資材・在庫管理
ABC分析、EOQ、安全在庫、MRP、発注方式を体系的に整理する
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このページは、「いつ何をいくつ発注するか」を決めるための解説ページです。資材・在庫管理は、部品が足りなくなって生産が止まることも、持ちすぎて倉庫代がかさむことも避けなければならない、という相反する課題に対応します。
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まず ABC 分析で「どの品目に管理リソースを集中するか」を決め、次に MRP で「いつ何をいくつ必要か」を計画から展開し、その後 EOQ で「1 回に何個発注するのが費用最小か」を計算します。最後に安全在庫で「需要のブレに備える量」を決めます。
学習のポイント
- ABC 分析は金額の累積構成比で重点管理品目を決める
- MRP は BOM(部品構成表)を使って所要量を計画から逆算する
- EOQ は発注費用と在庫保管費用の合計が最小になる発注量
- 安全在庫はサービス率(欠品を起こさない確率)で決まる
- 定量発注方式と定期発注方式は「いつ発注するか」で使い分ける
ABC分析
ABC 分析は、パレートの法則(上位 20% で全体の 80% を占める)を在庫管理に適用する手法です。金額で見ると、少数の高価な品目が全体費用の大部分を占めています。限られた管理リソースを効率的に使うため、高額品を精密に管理し、低額品は簡易管理にします。
ABC分析の本質
金額の観点から品目を分類することで、「何に時間をかけるべきか」が見える化されます。A 品目(全体費用の 70~80%を占める少数品目)には毎日の在庫確認と精密な計算を適用し、C 品目(全体費用の 5~10%を占める多数品目)には簡易的な 2 ビン方式を適用する、という使い分けが実務的です。
このパレートの法則を在庫管理に適用することで、限られた管理人員の時間を高額品に集中させ、効率的に全体の在庫をコントロールできます。試験では「金額」の累積構成比で分類することが重要です。数量が多い品目が必ずしも重要ではない、という点で受験生は誤解しやすいため、注意が必要です。
計算手順
ABC 分析の計算は 3 つのステップで進みます。それぞれのステップで注意点があります。
ステップ 1:購買額で降順に並べ直す
品目ごとに「年間購買額」を計算し、大きい順に並べます。重要なのは「使用量」ではなく「金額」であることです。個数が少なくても単価が高い品目(例:金型、高精度センサー)は A 品目になります。
品目 単価 年間使用量 購買額
P1 10,000 20 200,000
P2 5,000 50 250,000
P3 100 2,000 200,000
P4 1,000 30 30,000
合計 895,000(例)このように「数量が最も多い P3(2,000 個)」よりも「単価が高い P1・P2」の方が購買額は大きいため、A 品目に分類されます。
ステップ 2:累積構成比で分類する
購買額を大きい順に並べ直した後、各品目の購買額と、全体に対する累積構成比を計算します。
順位 品目 購買額 累積額 累積構成比
1 P2 250,000 250,000 27.9%
2 P1 200,000 450,000 50.3%
3 P3 200,000 650,000 72.7%
4 P6 75,000 725,000 81.1%
5 P5 50,000 775,000 86.7%
(以下省略)累積構成比を計算することで、「全体の何%をカバーするか」が一目瞭然になります。
ステップ 3:A・B・C に分類する
一般的な目安は以下の通りですが、業界や企業の方針で若干変わることもあります。
- A 品目(~80%):上位 3 品目で約 72.7% をカバー。毎日~毎週確認、定期発注方式で精密に管理。
- B 品目(80~95%):次の 2~3 品目で約 81~95% までを追加。週 1 回~月 1 回の確認、定量・定期併用。
- C 品目(95~100%):残りの品目。月 1 回または随時の確認、2 ビン方式で簡易管理。
この分類により、全体の 80% をわずか 3 品目で管理できることが見える化されます。
管理方針の設定
