財務・会計(平成19年度)
平成19年度(2007)中小企業診断士第1次試験 財務・会計の全25問解説
概要
平成19年度(2007)の財務・会計は全25問(各4点、100点満点)で出題されました。簿記(仕訳・精算表・勘定記入)、会計(財務諸表・五つの利益)、資金管理(キャッシュフロー)、経営分析(収益性・安全性・効率性)が幅広く含まれています。
問題文は J-SMECA 公式サイト から入手できます。手元に PDF を用意したうえでお読みください。全年度の問題は J-SMECA 試験問題ページ で公開されています。
解説の読み方
各問について「問題要旨 → 分類タグ → 正解 → 必要知識 → 解法の思考プロセス → 誤答の落とし穴 → 学習アドバイス」の順で解説しています。分類タグの意味は本ページ末尾の凡例を参照してください。
出題構成
| 領域 | 問番号 | 問数 |
|---|---|---|
| 簿記・会計基礎 | 1-9 | 9問 |
| 経営分析・CVP分析 | 10-13 | 4問 |
| 資金管理・財務理論 | 14-17 | 4問 |
全問分類マップ
| 問 | テーマ | 知識種類 | 思考法 | 形式層 | 罠パターン |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 基本式による純資産変動 | K4 | T3 | L2 | Trap-A |
| 2-1 | 売上総利益逆算 | K4 | T3 | L3 | Trap-E |
| 2-2 | 経過勘定(未収利息) | K4 | T3 | L2 | Trap-B |
| 2-3 | 精算表損益計算書欄 | K2 | T2 | L2 | Trap-D |
| 3 | 経過勘定項目定義 | K1 | T1 | L1 | Trap-A |
| 4 | 役員賞与会計処理 | K5 | T4 | L2 | Trap-C |
| 5 | 連結貸借対照表記載形式 | K2 | T2 | L1 | Trap-D |
| 6 | 株主資本変動・利益準備金 | K4 | T3 | L3 | Trap-E |
| 7 | 計算書類定義 | K5 | T1 | L1 | Trap-A |
| 8 | 標準原価定義 | K1 | T1 | L1 | Trap-D |
| 9 | 流動性分析 | K3 | T2 | L2 | Trap-C |
| 10-1 | 損益分岐点売上高 | K3 | T3 | L3 | Trap-E |
| 10-2 | 制約条件下での利益最大化 | K4 | T4 | L4 | Trap-B |
| 11 | M&A用語 | K1 | T1 | L1 | Trap-D |
| 12-1 | ROE計算 | K3 | T3 | L2 | Trap-E |
| 12-2 | PER計算 | K3 | T3 | L2 | Trap-E |
| 13 | キャッシュフロー計算 | K4 | T3 | L3 | Trap-E |
| 14 | CAPM計算 | K3 | T3 | L3 | Trap-E |
| 15 | プット・オプション評価 | K4 | T4 | L3 | Trap-C |
| 16-1 | NPV標準偏差 | K4 | T4 | L3 | Trap-B |
| 16-2 | リスク調整割引率法 | K4 | T4 | L4 | Trap-C |
| 17-1 | 簿価による自己資本利益率 | K3 | T3 | L2 | Trap-E |
| 17-2 | 自己資本の価値(A/B) | K4 | T3 | L3 | Trap-E |
| 17-3 | 時価による自己資本利益率 | K4 | T4 | L3 | Trap-B |
| 17-4 | 法人税下での企業価値 | K4 | T3 | L4 | Trap-E |
簿記・会計基礎
第1問 基本式による純資産変動
問題要旨: 貸借対照表方程式(資産 = 負債 + 純資産)から、期末負債の欠落額を逆算する
K4 因果メカニズム T3 計算実行 L2 Trap-A 逆方向誘発
正解: イ(600)
必要知識: 貸借対照表の基本構造 — 資産・負債・純資産の関係
解法の思考プロセス:
貸借対照表方程式:資産 = 負債 + 純資産
期首:640 = 280 + 純資産 → 期首純資産 = 360
期末の純資産 = 期首純資産 + 当期純損益 + その他増加 − その他減少 → 期末純資産 = 360 + 210 − 190 = 380
期末:810 = 負債(A)+ 380 → A = 430
