財務・会計(平成23年度)
平成23年度(2011)中小企業診断士第1次試験 財務・会計の全21問解説
概要
平成23年度(2011)の財務・会計は 全21問 です。ただし、第9問が2設問、第17問が2設問、第20問が3設問 なので、公式正答表では 25件 の正答が並びます。旧原稿は 全25問 前提で組まれており、論点と正答の対応が大きく崩れていました。
この年度は、前半で貸借対照表、引当金、減損、退職給付、のれん、連結、会社法、税効果を押さえ、中盤で財務分析、原価計算、CVP、運転資本、短期資金調達、社債価格、WACCを処理し、後半で配当政策、ポートフォリオ理論、企業価値評価、金利スワップまで問う構成です。複合設問の切り分け と 何を比べる問題か の整理が得点の鍵になります。
問題文は J-SMECA 試験問題ページ から、正答は 平成23年度 一次試験正答 PDF を参照してください。
簿記・企業会計
第1問 貸借対照表の資産合計
問題要旨: 閉鎖残高勘定から、貸借対照表に計上される資産合計を求める。
K2 因果メカニズム T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: イ(60,000,000円)
必要知識: 勘定科目と貸借対照表 — 資産、評価性引当金、純資産控除項目
解法の思考プロセス:
左側に並んでいる金額をそのまま足すと 74,700,000円 ですが、そこには貸借対照表で 控除表示 される項目が含まれています。
- 貸倒引当金
600,000円は売掛金などから控除 - 建物減価償却累計額
8,100,000円は建物から控除 - 自己株式
6,000,000円は資産ではなく純資産の控除項目
一方、株式交付費 1,000,000円 は繰延資産として資産側に残ります。したがって資産合計は
74,700,000 - 600,000 - 8,100,000 - 6,000,000 = 60,000,000
円です。
誤答の落とし穴:
- 閉鎖残高勘定の借方合計
74,700,000円をそのまま答える - 自己株式を資産だと誤認する
学習アドバイス:
この種の問題は、表示上の控除項目は何か を先に消すと速くなります。貸倒引当金、減価償却累計額、自己株式は典型です。
第2問 引当金への繰入れ
問題要旨: 引当金計上の要件を最も正確に言い表した記述を選ぶ。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同
正解: エ
必要知識: 引当金と決算整理 — 将来の特定の費用または損失
解法の思考プロセス:
引当金の要件は、
- 将来の
特定の費用または損失 - 発生原因が
当期以前の事象 - 発生可能性が高い
- 金額を合理的に見積もれる
の4点です。これを最も正確に書いているのがエです。
イは 損失 に限定しており、ウは 費用 に限定しているので不十分です。アは「偶発事象に係る費用または損失については計上できない」としていて誤りです。
誤答の落とし穴:
費用だけ、または損失だけの片側表現を見抜けない- 発生原因が
当期以前である点を落とす
学習アドバイス:
引当金は、費用でも損失でもあり得る と覚えてください。片方だけに寄った選択肢は疑うべきです。
第3問 減損損失
問題要旨: 有形固定資産の減損損失を算定する式を問う。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同
正解: イ
必要知識: 固定資産の評価と減損 — 回収可能価額
解法の思考プロセス:
減損損失は
帳簿価額 - 回収可能価額
で求めます。回収可能価額は 正味売却価額 と 使用価値 のいずれか高い方です。したがってイが正解です。
ウの 帳簿価額 - 時価 は定義そのものではありませんし、エの 割引前将来キャッシュ・フロー は減損の認識判定には使いますが、損失額の算定式ではありません。
誤答の落とし穴:
- 減損の
認識判定と測定を混同する - 時価だけで測ると考えてしまう
学習アドバイス:
減損は、まず認識、次に測定 の2段階です。損失額を出す段階では 回収可能価額 を使います。
第4問 退職給付に係る負債
問題要旨: 退職給付に係る負債の計上額として最も適切な式を選ぶ。
K2 因果メカニズム T2 分類判断 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: ウ
