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購買・外注管理

購買管理、外注管理、調達先選定、内製・外注判断、下請法を整理する

このページの役割

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このページは、「自社の外から、いかに安定的に資材・工程を調達するか」を整理する解説ページです。購買管理と外注管理の違いを押さえ、内製と委託の判断基準、サプライヤー評価の視点、そして下請法による法的な制約を学びます。

購買管理は「モノ(資材・部品)」を調達する活動です。外注管理は「コト(工程・作業)」を委託する活動です。この違いを理解することが、試験での正確な解答につながります。

なぜこの内容が重要なのか

製造業では、原材料から最終製品の納入まで、多くの調達・委託が発生します。これらを「安い価格」だけで決めれば、品質問題や納期遅延によって全体の生産スケジュールが崩壊します。QCD(品質・コスト・納期)のバランスを見ながら、戦略的に調達先を選び、継続的に関係を管理することが、企業の競争力を左右する重要な機能です。

学習のポイント

このセクションを終えたときに、次の点を説明できるようになりましょう。

  • 購買管理と外注管理の違いは何か
  • 集中購買と分散購買をいつ使い分けるか
  • QCDに加えて、サプライヤー選定では何を見るか
  • 内製と外注の判断は、コスト計算だけでは不十分な理由
  • 下請法が規定する親事業者の義務と禁止行為

購買管理 ── 資材の安定調達

購買管理の目的と5原則

購買管理は、生産に必要な資材・部品を「適切な品質・適切な数量・適切な時期・適切な価格・適切な供給者」から調達する活動です。以下の表は、各原則が「なぜ必要か」を示しています。

原則内容見落とされやすい理由
適正な品質仕様に合致した品質最安値=最適と勘違い。不良率が高い安い部品は、検査費・交換費・製品クレームで総コストが高まる
適正な数量不足も過剰もない過剰在庫は金利・保管費・陳腐化リスク。不足は生産ラインの停止
適正な時期生産計画に合ったタイミング納期遅延は全体スケジュール崩壊。早すぎる納入は在庫増加
適正な価格品質・納期を踏まえた妥当な価格単価だけでなく、輸送費・検査費・品質問題の修正費を含めたトータルコスト(TCO)で判断
適正な供給者信頼できる継続的な取引先単一供給源依存はリスク。複数確保は管理コスト増。戦略的に選定が必要

集中購買 vs 分散購買

同じ資材でも、企業規模・調達量・タイミングの自由度によって、集中か分散かの判断が変わります。

比較軸集中購買分散購買選択の判断ポイント
発注の主体本部が一括各工場・営業所が個別
対象となる資材共通部品・標準品専用部品・特殊品他の工場でも同じ品を使うか
価格交渉力大量発注で強い小量発注で弱い集約効果がメリット
現場対応性遅い(申請プロセス必要)即座に対応可緊急対応が必要か
管理コスト少ない(一括管理)多い(各拠点で管理)重複発注などの無駄が増える
リスク単一供給源依存のリスク複数供給で分散供給安定性の重み付け
向く業種・場面自動車(共通部品)・電機(標準部品)受注生産・多品種製造

判断フロー

調達する資材は、複数の工場で共通に使える資材か、特定の工場だけで使う専用資材か

  • 共通資材・標準品 → 集中購買(本部一括発注)で大量発注→単価低減
  • 工場専用の部品 → 同じ部品なら集中の方が有利だが、調達の自由度が必要なら分散
  • 急な増産・仕様変更 → 分散購買(柔軟性重視)で即応
  • 特殊加工・小ロット → 分散購買(現場との密な調整が必要)

実例:自動車メーカーは「ボルト・ネジは本部集中購買(大量発注で50%コスト削減)」「エンジン部品は各工場で調達(仕様変更に即応)」という使い分けをしています。

調達先選定の評価基準

供給者を選ぶときは、単価だけでなく、以下の5つの観点でスコア化して総合評価します。

評価基準何を見るのか評価の視点重み付けの例
品質(Q)不良率、品質管理の仕組み納入検査での不良率 / ISO認証の有無 / 品質改善の実績25%
コスト(C)単価と総所有コスト単価だけでなく、輸送費・検査費・リードタイム(在庫保管費)30%
納期(D)リードタイム、納期遵守率標準リードタイム / 遵守率 / 急な変動対応力25%
技術力・柔軟性急な増減への対応力、技術提案小ロット対応 / 図面変更対応 / 提案型営業10%
経営安定性企業規模、財務状況、事業継続リスク売上規模 / 負債比率 / 経営者交代予定 / BCP10%