誤答の落とし穴:
- Trap-A(逆方向): 負債と純資産を逆に計算してしまう
- 期末資産810を単純に負債と誤認識する
- 資産の増加分(810 - 640 = 170)を直接負債の増加と考える誤り
学習アドバイス:
貸借対照表方程式は必ず「資産 = 負債 + 純資産」の形で整理する。方向を図示して確認することが重要。
第2問 精算表と会計処理(複数設問)
問題要旨: 精算表から、売上総利益・受取利息・損益計算書欄の金額を計算
設問1:売上総利益から繰越商品を逆算
K4 因果メカニズム T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: ウ(206)
必要知識: 費用・収益の分類 — 売上原価の計算
解法の思考プロセス:
売上総利益 = 売上 − 売上原価 280 = 1,440 − 売上原価 → 売上原価 = 1,160
売上原価 = 期首繰越商品 + 仕入 − 期末繰越商品 1,160 = 期首繰越商品 + 1,152 − 198 → 期首繰越商品 = 206
誤答の落とし穴:
- Trap-E(計算ミス誘発): 売上と売上原価の区別が不明確になりやすい
- 1,440を売上原価と誤認識する
- 期末繰越商品198を加算してしまう誤り
学習アドバイス:
売上原価計算は「期首繰越商品 + 仕入 − 期末繰越商品」の公式を暗唱すること。
設問2:受取利息と未収利息
K4 因果メカニズム T3 計算実行 L2 Trap-B 条件すり替え
正解: イ(B:10、C:15)
必要知識: 経過勘定項目 — 未収・未払・前払・後払いの違い
解法の思考プロセス:
この設問は、試算表に載っている現金受取額 と 損益計算書に載せる当期発生額 を分けて考えると切れます。
- B: 残高試算表の受取利息は、当期中に現金で受け取った額なので
10 - C: 損益計算書の受取利息は、当期発生額なので
現金受取 10 + 期末未収 5 = 15
したがって、B = 10、C = 15 となるイが正解です。
誤答の落とし穴:
- Trap-B(条件すり替え):
現金で受け取った額と当期に発生した額を同じものとして扱うと崩れます - 未収利息 5 を B にも C にも足してしまうミスが多いです
学習アドバイス:
利息・家賃・保険料の精算表問題では、試算表 = 現金ベース、損益計算書 = 発生ベース と置いて見ると整理しやすくなります。
設問3:精算表の損益計算書・貸借対照表欄
K2 グラフ形状 T2 グラフ読解 L2 Trap-D 混同誘発
正解: イ(D と G)
必要知識: 精算表の構造 — 各欄の役割
解法の思考プロセス:
損益計算書欄には「費用・収益」が記入される。 貸借対照表欄には「資産・負債・純資産」が記入される。
D、E、F、G のうち:
- 当期純利益は損益計算書欄にも貸借対照表欄にも記入される
- 金額が記入される箇所は D(損益計算書貸方)と G(貸借対照表借方)
誤答の落とし穴:
- Trap-D(混同誘発): 損益計算書欄と貸借対照表欄の役割を混同する
- E や F に記入すべきと考える誤り
学習アドバイス:
精算表は「試算表 → 修正記入 → 損益計算書 → 貸借対照表」の4段階。各段階の役割を図解で確認。
第3問 経過勘定項目の定義
問題要旨: 継続役務(保守契約等)の会計処理に関する語句埋め問題
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-A 逆方向誘発
正解: ウ
必要知識: 経過勘定4項目の定義 — 前払費用、未払費用、未収収益、前受収益
解法の思考プロセス:
文の意味は、継続して役務の提供を行う側 が、まだ提供していない部分の対価を先にもらっている 場面です。これは前受収益の説明になります。
- A:
行う - B:
いまだ提供していない役務に対し支払いを受けた - C: 当期分ではないので損益計算から
除去 - D: 将来サービスを提供する義務なので
負債
よってウが正解です。
誤答の落とし穴:
- Trap-A(逆方向):
提供する側と提供を受ける側を逆に読むと、前受収益と前払費用を取り違えます
学習アドバイス:
経過勘定は 誰がサービスをするのか と 現金が先か後か の2軸で整理すると安定します。前受収益 = 先に受け取ったが、まだ提供していない です。
第4問 役員賞与の会計処理
問題要旨: 役員賞与を費用として計上することの会計処理上の正当性を問う
K5 制度・データ T4 因果推論 L2 Trap-C 部分正解
正解: エ
