購買・外注管理
購買管理、外注管理、調達先選定、内製・外注判断、下請法を整理する
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このページは、「自社の外から、いかに安定的に資材・工程を調達するか」を整理する解説ページです。購買管理と外注管理の違いを押さえ、内製と委託の判断基準、サプライヤー評価の視点、そして下請法による法的な制約を学びます。
購買管理は「モノ(資材・部品)」を調達する活動です。外注管理は「コト(工程・作業)」を委託する活動です。この違いを理解することが、試験での正確な解答につながります。
なぜこの内容が重要なのか
製造業では、原材料から最終製品の納入まで、多くの調達・委託が発生します。これらを「安い価格」だけで決めれば、品質問題や納期遅延によって全体の生産スケジュールが崩壊します。QCD(品質・コスト・納期)のバランスを見ながら、戦略的に調達先を選び、継続的に関係を管理することが、企業の競争力を左右する重要な機能です。
学習のポイント
このセクションを終えたときに、次の点を説明できるようになりましょう。
- 購買管理と外注管理の違いは何か
- 集中購買と分散購買をいつ使い分けるか
- QCDに加えて、サプライヤー選定では何を見るか
- 内製と外注の判断は、コスト計算だけでは不十分な理由
- 下請法が規定する親事業者の義務と禁止行為
購買管理 ── 資材の安定調達
購買管理の目的と5原則
購買管理は、生産に必要な資材・部品を「適切な品質・適切な数量・適切な時期・適切な価格・適切な供給者」から調達する活動です。以下の表は、各原則が「なぜ必要か」を示しています。
| 原則 | 内容 | 見落とされやすい理由 |
|---|---|---|
| 適正な品質 | 仕様に合致した品質 | 最安値=最適と勘違い。不良率が高い安い部品は、検査費・交換費・製品クレームで総コストが高まる |
| 適正な数量 | 不足も過剰もない | 過剰在庫は金利・保管費・陳腐化リスク。不足は生産ラインの停止 |
| 適正な時期 | 生産計画に合ったタイミング | 納期遅延は全体スケジュール崩壊。早すぎる納入は在庫増加 |
| 適正な価格 | 品質・納期を踏まえた妥当な価格 | 単価だけでなく、輸送費・検査費・品質問題の修正費を含めたトータルコスト(TCO)で判断 |
| 適正な供給者 | 信頼できる継続的な取引先 | 単一供給源依存はリスク。複数確保は管理コスト増。戦略的に選定が必要 |
集中購買 vs 分散購買
同じ資材でも、企業規模・調達量・タイミングの自由度によって、集中か分散かの判断が変わります。
| 比較軸 | 集中購買 | 分散購買 | 選択の判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 発注の主体 | 本部が一括 | 各工場・営業所が個別 | — |
| 対象となる資材 | 共通部品・標準品 | 専用部品・特殊品 | 他の工場でも同じ品を使うか |
| 価格交渉力 | 大量発注で強い | 小量発注で弱い | 集約効果がメリット |
| 現場対応性 | 遅い(申請プロセス必要) | 即座に対応可 | 緊急対応が必要か |
| 管理コスト | 少ない(一括管理) | 多い(各拠点で管理) | 重複発注などの無駄が増える |
| リスク | 単一供給源依存のリスク | 複数供給で分散 | 供給安定性の重み付け |
| 向く業種・場面 | 自動車(共通部品)・電機(標準部品) | 受注生産・多品種製造 | — |
判断フロー:
調達する資材は、複数の工場で共通に使える資材か、特定の工場だけで使う専用資材か?
