ファイナンス
資本コスト、投資判断、企業価値評価を整理する
このページの役割
ファイナンスの本質は「誰が資金を出し、誰がそのリターンを要求するのか」という問いから始まります。企業が新工場を建てるかどうかを判断するとき、計算の根拠になるのは資本コスト(CAPM)であり、投資判定のルール(NPV法)であり、企業全体の価値をどう評価するか(DCF法)です。診断士試験では、これらが CAPM → WACC → NPV → 企業価値評価 というひとつの思考チェーンでつながっていることを理解することが最重要です。ここでいう CAPM は株主が求める利回りを見積もるモデル、NPV は投資でどれだけ価値が増えるかを見る指標、DCF法 は将来の CF を現在価値へ引き直す評価法です。
このページを読む前に
高校数学の指数・対数と、簡単な統計(平均、分散、標準偏差)の基礎があると読みやすいです。ただし計算式の詳細よりも「なぜそう考えるのか」という論理を優先して説明しています。
[!TIP] 初めて読むならこの順
まず
CAPMとWACCで要求収益率とハードルレートを固め、そのあとに現在価値、NPV、IRRで投資判定の基本を押さえます。次にDCF法と企業価値評価で会社全体をどう評価するかを見て、最後に効率的市場仮説やデリバティブで市場の見方とリスク管理へ広げると、式だけをばらばらに覚えにくくなります。
学習のポイント
- まず
CAPM、WACC、現在価値 - 次に
NPV、IRR、DCF法 - そのうえで
効率的市場仮説、企業価値評価 - 最後に
資金調達、実物オプション、デリバティブ
この章のページマップ
収益性指数法
PI を NPV と並べ、限られた予算でどの投資案を優先するか を整理します。
効率的市場仮説
弱度 / 準強度 / 強度、アクティブ / パッシブ運用、アノマリー を市場の見方として整理します。
マルチプル法
PER、PBR、EV/EBITDA を、DCF法 と比較しながら企業価値評価の別ルートとして見ます。
MM理論と配当政策
資本構成、配当政策、企業価値 の関係を、株主と債権者の視点で整理します。
デリバティブとリスク管理
先物、オプション、スワップ を、何のリスクをどう固定するか で選び分けます。
ファイナンス 基本確認問題
WACC、NPV、DCF法、効率的市場仮説、デリバティブ を短い問題で点検します。
まずどの順で読むか
- まずこのページで
CAPM → WACC → NPV → DCF法の主経路を通す
対応する出題テーマ
| テーマ | まず戻るページ |
|---|---|
| CAPM、β、無リスク利子率、市場リスクプレミアム、WACC、タックスシールド、NPV、IRR、現在価値、実物オプション | ファイナンス |
| PI、予算制約下の投資順位、NPVとの使い分け | 収益性指数法 |
| 市場ポートフォリオ、アクティブ / パッシブ運用、アノマリー、EMH強度、ランダム・ウォーク仮説 | 効率的市場仮説 |
| PER、PBR、EV/EBITDA、株主価値、事業価値、マルチプル比較 | マルチプル法 |
| MM理論、配当政策、内部金融 / 外部金融、資本構成 | MM理論と配当政策 |
| 先物、オプション、スワップ、買いヘッジ、売りヘッジ、為替 / 商品 / 金利リスク | デリバティブとリスク管理 |
問題文を見たら、まず 投資判定、企業価値評価、市場理論、リスク管理 のどれかを決め、そのあとに戻り先を固定すると迷いにくくなります。
資本コストの本質:なぜ企業にコストがあるのか
企業が銀行から 1,000 万円を借りるとき、銀行は「1 年後に 1,050 万円を返してほしい」と言います。50 万円は利息です。それは「銀行が 1,000 万円を貸す代わりに、1 年間その資金を失い、他の貸出機会を逃している。その失われた利益が 50 万円に相当する」という考え方です。
これを 資本コスト(Cost of Capital) と呼びます。銀行が要求する利息率 5% は、銀行にとって「その資金を貸す見返り」であり、企業にとって「資金を使う代金」です。
ここで重要な洞察があります。企業の資金は、銀行などの 債権者 と会社の 株主 の両者から来ています。
- 債権者(銀行)は、契約で決まった利息を要求します。例えば「年 4%」と決まれば、利益の有無に関わらずその率を払わないと借入契約を違反します。
- 株主 は、確定した配当ではなく「会社が稼いだ利益の一部」を期待します。しかし、その期待には「リスク」が伴います。会社の経営がうまくいかなければ、配当は減るか 0 になるかもしれません。
つまり、株主は債権者よりもハイリスク・ハイリターンを求める傾向があります。だから 株主資本コスト > 負債コスト が一般的です。
企業全体として「どのコストで資金を調達しているのか」を加重平均で計算したものが WACC(加重平均資本コスト) です。これは投資判断の「ハードルレート」になります。つまり「この投資で得られるリターンが、我々の資本コストを上回るなら、その投資は企業価値を高める」という判定基準です。
CAPM:株主が要求するリターンをどう決めるか
株主が企業に求める収益率は、どうやって決まるのか。素朴な質問です。
直感的には「その会社のビジネスがどれだけ成長しそうか」「その業界が景気循環でどう動くか」といった多くの要因が絡みます。ただ、簡潔なモデルが必要な場合に登場するのが CAPM(資本資産価格モデル) です。
CAPMの考え方:リスク = 市場への感応度
CAPMは「株主が要求する期待収益率は 3 つの要素で決まる」と考えます。
まず、最も安全な投資、つまり国債。国債なら、返済不能のリスクはほぼゼロです。だから国債の利回りを リスクフリーレート(無リスク利子率) と呼び、これを基準にします。例えば、国債利回りが 2% なら、これが企業に求める最低限です。
次に、「企業に投資すること」には、国債にはない リスク があります。そのリスクに対して、投資家は追加のリターンを要求します。これを リスクプレミアム と呼びます。
ただし、すべての企業が同じリスクを抱えているわけではありません。景気が良いとき、ハイテク企業の株価は跳ね上がりますが、電力会社の株価はそこまで動きません。ハイテク企業は市場全体の景気変動に敏感(ハイリスク)で、電力会社は景気の影響を受けにくい(ローリスク)です。
この「市場全体の動きに対する感応度」を測るのが β(ベータ)値 です。
- β = 1:市場と同じ幅で上下する。
- β > 1:市場が 10% 上がれば、この企業の株は 15% 上がる(景気敏感株)。
- 0 < β < 1:市場が 10% 上がれば、この企業の株は 5% しか上がらない(ディフェンシブ株)。
CAPMの公式
CAPMの公式はこうなります。
株主が要求する期待収益率 = 無リスク利子率 + β × 市場リスクプレミアム
数式で書くと:
Re = Rf + β × (Rm - Rf)
- Rf:国債利回り(例 2%)
- Rm:市場全体の期待収益率(例 8%)
- β:その企業の感応度(例 1.5)
- (Rm - Rf):市場リスクプレミアム(例 6%)
具体例で考えます。無リスク利子率 2%、市場期待収益率 8%、ある企業のβが 1.5 だったら、
Re = 2% + 1.5 × (8% - 2%) = 2% + 9% = 11%
この企業の株主は「年 11% のリターンを要求する」という意味です。なぜ 11% なのか。基本の国債 2% に、「この企業は市場より 1.5 倍リスキーだから、その分上乗せが必要」という論理です。
CAPMの限界
CAPMはベータ値だけでリスクを測定します。しかし実務では、その企業独自のリスク(経営者交代リスク、製品不具合リスクなど)も存在します。こうした 非系統的リスク は、分散投資で消去可能だとCAPMは考えるため、リスクプレミアムの対象から外されます。つまり、CAPM は市場リスク(系統的リスク)のみを報酬の対象と考えます。
WACC:企業全体の資金調達コストを計算する
企業の資金は、複数の源泉から来ます。銀行の借入、社債の発行、株主からの出資など。それぞれが異なるコストを要求します。
企業全体として「平均的に、どのコストで資金を調達しているか」を知るには、これらを加重平均する必要があります。これが WACC(加重平均資本コスト) です。
WACCの公式と意味
WACC = E/(D+E) × Re + D/(D+E) × Rd × (1 - t)
- E:株主資本の時価(時価ベース、簿価ではない)
- D:負債の時価
- Re:株主資本コスト(CAPMで求めた値)
- Rd:負債コスト(借入金利)
- t:法人税率
左側の項は「株主資本が全体に占める比率 × 株主資本コスト」で、右側は「負債比率 × 負債コスト」です。これらを足すと、企業全体の資金調達コストが出ます。
ここで 1 つの工夫があります。右側に (1 - t) という項が入っています。なぜでしょう。
タックスシールド:なぜ負債コストを割り引くのか
銀行から年 4% の利息で借入をします。100 万円借りたら、毎年 4 万円の利息を払わねばなりません。
しかし、ここで課税所得を計算するとき、利息は 経費 として認識されます。つまり、利息を払うことで、課税所得が減ります。
例えば、課税所得が 100 万円あったとき、4 万円の利息を払えば、課税所得は 96 万円になります。法人税率が 30% なら、利息がなければ 30 万円の税金を払うはずが、利息のおかげで 28.8 万円で済みます。つまり、1.2 万円の節税効果が生まれました。
これを タックスシールド(節税効果) と呼びます。
式で表すと:
- 利息支払い:4 万円
- 節税効果:4 万円 × 30% = 1.2 万円
- 実際の負債コスト:4 万円 - 1.2 万円 = 2.8 万円
つまり、実効的には 4% × (1 - 0.3) = 2.8% のコストで資金を調達しているのです。
こうした理由で、WACC の公式では負債コストに (1 - t) を掛けるのです。
時価ベースで計算する理由
WACC の公式で「株主資本の時価」「負債の時価」と書きました。簿価ではなく 時価 です。
なぜか。企業価値は「これからのキャッシュフロー」で決まるからです。簿価は過去の会計ルールに基づいた数字であり、将来の現金生成能力とは関係がありません。一方、時価は「市場が、その会社から得られる将来リターンをどう評価しているか」を反映しています。
例えば、簿価では株主資本が 600 万円かもしれませんが、株価が 2 倍に上がれば、時価は 1,200 万円になります。その企業の資本構成に変化が生じたなら、WACCも変わります。新しいWACCを使って投資判断をすべきです。
計算例
無リスク利子率 2%、市場期待収益率 8%、β = 1.5 の企業があります。
Step1:CAPMで株主資本コストを計算 Re = 2% + 1.5 × (8% - 2%) = 2% + 9% = 11%
Step2:ウェイトを計算 企業の時価:株主資本 800 万円、負債 200 万円。合計 1,000 万円。 株主資本の比率 = 800 / 1,000 = 80% 負債の比率 = 200 / 1,000 = 20%
Step3:WACCを計算 負債コスト(借入金利)が 4%、法人税率 30% だとすると、
WACC = 0.8 × 11% + 0.2 × 4% × (1 - 0.3) = 8.8% + 0.2 × 4% × 0.7 = 8.8% + 0.56% = 9.36%
この企業は、平均的に年 9.36% のコストで資金を調達しています。言い換えれば、この企業の投資は 年 9.36% 以上のリターンを生まないと、企業価値を高めることができない ということです。
現在価値と割引の理屈
投資判断の核心にあるのが「現在価値」という概念です。
想像してください。友人が「1 年後に 110 万円をくれる」と約束しました。今、10 万円をくれるなら、どちらを選びますか?