必要知識: 会計原則と制度会計 — 役員報酬と役員賞与の取扱
解法の思考プロセス:
役員賞与と役員報酬の区別:
- 役員報酬:職務執行の対価として定期的に支給される確定報酬
- 役員賞与:業績に基づき支給される可変報酬
会計処理上の判断:
- 株主総会の決議が前提でも、職務執行の対価として費用計上が適切
- 支給手続(事前決議 vs 事後決議)の相違は、本質的な性格に影響しない
- 金額確定の有無も、対価としての性質を変えない
エ:「職務執行の対価としての性格は、支給手続の相違により影響を受けるものではない。その性格に従い、費用として処理することが適当」
誤答の落とし穴:
- Trap-C(部分正解): ア「決議が前提なので計上不適切」に惑わされる
- イ「業績連動ではない」という表面的な判断
学習アドバイス:
会計原則は「支給手続」ではなく「経済実質」で判断する。
第5問 連結貸借対照表の純資産部記載形式
問題要旨: 連結貸借対照表の純資産の部における、株主資本・評価換算差額・少数株主持分の並び順を判断
K2 グラフ形状 T2 グラフ読解 L1 Trap-D 混同誘発
正解: エ
必要知識: 連結会計と純資産表示 — 企業会計基準での表示順序
解法の思考プロセス:
平成19年度の連結貸借対照表では、純資産の部は次の順で押さえます。
- 株主資本
- 評価・換算差額等(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益等を含む)
- 新株予約権
- 少数株主持分
この並びに合うのはエです。
誤答の落とし穴:
- Trap-D(混同誘発): 金額はどの選択肢でも同じなので、順番だけを見ないと切れません
- 少数株主持分の位置を早めに置いてしまうミスが多いです
学習アドバイス:
表示問題は 何をどこに並べるか の暗記が必要です。連結会計は特に、少数株主持分と新株予約権の位置を取り違えやすいので注意してください。
第6問 株主資本変動と利益準備金
問題要旨: 会社法に基づく配当時の利益準備金と繰越利益剰余金の増減を計算
K4 因果メカニズム T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: イ(利益準備金:20の増加、繰越利益剰余金:220の減少)
必要知識: 会社法計算規則と利益準備金 — 配当時の強制積立
解法の思考プロセス:
利益準備金の積立額は、配当額の10% と 資本金の4分の1に達するまでに必要な額 の小さい方です。
- 配当額の 10% =
200 × 10% = 20 - 資本金の 4 分の 1 =
2,400 × 1/4 = 600 - 既存の準備金合計 =
資本準備金 400 + 利益準備金 120 = 520 - 600 に達するまで不足しているのは
80
したがって積むべき利益準備金は 20 です。繰越利益剰余金は、配当 200 と積立 20 を合わせて 220 減ります。よってイが正解です。
誤答の落とし穴:
- Trap-E(計算ミス):
配当額の10%だけで終わらせず、資本金の4分の1との比較までやる必要があります
学習アドバイス:
この論点は、まず不足額を出す、次に配当額の10%と比べる の順に処理すると安定します。
第7問 会社法上の計算書類
問題要旨: 株式会社の会社法上の計算書類として最も適切なものを選ぶ
K5 制度・データ T1 正誤判定 L1 Trap-A 逆方向誘発
正解: ウ(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)
必要知識: 会計書類と法定書類 — 会社計算規則の定義
解法の思考プロセス:
会社法上の計算書類(435条2項):
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
事業報告や付属明細書は別の書類(監査対象は異なる)。
ウが正答。
誤答の落とし穴:
- Trap-A(逆方向): 事業報告を計算書類に含める誤り
学習アドバイス:
会社法425条を暗唱する。計算書類 vs 事業報告の区別が重要。
第8問 標準原価の定義
問題要旨: 標準原価と予定原価の定義を正しく述べた文章の組み合わせを選ぶ
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発
正解: エ(bとe)
必要知識: 標準原価と予定原価 — 定義の区別
解法の思考プロセス:
この問題は、予定原価 と 標準原価 で使う価格概念の違いを見る問題です。
- b: 予定原価は