各ランクの品目には、異なる管理アプローチが適用されます。A 品目に高い手間をかけ、C 品目は最小限の管理とすることで、全体の効率が最大化されます。
| ランク | 金額構成比 | 発注方式 | 管理頻度 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| A 品目 | 70~80% | 定期発注方式 | 毎日~毎週 | 精密な計画展開、詳細な記録、MRP で管理 |
| B 品目 | 15~20% | 定量・定期併用 | 週 1~月 1 | 標準的な管理、バランス重視、臨機応変 |
| C 品目 | 5~10% | 定量発注方式/2 ビン方式 | 月 1~随時 | 簡易管理、管理負荷最小化、自動的に補充 |
試験では、「A 品目に定期発注方式」「C 品目に 2 ビン方式」という対応が頻出です。この対応を理由とともに説明できると、高い得点が期待できます。
MRP(資材所要量計画)
MRP(Material Requirements Planning)は、生産計画(MPS)と BOM(部品構成表)から、各部品・資材の何をいつ必要かを展開する仕組みです。完成品の生産日から逆算して、部品の発注時期と発注量を決定します。
MRP の最大の特徴は「計画された需要から逆算する」という点です。販売予測(独立需要)に基づいて生産計画を立て、その計画に必要な部品の量と時期を計算(従属需要)するため、「過不足なく」「タイムリーに」部品を調達できます。
MRP の計算手順
MRP 展開は以下の 5 ステップで進みます。
ステップ 1:総所要量を計算する
親品目の計画オーダー数量に、BOM の構成数量を掛けます。
総所要量 = 親品目の計画オーダー量 × 構成数量ステップ 2:正味所要量を計算する
総所要量から、手持在庫と発注残を差し引きます。
正味所要量 = 総所要量 - (手持在庫 + 発注残)ステップ 3:ロットサイズに合わせる
正味所要量を、実際の発注単位(例:10 個単位)に端数処理します。
ステップ 4:リードタイムオフセットで発注時期を決定する
必要時期からリードタイムを引いて、発注時期を決めます。
発注時期 = 必要時期 - リードタイムステップ 5:下位品目に展開して繰り返す
計算した計画オーダーが親品目となり、さらに下位品目について 1~4 を繰り返します。
計算例(3層BOM展開)
完成品 Y を 100 個、第 10 週に完成させたい場合を考えます。
データ
完成品Y 1個 → 部品C × 2個(LT=3週)+ 部品D × 1個(LT=1週)
部品C 1個 → 素材E × 3個(LT=2週)
手持在庫:C=30個、D=0個、E=50個展開プロセス
第 10 週に Y 100 個を完成させるには:
- 部品 C 必要量=100 × 2=200 個
- 手持在庫を差し引く→正味所要量=200 - 30 = 170 個
- LT=3 週→第 10 週 - 3 週 = 第 7 週に 170 個発注
部品 C の発注決定後、素材 E の所要量を展開:
- 素材 E 必要量=170 × 3=510 個
- 手持在庫を差し引く→正味所要量=510 - 50 = 460 個
- LT=2 週→部品 C の発注時期(第 7 週)- 2 週 = 第 5 週に 460 個発注
発注スケジュール
第5週:素材E 460個発注
第7週:部品C 170個発注
第9週:部品D 100個発注
第10週:Y 100個完成リードタイムオフセットが重要な理由
MRP で最も重要なのは、リードタイムを正確に把握し、発注時期を前倒しすることです。リードタイムを間違うと、納入が遅れて欠品が発生するか、早く到着して在庫が膨らむ、という問題が起きます。
EOQ(経済的発注量)
EOQ(Economic Order Quantity)は、1 回あたりの発注量を決めるときに、発注費用と在庫保管費用の合計が最小になる量です。
EOQの考え方
発注量を増やすと、発注回数は減り発注費用は下がりますが、平均在庫が増えて保管費用は上がります。逆に発注量を減らすと、保管費用は下がりますが発注回数が増えます。このトレードオフの中で、両者が等しくなる点が最適発注量(EOQ)です。