必要知識: 負債・純資産・税効果会計 — 退職給付債務、年金資産、未認識項目
解法の思考プロセス:
退職給付に係る負債は、基本的に
退職給付債務 ± 未認識過去勤務債務 ± 未認識数理計算上の差異 - 年金資産
で捉えます。これに合うのがウです。
アは未認識項目を落としており、イは年金資産を控除していません。エは未認識過去勤務債務を落としています。
誤答の落とし穴:
- 年金資産控除だけで済むと考える
- 未認識過去勤務債務と未認識数理計算上の差異の両方を拾えない
学習アドバイス:
退職給付は、債務 ± 未認識項目 - 年金資産 の形を崩さず覚えると判断しやすくなります。
第5問 のれん
問題要旨: 吸収合併の対価と被取得企業の時価純資産からのれんを求める。
K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス
正解: イ(2,000万円)
必要知識: 連結会計の基本 — のれん
解法の思考プロセス:
交付した新株は 1,000株、1株当たり時価は 5万円 なので、取得対価は
1,000 × 5万円 = 5,000万円
です。
一方、X社の時価純資産は
資産時価 7,000万円 - 負債時価 4,000万円 = 3,000万円
です。したがってのれんは
5,000 - 3,000 = 2,000万円
となります。
誤答の落とし穴:
- 合併直前の帳簿純資産
6,000 - 4,000 = 2,000万円を使ってしまう 払込金額や資本金組入額を取得対価だと誤認する
学習アドバイス:
のれんは、時価ベースの純資産 と 取得対価 を比べる問題です。帳簿価額をそのまま使わない点を徹底してください。
第6問 親会社の判定
問題要旨: 連結財務諸表上の「親会社」に当たる企業として最も不適切なものを選ぶ。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同
正解: イ
必要知識: 連結会計の基本 — 支配力基準
解法の思考プロセス:
親会社に当たるかどうかは、単純な持分比率だけでなく 支配しているといえるか が基準です。
- エのように自己計算で過半数保有なら、通常は親会社
- ウのように自己保有が40%以上50%以下で、緊密者等と合わせて過半数なら親会社に該当しやすい
- アは、緊密者等と合わせて過半数で、さらに支配を推測させる事実もあるので妥当
これに対してイは、自己保有が40%未満 なのに、緊密者等との合算で過半数というだけで、支配を推測させる補強事情もありません。これだけで親会社とみるのは不適切です。
誤答の落とし穴:
- 「合わせて過半数」だけで自動的に親会社だと考える
- 自己保有比率40%の線を軽く見る
学習アドバイス:
連結の支配力基準は、自社だけでどれだけ持つか と 支配を示す追加事情があるか を分けて読むと切りやすいです。
第7問 定時株主総会の招集通知
問題要旨: 招集通知に際して株主へ提供される書類を問う。
K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同
正解: イ
必要知識: 会社法と計算書類 — 計算書類、事業報告、監査報告
解法の思考プロセス:
株主に提供される基本セットとして押さえるべきなのは、
- 計算書類
- 事業報告
- 連結計算書類
- 監査報告
- 会計監査報告
です。これに当たるのがイです。
附属明細書 は招集通知に際して株主へ提供する中心書類ではありません。また、会社法上の計算書類セットに キャッシュ・フロー計算書 は入りません。
誤答の落とし穴:
- 附属明細書まで必ず通知書類に入ると考える
- 有価証券報告書の感覚でキャッシュ・フロー計算書を混ぜる
学習アドバイス:
会社法の書類は、計算書類・事業報告・連結計算書類 を軸に覚え、CF計算書は入らない と切ると整理しやすいです。
第8問 税効果会計
問題要旨: 税効果会計に関する記述のうち最も適切なものを選ぶ。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L2 Trap-D 類似混同
正解: ア
必要知識: 税効果会計 — 一時差異と重要性
解法の思考プロセス:
重要性が乏しい一時差異等については、繰延税金資産・繰延税金負債を計上しないことが認められます。したがってアが正解です。
