪仮説等)の概要を説明できるか
立地の3類型と業態適合性
1. 商業集積立地(駅前、商店街、ショッピングセンター)
定義:複数店舗が一箇所に集積する立地。既存の商業スポットに乗る戦略。
| 特性 | 詳細 |
|---|---|
| 集客の源泉 | 集積自体の強い吸引力。各店舗は集積の恩恵を自動的に受ける |
| 来店構造 | 目的来店(特定店狙い)+ 買い回り客(周辺も見る) |
| 賃料水準 | 非常に高い(駅前30-50万円/月級) |
| 営業の自由度 | 営業時間・メニューが制限される。企業審査が厳しい |
| 最適な業態 | カフェ、ブランド専門店、高級レストラン、ファッション |
| 競合圧力 | 目の前に同業者がいる。差別化が必須 |
メリット:集積の集客力で自動的に多くの来店者を獲得。高級品やニッチ業態でも販売可能。
デメリット:賃料が高く、営業時間やメニュー変更が難しい。出店企業の審査が厳格。
2. 独立立地(ロードサイド、郊外単独出店)
定義:県道・国道沿いで単独出店。駐車場を自前で持ち、看板と周辺人口で営業。
| 特性 | 詳細 |
|---|---|
| 集客の源泉 | 看板、広告、ロケーション。「この道で唯一の店」という優位性 |
| 来店構造 | 自力集客100%。周辺人口密度で全て決まる |
| 賃料水準 | 安い(10-20万円/月級) |
| 営業の自由度 | 営業時間、メニュー、営業スタイルが自由 |
| 最適な業態 | ドラッグストア、牛丼チェーン、ガソリンスタンド、家電量販店 |
| 駐車場 | 不可欠。台数が営業力を直結させる |
メリット:賃料が安く、フォーマットの自由度が高い。効率的な大型出店に向く。
デメリット:自力集客が必須。認知度の低い新業態では集客が難しい。初期投資(看板・広告)が必要。
3. 計画立地(駅ビル、駅構内、駅直結施設)
定義:交通結節点の計画開発に基づき出店。通勤通学ルートの強制通過が価値。
| 特性 | 詳細 |
|---|---|
| 集客の源泉 | 交通結節点の強制通過。「朝7-9時、夕方5-7時」に人口が集中 |
| 来店構造 | 時間帯が極度に偏る。平日と休日で客数が大きく異なる |
| 賃料水準 | 極めて高い(50万円以上/月) |
| 営業の自由度 | 営業時間が駅の営業に制限される。24時間不可 |
| 最適な業態 | スターバックス、コンビニ、弁当屋、ベーカリー、キオスク |
| 客単価 | 低い。「つかみの営業」(朝コーヒー、昼弁当)が勝負 |
メリット:確実な流動人口。高級品の露出に最適。朝夕ラッシュで人口集中。
デメリット:賃料が高く、昼間・休日の客付きが弱い。営業時間が制限される。
業態別:最適立地の選定表
| 業態 | 最優先立地 | 次選肢 | 理由 |
|---|---|---|---|
| カフェ・喫茶 | 駅前 or SC内 | 商店街 | 立ち寄り客、Wi-Fi需要、滞在時間 |
| 牛丼・ファストフード | ロードサイド | 駅ナカ | 低賃料、大型厨房、駐車場、回転率 |
| 高級レストラン | SC内 | 駅前 | 客層の絞り込み、集客力、環境 |
| コンビニ | ロードサイド or 駅ナカ | 商店街 | 24時間営業、通行量、周辺人口 |
| ドラッグストア | ロードサイド | 商業集積 | 広い売場面積、駐車場、周辺人口 |
| ブランド専門店 | 商業集積 | 駅前 | ステータス感、客層マッチ、ブランド訴求 |
| 居酒屋 | 駅前 | 商店街 | 夜間の人通り、会社員層 |
| 本屋 | 駅前 or SC | 商店街 | 立ち寄り客、滞在時間、集客力 |
立地選定の8つのチェック項目
出店判断のチェックリスト
- 通行量:1日の人通り、ピーク時と閑散時の差、曜日変動
- 競合状況:同業他社は何店舗か、最も近い競合までの距離
- 駐車場:台数は十分か、料金体系、利便性
- 交通アクセス:公共交通の充実度、車での進入性
- 商圏人口:半径500m、1km、2kmの人口と世帯数
- 人口動向:今後5年の人口増減予測、世帯数変化
- 所得水準:平均年収、消費支出、客層の購買力
- 営業環境:営業時間規制、騒音・におい対策の可否、建ぺい率
用途地域と建築基準法の基本
店舗立地では、売れそうな場所か だけでなく、その用途の建物をそもそも建てられるか を確認しなければなりません。ここで出てくるのが都市計画法上の 用途地域 と、建築基準法上の建築制限です。
| 観点 | 用途地域で見ること | 建築基準法で見ること |
