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財務・会計(平成22年度)

平成22年度(2010)中小企業診断士第1次試験 財務・会計の全20問解説

概要

平成22年度(2010)の財務・会計は 全20問 です。ただし、第2問が3設問第14問・第17問・第18問が各2設問 なので、公式正答表では 25件 の正答が並びます。旧原稿は 全11問 前提で、途中から論点も正答も崩れていました。

この年度は、前半で帳簿組織、工事契約、商品有高帳、会社法、キャッシュ・フロー計算書を押さえ、中盤で原価の定義、経営資本営業利益率、損益分岐点、販売費差異、フリー・キャッシュ・フローを処理し、後半でリース、MM理論、リスク中立、分散投資、WACC、為替ヘッジ、配当政策、M&Aまで問う構成です。複合設問の切り分け何を基準に計算するか を外さないことが重要です。

問題文は J-SMECA 試験問題ページ から、正答は 平成22年度 一次試験正答 PDF を参照してください。

簿記・会計基礎

第1問 帳簿組織

問題要旨: 主要簿と補助簿からなる帳簿組織における記録方法を問う。

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同

正解: ウ

必要知識: 帳簿体系と伝票式会計 — 普通仕訳帳、特殊仕訳帳、総勘定元帳

解法の思考プロセス:

特殊仕訳帳を導入した場合、総勘定元帳への転記は 合計転記 でも 個別転記 でも行えます。したがって a は正しいです。

また、普通仕訳帳のみを使う場合、取引は普通仕訳帳から総勘定元帳へ転記されるので d も正しいです。

一方で、

  • b: 1つの取引を普通仕訳帳と特殊仕訳帳の両方に記録しない
  • c: 普通仕訳帳のみを使う場合に合計転記が原則とはいえない

ので誤りです。したがって a と d のウです。

誤答の落とし穴:

  • 特殊仕訳帳導入時に同じ取引を2重記録すると誤認する
  • 合計転記個別転記 を制度の違いだと思い込む

学習アドバイス:

帳簿組織は、どこに記録し、どこへ転記するか の流れ図にすると整理しやすくなります。


第2問 工事契約に係る会計基準

問題要旨: 工事完成基準と工事進行基準、実現主義、基準の適用範囲を問う。

設問1 空欄A〜C

K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同

正解: イ

必要知識: 収益認識 — 工事完成基準と工事進行基準

解法の思考プロセス:

工事契約では、

  • 成果の確実性が認められるとき: 工事進行基準
  • それを満たさないとき: 工事完成基準

を使います。したがって

  • A: 完成
  • B: 進行
  • C: 成果

となり、イです。

誤答の落とし穴:

  • 進捗成果 を入れ替えてしまう
  • 完成基準と進行基準の適用順を逆に読む

学習アドバイス:

工事契約は、成果が信頼できるなら進行、無理なら完成 と覚えると切りやすいです。

設問2 実現したことに相当する事項

K2 因果メカニズム T2 分類判断 L1 Trap-B 条件見落とし

正解: ウ

必要知識: 収益認識 — 実現主義

解法の思考プロセス:

試用販売では、得意先が買い取る意思表示をした段階で、収益実現の条件が満たされます。これに当たるのがウです。

一方で、

  • 委託販売で荷付為替手形を取り組んだだけ
  • 予約金の受け取り

では、まだ販売が実現したとはいえません。

誤答の落とし穴:

  • 現金や手形を受け取った時点で売上だと考える
  • 試用販売の 承認 を軽く見てしまう

学習アドバイス:

実現主義は、代金受領 ではなく 売るべきものを引き渡して成果が確定したか で見てください。

設問3 企業会計基準第15号の適用範囲

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同

正解: エ

必要知識: 収益認識 — 工事契約の範囲

解法の思考プロセス:

工事契約に係る会計基準は、土木・建築・造船や一定の機械装置の製造など、顧客仕様に基づく請負契約 を対象とします。また、受注制作のソフトウェア にも準じて適用されます。したがって b と e のエです。

cd はどちらも適用対象の説明として不十分です。基準は 工事収益と工事原価の会計処理並びに開示 を扱うため、片方だけ書くと不足します。

誤答の落とし穴:

  • 施工者側の 原価 を外してしまう
  • 工事契約の対象を一般的な請負契約全体へ広げすぎる

学習アドバイス:

この論点は、顧客仕様ソフトウェアも含む の2点を押さえると切りやすいです。


第3問 受取利息勘定

問題要旨: 受取利息勘定の空欄A〜Cに入る勘定科目を問う。

K4 手続・手順 T2 分類判断 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: オ

必要知識: 決算整理仕訳 — 未収利息と損益振替

解法の思考プロセス:

受取利息は収益勘定なので、期首に残っているのは前期末に計上した 未収利息 です。したがって A は 未収利息 です。

年末には受取利息勘定を 損益 へ振り替えるので B は 損益 です。そのうえで当期末にまだ受け取っていない利息を 未収利息 として計上するので C も 未収利息 になります。

したがってオです。

誤答の落とし穴:

  • 受取利息を現金回収時だけで考えて未収計上を落とす
  • 収益勘定の締切を 残高 として処理してしまう

学習アドバイス:

経過勘定は、期首は戻し、期末はまた立てる という流れで見ると崩れません。


第4問 商品有高帳

問題要旨: 先入先出法で月間の売上原価と次月繰越高を求める。

K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス

正解: エ

必要知識: 棚卸資産の評価 — 先入先出法

解法の思考プロセス:

前月繰越と7日の仕入はどちらも 600円 です。13日の売上50個で 50 × 600 = 30,000円 を払い出し、残りは 40個 × 600円 です。

19日に 55個 × 640円 を仕入れ、20日にそのうち 5個 × 640円 を仕入戻しするので、640円の商品は 50個 残ります。

その後、

  • 25日の売上40個: 40 × 600 = 24,000円
  • 29日の売上20個: 20 × 640 = 12,800円

です。したがって売上原価は

30,000 + 24,000 + 12,800 = 66,800円

で、次月繰越高は

30個 × 640 = 19,200円

です。

誤答の落とし穴:

  • 仕入戻し後の数量を 55個 のまま使う
  • 29日の売上でも600円単価を使ってしまう

学習アドバイス:

先入先出法は、古い層から消していく のを表にして追えば安定します。層を混ぜないことが大切です。


第5問 資本金と資本準備金

問題要旨: 会社法上の資本金、資本準備金、公開会社の設立時発行株式数を問う。

K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同

正解: ウ

必要知識: 純資産区分 — 資本金と資本準備金

解法の思考プロセス:

会社法では、払込みまたは給付を受けた財産の 全額 を資本金とするのが原則です。ただし、そのうち 2分の1まで を資本準備金として計上できます。

また、公開会社は設立時に発行可能株式総数の 4分の1以上 を発行しなければなりません。

したがって、

  • A: 全額
  • B: 2分の1まで
  • C: 4分の1以上

のウです。

誤答の落とし穴:

  • 全額資本金 の原則と 半分まで準備金 の例外を混同する
  • 公開会社の最低発行株式数を 2分の1 と誤記憶する

学習アドバイス:

会社法の数字は、資本金は全額原則、準備金は半分まで、公開会社は4分の1以上発行 とセットで覚えると残りやすいです。


第6問 固定資産売却収入

問題要旨: 有形固定資産の増減と売却益から、売却による現金収入を逆算する。

K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: ウ(1,010千円)

必要知識: キャッシュフロー計算書 — 売却収入は帳簿価額と売却益から逆算

解法の思考プロセス:

有形固定資産の取得原価は 48,700 → 47,000 なので、売却した資産の取得原価は 1,700 です。

減価償却累計額は 12,000 → 13,200 ですが、当期減価償却費は 2,040 です。もし売却がなければ累計額は 14,040 になるはずなので、売却資産に対応する累計額 840 が減っています。

したがって売却資産の帳簿価額は

1,700 - 840 = 860

です。固定資産売却益が 150 なので、売却収入は

860 + 150 = 1,010

千円です。

誤答の落とし穴:

  • 売却収入を売却益 150 と取り違える
  • 累計額の減少分を見ずに帳簿価額を作れない

学習アドバイス:

固定資産売却は、取得原価 - 累計額 = 帳簿価額、そこに 売却損益 を足し引きして現金収入を出す順で考えると安定します。

管理会計・キャッシュフロー

第7問 原価の定義

問題要旨: 原価計算制度における原価の定義を問う。

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同

正解: イ

必要知識: 原価計算の基本 — 原価計算基準の原価概念

解法の思考プロセス:

原価計算基準では、原価は 財貨の生産、販売 に関して消費された経済価値です。財務活動まで含めません。したがってイが正解です。

誤答の落とし穴:

  • 財務活動の利息などまで原価に含めてしまう
  • 生産だけに限定して販売を落とす

学習アドバイス:

原価は 生産だけ でも 経営全部 でもありません。生産と販売 の範囲で捉えると切りやすいです。


第8問 経営資本営業利益率

問題要旨: 本業から投下資本に対してどれだけ利益を生み出したかを示す資本利益率を求める。

K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: エ(8.4%)