予定消費量 × 予定価格なので正しい - e: 標準原価は、能率の尺度となる標準消費量に
予定価格または正常価格を掛けて求めるので正しい - d: 標準原価に
実際価格を入れているので誤り
したがって、正しい組み合わせは bとe のエです。
誤答の落とし穴:
- Trap-D(混同誘発):
実際価格が入った瞬間に、標準原価の説明としては怪しくなります
学習アドバイス:
定義問題は、文章を丸暗記するより、予定原価は予定ベース、標準原価は科学的・統計的に設定した標準ベース と対比で覚える方が崩れません。
第9問 流動性分析(経営分析指標)
問題要旨: A社とB社の流動性指標(自己資本比率、流動比率、当座比率)を計算し、比較
K3 数式・公式 T2 グラフ読解 L2 Trap-C 部分正解
正解: エ(当座比率はB社がA社より良好であるが、流動比率はA社がB社より良好である)
必要知識: 流動性分析 — 流動比率と当座比率の計算と解釈
解法の思考プロセス:
流動比率 は棚卸資産を含み、当座比率 は棚卸資産を除きます。ここを分けて計算します。
A社
- 流動資産 = 40 + 30 + 50 + 40 + 160 = 320
- 流動負債 = 50 + 90 = 140
- 流動比率 = 320 / 140 = 約229%
- 当座資産 = 40 + 30 + 50 + 40 = 160
- 当座比率 = 160 / 140 = 約114%
B社
- 流動資産 = 60 + 30 + 40 + 50 + 110 = 290
- 流動負債 = 80 + 60 = 140
- 流動比率 = 290 / 140 = 約207%
- 当座資産 = 60 + 30 + 40 + 50 = 180
- 当座比率 = 180 / 140 = 約129%
したがって、当座比率はB社の方が良い、流動比率はA社の方が良い のでエが正解です。
誤答の落とし穴:
- Trap-C(部分正解): 棚卸資産を当座資産から外し忘れると、流動比率と当座比率が同じ方向に見えてしまいます
学習アドバイス:
棚卸資産が多い会社は、流動比率は高くても当座比率が下がることがあります。棚卸を抜いたらどう見えるか を必ず確認してください。
経営分析・CVP分析
第10問 CVP分析(損益分岐点と最適生産計画)
問題要旨: 複数製品の損益分岐点売上高と制約条件下での営業利益最大化を計算
設問1:損益分岐点売上高
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: ウ(2,990,000円)
必要知識: CVP分析 — 損益分岐点売上高の計算
解法の思考プロセス:
まず各製品の限界利益率を確認します。
- A:
(6,000 - 4,200) / 6,000 = 30% - B:
(9,000 - 6,300) / 9,000 = 30% - C:
(12,000 - 8,400) / 12,000 = 30%
3製品とも限界利益率が同じなので、加重平均を取り直しても 30% のままです。
共通固定費は 577,000 + 320,000 = 897,000円 ですから、損益分岐点売上高は
897,000 / 0.30 = 2,990,000円
となります。
誤答の落とし穴:
- Trap-E(計算ミス): 複数製品だからといって無理に複雑な加重平均計算をし、同じ30%という事実を見落とす
学習アドバイス:
複数製品のCVPでは、先に 各製品の限界利益率が同じか を見てください。同じなら、その時点で平均限界利益率も同じです。
設問2:制約条件下での営業利益最大化
K4 因果メカニズム T4 因果推論 L4 Trap-B 条件すり替え
正解: エ(A:400、B:200、C:50)
必要知識: 線形計画法 — 限界利益と制約条件
解法の思考プロセス:
制約要因:設備稼働時間 1,000時間
各製品の1時間当たりの限界利益を計算:
- A:1,800 / 1 = 1,800円/時間
- B:2,700 / 2 = 1,350円/時間
- C:3,600 / 4 = 900円/時間
優先順序:A > B > C
最大販売数量:A=400, B=200, C=120
時間配分(1時間当たり限界利益の高い順に充当):
- A:400 × 1時間 = 400時間
- B:200 × 2時間 = 400時間
- C:残り1,000 − 400 − 400 = 200時間 → C = 200 / 4 = 50kg
合計:400 + 400 + 200 = 1,000時間(制約ちょうど)
誤答の落とし穴:
- Trap-B(条件見落とし): 制約条件(設備時間1,000時間)を見落とす
学習アドバイス:
制約下での最適化は「限界利益 / 制約単位」で優先順序を決定。
第11問 M&A用語マッチング
問題要旨: 企業買収と買収防衛策の事柄と用語を正しくマッチング
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 混同誘発
正解: ア(①-a、②-b、③-c、④-d)
必要知識: M&A戦略と用語 — グリーンメール、焦土作戦、ホワイト・ナイト、ポイズン・ピル
解法の思考プロセス:
- ①グリーンメール(a):買収企業が買い占めた株を買い取らせる → グリーンメール
- ②焦土作戦(b):優良事業を売却して企業価値を低下させる → 焦土作戦
- ③ホワイト・ナイト(c):友好的な白馬の騎士が支援する → ホワイト・ナイト
- ④ポイズン・ピル(d):新株予約権を交付する毒薬 → ポイズン・ピル
誤答の落とし穴:
- Trap-D(混同誘発): グリーンメールと焦土作戦を混同しやすい
学習アドバイス:
用語を情景的に覚える:グリーン(金銭)、焦土(破壊)、白馬(援救)、毒(防御)。
第12問 PBR、ROE、PERの計算
問題要旨: PBR、配当性向、配当利回りから、ROEとPERを計算
設問1:自己資本利益率(ROE)
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス
正解: エ(10%)
必要知識: ROE計算 — 株価・配当・利益の関係式
解法の思考プロセス:
与件は PBR 1.5倍、配当性向 60%、配当利回り 4% です。
配当利回りは
配当利回り = 1株配当 / 株価 = (EPS × 配当性向) / 株価
なので、
0.04 = (EPS / 株価) × 0.6
EPS / 株価 = 0.04 / 0.6 = 1 / 15
また、PBR = 株価 / BPS = 1.5 ですから、
ROE = EPS / BPS = (EPS / 株価) × (株価 / BPS)
= (1 / 15) × 1.5 = 0.10 = 10%
誤答の落とし穴:
- Trap-E(計算ミス): 配当利回りの数値を取り違えると、その後のROEもすべてずれる
学習アドバイス:
ROE = PBR / PER の関係までつなげて覚えると、この種の設問は一気に解けます。
設問2:株価収益率(PER)
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス
正解: ウ(15倍)
必要知識: PER計算 — PER = 株価 / EPS
解法の思考プロセス:
配当利回りの式をそのまま使うと早いです。
配当利回り = (EPS × 配当性向) / 株価 = 配当性向 / PER
したがって、
0.04 = 0.60 / PER
PER = 0.60 / 0.04 = 15倍
設問1の結果を使っても、PER = PBR / ROE = 1.5 / 0.10 = 15倍 と確認できます。
誤答の落とし穴:
- Trap-E(計算ミス):
配当利回り = 配当性向 / PERを逆にしてしまう
学習アドバイス:
この問題は 配当利回り → PER → ROE の順でも、配当利回り → EPS/株価 → ROE の順でも解けます。2通りで検算できる形にしておくと安全です。
第13問 キャッシュフロー計算
問題要旨: 売上債権と仕入債務の変動からキャッシュフローを計算
K4 因果メカニズム T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: ア(売上CF = 950万円、仕入CF = 560万円)
必要知識: キャッシュフロー計算 — 営業CF計算の手順
解法の思考プロセス:
売上の現金回収額は、売上高 を起点に 売上債権の増加 を差し引きます。
1,000 + 100 - 150 = 950万円
仕入の現金支払額は、問題文がすでに 当期仕入高 を与えているので、在庫の増減はここでは使いません。仕入債務の増加 だけを調整します。
600 + 60 - 100 = 560万円
したがって、最も適切なのはアです。
誤答の落とし穴:
- Trap-E(計算ミス):
当期仕入高が与えられているのに、さらに棚卸資産増減を足し引きしてしまう
学習アドバイス:
売上高が与えられているのか、売上原価が与えられているのか で使う調整項目が変わります。出発点を見誤らないことが先です。
資金管理・財務理論