- 共通資材・標準品 → 集中購買(本部一括発注)で大量発注→単価低減
- 工場専用の部品 → 同じ部品なら集中の方が有利だが、調達の自由度が必要なら分散
- 急な増産・仕様変更 → 分散購買(柔軟性重視)で即応
- 特殊加工・小ロット → 分散購買(現場との密な調整が必要)
実例:自動車メーカーは「ボルト・ネジは本部集中購買(大量発注で50%コスト削減)」「エンジン部品は各工場で調達(仕様変更に即応)」という使い分けをしています。
調達先選定の評価基準
供給者を選ぶときは、単価だけでなく、以下の5つの観点でスコア化して総合評価します。
| 評価基準 | 何を見るのか | 評価の視点 | 重み付けの例 |
|---|---|---|---|
| 品質(Q) | 不良率、品質管理の仕組み | 納入検査での不良率 / ISO認証の有無 / 品質改善の実績 | 25% |
| コスト(C) | 単価と総所有コスト | 単価だけでなく、輸送費・検査費・リードタイム(在庫保管費) | 30% |
| 納期(D) | リードタイム、納期遵守率 | 標準リードタイム / 遵守率 / 急な変動対応力 | 25% |
| 技術力・柔軟性 | 急な増減への対応力、技術提案 | 小ロット対応 / 図面変更対応 / 提案型営業 | 10% |
| 経営安定性 | 企業規模、財務状況、事業継続リスク | 売上規模 / 負債比率 / 経営者交代予定 / BCP | 10% |
評価は定性的(〇△×)か定量的(スコア 1-5)で行い、複数の候補を並べて比較することが重要です。
外注管理 ── 工程・作業の委託
外注の種類と選択基準
外注は、「なぜ外に任せるのか」という理由によって3つに分類できます。
| 外注の種類 | 内容 | 典型的な例 | 選択判断 |
|---|---|---|---|
| 能力外注 | 自社の処理能力不足を補う | 繁忙期の増産対応、期間限定の受託 | 変動需要への柔軟な対応が目的 |
| コスト外注 | 変動費化してコスト削減 | 単価が安い地域での製造委託 | 需要変動に対応しながらコストを最適化 |
| 専門外注 | 自社にない技術・専門知識を活用 | めっき処理、特殊加工、測定キャリブレーション | 高度な技術は内製より外注の方が品質安定 |
各外注の目的が異なるため、委託先の選定基準・管理方法も変わります。
外注管理のプロセス
外注を受け付けた後、品質・納期・コストが確保されるまでのプロセスを示します。
| 段階 | 管理項目 | 実務的なチェックポイント |
|---|---|---|
| 委託前の準備 | 仕様書・図面の明確化 | 「自社の要求」が曖昧では、納入後のトラブルが増える。3次元CAD、実物サンプル、検査基準を明示 |
| 受注・契約 | 納期・数量・代金・支払条件 | 口頭発注は禁止(下請法)。発注書に品名、数量、納期、代金、支払日を明記 |
| 生産進捗の監視 | 定期的な進捗確認 | 週次または月次で外注先と協議。遅延の早期発見が重要 |
| 受入検査 | 品質の確認 | 納入時に全数または抜き取り検査。不良率が高い場合は改善計画を要求 |
| 工程監査 | 外注先の製造方法・体制の確認 | 3~6ヶ月ごとに外注先の工場を訪問。品質管理体制、設備、作業員の技能レベルを確認 |
| 品質データの共有 | 月次の品質報告 | 不良内容、原因分析、改善状況を報告させ、PDCA を促進 |
| 継続的な関係構築 | 中期取引での信頼構築 | 単一案件ごとの最安値選定ではなく、3-5年単位での関係を想定した交渉 |
内製 vs 外注の判断 ── コスト分析と戦略判断
判断の3つの軸
「自社で製造するべきか、外に委託すべきか」は、コスト、戦略、リスクの3軸で検討します。
| 判断軸 | 内製が有利 | 外注が有利 | 考慮すべき点 |
|---|---|---|---|
| コスト視点 | 固定費を既に投下済み(余剰能力がある) | 変動費化して需要変動に対応 | 固定費の回収期間、生産量の不確実性 |
| 技術・コア戦略 | 自社の中核技術・競争優位性 | 非コア工程・コモディティ化した工程 | 10年後も自社が競争優位を持ちたいか |