必要知識: 収益性分析 — 営業利益率と経営資本回転率

解法の思考プロセス:

本業から利益 とあるので使う利益は 営業利益 です。営業利益率は

30,000 / 500,000 = 6%

です。

また、事業活動に使用している投下資本 とあるので、総資本回転率 1.2回 ではなく 経営資本回転率 1.4回 を使います。

したがって経営資本営業利益率は

6% × 1.4 = 8.4%

で、エです。

誤答の落とし穴:

  • 総資本回転率 1.2回 を使って 7.2% にしてしまう
  • 経常利益や当期純利益を使ってしまう

学習アドバイス:

比率問題は、問題文の日本語を式に直してください。本業 なら営業利益、事業活動に使う資本 なら経営資本です。


第9問 損益分岐点売上高の変化

問題要旨: 販売価格の低下によって損益分岐点売上高がどれだけ変わるかを求める。

K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス

正解: イ(+80千円)

必要知識: CVP分析 — 損益分岐点売上高

解法の思考プロセス:

もとの販売数量は400個、売上高800千円なので販売価格は1個 2千円、変動費は 320 / 400 = 0.8千円 です。

新しい販売価格は 1.7千円 なので、新しい限界利益は

1.7 - 0.8 = 0.9千円

です。限界利益率は

0.9 / 1.7

なので、新しい損益分岐点売上高は

360 / (0.9 / 1.7) = 680千円

です。もとの損益分岐点売上高は

360 / 0.6 = 600千円

なので、増加額は 80千円 です。

誤答の落とし穴:

  • 変動費率をそのまま維持せず、変動費そのものが変わると考えてしまう
  • 損益分岐点数量と損益分岐点売上高を混同する

学習アドバイス:

価格変更のCVPでは、単位変動費は据え置き と読むのが基本です。先に単位限界利益を作ってください。


第10問 製品ミックス

問題要旨: 実行可能な販売数量の組み合わせの中から、利益最大となる点を選ぶ。

K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: イ

必要知識: CVP分析 — 限界利益と制約条件

解法の思考プロセス:

製品Xの単位当たり限界利益は

600 - 360 = 240円

製品Yは

1,000 - 700 = 300円

です。図の実行可能領域の端点候補ごとに総限界利益を計算すると、

  • ア: 240 × 0 + 300 × 3,000 = 900,000
  • イ: 240 × 1,500 + 300 × 3,000 = 1,260,000
  • ウ: 240 × 2,250 + 300 × 2,250 = 1,215,000
  • エ: 240 × 3,000 + 300 × 1,250 = 1,095,000
  • オ: 240 × 4,000 + 300 × 500 = 1,110,000

となるので、最大はイです。

誤答の落とし穴:

  • 売上高の大きさで判断してしまう
  • 図の端点ではなく途中点を感覚で選ぶ

学習アドバイス:

線形計画型の問題は、単位当たり限界利益実行可能領域の端点比較 に落とすのが定石です。


第11問 販売費予算差異

問題要旨: 実際販売数量に対応する変動予算と実際販売費との差を求める。

K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス

正解: エ(35,000円の不利差異)

必要知識: 差異分析 — 変動予算制

解法の思考プロセス:

実際数量は 90,000個 なので、変動費予算は

600,000 × 90,000 / 100,000 = 540,000円

です。固定販売費予算は 800,000円 のままなので、実際数量に対する販売費予算は

540,000 + 800,000 = 1,340,000円

です。実際販売費は 1,375,000円 なので、

1,375,000 - 1,340,000 = 35,000円

の不利差異です。

誤答の落とし穴:

  • 固定費まで販売数量に応じて動かしてしまう
  • 予算差異と操業度差異を混同する

学習アドバイス:

変動予算制では、変動費だけ数量比例、固定費は据え置き を徹底すると崩れません。


第12問 フリー・キャッシュ・フロー

問題要旨: 減価償却費、更新投資、税率、運転資本の条件からFCFを求める。

K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: イ(6,000千円)

必要知識: 営業キャッシュフローとFCF — FCF

解法の思考プロセス:

FCFは企業全体のキャッシュフローなので、支払利息 ではなく 営業利益 から出します。

税引後営業利益は

10,000 × (1 - 0.4) = 6,000

です。減価償却費 1,000 を足し戻し、更新投資 1,000 を引き、運転資本増減はゼロなので、

6,000 + 1,000 - 1,000 = 6,000

千円です。

誤答の落とし穴:

  • 当期純利益 3,600 を起点にしてしまう
  • 支払利息を引いたままFCFを作る

学習アドバイス:

FCFは EBIT(1-T) + 減価償却 - 投資 - 運転資本増加 の形に戻すと安定します。

ファイナンス・企業財務

第13問 ファイナンス・リース

問題要旨: ファイナンス・リースの特徴として不適切な記述を選ぶ。

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同

正解: ア

必要知識: リース会計 — ファイナンス・リースとオペレーティング・リース

解法の思考プロセス:

アは、残存価値や再賃貸を織り込んでリース料を決める説明で、オペレーティング・リース に近い内容です。ファイナンス・リースの説明としては不適切です。

イ、ウ、エは、ファイナンス・リースの特徴として適切です。

誤答の落とし穴:

  • 多額の初期資金が不要 だけ見てアも正しそうに感じる
  • オペレーティング・リースの特徴を混ぜる

学習アドバイス:

ファイナンス・リースは、実質的には借入で設備を買うのに近い と捉えると区別しやすいです。


第14問 MM理論

問題要旨: 完全市場下の株主資本収益率と、法人税がある場合の企業価値差を問う。

設問1 市場が要求する株主資本収益率

K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス

正解: イ(10%)

必要知識: MM理論 — 企業価値と要求収益率

解法の思考プロセス:

好況・不況のEBITは 1,200800 なので、期待EBITは

(1,200 + 800) / 2 = 1,000

万円です。全額株主資本で、企業価値が 1億円 = 10,000万円 と評価されるなら、要求収益率は

1,000 / 10,000 = 10%

です。

誤答の落とし穴:

  • 好況時の1,200だけを使う
  • 企業価値1億円を1,000万円と読み違える

学習アドバイス:

期待収益率問題では、まず 期待値 を作り、それを 価値で割る だけに落としてください。

設問2 法人税がある場合の企業価値差

K2 因果メカニズム T2 分類判断 L1 Trap-A 逆方向

正解: ウ

必要知識: MM理論 — 税効果による企業価値増分 T × D

解法の思考プロセス:

法人税のみが存在するMM理論では、負債利用による節税効果分だけ企業価値が増えます。増加額は

負債額 5,000万円 × 税率 40% = 2,000万円

です。したがって、C社の企業価値はB社より 2,000万円大きい のでウです。

誤答の落とし穴:

  • 負債利子率が必要だと思い込んで式を複雑にする
  • 税金があるのに価値不変だと答えてしまう

学習アドバイス:

MM理論は、税金なしなら価値不変、税金ありならT×D増加 をまず固定してください。


第15問 リスク中立者の投資額

問題要旨: リスク中立的な意思決定者が1年後の不確実なキャッシュ・フローへ現在いくらまで拠出するかを求める。

K3 数式・公式 T3 計算実行 L1 Trap-E 計算ミス

正解: ウ(1,818万円)

必要知識: 投資評価指標 — リスク中立と期待値現在価値

解法の思考プロセス:

リスク中立なら、将来キャッシュ・フローを期待値で評価します。期待キャッシュ・フローは

0.5 × 3,000 + 0.5 × 1,000 = 2,000万円

です。これを安全利子率10%で現在価値へ割り引くと

2,000 / 1.1 ≒ 1,818万円

となります。

誤答の落とし穴:

  • 確率50%の高い方だけを見る
  • 割引ではなく1.1を掛けてしまう

学習アドバイス:

リスク中立の問題は、まず期待値、次に安全利子率で割引 という2段階で解けます。


第16問 分散投資と相関

問題要旨: 2証券への分散投資でリスク低減効果が最大となる相関関係を問う。

K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同

正解: イ

必要知識: ポートフォリオ理論 — 相関係数と分散効果

解法の思考プロセス:

分散投資の効果が最大になるのは、2つの証券の動きがちょうど打ち消し合う 完全負相関 のときです。したがってイです。

誤答の落とし穴:

  • 相関がゼロなら最大分散効果だと思ってしまう
  • 弱い負相関完全負相関 の違いを軽く見る

学習アドバイス:

相関は、+1 なら同じ向き、-1 なら逆向きで最大に打ち消す と覚えると速いです。


第17問 投資案件の資本コスト

問題要旨: NPV法で使うべき資本コストと、証券収益率モデルの名称を問う。

設問1 投資判定基準として用いる資本コスト

K2 因果メカニズム T2 分類判断 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: ウ

必要知識: MM理論と資本コスト — WACC

解法の思考プロセス:

問題文では、今回の資金調達は全額借入でも、会社全体の目標資本構成は 有利子負債:株主資本 = 1:1 とされています。投資案件の割引率として使うべきなのは、個別調達手段ではなく、企業全体の平均的な調達構成を反映した 加重平均資本コスト(WACC) です。