第14問 CAPM計算
問題要旨: CAPMモデルを使用して、ポートフォリオの期待収益率を計算
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: イ(5.24%)
必要知識: CAPM計算 — 資本資産価格モデル
解法の思考プロセス:
与件は X株式のβ = 1.5、Y株式のβ = 0.8、安全利子率 = 2%、市場期待収益率 = 5% です。
まず各銘柄の期待収益率をCAPMで求めます。
市場リスクプレミアムは
5% - 2% = 3%
です。
- X株式:
2% + 1.5 × 3% = 6.5% - Y株式:
2% + 0.8 × 3% = 4.4%
問題文では リスクの低い方に60%、高い方に40% 投資します。βが低いのはY株式なので、
4.4% × 60% + 6.5% × 40% = 2.64% + 2.60% = 5.24%
となり、イが正解です。
誤答の落とし穴:
- Trap-E(計算ミス): 60%をX株式に配分してしまい、
低リスク側に60%という条件を取り違える
学習アドバイス:
CAPMでは βが低いほど期待収益率も低くなる のが基本です。計算前に どちらが低リスクか を先に確定させると配分ミスを防げます。
第15問 プット・オプション評価
問題要旨: プット・オプション付きのポートフォリオ(株式 + プット)の満期時の収入を計算
K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-C 部分正解
正解: ウ(株価500円時に525円、株価600円時に600円)
必要知識: オプション価値 — プット・オプション(売る権利)
解法の思考プロセス:
ポートフォリオ構成:
- Z株式 1株(現在価格 = 575円と想定)
- プット・オプション 1枚(権利行使価格 = 525円、ヨーロッパ型)
満期時のペイオフ:
株価 = 500円の場合:
- 株式の価値:500円
- プット行使:525円で売却 → 25円の利得
- 合計:500 + 25 = 525円
株価 = 600円の場合:
- 株式の価値:600円
- プット不行使(権利行使価格 525円 < 現在株価 600円)
- 合計:600円
→ ウが正答
誤答の落とし穴:
- Trap-C(部分正解): プット・オプション権の行使判定(イン・ザ・マネー vs アウト・オブ・ザ・マネー)を誤る
- 常に行使すると考える誤り
学習アドバイス:
プット・オプション = 売る権利(ダウンサイド保護)
- 権利行使価格 > 現在株価 → 行使利益あり
- 権利行使価格 < 現在株価 → 不行使(権利失効)
第16問 NPV分析とリスク調整割引率法
問題要旨: 相互排他的投資案のNPVリスク評価と、リスク調整割引率法での選択判定
設問1:NPVの標準偏差比較
K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-B 条件すり替え
正解: ア(A投資案とB投資案のNPVの標準偏差は同じである)
必要知識: 投資評価のリスク — 標準偏差とキャッシュフロー相関
解法の思考プロセス:
NPVの標準偏差: σ(NPV) = √[Σ(σ_t/(1+r)^t)^2 + 2Σ相関係数項]
A投資案と B投資案の各期標準偏差が全て 155 で同一。
相関係数も同一という条件下では、NPVの標準偏差 = A投資案と B投資案で同一(キャッシュフロー構成が異なっても、標準偏差パターンが同じため)
正確には、NPVの標準偏差は各期CF標準偏差の加重合算なので、標準偏差が全て同じなら、NPV標準偏差も同じになる可能性が高い。
→ ア正答
誤答の落とし穴:
- Trap-B(条件見落とし): 「各期相関係数も同じ」という条件を見落とす
学習アドバイス:
σ(NPV) は各期CF の分散と相関を含む。パターンが同じなら、NPV分散も同じ。
設問2:リスク調整割引率法
K4 因果メカニズム T4 因果推論 L4 Trap-C 部分正解
正解: ア(毎期のリスク・プレミアムが1%のとき、A投資案が選択される)
必要知識: リスク調整割引率法 — NPVの感度分析
解法の思考プロセス:
確実なキャッシュ・フローの割引率が 10% なので、リスク・プレミアムが 1% なら割引率は 11% です。
どちらが有利かは、A案とB案のNPV差を見れば足ります。
A - B
= 300/(1+r) + 400/(1+r)^2 + 800/(1+r)^3
- [700/(1+r) + 400/(1+r)^2 + 300/(1+r)^3]