評価は定性的(〇△×)か定量的(スコア 1-5)で行い、複数の候補を並べて比較することが重要です。


外注管理 ── 工程・作業の委託

外注の種類と選択基準

外注は、「なぜ外に任せるのか」という理由によって3つに分類できます。

外注の種類内容典型的な例選択判断
能力外注自社の処理能力不足を補う繁忙期の増産対応、期間限定の受託変動需要への柔軟な対応が目的
コスト外注変動費化してコスト削減単価が安い地域での製造委託需要変動に対応しながらコストを最適化
専門外注自社にない技術・専門知識を活用めっき処理、特殊加工、測定キャリブレーション高度な技術は内製より外注の方が品質安定

各外注の目的が異なるため、委託先の選定基準・管理方法も変わります。

外注管理のプロセス

外注を受け付けた後、品質・納期・コストが確保されるまでのプロセスを示します。

段階管理項目実務的なチェックポイント
委託前の準備仕様書・図面の明確化「自社の要求」が曖昧では、納入後のトラブルが増える。3次元CAD、実物サンプル、検査基準を明示
受注・契約納期・数量・代金・支払条件口頭発注は禁止(下請法)。発注書に品名、数量、納期、代金、支払日を明記
生産進捗の監視定期的な進捗確認週次または月次で外注先と協議。遅延の早期発見が重要
受入検査品質の確認納入時に全数または抜き取り検査。不良率が高い場合は改善計画を要求
工程監査外注先の製造方法・体制の確認3~6ヶ月ごとに外注先の工場を訪問。品質管理体制、設備、作業員の技能レベルを確認
品質データの共有月次の品質報告不良内容、原因分析、改善状況を報告させ、PDCA を促進
継続的な関係構築中期取引での信頼構築単一案件ごとの最安値選定ではなく、3-5年単位での関係を想定した交渉

内製 vs 外注の判断 ── コスト分析と戦略判断

判断の3つの軸

「自社で製造するべきか、外に委託すべきか」は、コスト、戦略、リスクの3軸で検討します。

判断軸内製が有利外注が有利考慮すべき点
コスト視点固定費を既に投下済み(余剰能力がある)変動費化して需要変動に対応固定費の回収期間、生産量の不確実性
技術・コア戦略自社の中核技術・競争優位性非コア工程・コモディティ化した工程10年後も自社が競争優位を持ちたいか
品質管理厳密な品質管理が必要(医療機器など)標準的な品質で事足りる品質不良時のリスク(顧客への影響)
需要変動安定した需要予測(変動が小さい)需要が大きく変動する(季節性・プロジェクト型)設備の稼働率の見通し
設備投資既に設備・技能がある新規投資が必要 / 設備の陳腐化リスク投資回収期間、技術の急速な進化
人員管理既に人員配置済み人員増減を避けたい雇用・解雇のコストと企業文化
サプライチェーン リスク完全な自社管理で安定供給外注先の倒産・納期遅延リスク供給の完全性、代替先の有無

内製・外注の経済的判断:損益分岐点分析

基本的な損益分岐点計算

内製と外注のどちらが安いかは、生産量によって変わります。損益分岐点を求めることで、「何個以上なら内製が有利か」を判定できます。

【計算式】
  内製コスト = 固定費 + 変動費 × 数量
  外注コスト = 外注単価 × 数量

  内製コスト = 外注コスト となる量が損益分岐点:
  固定費 + 変動費 × Q = 外注単価 × Q

  損益分岐点 Q = 固定費 ÷ (外注単価 − 変動費)

計算例①:基本パターン

【設定】
  内製: 固定費 500,000円/年、変動費 300円/個
  外注: 800円/個

【計算】
  損益分岐点 = 500,000 ÷ (800 − 300)
             = 500,000 ÷ 500
             = 1,000個

【解釈】
  - 1,000個未満 → 外注が安い(外注が有利)
  - 1,000個以上 → 内製が安い(内製が有利)

【具体例:月産 1,500個の場合】
  内製コスト = 500,000 + 300 × 1,500 = 950,000円
  外注コスト = 800 × 1,500 = 1,200,000円
  → 内製が 250,000円安い