|---|---|---|
| 主な役割 | その地域でどんな用途を認めるかを決める | 建物の安全性や形態を規制する |
| 典型論点 | 住宅系地域で大型店舗が可能か | 建ぺい率、容積率、高さ制限、接道義務 |
| 試験での見分け方 | 何を建てられるか | どう建てるか |
用途地域は、住居系・商業系・工業系などに分かれています。たとえば商業地域は店舗立地と相性がよい一方、低層住居専用地域では大型店舗に強い制約がかかります。したがって、集客力が高い場所でも、用途制限で出店できないことがあります。
建築基準法では、建物そのものの条件を確認します。代表的には次の4点です。
建ぺい率:敷地面積に対して建物を建てられる面積の上限容積率:敷地面積に対する延べ床面積の上限高さ制限:地域や道路条件による高さの制限接道義務:一定幅員の道路に接していないと建築できない
受験では、商業地域だから必ず自由に建てられる、建築基準法は用途制限の法律だ と考えるのが典型的な誤りです。用途地域 = 何を建てられるか、建築基準法 = どう建てるか と分けて整理してください。
商圏の定義と3段階の階層構造
商圏とは
商圏(trading area)とは、ある店舗から客がやってくる地理的範囲のことです。店舗は単独で存在せず、周辺から客を吸引して初めて成立します。この「吸引範囲」を把握することが、立地判断と売上予測の基本です。
3段階の商圏(第1次・第2次・第3次商圏)
商圏は来店頻度と客層密度で3段階に分けられます。試験では「どの商圏が全顧客の何%か」という問いがよく出ます。
| 商圏 | 来店頻度 | 全顧客比率 | 地理的範囲 | 説明 |
|---|---|---|---|---|
| 第1次商圏 | ほぼ毎日 or 週2-3回 | 50-70% | 半径500m-1km | 中核顧客層。店舗の利益の大部分を生み出す |
| 第2次商圏 | 週1回程度 | 20-30% | 半径1-2km | 準顧客層。目的来店で来る(買い忘れ、まとめ買い) |
| 第3次商圏 | 月1-2回 | 5-20% | 半径2-3km以上 | 周辺住民。たまに立ち寄る客 |
商圏に影響を与える要因
商圏の大きさ(範囲と客密度)は、単純に地理だけでは決まりません。以下の要因が複合的に作用します。
- 人口・世帯数:絶対的な客数の源泉
- 競合店の存在と距離:競合が近いと商圏が狭まる
- 交通アクセス:公共交通が充実すると商圏が広がる(駅前の方が商圏が広い)
- 地理的障害:河川・線路・山など越えられない障害は商圏を分断する
- 業態特性:スーパー(広い)vs. 小規模ブティック(狭い)で異なる
- 営業時間:24時間営業は営業時間限定店より商圏が広い
ライリーの法則(小売引力の法則)
法則の定義
ライリーの法則(Reilly's Law of Retail Gravitation)は、2つの都市間にある中間の町の購買力が、両都市にどの程度吸引されるかを定量的に求めるモデルです。試験では「吸引力の比」を計算するのが基本問題です。
公式と記号
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Ba | A都市の吸引力 | 任意(比較用) |
| Bb | B都市の吸引力 | 任意(比較用) |
| Pa | A都市の人口 | 万人 or 千人 |
| Pb | B都市の人口 | 万人 or 千人 |
| Da | 中間地点から A都市までの距離 | km |
| Db | 中間地点から B都市までの距離 | km |
公式の意味:
- 分子の Pa/Pb:人口が大きい都市ほど吸引力が強い
- 分母の (Db/Da)²:距離が遠いほど吸引力が弱い。距離は2乗で効く(2倍遠いと吸引力は1/4)
「なぜ」を理解する
ライリーの法則の直感
人口が多い = 吸引力が強い理由:人口が多い都市には店舗数・品揃え・情報が豊富。消費者は選択肢が多い大都市に引き寄せられます。
距離が遠い = 吸引力が弱い理由:移動に時間・コスト・手間がかかります。利便性が低下するため、消費者は近い都市を選びます。
なぜ距離は2乗か:移動距離が2倍になると、移動時間・ガソリン代・心理的負担が2倍以上になるため、実際の利便性は1/4以下に低下します。
計算例1:基本的な吸引力比較
シナリオ:A市(人口40万人、距離20km)とB市(人口10万人、距離30km)が、中間の町M(人口5万人)の購買力を引き合う場合、吸引力の比は?