多くの人は「今すぐ 10 万円」を選ぶでしょう。なぜなら、今持っている 10 万円は銀行に預けて利息を稼げるからです。1 年後には 10.5 万円になるかもしれません。だから、1 年後の 110 万円と、今の 10 万円を比較する際、「1 年後の 110 万円は、今のいくらに相当するか」を計算する必要があります。
これが 割引 です。
割引の計算:現在価値 = 将来金額 ÷ (1 + 割引率)^年数
割引率が 5% だとしましょう。1 年後の 110 万円は、今のいくらに相当するか。
現在価値 = 110 万円 ÷ (1 + 0.05) = 110 ÷ 1.05 ≒ 104.76 万円
つまり、1 年後の 110 万円と、今の 104.76 万円は「同じ価値」だという計算です。
投資判断では、この割引率に WACC を使います。なぜなら、WACC は「企業が資金調達にかかるコスト」であり、同時に「その企業が生み出すべき最低限のリターン」だからです。
投資から得られるキャッシュフロー(CF)を、WACCで割り引いて現在価値に換算し、初期投資額と比較する。これが投資判定の基本です。
永続年金と成長永続年金
多くの企業は、「来年も、その翌年も、その翌年も……永遠に利益を生む」と想定します。毎年同じ金額のキャッシュフローを永遠に受け取るような状況を考えましょう。例えば、毎年 100 万円を永遠に受け取るとき、その現在価値はいくらか。
割引率 10% なら、
現在価値 = 100 万円 ÷ 0.10 = 1,000 万円
つまり、今 1,000 万円を 10% で運用すれば、毎年 100 万円の利息が永遠に得られる、というのと同じ価値だということです。
これを 永続年金(Perpetuity) の公式と呼びます:
永続年金の現在価値 = 年間キャッシュフロー ÷ 割引率
ただし、ほとんどの企業は、時間とともに成長します。毎年 2% ずつ増えると見込まれるなら、
成長永続年金の現在価値 = 年間キャッシュフロー ÷ (割引率 - 成長率)
例えば、来年の CF が 100 万円、成長率 2% で、割引率が 8% なら、
現在価値 = 100 万円 ÷ (0.08 - 0.02) = 100 ÷ 0.06 ≒ 1,667 万円
このような「永続的に成長し続ける CF」の現在価値が、企業価値評価(DCF 法)の「継続価値」になります。
NPVとIRR:投資判定の 2 つのルール
企業が新しい工場への投資を検討しています。初期投資に 5 億円必要で、毎年 1.5 億円のキャッシュフローが 5 年続くと見込まれています。WACCは 10% です。この投資をすべきか。
NPV法:正味現在価値
NPV(正味現在価値)は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引き、初期投資を差し引いたものです。
NPV = (1年目のCF ÷ 1.1) + (2年目のCF ÷ 1.1^2) + ... - 初期投資
例えば、毎年 1.5 億円が 5 年続き、割引率 10% なら、
5 年分の現在価値 ≒ 1.5 × 3.79(年金現価係数) ≒ 5.69 億円 NPV = 5.69 - 5.0 = 0.69 億円
NPV > 0 なので、この投資は企業価値を高めます。実行すべき という判定です。
NPV の良さは「絶対額」で判定することです。初期投資が大きい案と小さい案を比較するとき、「どちらがより多くの価値を生むか」を直接的に見ることができます。
IRR法:内部収益率
一方、「この投資の実効的な利回りはいくらか」を知りたいこともあります。それが IRR(内部収益率) です。
IRRは、NPVがちょうどゼロになる割引率です。上の例では「毎年 1.5 億円、5 年間、初期投資 5 億円」のキャッシュフローについて、NPV = 0 となる割引率は約 15% です(厳密な計算は複雑)。
判定ルール:IRR > WACC なら、投資実行。
WACCが 10% で、IRRが 15% なら、「この投資は、資本コストを 5% 上回るリターンを生む」という意味です。
NPV法とIRR法の使い分け
両者は通常、同じ結論に至ります。しかし、相互排他的な投資案(複数案の中から 1 つだけ選ぶ)では、結論が異なることがあります。
例えば:
- 案A:初期投資 100 万円、NPV = 20 万円、IRR = 15%
- 案B:初期投資 10 万円、NPV = 5 万円、IRR = 30%
案B のほうが IRR が高いですが、案A のほうが絶対額では 20 万円多くの価値を生みます。資本が十分にあるなら、案A を選ぶべき。これが NPV 法が「相互排他案では優先される」理由です。
IRR 法の隠れた仮定は「得られたキャッシュフローを IRR で再投資できる」というものですが、現実にはそうとは限りません。NPV 法はそうした再投資を、より現実的な WACC で考えます。
IRRの複数解問題
キャッシュフローの符号が複数回変わる場合(例:初期投資の赤字、その後黒字、最後にまた赤字)、IRRが複数存在することもあります。このときは NPV 法で判定するのが安全です。
ポートフォリオ理論と分散投資
1 つの資産だけに投資するのはリスキーです。もし A 社の株が下がれば、損失を被ります。でも、A 社が下がるときに B 社が上がるなら、両者を組み合わせることでリスク(変動性)を減らせます。
分散投資がリスクを下げる理屈
A 企業:期待収益率 12%、標準偏差 20%(変動が大きい) B 企業:期待収益率 6%、標準偏差 10%(変動が小さい) 相関係数 0.3(A と B は、完全には一緒に動かない)
60% を A に、40% を B に投資するとします。
ポートフォリオの期待収益率 = 0.6 × 12% + 0.4 × 6% = 9.6%
ポートフォリオの分散 = 0.6^2 × 0.20^2 + 0.4^2 × 0.10^2 + 2 × 0.6 × 0.4 × 0.20 × 0.10 × 0.3 = 0.0144 + 0.0016 + 0.00288 = 0.01888
ポートフォリオの標準偏差 = √0.01888 ≒ 13.7%
注目すべき点は、単純な加重平均だと 0.6 × 20% + 0.4 × 10% = 16% になるはずですが、実際は 13.7% に低下しています。これが 分散投資効果 です。
なぜ低下するのか。A と B の相関係数が 1 未満だから、つまり「A が下がるときに B が上がる傾向がある」から、両者の変動が相殺されるからです。
相関係数が 0 ならもっと効果が大きく、-1(完全に逆の動き)なら理論的にはリスクをゼロまで減らせます。
効率的フロンティアと資本市場線
リスク(標準偏差)と期待収益率の関係を図に描くと、「効率的フロンティア」という曲線が浮かび上がります。これは「同じリスクで最大のリターン、または同じリターンで最小のリスク」を実現するポートフォリオの軌跡です。
この曲線の中で、特に重要なのが「無リスク資産(国債)と市場ポートフォリオ(すべての企業の株を時価加重平均した構成)を最適に組み合わせた直線」です。これを 資本市場線(CML) と呼びます。
CML上のすべてのポートフォリオは、リスク・リターンの関係として「最適」です。理論的には、すべての投資家は、自分のリスク許容度に応じて、CML上のどこかの点を選ぶべきだと考えられています。
リスク回避的な投資家は、国債の比率を高く、市場ポートフォリオの比率を低くします。リスク愛好的な投資家は、逆に市場ポートフォリオの比率を高め(場合によってはレバレッジをかけて)、高いリターンを狙います。
リスク選好の 3 分類
- リスク回避型:同じ期待収益率なら、リスクが小さいほうを好む(大多数の個人投資家)
- リスク中立型:リスクを度外視して、期待収益率の高さだけで判断
- リスク愛好型:同じ期待収益率なら、リスクが高いほうを好む(非常にまれ)
診断士試験では、リスク回避型が標準的な前提として扱われます。
ポートフォリオ理論、CAPM、効率的市場仮説をどうつなぐか
この 3 つは、証券投資論で連続して出てくる一方、別々の理論 として暗記すると崩れやすい論点です。実際には、次の順でつながっています。
- まず
分散投資で消せるリスクと消せないリスクを分ける - 次に
消せない市場リスクだけがCAPMで価格づけされる - そのうえで
効率的市場仮説は、公開情報が素早く価格へ反映されるので継続的な超過収益が取りにくいことを説明する
3 つの理論の役割
| 理論 | まず見ているもの | 何を説明するか | 受験生が最初に押さえること |
|---|---|---|---|
ポートフォリオ理論 | 資産どうしの組み合わせ | 非系統的リスク は分散で小さくできる | 会社固有リスクは組み合わせで落ちる |