| 品質管理 | 厳密な品質管理が必要(医療機器など) | 標準的な品質で事足りる | 品質不良時のリスク(顧客への影響) |
| 需要変動 | 安定した需要予測(変動が小さい) | 需要が大きく変動する(季節性・プロジェクト型) | 設備の稼働率の見通し |
| 設備投資 | 既に設備・技能がある | 新規投資が必要 / 設備の陳腐化リスク | 投資回収期間、技術の急速な進化 |
| 人員管理 | 既に人員配置済み | 人員増減を避けたい | 雇用・解雇のコストと企業文化 |
| サプライチェーン リスク | 完全な自社管理で安定供給 | 外注先の倒産・納期遅延リスク | 供給の完全性、代替先の有無 |
内製・外注の経済的判断:損益分岐点分析
基本的な損益分岐点計算
内製と外注のどちらが安いかは、生産量によって変わります。損益分岐点を求めることで、「何個以上なら内製が有利か」を判定できます。
【計算式】
内製コスト = 固定費 + 変動費 × 数量
外注コスト = 外注単価 × 数量
内製コスト = 外注コスト となる量が損益分岐点:
固定費 + 変動費 × Q = 外注単価 × Q
損益分岐点 Q = 固定費 ÷ (外注単価 − 変動費)計算例①:基本パターン
【設定】
内製: 固定費 500,000円/年、変動費 300円/個
外注: 800円/個
【計算】
損益分岐点 = 500,000 ÷ (800 − 300)
= 500,000 ÷ 500
= 1,000個
【解釈】
- 1,000個未満 → 外注が安い(外注が有利)
- 1,000個以上 → 内製が安い(内製が有利)
【具体例:月産 1,500個の場合】
内製コスト = 500,000 + 300 × 1,500 = 950,000円
外注コスト = 800 × 1,500 = 1,200,000円
→ 内製が 250,000円安いこのように、生産量が多いほど、固定費を複数個で分割できるため、内製のメリットが大きくなります。
総所有コスト(TCO)の考慮
損益分岐点計算で「内製が有利」と判定しても、実際の外注選定では、単価以外の要因も大きく影響します。これを 総所有コスト(Total Cost of Ownership, TCO) と呼びます。
| 費用項目 | 内容 | 見落としやすい例 |
|---|---|---|
| 購入価格 | 部品の単価 × 数量 | 最安値業者を選んだが… |
| 輸送・梱包費 | 調達地から工場までのコスト | 海外調達の送料が単価を上回ることもある |
| 受入検査・受入コスト | 納入時の検査、データ確認、不合格品の処理 | 不良率が5%なら、検査コスト+修正コストで国内業者より高くなる |
| 在庫保管・管理費 | 保管スペース、金利、陳腐化リスク | リードタイムが長い業者を選ぶと、在庫が増えて保管費が増加 |
| 品質不良対応コスト | 納入後の不良対応、顧客対応、内部品質改善 | 納期遅延が発生すると、全体の生産スケジュール崩壊=外注増加コスト |
| リードタイム対応コスト | 調達期間が長いと、急な変動に対応できず緊急手配が増加 | 急な増減対応ができない業者を選ぶと、機会損失が増える |
実例:
一見、海外メーカーが 500円安い(600円 vs 1,100円)ように見えても:
単価:600円
+ 輸送費(航空便):300円
+ 受入検査(3%不良率):150円
+ 品質問題の対応費:200円
= 実際のコスト:1,250円(国内業者より高い)TCOを正確に計算するには、1年間の実績データを使う必要があります。「見た目の価格」だけで判定してはいけません。
シナリオ分析:外注単価が変動した場合
外注先との交渉によって単価が変わった場合、損益分岐点がどう動くかをシミュレーションします。
【基本想定】
内製: 固定費 500,000円、変動費 300円/個
【シナリオ A:外注単価 800円/個(現在の単価)】
損益分岐点 = 500,000 ÷ (800 − 300) = 1,000個
月産 1,000個の場合:
内製: 500,000 + 300 × 1,000 = 800,000円