イは、棚卸資産評価損のような損金不算入は通常 将来減算一時差異 の例であり、将来加算ではありません。ウの事例も分類が逆です。エも、税効果会計で対象になる 法人税等 には法人税だけでなく住民税や事業税も含まれるため誤りです。
誤答の落とし穴:
- 将来加算一時差異と将来減算一時差異を逆に覚える
- 法人税等を文字どおり法人税だけと読む
学習アドバイス:
税効果会計は、将来の税金が増えるのか減るのか で見ると整理しやすいです。分類名を丸暗記するより、将来キャッシュアウトの向きを意識してください。
財務分析・管理会計
第9問 A社とB社の財務分析
問題要旨: 同じデータから、収益性・効率性と安全性の比較をそれぞれ判定する。
設問1 売上高売上原価率・売上高営業利益率・総資本回転率
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス
正解: エ
解法の思考プロセス:
まず各比率を計算します。
- 売上高売上原価率
- A社:
800 / 1,200 = 66.7% - B社:
700 / 1,000 = 70.0% - 低い方がよいので A社が良好
- A社:
- 売上高営業利益率
- A社:
120 / 1,200 = 10.0% - B社:
110 / 1,000 = 11.0% - B社が良好
- A社:
- 総資本回転率
- A社:
1,200 / 800 = 1.5回 - B社:
1,000 / 600 ≒ 1.67回 - B社が良好
- A社:
したがって、A社・B社・B社 の組み合わせでエです。
誤答の落とし穴:
- 売上高営業利益率で利益額の大きいA社を有利だと誤認する
- 売上高売上原価率は
低い方がよいことを忘れる
学習アドバイス:
財務分析は、どちらの方向が良い指標か を先に固定してください。原価率や固定比率は低い方がよい代表例です。
設問2 流動比率・当座比率・固定比率
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス
正解: オ
必要知識: 安全性分析 — 流動比率、当座比率、固定比率
解法の思考プロセス:
流動資産は
- A社:
120 + 80 + 160 + 40 + 100 = 500 - B社:
50 + 70 + 80 + 50 + 150 = 400
流動負債は
- A社:
70 + 140 + 90 = 300 - B社:
40 + 60 + 50 = 150
なので、流動比率は B社が良好です。
当座比率も
- A社:
(120 + 80 + 160 + 40) / 300 = 133.3% - B社:
(50 + 70 + 80 + 50) / 150 = 166.7%
で B社が良好です。
固定比率は
- A社:
(240 + 60) / (200 + 140 + 60) = 300 / 400 = 75% - B社:
(160 + 40) / (120 + 110 + 70) = 200 / 300 ≒ 66.7%
で、低い方が安全なのでB社が良好です。よって全部B社でオです。
誤答の落とし穴:
- 当座比率に棚卸資産を入れてしまう
- 固定比率を高い方がよいと誤読する
学習アドバイス:
安全性指標は、流動比率・当座比率は高い方がよい、固定比率は低い方がよい をセットで覚えると切りやすくなります。
第10問 完成品原価
問題要旨: 単一工程・月初仕掛品なしの総合原価計算で完成品原価を求める。
K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: ウ(63,000千円)
必要知識: 総合原価計算 — 材料始点投入
解法の思考プロセス:
材料は工程の始点で全量投入されるので、材料費の単位当たり原価は
48,000 / 1,200 = 40
千円です。
加工費の等価生産量は
完成品 700 + 月末仕掛品 500 × 40% = 900
kg なので、加工費の単位当たり原価は
45,000 / 900 = 50
千円です。
月末仕掛品原価は
500 × 40 + 500 × 40% × 50 = 20,000 + 10,000 = 30,000
千円です。したがって完成品原価は
48,000 + 45,000 - 30,000 = 63,000
千円です。
誤答の落とし穴:
- 材料費まで40%進捗で配分してしまう
- 加工費の等価生産量を1,200kgで割ってしまう
学習アドバイス:
総合原価計算は、材料の進捗 と 加工の進捗 を分けてください。始点投入なら材料は100%です。