計算手順:
【データ】
Pa = 40万人、Pb = 10万人
Da = 20km、Db = 30km
【計算】
Ba/Bb = (Pa/Pb) × (Db/Da)²
= (40/10) × (30/20)²
= 4 × 1.5²
= 4 × 2.25
= 9
【解釈】
→ A市の吸引力はB市の9倍
→ M町の購買力は、A市が約90%、B市が約10%を吸引
→ A市は人口4倍(×4)だが、距離も遠い(1.5倍遠い)
→ 距離が2乗で効くため 4 × 2.25 = 9倍に拡大ポイント:
- A市とB市は人口比で4倍の差しかないのに、吸引力は9倍になった
- 理由は「距離」。遠いほど不利になる効果が人口優位を上回った
計算例2:距離が同じ場合(距離効果が消える)
A市とB市がM町から同じ距離にある場合(Da = Db):
解釈:距離が同じなら、吸引力は人口比だけで決まる。距離の影響が完全に相殺される。
計算例3:人口が同じ場合(距離が勝負)
A市とB市の人口が同じ場合(Pa = Pb)でも、距離が異なれば吸引力が逆転します。近い方が強い吸引力を持ちます。
コンバースの法則(商圏分界点の公式)
法則の定義
コンバースの法則(Converse's Law)は、2つの都市間にある「商圏の分界点」(2都市の吸引力が等しくなる地点)を求める公式です。ライリーの法則を応用して、「どこからが相手側の商圏か」という地理的な分岐点を計算します。試験では分界点までの距離を求めることが標準的な出題形式です。
公式と記号
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| d | A市から商圏分界点までの距離 | km |
| D | A市とB市の総距離 | km |
| Pa | A市の人口 | 万人 or 千人 |
| Pb | B市の人口 | 万人 or 千人 |
公式の意味:
- 分母の √(Pb/Pa):人口比の平方根を取ることで、人口が大きい都市ほど分界点が相手側に寄る
- Pa が大きいほど、d も大きくなり、A市の商圏が広がる
「なぜ」を理解する
コンバースの法則の直感
商圏は人口で「引き寄せられる」:A市が大きいほど、商圏の分界点はB市に寄る。つまりA市の商圏が広がる。逆に、B市が大きいほど分界点はA市に寄る。
「距離の2乗」がない理由:コンバースの法則は「2都市の吸引力が等しい地点」を求める。この等式を解くと、距離の2乗が消える(数学的に相殺される)。結果として、分界点は人口比の平方根で決まる。
計算例1:人口差が大きい場合
シナリオ:A市(人口160万)とB市(人口40万)の距離が30kmのとき、商圏の分界点は?
計算手順:
【データ】
Pa = 160万、Pb = 40万
D = 30km
【計算】
d = D / (1 + √(Pb/Pa))
= 30 / (1 + √(40/160))
= 30 / (1 + √(1/4))
= 30 / (1 + 0.5)
= 30 / 1.5
= 20km
【解釈】
→ A市から20kmの地点が商圏の分界点
→ その先(20-30km)がB市の商圏
→ A市の人口が4倍なので、A市の商圏はB市の3倍広い
→ B市の商圏は10kmのみ(30 - 20 = 10km)ポイント:
- A市が人口4倍だから商圏も4倍広い…とは限らない
- 実際には人口比の平方根で決まるため、商圏は約2倍広い関係になる
- 試験では「小さい都市の商圏は非常に狭い」という直感を持つことが重要
計算例2:人口がほぼ同じ場合(対称的)
A市とB市の人口が同じ(Pa = Pb)のとき:
解釈:中点(AB中間)が分界点。各都市の商圏は対称的に半分ずつ。
計算例3:人口差が極端な場合
A市(人口900万)とB市(人口100万)、距離100kmの場合:
d = 100 / (1 + √(100/900))
= 100 / (1 + √(1/9))
= 100 / (1 + 1/3)
= 100 / (4/3)
= 75km
→ A市から75km地点が分界点
→ B市の商圏はたった25kmのみ
→ 人口9倍 → 商圏は3倍広い関係ハフモデル(確率的商圏モデル)
モデルの定義と使用場面
ハフモデル(Huff Model)は、「ある消費者がA店を選ぶ確率は何%か」を定量的に計算するモデルです。ライリーやコンバースとは違い、「必ずA店に行く」ではなく「70%の確率でA店、30%の確率でB店」という確率的行動を扱います。試験では来店確率を計算し、複数店舗を比較することが標準的です。