このように、生産量が多いほど、固定費を複数個で分割できるため、内製のメリットが大きくなります。

総所有コスト(TCO)の考慮

損益分岐点計算で「内製が有利」と判定しても、実際の外注選定では、単価以外の要因も大きく影響します。これを 総所有コスト(Total Cost of Ownership, TCO) と呼びます。

費用項目内容見落としやすい例
購入価格部品の単価 × 数量最安値業者を選んだが…
輸送・梱包費調達地から工場までのコスト海外調達の送料が単価を上回ることもある
受入検査・受入コスト納入時の検査、データ確認、不合格品の処理不良率が5%なら、検査コスト+修正コストで国内業者より高くなる
在庫保管・管理費保管スペース、金利、陳腐化リスクリードタイムが長い業者を選ぶと、在庫が増えて保管費が増加
品質不良対応コスト納入後の不良対応、顧客対応、内部品質改善納期遅延が発生すると、全体の生産スケジュール崩壊=外注増加コスト
リードタイム対応コスト調達期間が長いと、急な変動に対応できず緊急手配が増加急な増減対応ができない業者を選ぶと、機会損失が増える

実例

一見、海外メーカーが 500円安い(600円 vs 1,100円)ように見えても:
  単価:600円
  + 輸送費(航空便):300円
  + 受入検査(3%不良率):150円
  + 品質問題の対応費:200円
  = 実際のコスト:1,250円(国内業者より高い)

TCOを正確に計算するには、1年間の実績データを使う必要があります。「見た目の価格」だけで判定してはいけません。

シナリオ分析:外注単価が変動した場合

外注先との交渉によって単価が変わった場合、損益分岐点がどう動くかをシミュレーションします。

【基本想定】
  内製: 固定費 500,000円、変動費 300円/個

【シナリオ A:外注単価 800円/個(現在の単価)】
  損益分岐点 = 500,000 ÷ (800 − 300) = 1,000個

  月産 1,000個の場合:
    内製: 500,000 + 300 × 1,000 = 800,000円
    外注: 800 × 1,000 = 800,000円
    → ほぼ同等

【シナリオ B:値引き交渉成功、外注単価 700円/個】
  損益分岐点 = 500,000 ÷ (700 − 300) = 500,000 ÷ 400 = 1,250個
  → 分岐点が上がる=内製の有利性が減る

  月産 1,000個の場合:
    内製: 800,000円
    外注: 700 × 1,000 = 700,000円
    → 外注が 100,000円有利に

【シナリオ C:値上げ、外注単価 900円/個】
  損益分岐点 = 500,000 ÷ (900 − 300) = 500,000 ÷ 600 = 833個
  → 分岐点が下がる=より少量で内製が有利に

  月産 1,000個の場合:
    内製: 800,000円
    外注: 900 × 1,000 = 900,000円
    → 内製が 100,000円有利に

この分析を 感度分析(Sensitivity Analysis) と呼び、外注先交渉時、需要予測の不確実性がある場合に活用します。


外注管理のリスク対策

品質リスクへの対処

外注先の品質が低いと、納入後に大量の手直しが必要になり、全体の生産スケジュールが崩壊します。

具体的な対策

  1. 受け入れ検査の徹底
    • 納入時に全数または抜き取り検査を実施
    • 不良率が基準を超えた場合、改善計画書を要求
    • 月次で不良率トレンドを確認し、継続的な改善を促進
  2. 工程監査(3~6ヶ月ごと)
    • 外注先の工場を訪問し、実際の製造現場を確認
    • 品質管理体制、計測機器の校正、作業指標の掲示、5S の実施状況を確認
    • 改善がない場合は、他社への切り替えを検討
  3. 品質データの共有と改善促進
    • 月次で「不良内容」「発生原因」「改善状況」を報告させる
    • 共同で原因分析(QC7 つ道具など)を行い、PDCA サイクルを回す
    • 改善実績を評価に反映し、単価交渉に活用