外注: 800 × 1,000 = 800,000円
→ ほぼ同等
【シナリオ B:値引き交渉成功、外注単価 700円/個】
損益分岐点 = 500,000 ÷ (700 − 300) = 500,000 ÷ 400 = 1,250個
→ 分岐点が上がる=内製の有利性が減る
月産 1,000個の場合:
内製: 800,000円
外注: 700 × 1,000 = 700,000円
→ 外注が 100,000円有利に
【シナリオ C:値上げ、外注単価 900円/個】
損益分岐点 = 500,000 ÷ (900 − 300) = 500,000 ÷ 600 = 833個
→ 分岐点が下がる=より少量で内製が有利に
月産 1,000個の場合:
内製: 800,000円
外注: 900 × 1,000 = 900,000円
→ 内製が 100,000円有利にこの分析を 感度分析(Sensitivity Analysis) と呼び、外注先交渉時、需要予測の不確実性がある場合に活用します。
外注管理のリスク対策
品質リスクへの対処
外注先の品質が低いと、納入後に大量の手直しが必要になり、全体の生産スケジュールが崩壊します。
具体的な対策:
- 受け入れ検査の徹底
- 納入時に全数または抜き取り検査を実施
- 不良率が基準を超えた場合、改善計画書を要求
- 月次で不良率トレンドを確認し、継続的な改善を促進
- 工程監査(3~6ヶ月ごと)
- 外注先の工場を訪問し、実際の製造現場を確認
- 品質管理体制、計測機器の校正、作業指標の掲示、5S の実施状況を確認
- 改善がない場合は、他社への切り替えを検討
- 品質データの共有と改善促進
- 月次で「不良内容」「発生原因」「改善状況」を報告させる
- 共同で原因分析(QC7 つ道具など)を行い、PDCA サイクルを回す
- 改善実績を評価に反映し、単価交渉に活用
納期リスクへの対処
外注先の納期遅延は、自社の生産ラインを停止させ、顧客納期にも影響します。
具体的な対策:
- 複社購買(サプライヤー分散)
- 同じ部品を複数の外注先から調達
- 一社が納期遅延しても、他社でカバー可能に
- ただし管理コストが増えるため、重要度の高い部品のみ対象
- 進捗確認プロセス
- 発注後、定期的(週次または月次)に製造進捗を確認
- 遅延の兆候が見えたら、早期に対応(優先度変更、並行処理など)
- 納期遵守率を評価指標として記録
- リードタイム管理
- 外注先の標準リードタイムを把握
- 急な増産に対応可能な余力があるか事前に確認
- 生産計画作成時に、リードタイムを十分に見込む
技術・知財リスクへの対処
外注先に自社の技術を提供する場合、不正流出や二次利用を防ぐ必要があります。
具体的な対策:
- コア技術は内製維持
- 自社の競争優位性を決める技術は、決して外注してはならない
- 外注するのは「コモディティ化した工程」「標準的な加工」のみ
- 図面・仕様書の厳密な管理
- 提供する図面に「機密」「目的外利用禁止」「第三者への提供禁止」と明記
- 納品後に図面を回収するか、期間限定アクセスにする
- 秘密保持契約(NDA)を締結
- 技術指導
- 外注先の技術力が不十分な場合、社員を派遣して直接指導
- 単なる「発注先」ではなく、「共同開発パートナー」としての信頼関係を構築
経営リスクへの対処
外注先が倒産や事業廃止になると、サプライチェーン全体が機能不全に陥ります。
具体的な対策:
- 経営安定性の定期確認
- 1~2年ごとに、外注先の財務状況(売上、負債、資本)を確認
- 経営者交代予定、主要顧客からの受注減少など、経営環境の変化を把握
- BCP(事業継続計画)の構築
- 重要な外注先が操業不能になった場合の代替先を事前に確保
- 地震やパンデミック時にどの程度の期間、代替先で対応できるか確認
- 最悪の場合、自社での緊急生産体制も想定
下請法:親事業者の義務と禁止行為
下請法が適用される取引
「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)は、大企業が中小企業を不当に扱うことを禁止する法律です。製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託の4種類が対象です。