基本公式と記号
| 記号 | 意味 | 注記 |
|---|---|---|
| Pi | 店舗iを選ぶ確率 | 0~1の値。複数店舗の合計は必ず1 |
| Si | 店舗iの売場面積 | ㎡。大きいほど吸引力が高い |
| Di | 消費者から店舗iまでの距離 | km or m。遠いほど吸引力が低い |
| λ(ラムダ) | 距離抵抗パラメータ | 標準値は2。距離の影響度を調整 |
公式の意味:
- 分子 Si / Di²:店舗の売場面積を距離の2乗で割る。売場が大きく、距離が近いほど吸引力が高い
- 分母:全店舗の吸引力の合計。個別の吸引力をこれで割ることで、確率に正規化
「なぜ」を理解する
ハフモデルの直感
売場面積が大きい = 吸引力が高い:品揃えが豊富、専門コーナーが充実、駐車場が広い等、大型店は消費者にとって魅力的。
距離が近い = 吸引力が高い:移動時間が少ない、手間がかからない。利便性が高い店が選ばれやすい。
なぜ距離は2乗か(λ=2):ライリーと同じ論理。移動距離が2倍になると、実際の利便性低下は2倍以上(1/4レベル)になるため。
複数店舗の合計が1になる理由:確率の定義。ある消費者は「複数の選択肢の中から、どこかには行く」という前提で、各店舗の相対的な魅力度を割合で表現する。
計算例1:2店舗の競争
シナリオ:ある地点から見て、A店(売場面積150㎡、距離1km)とB店(売場面積100㎡、距離1.5km)がある。この地点の消費者がA店を選ぶ確率は?
計算手順:
【データ】
A店:Sa = 150㎡、Da = 1km
B店:Sb = 100㎡、Db = 1.5km
λ = 2(標準値)
【各店の吸引力を計算】
A店の吸引力:Sa / Da² = 150 / 1² = 150
B店の吸引力:Sb / Db² = 100 / 1.5² = 100 / 2.25 ≒ 44.4
【確率を計算】
吸引力の合計 = 150 + 44.4 = 194.4
Pa = 150 / 194.4 ≒ 0.772 = 77.2%
Pb = 44.4 / 194.4 ≒ 0.228 = 22.8%
【解釈】
→ この地点の消費者は77.2%の確率でA店を選ぶ
→ 売場面積が1.5倍大きく、距離も近いため、優位性が大きい
→ B店は遠さ(1.5倍)と規模の小ささ(2/3)で不利ポイント:
- 売場面積の差(150 vs 100 = 1.5倍)だけでなく、距離の差(1 vs 1.5km = 1.5倍遠い)も吸引力に作用
- 距離が2乗で効くため、距離の不利がより顕著に出る
計算例2:3店舗以上の複雑な場合
複数の競争店がある場合、同じ公式で各店の確率を計算します。分母が「全店舗の吸引力合計」になり、複数店舗の確率を同時比較できます。
距離抵抗パラメータ λ の変化
λ値によって距離の影響度が変わります。試験では λ=2が標準ですが、業態によって異なる場合もあります。
| λ値 | 距離の影響度 | 適用場面 | 例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 弱い | オンライン販売など距離が無関係 | Amazonなど |
| 2 | 中程度(標準) | 自動車利用が前提の小売 | スーパー、ドラッグストア |
| 3以上 | 強い | 徒歩利用が中心、立ち寄り重視 | コンビニ、カフェ |
ポイント:
- λが大きいほど、距離が遠い店舗の吸引力が急速に低下
- λが小さいほど、距離の影響が緩和される
商圏調査の方法
実査(フィールド調査)
実査は、店舗周辺に出向いて直接データを集める方法です。試験では「実査で何を調べるか」という概念理解が問われます。
| 調査項目 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 通行量調査 | 時間帯別・曜日別の歩行者・車両数 | 来客ポテンシャルの把握、営業時間設定 |
| 駐車場利用調査 | 駐車台数、回転率、利用パターン | 駐車キャパの充分性、顧客滞在時間 |
| 消費者インタビュー | 来店客への訪問地、来店頻度、満足度 | 商圏の実測、リピーター率、課題抽出 |
| 競合店調査 | 周辺競合店の位置、売場面積、営業時間 | 競争環境の把握、差別化ポイント |