実務的には、発注費用には「伝票作成」「輸送手配」「受入検査」などの事務作業が含まれ、保管費用には「倉庫賃料」「人件費」「劣化リスク」などが含まれます。EOQ は両者のバランスを自動的に計算し、「経営的に最も効率な発注量」を導き出します。
EOQ計算式と意味
EOQ = √(2DS ÷ H)
D:年間需要量
S:1回あたりの発注費用(伝票作成、送料等)
H:1個あたりの年間保管費用(=単価 × 在庫維持費率)最適条件は「年間発注費用 ≒ 年間保管費用」です。この関係を検証用に使えます。
計算例と費用検証
年間需要 10,000 個、発注費用 5,000 円/回、保管費用 250 円/個の場合:
EOQ = √(2 × 10,000 × 5,000 ÷ 250)
= √(100,000,000 ÷ 250)
= √(400,000)
≒ 632個このとき、年間の発注費用と保管費用を計算して、本当に等しくなるか検証します。
年間発注回数 = 10,000 ÷ 632 ≒ 15.8回
年間発注費用 = 15.8 × 5,000 ≒ 79,000円
平均在庫 = EOQ ÷ 2 = 632 ÷ 2 = 316個
年間保管費用 = 316 × 250 = 79,000円
年間総費用 = 79,000 + 79,000 = 158,000円発注費用と保管費用がほぼ等しい(ともに約 79,000 円)ことが確認できました。これが EOQ の最適条件です。
感度分析:EOQ はパラメータ変化に対して意外と鈍感です。
- 需要が 2 倍(20,000 個)になった場合:EOQ は √2倍(約 1.41 倍)≒ 894 個にしか増加しません。
- 保管費用が半分(125 円)になった場合:EOQ は同じく √2倍 ≒ 894 個になります。
この「鈍感性」は、EOQ から大きくずれた発注量でも、費用はそこまで増加しない、という実務的な利点になります。試験では、EOQ の「鈍感性」を問う正誤問題も出題されることがあります。
安全在庫と発注点
需要は常に一定ではなく、調達のリードタイムも変動します。「もしもの時」に備えるのが安全在庫です。安全在庫は、経済的な「コスト」と、顧客サービスの質を示す「サービス率」のバランスを取る、経営判断の産物です。
安全在庫を多く持つと欠品リスクは減りますが、保管費用が増えます。逆に少なく持つと費用は削減できますが、欠品の可能性が高まります。この判断を客観的に行うために「サービス率」という指標が導入されています。
安全在庫の計算式
安全在庫 = 安全係数 k × 需要の標準偏差 σ × √リードタイム
k は「サービス率」(品切れしない確率)によって決まるサービス率と安全係数
サービス率が高いほど安全係数は大きくなり、安全在庫が増えます。ただし高いサービス率を求めると、安全在庫が非線形に急増します。これは正規分布の裾野が急速に広がるためです。
| サービス率 | 安全係数 k | 欠品の頻度(年) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 90% | 1.28 | 約 36 回 | リスク受容型(在庫最小)、廉価品向け |
| 95% | 1.65 | 約 18 回 | 一般的なバランス、中心的な選択 |
| 97% | 1.88 | 約 10 回 | 高信頼性、重要品向け |
| 99% | 2.33 | 約 4 回 | 高リスク回避、超重要品向け |
| 99.9% | 3.09 | 約 1 回 | 極めて高い信頼性、医療・安全品向け |
サービス率向上のコスト:95%から 99%への 4 ポイント向上で、安全係数は 1.65 から 2.33 へ約 41% も増加します。つまり安全在庫が 41% 増えるため、保管費用も大幅に増加します。この増加分が経営的に正当化されるかは、欠品による影響度で判断します。
実務での選択基準:
- C 品目(低額・多数):90% 程度の低いサービス率でも許容される場合が多い
- B 品目(中程度):95% 程度のバランス型が一般的
- A 品目(高額・重要):97%~99% の高い信頼性を求めることが多い
- 生産停止リスク大の品目:99%~99.9% のまで高める場合もある
発注点の計算
発注点 = 1日あたり平均使用量 × 調達リードタイム + 安全在庫計算例
1 日あたり平均使用量 50 個、調達 LT 4 日、需要の標準偏差 10 個/日、サービス率 95%(k=1.65)の場合:
安全在庫 = 1.65 × 10 × √4
= 1.65 × 10 × 2
= 33個
発注点 = 50 × 4 + 33 = 233個在庫が 233 個に達したら発注する、という実行ルールができます。
発注方式の比較
「いつ発注するか」で発注方式は大きく分かれます。定量発注方式は「在庫が減ったら発注」という単純なルール、定期発注方式は「毎週月曜に発注」というカレンダーベースのルールです。ABC 分析と組み合わせることで、各品目に最適な方式を決定できます。
試験では、「A 品目には定期発注方式が適切な理由」や「C 品目に 2 ビン方式を使う理由」といった、論理的説明を求める問題がよく出題されます。
| 比較軸 | 定量発注方式 | 定期発注方式 |
|---|---|---|
| 発注のタイミング | 在庫が発注点に達した時 | 一定周期(例:毎週月曜) |
| 1 回の発注量 | 一定量(EOQ) | 都度計算(変動) |
| 適する品目 | B・C 品目 | A 品目 |
| 需要変動への対応 | 発注点を超えたら即発注 | 発注間隔内の変動に対応しにくい |
| 必要な在庫 | 平均的 | 多め |
| 管理の手間 | 常時監視が必要 | 定期確認で済む |
| 実装難度 | 難(2 ビン方式で簡略化可) | 容易 |
定期発注方式の発注量計算
定期発注方式では、毎回の発注量が変動するのが特徴です。なぜなら、前回の発注からの消費量や在庫状況に応じて、必要量が変わるからです。次の計算式で毎回の発注量を決めます。
発注量 = (発注間隔 + 調達LT) × 予測需要量 + 安全在庫
- 手持在庫 - 発注残この式の意味を分解すると:
- (発注間隔 + 調達LT) × 予測需要量:発注から納品までのすべての期間で消費される量
- + 安全在庫:需要変動に備える量
- - 手持在庫:現在持っている量
- - 発注残:すでに発注済みで納品待ちの量
例)発注間隔 7 日、調達 LT 3 日、予測需要 40 個/日、安全在庫 50 個、手持在庫 120 個、発注残 80 個の場合:
発注量 = (7 + 3) × 40 + 50 - 120 - 80
= 10 × 40 + 50 - 200
= 400 + 50 - 200
= 250個次回の定期発注日には、また同じ計算を繰り返し、その時点での手持在庫や予測需要に基づいて発注量を決定します。
2ビン方式(簡易版定量発注)
小物部品の管理では、複雑な計算をせず 2 つのビン(容器)を用いる方式が実務的です。特に、C 品目(低額品)で多くの部品を扱う中小製造業では、システムに頼らず 2 ビン方式で対応することが一般的です。
仕組み
- ビン 1(通常ビン):日常使用分
- ビン 2(予備ビン):最小在庫分 + 安全在庫
使用の流れ:
- ビン 1 から日常的に取出す
- ビン 1 が空になったらビン 2 から取出す
- ビン 2 を取出した時点で発注する(トリガー)
- 納品後、ビン 1 を満杯にして再開
利点:計算が不要で、在庫管理システムがなくても運用可能です。オペレーターが「ビン 2 が空になったら発注」というシンプルなルールで対応できます。
注意点:ビンのサイズが適切でないと、「いつも足りない」または「常に余っている」という状態になります。初期導入時に発注点の設定が重要です。
典型的なつまずき
在庫管理の分野は計算問題が多く、細かな計算ミスや概念の混同が得点を落とします。以下の誤りは試験で頻出です。
- MRP、EOQ、安全在庫を一括で覚える → 目的が違う。MRP は「何をいつ必要か」(計画展開)、EOQ は「1 回に何個が費用最小か」(費用最小化)、安全在庫は「需要のブレに対応する量」(欠品防止)。それぞれが解く問題が異なることを意識。
- EOQ で分子・分母を逆にする → 公式は 2DS が分子、H が分母。√で全体を包む。間違った方向で計算すると、答えが逆数になり、明らかに小さい数値になります。
- 安全在庫を「余分な在庫」とだけ思う → サービス率(統計学的な品切れしない確率)に基づく合理的な量です。「95% の確率で欠品しない」というビジネス判断から導き出される、経営的に正当な在庫です。