適用基準(資本金による区分)
| 取引形態 | 親事業者の資本金 | 下請事業者の資本金 | 対象業種 |
|---|---|---|---|
| 製造委託・修理委託 | 3億円超 | 3億円以下 | 製造業全般(自動車部品、電子部品など) |
| 製造委託・修理委託 | 1,000万円超〜3億円以下 | 1,000万円以下 | 製造業全般 |
| 役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理)・プログラム作成委託 | 3億円超 | 3億円以下 | 物流業・ソフトウェア開発 |
| 役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理)・プログラム作成委託 | 1,000万円超〜3億円以下 | 1,000万円以下 | 物流業・ソフトウェア開発 |
| 情報成果物作成委託(非プログラム)・その他役務提供委託 | 5,000万円超 | 5,000万円以下 | 設計・映像制作・広告制作・清掃・警備など |
| 情報成果物作成委託(非プログラム)・その他役務提供委託 | 1,000万円超〜5,000万円以下 | 1,000万円以下 | 設計・映像制作・広告制作・清掃・警備など |
「製造委託」とは、カスタマイズ製品や部品の製造を外注することを指します。建設業、物品レンタル業、飲食店(外食チェーンの代理店など)は対象外です。
親事業者の4つの主要な義務
下請法で親事業者に課される義務を理解することで、「下請となる側の権利」も明確になります。
① 書面交付義務
【内容】
発注時に「発注書」を交付する。口頭発注は禁止。
【記載すべき内容】
- 品名(商品の詳細説明)
- 数量(個数)
- 納期(納入日時)
- 代金(支払額)
- 支払日(いつまでに払うか)
- 支払方法(現金、振込など)
- その他特記事項(返品の可否、不良時の対応など)
【ポイント】
口頭発注は「後で金額を決める」という曖昧さを招きやすい。
書面を残すことで、紛争時の証拠となる。② 支払期限と支払遅延禁止
【ルール】
代金支払期限は「納入日から60日以内」に定める。
【違反例】
× 「いつでもいい」(期限未定)
× 「90日」(60日を超える)
× 「決算月の翌々月」(60日を超える可能性)
【実務的な注意】
現金振込なら納入日から30日以内が一般的。
手形を使う場合も、最長60日が上限。
支払期限を過ぎた場合は「遅延利息」が発生する。③ 支払遅延時の遅延利息
【計算方法】
法定利率:年利14.6%(日歩0.04%)
【計算例】
代金 1,000,000円が30日遅延した場合:
遅延利息 = 1,000,000円 × 14.6% × (30日 ÷ 365日)
= 1,000,000 × 0.146 × 0.082
≒ 11,972円
【重要な点】
「やむを得ない事由がない限り」遅延利息の免除はできない。
やむを得ない事由とは:
- 天災(地震、豪雨など)
- 戦争・テロ
- 親事業者側の銀行破綻
単なる「経営困難」「キャッシュフロー悪化」では理由にならない。④ 書類保存義務
【保存対象】
- 発注書
- 納品書
- 請求書
- 検査記録
- メール(発注内容の確認メールなど)
【保存期間】
2年間(下請法違反を立証する際の証拠として)
【実務的な方法】
紙での保存でも、電子ファイルでも構わない。
ただし、改ざんできない形式(PDF でパスワード保護など)が望ましい。禁止行為(親事業者が絶対にしてはいけないこと)
下請法で禁止される行為は計11項目です。以下の表は、試験でよく問われる項目をまとめました。
| 禁止行為 | 具体例 | なぜ禁止か |
|---|---|---|
| 買いたたき | 市場相場1,000円の部品を「競争があるから500円に」と強要 | 下請事業者に採算割れを強いる不当な扱い |
| 手形長期化 | 支払期限を60日より延長(90日手形など) | キャッシュフロー悪化で下請企業の経営を圧迫 |