第11問 変動費率
問題要旨: 損益分岐点比率、売上高営業利益率、営業利益から変動費率を求める。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス
正解: ウ(60%)
必要知識: CVP分析 — 貢献利益率、損益分岐点比率
解法の思考プロセス:
売上高営業利益率10%、営業利益1,600万円なので売上高は
1,600 / 10% = 16,000万円
です。
損益分岐点比率75%は
損益分岐点売上高 / 実際売上高 = 75%
なので、損益分岐点売上高は
16,000 × 75% = 12,000万円
です。
ここで、営業利益率は
貢献利益率 - 固定費率
であり、損益分岐点比率から
固定費率 = 貢献利益率 × 75%
と置けます。したがって
貢献利益率 - 0.75 × 貢献利益率 = 10%
0.25 × 貢献利益率 = 10%
貢献利益率 = 40%
なので、変動費率は 60% です。
誤答の落とし穴:
- 損益分岐点比率を固定費率と取り違える
- 貢献利益率と変動費率の和が100%であることを忘れる
学習アドバイス:
CVPでは、利益率 = 貢献利益率 - 固定費率、変動費率 = 1 - 貢献利益率 の2本を持っておくと強いです。
第12問 売上高の価格差異
問題要旨: 売上高差異を価格差異と数量差異に分けるときの価格差異の式を選ぶ。
K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-A 逆方向
正解: ア
必要知識: 差異分析 — 価格差異と数量差異
解法の思考プロセス:
売上高の価格差異は、実際価格が予算価格より高ければ有利 で、かつ 実際に売れた数量 に対して測るのが自然です。したがって
(実際価格 - 予算価格) × 実際販売量
となるアが正解です。
誤答の落とし穴:
- 有利差異の符号に合わせず、式を逆にしてしまう
- 予算販売量を掛けてしまう
学習アドバイス:
価格差異は、単価の差 に 実際数量 を掛けるのが基本です。数量差異とは基準数量が違います。
第13問 正味運転資本
問題要旨: 正味運転資本の増加をもたらす要因の組み合わせを選ぶ。
K2 因果メカニズム T2 分類判断 L1 Trap-B 条件見落とし
正解: ウ
必要知識: キャッシュフローと運転資本 — 正味運転資本 = 流動資産 - 流動負債
解法の思考プロセス:
正味運転資本が増えるのは、
- 流動資産が増える
- 流動負債が減る
ときです。また、固定負債が増えると通常は調達した資金が流動資産へ入るので、正味運転資本増加要因になります。
したがって、
b 固定負債の増加e 流動負債の減少
の組み合わせでウです。
誤答の落とし穴:
- 固定負債増加を運転資本と無関係だと思ってしまう
- 自己資本減少や流動資産減少を増加要因に入れる
学習アドバイス:
正味運転資本は、短期の資金余裕 です。長期資金調達が増えると短期余裕が増えやすい、と考えるとつながります。
企業財務・投資
第14問 短期資金調達
問題要旨: 一般に短期資金調達と呼ばれるものを選ぶ。
K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同
正解: イ
必要知識: 資金調達手段 — 短期借入と長期調達
解法の思考プロセス:
短期資金調達に当たるのは
- 買掛金
- コマーシャルペーパー
- 手形借入金
です。したがって a と c と d のイです。
減価償却は内部資金源であって資金調達手段ではありませんし、ファイナンス・リースや優先株式は通常短期資金調達とは呼びません。
誤答の落とし穴:
- 減価償却を「資金が生まれる」から調達手段だと誤認する
- ファイナンス・リースを短期借入の仲間だと思う
学習アドバイス:
資金調達は、外部から短期で借りるか、長期で借りるか、自己資本か で切ると整理しやすいです。
第15問 普通社債の発行価格
問題要旨: 目標資本コストを満たす普通社債の発行価格を求める。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス
正解: エ(92円)
必要知識: 債券価格 — 将来キャッシュ・フローの現在価値
解法の思考プロセス:
額面100円、クーポンレート4%、満期5年、要求利回り6%なので、毎年受け取る利息は 4円 です。
発行価格は