CAPM | 市場全体との連動 | 系統的リスク だけが期待収益率に効く | β が高いほど要求収益率が高い |
効率的市場仮説 | 価格への情報反映 | 公開情報だけで継続的に勝ち続けるのは難しい | どの情報まで織り込み済みか を問う理論 |
過去問での判断順
このリスクは分散で消えるかと聞かれたら、ポートフォリオ理論です。株主が何%を要求するか、βが高いとどうなるかと聞かれたら、CAPMです。公開情報だけで超過収益を取れるか、テクニカル分析やファンダメンタル分析が通用するかと聞かれたら、効率的市場仮説です。- 迷ったときは、
分散、価格づけ、情報反映のどれを問うているかに戻ります。
最短整理
ポートフォリオ理論 = 分散で落とす、CAPM = 市場リスクを価格づけする、効率的市場仮説 = 情報が価格へ反映される と固定すると、証券投資論の論点を混同しにくくなります。詳しい強度比較は 効率的市場仮説 で確認してください。
市場ポートフォリオ、アクティブ運用、アノマリーをどう見るか
効率的市場仮説 の周辺では、市場ポートフォリオ、アクティブ / パッシブ運用、アノマリー が続けて出てきます。ここでも、市場全体の基準、市場平均との付き合い方、例外パターン の順で切ると整理しやすいです。
| 論点 | 何を表すか | 過去問での読み方 | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|
市場ポートフォリオ | 市場全体を時価総額比で持つ理論上の基準 | 市場全体の平均像、CAPM や CML の基準 | 人気株の寄せ集めだと考える |
アクティブ運用 / パッシブ運用 | 市場平均を 上回りに行く のか、連動させる のか | EMH が強いほど パッシブ運用 が合理的になりやすい | パッシブ = 何も考えない と読む |
アノマリー | EMH だけでは説明しにくい例外パターン | 1月効果、小型株効果 などの観察事実 | 例外があるだけで必ず簡単に勝てると考える |
過去問での判断順
市場全体の基準となるポートフォリオを聞かれたら、市場ポートフォリオです。市場平均を上回ることを狙うか、平均へ連動させるかを聞かれたら、アクティブ運用 / パッシブ運用の比較です。準強度の EMH が概ね成り立つ、公開情報しか使えないと置かれているなら、まずパッシブ運用を考えます。1月効果、小型株効果、割安株効果のような例外が出てきたら、アノマリーと読みます。
最短整理
市場ポートフォリオ = 市場全体の基準、アクティブ / パッシブ運用 = 市場平均との付き合い方、アノマリー = 例外パターン と固定すると、EMH 周辺の設問を切り分けやすくなります。
1月効果 / 小型株効果 / 割安株効果 をどう結び付けるか
アノマリー が出てきたときは、その傾向が何の情報に基づくか を見ると、弱度 / 準強度 / 強度 とつなぎやすくなります。
| 例 | まず見ている情報 | まず疑う強度 |
|---|---|---|
1月効果 | 暦、過去の収益率パターン | 弱度 |
小型株効果 | 時価総額や企業規模という公開情報 | 準強度 |
割安株効果 | PBR、PER などの公開情報 | 準強度 |
強度 は、通常これら 3 つよりも、内部情報でも超過収益が取れないか という形で問われます。
最短整理
過去パターン = 弱度、公開情報 = 準強度、内部情報 = 強度 と置くと、アノマリー と EMH の強度対応を切りやすくなります。
市場ポートフォリオ / アクティブ運用 / パッシブ運用 / アノマリー / EMH強度 を一問でどう切るか
過去問では、これら 5 つが別々に並ぶより、1 つの文章の中で続けて出ることがあります。そんなときは、基準、運用方針、例外、情報反映の範囲 の順で戻ると崩れにくくなります。
| 説明文の手掛かり | 最初に答える語 | 次に何へつなぐか |
|---|---|---|
| 市場全体を時価総額比で持つ基準 | 市場ポートフォリオ | CAPM や市場平均の基準へつなぐ |
| 市場平均を上回ることを狙う | アクティブ運用 | EMH が強いほど難しくなると読む |
| 市場平均へ低コストで連動する | パッシブ運用 | 準強度 と相性が良いと読む |
| 例外的な収益傾向が観察される | アノマリー | どの EMH の強度とぶつかるかを見る |
過去情報 / 公開情報 / 内部情報 のどこまで反映済みか | 弱度 / 準強度 / 強度 | アノマリー や投資手法の可否へつなぐ |
総合問題での判断順
- まず
市場全体の基準を聞かれているなら、市場ポートフォリオを置きます。 - 次に、
市場平均を上回るのか市場平均へ連動するのかで、アクティブ運用 / パッシブ運用を切ります。 公開情報だけで継続的な超過収益は難しいとあれば、まず準強度を疑います。1月効果や小型株効果のような例外が出てきたら、アノマリーと読みます。- 最後に、その例外が
過去パターンなのか公開情報なのか内部情報なのかを見て、弱度 / 準強度 / 強度へ戻します。
最短整理
市場ポートフォリオ = 基準、アクティブ / パッシブ = 方針、アノマリー = 例外、EMH強度 = どの情報まで織り込み済みか の順で切ると、総合問題でも迷いにくくなります。
CAPM / CML / 市場ポートフォリオ / EMH をどう切るか
市場ポートフォリオ、CML、CAPM、EMH は、どれも 市場全体 や 市場平均 という言葉が出てくるため、過去問では混線しやすいです。ここでは、前提、基準、直接答える問い、含意 を分けて読むと崩れにくくなります。
| 語 | 主な前提 / 土台 | 基準 / 中心 | 直接答える問い | 含意 |
|---|---|---|---|---|
市場ポートフォリオ | すべてのリスク資産を市場全体として見る | 全リスク資産を 時価総額比 で持つ理論上の基準 | 市場全体の平均像は何か | CAPM や CML の基準になる |
CML | 無リスク資産と 市場ポートフォリオ を組み合わせられる | 効率的ポートフォリオの最良の直線 | 効率的ポートフォリオ全体のリスクと期待収益率はどう並ぶか | 同じ 総リスク なら CML 上が最良と読む |
CAPM | 分散後に残る市場リスクだけが報酬の対象 | 市場ポートフォリオ に対する β | 個別証券の期待収益率は何%か | β が高いほど要求収益率が高い |
EMH | 利用可能な情報が素早く価格へ反映される | 過去情報 / 公開情報 / 内部情報 の範囲 | どの情報だけでは継続的な超過収益が取りにくいか | 強いほど パッシブ運用 が合理的になりやすい |
総合問題での判断順
市場全体の基準ポートフォリオを聞かれたら、まず市場ポートフォリオです。無リスク資産と市場ポートフォリオを結ぶ最良の直線、効率的ポートフォリオ全体、標準偏差が出てきたら、CMLです。βや個別証券の期待収益率、株主が何%を要求するかが出てきたら、CAPMです。公開情報だけで勝てるか、何の情報まで価格へ反映済みかが出てきたら、EMHです。- 迷ったときは、
基準、効率的ポートフォリオの線、個別証券の価格づけ、情報反映のどれを問うているかへ戻ります。
最短整理
市場ポートフォリオ = 基準、CML = 効率的ポートフォリオの線、CAPM = βで個別証券を価格づけ、EMH = 情報反映 と固定すると、CML と CAPM、市場ポートフォリオ と EMH を混同しにくくなります。
SML / CML / β / 標準偏差 をどう切るか
ここからさらに崩れやすいのが、SML と CML、β と 標準偏差 の取り違えです。SML は 証券市場線 のことで、CAPM を図にしたときの β と期待収益率 の関係です。一方、CML は 無リスク資産と市場ポートフォリオを結ぶ効率的ポートフォリオの線 であり、見ているリスク指標が違います。
| 語 | 何を表すか | 主に見るリスク指標 | 主な対象 | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|---|
SML | CAPM の 期待収益率と β の関係を表す線 | β | 個別証券 や ポートフォリオ | 効率的ポートフォリオだけの線 と読む |
CML | 無リスク資産と市場ポートフォリオを結ぶ最良の線 | 標準偏差(総リスク) | 効率的ポートフォリオ | 個別証券も必ずこの線で見る と読む |
β | 市場全体の動きに対する感応度 | 系統的リスク | 個別証券 や ポートフォリオ | 総リスクそのもの だと読む |
標準偏差 | 収益率のばらつき全体 | 総リスク | 個別証券 や ポートフォリオ | 市場感応度 だと読む |
過去問での判断順