納期リスクへの対処

外注先の納期遅延は、自社の生産ラインを停止させ、顧客納期にも影響します。

具体的な対策

  1. 複社購買(サプライヤー分散)
    • 同じ部品を複数の外注先から調達
    • 一社が納期遅延しても、他社でカバー可能に
    • ただし管理コストが増えるため、重要度の高い部品のみ対象
  2. 進捗確認プロセス
    • 発注後、定期的(週次または月次)に製造進捗を確認
    • 遅延の兆候が見えたら、早期に対応(優先度変更、並行処理など)
    • 納期遵守率を評価指標として記録
  3. リードタイム管理
    • 外注先の標準リードタイムを把握
    • 急な増産に対応可能な余力があるか事前に確認
    • 生産計画作成時に、リードタイムを十分に見込む

技術・知財リスクへの対処

外注先に自社の技術を提供する場合、不正流出や二次利用を防ぐ必要があります。

具体的な対策

  1. コア技術は内製維持
    • 自社の競争優位性を決める技術は、決して外注してはならない
    • 外注するのは「コモディティ化した工程」「標準的な加工」のみ
  2. 図面・仕様書の厳密な管理
    • 提供する図面に「機密」「目的外利用禁止」「第三者への提供禁止」と明記
    • 納品後に図面を回収するか、期間限定アクセスにする
    • 秘密保持契約(NDA)を締結
  3. 技術指導
    • 外注先の技術力が不十分な場合、社員を派遣して直接指導
    • 単なる「発注先」ではなく、「共同開発パートナー」としての信頼関係を構築

経営リスクへの対処

外注先が倒産や事業廃止になると、サプライチェーン全体が機能不全に陥ります。

具体的な対策

  1. 経営安定性の定期確認
    • 1~2年ごとに、外注先の財務状況(売上、負債、資本)を確認
    • 経営者交代予定、主要顧客からの受注減少など、経営環境の変化を把握
  2. BCP(事業継続計画)の構築
    • 重要な外注先が操業不能になった場合の代替先を事前に確保
    • 地震やパンデミック時にどの程度の期間、代替先で対応できるか確認
    • 最悪の場合、自社での緊急生産体制も想定

下請法:親事業者の義務と禁止行為

下請法が適用される取引

「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)は、大企業が中小企業を不当に扱うことを禁止する法律です。製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託の4種類が対象です。

適用基準(資本金による区分)

取引形態親事業者の資本金下請事業者の資本金対象業種
製造委託・修理委託3億円超3億円以下製造業全般(自動車部品、電子部品など)
製造委託・修理委託1,000万円超〜3億円以下1,000万円以下製造業全般
役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理)・プログラム作成委託3億円超3億円以下物流業・ソフトウェア開発
役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理)・プログラム作成委託1,000万円超〜3億円以下1,000万円以下物流業・ソフトウェア開発
情報成果物作成委託(非プログラム)・その他役務提供委託5,000万円超5,000万円以下設計・映像制作・広告制作・清掃・警備など
情報成果物作成委託(非プログラム)・その他役務提供委託1,000万円超〜5,000万円以下1,000万円以下設計・映像制作・広告制作・清掃・警備など

「製造委託」とは、カスタマイズ製品や部品の製造を外注することを指します。建設業、物品レンタル業、飲食店(外食チェーンの代理店など)は対象外です。

親事業者の4つの主要な義務

下請法で親事業者に課される義務を理解することで、「下請となる側の権利」も明確になります。

① 書面交付義務

【内容】
発注時に「発注書」を交付する。口頭発注は禁止。

【記載すべき内容】
  - 品名(商品の詳細説明)
  - 数量(個数)
  - 納期(納入日時)
  - 代金(支払額)
  - 支払日(いつまでに払うか)
  - 支払方法(現金、振込など)
  - その他特記事項(返品の可否、不良時の対応など)

【ポイント】
  口頭発注は「後で金額を決める」という曖昧さを招きやすい。
  書面を残すことで、紛争時の証拠となる。

② 支払期限と支払遅延禁止

【ルール】
代金支払期限は「納入日から60日以内」に定める。

【違反例】
  × 「いつでもいい」(期限未定)
  × 「90日」(60日を超える)
  × 「決算月の翌々月」(60日を超える可能性)

【実務的な注意】
  現金振込なら納入日から30日以内が一般的。
  手形を使う場合も、最長60日が上限。
  支払期限を過ぎた場合は「遅延利息」が発生する。

③ 支払遅延時の遅延利息

【計算方法】
法定利率:年利14.6%(日歩0.04%)