| 街並み観察 | 住環境、施設充実度、にぎわい度 | 地域の成熟度、成長可能性 |
データ分析(定量調査)
統計資料やGISを使った分析です。実査と組み合わせると商圏がより正確に把握できます。
| データソース | 内容 | 用途 |
|---|---|---|
| 国勢調査・経済センサス | 人口、世帯数、就業地、年収分布 | 商圏人口の詳細把握、客層分析 |
| GIS(地理情報システム) | 地図上に人口、施設、商圏を視覚化 | 立地比較、最適地選定 |
| POSデータ分析 | 既存店舗の売上、客数、顧客属性 | 既存商圏の実績把握、新店予測 |
| 道路交通調査 | 通行量、流入流出パターン | 交通流動の把握、アクセス性評価 |
| 携帯位置情報 | 消費者の実際の移動パターン | 行動ベースの商圏把握 |
実査とデータ分析の使い分け
- 実査が得意:リアルな来店客の声、競合との相対的な位置関係、営業環境の肌感覚
- データ分析が得意:広域の人口分布、時系列の人口推移、複数候補地の客観的比較
最も精度の高い商圏調査は、両方を組み合わせることです。
小売理論:市場構造を理解する5つのモデル
1. クリスタラー中心地理論
クリスタラー(Walter Christaller)が1933年に提唱した理論で、「都市はなぜ、どのように配置されるか」を説明します。試験では「階層的配置」「最小範囲」という用語が重要です。
理論の要点:
- 都市は「中心地」として機能し、周辺の「奥地」に商品・サービスを供給する
- 中心地は人口と提供サービス数で階層化される(大都市 > 中都市 > 小都市)
- 各中心地は一定の範囲(商圏)を支配する。この「支配範囲の最小単位」が商圏の基本
- 中心地の間隔は、提供するサービスの最小範囲(需要量×移動距離)で決まる
試験での用途:「駅前に百貨店ができたら、周辺の小規模店舗はなぜ衰退するか」という立地競争の原理を説明するときに使う。
2. 小売の輪仮説(リテール・ライフサイクル)
マクネア(Malcolm McNair)が1957年に提唱した理論。「小売業態は時代とともに進化し、衰退する」というライフサイクル視点です。試験では「業態の進化パターン」を理解することが重要です。
理論の要点:
- 新しい小売業態は 低価格・簡素な店舗 で登場(例:ディスカウントストア → スーパー → デパート)
- 成功すると、客層を広げるため 設備を充実させ、価格を上げ、サービスを増やす(スーパー → ショッピングセンター)
- やがて固定費が増え、競争力が低下。新しい業態に取って代わられる
- このサイクルが輪のように繰り返される:新業態 → 成長 → 成熟・高級化 → 衰退 → 新業態の登場
試験での用途:「なぜコンビニがスーパーの一部の機能を奪ったのか」「なぜオンライン小売が登場したのか」という業態交代の論理を説明する。
3. アコーディオン理論(かじ取り仮説)
ブランド(E. Brand)が提唱し、ホランダー(S.C. Hollander)が命名した理論。小売店舗の取扱商品幅が、広いと狭いを繰り返すという相対主義的な見方です。
理論の要点:
- 店舗は時代のニーズに応じて、取扱商品を「広げたり、絞ったり」を繰り返す
- 例:百貨店(広い品揃え) → 専門店ブーム(狭い品揃え)→ ショッピングセンター(複合化で広い) → ネット書店(狭い品揃え + 配送)
- アコーディオンのように伸び縮みする → 「最適な商品幅は相対的であり、時代と競争環境で常に変わる」という洞察
試験での用途:「ユニクロはなぜ高いのに売れるのか」(狭い品揃えの専門化戦略)「Amazonはなぜ書籍から家電まで扱うのか」(デジタル基盤で品揃え幅を拡大)という具体的な事例を説明するとき。
4. 真空地帯理論(アンメット・ニーズ)
小売市場には「既存の小売業では満たされていないニーズがある」という考え方です。これを「真空地帯」と呼びます。新規参入企業や新業態は、この真空地帯を埋めることで成功します。
理論の要点:
- スーパーが「安さ・品数」で成功 → でも「個別サービス・アドバイス」が不足(真空地帯)
- → 専門店がこの不足を埋める
- Amazonが「品数・配送」で成功 → でも「リアル体験・その場での購入」が不足(真空地帯)
- → フラッグシップストア・ポップアップショップが登場