個別証券の期待収益率とβを結び付けているなら、SMLです。無リスク資産、市場ポートフォリオ、効率的ポートフォリオが並び、横軸が標準偏差なら、CMLです。市場が 1% 動いたとき、その証券が何% 動きやすいかを聞いているなら、βです。収益率のばらつき、総リスク、ボラつきの大きさを聞いているなら、標準偏差です。- 迷ったときは、
個別証券か / 効率的ポートフォリオか、βか / 標準偏差かの 2 つに戻ります。
最短整理
SML = β / 個別証券、CML = 標準偏差 / 効率的ポートフォリオ、β = 市場感応度、標準偏差 = 総リスク と固定すると、SML と CML、β と 標準偏差 を逆にしにくくなります。
弱度、準強度、強度の包含関係と否定範囲をどう戻すか
弱度 / 準強度 / 強度 は 3 つの別理論ではなく、強い仮説ほどより弱い仮説を含む 関係です。この 包含関係 と、どの分析手法まで通用しにくくなるか を一緒に見ると、過去問の選択肢をかなり切りやすくなります。
| 強度 | どこまで情報が反映済みか | 含む関係 | 主に通用しにくくなる分析手法 | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|---|
弱度 | 過去情報 | 出発点 | テクニカル分析 | ファンダメンタル分析 まで否定すると読む |
準強度 | 過去情報 + 公開情報 | 弱度 を含む | テクニカル分析 + ファンダメンタル分析 | 内部情報 まで反映済みだと読む |
強度 | 過去情報 + 公開情報 + 内部情報 | 準強度 と 弱度 を含む | あらゆる分析(理論上の極限) | 現実でも広く成立すると考える |
過去問での判断順
- まず、問題文が
過去情報、公開情報、内部情報のどこまで反映済みだと言っているかを見ます。 公開情報まで反映済みなら、準強度が弱度を含むので、テクニカル分析もファンダメンタル分析も通用しにくいと戻します。内部情報まで反映済みなら、強度が準強度と弱度を含むので、否定範囲は最も広いと読みます。- 逆に
テクニカル分析だけが否定されているなら、まず弱度を疑います。 ファンダメンタル分析まで否定されているなら、少なくとも準強度と読みます。
包含関係の最短整理
強度 ⊃ 準強度 ⊃ 弱度、弱度 = テクニカル分析、準強度 = テクニカル分析 + ファンダメンタル分析、強度 = 内部情報まで と置くと、EMH の比較問題をかなり戻しやすくなります。
テクニカル分析、ファンダメンタル分析、インサイダー情報、インデックス運用をどう切るか
過去問では、どの分析手法が通用しにくいか と どんな運用が合理的か を続けて問われることがあります。ここでは、何の情報を使っているか と そのときの含意 を一緒に押さえると崩れにくくなります。
| 手法や運用 | 主に使う情報 | まず結び付ける強度 / 含意 | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|
テクニカル分析 | 過去の株価、出来高、チャートパターン | 弱度 で通用しにくい | 公開情報まで使う分析だと読む |
ファンダメンタル分析 | 財務諸表、決算、ニュースなどの公開情報 | 準強度 で通用しにくい | 弱度 でも否定されると読む |
インサイダー情報 | 未公表の合併、業績修正などの内部情報 | 強度 の論点 | 準強度 の話だと読む |
インデックス運用 | 市場平均へ低コストで連動する運用 | 準強度 が概ね成り立つときに合理的 | 強度 のときだけ合理的だと読む |
過去問での判断順
- まず
過去の値動きを使うかどうかを見ます。そこならテクニカル分析と弱度を結び付けます。 - 次に
公開情報を使うかどうかを見ます。そこならファンダメンタル分析と準強度を結び付けます。 内部情報が出てきたら、インサイダー情報と強度を結び付けます。特別な情報優位がない、市場平均へ低コストで連動するとあれば、インデックス運用を考えます。インデックス運用は強度だけでなく、準強度が概ね成り立つ市場でも合理的になりやすいと押さえます。
最短整理
過去情報 = テクニカル分析 = 弱度、公開情報 = ファンダメンタル分析 = 準強度、内部情報 = インサイダー情報 = 強度、市場平均へ低コストで連動 = インデックス運用 と置くと、投資手法の比較問題を切りやすくなります。
ランダム・ウォーク仮説、テクニカル分析、弱度をどうつなぐか
ランダム・ウォーク仮説 は、明日の値動きは今日までのチャートだけでは系統的に読みにくい という読み方をする論点です。試験では、これを 過去情報は価格に反映済み とする 弱度、そして 過去チャートを使うテクニカル分析 と一緒に問うことが多いです。
| 論点 | まず見ているもの | 過去問での読み方 | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|
ランダム・ウォーク仮説 | 将来の値動きを過去チャートだけで読めるか | 過去の値動きから次の値動きを系統的に予測しにくい | 株価が完全な偶然で動く と言い切る |
テクニカル分析 | 過去の株価、出来高、チャートパターン | 過去チャートから売買判断をする手法 | 公開情報まで使う分析だと読む |
弱度 | 過去の株価、出来高が織り込み済みか | 過去情報だけで超過収益を取りにくい | ファンダメンタル分析 まで否定すると読む |
過去問での判断順
- まず
何を説明しているのかを見ます。値動きの性質、分析手法、情報反映の範囲のどれかを切ります。 過去チャートだけでは将来を系統的に読みづらいなら、ランダム・ウォーク仮説です。過去の株価や出来高を使って売買判断するなら、テクニカル分析です。過去情報はすでに価格へ反映済みと置いているなら、弱度です。- 試験では、
弱度が概ね成り立つ→ランダム・ウォーク的に読む→テクニカル分析は通用しにくいと一本でつなぐと整理しやすくなります。
最短整理
過去チャートから読めるか = ランダム・ウォーク仮説、過去チャートを使う手法 = テクニカル分析、過去情報は織り込み済みか = 弱度 と置くと、3 つの違いを切り分けやすくなります。
企業価値評価:DCF法
企業全体の価値(時価総額)をどう推定するか。方法はいくつかありますが、理論的に最も適切なのが DCF法(割引キャッシュフロー法) です。
FCFとは何か
投資判断で「キャッシュフロー」というと、設備投資プロジェクトのレベルの話を指すことが多いです。でも、企業全体の価値を考えるときは、FCF(フリーキャッシュフロー) を使います。
FCFは「企業全体が、債務返済と設備投資を済ませた後に、自由に使える現金」です。言い換えると「株主と債権者の両者に配分可能な、真のキャッシュ」です。
計算式: FCF = 営業利益 × (1 - 税率) + 減価償却費 - 設備投資 - 運転資本増加額
各項目の意味:
- 営業利益 × (1 - 税率):税引後で稼いだ利益。これが企業の真の儲け。
- + 減価償却費:減価償却費は、実際には現金が出ていかない(過去に買った設備代の会計計上)。だから戻す。
- - 設備投資:新しい機械や工場を買う。これは現金が出ていく。
- - 運転資本増加:売掛金や在庫が増えれば、その分現金が拘束される。
DCF法による企業価値の計算
企業の価値は「これから生み出される FCF の現在価値合計」です。
通常、企業価値計算は 2 つの段階に分かれます。
第 1 段階:予測期間(3~5 年) 具体的な FCF を 1 年ごとに予測し、WACC で割り引く。
第 2 段階:継続価値(永続期間) 予測期間の終わり以降、企業は「定常状態」で成長し続けると考える。毎年の FCF が一定の成長率 g で増えるなら、
継続価値 = n 年目の FCF × (1 + g) ÷ (WACC - g)
これも現在価値に割り引く。
計算例
予測期間を 3 年、その後永続成長率 2% で考えます。
- FCF1 = 500 万円
- FCF2 = 550 万円
- FCF3 = 600 万円
- WACC = 8%
- 有利子負債 = 2,000 万円
- 発行済株式数 = 10,000 株
Step1:予測期間の現在価値 PV(FCF1) = 500 ÷ 1.08 ≒ 463 万円 PV(FCF2) = 550 ÷ 1.08^2 ≒ 472 万円 PV(FCF3) = 600 ÷ 1.08^3 ≒ 476 万円 合計 ≒ 1,411 万円
Step2:継続価値 4 年目の FCF = 600 × 1.02 = 612 万円 継続価値 = 612 ÷ (0.08 - 0.02) = 612 ÷ 0.06 = 10,200 万円 現在価値 = 10,200 ÷ 1.08^3 ≒ 8,097 万円
Step3:企業価値 企業価値 = 1,411 + 8,097 = 9,508 万円