- ABC 分析を数量順と思う → 金額の累積構成比が基準です。個数が多い品目でも単価が低ければ C 品目になり、個数が少なくても単価が高ければ A 品目になります。
- 発注点と発注量を混同する → 「いつ発注するか」(発注点)と「いくつ発注するか」(発注量・EOQ)は全く異なる概念です。
- 定量発注と定期発注を混同する → 定量発注は「在庫が発注点に達したら発注」(イベントベース)、定期発注は「毎週月曜に発注」(カレンダーベース)。発注のトリガーが異なります。
問題を解くときの観点
問題を読む際は、何が問われているかを最初に分類します。この分類が正確でないと、正しい計算式を使っても間違った答えが出ることがあります。
問題の分類フロー
- まず問題文で「何を求めるか」を特定する
- 「所要量を求めよ」→ MRP の計算
- 「発注量を求めよ」→ EOQ または定期発注方式の計算
- 「発注点を求めよ」→ 安全在庫 + (平均使用量 × LT)
- 「分類せよ」→ ABC 分析
- 次に「目的」を読み取る
- 在庫を減らしたい→ EOQ、ロットサイジング
- 切らしたくない→ 安全在庫、発注点
- リソースを効率配分→ ABC 分析
- どのデータが与えられているか確認
- BOM、MPS、手持在庫→ MRP が必要
- 年間需要、発注費用、保管費用→ EOQ の計算
- サービス率、標準偏差→ 安全在庫の計算
- 複数品目の金額→ ABC 分析
- 計算終了後の検証
- EOQ の場合:「発注費用 ≒ 保管費用」になっているか
- ABC 分析の場合:「上位数品目で 80% をカバーしているか」
- 発注点の場合:「リードタイム内の消費分 + 安全在庫」の構成になっているか
MRP・EOQ・安全在庫の関係
これら 3 つの概念は「在庫」を扱いますが、目的が全く異なります。試験では、この違いを理解しているかを問う問題が多く出題されます。
| 概念 | 目的 | 問う内容 | 計算式の形 |
|---|---|---|---|
| MRP | 何をいつ必要か | 計画展開、所要量の逆算 | 総所要量 - 手持在庫 = 正味所要量 |
| EOQ | 1 回に何個が費用最小か | 発注量の最適化 | √(2DS ÷ H) |
| 安全在庫 | 需要のブレに備える量 | 欠品防止の量 | k × σ × √L |
実務での使い分け
- MRP:「新しい製品を生産することになった。部品 A は何個いつ必要か」→ MRP で計算
- EOQ:「毎月需要のある部品 B。1 回の発注量をいくつにするのが経営的に最適か」→ EOQ で計算
- 安全在庫:「部品 B の欠品リスクをどのくらい許容するか」→ サービス率で安全在庫を決定
この使い分けができると、複合問題(例:「MRP で正味所要量を出した後、EOQ で発注量を決定し、さらに安全在庫を加えて発注点を決める」)も対応できます。
確認問題
問1:EOQ計算
年間需要量 8,000 個、1 回あたり発注費用 4,000 円、1 個あたり年間保管費用 200 円のとき、EOQ を求めよ。また、年間発注費用と年間保管費用が等しくなることを確認せよ。
解答: EOQ = √(2 × 8,000 × 4,000 ÷ 200) = √(320,000) ≒ 566 個
年間発注回数 = 8,000 ÷ 566 ≒ 14.1 回 年間発注費用 = 14.1 × 4,000 ≒ 56,400 円 年間保管費用 = (566 ÷ 2) × 200 = 56,600 円 → 発注費用と保管費用がほぼ等しい(最適条件確認)✓
問2:発注点計算
1 日あたり平均使用量 30 個、調達リードタイム 5 日、安全在庫 45 個のとき、発注点を求めよ。
解答: 発注点 = 30 × 5 + 45 = 150 + 45 = 195 個
意味:在庫が 195 個に達したら発注する。リードタイム中に平均 150 個が消費されるため、安全在庫 45 個で欠品を防止できます。
問3:MRP展開(3層)
完成品 X を第 12 週に 100 個完成させたい。 BOM:X 1 個 → 部品 A × 2 個(LT=3 週) 部品 A 1 個 → 素材 B × 4 個(LT=2 週) 手持在庫:A=50 個、B=100 個のとき、
(1) 部品 A の正味所要量と発注時期を求めよ (2) 素材 B の正味所要量と発注時期を求めよ