【計算例】
代金 1,000,000円が30日遅延した場合:
  遅延利息 = 1,000,000円 × 14.6% × (30日 ÷ 365日)
           = 1,000,000 × 0.146 × 0.082
           ≒ 11,972円

【重要な点】
  「やむを得ない事由がない限り」遅延利息の免除はできない。
  やむを得ない事由とは:
    - 天災(地震、豪雨など)
    - 戦争・テロ
    - 親事業者側の銀行破綻
  単なる「経営困難」「キャッシュフロー悪化」では理由にならない。

④ 書類保存義務

【保存対象】
  - 発注書
  - 納品書
  - 請求書
  - 検査記録
  - メール(発注内容の確認メールなど)

【保存期間】
2年間(下請法違反を立証する際の証拠として)

【実務的な方法】
  紙での保存でも、電子ファイルでも構わない。
  ただし、改ざんできない形式(PDF でパスワード保護など)が望ましい。

禁止行為(親事業者が絶対にしてはいけないこと)

下請法で禁止される行為は計11項目です。以下の表は、試験でよく問われる項目をまとめました。

禁止行為具体例なぜ禁止か
買いたたき市場相場1,000円の部品を「競争があるから500円に」と強要下請事業者に採算割れを強いる不当な扱い
手形長期化支払期限を60日より延長(90日手形など)キャッシュフロー悪化で下請企業の経営を圧迫
一方的なキャンセル納品予定日3日前に理由なくキャンセル下請が既に準備した材料・人員が無駄になる
代金減額納入後に「思ったより品質が低い」と理由なく減額事前の仕様確認が不十分なのに責を下請に押し付け
返品強要不具合でないのに返品させ、修理費を請求親事業者側の瑕疵を下請に負わせる
原材料の強制供給「この素材メーカーの材料のみ使用せよ」と特定メーカーを強要下請の材料選定の自由を奪い、親会社の関連企業を優遇
報告義務の強要経営情報、技術情報、他社との取引内容を過度に要求下請企業の営業秘密を侵害
納入者負担による加工「梱包費は下請で負担せよ」と本来は親会社が負うべき費用を押し付け代金に含まれない追加費用を強要
検査費用の押し付け親会社の品質検査費を下請に負担させる検査は親会社の責任なのに下請に負わせる
受入遅延納品受け取りを理由なく1ヶ月遅延下請のキャッシュフローを圧迫
買い叩き的値引き「◯◯社は500円でやる」と他社を引き合いに値下げ強要根拠のない競争圧力を下請に押し付け

違反時の処遇

公正取引委員会(JFTC)または中小企業庁による調査・指導
→ 違反が確認された場合:勧告(企業名・違反内容が公正取引委員会のサイトで公表)
→ 書面交付義務違反・書類保存義務違反など特定の義務違反:50万円以下の罰金
  (法人と違反した担当者の双方に適用される場合がある)
→ 勧告に従わず悪質な場合:独占禁止法に基づく排除措置命令・課徴金の可能性

サプライチェーンマネジメント(SCM)の概念

SCM の定義と役割

サプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management, SCM)は、「原材料の調達から最終製品の顧客納入まで、一連の流れ全体を統合的に管理し、全体の効率化と顧客満足を実現する経営活動」です。

購買管理・外注管理は、SCM の一部に位置づけられます。

SCM と従来型調達の違い

視点従来型(部分最適)SCM(全体最適)
目的購買部門の単価低減サプライチェーン全体のコスト最小化
評価軸個別取引の価格TCO(輸送、在庫、品質、リードタイム含む)
供給者との関係競争入札による短期的な関係パートナーシップに基づく中長期的な関係
在庫管理各拠点で独立管理全体で見える化して最適化
情報共有受注側から供給側への一方向需要予測、在庫、進捗情報を双方向で共有
意思決定購買部門のみ営業、製造、物流、購買が統合的に判断

SCM が効果的な具体例

【自動車部品メーカーの例】

従来型:各工場が独立して調達
  → 同じ部品を複数工場で発注(大量割引を逃す)
  → 納期遅延時に代替先が見つからない
  → 在庫が増えて管理費増加

SCM を導入:本部が一元管理
  → 共通部品は集中購買で単価 30%削減
  → サプライヤーデータベースで、納期遅延時の即時代替先を確保
  → 各工場の在庫情報をリアルタイム共有
  → 結果:キャッシュフロー改善、顧客納期厳守