Step4:株主価値と 1 株当たり価値 株主価値 = 企業価値 - 有利子負債 = 9,508 - 2,000 = 7,508 万円 1 株当たり価値 = 7,508 ÷ 10,000 = 750.8 円
もし市場での株価が 600 円なら「割安」、900 円なら「割高」という判断が可能です。
株主視点と債権者視点で見ると、何が企業価値を動かすか
ファイナンスで後半に出てくる MM理論 や 配当政策 は、DCF法 や NPV と別世界の論点ではありません。混乱しやすいのは、投資を変えた、借入を増やした、配当を増やした が同じように見えることです。しかし実際には、動かしているものが違います。
投資政策は、将来のFCFを変えます資本構成は、株主と債権者の取り分と要求収益率を変えます配当政策は、株主への払い出し時点や還元方法を変えます
この切り分けができると、DCF法、MM理論、配当政策 を 1 本の流れで読めるようになります。
まず 何が変わったか で切る
| 起きたこと | まず動くもの | 企業価値への基本効果 | 株主側で見るべきこと | 債権者側で見るべきこと |
|---|---|---|---|---|
NPV がプラスの投資案を採択 | 将来 FCF | 増える | 固定された負債の残りとして株主価値が増えやすい | 返済原資が厚くなる |
負債比率を上げる(MM理論・無税) | 株主 と 債権者 の取り分 | 変わらない | 株主資本コスト は上がるが、WACC は変わらない | 貸付残高が増える |
負債比率を上げる(MM理論・有税) | 取り分 + 節税効果 | 理論上は節税効果分だけ増える | 株主資本コスト は上がるが、無税時より上昇が緩い | 貸付残高が増え、倒産リスクも点検対象になる |
| 配当を増やす / 減らす(投資政策は固定) | 払い出し時点 | 完全市場では変わらない | 現金還元のタイミングが変わるだけで、価値の源泉は変わらない | 直接は変わらない |
| 株式分割を行う | 1 株当たり表示 | 変わらない | 1 株当たり価格は下がるが、保有総額は変わらない | 直接は変わらない |
過去問での判断順
- その変化が
営業 CF、成長率、投資採否を変えるなら、まずNPVやDCF法で考えます。 借入比率や自己資本比率だけが変わるなら、MM理論とWACC / 株主資本コストの論点です。配当性向や増配 / 減配だけが変わり、投資政策が固定なら、完全市場では企業価値は変わりません。DCF法で求めたのが企業価値なのか、株主価値なのかを確認し、必要なら有利子負債を引き、現預金を戻す順で株主価値へ直します。
最短整理
投資政策は価値の源泉、資本構成は取り分と要求収益率、配当政策は還元の経路 と固定すると、DCF法 と MM理論 と 配当無関連命題 を混同しにくくなります。詳しい整理は MM理論と配当政策 で確認してください。
WACC、NPV、DCF法、PI、IRR をどう使い分けるか
ファイナンスの過去問で崩れやすいのは、式を忘れることよりも、どの場面でどの道具を最初に使うか を取り違えることです。先に 何を求める問題か を切ってから式を選ぶと、似た指標が並んでも迷いにくくなります。
まずは「何を求める問題か」で切る
| 問題文の合図 | 最初に使う道具 | まず求まるもの | 次につなぐ先 | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|---|
β、無リスク利子率、市場収益率 | CAPM | 株主資本コスト Re | WACC の株主資本コストへ入れる | β を見た瞬間に投資採否まで決めてしまう |
| 資本構成、負債コスト、法人税率 | WACC | 企業全体の割引率 | NPV や DCF法 の割引率に使う | 簿価で比率を取り、(1 - t) を落とす |
| 初期投資、年度別 CF、採択 / 棄却 | NPV | 投資案が増やす価値の絶対額 | IRR や PI で補助比較する | 現在価値合計だけ見て、初期投資を引かない |
FCF、継続価値、企業価値、1株価値 | DCF法 | 企業価値、株主価値 | 株価比較やマルチプル法との照合へつなぐ | 企業価値と株主価値を混同し、現預金を戻し忘れる |
| 投資予算、組み合わせ、資本制約 | PI | 投資 1 円あたりの効率 | 最後は NPV の合計で価値増加額を確認する | 相互排他的でも PI を主役にしてしまう |
利回りは何%か、内部収益率 | IRR | 利回りの形の答え | WACC と比較し、必要なら NPV へ戻る | IRR が高い案を常によい案だと読む |
判断順を固定する
- まず
要求収益率、投資案の価値、企業全体の価値のどれを求める問題かを切ります。 - 株主が求める収益率なら
CAPM、企業全体のハードルレートならWACCを使います。 - 単独投資案の採否や相互排他案の優劣は、まず
NPVで見ます。 - 企業全体の価値は
FCF を WACC で割り引くというDCF法の一本の流れで求めます。 PIとIRRは補助線です。資本制約下の効率比較や利回り表現には有効ですが、最後は企業価値をどれだけ増やすかに戻して確かめます。
主経路と補助線を分けて覚える
主経路は CAPM → WACC → NPV / DCF法 です。PI と IRR は便利ですが、相互排他や資本制約の設問でも最後は 価値をどれだけ増やすか へ戻すと判断を外しにくくなります。
資金調達の実務的な分類
企業が資金を調達する方法は、多様です。それを整理する 2 つの軸があります。
内部金融 vs 外部金融
内部金融:企業の内部で生み出された資金を活用
- 留保利益:過去の利益を内部に貯めたもの。新しい投資に使う。
- 減価償却費:実際には現金が出ていかない費用。これが企業内に現金として残る。
外部金融:企業の外部から新たに資金を調達
- 株式発行(増資):新しい株主から資金を得る。
- 社債発行:債券市場で、企業が直接借入(銀行経由ではない)。
- 銀行借入:最も一般的な借入方法。
- CP(コマーシャルペーパー):短期の借用証書。信用力の高い大企業が主な発行主体で、格付け取得が実質的な要件となるため中小企業の発行は困難。
一般的に、企業は 内部金融を優先 します。なぜなら、新株発行は既存株主の利益を薄めるシグナルとして捉えられ、株価が下がるリスクがあるからです(シグナリング効果)。
短期資金調達 vs 長期資金調達
- 短期:CP、当座借越、買掛金延期(仕入企業への支払い延期)。数ヶ月~1 年。
- 長期:社債、銀行長期借入、増資。3 年~数十年。
長期投資には長期資金が、短期的な資金不足には短期資金が対応します。
投資意思決定のキャッシュフロー範囲:何を含めるか
投資案を評価するとき、「どのキャッシュフローを含めるか」は、答えを左右する重要な判断です。
機会原価:含めるべき
ある工場の建物があります。これを新しい事業で使うか、それとも外部に賃貸するか検討しています。新事業での投資評価に、この建物の価値をどう反映させるか。
答えは「賃貸したら得られる賃料」を、新事業のコスト(マイナスの CF)として含めます。これを 機会原価 と呼びます。
「現状をキープするなら失われる価値」が、新投資のコストになるという論理です。
埋没原価:除外すべき
過去に購入した施設に 5 億円払いました。その施設は今後も使える状態ですが、新しい用途を考える際、「過去の 5 億円」を投資評価に含めてはいけません。その 5 億円は既に失われており、今後の意思決定には影響しないからです。
これを 埋没原価(Sunk Cost) と呼びます。
カニバリゼーション:含めるべき
新製品 B を発売すると、既存製品 A の売上が減ると見込まれます。新製品 B のプロジェクト評価には、この「既存製品 A の売上減少」を反映させるべき。そうしないと、企業全体のキャッシュフローの影響を過大評価してしまいます。
これを カニバリゼーション と呼びます。
NPVプロファイル、感度分析、デシジョンツリーをどの順で使うか
投資判断の応用問題では、NPVプロファイル、感度分析、デシジョンツリー が別々に出てくるように見えます。しかし実際には、どれも 基準ケースの NPV を起点に、何が不確実なのか を違う角度から点検しているだけです。
3 つの道具の役割
| 見たいこと | 使う道具 | まず固定するもの | 何が分かるか | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|---|
相互排他案の順位が 割引率 で逆転しそうか | NPVプロファイル | 各案の CF パターンと初期投資 | どの割引率帯でどの案が有利か、クロスオーバー の有無 | IRR の高さだけで決める |