解答: (1) 部品 A: 総所要量 = 100 × 2 = 200 個 正味所要量 = 200 - 50 = 150 個 LT=3 週 → 第 12 週 - 3 週 = 第 9 週に 150 個発注
(2) 素材 B: 総所要量 = 150 × 4 = 600 個 正味所要量 = 600 - 100 = 500 個 LT=2 週 → 第 9 週 - 2 週 = 第 7 週に 500 個発注
発注スケジュール:第 7 週(素材 B)→ 第 9 週(部品 A)→ 第 12 週(完成品 X)
問4:ABC分析の分類
5 品目の年間購買額が以下のとき、A・B・C に分類し、A 品目の累積構成比を求めよ。
品目 1:300,000 円、品目 2:200,000 円、品目 3:150,000 円、品目 4:100,000 円、品目 5:50,000 円
解答: 合計 = 800,000 円
購買額が大きい順に並べて累積構成比を計算:
- 品目 1:37.5%
- 品目 1 + 2:62.5%
- 品目 1 + 2 + 3:81.25%
分類:
- A 品目(~80%):品目 1、品目 2(累積 62.5%) ※品目 3 を含めても 81.25%でA品目に分類する場合も多い
- B 品目(80~95%):品目 4(87.5%)
- C 品目(95~100%):品目 5(100%)
→ 上位 2~3 品目に管理リソースの 80% を集中させる。
ポイント:品目 1 だけで全体の 37.5% を占めるため、この品目の在庫管理が全社の在庫削減に大きく貢献します。品目 5 の改善(個別には重要でも)よりも、品目 1 の改善を優先すべき、という経営判断が見える化されます。
問5:定期発注方式の発注量計算
毎週月曜に発注する品目がある。以下の条件のとき、発注量を求めよ。
- 発注間隔:7 日(毎週月曜)
- 調達 LT:4 日
- 予測需要:50 個/日
- 安全在庫:100 個
- 現在の手持在庫:80 個
- 発注残(既に発注済み、納品待ち):140 個
解答: 発注量 = (発注間隔 + 調達LT) × 予測需要 + 安全在庫 - 手持在庫 - 発注残 = (7 + 4) × 50 + 100 - 80 - 140 = 11 × 50 + 100 - 220 = 550 + 100 - 220 = 430個
解説:
- 発注から納品までの 11 日間(7 + 4)で 550 個が消費される
- 欠品に備えて安全在庫 100 個を確保
- すでに手持在庫 80 個と発注残 140 個があるため、追加で 430 個が必要
次回の定期発注日(翌週月曜)には、同じプロセスで新たに発注量を計算します。
在庫管理とJIT の関係
JIT(Just In Time:ジャストインタイム)は、「必要な物を、必要な時に、必要な量だけ」調達・生産する考え方です。従来の在庫管理との違いを理解しておくと、試験での出題パターンが見えやすくなります。
従来の在庫管理(在来型)とJITの比較
| 観点 | 従来の在庫管理 | JIT 思想 |
|---|---|---|
| 在庫レベル | 安全在庫を含む中程度 | 最小限(ゼロに近い) |
| 発注方法 | EOQ により発注量を最適化 | 小ロット・高頻度発注 |
| 供給者関係 | 市場原理で複数供給者と競争 | 長期パートナーシップ、納期厳守 |
| 品質管理 | 受け入れ検査で品質確認 | 供給者の品質保証で検査を省略 |
| リードタイム | ある程度の長さを許容 | 短縮を徹底的に追求 |
| 在庫削減効果 | 限定的 | 飛躍的な削減が可能 |
JIT が成立する前提条件
従来型のように「安全在庫を持つ」という選択肢がない JIT では、以下の条件が必須です。
- 供給者の納期厳守:1 分の遅れも許されない
- 品質の 100% 保証:不良品があると生産ラインが止まる
- リードタイムの短縮:特に運送時間の短縮が重要
- 需要予測の精度向上:突然の需要変動に対応できない
JIT は「在庫管理をしない」のではなく、「在庫を最小化するための厳格な管理」であることを理解することが重要です。
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