したがってウが正解です。

誤答の落とし穴:

  • 今回は借入だけだから借入金利だけでよいと考える
  • 株式資本コストだけを使ってしまう

学習アドバイス:

NPVの割引率は、その案件の資金調達方法 ではなく 企業が通常要求される資本コスト を見るのが基本です。

設問2 証券収益率モデルの名称

K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同

正解: エ

必要知識: リスクとリターンのモデル — インデックス・モデルとCAPM

解法の思考プロセス:

RDt = α + βRTt + et

は、市場インデックスの変化率で個別証券収益率を説明する インデックス・モデル です。CAPMは期待収益率の均衡式であり、ここでの回帰式とは別物です。

誤答の落とし穴:

  • β が出てきたのでCAPMだと即断する
  • APTとインデックス・モデルを混同する

学習アドバイス:

α + β×市場 + 誤差項 の形を見たら、まずインデックス・モデルを疑ってください。


第18問 為替ヘッジ

問題要旨: 為替予約と通貨先物によるヘッジのネット損益を問う。

設問1 F社の為替予約

K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-A 逆方向

正解: イ(400万円の損失)

必要知識: デリバティブと為替ヘッジ — 売掛外貨のヘッジ

解法の思考プロセス:

販売時点の直物レートは 102円、受取時は 108円 なので、売掛金の直物による損益は

(108 - 102) × 100万ドル = 600万円の利益

です。

一方、98円でドル売り予約をしているので、予約による損益は

(98 - 108) × 100万ドル = 1,000万円の損失

です。したがってネットでは

600 - 1,000 = -400万円

となり、400万円の損失です。

誤答の落とし穴:

  • 円高予想だったことに引きずられて利益方向を逆に読む
  • 予約損益と直物損益の符号を同じ向きにしてしまう

学習アドバイス:

外貨建て売掛金のヘッジでは、本体ポジションヘッジポジション を別々に計算して最後に足してください。

設問2 G社の通貨先物

K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし

正解: ウ(60万円の利益)

必要知識: デリバティブと為替ヘッジ — 先物の差金決済

解法の思考プロセス:

G社は 100円 でドル先物を売り、1週間後に 103円 で買い戻しているので、先物では

(100 - 103) × 20万ドル = 60万円の損失

です。

一方、売掛金の直物損益は販売時 102円 から受取時 108円 までの変化で

(108 - 102) × 20万ドル = 120万円の利益

です。したがってネット損益は

120 - 60 = 60万円の利益

となります。

誤答の落とし穴:

  • 先物を反対売買で閉じた後も、最後までヘッジが効いていると思い込む
  • 直物損益を 102→105 の1週間分だけで止めてしまう

学習アドバイス:

通貨先物は、どこで建てて、どこで閉じたか を明示すると損益が切りやすくなります。


第19問 業績連動型配当政策

問題要旨: 業績連動型配当政策で安定しやすい指標と、ROEと掛け合わせる指標を問う。

K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同

正解: イ

必要知識: 配当政策と倍率指標 — 配当性向と株主資本配当率

解法の思考プロセス:

業績連動型配当政策では、一定割合を配当に回す 配当性向 が比較的安定し、利益変動に応じて1株当たり配当額が動きます。

また、株主資本配当率(DOE)

ROE × 配当性向

で表されます。したがってイです。

誤答の落とし穴:

  • 配当利回りと配当性向を混同する
  • 内部成長率をROEとの積で表せると誤解する

学習アドバイス:

配当政策は、利益の何割を配るか が配当性向、自己資本に対してどれだけ配るか がDOE、と切り分けてください。


第20問 事業承継とM&A

問題要旨: 後継者不在の企業が、外部の有能な経営者へ友好的に事業承継させる手段を問う。

K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同

正解: ア

必要知識: M&Aの手法分類 — MBI、MBO、TOB、ホワイトナイト

解法の思考プロセス:

外部の経営者が経営権を引き継ぐ形は MBI(Management Buy-In) です。したがってアが正解です。

  • MBO: 既存経営陣による買収
  • TOB: 公開買付けという手法そのもの
  • ホワイトナイト: 敵対的買収への対抗策

なので、この問題の状況には最も合いません。

誤答の落とし穴:

  • MBOとMBIを アルファベットの並び で取り違える
  • TOBを事業承継スキームそのものだと思う

学習アドバイス:

M&A用語は、誰が買うのか で整理すると覚えやすいです。内部ならMBO、外部ならMBIです。

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