WACC、差額営業 CF、残存価値 のどれが判断を壊すか | 感度分析 | 基準ケースの NPV | どの前提が最も効くか、反転点はどこか | 複数前提を同時に動かし、原因をぼかす |
後で情報が入り、延期 / 継続 / 撤退 を選べるか | デシジョンツリー | 各末端シナリオの NPV | 柔軟性の価値、右から左 の最適行動 | 途中で期待値を先に取り、選択の価値を潰す |
試験での判断順
- まず
基準ケースの NPVを出し、そもそも価値がある案かを確認します。 - 比較案どうしの順位が
割引率で入れ替わりそうなら、NPVプロファイルを見ます。 - 単独案の判断がどの前提で崩れるかを知りたいなら、
感度分析を一軸ずつ行います。 - 将来の情報入手後に
実行 / 見送り / 撤退を選べるなら、デシジョンツリーを右から左にたどります。
最短整理
NPVプロファイル = 割引率の不確実性、感度分析 = 前提の不確実性、デシジョンツリー = 後から選び直せる柔軟性 と置くと、どの道具を先に使うべきかを外しにくくなります。
実物オプションをどう選ぶか
投資判断では、実物オプション が デシジョンツリー と一緒に出てきやすいです。ここでも、何を待つのか、どこまで広げるのか、どこで絞るのか、何へ切り替えるのか、どこでやめるのか を先に切ると整理しやすくなります。
| 実物オプション | 何をしたいか | 典型場面 | 金融オプションとの対応 |
|---|---|---|---|
延期 | 情報が出るまで待ってから投資する | 需要や制度変更が読みにくい新規投資 | コール |
拡張 | 成功したら追加投資で大きくする | 小規模開始後に増産や追加出店を狙う | コール |
縮小 | 悪化時に規模を絞って損失を抑える | 生産量や店舗規模を段階的に下げる | プット |
切替 | 用途、製品、原材料を切り替える | A製品 ↔ B製品、燃料X ↔ 燃料Y を選び直す | コール / プット |
撤退 | 続けずにやめて回収価値を取る | 設備売却や運転資本回収で損失を止める | プット |
過去問での判断順
- まず
投資前に待てるのかを見ます。待てるなら延期オプションです。 - 次に
成功時に大きくできるかを見ます。追加投資で上振れを取りにいくなら拡張オプションです。 悪化時に規模を落とせるかを見ます。縮小して損失を抑えるなら縮小オプションです。用途や投入物を変えられるかを見ます。製品や原材料の切替ができるなら切替オプションです。やめて回収できるかを見ます。売却価値や運転資本回収が大きいなら撤退オプションです。
最短整理
待つ = 延期、広げる = 拡張、絞る = 縮小、変える = 切替、やめる = 撤退 と固定すると、実物オプション の比較問題をかなり切りやすくなります。
デリバティブとリスク管理をどう選ぶか
デリバティブは 先物、オプション、スワップ という名前だけで覚えると、過去問で「どれを使うのか」が崩れやすい論点です。実際には、何を固定したいのか を先に切るとかなり整理しやすくなります。
3 つのニーズと手段
| ニーズ | まず見ているもの | 使いやすい手段 | こう考えると分かりやすい | 典型例 |
|---|---|---|---|---|
価格を今の時点で固定したい | 商品価格、為替レート | 先物 / 先渡 / 為替予約 | 双方に義務があり、将来価格を確定しやすい | 原材料の仕入価格、農産物の販売価格 |
不利な方向だけ避け、有利な方向は残したい | 価格や為替の片側リスク | オプション | 権利だけを買い、不利なら行使し、有利なら放棄できる | 輸入企業の ドル・コール、輸出企業の ドル・プット |
支払い条件そのものを固定したい | 金利や通貨建てのキャッシュフロー条件 | スワップ | 既存契約は残したまま、支払い条件を交換する | 変動金利 → 固定金利 の変換 |
過去問での判断順
- まず
何が変動するのかを見ます。商品価格か、為替か、金利かを切ります。 - 次に
完全に固定したいのか、不利な方向だけ避けたいのかを切ります。 完全固定なら先物 / 先渡 / 為替予約、片側保護ならオプションを考えます。先物を使うなら、将来買う側で価格上昇が困る = 買いヘッジ、将来売る側で価格下落が困る = 売りヘッジと決めます。借入条件や利払い条件を変えたいなら、スワップを優先して考えます。
最短整理
価格を固定する = 先物 / 先渡 / 為替予約、不利な方向だけ避ける = オプション、金利条件を変える = スワップ と置き、その後で 買う側か売る側か を決めると、ヘッジ方向の誤答を減らしやすくなります。詳しい比較は デリバティブとリスク管理 で確認してください。
為替予約、通貨オプション、通貨スワップをどう選ぶか
為替論点では、為替予約、通貨オプション、通貨スワップ の名前だけを並べると崩れやすいです。先に 単発の外貨受払か、継続的な元利払いか、完全固定か片側保護か を切ると、かなり迷いにくくなります。
| 場面 | まず見ること | 使いやすい手段 | 方向の決め方 |
|---|---|---|---|
3か月後に ドルを支払う。レートを今すぐ固定したい | 単発の外貨支払い | 為替予約 | 後で ドルを買う ので ドル買い予約 |
3か月後に ドルを支払う。円安だけ避けたい | 単発の外貨支払い + 片側保護 | 通貨オプション | 後で ドルを買う権利 なので ドル・コール |
3か月後に ドルを受け取る。レートを今すぐ固定したい | 単発の外貨受取り | 為替予約 | 後で ドルを売る ので ドル売り予約 |
3か月後に ドルを受け取る。円高だけ避けたい | 単発の外貨受取り + 片側保護 | 通貨オプション | 後で ドルを売る権利 なので ドル・プット |
数年間にわたり 外貨建ての元本・利息 を円建て負担へ変えたい | 継続的な元利払い条件の交換 | 通貨スワップ | 一度の受払ではなく、契約期間全体の条件を交換 |
過去問での判断順
- まず
一回きりの受払か複数年の元利払いかを見ます。継続的な条件交換なら通貨スワップを優先します。 - 単発の受払なら、
完全固定か不利な方向だけ避けたいかを切ります。 完全固定なら為替予約、片側保護なら通貨オプションを選びます。- その後で
後で外貨を払う = 外貨を買う側、後で外貨を受け取る = 外貨を売る側と読み替えます。 外貨を買う権利 = コール、外貨を売る権利 = プットに落とすと、ドル・コール / ドル・プットを逆にしにくくなります。
受払方向の最短整理
後で払う外貨は後で買う、後で受け取る外貨は後で売る と置くと、為替予約 でも 通貨オプション でも方向を取り違えにくくなります。
輸入、輸出、仕入、販売をヘッジ方向へどう落とすか
買いヘッジ / 売りヘッジ と コール / プット を別々に覚えるより、後で何を買うのか、何を売るのか に戻した方が安定します。仕入 / 輸入 は 後で買う側、販売 / 輸出 は 後で売る側 と固定すると、商品価格と為替を同じ向きで切りやすくなります。
| 問題文の主語 | まず言い換えること | 完全固定なら | 片側保護なら | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|---|
原材料を仕入れる | 後で商品を買う側 | 買いヘッジ | コール・オプション | 売りヘッジ を選ぶ |
製品や農産物を販売する | 後で商品を売る側 | 売りヘッジ | プット・オプション | 買いヘッジ を選ぶ |
輸入代金をドルで支払う | 後で外貨を買う側 | ドル買い予約 | ドル・コール | ドル・プット を選ぶ |
輸出代金をドルで受け取る | 後で外貨を売る側 | ドル売り予約 | ドル・プット | ドル・コール を選ぶ |
過去問での判断順
- まず
仕入 / 輸入なのか、販売 / 輸出なのかを見ます。 仕入 / 輸入 = 後で買う側、販売 / 輸出 = 後で売る側と読み替えます。完全固定なら、商品価格は買いヘッジ / 売りヘッジ、為替はドル買い予約 / ドル売り予約を選びます。片側保護なら、買う側 = コール、売る側 = プットと落とします。- 最後に
商品価格の話か為替の話かを見て、先物 / 為替予約 / 通貨オプションの具体名へ進みます。
方向の最短整理
仕入 / 輸入 = 後で買う側、販売 / 輸出 = 後で売る側 と固定すると、買いヘッジ / 売りヘッジ と コール / プット を同じ規則で選びやすくなります。
コール買い、プット買い、コール売り、プット売りをどう切るか
オプションは コール / プット だけでなく、買い / 売り まで入ると混乱しやすいです。ここでは、上がると得か、下がると得か に加えて、最大利益、最大損失、損益分岐点 を並べて覚えると、過去問でかなり崩れにくくなります。