| 一方的なキャンセル | 納品予定日3日前に理由なくキャンセル | 下請が既に準備した材料・人員が無駄になる |
| 代金減額 | 納入後に「思ったより品質が低い」と理由なく減額 | 事前の仕様確認が不十分なのに責を下請に押し付け |
| 返品強要 | 不具合でないのに返品させ、修理費を請求 | 親事業者側の瑕疵を下請に負わせる |
| 原材料の強制供給 | 「この素材メーカーの材料のみ使用せよ」と特定メーカーを強要 | 下請の材料選定の自由を奪い、親会社の関連企業を優遇 |
| 報告義務の強要 | 経営情報、技術情報、他社との取引内容を過度に要求 | 下請企業の営業秘密を侵害 |
| 納入者負担による加工 | 「梱包費は下請で負担せよ」と本来は親会社が負うべき費用を押し付け | 代金に含まれない追加費用を強要 |
| 検査費用の押し付け | 親会社の品質検査費を下請に負担させる | 検査は親会社の責任なのに下請に負わせる |
| 受入遅延 | 納品受け取りを理由なく1ヶ月遅延 | 下請のキャッシュフローを圧迫 |
| 買い叩き的値引き | 「◯◯社は500円でやる」と他社を引き合いに値下げ強要 | 根拠のない競争圧力を下請に押し付け |
違反時の処遇:
公正取引委員会(JFTC)または中小企業庁による調査・指導
→ 違反が確認された場合:勧告(企業名・違反内容が公正取引委員会のサイトで公表)
→ 書面交付義務違反・書類保存義務違反など特定の義務違反:50万円以下の罰金
(法人と違反した担当者の双方に適用される場合がある)
→ 勧告に従わず悪質な場合:独占禁止法に基づく排除措置命令・課徴金の可能性サプライチェーンマネジメント(SCM)の概念
SCM の定義と役割
サプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management, SCM)は、「原材料の調達から最終製品の顧客納入まで、一連の流れ全体を統合的に管理し、全体の効率化と顧客満足を実現する経営活動」です。
購買管理・外注管理は、SCM の一部に位置づけられます。
SCM と従来型調達の違い
| 視点 | 従来型(部分最適) | SCM(全体最適) |
|---|---|---|
| 目的 | 購買部門の単価低減 | サプライチェーン全体のコスト最小化 |
| 評価軸 | 個別取引の価格 | TCO(輸送、在庫、品質、リードタイム含む) |
| 供給者との関係 | 競争入札による短期的な関係 | パートナーシップに基づく中長期的な関係 |
| 在庫管理 | 各拠点で独立管理 | 全体で見える化して最適化 |
| 情報共有 | 受注側から供給側への一方向 | 需要予測、在庫、進捗情報を双方向で共有 |
| 意思決定 | 購買部門のみ | 営業、製造、物流、購買が統合的に判断 |
SCM が効果的な具体例
【自動車部品メーカーの例】
従来型:各工場が独立して調達
→ 同じ部品を複数工場で発注(大量割引を逃す)
→ 納期遅延時に代替先が見つからない
→ 在庫が増えて管理費増加
SCM を導入:本部が一元管理
→ 共通部品は集中購買で単価 30%削減
→ サプライヤーデータベースで、納期遅延時の即時代替先を確保
→ 各工場の在庫情報をリアルタイム共有
→ 結果:キャッシュフロー改善、顧客納期厳守典型的なつまずきと試験での出題パターン
よくある誤解
- 「購買と外注は同じ調達活動」と一括で理解する
- ❌ 誤り:購買(モノ)と外注(コト)を同じ枠組みで考える
- ✓ 正解:購買は「資材」、外注は「工程・作業」の違いを押さえる
- 「最安値の調達先が常に最適」と判定する
- ❌ 誤り:単価だけで判定
- ✓ 正解:品質、納期、安定供給のバランスを含むQCD総合評価
- 「集中購買は必ず有利」と決めつける
- ❌ 誤り:全て集中購買で対応
- ✓ 正解:共通資材は集中、急な変動が必要な部品は分散
- 「内製・外注の判断はコスト計算だけ」と考える
- ❌ 誤り:損益分岐点だけで判定
- ✓ 正解:コア技術の保持、需要の変動、設備の陳腐化リスクも考慮
- 「下請法は親会社にだけ適用される」と考える