試験での用途:「なぜこの業態は成功したのか」という新規事業の論理を説明するときに、市場の「満たされていないニーズ」という視点から根拠付ける。
5. 商業集積の機能分化
複数の中心地が階層的に機能する、という最後の視点です。都市内に「一極集中型」ではなく「複心型」の商業配置ができるメカニズムを説明します。
理論の要点:
- 駅前 → 一番地。最も人通りが多く、家賃が高い。高級品・ブランド専門
- 駅前の一歩奥 → 二番地。やや安い賃料。カテゴリー品の中級店舗
- 郊外ロードサイド → 広大な駐車場で大型化。生鮮食品・雑貨中心
- 各層が「自分たちの客層」を正確に捕捉し、機能分化が進む
試験での用途:「複数の商業地が共存する理由」「業態別に最適立地が異なる理由」を、機能分化という原理で説明する。
確認問題
確認問題1:立地類型の判断
ある飲食チェーンが新店舗を出店する場合を考えます。以下の3候補地について、各立地の特徴と最適な業態を説明してください。
- A:駅前の商店街内(賃料40万円/月、通行量2万人/日)
- B:郊外県道沿い(賃料12万円/月、駐車場100台、通行量3,000人/日)
- C:ショッピングセンター内テナント(賃料18万円/月、SC来客数5万人/日)
このチェーンが「ファミリー層向けの大型ファストフード」を営業する場合、どの立地が最適か、理由とともに答えてください。
模範解答:B(郊外県道沿い)が最適。理由は、(1) 駐車場100台で家族連れが立ち寄りやすい、(2) 大型厨房に必要な広い売場が確保できる、(3) 賃料が低く、売上に対する利益率が高い。Aは賃料が高すぎ、駐車場がない(家族連れ向けに不向き)。Cは営業時間制限とメニュー制限の可能性がある。
確認問題2:コンバースの法則の計算
X市(人口200万)とY市(人口50万)の距離が60kmです。この間の商圏分界点はどこか、計算して答えてください。また、X市とY市の各商圏の広さを比較してください。
計算過程: d = 60 / (1 + √(50/200)) = 60 / (1 + √0.25) = 60 / (1 + 0.5) = 60 / 1.5 = 40km
解答:X市から40km地点が商圏分界点。X市の商圏は40km、Y市の商圏は20km。X市が2倍広い。
確認問題3:ハフモデルの計算と解釈
消費者Aの自宅から見て、以下2つのスーパーマーケットがあります。この消費者がP店を選ぶ確率を計算してください。
- P店:売場面積8,000㎡、距離2km
- Q店:売場面積6,000㎡、距離2.5km
計算過程: P店の吸引力 = 8,000 / 2² = 8,000 / 4 = 2,000 Q店の吸引力 = 6,000 / 2.5² = 6,000 / 6.25 = 960 合計 = 2,960
Pp = 2,000 / 2,960 ≒ 0.676 = 67.6%
解答:消費者AがP店を選ぶ確率は約68%。理由は、売場面積が約1.33倍大きく、距離が近い(2kmと2.5km)ため、吸引力が高い。
確認問題4:商圏の階層と来店パターン
ある駅前スーパーマーケットの商圏を調査したところ、以下の結果が得られました。
| 商圏 | 来店頻度 | 顧客構成比 |
|---|---|---|
| 第1次 | 週2-3回 | 60% |
| 第2次 | 週1回 | 30% |
| 第3次 | 月2-3回 | 10% |
(1) この店舗の利益の大部分を生み出す商圏はどれか? (2) 第2次・第3次商圏の顧客を増やすために、どのような施策が考えられるか?
解答: (1) 第1次商圏。全体の60%を占め、高頻度来店により年間購買額が大きい。 (2) 例:配送サービスの導入(距離の利便性を補う)、セール時期の強化(来店動機を作る)、品揃えの強化(目的来店を増やす)、駐車場の改善(アクセス向上)等。
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- 店舗レイアウトと陳列管理 — 立地判断の後、実際の店舗レイアウトと顧客動線設計に進む
- 販売管理指標・物流・流通情報システム — 商圏から客を獲得した後の販売管理
- 資材・在庫管理 — 商圏分析で予測した来店客に対応する在庫計画
- 店舗・販売管理 — 他の店舗運営テーマへの入口
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