典型的なつまずきと試験での出題パターン

よくある誤解

  1. 「購買と外注は同じ調達活動」と一括で理解する
    • ❌ 誤り:購買(モノ)と外注(コト)を同じ枠組みで考える
    • ✓ 正解:購買は「資材」、外注は「工程・作業」の違いを押さえる
  2. 「最安値の調達先が常に最適」と判定する
    • ❌ 誤り:単価だけで判定
    • ✓ 正解:品質、納期、安定供給のバランスを含むQCD総合評価
  3. 「集中購買は必ず有利」と決めつける
    • ❌ 誤り:全て集中購買で対応
    • ✓ 正解:共通資材は集中、急な変動が必要な部品は分散
  4. 「内製・外注の判断はコスト計算だけ」と考える
    • ❌ 誤り:損益分岐点だけで判定
    • ✓ 正解:コア技術の保持、需要の変動、設備の陳腐化リスクも考慮
  5. 「下請法は親会社にだけ適用される」と考える
    • ❌ 誤り:大企業だけの法律と誤解
    • ✓ 正解:中小企業でも下請になることもあり、親会社になることもある。どちらの場合でも法律を知る必要がある
  6. 「外注管理は価格交渉だけ」と思う
    • ❌ 誤り:値下げ交渉が中心
    • ✓ 正解:品質、納期、技術の継続的な管理が重要

問題を解くときの観点

試験では、以下の点を意識して問題を読むことが重要です。

観点着眼点
資材か工程かいま問われているのは「モノ(購買)」か「コト(外注)」か。用語の定義が問題理解の第一歩
重み付け何が重いのか:価格か、品質か、納期か。問題文の文脈から判定
内製か委託か「実際のコスト」「技術の重要性」「需要の安定性」の3軸で考える
単価の落とし穴「見た目の価格」で判定せず、TCO を考えているか
法的制約下請法のルール違反(書面交付、支払期限、禁止行為)が問われていないか
SCM の視点サプライチェーン全体で見たときに、最適な選択は何か

確認問題

問1:損益分岐点と内製・外注の判定

内製の固定費 600,000円、変動費 200円/個。外注単価 500円/個。損益分岐点を求めよ。また、月産 1,500個の場合、内製と外注のどちらが有利か。理由とともに答えよ。

解答: 損益分岐点 = 600,000 ÷ (500 − 200) = 600,000 ÷ 300 = 2,000個

1,500個 < 2,000個なので 外注が有利

内製コスト:600,000 + 200 × 1,500 = 900,000円 外注コスト:500 × 1,500 = 750,000円 差:150,000円(外注が安い)

問2:集中購買 vs 分散購買の判断

「複数の工場で共通に使う標準ボルトの調達コストを30%削減したい」という経営課題がある。現在は各工場が独立して調達している。集中購買と分散購買のどちらが適切か。また、そう判定した理由を述べよ。

解答集中購買 が適切。

理由:

  • 共通部品・標準品は複数工場で使う資材
  • 本部が一括発注することで大量割引を活用できる
  • 大量割引により単価 30%削減が実現可能
  • 各工場が個別に発注する分散購買では、小量ロットのため交渉力が弱い

問3:外注の種類の区別

「自社では対応できない特殊な表面処理(ニッケルめっき)を外部の専門業者に委託する」という事例がある。これは能力外注・コスト外注・専門外注のどれに該当するか。また、この分類が重要な理由を述べよ。

解答専門外注 に該当。

理由:

  • 自社に「ニッケルめっき」という専門技術・設備がない
  • 専門外注は「自社にない技術を活用するための外注」の定義に合致
  • 能力外注は「自社の処理能力不足を補う」(例:繁忙期の増産)であり、これは該当しない
  • 外注の目的(技術補完、能力補完、コスト削減)によって、委託先の選定基準や管理方法が異なるため、分類が重要

問4:下請法の書面交付義務

親会社が下請企業に製造委託をする際に、口頭で「品名:部品X、納期:20日後、代金:50,000円」と発注した。これは下請法の規定に違反するか。違反する場合、どの義務に違反するか。

解答違反する。「書面交付義務」に違反。

下請法では、発注時に書面(発注書)を交付することを義務付けている。 口頭発注は禁止。

発注書に記載すべき内容:

  • 品名、数量、納期、代金、支払日、支払方法(など)

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