| ポジション | どちらに動くと有利か | 最大利益 | 最大損失 | 損益分岐点 | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|---|---|
コール買い | 原資産価格の 上昇 | 理論上大きい | 支払プレミアム | 行使価格 + プレミアム | 最大利益 = プレミアム とする |
プット買い | 原資産価格の 下落 | 行使価格 - プレミアム(原資産価格が 0 まで下がると仮定) | 支払プレミアム | 行使価格 - プレミアム | コール買い と同じ方向で読む |
コール売り | 原資産価格が 上がらない と有利 | 受取プレミアム | 理論上大きい | 行使価格 + プレミアム | 買い手と同じく上昇で得する と読む |
プット売り | 原資産価格が 下がらない と有利 | 受取プレミアム | 行使価格 - プレミアム(原資産価格が 0 まで下がると仮定) | 行使価格 - プレミアム | プット買い と同じく下落で得すると読む |
過去問での判断順
- まず
買い手か売り手かを見ます。買い手の最大損失 = プレミアム、売り手の最大利益 = プレミアムを先に固定します。 - 次に
コールかプットかを見ます。上昇で有利 = コール、下落で有利 = プットと戻します。 損益分岐点はコール = 行使価格 + プレミアム、プット = 行使価格 - プレミアムと置きます。売りは買いの損益を反転した形だと考えると、最大利益 / 最大損失を逆にしにくくなります。
4ポジションの最短整理
買い手の最大損失 = プレミアム、売り手の最大利益 = プレミアム、コールは K + P、プットは K - P と置くと、コール買い / プット買い / コール売り / プット売り をかなり安定して切れます。
本質的価値、時間価値、ITM、ATM、OTM を満期接近とボラティリティへどうつなぐか
オプション価値では、ITM / ATM / OTM の状態判定だけで終わると、なぜ ATM や OTM にも価格が付くのか を落としやすいです。試験では、本質的価値 と 時間価値 を分けたうえで、満期までの期間 と ボラティリティ がどう効くかまで一緒に問われやすいです。
| 状態 | 本質的価値 | 時間価値 | 満期接近でどうなるか | ボラティリティ上昇でどうなるか | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|---|---|
ITM | 正 | 残る ことが多い | 時間価値 が縮み、満期では 本質的価値 に近づく | 一般に上がりやすい | ITM = 本質的価値だけ と読む |
ATM | 0 | 価格の中心 | 時間価値 が縮み、満期では 0 に近づく | 上がりやすい | ATM = 価値ゼロ と読む |
OTM | 0 | 価格は 時間価値だけ | 時間価値 が縮み、満期では 0 に近づく | 上がりやすい | OTM = 満期前でも価格ゼロ と読む |
過去問での判断順
- まず
コール / プットと原資産価格と行使価格の大小から、ITM / ATM / OTMを判定します。 本質的価値は、ITM なら正、ATM / OTM なら 0と置きます。オプション価格 = 本質的価値 + 時間価値と戻し、価格が残っていれば、その差が時間価値です。満期接近は時間価値の減少、ボラティリティ上昇は時間価値の増加と押さえます。- とくに
ATM / OTMで価格が残っているなら、本質的価値ではなく時間価値で値が付いていると読みます。
オプション価値の最短整理
オプション価格 = 本質的価値 + 時間価値、ATM / OTM でも満期前なら時間価値が残る、満期接近で時間価値は減る、ボラティリティ上昇で時間価値は増える と置くと、価値構成の問題をかなり戻しやすくなります。
プット=コール・パリティ / 二項モデル / オプション価格 をどう切るか
オプション論点は、全部を「価格の問題」とひとまとめにすると崩れやすいです。過去問では、価格の中身 を聞いているのか、コールとプットの整合関係 を聞いているのか、上昇 / 下降シナリオから理論価格 を聞いているのかで、使う道具が変わります。
| 論点 | まず見る与件 | 何が分かるか | 計算の出発点 | 前提 | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|---|---|
オプション価格 | 現在価格、行使価格、満期、ボラティリティ | 本質的価値、時間価値、価格の増減方向 | オプション価格 = 本質的価値 + 時間価値 | 満期までの期間と価格変動の見方 | C と P が両方あるからと、すぐ プット=コール・パリティ を使う |
プット=コール・パリティ | 同じ原資産、同じ行使価格、同じ満期の C / P / S / PV(K) | 欠けた C や P、価格の整合性 | C + PV(K) = P + S | 同一原資産 / 同一行使価格 / 同一満期、欧州型、無裁定 | u と d があるのに プット=コール・パリティ だけで理論価格を出そうとする |
二項モデル | S、u、d、K、r、上昇 / 下降シナリオ | オプションの理論価格 | Su / Sd → Cu / Cd → p → 割引 | 1期間2状態、無裁定、p は リスク中立確率 | p を実際の発生確率だと思う |
過去問での判断順
今のオプション価格の中身や満期接近 / ボラティリティの影響を聞かれているなら、オプション価格を見ます。同じ原資産 / 同じ行使価格 / 同じ満期のコールとプットが並び、どちらか一方の価格が欠けているなら、プット=コール・パリティを使います。上昇倍率 u、下降倍率 d、無リスク金利 rが出てきたら、二項モデルの与件だと見ます。二項モデルではpを出して終わりではなく、上昇 / 下降時のペイオフを期待値化して現在へ割り引きます。プット=コール・パリティや二項モデルで求めた理論値と市場価格がずれているなら、裁定機会がないかも疑います。
3つの道具の最短整理
価格の分解 = オプション価格、整合関係 = プット=コール・パリティ、上昇 / 下降シナリオ = 二項モデル と置くと、オプションの式をかなり選びやすくなります。
社内調整で吸収するか、契約でヘッジするか
為替リスクでは、いつも 為替予約 や 通貨オプション を使うとは限りません。決済時期を動かせるか、同じ通貨の受払を相殺できるか を先に見ると、リーズ・アンド・ラグズ / マッチング / ネッティング と 為替予約 / 通貨オプション を切り分けやすくなります。
| 手段 | まず見ること | 向く場面 | 典型的な誤答 |
|---|---|---|---|
リーズ・アンド・ラグズ | 決済時期を前倒し・後ろ倒しできるか | 為替見通しに応じて 支払いを早める / 受取りを遅らせる などの調整をしたい | これだけでレートを 固定 できると考える |
マッチング | 自社内に同じ通貨の受取りと支払いがあるか | 輸出代金の受取りと輸入代金の支払いを 同じ通貨で自然に相殺 したい | 一方しか外貨取引がないのに選ぶ |
ネッティング | グループ内で同じ通貨の債権債務をまとめられるか | 親子会社や海外子会社の外貨受払を グループ全体で相殺 したい | 単独企業の 1 件の受払に当てはめる |
為替予約 | 契約でレートを完全固定したいか | 単発の外貨受払を 今のレートで固定 したい | 有利な方向も残したい場面で選ぶ |
通貨オプション | 不利な方向だけ避けたいか | 単発の外貨受払で 片側保護 をしたい | プレミアムなしで完全固定できると考える |
過去問での判断順
- まず
自社内に同じ通貨の受取りと支払いがあるかを見ます。相殺できるならマッチングを考えます。 - それが
グループ会社間の話なら、ネッティングを考えます。 - 相殺ではなく
決済時期を動かせるなら、リーズ・アンド・ラグズを考えます。 - 社内調整では吸収できず、
レートを完全固定したいなら為替予約を考えます。 - 社内調整では吸収できず、
不利な方向だけ避けたいなら通貨オプションを考えます。
最短整理
自社内で相殺 = マッチング、グループで相殺 = ネッティング、時期調整 = リーズ・アンド・ラグズ、契約で固定 / 片側保護 = 為替予約 / 通貨オプション と置くと、為替リスクの手段選択を外しにくくなります。
商品価格、為替、金利をまたいでどう選ぶか
過去問では、先物、為替予約 / 通貨オプション、金利スワップ / 通貨スワップ が別々に出るとは限りません。何が変動するか と 単発の取引か、継続的な条件交換か を先に切ると、横断問題でも崩れにくくなります。
| 場面 | 主に変動するもの | まず見ること | 使いやすい手段 |
|---|---|---|---|
| 3か月後に原油を仕入れる。価格上昇を避けて固定したい | 商品価格 | 単発の将来取引、完全固定 | 買い先物 |