- ❌ 誤り:大企業だけの法律と誤解
- ✓ 正解:中小企業でも下請になることもあり、親会社になることもある。どちらの場合でも法律を知る必要がある
- 「外注管理は価格交渉だけ」と思う
- ❌ 誤り:値下げ交渉が中心
- ✓ 正解:品質、納期、技術の継続的な管理が重要
問題を解くときの観点
試験では、以下の点を意識して問題を読むことが重要です。
| 観点 | 着眼点 |
|---|---|
| 資材か工程か | いま問われているのは「モノ(購買)」か「コト(外注)」か。用語の定義が問題理解の第一歩 |
| 重み付け | 何が重いのか:価格か、品質か、納期か。問題文の文脈から判定 |
| 内製か委託か | 「実際のコスト」「技術の重要性」「需要の安定性」の3軸で考える |
| 単価の落とし穴 | 「見た目の価格」で判定せず、TCO を考えているか |
| 法的制約 | 下請法のルール違反(書面交付、支払期限、禁止行為)が問われていないか |
| SCM の視点 | サプライチェーン全体で見たときに、最適な選択は何か |
確認問題
問1:損益分岐点と内製・外注の判定
内製の固定費 600,000円、変動費 200円/個。外注単価 500円/個。損益分岐点を求めよ。また、月産 1,500個の場合、内製と外注のどちらが有利か。理由とともに答えよ。
解答: 損益分岐点 = 600,000 ÷ (500 − 200) = 600,000 ÷ 300 = 2,000個
1,500個 < 2,000個なので 外注が有利。
内製コスト:600,000 + 200 × 1,500 = 900,000円 外注コスト:500 × 1,500 = 750,000円 差:150,000円(外注が安い)
問2:集中購買 vs 分散購買の判断
「複数の工場で共通に使う標準ボルトの調達コストを30%削減したい」という経営課題がある。現在は各工場が独立して調達している。集中購買と分散購買のどちらが適切か。また、そう判定した理由を述べよ。
解答: 集中購買 が適切。
理由:
- 共通部品・標準品は複数工場で使う資材
- 本部が一括発注することで大量割引を活用できる
- 大量割引により単価 30%削減が実現可能
- 各工場が個別に発注する分散購買では、小量ロットのため交渉力が弱い
問3:外注の種類の区別
「自社では対応できない特殊な表面処理(ニッケルめっき)を外部の専門業者に委託する」という事例がある。これは能力外注・コスト外注・専門外注のどれに該当するか。また、この分類が重要な理由を述べよ。
解答: 専門外注 に該当。
理由:
- 自社に「ニッケルめっき」という専門技術・設備がない
- 専門外注は「自社にない技術を活用するための外注」の定義に合致
- 能力外注は「自社の処理能力不足を補う」(例:繁忙期の増産)であり、これは該当しない
- 外注の目的(技術補完、能力補完、コスト削減)によって、委託先の選定基準や管理方法が異なるため、分類が重要
問4:下請法の書面交付義務
親会社が下請企業に製造委託をする際に、口頭で「品名:部品X、納期:20日後、代金:50,000円」と発注した。これは下請法の規定に違反するか。違反する場合、どの義務に違反するか。
解答: 違反する。「書面交付義務」に違反。
下請法では、発注時に書面(発注書)を交付することを義務付けている。 口頭発注は禁止。
発注書に記載すべき内容:
- 品名、数量、納期、代金、支払日、支払方法(など)
このページの後で読むページ
このページで理解した購買・外注管理の知識を、他の運営管理トピックと結び付けるため、以下のページへの進みをお勧めします。
- 生産管理 オペレーション — 購買・外注は生産計画(MRP)と連携。需要予測から部品発注まで一貫した流れを理解
- 設備管理と生産性向上 — 外注先設備の信頼性(MTBF、MTTR)を評価する際に参照
- 販売管理指標・物流・流通情報システム — SCM の観点から、物流・在庫情報の統合管理を学ぶ
- 経営法務 — 下請法の詳細、独占禁止法との関連を深掘り
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