元本100円 × 複利現価係数0.75 + 利息4円 × 年金現価係数4.21
= 75 + 16.84 = 91.84
円です。小数点第1位以下四捨五入で 92円 になります。
誤答の落とし穴:
- クーポンレート4%を
0.04円のように扱ってしまう - 元本の割引だけで価格を出してしまう
学習アドバイス:
社債価格は、元本の現在価値 + 利息列の現在価値 に必ず分けてください。
第16問 加重平均資本コスト
問題要旨: 内部留保、借入金、新株発行を組み合わせた資金調達のWACCを求める。
K4 手続・手順 T3 計算実行 L2 Trap-B 条件見落とし
正解: イ(7%)
必要知識: WACC — 負債コスト、内部留保コスト、新株発行コスト
解法の思考プロセス:
必要資金は10億円、目標負債自己資本比率は 4:6 なので、
- 負債:
4億円 - 自己資本:
6億円
です。
自己資本のうち内部留保は 4億円 まで使えるので、残り 2億円 は新株発行です。各コストは
- 負債の税引後コスト:
4% × (1 - 50%) = 2% - 内部留保コスト:
10% - 新株発行コスト:
10% + 1% = 11%
したがってWACCは
2% × 4/10 + 10% × 4/10 + 11% × 2/10
= 0.8% + 4.0% + 2.2% = 7.0%
です。
誤答の落とし穴:
- 目標負債自己資本比率
4:6を4/6とだけ読んで総額配分へ直せない - 内部留保と新株発行を同じ10%で処理してしまう
学習アドバイス:
WACC問題は、資金の内訳を先に金額へ直す、各コストを個別に作る の順が安全です。
第17問 配当政策
問題要旨: 完全市場のもとで、現金配当と自己株式買戻しが株主価値にどう効くかを問う。
設問1 現金配当後の株価
K2 因果メカニズム T2 分類判断 L1 Trap-A 逆方向
正解: イ
必要知識: MM理論と配当政策 — 配当前後の価値
解法の思考プロセス:
現在保有する現金は 1,000万円、発行済株式数は 100万株 なので、1株当たり現金は
1,000万円 / 100万株 = 10円
です。完全市場では、現金を配当で外へ出せばその分だけ企業価値が減るので、株価は 10円下落 します。したがってイです。
誤答の落とし穴:
- 配当を出すと株主に有利だから株価も上がると考える
- 企業が持つ現金の分だけ株価に織り込まれていることを落とす
学習アドバイス:
完全市場の配当論は、財布の右から左へ移すだけ と捉えるとわかりやすいです。
設問2 現金配当と自己株式買戻しの比較
K2 因果メカニズム T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同
正解: ア
必要知識: MM理論と配当政策 — 配当無関連命題
解法の思考プロセス:
完全市場では、現金配当をしても自己株式を買い戻しても、既存株主が得る総価値に差はありません。配り方が違うだけで、企業から外へ出る価値は同じだからです。したがってアです。
誤答の落とし穴:
- 配当と自己株式買戻しを税制込みの現実論で考えてしまう
- 発行済株式数の変化だけ見て価値差が出ると思ってしまう
学習アドバイス:
完全市場の前提があるときは、現金の出し方 では株主価値は変わらない、が基本です。
第18問 リスク回避的投資家の選択
問題要旨: リスクとリターンの表から、リスク回避的投資家が選ぶべきポートフォリオを選ぶ。
K2 因果メカニズム T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同
正解: イ(C)
必要知識: ポートフォリオ理論 — 効率的ポートフォリオ
解法の思考プロセス:
選択肢にあるのは A、C、G、H です。それぞれを見ると、
- A: リスク1、リターン2
- C: リスク1、リターン4
- G: リスク3、リターン2
- H: リスク3、リターン3
Cは、Aと 同じリスクで高いリターン、G・Hとは より低いリスクで高いか同等以上のリターン なので、他を支配しています。したがってCが最適です。
誤答の落とし穴:
- 単純にリターン最大のものだけを見る
同じリスクなら高リターン、同じリターンなら低リスクの支配関係を見ない
学習アドバイス:
表問題では、まず 他を明確に支配する選択肢がないか を探すと速くなります。
第19問 株式ポートフォリオのβ値
問題要旨: 3銘柄からなる株式ポートフォリオのβ値を求める。