| 3か月後に小麦を販売する。価格下落を避けて固定したい | 商品価格 | 単発の将来取引、完全固定 | 売り先物 |
| 3か月後にドルを支払う。円安だけ避けたい | 為替 | 単発の外貨支払い、片側保護 | 通貨オプション の ドル・コール |
| 3か月後にドルを受け取る。今のレートで固定したい | 為替 | 単発の外貨受取り、完全固定 | 為替予約 の ドル売り予約 |
| 変動金利借入を固定金利負担へ変えたい | 金利 | 継続的な利払い条件の交換 | 金利スワップ |
| ドル建て借入を円建て負担へ近づけたい | 通貨 + 金利 | 継続的な元本・利息条件の交換 | 通貨スワップ |
横断問題での判断順
- まず
商品価格、為替、金利のどれが主に動いているかを見ます。 - 次に
単発の将来取引か継続的な条件交換かを切ります。 - 単発の将来取引で
完全固定なら、商品価格は先物、為替は為替予約を考えます。 - 単発の将来取引で
片側保護なら、オプションを考えます。 - 継続的に
利払い条件を変えるなら金利スワップ、通貨建ての元本・利息を変えるなら通貨スワップを考えます。
最短整理
商品価格の単発固定 = 先物、為替の単発固定 / 片側保護 = 為替予約 / 通貨オプション、継続条件の交換 = スワップ と置くと、横断問題でも手段を選びやすくなります。
ポートフォリオ理論の追加的論点:分散効果の極限
複数の資産を組み合わせるとき、相関係数の役割は決定的です。
相関係数 ρ = +1(完全に一緒に動く):分散投資効果なし。リスクは加重平均のまま。 相関係数 ρ = 0(無相関):効果あり。 相関係数 ρ = -1(完全に逆の動き):効果最大。理論的にはリスクをゼロまで減らせる。
実務では、「異なる業種」「異なる地域」「異なる資産クラス」を組み合わせることで、相関係数を低く保ち、分散投資効果を最大化します。
つまずきやすい論点
1. CAPM、WACC、NPVを別々の式と見てしまう
多くの学習者が犯すのは「3 つの独立した計算問題」と思うことです。実際には、
CAPM(株主資本コスト算出)→ WACC(企業全体のコスト) → NPV(投資判定)
というひとつの思考チェーンです。CAPM で Re を求め、それを WACC の公式に入れ、その WACC で NPV を計算する。この流れを理解しないと、公式を忘れたときに対応できません。
2. WACC の資本構成を簿価で計算してしまう
簿価 = 会計上の帳簿価額。これは「過去にいくら払ったか」です。 時価 = 市場での評価額。これは「今、いくらの価値があるか」です。
企業価値は「これからのキャッシュフロー」で決まります。だから、資本構成も「現在の市場価値」で測定するべきです。
3. 負債コストに (1 - t) を掛け忘れる
WACC = E/(D+E) × Re + D/(D+E) × Rd × (1 - t)
括弧内の (1 - t) を忘れると、負債コストが過大になり、WACC が本来より大きく計算されます。結果として、投資判定が過度に保守的になります。
4. IRR が高ければ常によい、と単純化する
相互排他案での比較では、絶対額(NPV)が重要です。初期投資が大きい案は、IRR が小さくても、NPV では大きな価値を生むことがあります。
5. ポートフォリオの標準偏差を加重平均で計算してしまう
σp = √(w1^2 × σ1^2 + w2^2 × σ2^2 + 2 × w1 × w2 × ρ12 × σ1 × σ2)
分散公式には 共分散項 が入ります。単純な加重平均では、分散投資の効果が見えません。
確認問題
問1:CAPMと WACC
無リスク利子率 3%、市場期待収益率 9%、β = 1.2 の企業があります。負債コスト 5%、法人税率 30%。株主資本の時価 600 万円、負債の時価 400 万円。このとき WACC を求めてください。
解答: Re = 3% + 1.2 × (9% - 3%) = 3% + 7.2% = 10.2% WACC = (600/1,000) × 10.2% + (400/1,000) × 5% × (1 - 0.3) = 6.12% + 1.4% = 7.52%
問2:NPV判定
初期投資 1,000 万円のプロジェクト。3 年間のキャッシュフローは 1 年目 400 万、2 年目 500 万、3 年目 300 万。割引率 10%。NPV を計算し、投資の可否を判定してください。
解答: PV = 400/1.1 + 500/1.1^2 + 300/1.1^3 = 363.6 + 413.2 + 225.4 = 1,002.2 万円 NPV = 1,002.2 - 1,000 = +2.2 万円
NPV > 0 なので、投資を実行すべき。
問3:企業価値(DCF法)
FCF:1 年目 80 万、2 年目以降 毎年 100 万(永続)。WACC 10%。有利子負債 500 万円。発行済株式 1,000 株。1 株当たり株主価値を求めてください。
解答: 1 年目の現在価値 = 80 / 1.1 = 72.7 万円 2 年目以降の継続価値(1 年末時点)= 100 / (0.1 - 0) = 1,000 万円 (永続成長率がゼロと仮定) その現在価値 = 1,000 / 1.1 = 909.1 万円 企業価値 = 72.7 + 909.1 = 981.8 万円 株主価値 = 981.8 - 500 = 481.8 万円 1 株当たり株主価値 = 481.8 / 1,000 = 481.8 円
問題を解くときの観点
投資判定や企業価値評価の問題に直面したとき、次の点を確認します。
- いま求めたいのは「要求収益率か」「投資案の価値か」「企業全体の価値か」。
- この式の分子と分母は、何を意味しているのか。単位は統一しているか。
- 資金調達コストと投資収益率を正しく比較しているか。リスクレベルは一致しているか。
- 前提は「単独資産か」「企業全体か」「市場全体か」。スコープは明確か。
- タックスシールド、機会原価、埋没原価の扱いを見落としていないか。
デリバティブでは価格固定、片側だけ保護、金利条件の変換のどれを求めているか。デリバティブでは商品価格、為替、金利のどれが主に動いているか。先物を使うなら、将来買う側 = 買いヘッジ、将来売る側 = 売りヘッジを逆にしていないか。仕入 / 輸入 = 後で買う側、販売 / 輸出 = 後で売る側と読み替えているか。為替では後で払う外貨 = 後で買う、後で受け取る外貨 = 後で売ると読み替えているか。為替リスクでは時期調整、自社内相殺、グループ内相殺、契約固定 / 片側保護のどれで対応するか。スワップは単発の受払ではなく、継続的な条件交換をしているか。オプションでは買い手の最大損失 = プレミアム、売り手の最大利益 = プレミアムを先に固定しているか。オプションの損益分岐点をコール = 行使価格 + プレミアム、プット = 行使価格 - プレミアムと戻せるか。オプション価値を本質的価値 + 時間価値に分けているか。ATM / OTMでも満期前なら時間価値が残ること、満期接近で時間価値は減ることを押さえているか。オプションの問題が価格の分解、プット=コール・パリティ、二項モデルのどれを問うかを先に切れているか。プット=コール・パリティでは同一原資産 / 同一行使価格 / 同一満期とPV(K)を確認しているか。二項モデルではSu / Sd、Cu / Cd、リスク中立確率 p、現在価値への割引の順で計算しているか。効率的市場仮説では市場全体の基準、市場平均との付き合い方、例外パターンのどれを問われているか。市場ポートフォリオ = 基準、CML = 無リスク資産と市場ポートフォリオを結ぶ効率的ポートフォリオの線、CAPM = βで個別証券を価格づけ、EMH = 情報反映と戻せるか。CAPMはβと個別証券、CMLは標準偏差と効率的ポートフォリオの話だと切れているか。SML = β / 個別証券、CML = 標準偏差 / 効率的ポートフォリオの違いを切れているか。β = 系統的リスク、標準偏差 = 総リスクと戻せるか。効率的市場仮説では基準 → 運用方針 → 例外 → 情報反映の範囲のどこを問われているか。効率的市場仮説では過去パターン、公開情報、内部情報のどれに基づく話か。効率的市場仮説では強度 ⊃ 準強度 ⊃ 弱度の包含関係を崩していないか。効率的市場仮説ではテクニカル分析だけ、ファンダメンタル分析まで、内部情報までのどこまで否定されるかを読めているか。ランダム・ウォーク仮説、テクニカル分析、弱度のどれを聞かれているか。実物オプションでは待つ、広げる、絞る、変える、やめるのどれを問われているか。
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