整理すると
A - B = -400/(1+r) + 500/(1+r)^3
です。これが 0 になる境目は
-400(1+r)^2 + 500 = 0
(1+r)^2 = 1.25
r ≒ 11.8%
したがって、割引率が 11% なら 11% < 11.8% なので A案の方が有利です。よってアが正解です。
誤答の落とし穴:
- Trap-C(部分正解): グラフの見た目だけで判断し、
A案とB案の差を式で確かめない
学習アドバイス:
相互排他的投資案では、どちらのNPVが大きいか を直接比較する方が速いです。共通項は消して差だけを見る癖をつけると安定します。
第17問 MM理論と企業価値(tax考慮)
問題要旨: 負債活用による企業価値の変化を、簿価・時価・税効果を考慮して分析
設問1:簿価による自己資本利益率
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス
正解: イ(自己資本利益率 = 株式調達案 6%、借入調達案 8%)
必要知識: 簿価による ROE — 負債と利益率の関係
解法の思考プロセス:
まず、営業キャッシュ・フロー100万円 はそのまま会計上の利益ではありません。毎年 減価償却費40万円 があり、同額を維持投資に回すので、利息支払前利益は
100 - 40 = 60万円
です。
株式調達案では自己資本が 1,000万円 なので、
ROE = 60 / 1,000 = 6%
借入調達案では、借入金 500万円 に市場利子率 4% がかかるため、利息は 20万円 です。したがって利益は
60 - 20 = 40万円
で、自己資本は 500万円 なので
ROE = 40 / 500 = 8%
となります。
誤答の落とし穴:
- Trap-E(計算ミス): 営業キャッシュ・フロー100万円を、そのまま利益100万円と置いてしまう
学習アドバイス:
この設問の本質は CF と 利益 の違いです。減価償却が与えられていたら、まず利益に直してからROEを計算します。
設問2:自己資本の価値(A/B)
K3 数式・公式 T3 計算実行 L3 Trap-E 計算ミス
正解: エ(A = 1,500万円、B = 1,000万円)
必要知識: MM定理 — 税金なしでの企業価値と自己資本価値
解法の思考プロセス:
税金を考えない前提では、利益はすべて配当されます。したがって自己資本の価値は、毎年の配当を市場利子率 4% で資本還元すれば求められます。
株式調達案の配当は、設問1で求めたとおり毎年 60万円 ですから、
A = 60 / 0.04 = 1,500万円
借入調達案の配当は毎年 40万円 なので、
B = 40 / 0.04 = 1,000万円
となります。
負債 500万円 を使っても、税金がなければ企業全体の価値は 1,500万円 のままで、うち 500万円 が負債、残り 1,000万円 が自己資本価値という見方でも確認できます。
誤答の落とし穴:
- Trap-E(計算ミス): 借入調達案でも企業価値全体1,500万円と自己資本価値1,000万円を区別せず、AとBを同じにしてしまう
学習アドバイス:
企業価値 と 自己資本価値 は別物です。負債があるときは 企業価値 = 負債価値 + 自己資本価値 を必ず意識してください。
設問3:時価による自己資本利益率
K4 因果メカニズム T4 因果推論 L3 Trap-B 条件すり替え
正解: ア(時価による自己資本利益率は、株式調達案と借入調達案とでは同じである)
必要知識: MM定理 — 資本構成の中立性(税金なし)
解法の思考プロセス:
設問2で自己資本価値が求まっているので、時価ベースの自己資本利益率は
株式調達案:60 / 1,500 = 4%
借入調達案:40 / 1,000 = 4%
となり、両案で同じです。
簿価ベースでは 6% と 8% で差が出ましたが、時価ベースに直すと差は消えます。これが税金を考えないMM理論のポイントです。
誤答の落とし穴:
- Trap-B(条件すり替え): 設問1の簿価ROEの大小関係を、そのまま時価ROEにも持ち込んでしまう
学習アドバイス:
この設問は、簿価では差が出るが、時価では同じ という対比を押さえると記憶に残りやすいです。
設問4:法人税下での企業価値
K4 因果メカニズム T3 計算実行 L4 Trap-E 計算ミス
正解: エ(C = 900万円、D = 1,100万円)
必要知識: 企業価値計算(税効果) — 法人税率を考慮した評価
解法の思考プロセス:
株式調達案では、利息がないので税引後の営業利益は
60 × (1 - 0.4) = 36万円
これを市場利子率 4% で資本還元すると、
C = 36 / 0.04 = 900万円
です。
借入調達案では、負債 500万円 による税盾効果が加わります。毎年の利息は 500 × 4% = 20万円 なので、節税額は
20 × 0.4 = 8万円
これが永久に続くとみれば、税盾の現在価値は
8 / 0.04 = 200万円
したがって、
D = 900 + 200 = 1,100万円
となります。
誤答の落とし穴:
- Trap-E(計算ミス): 税率40%を負債元本500万円に直接掛けてしまい、税盾を利息ベースで計算しない
学習アドバイス:
税金ありのMM理論では、借入で増える価値 = 税盾の現在価値 です。元本ではなく 利息 × 税率 を起点に考えてください。
年度総括
思考法の分布
| 思考法 | 問数 | 配点 |
|---|---|---|
| T1 正誤判定 | 4 | 16点 |
| T2 表読解・分類 | 3 | 12点 |
| T3 計算実行 | 12 | 48点 |
| T4 因果推論 | 6 | 24点 |
| T5 場合分け | 0 | 0点 |
傾向: 計算(T3)が過半数。簿記・会計基礎の確実な習得と、経営分析指標の計算力が必須。
罠パターンの分布
| 罠 | 問数 | 対策 |
|---|---|---|
| Trap-A | 3 | 方向を図示して確認 |
| Trap-B | 4 | 前提条件を明記 |
| Trap-C | 4 | 最後の段階を重点チェック |
| Trap-D | 4 | 対比表で区別を明確に |
| Trap-E | 10 | 公式の意味を理解して検算 |
Tier別学習優先度
- Tier 1(確実に取りたい): 問1-9(簿記基礎、精算表、経過勘定)、問10-11(CVP、M&A用語)
- Tier 2(合格ラインの鍵): 問12-13(指標計算、CF計算)、問14(CAPM)
- Tier 3(差をつける問題): 問15-17(オプション、NPV分析、MM理論、企業価値)
本番セルフチェック5項目
- 簿記基礎:仕訳 → 試算表 → 精算表の流れが正確か? 勘定の分類(資産・負債・純資産)は確実か?
- 経営分析指標:流動比率・当座比率・ROA・ROE の計算公式を暗唱しているか? 分子分母の確認は?
- CVP分析:限界利益率の計算は正確か? 複数製品の場合、加重平均を使用しているか?
- キャッシュフロー:営業CF = 純利益 + 減価償却 − 運転資本増加 の公式を確実に適用できるか?
- ファイナンス理論:MM定理(税金なし・あり)、CAPM、NPV計算の概念は理解できているか? 公式の意味を説明できるか?
分類タグの凡例
知識種類(K)
| タグ | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| K1 | 定義・用語 | 経過勘定項目、標準原価の定義 |
| K2 | グラフ形状 / 分類・表示 | 精算表の構造、純資産の表示順序 |
| K3 | 数式・公式 | ROA、流動比率、PER、CAPM |
| K4 | 因果メカニズム / 手続・手順 | 仕訳から試算表、CVP分析、キャッシュフロー計算 |
| K5 | 制度・データ / 制度・基準 | 会社法、会社計算規則、企業会計原則 |
思考法(T)
| タグ | 意味 |
|---|---|
| T1 | 正誤判定 |
| T2 | グラフ読解 / 分類判断 |
| T3 | 計算実行 |
| T4 | 因果推論 / 条件整理 |
| T5 | 場合分け |
形式層(L)
| タグ | 意味 |
|---|---|
| L1 | 定義暗記で解ける |
| L2 | 構造理解が必要 |
| L3 | 因果連鎖・推論が必要 |
| L4 | 数式操作・応用が必要 |
罠パターン(Trap)
| タグ | 意味 | 対策 |
|---|---|---|
| Trap-A | 逆方向 | 方向を図示して確認 |
| Trap-B | 条件すり替え / 条件見落とし | 前提条件を最初に確認 |
| Trap-C | 部分正解 | 最後の一段を重点チェック |
| Trap-D | 混同誘発 / 類似混同 | 対比表で区別を明確に |
| Trap-E | 計算ミス誘発 | 公式の意味を理解して検算 |
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