K3 数式・公式 T3 計算実行 L1 Trap-E 計算ミス
正解: ウ(1.26)
必要知識: CAPMとベータ値 — ポートフォリオβ
解法の思考プロセス:
ポートフォリオのβ値は加重平均なので、
0.30 × 1.00 + 0.30 × 0.80 + 0.40 × 1.80
= 0.30 + 0.24 + 0.72 = 1.26
です。
誤答の落とし穴:
- 単純平均
(1.00 + 0.80 + 1.80) / 3を取ってしまう - ウェイト30%、30%、40%を小数へ直さない
学習アドバイス:
ポートフォリオβは、平均 ではなく 加重平均 です。ウェイトを掛けるところを落とさないでください。
第20問 企業価値評価
問題要旨: 企業価値評価アプローチの分類、配当割引モデル、PBRを問う。
設問1 空欄A・B
K1 定義・用語 T2 分類判断 L1 Trap-D 類似混同
正解: ウ
必要知識: 倍率評価とインカム・アプローチ — インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ
解法の思考プロセス:
DCF法や収益還元方式は インカム・アプローチ、PERやPBRのような倍率を使うのは マーケット・アプローチ です。したがってウです。
誤答の落とし穴:
- コスト・アプローチとインカム・アプローチを混同する
- PBRを
パラメーター・アプローチのように読んでしまう
学習アドバイス:
企業価値評価は、インカム・マーケット・コスト の3本柱で整理すると覚えやすいです。
設問2 配当割引モデルによる株式価値
K3 数式・公式 T3 計算実行 L2 Trap-E 計算ミス
正解: ア(300円)
必要知識: 配当割引モデル — 自己資本コスト
解法の思考プロセス:
自己資本コストはCAPMより
2% + 2 × (6% - 2%) = 10%
です。
この設問では、予想1株配当額 30円 を一定とみる配当割引モデルで評価するので、株式価値は
30円 / 10% = 300円
となります。
誤答の落とし穴:
- CAPMの
β × (市場収益率 - 安全利子率)を作れない - 配当額30円をそのまま現在価値だと思ってしまう
学習アドバイス:
配当割引モデルは、まず 割引率 を確定させることが先です。CAPMが入っていれば、そこで止まらず最後までつなげてください。
設問3 PBR
K3 数式・公式 T3 計算実行 L1 Trap-E 計算ミス
正解: ア(1.25倍)
必要知識: 倍率評価 — PBR = 株価 / 1株当たり純資産
解法の思考プロセス:
帳簿上の純資産は
総資産 1億円 - 負債 6,000万円 = 4,000万円
です。1株当たり純資産は
4,000万円 / 10万株 = 400円
なので、PBRは
500円 / 400円 = 1.25倍
です。
誤答の落とし穴:
- 純資産ではなく当期純利益500万円を使ってしまう
- 発行済株式数10万株で割らずにそのまま比べる
学習アドバイス:
B は Book value なので、PBRではまず 1株当たり純資産 を作る癖をつけてください。
第21問 金利スワップ
問題要旨: 金利スワップに関する記述として最も適切なものを選ぶ。
K1 定義・用語 T1 正誤判定 L1 Trap-D 類似混同
正解: ア
必要知識: デリバティブとリスク管理 — 金利スワップ
解法の思考プロセス:
金利スワップの典型的な利点は、異なる市場で比較優位を持つ企業同士が、それぞれ有利な条件で資金調達したうえで金利条件を交換し、双方に有利な調達を実現できることです。したがってアが正解です。
イは、変動金利借入の金利上昇リスクを避けるなら 固定金利支払・変動金利受取 が基本で、向きが逆です。ウも、金利スワップでは通常元本交換を伴いません。エも、金利下落時に有利になるのは一般に 固定金利を受け取る側(変動金利支払側) であり、変動金利受取側は受取金利が減るため不利です。
誤答の落とし穴:
- 通貨スワップと金利スワップを混同して元本交換を入れてしまう
固定受取・変動支払と固定支払・変動受取の向きを逆に覚える
学習アドバイス:
スワップは、何を固定したいのか を先に考えると整理しやすいです。金利上昇を避けたいなら、変動ではなく固定へ寄せます。
このページは役に立ちましたか?
評価とひとことを残してもらえると、内容と導線の改善に使えます。
Last updated on